説明

作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造及び充電回路制御方法

【課題】交流電圧を直流電圧に変換する過程で商用電源の電流歪を発生させ、周辺電気機器に高調波電流による電磁障害の発生を防止する商用周波数で電流歪を低減するために設けるフィルタ装置の欠点を除去する、作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造及び充電回路制御方法を開発する。
【解決手段】従来の充電回路の欠点である高調波電流を低減するために、商用電源からPFC回路により、高調波成分の少ない50/60Hz の交流電流を入力するように構成し、その制御は高周波数のスイッチ制御とする。スイッチ周波数が高いために、高調波電流防止のフィルタ回路は、小型軽量で製作でき、入力商用電圧が異電圧(100Vまたは200V)でも充電回路が正常運転できるように回路電圧を維持するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造及び充電回路制御方法に係り、特に、電動式高所作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構成とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式高所作業車は、高所作業するための、高所作業台を上下左右に移動させるリフタを組込んだ作業車であり、リフタの上下左右運動は、電動式油圧ポンプによる油圧エネルギで油圧シリンダを動作させており、常設の駐車場で商用電源から蓄電池を満充電させて、作業車に搭載した蓄電池で電動モータを作動させている。
【0003】
そして、上記蓄電池を充電する場合、商用電源は線電圧を安全電圧に維持するよう、接地極で干渉させないための絶縁トランスを設け、電圧変換して該作業車に搭載した蓄電池を満充電させて、該蓄電池で電動モータを動作させている。
【0004】
そして、一般的に、作業車に搭載した蓄電池(車載蓄電池に同じ)は、マイナス電極を車体に接地して使用しており、また、商用電源は、線電圧を安全電圧に維持するために接地極を接地している。そのために、商用電源で車載の蓄電池を充電する場合、商用電源と蓄電池を接地極で干渉させないための絶縁トランスを設けている。
【0005】
商用電源の50/60Hzで動作する絶縁トランスは、体積、重量ともに大きく、また、商用電源の交流電流を直流電源に変換する過程で高調波電流が発生する。高調波電流を低減のために高調波低減フィルタ回路などを設置する処置が必要になる。ここに、従来方式の充電回路の波形を、図10に示すように、位相制御方法による回路電流波形であり、図11に示すように、チョッパ制御方法による回路電流波形を示す。
【0006】
一方、蓄電池の充電回路は、SSR(Solid State Relay)などの半導体スイッチ素子を使った位相制御方法による電圧調整する方法があり、その一例として、図8に示すように位相制御方法による充電回路を示す。
【0007】
そして、半導体スイッチ素子とリヤクトルで構成したチョッパ回路により、図9に示すようにスイッチ開閉時間を調整して電圧調整するチョッパ制御方法がある。これらの方法は、商用電源から充電電流変換回路を絶縁する電圧変換トランスが、商用電源周波数での変換となるために、形状、重量ともに大きくなるという欠点があった。
【0008】
また、交流電圧を直流電圧に変換する過程で商用電源の電流歪を発生させて、周辺電気機器に高調波電流による電磁障害を発生させることもあり、その防止対策として商用周波数で電流歪を低減するフィルタ装置などを設けるが、これも装置が大型化し、重量や費用が嵩むことになるという欠点があった。
【0009】
充電共用インバータ制御装置は、存在した。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−223559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明が解決しようとする問題点は以下とおりである。
1)車載の蓄電池の負電極は車体に接地されている。また充電に使う商用電源も給電設備側で接地極を接地されており、作業車に搭載した蓄電池を商用電源で充電するには、車体の接地極と商用電源の接地極を分離するためには絶縁トランスを用いる必要があり、商用周波数の50/60Hzで運転する絶縁トランスでは、形状が大きく重いなどの不都合がある。
【0012】
2)蓄電池の充電の調整は、絶縁トランスの一次側または二次側の電圧位相を、SSR(Solid State Relay)等の半導体を使って調整すること。他に、絶縁トランスの二次側電圧を整流回路で直流変換し、高速スイッチ(電力トランジスタなどの半導体)、リヤクトル、ダイオードなどで構成したチョッパ回路で調整すること。これらの方法は、交流波形の位相に応じて電流を流すことや、また、直流電圧に変換する過程で、高い周波数成分を含んだ歪率の大きな電流が流れる不都合があること。また、高調波電流低減にリヤクトルやコンデンサからなるフィルタ回路を設けてなどの費用が嵩むなどの不都合もある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するために第一の発明は、作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造であって、PFC(Power Factor Control)回路、高周波インバータ回路、一次二次巻線を絶縁した共振トランス、絶縁トランス、絶縁トランスの二次側出力の整流回路とで構成される作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造において、PFC回路(A)の一次側と二次側を絶縁した絶縁トランスで、各巻線間の漏れインダクタンスを大きくするために巻線配置した漏れリアクタンス型トランス、または通常の絶縁トランスの一次側に漏れインダクタスに相当したリヤクトルを直列に接続構成した共振絶縁トランスを有し、共振絶縁トランス(C)の一次側に、直列、または並列に共振用コンデンサを有し、前記、絶縁トランス、または共振絶縁トランスの回路を駆動させるフルブリッジ型、またはハーフブリッジ型のインバータ装置(B)を有し、該インバータ装置に、共振絶縁トランスに流れる電流と印加電圧の位相差を検出する手段を有し、絶縁トランスの一次側、または二次側の電流を検出する手段を有し、絶縁トランスの二次側に、ブリッジダイオード回路、または両波整流回路で構成して、整流出力を蓄電池に接続した回路を有することを特徴とするものである。
【0014】
第二の発明は、作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路制御方法であって、蓄電池の充電に際し、共振絶縁トランスの二次側の出力電圧を調整し、蓄電池の端子電圧が設定電圧を超えない範囲では、充電電流を設定値に維持するように出力電圧を調整して充電電流制御し、また、蓄電池の端子電圧が設定上限値を超える場合は、充電電流制御をせずに、端子電圧が設定値に維持するように出力電圧制御し、共振絶縁トランスの二次側の出力電圧は、共振周波数近辺で最大となるため、出力電圧の低減調整は、共振トランスに加える運転周波数をインバータ装置で可変調整し、共振絶縁トランス回路の共振周波数は、共振絶縁トランスのインダクタンス( Lt )と共振コンデンサ( C0 )の積で決まる固有値であるため、共振絶縁トランスの二次側の出力電圧の調整は、共振回路に加える周波数を可変することで行い、共振絶縁トランスと共振コンデンサが直列接続した直列共振回路では、インバータ出力周波数を調整して、共振周波数で最大電圧を、発振周波数を高めることで出力電圧を低減させる方法で行い、共振絶縁トランスと共振コンデンサが並列接続した並列共振回路では、インバータ出力周波数を調整して、共振周波数で最大電圧を、発振周波数を低めることで出力電圧を低減させる方法で行い、共振回路の動作で印加電圧と電流との位相差は、零で一致した位相関係であるとし、インバータの発振周波数は、発生周波数の電圧変化点、インバータの上アームから下アームにスイッチした時から、共振回路の電流検出器の出力が正電圧から負電圧に変化するまでの時間、即ち,電圧波形と電流波形の位相差を計測して調整し、その時間が一致していれば共振周波数の運転にし、インバータの運転は、電流位相が電圧位相より遅れた関係、または一致した位相関係で運転し、そのため、直列共振回路では、共振周波数および、それより高い周波数で運転することで電圧調整を行い並列共振回路では、共振周波数および、それより低い周波数で運転することで電圧調整を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、PFC回路で商用電源から正弦波電流を流して高調波電流を除去すると同時に、高い周波数で運転する共振トランス、共振コンデンサと共振を制御するインバータより、インバータのスイッチロスの低減と、また高周波絶縁トランスの小型、軽量化を実現する等、極めて有益なる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例を示す回路構成図である。
【図2】この発明の一実施例を示す運転中の電圧電流波形を示すグラフ図である。
【図3】この発明の一実施例を示す並列共振回路図とその電圧電流位相のベクトル図である。
【図4】この発明の一実施例を示す直列共振回路図とその電圧電流位相のベクトル図である。
【図5】この発明の一実施例を示す直列共振回路の回路構成図である。
【図6】この発明の一実施例を示す並列共振回路の回路構成図である。
【図7】この発明の一実施例を示すハーフブリッジ型の高周波インバータ回路図である。
【図8】従来例を示す位相制御方法による充電回路図である。
【図9】従来例を示すチョッパ制御方法による充電回路図である。
【図10】従来例を示す位相制御方法による回路電流波形である。
【図11】従来例を示すチョッパ制御方法による回路電流波形である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための形態は、上記第一の発明に係る充電回路構造において、従来の充電回路の欠点である高調波電流を低減するために、商用電源からPFC回路により、高調波成分の少ない50/60Hzの交流電流を入力するように構成し、制御は高周波数のスイッチ制御になる。スイッチ周波数が高いために、高調波電流防止のフィルタ回路は、小型軽量で製作できる。入力商用電圧が、異電圧(100Vまたは200V)でも充電回路が、正常運転できるように回路電圧を維持するようにするものである。
【0018】
また、上記第二の発明に係る充電回路制御方法において、共振周波数付近の周波数を発生させるインバータ装置で、絶縁共振トランスと共振コンデンサで構成した共振回路を矩形波電圧駆動させる。共振トランスの二次側巻線は、交流電圧を整流する整流器を接続する。整流された直流電圧を蓄電池に印加する。蓄電池の充電電流は、絶縁共振トランスの一次側電流と同位相の二次側電流が正弦波状の充電電流が流れるようにするものである。
【0019】
さらに、絶縁共振トランスは高周波数化することで小型軽量化を実現する。
【実施例1】
【0020】
次に、第一の発明の一実施例である作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造について以下詳細に説明する。
【0021】
1)本発明の充電装置には、商用電源から、PFC回路で構成した整流回路を設けた。
これは商用電源から正弦波電流で電力の供給を受ける。また、商用電源の運転電圧は、100V、200Vのいずれでの電圧でも動作できるように回路構成し、同一装置で、異種電圧で運転できるようにした。また、PFC回路を2回路することで、単相電源や三相電源にも同一機種で対応可能にする。
【0022】
2)絶縁トランスは、高周波トランスで構成し小型、軽量化した。その理由は、トランス出力方程式は次式で表現される。
E =K×Bg×S×F×N
E:トランスの巻線電圧( V:ボルト)
K:巻線定数
Bg :磁気回路の磁束密度( Wb/m2
S:磁気回路の断面積
F:トランスの運転周波数( Hz)
N:トランスのコイル巻数(ターン)で表現する。
【0023】
上式から、トランスのコイル巻 線数と運転周波数は逆比例の関係になる。運転周波数を高周波化することでコイル巻数が少なくなる。コイル巻数の減少で磁気回路が縮小できるため、全体として小型軽量化した絶縁トランスが構成できる。
【0024】
3)高周波トランスはインバータ装置で駆動させる。インバータ装置は、運転周波数が高いとインバータ内のスイッチロスが増大させる不都合がある。その不都合を回避するために、高周波トランスを共振周波数近辺で運転するようにした。共振周波数付近の運転は、電流位相と電圧位相が一致した運転になるために、零電流付近のインバータスイッチになり、インバータのスイッチロスが低減できる効率の良い運転になる。一般に、インバータ装置の零電流スイッチ回路(ZISスイッチ回路)と呼ばれる運転方法である。
【0025】
4)高周波トランスは漏れインダクタンスを有した共振型高周波トランスと共振コンデンサで構成した共振回路に、インバータ装置から共振周波数の電圧を印加して運転する。
【0026】
5)共振型高周波トランスは、通常の絶縁トランスと共振用リヤクトルを直列接続しての使用できる。絶縁トランスは、一次巻線と二次巻線で構成する。通常、コアー材の同一磁脚に一次巻線と二次巻線を重ね巻またはそれぞれを交互に重ね巻(サンドイッチ巻)して製作する。一次二次巻線間の磁気結合を良好にするように製作する。この絶縁トランスの一次側巻線に共振用インダクタンスを直列接続して共振型高周波トランスとしても使用できる。
【0027】
6)別の製作方法として、高周波トランスの一次巻線と二次巻線の磁気結合度を低くするように巻線を分離配置すると漏れインダクタンスが増加して共振型高周波トランスとして製作できる。例えば、コアー材が U型のコアを2個使って、 U字型コアー材の両脚を合体させて楕円型の磁気回路を生成させる。それぞれの磁却に一次巻線、二次巻線を配置する。このことで漏れインダクタンスの大きな高周波トランスを製作できるために、別置きの共振用リヤクトルが不要になる。このトランスの漏れインダクタンスは二次巻線を短絡して、一次巻線に LCRメータを接続して計測できる。別のメリットとして、一次二次巻線は、空間的に分離されるために、静電的に分離する遮蔽巻線、またはシールド板等が不要となる利点もある。
【0028】
7)共振周波数は、共振型高周波トランスの漏れインダクタンスと共振コンデンサの関係で、 F=1 /[2π√(LC)]
F:共振周波数(Hz)
L:共振トランスの漏インダクタンス(H)
C:共振コンデンサ(F)で表す。
【0029】
8)共振回路は、共振トランスと共振コンデンサが、並列接続した並列共振回路と、直列接続した直列共振回路の二つの回路方式がある。並列および直列共振回路での運転は、制御方法は異なるが両者共に運転できる。ただし、並列共振回路の運転は、運転初期に並列コンデンサに過大電流が流れないような回路の工夫が必要になる。
【0030】
9)共振回路の共振状態の電圧、電流波形は、位相差のない同一位相の振幅波形になる。インバータ装置は印加電圧と回路電流の位相差を検出して、位相差を零にすべく発振周波数を変えて運転維持している。共振状態の運転は、最大出力運転になる。通常運転では、蓄電器の状態で最適充電電流を流すことになる。そのために共振周波数とその周辺の周波数を共振回路に加えて充電電流を制御する。インバータ運転は、回路電流位相が、電圧位相より遅れ位相の運転が望ましい。そのために共振回路は直列共振回路と並列共振回路で、運転制御の方法が異なる。
【0031】
10)並列共振回路は、印加電圧に対して電流位相が遅れ電流になる周波数は、共振周波数以下の周波数での運転になる。インバータ運転の充電電流調整は共振周波数において最大出力で、共振周波数以下の周波数では、周波数が小さいほど充電電流も小さくなる。図3に並列共振回路図とその電圧電流位相のベクトル図を示す。
【0032】
11)直列共振回路は、印加電圧に対して電流位相が遅れ電流になる周波数は、共振周波数以上の周波数での運転になる。インバータ運転の充電電流調整は共振周波数において最大出力で、共振周波数以上の周波数では、周波数が大きいほど充電電流も小さくなる。図4に直列共振回路図とその電圧電流位相のベクトル図を示す。
【0033】
12)上記10)または11)における共振回路方式により制御方法が異なる。並列共振回路は、低い周波数から共振周波数間の発振周波数を調整しながら充電電流を調整する。また、直列共振回路では、高い周波数から共振周波数間の発振周波数を調整しながら充電電流を調整する。
【0034】
13)共振型高周波トランスの一次側電流は、インバータ出力電圧を矩形で与えても正弦波電流となる。トランスの二次側巻線は、整流器を通じて蓄電池の接続している。二次側巻線電流も一次巻線電流と同様に正弦波電流になる。二次側整流器は矩形波電圧印加の運転に較べて転流のスイッチ損失が小さく効率の良い運転ができる。また転流スイッチングに伴う電磁波ノイズの発生も少ない利点がある。
【0035】
14)回路の制御方法に関して述べる。蓄電池の端子電圧は、その充放電状態で端子電圧が大きく変動する。一例では、蓄電池定格電圧48V用蓄電池なら、満充電時の端子電圧は65V程度から、全放電状態の端子電圧は48V程度と蓄電池の端子電圧は充放電状態で大きく変動する。
【0036】
15)PFC回路の作用は、商用交流電圧を直流電圧に変換するときに、商用電源の電圧変動に影響することなく、出力電圧を任意の設定電圧に制御すると同時に、商用電源の回路電流を正弦波電流に制御して、電源電流の力率を改善させる機能がある。
【0037】
16)本発明は、PFC回路で整流した直流電圧を、共振トランス、共振コンデンサとインバータで共振回路を構成させて、蓄電池に正弦波の充電電流を供給することで、充電中に発生する高調波電流を軽減させ、インバータ回路のスイッチロスの低減、二次側整流回路の正弦波電流によるスイッチロスの軽減による高効率、小型軽量、同一機種で異種電圧運転に対応可能な充電回路を構成できる。
【実施例2】
【0038】
次に、第二の発明の一実施例である作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路制御方法について以下詳細に説明する。
【0039】
ここでは、同一機種で異種電圧運転の対応や、蓄電池の端子電圧が変動しても、充電動作を機能せるために、回路動作を下記方法で構成して、記述の制御方法で充電電流制御を実施する。
【0040】
1)PFC回路の直流出力電圧設定は、電源電圧が変動しても正弦波電流を供給するために、回路電圧の上限値の√2倍の1.1倍以上の電圧( Vdc≧ Ein×√2×1.1 )を設定する。
【0041】
2)インバータの発振周波数Fは、部品の制約から、10〜50kHz範囲の共振周波数運転を選択する。低周波ではトランス容積が大きく、高い周波数では、半導体の動作の制約から選択する。
【0042】
3)充電電圧 Vbdc を、蓄電池の電圧変動幅から選択する。例えば、48V蓄電池では、48V〜65Vの変動幅から Vbdc =65V程度を選択する。この電圧を絶縁トランスの二次電圧とする。また最大充電電流 Icgを決める。
【0043】
4)絶縁トランスの一次巻線比を、一次巻線n1/二次巻線n2 = Vdc / Vdcavに選ぶ。
【0044】
5)共振トランスの漏インダクタンス Lt を、トランス内臓構造または外付構造として、2π F Lt =(0.8〜1.2)× Vdc2 / (Vbbdc Icg)の関係式から決める。
【0045】
6)漏インダクタンスを持った絶縁トランスの一次巻線n1は、トランスの関係式
V=K×φ×F×n1 の関係式とトランスの二次巻線を短絡したときの漏インダクタンス Lt を満足するn1を決定する。二次巻線数n2は、上記4)項の関係式を満足する値を決める。
【0046】
7)外部に漏インダクタンス設けた共振回路は、トランス一次巻線に直列に外部にインダクタンス Ltを接続する。絶縁トランスの一次巻きn1、二次巻線n2は、トランスの関係式 V1=K×φ×F×n1の関係式を満足するn1を決定する。二次巻線数n2は、上記4)項の関係式を満足する値を決める。
【0047】
8)共振回路の共振コンデンサ容量 C0を、(2πF)2 = Lt C0の関係式で決定する。
【0048】
9)共振回路構成は、直列共振回路と並列共振回路の構成で運転方法は異なる。図5に直列共振回路の回路構成を示す。図6に並列共振回路の回路構成を示す。いずれの回路構成も、充電電流の最大供給周波数は共振周波数での運転になる。充電電流の電力調整は、直列共振回路では、運転周波数を高めることで充電電圧の低減を計る。また、並列共振回路では、運転周波数を低めることで充電電圧の低減を計る。
【0049】
上記各実施例に共通してこの発明の回路は、PFC回路、高周波インバータ回路、一次二次巻線を絶縁した共振トランス、絶縁トランスの二次側出力の整流回路で構成する。
【0050】
1)PFC回路
マルチ電源(単相100V、200V、三相200V)入力や入力電圧が変動しても、直流電圧 VDCを安定化させる役割と入力電流を正弦波電流にして高調波電流の発生を抑制する役割がある。三相、単相電源に対応させるために、PFC回路が2回路構成とした。単相電源に対応させるには、PFC回路は一つの回路で対応できる。
【0051】
2)高周波インバータ回路
図5、図6の回路例は、Hブリッジ型インバータで構成した。ハーフブリッジ型で構成することもある。図11に、ハーフブリッジ型の高周波インバータ回路を示す。スイッチに並列に転流コンデンサを設置した。インバータ出力容量は共振周波数を変動させて行った。スイッチロス低減のために転流コンデンサをスイッチ素子に並列に設置した。この転流コンデンサは無くても良い。容量制御は、高周波インバータの共振周波数を変動させル代わりに、回路の直流電圧を高めに設計して、PFC回路が発生する直流電圧 Vdcを変動させることでも出力電力を調整することもできる。しかし、この方法は出力電力調整範囲が狭い。
【0052】
3)絶縁型共振トランス
蓄電池回路と充電回路の絶縁のために絶縁型高周波トランスで回路を構成した。この絶縁型共振トランスは、下記2点の方法で構成することができる。一つの方法は、トランスの磁気回路のなかで、一次、二次巻線を、分離配置すると、一次と二次の巻線比を変えずに各々の巻数を変えることで、漏れインダクタンス Lt を有した共振型高周波トランスを作ることができる。他の方法は、トランスの磁気回路のなかで、一次、二次巻線を、重ね巻きして各巻線の結合係数が「1」に近い漏れインダクタンスの小さいトランスを作る。
一次巻線に直列にインダクタンスLtを有した別個のインダクタンスを接続することで、絶縁型共振トランスを構成することができる。この絶縁型共振トランスの一次側巻線に、直列に共振コンデンサC0を接続して直列共振回路を構成する。または、上記の絶縁型共振トランスの一次巻線に並列に、共振コンデンサC0を接続して並列共振回路を構成することもできる。
【0053】
4)絶縁トランス二次側の出力整流回路
蓄電池の充電回路は、絶縁型高周波トランスの二次側回路に、整流回路を設けた簡単な回路構成である。整流回路は、ブリッジ整流回路や両波整流回路で構成する。一般的な蓄電池の整流回路は、蓄電池の内部インピーダンスが小さいために、トランスの出力電圧の僅かな変動で、急峻な電流が流れる特性がある。それは整流器や半導体をオーバサイズにする。防止策に絶縁トランスと蓄電池の間に直列にインダクタンスなどの減流回路を設けている。しかし、本発明の充電回路は、絶縁型共振トランスが有している漏れインダクタンスと共振コンデンサにより、充電電流は正弦波状の充電回路を供給することができる。
そのために、整流回路の損失は小さく、高調波ノイズの少ない充電回路が構成できる特徴がある。
【符号の説明】
【0054】
A PFC回路
B ブリッジインバータ回路
C 共振トランス回路
Lt 共振絶縁トランスのインダクタンス
C0 共振コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFC回路、高周波インバータ回路、一次二次巻線を絶縁した共振トランス、絶縁トランス、絶縁トランスの二次側出力の整流回路とで構成される作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造において、
PFC回路(A)の一次側と二次側を絶縁した絶縁トランスで、各巻線間の漏れインダクタンスを大きくするために巻線配置した漏れリアクタンス型トランス、
または通常の絶縁トランスの一次側に漏れインダクタスに相当したリヤクトルを直列に接続構成した共振絶縁トランスを有し、
共振絶縁トランス(C)の一次側に、直列、または並列に共振用コンデンサを有し、
前記、絶縁トランス、または共振絶縁トランスの回路を駆動させるフルブリッジ型、またはハーフブリッジ型のインバータ装置(B)を有し、
該インバータ装置に、共振絶縁トランスに流れる電流と印加電圧の位相差を検出する手段を有し、
絶縁トランスの一次側、または二次側の電流を検出する手段を有し、
絶縁トランスの二次側に、ブリッジダイオード回路、または両波整流回路で構成して、整流出力を蓄電池に接続した回路を有する
ことを特徴とする作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路構造。
【請求項2】
蓄電池の充電に際し、
共振絶縁トランスの二次側の出力電圧を調整し、
蓄電池の端子電圧が設定電圧を超えない範囲では、充電電流を設定値に維持するように出力電圧を調整して充電電流制御し、また、蓄電池の端子電圧が設定上限値を超える場合は、充電電流制御をせずに、端子電圧が設定値に維持するように出力電圧制御し、
共振絶縁トランスの二次側の出力電圧は、共振周波数近辺で最大となるため、出力電圧の低減調整は、共振トランスに加える運転周波数をインバータ装置で可変調整し、
共振絶縁トランス回路の共振周波数は、共振絶縁トランスのインダクタンス(Lt)と共振コンデンサ(C0)の積で決まる固有値であるため、共振絶縁トランスの二次側の出力電圧の調整は、共振回路に加える周波数を可変することで行い、
共振絶縁トランスと共振コンデンサが直列接続した直列共振回路では、インバータ出力周波数を調整して、共振周波数で最大電圧を、発振周波数を高めることで出力電圧を低減させる方法で行い、
共振絶縁トランスと共振コンデンサが並列接続した並列共振回路では、インバータ出力周波数を調整して、共振周波数で最大電圧を、発振周波数を低めることで出力電圧を低減させる方法で行い、
共振回路の動作で印加電圧と電流との位相差は、零で一致した位相関係であるとし、
インバータの発振周波数は、発生周波数の電圧変化点、インバータの上アームから下アームにスイッチした時から、共振回路の電流検出器の出力が正電圧から負電圧に変化するまでの時間、即ち,電圧波形と電流波形の位相差を計測して調整し、その時間が一致していれば共振周波数の運転にし、インバータの運転は、電流位相が電圧位相より遅れた関係、または一致した位相関係で運転し、
そのため、直列共振回路では、共振周波数および、それより高い周波数で運転することで電圧調整を行い
並列共振回路では、共振周波数および、それより低い周波数で運転することで電圧調整を行う
ことを特徴とする作業車に搭載した蓄電池充電器の充電回路制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−234527(P2011−234527A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103269(P2010−103269)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(391018639)バブ日立工業株式会社 (38)
【出願人】(303044642)株式会社 サン・テクトロ (2)
【Fターム(参考)】