説明

作業車両の支持装置

【課題】ローラあるいは接地板を選択して接地できる作業車両の支持装置で、簡単に接地を変更できる支持装置を提供する。
【解決手段】車両のフレーム30に取付けられ先端部を下方に伸縮駆動可能なジャッキ31と、一端をジャッキに近接したフレームに軸支されたリンク33と、リンクの他端とジャッキ先端部とを軸支して連結させジャッキの伸縮によりリンクとの枢支軸を中心に揺動させるアーム35と、アームに回転自在なローラ38と揺動自在な接地板40とを配置し、ジャッキを縮小しているときには前記ローラと接地板を格納させる格納状態に、ジャッキの伸長途中では前記ローラを地面に接地させるローラ接地状態に、更なるジャッキの伸長ではローラに代えて前記接地板を地面に接地させる接地板接地状態、となるよう前記アームに配置するローラと接地板の位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車両の支持装置としてローラと接地板を有する支持装置を備えた高所作業車が公知である。この高所作業車に備えられた支持装置は、図4に図示するように、車体に取付けられて車体を支持するジャッキ12と、前記ジャッキ12の下端部に回転自在に軸支されて接地するローラ16と、前記ジャッキ12の下端部に取付けられ、前記ローラ16に代えて接地可能な接地板22を有したジャッキベース20を備えている。ジャッキベース20は、揺動軸15を中心に揺動させることにより、接地板22がローラ16の下面を覆う板接地位置(図4の(a)の状態)とローラ下面を露出する退避位置(図4の(b)の状態)とに位置変更し、板設置位置で接地板22を接地させ、退避位置でローラ16を接地させ車体を支持させるようにしている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−118367号公報(第3頁〜第4頁、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが上記高所作業車では、ローラ16を接地あるいは接地板22を接地させるかによって、ジャッキベース20を揺動させて板設置位置あるいは退避位置に設定させる必要があり、その度にジャッキベース20のプランジャピン35を板設置位置あるいは退避位置に係止あるいは係合させる必要があり、作業としては煩わしいものであった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決した作業車両の支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明に係る請求項1記載の作業車両の支持装置は、車両のフレームに取付けられ先端部を下方に伸縮駆動可能なジャッキと、一端をジャッキに近接したフレームに軸支されたリンクと、リンクの他端とジャッキ先端部とをそれぞれ個別に軸支して連結させジャッキの伸縮によりリンクとの枢支軸を中心に揺動させるアームと、アームに回転自在なローラと揺動自在な接地板とを配置し、ジャッキを縮小しているときには前記ローラと接地板を格納させる格納状態に、ジャッキの伸長途中では前記ローラを地面に接地させるローラ接地状態に、更なるジャッキの伸長ではローラに代えて前記接地板を地面に接地させる接地板接地状態、となるよう前記アームに配置するローラと接地板の位置を決定してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る本発明の作業車両の支持装置は、ジャッキを縮小しているときには前記ローラと接地板を格納させる格納状態に、ジャッキの伸長途中では前記ローラを地面に接地させるローラ接地状態に、更なるジャッキの伸長ではローラに変えて前記接地板を地面に接地させる接地板接地状態、となるよう前記アームに配置するローラと接地板の位置を決定してあるものだから、ジャッキを伸縮駆動させることで格納状態、ローラ接地、接地板接地の各状態にすることができ、煩わしい操作をなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明に係る作業車両の支持装置の実施形態を説明するにあたって、作業車両として車両上に旋回および起伏可能に配置した伸縮ブームの先端に作業台を備えた高所作業車に実施される場合について以下に説明する。図1〜図3に図示するように、30は、高所作業車のフレームであり、31は、高所作業車のフレーム30に取付けられ先端部を下方に伸縮駆動可能なジャッキである。このジャッキ31は、本実施形態の場合、フレーム30に基端部を取付けた外箱31aと、外箱31aに伸縮自在に嵌挿させ外箱31aの先端側から出没させる内箱31bと、外箱31aと内箱31b間に配置され外箱31aに対して内箱31bを伸縮駆動させる油圧シリンダ31c(図示しない)とで構成している。
【0008】
32は、外箱31aの外側面に止着したブラケットである。33は、一端をブラケット32に軸34で軸支させたリンクである。35は、リンク33の他端と軸36で軸支され、内箱31bの先端部と軸37で軸支して連結させたアームである。このアーム35は、ジャッキ31の油圧シリンダ31cを伸縮させることにより、枢支軸36を中心にアーム35を揺動させるようにしている。
【0009】
38は、ローラであって、アーム35に軸39で回転自在に配置されている。40は、接地板であって、アーム35に軸41で揺動自在に配置されている。このローラ38と接地板40は、ジャッキ31を縮小しているときには前記ローラ38と接地板40を格納させる格納状態(図1の状態)に、ジャッキ31の伸長途中では前記ローラ38を地面に接地させるローラ接地状態(図2の状態)に、更なるジャッキ31の伸長ではローラ38に代えて前記接地板40を地面に接地させる接地板接地状態(図3の状態)、となるよう前記アーム35に配置するローラ38と接地板40の位置を決定してある。
【0010】
すなわち、ジャッキ31を伸長させることにより軸36を中心にアーム35を揺動させるにあたって、まずローラ38が地面に接地するようアーム35の下方にローラ38の回転軸39を配置し、更にジャッキ31を伸長させることによりアーム35を更に揺動させローラ38に代えて接地板40を地面に接地するようアーム35の揺動軸36から最も離間するアーム35の先端部に接地板40の揺動軸41を配置している。
【0011】
なお、ローラ接地状態では、ローラ38によって高所作業車を持上げないで、走行用車輪とともに高所作業車を支持する程度にローラ38を地面に接地させるようアーム35にローラ38の回転軸39を配置する位置を決定させている。また、接地板接地状態ではジャッキ31の伸長により接地板40を接地させた時に、高所作業車を持上げ接地板40で完全支持できるようアーム35に接地板40の揺動軸41を配置する位置を決定させている。
【0012】
本実施形態では、アーム35は、アーム35を三角状の部材で構成し、三角形の各頂点部分に前記軸36、軸39、軸41を配置しており、軸37は、軸36と軸41を結ぶ直線上の軸36寄り位置に配置いる。また、上記ブラケット32、リンク33、アーム35、は、内箱31bを挟んで左右一対配置しており、各軸34、36、37、39、41は左右に貫通して配置されるとともに、ローラ38と接地板40は左右のアーム35間に配置している。また、本発明に係る高所作業車の支持装置を後輪の近傍に左右2基配置させている。
【0013】
このように構成した本発明に係る高所作業車の支持装置は、次のように作用する。高所作業車の走行状態では、ジャッキ31の油圧シリンダ31cを縮小させアーム35を上方に揺動させてローラ38と接地板40を格納状態にする。(図1の状態)
次に、高所作業車を走行させながら作業する場合には、走行車輪で高所作業車を走行させながら作業台に搭乗した作業者により高所作業するのである。そこで、高所作業車を安定に支持させるためにローラ38を接地させて高所作業車を走行させる。したがって、ジャッキ31の油圧シリンダ31cを伸長させアーム35を揺動させる。ローラ38が接地させるまで油圧シリンダ31cを伸長させアーム35を揺動させる。ローラ38が接地した時に油圧シリンダ31cの伸長を停止させローラ接地状態にする。(図2の状態)この状態で高所作業車を走行させることで、ローラ38で支持させなから高所作業を行うことができ、安定走行支持の状態で安全に作業できる。
【0014】
また、高所作業車により所定位置で作業する場合には、高所作業車を接地板40で地面に固定的に完全支持させ、作業台に搭乗した作業者により高所作業作業を行うのである。そこで上記ローラ接地状態から更にジャッキ31の油圧シリンダ31cを伸長させアーム35を揺動させる。接地板40が接地させるまで油圧シリンダ31cを伸長させアーム35を揺動させる。接地板40が接地した時に油圧シリンダ31cの伸長を停止させ接地板接地状態にする。(図3の状態)この状態で作業台を高所位置に移動させて高所作業するに、接地板40で高所作業車を地面に支持させているので、安定的に高所作業車を支持でき安全な高所作業ができる。
【0015】
逆に接地板接地状態あるいはローラ接地状態から格納状態にするためには、ジャッキ31の油圧シリンダ31cを縮小させアーム35を上方に揺動させれば、ローラ38と接地板40を格納状態にすることができる。
【0016】
以上のように、本発明に係る高所作業車の支持装置は、ジャッキ31を伸縮駆動させることで格納状態、ローラ接地、接地板接地の各状態にすることができ、煩わしい操作をなくすることができる。
【0017】
なお、上記実施形態では、前記アーム35に配置するローラ38と接地板40の位置を、軸36と軸41を結ぶ直線上の軸36寄り位置に軸37を配置するようにして決定したが、ジャッキ31を縮小しているときには前記ローラ38と接地板40を格納させる格納状態に、ジャッキ31の伸長途中では前記ローラ38を地面に接地させるローラ接地状態に、更なるジャッキ31の伸長ではローラ38に代えて前記接地板40を地面に接地させる接地板接地状態、となるような位置関係であればよく、例えば軸36と軸41を結ぶ直線上の軸41寄り位置に配置してもよい。ただし、ローラ接地状態ならびに接地板接地状態で、リンク33とジャッキ31とでアーム35を安定支持できるような配置関係にしておく必要がある。
【0018】
また、上記実施形態では、リンク33をジャッキ31の外箱31aの外側面に止着させたブラケット32に軸34で軸支させてジャッキ31の外箱31aとブラケット32を介してフレーム30に軸支させたが、ジャッキ31の外箱31aやブラケット32を介さずに直接またはフレーム30に止着したブラケットを介してフレーム30に軸34で軸支させるようにしてもよい。この場合、ジャッキ31に近接したフレーム30に配置する必要がある。
【0019】
更に、上記実施形態ではジャッキ31を外箱31aと内箱31bと油圧シリンダ31cとで構成したが、フレーム30とアーム35の枢支軸37間に直接油圧シリンダを取付けるようにしたものであってもよい。この場合にはリンク33は、直接またはブラケットを介してフレーム30に軸34で軸支させることになる。
【0020】
次に、上記実施形態の説明では、本発明に係る支持装置を後輪の近傍に左右2基配置したが、車両の前部にも左右にそれぞれ配置し、4基配置するようにしてもよい。また、上記実施形態では、本発明を高所作業車に適用した場合を例に説明したが、橋梁点検車、クレーン車等の作業車にも適用できることもちろんである。更に、上記ローラ38に代えて鉄輪を配置し、軌陸車として適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る作業車両の支持装置を説明する説明図で、格納状態を説明する説明図である。
【図2】本発明に係る作業車両の支持装置を説明する説明図で、ローラ接地状態を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る作業車両の支持装置を説明する説明図で、接地板接地状態を説明する説明図である。
【図4】従来の作業車両の支持装置を説明する説明図で、(a)は、板接地位置を説明する説明図であり、(b)は、退避位置を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
30 フレーム
31 ジャッキ
33 リンク
35 アーム
38 ローラ
40 接地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに取付けられ先端部を下方に伸縮駆動可能なジャッキと、一端をジャッキに近接したフレームに軸支されたリンクと、リンクの他端とジャッキ先端部とをそれぞれ個別に軸支して連結させジャッキの伸縮によりリンクとの枢支軸を中心に揺動させるアームと、アームに回転自在なローラと揺動自在な接地板とを配置し、ジャッキを縮小しているときには前記ローラと接地板を格納させる格納状態に、ジャッキの伸長途中では前記ローラを地面に接地させるローラ接地状態に、更なるジャッキの伸長ではローラに代えて前記接地板を地面に接地させる接地板接地状態、となるよう前記アームに配置するローラと接地板の位置を決定してあることを特徴とする作業車両の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−137343(P2007−137343A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336436(P2005−336436)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】