説明

作業車のエンジン支持装置

【課題】傾斜した姿勢、または横倒し姿勢で支持されたエンジンの振動を簡単な構造で効果的に減衰させて、エンジン搭載フレーム側に伝えられる振動を軽減し易すくする。
【解決手段】クランクケース21A側に対してシリンダヘッド21B側のシリンダ筒軸線Lが傾斜した姿勢、または横倒し姿勢でエンジン21を支持させ、クランクケース21A側とシリンダヘッド21B側とのうちの一方側に対しては直接連結され、他方側に対してはベース側防振材54を介して連結されたエンジンベース部材53を備え、エンジンベース部材53をクランクケース21A側での連結箇所とシリンダヘッド21B側での連結箇所との間に位置する部位でエンジン搭載フレーム10Fに連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース側に対してシリンダヘッド側のシリンダ筒軸線が傾斜した姿勢、または横倒し姿勢でエンジンを支持させてある作業車のエンジン支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように作業車のエンジン支持装置としては、次のような構造のものが知られている。すなわち、クランクケース側に対してシリンダヘッド側のシリンダ筒軸線が後方側へ傾倒した後傾姿勢でエンジンが配設され、そのエンジンのクランクケース側をエンジン搭載フレームに対して防振ゴムを介して支持させ、シリンダヘッド側を、エンジン搭載フレームに固定されているミッションケースの上部側に対して左右一対の防振ゴムを介して支持させてある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−203355号公報(段落〔0019〕、〔0020〕、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構造のように、エンジンを後傾姿勢でエンジン搭載フレームに支持させることにより、エンジンの対地高さを低くして重心を安定化させ易い点で有用なものである。しかしながら、このようにエンジンを傾斜させた姿勢で支持する構造や、横倒し姿勢で支持する構造のものでは、クランクケース側に比べて比較的大きな振動が発生し易いところのシリンダヘッド側での振動を、防振ゴムによる防振作用だけでは十分に減衰し切れず、エンジン搭載フレームに大きな振動が伝達される虞があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、傾斜した姿勢、または横倒し姿勢で支持されたエンジンの振動を簡単な構造で効果的に減衰させて、エンジン搭載フレーム側に伝えられる振動を軽減し易い作業車のエンジン支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0007】
〔解決手段1〕
解決手段1にかかる発明では、クランクケース側に対してシリンダヘッド側のシリンダ筒軸線が傾斜した姿勢、または横倒し姿勢でエンジンを支持させてある作業車のエンジン支持装置であって、
前記クランクケース側と前記シリンダヘッド側とのうちの一方側に対しては直接連結され、他方側に対してはベース側防振材を介して連結されたエンジンベース部材を備え、
前記エンジンベース部材を前記クランクケース側での連結箇所とシリンダヘッド側での連結箇所との間に位置する部位でエンジン搭載フレームに連結してあることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる発明によると、エンジンをエンジンベース部材に搭載して、そのエンジンベース部材を介してエンジン搭載フレームに連結している。
つまり、エンジンベース部材は、エンジンに対してはクランクケース側とシリンダヘッド側との夫々で連結されているが、エンジン搭載フレームに対しては、前記クランクケース側でも前記シリンダヘッド側でもなく、それらの連結箇所同士の間に位置する部位で連結されている。そのため、エンジンとエンジンベース部材との連結箇所に伝えられる振動は、一旦エンジンベース部材に伝えられてから、エンジンベース部材とエンジン搭載フレームとの連結箇所へ伝達されることになる。
これによって、エンジン側に対する連結箇所とエンジン搭載フレーム側に対する連結箇所との位置が異なる状態で連結されたエンジンベース部材が、エンジンとの連結箇所に伝達された振動を軽減しながら別の位置に存在するエンジン搭載フレームとの連結箇所に振動を伝達するので、最終的に振動が伝達されるエンジン搭載フレームへの伝達振動は、エンジン側の振動がある程度軽減された状態となる。
【0009】
また、エンジンとエンジンベース部材との連結箇所のうち、一方側では直接に連結され、他方側ではベース側防振材を介して連結されているので、前記エンジンベース部材とエンジン搭載フレームとの連結箇所を、前記エンジンと直接連結された側へ近づけて設定した場合と、ベース側防振材を介して連結した側へ近づけて設定した場合とで、振動吸収の度合いに変化を持たせることができる。そのため、所要の振動吸収形態に合うようにエンジンベース部材とエンジン搭載フレームとの連結箇所を設定すれば、より効果的な振動吸収を行い易くなる。
【0010】
さらにまた、エンジンとエンジンベース部材との連結箇所のうち、直接に連結された箇所ではエンジンとエンジンベース部材との間における相対的な水平方向での位置規制を行い易く、ベース側防振材を介して連結された箇所では、エンジン側の振動が緩和されてエンジンベース部材に伝達されるので、このことによってもエンジン側の振動を軽減し易いものであり、ある程度の水平方向での位置規制を働かせながらの振動吸収を効果的に行い易いものである。
【0011】
したがって、エンジンとエンジンベース部材との連結箇所で、直接的な連結とベース側防振材を介しての連結構造を用い、エンジンベース部材とエンジン搭載フレームとの間における連結箇所を、エンジンとエンジンベース部材との連結箇所同士の間に設定するという簡単な構造により、効果的な防振を行える利点がある。
【0012】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記エンジンベース部材は、前記クランクケース側に対して直接連結され、前記シリンダヘッド側に対して前記ベース側防振材を介して連結されているということである。
【0013】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる発明によると、エンジンベース部材がクランクケース側では直接連結され、シリンダヘッド側ではベース側防振材を介して連結されているので、クランクケース側に比べて大きな振動を発生する可能性があるシリンダヘッド側での防振をより効果的に行い易いという利点がある。
【0014】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記エンジンベース部材は、前記ベース側防振材とは別のフレーム側防振材を介してエンジン搭載フレームに連結されているということである。
【0015】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3にかかる発明によると、エンジンベース部材は、エンジン搭載フレームに対してフレーム側防振材を介して支持された状態で、エンジンを直接連結した箇所とベース側防振材を介して連結した箇所とで支持している。
その結果、エンジンで発生した振動は、クランクケース側での連結箇所とシリンダヘッド側での連結箇所との間に位置する前記フレーム側防振材で支持された箇所近くを揺動中心とするエンジンベース部材の揺動運動や、前記エンジンを直接連結した箇所を揺動中心とするエンジンベース部材の揺動運動を伴う振動としてフレーム側防振材に伝えられ、この振動がフレーム側防振材によって減衰される。
これによって、エンジンの振動が、エンジンベース部材に対する連結位置が互いに異なるベース側防振材とフレーム側防振材とを用いたことと、エンジンベース部材そのものが揺動可能な構造であることとを有効利用して、効果的に抑制し得る利点がある。
【0016】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記フレーム側防振材は、前記エンジンベース部材における前記クランクケース側との連結箇所よりも前記シリンダヘッド側での連結箇所に近い側に位置するように配設されていることである。
【0017】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4にかかる発明によると、フレーム側防振材が、エンジンベース部材におけるクランクケース側での連結箇所よりもシリンダヘッド側での連結箇所に近い側に位置していることで、比較的大きな振動が発生し易いシリンダヘッド側での振動に対して、フレーム側防振材による振動吸収作用を効果的に働かせてエンジン搭載フレーム側への振動伝達の抑制を確実に行い易いという利点がある。
【0018】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記エンジンベース部材から水平方向で離れた位置の前記エンジン搭載フレームに、前記フレーム側防振材とは別のフレーム側防振材を介して、前記エンジンのクランクケース側の、前記エンジンベース部材が連結された箇所とは別の部位を支持させたことである。
【0019】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5にかかる発明によると、エンジンベース部材が連結されたフレーム側防振材とは別のフレーム側防振材を介して、エンジンのクランクケース側をエンジン搭載フレームに支持させることによって、エンジンのクランクケース側の振動が抑制されるので、エンジンベース部材に作用するエンジンの振動も軽減されて、より一層良好な振動抑制を行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の前部を示す一部切り欠き側面図である。
【図3】原動部を示す平面図である。
【図4】エンジン支持装置を示す側面図である。
【図5】エンジン支持装置を示す平面図である。
【図6】エンジンベース部材を示し、(a)は平面図、(b)は図6(a)におけるるVIb-VIb線矢視図、(c)は図6(a)におけるるVIc-VIc線矢視図である。
【図7】別実施形態における乗用型田植機の前部を示す平面図である。
【図8】別実施形態における燃料タンクの取付箇所を示す平面図である。
【図9】別実施形態における補助燃料タンクを示す説明図である。
【図10】別実施形態における補助燃料タンクの使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、左右一対の操向操作自在な前車輪11、及び、左右一対の後車輪12を車体フレーム10の下方に配備した走行機体1を備え、その走行機体1の前部に、ボンネット20に内装されたエンジン21を搭載した原動部2を備え、原動部2の後方側で走行機体1の前後方向中央部に、ステアリングハンドル33及び運転座席31を有した運転部3を備え、走行機体1の後部にリフトシリンダ13を有したリンク機構14を介して苗植付装置4を連結してある。
【0022】
苗植付装置4は6条植型式に構成されており、3個の伝動ケース41を備え、各伝動ケース41の後部の右及び左の横側部に回転駆動自在に支持された植付ケース42を備えている。さらに植付ケース42の両端に備えられた一対の植付アーム43、接地フロート44、及び苗が載置される苗のせ台40等を備えている。これにより、苗のせ台40が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース42が回転駆動され、苗のせ台40の下部から植付アーム43が交互に苗を取り出して田面に植え付けるように構成されている。
【0023】
運転部3における運転部フロア30の後方側に運転座席31が備えられ、運転座席31の後側に施肥装置47の肥料貯留用ホッパー47a、繰り出し機構47b、及び肥料搬送風を発生するブロア47cが備えられている。前記繰り出し機構47bと接地フロート44に設けた作溝器48とに亘って接続されたホース48aを介して、前記繰り出し機構47bから繰り出された肥料がブロア47cの送風によりホース48aを通って作溝器48に搬送され、作溝器48で形成された田面の施肥溝に供給される。
【0024】
図1及び図3に示すように、運転部フロア30の前方には、エンジン21を覆うボンネット20が備えられており、ボンネット20の右及び左の横側部には、運転部フロア30とほぼ同一平面でつながる右及び左の乗降用ステップ30aが備えられていて、機体前方側からも乗り降り可能に構成されている。
走行機体1の前部側で、前記ボンネット20の横外側方箇所には、乗降用ステップ30aを挟んでボンネット20と対向する箇所に予備苗のせ台15が装備されている。
【0025】
ボンネット20の後部に操縦パネル部24が連設されていて、その操縦パネル部24を貫いて上方側へステアリングポスト32が延出され、その上端にステアリングハンドル33が備えられており、ステアリングハンドル33の左の横側部に、主変速レバー34が備えられている。操縦部パネル24の後面側に副変速レバー35が備えられている。
【0026】
〔原動部の構造〕
図2〜図4に示すように、前記原動部2では、ボンネット20の内部にエンジン21、及び前記主変速レバー34によって中立位置、前進の高速側及び後進の高速側に無段階に変速自在に構成された静油圧式無段変速装置22が装備されている。その静油圧式無段変速装置22の機体中央側の横側部に、静油圧式無段変速装置22の変速動力が入力されるギヤ変速式の副変速装置(図示せず)を内装したミッションケース23が操縦パネル部24の下方側に配設されていて、副変速レバー35の変速操作にともなって、副変速装置が低速の植付走行位置、高速の路上走行位置、及び畦越え用の超低速位置の3位置に切り換えられるように構成してある。
【0027】
前記エンジン21から静油圧式無段変速装置22へは、エンジン21の出力軸21aの軸端に設けた出力プーリ21bと、静油圧式無段変速装置22の入力軸22aに取り付けられた入力プーリ22bとに亘って掛張された伝動ベルト25を介してエンジン21の回転動力が伝達されるように構成してある。
この静油圧式無段変速装置22に伝達されたエンジン動力がミッションケース23に入力され、ミッションケース23から図示しない伝動機構を介して、前車輪11、後車輪12、及び苗植付装置4等に駆動力が伝達されるように構成してある。
【0028】
前記ミッションケース23の上部に前記ステアリングポスト32が立設され、このステアリングポスト32の上下方向の中間部から前方側へ向けて延出された支持アーム32aに燃料タンク26が支持されている。
【0029】
ボンネット20内に配設されたエンジン21は、クランクケース21Aに対してシリンダヘッド21Bが後方側に位置する後傾姿勢で、車体フレーム10の前部側を構成するエンジン搭載フレーム10Fに対して取り付けられている。
つまり、クランクケース21Aから延出される出力軸21aの軸線が機体の左右方向に向く姿勢で、シリンダヘッド21Bが存在するシリンダ筒軸線Lが前方下方から後方上方に向かう後傾姿勢で、エンジン支持装置5を介してエンジン搭載フレーム10Fに取り付けてある。
このエンジン搭載フレーム10Fは、機体前後方向に沿う左右一対の前後向きフレーム16と、その前後向きフレーム16の前端側でエンジン21の前方側に位置して左右横方向に沿って架設された前横向きフレーム17と、前記エンジン21の後方側に位置して左右の前後向きフレーム16にわたって架設された後横向きフレーム18とを備えて平面視矩形状に形成されている(図5参照)。
【0030】
前記エンジン21のシリンダヘッド21Bに設けてある排気マニフォールド21cから導出された排気管21dは、図3に示すように前記伝動ベルト25の下側を通って、左側の運転部ステップ30aの下方側に延出され、この運転部ステップ30aの下方側で長手方向を前後方向に沿わせて配設されているマフラー27に接続してある。
【0031】
〔エンジン支持装置〕
前記エンジン支持装置5は、図4〜図6に示されているように、エンジン21の機体前方側に位置する第1支持部5Aと、エンジン21の機体後方側に位置する第2支持部5Bとを備えて構成されている。
第1支持部5Aは、エンジン搭載フレーム10Fの前横向きフレーム17の左右両側に取り付けられた左右一対の防振ゴム50,50(フレーム側防振材に相当)と、その防振ゴム50,50の上部側に架設された横板部材51とで構成されている。
前記横板部材51は、左右両端部に防振ゴム50,50の上面に沿うように、後下がり傾斜面で構成された取付座51a,51aを形成してあり、左右方向の中間部は、エンジン21の水平姿勢の底面に沿うほぼ水平姿勢の取付座51bを形成してあり、かつ、エンジン21の底面側に螺合させる取付ボルト51d,51dを挿通するための取付孔51c,51cを形成してある。
【0032】
第2支持部5Bは、エンジン搭載フレーム10Fの後横向きフレーム18の左右両側に取り付けられた左右一対の防振ゴム52,52(フレーム側防振材に相当)と、その防振ゴム52,52の上部側に架設されたエンジンベース部材53と、エンジンベース部材53の上側に取り付けられた防振ゴム54(ベース側防振材に相当)と、その防振ゴム54を介してエンジン21のシリンダヘッド21B側に連結される取付金具55とを備えて構成されている。
【0033】
前記エンジンベース部材53は、前記後横向きフレーム18の前下がり傾斜面に沿った前下がり傾斜姿勢で前記防振ゴム52に後端側近くの2カ所を取り付けてあり、前端側の2カ所をエンジン21のクランクケース側21Aに対して直接に連結ボルト56を介して着脱可能に連結してある。
そして、エンジンベース部材53の上側に取り付けられた防振ゴム54は、前記後横向きフレーム18との間で後端側の2カ所に取り付けた防振ゴム52が存在する箇所よりもさらにエンジンベース部材53の後端側に位置して、図5に示すように左右方向では前記後横向きフレーム18との間に設けた後端側の2カ所の防振ゴム52,52同士の間で、エンジンベース部材53の上面側の1カ所に設けてある。
したがって、前記後横向きフレーム18との間に設けた後端側の2カ所の防振ゴム52,52は、側面視において、エンジンベース部材53の前端側の2カ所をエンジン21のクランクケース側21Aに対して直接に連結された箇所と、前記エンジンベース部材53の後端側に位置する防振ゴム54の存在箇所との間に位置し、かつ、前端側の2カ所をエンジン21のクランクケース側21Aに対して直接に連結された箇所よりも、前記エンジンベース部材53の後端側に位置する防振ゴム54の存在箇所の近くに位置している。
【0034】
前記エンジンベース部材53の上面側で後端部に設けられた防振ゴム54は、エンジン21のシリンダヘッド21B側に連結された取付金具55と連結されていて、エンジン21のシリンダヘッド21B側を弾性的に防振支持している。
前記取付金具55は、シリンダヘッド21B部分の下面側に位置する台座部55aの左右両端側に立ち上がり片55b,55cを備えていて、左側の立ち上がり片55bの上端側でシリンダヘッド21Bの左側の横側部に対して連結ボルト57を介して連結され、右側の立ち上がり片55cは、その上端側を上向きに折り曲げて上向き片部分を形成してあり、後傾姿勢のシリンダヘッド21Bの下面側に連結ボルト(図示せず)を介して連結されるように構成してある。
前記エンジンベース部材53の上面側で後端部に設けられた防振ゴム54は、前記取付金具55の台座部55aの左右両端側に備えられた立ち上がり片55b,55c同士の中間に相当する箇所に位置して、前記台座部55aの下面側に当てつけた状態で着脱可能にボルト連結してある。
【0035】
上記エンジンベース部材53は、前記後横向きフレーム18の前下がり傾斜面にほぼ沿った前下がり傾斜姿勢で配設され、この傾斜姿勢は、エンジン21のシリンダヘッド21Bのシリンダ筒軸線Lが水平線(エンジン搭載フレーム10Fの上面箇所に相当する)に対して傾斜する角度θ1よりも大きな傾斜角度θ2に設定されていて、シリンダヘッド21B側の上下方向での振動に伴う荷重がクランクケース21A側にも分散され易く構成してある。
【0036】
エンジンベース部材53は、図6に示すように、平面視でほぼ矩形の第1ベース部分53Aと、その横側方に接合されるほぼ台形状の第2ベース部分53Bとを備えて構成されている。 前記第1ベース部分53Aは、図4及び図6(c)に示すように、平板状の上面に対して、左右両側の側辺部分が少し下面側に折り曲げられることによって端部側縁リブ58a,58aを形成してあり、その端部側縁リブ58a,58aが形成された箇所よりも前端側よりの部分が、図4及び図6(b)に示すように、前記平板状の上面に対して相対的に少し上面側に折り曲げられていて、この部位にクランクケース21A側に対して直接に連結ボルト56を用いて連結するための取付孔53a,53aが形成されている。
また、第1ベース部分53Aの後端側では、前記後横向きフレーム18との間に介在させる左側(図6(a)中では右側)の防振ゴム52を連結するための取付孔53bと、その取付孔53bよりも後端側寄りで、かつ機体中央側寄りの箇所に前記取付金具55との間に介在させる防振ゴム54を連結するための取付孔53cが形成されている。
【0037】
第2ベース部分53Bは、図6(a)及び(c)に示すように、平面視で後端側が左右方向に沿い、前端側は、右側(図6(a)中では左側)よりも左側(図6(a)中では右側)が前方に位置する傾斜縁となった台形状の四辺形に形成され、その前端縁側と後端縁側とが下面側に折り曲げられて前後端縁リブ58b,58bを形成してある。
この第2ベース部分53Bの右側(図6(a)中では左側)寄りの箇所で前記取付金具55との間に介在させる防振ゴム54の取付孔53cが形成された箇所よりも前方側に、前記後横向きフレーム18との間に介在させる右側(図6(a)中では左側)の防振ゴム52の取付孔53bが形成されている。
この第2ベース部分53Bは、前記第1ベース部分53Aの右側(図6(a)中では左側)の端部側縁リブ58aに左側(図6(a)中では右側)の端部を当てつけた状態で溶接することによって連結されている。
【0038】
〔その他〕
前記エンジン21の動力伝達系には、図示しないがエンジン負荷が所定以上の大きさであることを検出する負荷検出器を備えるとともに、その負荷検出器で検出されるエンジン負荷が所定以上の大きさであるときに、前記苗植付装置4の昇降作動を停止させる制御装置を備えている。
つまり、負荷検出器として、エンジン21の回転数、あるいは車軸の回転数等を検出する負荷検出器を備え、前記苗植付装置4を昇降操作するリフトシリンダ13への圧油供給を制御する切換バルブ(図示せず)、及びその切換バルブの作動を制御する制御装置(図示せず)を備え、前記負荷検出器で検出されたエンジン回転数、あるいは車軸の回転数が、所定以上のエンジン負荷に相当するものであると、予め制御装置に記憶されている判別プログラムで判別されると、前記苗植付装置4を昇降操作するリフトシリンダ13への圧油供給を停止するように前記制御装置が切換バルブ(図示せず)を作動させて、リフトシリンダ13への圧油供給を停止するように構成してある。
【0039】
この場合、前記苗植付装置4を昇降操作するリフトシリンダ13への圧油供給は停止されるが、走行駆動系に動力を伝達する静油圧式無段変速装置22の駆動、及びその静油圧式無段変速装置22に対するチャージポンプ(図示せず)の駆動は維持されるようにして、エンジン21の出力のうちで、前記苗植付装置4を昇降操作するために用いられていた駆動力を走行駆動系の出力に利用できるように構成されている。
尚、上述した負荷検出器での検出結果に連係させてリフトシリンダ13への圧油供給を停止するのではなく、負荷検出器での検出結果に基づいて警報を出し、人為操作によって前記切換バルブを操作できるように構成する、あるいは、負荷検出器を備えずに人為的に前記切換バルブを操作できるように構成して、人為操作によってリフトシリンダ13への圧油供給を停止するように構成してもよい。
【0040】
〔別実施形態の1〕
図7乃至図10は、燃料タンク26を、上述した実施形態のようにボンネット20の内部に固定した構造のものではなく、運転部フロア30の下側に備え、かつ、その燃料タンク26に対して補給用の補助燃料タンク6を備えた構造のものを示している。
図7乃至図9に示すように、前記燃料タンク26は、運転部フロア30の下側における車体フレーム10に、その燃料タンク26の前側、及び後側の夫々で相対向する取付ステー28a,28bを固定して、この取付ステー28a,28bによって燃料タンク26を支持している。
【0041】
前記取付ステー28a,28bのうち、後方側の取付ステー28aを前方側の取付ステー28bよりも少し長く横外方に延長して、この延長された部分の取付ステー28aに、前記燃料タンク26の燃料をエンジン21へ供給する給油パイプ26aの途中で濾過するための燃料フィルター装置29を支持させてある。
これによって、前記延長された部分の取付ステー28aをフィルター装置29の取付部材として兼用できるとともに、その延長された部分の取付ステー28aが、フィルター装置29の後方側に位置する後車輪12に付着した泥土が、後車輪12の回転にともなって前方側へ飛散された際のフィルター装置29に対する泥除け部材としても機能することになり、フィルター交換の作業の妨げになることを回避し易い点でも有利である。
【0042】
前記補助燃料タンク6は、図7、図9、及び図10に示すように、運転座席31の右横側外方に固定された収容ボックス60と、その収容ボックス60に対して出し入れ可能に構成されたカートリッジタンク61とを備えるとともに、収容ボックス60に対してカートリッジタンク61を固定した状態と固定解除した状態とに切換操作するための固定操作具62を備えて構成されている。
【0043】
前記収容ボックス60は、平面視矩形の筒状に形成されたボックス本体60aと、そのボックス本体60aの上端側の横軸心回りで揺動開閉自在に装備させた蓋体60bとを備え、ボックス本体60aの底面側に給油口60cを備え、給油口60cと燃料タンク26とを接続する接続パイプ60dを備えている。
【0044】
前記カートリッジタンク61は、矩形箱状の容器で構成され、上端側に持ち手61aを備え、下端側に吐出口61bを備え、かつ、下端側の横側部に前記吐出口61bに設けた開閉弁(図示せず)を開閉操作するための操作部材61cを備えて構成されている。
前記吐出口61bに備えた開閉弁は、図10(a)及び(b)に示すように、操作部材61cの長手方向を上下向きとした状態で閉塞され、図10(c)に示すように、操作部材61cを横向きにした姿勢で開放され、カートリッジタンク61内の燃料が吐出口61bから給油口60cを介して接続パイプ60dに流れ、燃料タンク26に供給されるように構成してある。
【0045】
前記収容ボックス60のボックス本体60aの底部近くには、前記カートリッジタンク61の操作部材61cを操作するための固定操作具62が装備されている。
この固定操作具62は、図10(c)に示すように、前記操作部材61cを抱き込み状態に位置させることが可能なコの字状の溝部を有した操作部62aと、ボックス本体60aの外部から把持することが可能な握り操作部62bとを備え、横軸心p回りで握り操作部62bを回動操作することで、ボックス本体60aに内装されているカートリッジタンク61の操作部材61cを操作して吐出口61bを開閉操作することが可能であるように構成されている。
【0046】
このように構成したことにより、カートリッジタンク61を収容ボックス60から抜き出し、あるいは差し込み操作しようとしても、前記固定操作具62がカートリッジタンク61の操作部材61cを吐出口61bの閉塞側に操作した状態でなければ抜き出し、あるいは差し込むことができない(図10(b)参照)。
逆に、カートリッジタンク61を収容ボックス60の内部に装着しても、前記固定操作具62がカートリッジタンク61の操作部材61cを吐出口61bの開放側に操作された状態でなければ、カートリッジタンク61内の燃料を燃料タンク26側に供給することができないように構成されている(図10(c)参照)。
これによって、カートリッジタンク61を収容ボックス60から取り出す際の吐出口61bの閉め忘れを確実に回避することができるとともに、カートリッジタンク61を収容ボックス60内に確実に固定することによって、吐出口61bの開き忘れを確実に回避することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0047】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、クランクケース21A側に対してシリンダヘッド21B側のシリンダ筒軸線Lが後方側へ傾斜した後傾姿勢でエンジン21を配設したものであるが、これに限らず、前記シリンダ筒軸線Lが前傾姿勢や左右いずれかの横方向への傾斜姿勢で配設されたものであってもよい。
また、傾斜姿勢であるものに限らず、前記シリンダ筒軸線Lが水平姿勢に近い姿勢でシリンダヘッド21B側が後方側、または前方側、もしくは左右何れかの横方向に向く横倒し姿勢で配設されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0048】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、左右一対の防振ゴム52,52(フレーム側防振材に相当)と、その防振ゴム52,52の上部側に架設されたエンジンベース部材53と、エンジンベース部材53の上側に取り付けられた防振ゴム54(ベース側防振材に相当)と、その防振ゴム54を介してエンジン21のシリンダヘッド21Bに連結される取付金具55とを備えて構成された第2支持部5Bを用いて、エンジンベース部材53のクランクケース21A側に連結される側を直接に連結し、シリンダヘッド21Bに連結される側を防振ゴム54(ベース側防振材に相当)を介して連結したものを示したが、これに限らず、エンジンベース部材53のシリンダヘッド21Bに連結される側を直接に連結し、クランクケース21A側に連結される側を防振ゴム54(ベース側防振材に相当)を介して連結したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0049】
〔別実施形態の4〕
エンジン支持装置5として、左右一対の防振ゴム52,52(フレーム側防振材に相当)と、その防振ゴム52,52の上部側に架設されたエンジンベース部材53と、エンジンベース部材53の上側に取り付けられた防振ゴム54(ベース側防振材に相当)と、その防振ゴム54を介してエンジン21のシリンダヘッド21Bに連結される取付金具55とを備えて構成された第2支持部5Bを用いたものであるが、これに限らず、例えば、前記右一対の防振ゴム52,52(フレーム側防振材に相当)を省略して、エンジンベース部材53を、エンジン搭載フレーム10Fに対して、前後方向の一箇所で位置固定して連結し、エンジンベース部材53の前端側及び後端側がエンジンベース部材53自体の弾性変形によってある程度上下動可能であるように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0050】
〔別実施形態の5〕
上記の実施形態では、エンジンベース部材53を、第1ベース部分53Aと第2ベース部分53Bとの別部材で構成して一体に溶接固定したものであるが、これに限らず、エンジンベース部材53の全体をプレス加工などによって一体物で構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0051】
〔別実施形態の6〕
上記の実施形態では、エンジンベース部材53に取り付けられる下側の防振ゴム52,52(フレーム側防振材に相当)を左右一対で用い、上側の防振ゴム54(ベース側防振材に相当)を一個のもので構成しているが、これに限らず、夫々の防振ゴム52,54の使用個数や大きさ、あるいはその弾性係数や配設位置も、エンジン21の振動軽減に有効であるように適宜に配設することが可能である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、実施の形態で示したような乗用型田植機に限らず、圃場に種籾を播種する直播機や薬剤散布機等の乗用型水田作業機であったり、あるいは傾斜姿勢あるいは横倒し姿勢にエンジンを配設する建機あるいは運搬車などの各種の作業車のエンジン支持装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
3 運転座席
10F エンジン搭載フレーム
21 エンジン
21A クランクケース
21B シリンダヘッド
54 ベース側防振材
52 フレーム側防振材
53 エンジンベース部材
L シリンダ筒軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース側に対してシリンダヘッド側のシリンダ筒軸線が傾斜した姿勢、または横倒し姿勢でエンジンを支持させてある作業車のエンジン支持装置であって、
前記クランクケース側と前記シリンダヘッド側とのうちの一方側に対しては直接連結され、他方側に対してはベース側防振材を介して連結されたエンジンベース部材を備え、
前記エンジンベース部材を前記クランクケース側での連結箇所とシリンダヘッド側での連結箇所との間に位置する部位でエンジン搭載フレームに連結してあることを特徴とする作業車のエンジン支持装置。
【請求項2】
前記エンジンベース部材は、前記クランクケース側に対して直接連結され、前記シリンダヘッド側に対して前記ベース側防振材を介して連結されている請求項1記載の作業車のエンジン支持装置。
【請求項3】
前記エンジンベース部材は、前記ベース側防振材とは別のフレーム側防振材を介してエンジン搭載フレームに連結されている請求項1又は2記載の作業車のエンジン支持装置。
【請求項4】
前記フレーム側防振材は、前記エンジンベース部材における前記クランクケース側との連結箇所よりも前記シリンダヘッド側での連結箇所に近い側に位置するように配設されている請求項3記載の作業車のエンジン支持装置。
【請求項5】
前記エンジンベース部材から水平方向で離れた位置の前記エンジン搭載フレームに、前記フレーム側防振材とは別のフレーム側防振材を介して、前記エンジンのクランクケース側の、前記エンジンベース部材が連結された箇所とは別の部位を支持させてある請求項3又は4記載の作業車のエンジン支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−39889(P2013−39889A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179099(P2011−179099)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】