説明

作業車のエンジン制御装置

【課題】エンジン回転数が高回転領域にある場合にはドループ制御を行なうことで作業性を向上でき、低回転領域にある場合にはアイソクロナス制御を行なうことで騒音や燃料消費量を低減できる。そして、中回転領域にある場合にはドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことで作業性を向上できるとしたエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがドループ線Dlineで表されたエンジン回転数Nよりも高いときにはドループ制御を選択し、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数Nよりも低いときにはアイソクロナス制御を選択し、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N以上で、ドループ線Dlineで表されたエンジン回転数N以下であるときにはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車のエンジン制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車に搭載されたディーゼルエンジンの制御パターンとして、ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させるドループ制御と、ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とするアイソクロナス制御と、が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、オペレータがディーゼルエンジンの制御パターンをドループ制御又はアイソクロナス制御のいずれかに手動で切り換え可能としたエンジン制御装置や、作業車が走行状態であるか否かなどを判断して所定の制御パターンに自動的に切り換え可能としたエンジン制御装置が公知となっている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
ドループ制御は、ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させるため、オペレータはエンジン回転数の変化量によって該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の大きさを把握でき、負荷に応じた柔軟な作業が可能となる。しかし、ドループ制御は、あるエンジン回転数における最高トルク点を利用できる運転領域が限られているため、最高トルク点を利用する場合にはエンジン回転数を上昇させる必要があり、騒音や燃料消費量の悪化が問題となる場合があった。
【0005】
一方、アイソクロナス制御は、ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数が一定となるため、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加してもエンジン回転数は漸減せず、高いエンジン出力を確保することが可能となる。しかし、アイソクロナス制御は、エンジン回転数の変化量によって負荷の大きさを把握することができないために負荷に応じた運転操作が困難となり、特に旋回作業車などが作業をする際にオペレータが疲労を感じる場合があった。
【0006】
更に、旋回作業車などの作業車においては、ディーゼルエンジンが最大エンジントルクを発揮する運転状態で作業を行なう稼動パターンが多いため、ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加した際に該ディーゼルエンジンの運転状態が最大トルク点に収束するとした運転領域を拡大したいという要望もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−89111号公報
【特許文献2】特許第4199276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる問題を解決すべくなされたものであり、ディーゼルエンジンのエンジン回転数が高回転領域にある場合には、ドループ制御を行なうことで負荷に応じた運転操作を可能として作業性を向上でき、エンジン回転数が低回転領域にある場合には、アイソクロナス制御を行なうことでエンジン回転数の上昇に伴う騒音や燃料消費量を低減できる。そして、エンジン回転数が中回転領域にある場合には、ドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことでディーゼルエンジンの運転状態を最大トルク点に収束させて作業性を向上できるとしたエンジン制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、ドループ制御とアイソクロナス制御とドループ−アイソクロナス遷移制御のうち、いずれか一つの制御パターンを選択し、選択した制御パターンに対応する制御信号を作成してディーゼルエンジンの制御を行なう作業車のエンジン制御装置であって、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示す性能曲線図において、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が基準エンジン回転数よりも高く、且つ、前記ディーゼルエンジンに掛かる負荷が無負荷である場合の所定のアイドル点と前記基準エンジン回転数における最高トルク点とを結んだ直線により定義されるドループ線に対し、エンジン回転数が該ドループ線で表されたエンジン回転数よりも高いときにはドループ制御を選択し、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記基準エンジン回転数と等しく、且つ、前記ディーゼルエンジンに掛かる負荷が無負荷である場合のアイドル点と前記基準エンジン回転数における最高トルク点とを結んだ直線により定義されるアイソクロナス線に対し、エンジン回転数が該アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも低いときにはアイソクロナス制御を選択し、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数以上で、且つ、前記ドループ線で表されたエンジン回転数以下であるときにはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択する、としたものである。
【0011】
請求項2においては、請求項1に記載のエンジン制御装置において、前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高いときには、前記ドループ線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率と等しい比率で該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させる制御を行ない、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数と等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたものである。
【0012】
請求項3においては、請求項1に記載のエンジン制御装置において、前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高い若しくは等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたものである。
【0013】
請求項4においては、請求項1に記載のエンジン制御装置において、前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高いときには、該ディーゼルエンジンの運転状態に対応するエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率で該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させる制御を行ない、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数と等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたものである。
【0014】
請求項5においては、請求項4に記載のエンジン制御装置において、前記ディーゼルエンジンの運転状態に対応するエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率は、該ディーゼルエンジンのエンジン回転数と前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数との差が大きくなる程に前記ドループ線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率に近似させ、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数と前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数との差が小さくなる程に前記アイソクロナス線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率に近似させる、としたものである。
【0015】
請求項6においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置において、前記基準エンジン回転数は、前記ディーゼルエンジンの最大トルク点におけるエンジン回転数に等しい、としたものである。
【0016】
請求項7においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置において、前記基準エンジン回転数は、前記ディーゼルエンジンの最大トルク点におけるエンジン回転数よりも低い所定のエンジン回転数に等しい、としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンのエンジン回転数が高回転領域にある場合には、ドループ制御を行なうことで負荷に応じた運転操作を可能として作業性を向上でき、エンジン回転数が低回転領域にある場合には、アイソクロナス制御を行なうことでエンジン回転数の上昇に伴う騒音や燃料消費量を低減できる。そして、エンジン回転数が中回転領域にある場合には、ドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことでディーゼルエンジンの運転状態を基準エンジン回転数における最高トルク点に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加した場合に該ディーゼルエンジンの運転状態を基準エンジン回転数における最高トルク点に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加した場合に該ディーゼルエンジンの運転状態を基準エンジン回転数における最高トルク点に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加した場合に該ディーゼルエンジンの運転状態を基準エンジン回転数における最高トルク点に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、ドループ制御とアイソクロナス制御とを滑らかに変更することができるため、制御パターンの切り換えの際にオペレータに違和感を与えることを防ぐことが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンに掛かる負荷が増加した場合に該ディーゼルエンジンの運転状態を最大トルク点に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンの最大トルク点を含む広い範囲においてドループ制御を行なうことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るエンジン制御装置が搭載された旋回作業車の全体構成を示す図。
【図2】ディーゼルエンジンの制御システムを示すブロック図。
【図3】ディーゼルエンジンの性能曲線図。
【図4】(A)ドループ制御を行なった場合の制御態様を示す性能曲線図。(B)アイソクロナス制御を行なった場合の制御態様を示す性能曲線図。
【図5】本発明の第一実施形態に係るエンジン制御装置の制御態様を示す性能曲線図。
【図6】本発明の第二実施形態に係るエンジン制御装置の制御態様を示す性能曲線図。
【図7】本発明の第三実施形態に係るエンジン制御装置の制御態様を示す性能曲線図。
【図8】本発明の第四実施形態に係るエンジン制御装置の制御態様を示す性能曲線図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係るエンジン制御装置50が搭載された旋回作業車100の全体構成について簡単に説明する。但し、エンジン制御装置50は、旋回作業車100だけでなく、農業作業車やその他の作業車に搭載することも可能である。
【0027】
図1に示すように、旋回作業車100は、主に走行装置1と、作業装置2と、旋回装置3と、から構成される。
【0028】
走行装置1は、旋回作業車100を走行させるものである。走行装置1は、左右一対のクローラ11・11や油圧モータ12・12などから構成され、該油圧モータ12・12が左右のクローラ11・11を駆動することによって旋回作業車100の前後進を可能としている。また、油圧モータ12・12が左右のクローラ11・11を独立して駆動することによって旋回作業車100の旋回を可能としている。
【0029】
作業装置2は、土砂などの掘削作業を行なうものである。作業装置2は、ブーム21やアーム22、バケット23などから構成され、これらを独立して駆動することによって掘削作業を可能としている。
【0030】
具体的に説明すると、ブーム21は、その一端部が旋回装置3の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ21aによって回動される。また、アーム22は、その一端部がブーム21の他端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ22aによって回動される。そして、バケット23は、その一端部がアーム22の他端部に支持されて、伸縮自在に可動するバケットシリンダ23aによって回動される。つまり、作業装置2は、バケット23を用いて土砂などの掘削を行なう多関節構造を構成している。
【0031】
なお、本旋回作業車100は、バケット23を取り付けて掘削作業を行なう仕様としているが、例えば油圧ブレーカーを取り付けて破砕作業を行なう仕様であっても良く、これに限定するものではない。
【0032】
旋回装置3は、作業装置2を旋回させるものである。旋回装置3は、旋回台31や油圧モータ32などから構成され、該油圧モータ32が旋回台31を駆動することによって作業装置2を旋回させる。また、旋回装置3には、操縦部33やディーゼルエンジン34が配置されている。
【0033】
具体的に説明すると、操縦部33には、操縦席331や操作具332、走行用操作具333などが備えられており、オペレータは、操縦席331に着座して操作具332や走行用操作具333などを操作することによって各油圧モータ12・32及び各シリンダ21a・22a・23aの制御を行なう。また、オペレータは、エンジン回転数設定手段334を操作することによってディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを設定する。こうして、オペレータは、旋回作業車100の操縦を行なうのである。
【0034】
なお、図2に示すように、エンジン回転数設定手段334とディーゼルエンジン34とは、エンジン制御装置50を介して電気的に接続されており、エンジン制御装置50は、エンジン回転数設定手段334からの電気信号に基づいて制御信号を作成し、作成した制御信号をディーゼルエンジン34に出力する。つまり、エンジン制御装置50は、オペレータによるエンジン回転数設定手段334の操作に基づいてディーゼルエンジン34の制御を行なうのである。
【0035】
以上が旋回作業車100の全体構成であるが、以下にディーゼルエンジン34の制御態様について説明する。
【0036】
まず、図3を用いて、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数NとエンジントルクTとの関係を示した性能曲線図50Mについて説明する。
【0037】
図3に示すように、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nは、ローアイドルエンジン回転数Nminからハイアイドルエンジン回転数Nmaxまで任意に変更可能とされる。そして、ディーゼルエンジン34は、エンジン回転数N毎に設定された最高トルク点を結んで成るトルクカーブTcurveに囲まれた範囲内で自在に運転可能とされる。
【0038】
なお、ディーゼルエンジン34のエンジントルクTは、エンジン回転数Nmにおける最高トルク点で最大となる(最大トルク点Tm)。換言すると、ディーゼルエンジン34は、エンジン回転数Nmにおける最高トルク点で最大エンジントルクTmaxとなるようにトルクカーブTcurveが形成されているのである。そして、ディーゼルエンジン34のエンジントルクTが最大エンジントルクTmaxとなるエンジン回転数Nmを基準エンジン回転数Nbと定義する。
【0039】
次に、図4(A)、図4(B)を用いて、ドループ制御を行なった場合の制御態様ならびにアイソクロナス制御を行なった場合の制御態様について説明する。
【0040】
図4(A)に示すように、ドループ制御は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数Nを漸減又は漸増させる制御パターンである。ここで、ディーゼルエンジン34がエンジン回転数NxにおけるエンジントルクTxで運転している場合(図中X1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸減させつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Xd2点参照。)。
【0041】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸増させつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Xd3点参照。)。
【0042】
このようにドループ制御においては、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数Nを漸減又は漸増させるため、オペレータは、エンジン回転数Nの変化量からディーゼルエンジン34に掛かる負荷の大きさを把握でき、これに応じた運転操作をすることが可能となる。つまり、エンジン制御装置50は、ドループ制御を行なうことによって旋回作業車100の作業性を向上させることを可能としている。
【0043】
一方、図4(B)に示すように、アイソクロナス制御は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数Nを一定とする制御パターンである。ここで、ディーゼルエンジン34がエンジン回転数NxにおけるエンジントルクTxで運転している場合(図中X1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを一定に維持しつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Xa2点参照。)。
【0044】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを一定に維持しつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Xa3点参照。)。
【0045】
このようにアイソクロナス制御においては、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数Nを一定とすることができるため、オペレータは、ドループ制御の如くあるエンジン回転数Nにおける最高トルク点を利用するために低負荷時のエンジン回転数Nを上昇させる必要がない。つまり、エンジン制御装置50は、アイソクロナス制御を行なうことによってエンジン回転数Nの上昇に起因する騒音や燃料消費量の低減を図ることを可能としている。
【0046】
以上がディーゼルエンジン34の制御パターンとして、ドループ制御ならびにアイソクロナス制御を行なった場合の制御態様であるが、次に、本発明の第一実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様について詳細に説明する。
【0047】
図5に示すように、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nが基準エンジン回転数Nb(Nm)よりも高く、且つ、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が無負荷である場合の所定のアイドル点Id1と基準エンジン回転数Nb(Nm)における最高トルク点、即ち最大トルク点Tmとを結んだ直線により定義されるドループ線Dlineに対し、エンジン回転数Nが該ドループ線Dlineで表されたエンジン回転数Nよりも高いときにはドループ制御を選択する。
【0048】
つまり、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34の運転状態が高回転領域(H領域)にある場合にはドループ制御を選択し、ドループ制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なうとしている。
【0049】
なお、所定のアイドル点Id1は、ディーゼルエンジン34の運転フィーリングなどをパラメータとして試験などによって定められた値であり、その具体的な数値について限定するものではない。
【0050】
これにより、例えば作業装置2を用いて掘削作業をする際などのディーゼルエンジン34のエンジン回転数が高回転領域(H領域)にある場合には、オペレータは掘削作業時におけるエンジン回転数Nの変化からディーゼルエンジン34に掛かる負荷の大きさを把握することが可能となる。これにより、オペレータは、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷に応じた運転操作をすることが容易となり、繊細な掘削作業を行なうことができるのである。こうして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、旋回作業車100の作業性を向上させているのである。
【0051】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nが基準エンジン回転数Nb(Nm)と等しく、且つ、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が無負荷である場合のアイドル点Id2と基準エンジン回転数Nb(Nm)における最高トルク点、即ち、最大トルク点Tmとを結んだ直線により定義されるアイソクロナス線Alineに対し、エンジン回転数Nが該アイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数Nよりも低いときにはアイソクロナス制御を選択する。
【0052】
つまり、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34の運転状態が低回転領域(L領域)にある場合にはアイソクロナス制御を選択し、アイソクロナス制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なうとしている。
【0053】
これにより、例えば旋回作業車100が走行装置1を用いて走行をする際などのディーゼルエンジン34のエンジン回転数が低回転領域(L領域)にある場合には、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に関わらずエンジン回転数Nを一定とすることが可能となる。これにより、オペレータは、ドループ制御の如くあるエンジン回転数Nにおける最高トルク点を利用するために低負荷時のエンジン回転数Nを上昇させることが不要となる。こうして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、旋回作業車100の騒音や燃料消費量を低減させているのである。
【0054】
更に、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))以上で、且つ、ドループ線Dlineで表されたエンジン回転数N以下であるときにはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択する。
【0055】
つまり、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合にはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択し、ドループ−アイソクロナス遷移制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なうとしている。
【0056】
ここで、本実施形態に係るエンジン制御装置50のドループ−アイソクロナス遷移制御について詳細に説明する。
【0057】
ドループ−アイソクロナス遷移制御は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いときには、ドループ線Dlineが示すエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率と等しい比率で該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数Nを漸減又は漸増させる。
【0058】
また、ドループ−アイソクロナス遷移制御は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))と等しいときには、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に関わらずエンジン回転数Nを一定とする。
【0059】
具体的には、ディーゼルエンジン34がアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときにはドループ線Dlineと傾きが等しくなるように該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸減させつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Yd2点参照。)。
【0060】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときにはドループ線Dlineと傾きが等しくなるように該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸増させつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Yd3点参照。)。
【0061】
このような制御構成により、例えばディーゼルエンジン34がエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)に該ディーゼルエンジン34に大きな負荷が掛かると、ディーゼルエンジン34の運転状態は、エンジン回転数Nが漸減していくとともにエンジントルクTが増大していき、点Yd2を通過して点Yd4に至ることとなる。
【0062】
その後、ディーゼルエンジン34の運転状態は、そのエンジン回転数Nを基準エンジン回転数Nb(Nm)で一定に維持しながらエンジントルクTが増大していき、最大トルク点Tmに到達するのである。
【0063】
これにより、例えば作業装置2を用いて掘削作業をする際などにディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合でも、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加するとその運転状態を最大トルク点Tmに収束させることが可能となる。これにより、オペレータは、ディーゼルエンジン34の最大トルク点Tmを利用して掘削作業を行なうことが容易となり、負荷が大きい掘削作業を簡単に行なうことができるのである。こうして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、負荷が大きい掘削作業を行なう際の作業性を向上させているのである。
【0064】
以上のように、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nが高回転領域(H領域)にある場合には、ドループ制御を行なうことで負荷に応じた運転操作を可能として作業性を向上でき、エンジン回転数Nが低回転領域(L領域)にある場合には、アイソクロナス制御を行なうことでエンジン回転数Nの上昇に伴う騒音や燃料消費量を低減できる。そして、エンジン回転数Nが中回転領域(M領域)にある場合には、ドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことでディーゼルエンジン34の運転状態を基準エンジン回転数Nb(Nm)における最高トルク点(本実施形態においては最大トルク点Tm)に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となるのである。
【0065】
以上が本発明の第一実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様であるが、次に、本発明の第二実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様について説明する。但し、第一実施形態の制御構成と同様の部分については同一の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0066】
図6に示すように、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が高回転領域(H領域)にある場合にはドループ制御を選択し、ドループ制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0067】
また、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が低回転領域(L領域)にある場合にはアイソクロナス制御を選択し、アイソクロナス制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0068】
そして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合にはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択し、ドループ−アイソクロナス遷移制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0069】
ここで、本実施形態に係るエンジン制御装置50のドループ−アイソクロナス遷移制御について詳細に説明する。
【0070】
ドループ−アイソクロナス遷移制御は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いとき若しくは等しいときには、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数Nを一定とする。
【0071】
具体的には、ディーゼルエンジン34がアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを一定に維持しつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Ya2点参照。)。
【0072】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときには該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを一定に維持しつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Ya3点参照。)。
【0073】
このような制御構成により、例えばディーゼルエンジン34がエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)に該ディーゼルエンジン34に大きな負荷が掛かると、ディーゼルエンジン34の運転状態は、エンジン回転数Nが一定に維持しつつもエンジントルクTが増大していき、点Ya2を通過して点Ya4に至ることとなる。
【0074】
その後、ディーゼルエンジン34の運転状態は、ドループ線Dlineに従ってそのエンジン回転数Nが漸減していくとともにエンジントルクTが増大していき、最大トルク点Tmに到達するのである。
【0075】
これにより、例えば作業装置2を用いて掘削作業をする際などにディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合でも、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加するとその運転状態を最大トルク点Tmに収束させることが可能となる。これにより、オペレータは、ディーゼルエンジン34の最大トルク点Tmを利用して掘削作業を行なうことが容易となり、負荷が大きい掘削作業を簡単に行なうことができるのである。こうして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、負荷が大きい掘削作業を行なう際の作業性を向上させているのである。
【0076】
以上のように、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nが高回転領域(H領域)にある場合には、ドループ制御を行なうことで負荷に応じた運転操作を可能として作業性を向上でき、エンジン回転数Nが低回転領域(L領域)にある場合には、アイソクロナス制御を行なうことでエンジン回転数Nの上昇に伴う騒音や燃料消費量を低減できる。そして、エンジン回転数Nが中回転領域(M領域)にある場合には、ドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことでディーゼルエンジン34の運転状態を基準エンジン回転数Nb(Nm)における最高トルク点(本実施形態においては最大トルク点Tm)に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となるのである。
【0077】
以上が本発明の第二実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様であるが、次に、本発明の第三実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様について説明する。但し、第一実施形態の制御構成と同様の部分については同一の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0078】
図7に示すように、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態ならびに第二実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が高回転領域(H領域)にある場合にはドループ制御を選択し、ドループ制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0079】
また、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態ならびに第二実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が低回転領域(L領域)にある場合にはアイソクロナス制御を選択し、アイソクロナス制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0080】
そして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態ならびに第二実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合にはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択し、ドループ−アイソクロナス遷移制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0081】
ここで、本実施形態に係るエンジン制御装置50のドループ−アイソクロナス遷移制御について詳細に説明する。
【0082】
ドループ−アイソクロナス遷移制御は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いときには、該ディーゼルエンジン34の運転状態に対応するエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率で該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数Nを漸減又は漸増させる制御を行なうとしている。
【0083】
本実施形態においては、ディーゼルエンジン34の運転状態に対応するエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率は、該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nとアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))との差が大きくなる程に、ドループ線Dlineが示すエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率に近似させる。
【0084】
また、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nとアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))との差が小さくなる程に、アイソクロナス線Alineが示すエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率に近似させる。
【0085】
そして、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nがアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))と等しいときには、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数Nを一定とする。
【0086】
具体的には、ディーゼルエンジン34がアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高いエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときにはエンジン回転数NyとエンジントルクTyに対応する所定の比率で該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸減させつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Yd2点参照。)。
【0087】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときにはエンジン回転数NyとエンジントルクTyに対応する所定の比率で該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸増させつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Yd3点参照。)。
【0088】
このような制御構成により、例えばディーゼルエンジン34がエンジン回転数NyにおけるエンジントルクTyで運転している場合(図中Y1点参照。)に該ディーゼルエンジン34に大きな負荷が掛かると、ディーゼルエンジン34の運転状態は、エンジン回転数Nが漸減していくとともにエンジントルクTが増大していき、点Yd2を通過して最大トルク点Tmに到達することとなる。
【0089】
更に、ディーゼルエンジン34がアイソクロナス線Alineで表されたエンジン回転数N(基準エンジン回転数Nb(Nm))よりも高くてエンジン回転数Nyよりも低いエンジン回転数NzにおけるエンジントルクTzで運転している場合(図中Z1点参照。)を想定すると、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加したときにはエンジン回転数NzとエンジントルクTzに対応する所定の比率で該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸減させつつ、エンジントルクTを増大させる(図中Zd2点参照。)。
【0090】
また、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が低減したときにはエンジン回転数NzとエンジントルクTzに対応する所定の比率で該ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nを漸増させつつ、エンジントルクTを減少させる(図中Zd3点参照。)。
【0091】
このときのディーゼルエンジン34のエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率は、よりアイソクロナス線Alineが示すエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率に近似したものとなる。つまり、図7に示すように、エンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率を示す傾きがより急峻となるのである。
【0092】
そして、ディーゼルエンジン34がエンジン回転数NzにおけるエンジントルクTzで運転している場合(図中Z1点参照。)に該ディーゼルエンジン34に大きな負荷が掛かると、ディーゼルエンジン34の運転状態は、エンジン回転数Nが漸減していくとともにエンジントルクTが増大していき、点Zd2を通過して最大トルク点Tmに到達することとなる。このように、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34に大きな負荷が掛かると、最大トルク点Tmに到達するようにエンジン回転数NとエンジントルクTの変化の比率を定めているのである。
【0093】
これにより、例えば作業装置2を用いて掘削作業をする場合にディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にあるときには、該ディーゼルエンジン34に掛かる負荷が増加するとその運転状態を最大トルク点Tmに収束させることが可能となる。これにより、オペレータは、ディーゼルエンジン34の最大トルク点Tmを利用して掘削作業を行なうことが容易となり、負荷が大きい掘削作業を簡単に行なうことができるのである。こうして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、負荷が大きい掘削作業を行なう際の作業性を向上させているのである。
【0094】
以上のように、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34のエンジン回転数Nが高回転領域(H領域)にある場合には、ドループ制御を行なうことで負荷に応じた運転操作を可能として作業性を向上でき、エンジン回転数Nが低回転領域(L領域)にある場合には、アイソクロナス制御を行なうことでエンジン回転数Nの上昇に伴う騒音や燃料消費量を低減できる。そして、エンジン回転数Nが中回転領域(M領域)にある場合には、ドループ−アイソクロナス遷移制御を行なうことでディーゼルエンジン34の運転状態を基準エンジン回転数Nb(Nm)における最高トルク点(本実施形態においては最大トルク点Tm)に収束させることができ、作業性の向上を図ることが可能となるのである。
【0095】
また、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、例えばディーゼルエンジン34の運転状態が高回転領域(H領域)から低回転領域(L領域)又は低回転領域(L領域)から高回転領域(H領域)へ変化した場合であっても、ドループ制御とアイソクロナス制御とを滑らかに切り換えることができるため、制御パターンの切り換えの際にオペレータに違和感を与えることを防ぐことが可能となる。
【0096】
以上が本発明の第三実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様であるが、次に、本発明の第四実施形態に係るエンジン制御装置50の制御態様について説明する。但し、第一実施形態の制御構成と同様の部分については同一の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0097】
図8に示すように、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態ならびに第三実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が高回転領域(H領域)にある場合にはドループ制御を選択し、ドループ制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0098】
また、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態、第二実施形態ならびに第三実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が低回転領域(L領域)にある場合にはアイソクロナス制御を選択し、アイソクロナス制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0099】
そして、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態、第二実施形態ならびに第三実施形態と同様にディーゼルエンジン34の運転状態が中回転領域(M領域)にある場合にはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択し、ドループ−アイソクロナス遷移制御に対応する制御信号を作成、出力することでディーゼルエンジン34の制御を行なう。
【0100】
しかし、本実施形態に係るエンジン制御装置50は、第一実施形態、第二実施形態ならびに第三実施形態の制御態様と比較して、ディーゼルエンジン34の最大トルク点Tmにおけるエンジン回転数Nmよりも低い所定のエンジン回転数Nnを基準エンジン回転数Nbと定義していることが相違する。
【0101】
なお、所定のエンジン回転数Nnは、ディーゼルエンジン34の運転フィーリングなどをパラメータとして試験などによって定められた値であり、その具体的な数値について限定するものではない。
【0102】
こうすることで、エンジン制御装置50は、ディーゼルエンジン34の最大トルク点Tmを含む広い範囲においてドループ制御を行なうことができ、オペレータの疲労を伴うことなく、作業性の向上を図ることを可能としている。
【符号の説明】
【0103】
1 走行装置
2 作業装置
3 旋回装置
34 ディーゼルエンジン
50 エンジン制御装置
50M 性能曲線図
100 旋回作業車
Aline アイソクロナス線
Dline ドループ線
Id1 アイドル点
Id2 アイドル点
N エンジン回転数
Nb 基準エンジン回転数
Nmax ハイアイドルエンジン回転数
Nmin ローアイドルエンジン回転数
T エンジントルク
Tm 最大トルク点
Tmax 最大エンジントルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドループ制御とアイソクロナス制御とドループ−アイソクロナス遷移制御のうち、いずれか一つの制御パターンを選択し、選択した制御パターンに対応する制御信号を作成してディーゼルエンジンの制御を行なう作業車のエンジン制御装置であって、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示す性能曲線図において、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が基準エンジン回転数よりも高く、且つ、前記ディーゼルエンジンに掛かる負荷が無負荷である場合の所定のアイドル点と前記基準エンジン回転数における最高トルク点とを結んだ直線により定義されるドループ線に対し、エンジン回転数が該ドループ線で表されたエンジン回転数よりも高いときにはドループ制御を選択し、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記基準エンジン回転数と等しく、且つ、前記ディーゼルエンジンに掛かる負荷が無負荷である場合のアイドル点と前記基準エンジン回転数における最高トルク点とを結んだ直線により定義されるアイソクロナス線に対し、エンジン回転数が該アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも低いときにはアイソクロナス制御を選択し、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数以上で、且つ、前記ドループ線で表されたエンジン回転数以下であるときにはドループ−アイソクロナス遷移制御を選択する、としたことを特徴とする作業車のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高いときには、前記ドループ線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率と等しい比率で該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させる制御を行ない、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数と等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたことを特徴とする請求項1に記載の作業車のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高い若しくは等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたことを特徴とする請求項1に記載の作業車のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記ドループ−アイソクロナス遷移制御は、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数よりも高いときには、該ディーゼルエンジンの運転状態に対応するエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率で該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減に応じてエンジン回転数を漸減又は漸増させる制御を行ない、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数と等しいときには、該ディーゼルエンジンに掛かる負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定とする制御を行なう、としたことを特徴とする請求項1に記載の作業車のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記ディーゼルエンジンの運転状態に対応するエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率は、該ディーゼルエンジンのエンジン回転数と前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数との差が大きくなる程に前記ドループ線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率に近似させ、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数と前記アイソクロナス線で表されたエンジン回転数との差が小さくなる程に前記アイソクロナス線が示すエンジン回転数とエンジントルクの変化の比率に近似させる、としたことを特徴とする請求項4に記載の作業車のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記基準エンジン回転数は、前記ディーゼルエンジンの最大トルク点におけるエンジン回転数に等しい、としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業車のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記基準エンジン回転数は、前記ディーゼルエンジンの最大トルク点におけるエンジン回転数よりも低い所定のエンジン回転数に等しい、としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業車のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−196226(P2011−196226A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62732(P2010−62732)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】