説明

作業設備

【課題】ワーク搬送経路2に沿って当該ワーク搬送経路2脇に複数の作業ブース19〜23が設けられ、搬送用走行体1には、各作業ブース19〜23との間でワークWを移載するワーク移載手段10が設けられた作業設備において、各作業ブースに搬入されるワークWの位置を最適にしながら、設備全体のコストダウンを図る。
【解決手段】各作業ブース19〜23には、ワーク搬送経路2からの距離が作業ブース(19,20)(21)(22,23)によって異なるように設定された作業位置Y1〜Y4でワークWを支持するワーク支持手段28,34,37が配設され、搬送用走行体1のワーク移載手段10で作業ブース19〜23に搬入されるワークが当該作業ブース19〜23に設定された作業位置Y1〜Y3でワーク支持手段28,34,37により支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ラインのように、ワークを異なる複数の作業ブースに次々と移し替て所定の作業を順番に行うような作業設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装ラインでは、ワーク(被塗装物)をワーク搬送用架台に対して積み下ろし作業を行うワーク積み下ろしブース、脱脂処理などを行う前処理ブース、水洗ブース、水切り乾燥ブース、塗装ブース、焼付け乾燥ブース、というように各作業ブースに次々と移し替て所定の作業を行うものである。このような塗装ラインにおける作業設備は、特許文献1に記載されるように、ワーク搬送経路に沿って当該ワーク搬送経路脇に複数の作業ブースが設けられ、ワーク搬送経路に沿って走行する搬送用走行体には、各作業ブースとの間でワークを移載するワーク移載手段が設けられたものであるが、当該特許文献1に記載された従来のこの種の作業設備では、各作業ブースにおけるワークに対する作業位置が、ワーク搬送経路からの距離が一定になるように設定されており、搬送用走行体のワーク移載手段の各作業ブースに対するワーク積み下ろし位置と各作業ブースにおけるワークに対する作業位置とが同一になるように構成されている。
【特許文献1】特開平11−10056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の作業設備では、一般的なランニングフォークなどから成るワーク移載手段を備えた搬送用走行体を利用している場合、搬送用走行体のワーク移載手段のワーク積み下ろし位置と同一位置である各作業ブースでのワークに対する作業位置がワーク搬送経路に比較的近い位置となり、作業ブースの作業位置に移載されたワークの周囲の作業空間の内、ワーク搬送経路側の作業空間が狭められ、特に例えばワークに対してその周囲を作業者が動き回って行う作業、例えば人手による塗装作業やワーク搬送用架台に対するワーク積み下ろし作業などの場合、ワークに対する作業が行い難くなる。又、搬送用走行体のワーク移載手段のワーク積み下ろし位置がワーク搬送経路から十分に離れるような、特殊なワーク移載手段を採用すれば、上記のような問題点は解決できるが、ワークの周囲にそれ程大きな作業空間が必要でない作業ブース、例えば前処理液や洗浄水をワークに噴射するだけの前処理ブースや水洗ブースまでもが、塗装ブースやワーク積み下ろしブースと同様に占有平面積が大きくなり、作業設備全体の占有床面積が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る作業設備を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の発明では、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、ワーク搬送経路2に沿って当該ワーク搬送経路2脇に複数の作業ブース19〜25が設けられ、ワーク搬送経路2に沿って走行する搬送用走行体1には、各作業ブース19〜25との間でワークWを移載するワーク移載手段10が設けられた作業設備において、各作業ブース19〜25にはワークWを作業位置Y1〜Y4で支持するワーク支持手段28,34,37,46が配設され、各作業ブース19〜25のワーク支持手段28,34,37,46における作業位置Y1〜Y4は、ワーク搬送経路2からの距離が作業ブース(19,20)(21)(22〜25)によって異なるように設定され、搬送用走行体1のワーク移載手段10で作業ブース19〜25に搬入されるワークが当該作業ブース19〜25に設定された作業位置Y1〜Y4でワーク支持手段28,34,37,46により支持されるように構成される。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、搬送用走行体1のワーク移載手段10は、各作業ブース19〜25にワーク搬送経路2から一定距離で設定されたワーク積み下ろし位置XLとの間でワークWを移載するように構成し、作業ブース19〜23のワーク支持手段28,34,37には、ワーク積み下ろし位置XLと作業位置Y1〜Y3との間でワークWを往復移送するコンベヤ(チエンコンベヤ29a,29b)を併設することができる。この場合、請求項3に記載のように、ワークWはワーク搬送用架台15に支持し、ワーク搬送用架台15には、各作業ブース19〜25のワーク支持手段28,34,37,46で支持される左右一対の第一被支持部17a,17bと、搬送用走行体1のワーク移載手段10で支持される左右一対の第二被支持部18a,18bを設け、ワーク支持手段28,34,37の前記コンベヤは、前記第一被支持部が載置される左右一対のコンベヤ(チエンコンベヤ29a,29b)で構成することができる。更にこの場合、請求項4に記載のように、ワークWは、前記ワーク搬送用架台15から吊り下げるようにし、前記左右一対のコンベヤ(チエンコンベヤ29a,29b)は、ワークWよりも高所に設けることができる。
【0006】
又、請求項5に記載のように、各作業ブース19〜25は、ワーク搬送経路2の片側に並設し、ワーク搬送経路2の反対側には当該ワーク搬送経路2に沿ってワーク保管棚26を立設し、搬送用走行体1のワーク移載手段10は、このワーク保管棚26のワーク保管空間26a内との間でもワークWを移載できるように構成し、各作業ブース19〜25の前記ワーク積み下ろし位置XLは、ワーク搬送経路2からの距離がワーク保管棚26のワーク保管空間26a内におけるワーク積み下ろし位置XRと等しくなるように構成することができる。
【0007】
更に、ワーク支持手段28,34,37にコンベヤを併設せずに請求項6に記載のように、搬送用走行体1のワーク移載手段10は、ワーク搬送経路2とワーク積み下ろし位置XLとの間の距離を変更可能に構成し、このワーク移載手段10により各作業ブース19〜23における作業位置Y1〜Y3との間で直接ワークWを移載できるように、作業ブース19〜23ごとにワーク積み下ろし位置XLが異なるように設定することもできる。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1に記載の本発明に係る作業設備によれば、各作業ブース内に搬送用走行体のワーク移載手段から搬入されたワークを、当該ワークに対して作業を行うためにワーク支持手段で支持する位置、即ち、作業位置を、各作業ブースでのワークに対する作業内容や、併用する作業機器などに応じて、ワーク搬送経路から必要な距離を離して自由に設定できるので、各作業ブースでのワーク周囲の作業空間を当該作業ブースでの作業に適合した、狭くもなく広過ぎることもない広さに設定することができる。換言すれば、各作業ブースでのワーク周囲に必要な作業空間の内、最大の作業空間に合せて全ての作業ブースを構築する場合のように、複数の作業ブースを含む作業設備全体の占有床面積が広くなり過ぎることがなく、又これとは逆に、各作業ブースでのワーク周囲に必要な作業空間の内、最少の作業空間に合せて全ての作業ブースを構築する場合のように、或る作業ブースでは作業が非常に行い難くなるというような不都合も生じない、合理的な作業設備の構築が可能になる。
【0009】
特に請求項2に記載の構成によれば、搬送用走行体のワーク移載手段として、各作業ブースにワーク搬送経路から一定距離で設定されたワーク積み下ろし位置との間でワークを移載するように構成された従来周知の一般的な構成のワーク移載手段を採用することができると共に、当該ワーク移載手段によるワーク移載ストロークを短く構成することができるので、大荷重のワークを取り扱う設備であっても、搬送用走行体のワーク移載手段を小型にして簡単且つ安価に実施することができる。この場合、請求項3に記載の構成によれば、各作業ブースのワーク支持手段に必要となるコンベヤが、左右一対のコンベヤ、例えばチエンコンベヤなどで簡単に構成することができると共に、ワーク積み下ろし位置と作業位置との間で安定的にワークを搬送できる。更に請求項4に記載の構成によれば、ワークがワーク搬送用架台から吊り下げられていると共に、当該ワークよりも高所に前記左右一対のコンベヤが位置することになるので、ワーク周囲の作業空間から当該ワークに対する作業を容易に行うことができる。
【0010】
又、請求項5に記載の構成によれば、作業ブース間で移し替えられるワークの一時保管などに利用できるワーク保管棚に対しても、各作業ブース間でワークを搬送する搬送用走行体と当該搬送用走行体が備えるワーク移載手段によりワークを出し入れすることができ、ワーク保管棚によるワークの一時保管工程を含めた一連の作業を効率よく実施することができるのであるが、各作業ブースのワーク積み下ろし位置を、ワーク搬送経路からの距離がワーク保管棚のワーク保管空間内におけるワーク積み下ろし位置と等しくなるように構成しているので、従来周知の一般的な構成のワーク移載手段を備えた搬送用走行体をそのまま採用することができる。
【0011】
尚、請求項6に記載の構成によれば、各作業ブースのワーク支持手段にワークの位置を変えるためのコンベヤを設ける必要がなくなり、作業ブースが多数設置されるような大型の作業設備では大幅なコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1において、1は水平直線状のワーク搬送経路2に沿って往復走行自在なスタッカークレーンタイプの搬送用走行体であって、図2及び図4に示すように、床面上に敷設された支持用ガイドレール3に支持された下側台車部4と、天井側に架設された振れ止め用ガイドレール5に係合するローラーユニット6を備えた上部フレーム7とを前後一対の支柱材8で連結一体化すると共に、前後一対の支柱材8間で昇降する昇降キャレッジ9にはワーク移載手段10が設けられている。
【0013】
ワーク移載手段10は、互いに同期して左右両方向何れにも出退移動自在な左右一対のランニングフォーク11によって構成されたものである。これらランニングフォーク11は、昇降キャレッジ9の下側に固定された固定レール部12と、この固定レール部12に対して出退移動自在な中間フォーク部13と、当該中間フォーク部13に対して出退移動自在な終段フォーク部14から構成され、従来周知の出退駆動手段により、固定レール部12に対して中間フォーク部13を出退移動させると終段フォーク部14が中間フォーク部13に対して同一方向に出退移動するものであって、終段フォーク部14を、昇降キャレッジ9の下側中央位置に位置するホームポジションと、昇降キャレッジ9の横側方に離れて位置する進出限位置との間で出退移動させることができる。尚、図では1つの中間フォーク部13を備えたランニングフォーク11を示しているが、昇降キャレッジ9に対する終段フォーク部14の横側方への進出距離を大きくするために複数の中間フォーク部13を備えたランニングフォーク11を採用することもできる。
【0014】
上記ワーク移載手段10で取り扱われるワークWは、図2〜図4に示すようにワーク搬送用架台15に適当な吊下げ具16を介して吊り下げられる。ワーク搬送用架台15は、左右両端部上側に左右外側に張り出すように設けられた左右一対の第一被支持部17a,17bと、これら両被支持部17a,17bの内側に設けられた左右一対の第二被支持部18a,18bを備えたもので、第二被支持部18a,18bは、前記ワーク移載手段10における左右一対のランニングフォーク11の終段フォーク部14が抜き差し自在に係合し得るように構成されたものである。
【0015】
図1に示すように、搬送用走行体1が走行するワーク搬送経路2の一側方には、第一ワーク積み下ろしブース19、第二ワーク積み下ろしブース20、塗装ブース21、前処理ブース22、水洗ブース23、第一熱処理装置24、及び第二熱処理装置25がこの順番に並設され、ワーク搬送経路2の他側方には、ワーク一時保管棚26がワーク搬送経路2の全域にわたって立設されている。このワーク一時保管棚26は、ワーク搬送経路2に沿った水平方向と垂直方向の両方向に区画された多数のワーク保管空間26aを立体的に備えたもので、各ワーク保管空間26aの上部には、前記ワーク搬送用架台15の第一被支持部17a,17bを載置させることができる左右一対の支持レール部材27a,27bが架設されている。
【0016】
第一ワーク積み下ろしブース19と第二ワーク積み下ろしブース20は同一構造のもので、図5〜図7に示すように、支持したワーク搬送用架台15をこれらブース内でワーク搬送経路2に対して直交する水平方向に移動させることができるワーク支持手段28を備えている。これらワーク支持手段28は、ワーク搬送用架台15の左右一対の第一被支持部17a,17bを載置させることができる左右一対のチエンコンベヤ29a,29bから構成されている。これらチエンコンベヤ29a,29bは、各ブース19,20内に立設された左右両側枠30に支持され、モーター31a,31bにより同期駆動される。
【0017】
塗装ブース21は、図8及び図9に示すように、ワーク搬送経路2に面する側を開閉シャッター32により開閉することができると共に開閉扉33aを備えた作業者の出入り口33を有する、閉じた空間で構成されたもので、内部には、前記第一ワーク積み下ろしブース19と第二ワーク積み下ろしブース20に設置されたワーク支持手段28と同一構造のワーク支持手段34が設けられている。
【0018】
前処理ブース22と水洗ブース23は同一構造のもので、図10及び図11に示すように、ワーク搬送経路2に面する側を開閉シャッター35により開閉することができると共に開閉扉36aを備えた作業者の出入り口36を有する、閉じた空間で構成されたもので、内部には、前記第一ワーク積み下ろしブース19と第二ワーク積み下ろしブース20に設置されたワーク支持手段28と同一構造のワーク支持手段37が設けられると共に、ワークWに対する前処理液や洗浄水の噴射のためのノズル付き配管38が配設されている。
【0019】
第一熱処理装置24と第二熱処理装置25は同一構造のもので、図12〜図15に示すように、下側のワーク中継ブース39とその上に設けられた熱処理炉40から成る二階建て構造である。ワーク中継ブース39は、床面上に敷設されたガイドレール41に車輪42を介して支持され且つ適当な走行駆動手段によりワーク搬送経路2の経路方向に対し直交する方向に往復移動することができる可動台43と、この可動台43上に昇降駆動手段44を介して支持されたワーク支持台45とが設けられている。このワーク支持台45の上側には、ワーク搬送用架台15の左右一対の第一被支持部17a,17bを支持するワーク支持手段46が設けられている。
【0020】
熱処理炉40は、その床部47に開口部48を有する下側開放構造のもので、この熱処理炉40内を加熱する適当な加熱手段を備えている。前記可動台43は、昇降駆動手段44によりワーク支持台45を上昇させたときに、図13に示すように当該ワーク支持台45を熱処理炉床部47の開口部48内に嵌入させて当該開口部48を閉じることができる第一位置P1と、図12で示すようにワーク支持台45上のワーク支持手段46に対し搬送用走行体1のワーク移載手段10がワーク搬送用架台15を積み下ろしすることができる第二位置P2との間でガイドレール41上を往復移動できるように構成され、ワーク支持台45の昇降駆動手段44は、図12で示すようにワーク支持台45が熱処理炉床部47の開口部48からワーク中継ブース39内に降下して当該ワーク支持台45上のワーク支持手段46に対し搬送用走行体1のワーク移載手段10がワーク搬送用架台15を積み下ろしすることができるワーク移載のための下降限位置と、ワーク支持台45が熱処理炉床部47の開口部48内に入り込んで当該ワーク支持台45上のワーク支持手段46でワーク搬送用架台15を介して支持されたワークWが熱処理炉40内に入る上昇限位置との間で、可動台43に対しワーク支持台45を昇降移動させるものである。
【0021】
図1及び図12に示すように、ワーク一時保管棚26のワーク保管空間26aの内、第一熱処理装置24や第二熱処理装置25の真向かいに位置する特定複数のワーク保管空間26aには、冷却用エアー噴射ノズル管49を、収納保管するワークW及び当該ワークWを吊り下げるワーク吊下げ用架台15と干渉しない位置において配設することにより、当該ワーク保管空間26aそれぞれをワーク冷却ブース50としている。51は冷却用エアー噴射ノズル管60に冷却用エアーを送給するブロワーである。尚、ワーク冷却ブース61内への冷却用エアーの供給手段は如何なるものであっても良い。例えばワーク冷却ブース61として利用するワーク保管空間26aの周囲適当箇所、例えば上下に隣接する2つのワーク保管空間26aの中間でワークW及び当該ワークWを吊り下げるワーク吊下げ用架台15と干渉しない位置に、上側(又は下側)のワーク保管空間26a内に向けてエアーを吐出するファンを配設するだけの簡単な構成でワーク冷却ブース61を構成することもできる。勿論、ワーク冷却ブース61として利用するワーク保管空間26aの数や配置も、図示例のものに限定されない。例えば、ワーク保管空間26aの底部に上向きにエアーを吐出するファンを配設してワーク冷却ブース61を構成する場合、平面視(図1)において第一熱処理装置24と第二熱処理装置25の真向かいに位置すると共に、側面視(図12)において下から2段目の、搬送用走行体1の走行方向に並列する2つのワーク保管空間26aのみをワーク冷却ブース61として利用するように構成することができる。
【0022】
以上のように構成された塗装ラインの使用方法について説明すると、ワーク一時保管棚26における入出庫作業対象のワーク保管空間26a内から搬送用走行体1へのワーク搬送用架台15の出庫作業に際しては、搬送用走行体1を出庫作業対象のワーク保管空間26aに対面する位置で停止させ、昇降キャレッジ9を昇降させてそのワーク移載手段10(ランニングフォーク11)を出庫作業対象のワーク保管空間26aに対する出庫レベルで停止させる。係る状態で、ランニングフォーク11を進出限位置まで進出移動させることにより終段フォーク部14を、ワーク保管空間26a内の支持レール部材27a,27bで吊り下げられているワーク搬送用架台15の第二被支持部18a,18bに挿入し、この後、昇降キャレッジ9の所定高さ分の上昇とランニングフォーク11のホームポジションへの引き込み運動により、終段フォーク部14で支持したワーク搬送用架台15を、ワーク保管空間26a内の支持レール部材27a,27bから少し持ち上げた状態で、ワーク保管空間26a内から昇降キャレッジ9側に引き込めば良い。逆に、搬送用走行体1側からワーク保管空間26a内へのワーク搬送用架台15の入庫作業に際しては、搬送用走行体1を入庫作業対象のワーク保管空間26aに対面する位置で停止させ、昇降キャレッジ9を昇降させてそのワーク移載手段10(ランニングフォーク11)を入庫作業対象のワーク保管空間26aに対する入庫レベルで停止させる。係る状態で、ワーク搬送用架台15の第二被支持部18a,18bに挿入された終段フォーク部14でワーク搬送用架台15を吊り下げているランニングフォーク11をホームポジションから進出限位置(ワーク積み下ろし位置XR)まで進出移動させ、この後、昇降キャレッジ9の所定高さ分の降下とランニングフォーク11のホームポジションへの引き込み運動により、ワーク搬送用架台15の第一被支持部17a,17bをワーク保管空間26a内の支持レール部材27a,27bに載置させれば良い。
【0023】
又、第一ワーク積み下ろしブース19,20、塗装ブース21、前処理ブース22、水洗ブース23、第一熱処理装置24、及び第二熱処理装置25の何れかと搬送用走行体1との間のワーク搬送用架台15の移載も、搬送用走行体1側の昇降キャレッジ9に対するランニングフォーク11の進出方向が、ワーク一時保管棚26のある側とは反対側になるだけで、上記の入出庫作業対象のワーク保管空間26a内と搬送用走行体1との間のワーク搬送用架台15の移載と同様に行われる。図4に示すように、ランニングフォーク11が左右各方向へ進出移動したときの進出限位置、即ち、搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XR,XLは、左右何れ側に進出したときも搬送用走行体1の中心(ワーク搬送経路2の巾方向の中央位置)に対して同一一定距離だけ離れた位置であり、ワーク一時保管棚26側のワーク積み下ろし位置XRは、ワーク保管空間26a内の奥行き方向の略中心位置となっている。
【0024】
以下、上記構成の塗装設備の使用方法を具体的に説明すると、ワークWをワーク搬送用架台15に吊り下げる作業を行うために、空のワーク搬送用架台15が空き状態の第一ワーク積み下ろしブース19又は第二ワーク積み下ろしブース20に準備される。即ち、空のワーク搬送用架台15がワーク一時保管棚26の特定のワーク保管空間26aを利用して収納保管されているときは、搬送用走行体1を利用して当該空のワーク搬送用架台15が第一ワーク積み下ろしブース19又は第二ワーク積み下ろしブース20に出庫され、これら第一ワーク積み下ろしブース19又は第二ワーク積み下ろしブース20に空の状態で残されたワーク搬送用架台15があるときは、その空のワーク搬送用架台15を利用することができる。
【0025】
搬送用走行体1により例えば第一ワーク積み下ろしブース19内に出庫される空のワーク搬送用架台15は、図5に示すように搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLで、その第一被支持部17a,17bがワーク支持手段28のチエンコンベヤ29a,29b上に載置される状態に下ろされるので、チエンコンベヤ29a,29bを稼働させてワーク積み下ろし位置XLにある空のワーク搬送用架台15を当該第一ワーク積み下ろしブース19の奥行き方向の略中央になる作業位置Y1までワーク搬送経路2から遠ざかる方向に搬送させる。これにより、空のワーク搬送用架台15に対するワークWの吊下作業を、当該空のワーク搬送用架台15の全周囲の広い空間を利用して容易に行うことができる。ワークWを吊り下げたワーク搬送用架台15は、再びチエンコンベヤ29a,29bを逆方向に稼働させることにより、元の搬送用走行体1のワーク積み下ろし位置XLまで搬送しておく。
【0026】
上記のようにして例えば第一ワーク積み下ろしブース19のワーク積み下ろし位置XLにワーク搬送用架台15に吊り下げられたワークW(以下、単にワークWという)が準備されたならば、これを搬送用走行体1により前処理ブース22に搬送する。この前処理ブース22での脱脂化成液による脱脂洗浄が不要で水洗のみ必要なワークWであれば、水洗ブース23に搬送する。これら前処理ブース22や水洗ブース23に対するワークWの搬入時には、図10及び図11に示す開閉シャッター35が開かれ、当該前処理ブース22や水洗ブース23が備えるワーク支持手段37のチエンコンベヤ29a,29b上にワーク搬送用架台15の第一被支持部17a,17bが載置される状態で、搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLでワークWが下ろされる。この後(ランニングフォーク11がホームポジションに引き込まれた後)、開閉シャッター35を閉じると共に、チエンコンベヤ29a,29bを稼働させてワーク積み下ろし位置XLにあるワーク搬送用架台15を当該前処理ブース22又は水洗ブース23の奥行き方向の略中央になる作業位置Y2までワーク搬送経路2から遠ざかる方向に搬送させる。これにより、ワーク搬送用架台15に吊り下げられているワークWが、これら前処理ブース22又は水洗ブース23が備えるノズル付き配管38に好適に対応することになるので、ノズル付き配管38に前処理液(脱脂化成液)又は洗浄水を送給し、ワークWに対する所期の前処理又は水洗を好適に行わせることができる。
【0027】
前処理ブース22での前処理又は水洗ブース23での水洗が完了したワークWは、再びチエンコンベヤ29a,29bを逆方向に稼働させることにより、作業位置Y2から元の搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLまで搬送し、開閉シャッター35を開いた後、搬送用走行体1により取り出して次のブースに搬送する。即ち、前処理ブース22での前処理が終わったワークWは水洗ブース23に搬送して水洗を行い、水洗ブース23での水洗が終わったワークWは、第一熱処理装置24と第二熱処理装置25の内、空き状態の例えば第一熱処理装置24に搬入して、水切り乾燥を行うことができる。
【0028】
第一熱処理装置24を例にとって説明すると、ワークWが搬入される第一熱処理装置24では、ワーク中継ブース39の可動台43を、図12に示すように、昇降駆動手段44によりワーク支持台45を下降限位置まで下ろした状態で、搬送用走行体1のワーク移載手段10がワーク搬送用架台15を積み下ろしすることができる第二位置P2に移動させ、待機させておく。
【0029】
而して、搬送用走行体1が水洗ブース23内から取り出したワークWは、当該搬送用走行体1により、第一熱処理装置24のワーク中継ブース39内の第二位置P2で待機している可動台43上にあって且つ下降限位置にあるワーク支持台45上のワーク支持手段46に、当該ワークWを吊り下げているワーク搬送用架台15の第一被支持部17a,17bがワーク支持手段46の支持レール部材48b上に載置される状態で、図12に示すように搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLにおいて移載することができる。次に図14に示すように、可動台43を第二位置P2から第一位置P1へ移動させ、続いて当該可動台43上の昇降駆動手段44を作動させてワーク支持台45を上昇限位置まで上昇させる。この結果、ワーク支持台45が熱処理炉床部47の開口部48内に入り込み、当該開口部48をワーク支持台45が閉じる状態になると共に、当該ワーク支持台45上のワーク支持手段46にワーク搬送用架台15を介して吊り下げられた状態のワークWが熱処理炉40内に装入されることになる。このようにして熱処理炉40内に装入されたワークWは、平面視において搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLから所要距離だけワーク搬送経路2から離れる方向に移動した作業位置Y4(図1及び図13参照)にあって、熱処理炉40内の略中央位置に位置することになる。
【0030】
ワークWが熱処理炉40内に装入されたならば、当該熱処理炉40に併設されている加熱手段を稼働させ、当該熱処理炉40内で空中に吊り下げられた状態のワークWに対する水切り乾燥を行わせることができる。所定時間の水切り乾燥が終了すれば、ワーク支持台45を下降限位置まで降下させてワークWを熱処理炉40内から開口部48を通じて下方のワーク中継ブース39に脱出させると共に、可動台43を第一位置P1から第二位置P2へ移動させ、ワーク支持台45上のワーク支持手段46で支持されているワークW(ワーク搬送用架台15)を搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLに戻しておくことにより、水切り乾燥済みのワークWを搬送用走行体1により受け取らせ、次段工程の塗装を行うために塗装ブース21に搬送することができる。
【0031】
塗装ブース21においても、図8及び図9に示すようにワークWは、開閉シャッター32が開かれた状態で、ワーク支持手段34のチエンコンベヤ29a,29b上にワーク搬送用架台15の第一被支持部17a,17bが載置されることにより、搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLに下ろされる。この後(ランニングフォーク11がホームポジションに引き込まれた後)、開閉シャッター32を閉じると共に、チエンコンベヤ29a,29bを稼働させてワーク積み下ろし位置XLにあるワーク搬送用架台15を当該塗装ブース21の奥行き方向の略中央になる作業位置Y3までワーク搬送経路2から遠ざかる方向に搬送させる。これにより、ワークWが塗装ブース21の略中央位置に吊り下げられることになるので、当該ワークWの周囲に十分な作業空間が確保され、例えばスプレーガンによる手作業の塗装作業であっても、当該塗装作業を容易且つ良好に行わせることができる。
【0032】
塗装が完了したワークWは、再びチエンコンベヤ29a,29bを逆方向に稼働させることにより、作業位置Y3から元の搬送用走行体1から見たワーク積み下ろし位置XLまで搬送し、開閉シャッター32を開いた後、搬送用走行体1により取り出して次段工程のブースに搬送することができる。即ち、塗装が完了したワークWは、第一熱処理装置24と第二熱処理装置25の内、空き状態の例えば第一熱処理装置24に搬入して、焼付け乾燥処理を行うことができる。これら熱処理のためにワークWを搬送用走行体1により搬送して第一熱処理装置24又は第二熱処理装置25の熱処理炉40に装入する手順及び熱処理後のワークWを搬送用走行体1で受け取らせる手順は、先に説明した水切り乾燥工程実施時の手順と同一であるから、説明は省略する。
【0033】
尚、塗装が完了したワークWで焼付け乾燥工程が不要なワークWは、第一熱処理装置24又は第二熱処理装置25の熱処理炉40に装入して強制的に塗膜乾燥処理を実施するか又は、ワーク一時保管棚26の空き状態のワーク保管空間26a内に移して所要時間放置して自然乾燥させることができる。第一熱処理装置24又は第二熱処理装置25において強制塗膜乾燥処理したワークWや焼付け乾燥処理したワークWは、ワーク一時保管棚26の空き状態のワーク保管空間26a内に移して所要時間放置して自然冷却させることができるが、強制冷却が必要なときは、第一熱処理装置24や第二熱処理装置25の向かい位置にあるワーク冷却ブース50としてのワーク保管空間26a内に当該ワークWを収納し、当該ワーク冷却ブース50に接続のブロワー51を作動させて冷却用エアー噴射ノズル管49から冷却用エアーを噴射させることにより、ワーク冷却ブース50内に収納されたワークWを強制冷却することができる。
【0034】
ワーク一時保管棚26内で収納保管されている冷却時間経過後のワークWは、第一ワーク積み下ろしブース19又は第二ワーク積み下ろしブース20内に搬送用走行体1で出庫し、これらワーク積み下ろしブース19,20内で作業位置Y1に移動させたワーク搬送用架台15から当該ワークWを取り外して搬出することができる。
【0035】
尚、上記実施形態では、各作業ブースに対する搬送用走行体1のワーク移載手段10のワーク積み下ろし位置XLを一定にし、このワーク積み下ろし位置XLと各作業ブースにおける作業位置Y1〜Y3との間でワークWを搬送するコンベヤ(チエンコンベヤ29a,29b)を各作業ブースのワーク支持手段28,34,37に併設したが、図14に示すように、搬送用走行体1のワーク移載手段10が、作業ブースごとにワーク搬送経路からの距離が異なるように設定された作業位置Y1〜Y3の各々に対して直接ワークの積み下ろしができるように、ランニングフォーク11の進出限位置を可変に構成することもできる。この場合、複数設定されたランニングフォーク11の進出限位置から、搬送用走行体1の停止位置(作業ブース)に対応する1つの進出限位置を選択させ、この選択された進出限位置でランニングフォーク11の進出移動を自動停止させるように構成すれば良い。
【0036】
この実施形態によれば、各作業ブースのワーク支持手段28,34,37にコンベヤが不要になるが、作業位置とワーク搬送経路との間の距離が大きくなるときは、3段式のランニングフォークではなく、4段又はそれ以上の多段式ランニングフォークを利用することができるし、各作業ブースのワーク支持手段28,34,37に、ワーク搬送用架台15を支持した状態のランニングフォーク11の終段フォーク部14を出退移動自在に支持するローラーレールを併設することができる。勿論、ワークWを掬い上げるランニングフォークではなく、ローラーレール上で支持されるワーク搬送用架台15を押し引きする形式のワーク移載手段を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態を示す塗装ライン全体の概略平面図である。
【図2】ワークを搬送する搬送用走行体の側面図である。
【図3】ワーク一時保管棚内でのワークの収納保管状態を示す正面図である。
【図4】搬送用走行体のワーク移載手段を説明する縦断正面図である。
【図5】ワーク積み下ろしブースを示す平面図である。
【図6】同ワーク積み下ろしブースを示す背面図である。
【図7】同ワーク積み下ろしブースと搬送用走行体とを示す縦断側面図である。
【図8】塗装ブースと搬送用走行体とを示す縦断側面図である。
【図9】同塗装ブースを示す横断平面図である。
【図10】前処理ブース又は水洗ブースと搬送用走行体とを示す縦断側面図である。
【図11】前処理ブース及び水洗ブースを示す横断平面図である。
【図12】熱処理装置、搬送用走行体、及びワーク冷却ブースを示す縦断側面図である。
【図13】ワークが装入された状態の熱処理装置を示す縦断側面図である。
【図14】A図〜C図は、別の実施形態を説明するワーク移載手段の動作説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 搬送用走行体
2 ワーク搬送経路
9 昇降キャレッジ
10 ワーク移載手段
11 ランニングフォーク
15 ワーク搬送用架台
17a,17b 第一被支持部
18a,18b 第二被支持部
19 第一ワーク積み下ろしブース
20 第二ワーク積み下ろしブース
21 塗装ブース
22 前処理ブース
23 水洗ブース
24 第一熱処理装置
25 第二熱処理装置
26 ワーク一時保管棚
28,34,37,46 ワーク支持手段
29a,29b チエンコンベヤ
32,35 開閉シャッター
39 ワーク中継ブース
40 熱処理炉
43 可動台
44 昇降駆動手段
45 ワーク支持台
48 開口部
49 冷却用エアー噴射ノズル管
50 ワーク冷却ブース
51 ブロワー
W ワーク(被塗装物)
XR,XL ワーク積み下ろし位置
Y1〜Y3 作業位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送経路に沿って当該ワーク搬送経路脇に複数の作業ブースが設けられ、ワーク搬送経路に沿って走行する搬送用走行体には、各作業ブースとの間でワークを移載するワーク移載手段が設けられた作業設備において、各作業ブースにはワークを作業位置で支持するワーク支持手段が配設され、各作業ブースのワーク支持手段における作業位置は、ワーク搬送経路からの距離が作業ブースによって異なるように設定され、搬送用走行体のワーク移載手段で作業ブースに搬入されるワークが当該作業ブースに設定された作業位置でワーク支持手段により支持されるように構成された、作業設備。
【請求項2】
搬送用走行体のワーク移載手段は、各作業ブースにワーク搬送経路から一定距離で設定されたワーク積み下ろし位置との間でワークを移載するように構成され、作業ブースのワーク支持手段には、ワーク積み下ろし位置と作業位置との間でワークを往復移送するコンベヤが併設されている、請求項1に記載の作業設備。
【請求項3】
ワークはワーク搬送用架台に支持され、ワーク搬送用架台には、各作業ブースのワーク支持手段で支持される左右一対の第一被支持部と、搬送用走行体のワーク移載手段で支持される左右一対の第二被支持部とが設けられ、ワーク支持手段に併設された前記コンベヤは、前記第一被支持部が載置される左右一対のコンベヤで構成されている、請求項2に記載の作業設備。
【請求項4】
ワークは、前記ワーク搬送用架台から吊り下げられ、前記左右一対のコンベヤは、ワークよりも高所に設けられている、請求項3に記載の作業設備。
【請求項5】
各作業ブースは、ワーク搬送経路の片側に並設され、ワーク搬送経路の反対側には当該ワーク搬送経路に沿ってワーク保管棚が立設され、搬送用走行体のワーク移載手段は、このワーク保管棚のワーク保管空間内との間でもワークを移載できるように構成され、各作業ブースの前記ワーク積み下ろし位置は、ワーク搬送経路からの距離がワーク保管棚のワーク保管空間内におけるワーク積み下ろし位置と等しくなるように構成されている、請求項2〜4の何れか1項に記載の作業設備。
【請求項6】
搬送用走行体のワーク移載手段は、ワーク搬送経路とワーク積み下ろし位置との間の距離を変更可能に構成され、このワーク移載手段により各作業ブースにおける作業位置との間で直接ワークを移載できるように、作業ブースごとにワーク積み下ろし位置が異なるように設定されている、請求項1に記載の作業設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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