作業車両
【課題】本発明は、主変速レバー等で油圧無段変速装置を操作して機体の走行と停止を行う場合に、精度の高い走行と停止を行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】油圧無段変速装置27の変速出力軸33或いは該変速出力軸33の直結している部分の走行第一軸51、又は該走行第一軸51に連結しているギア59にその回転を検出する出力センサ127を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー11による中立位置設定時において、前記出力センサ127が走行第一軸57又はギア59の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置27のトラニオン軸97を油圧シリンダ36で回動するように構成し、主変速レバー11を操作して機体が走行中において、前記出力センサ127が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ36を作動させてトラニオン軸97を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両の構成とした。
【解決手段】油圧無段変速装置27の変速出力軸33或いは該変速出力軸33の直結している部分の走行第一軸51、又は該走行第一軸51に連結しているギア59にその回転を検出する出力センサ127を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー11による中立位置設定時において、前記出力センサ127が走行第一軸57又はギア59の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置27のトラニオン軸97を油圧シリンダ36で回動するように構成し、主変速レバー11を操作して機体が走行中において、前記出力センサ127が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ36を作動させてトラニオン軸97を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両の構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧駆動作業車では、トランスミッションケース内に油圧無段変速装置とギア変速装置を組み込み、操縦操作席の近傍に設けた変速レバー等で油圧変速装置の変速出力回転数とギア変速装置の変速段を適宜に組み合わせて所望の走行速度で走行するようにしている。
【0003】
たとえば、特開2002−250437号公報に、主変速レバーと前後進切換レバーを設けて、この主変速レバーの変速位置と前後進切換レバーの変速位置で油圧無段変速装置を構成する油圧ポンプの可動斜板傾倒角を変更して油圧モータの出力回転数を変更し最終的に走行装置の走行速度を変更するようにした油圧駆動作業車が記載されている。
【特許文献1】特開2002−250437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の油圧駆動作業車では、前後進切換レバーを中立位置にした場合に油圧無段変速装置から出力がなされていないことを検出する手段として、可動斜板に繋がるトラニオン軸の回動角度を検出する角度センサが中立位置の信号を出している状態と車軸回転数センサが出力していない状態と油圧無段変速装置の入力側圧力センサと出力側圧力センサの検出圧力に差が無い状態で判定するようにしている。
【0005】
しかしながら、トラニオン軸の回動角度による中立位置は調整不足によって正確で無い場合があり、車軸回転数センサが出力していない状態はトランスミッションケース内の伝動径路のクラッチを切った状態の場合があり、油圧無段変速装置の入力側圧力センサと出力側圧力センサの検出圧力は作動オイルの温度変化や配管からの漏れ及び油圧無段変速装置以外の油圧機器の作動等により変動して圧力差による油圧無段変速装置の中立判定が正確に行えない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、主変速レバーや前後進切換レバーで油圧無段変速装置を中立にして走行を停止させる場合に、油圧無段変速装置からの出力回転が無いことを確実に判定し走行速度の制御を正確に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、油圧無段変速装置(27)の変速出力軸(33)或いは該変速出力軸(33)の直結している部分の走行第一軸(51)、又は該走行第一軸(51)に連結しているギア(59)にその回転を検出する出力センサ(127)を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)による中立位置設定時において、前記出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動するように構成し、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、前記出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両の構成とした。
【0008】
この構成で、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)を走行停止状態にすると、出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動する。そして、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるようにする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とした。
【0010】
この構成で、油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、油圧無段変速装置(27)からの回転出力が直接出力センサ(127)で検出されるので、油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動し、出力センサ(127)の回転検出を無くなるようにすることで出力回転を停止出来るので、出力センサ(127)によって中立状態の精度が高くなる。
【0012】
また、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中においては、出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置するようにしているので、安全性が向上するようになる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持できるので、精度のよい機体の停止状態が確保できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1と図2は、油圧駆動車両の実施例であるトラクタの全体を示す図面で、機体の前側にエンジン24を搭載した原動部1を設け、後側に作業者が搭乗して座る操縦席2を設け、前後中間位置にステアリングハンドル3を立設して、底部に前後輪4,5を装着している。
【0015】
ステアリングハンドル3の左右には前後進切換レバー6とアクセルレバー7を側方へ突設し、フロアステップ8上であってステアリングハンドル3の左側にクラッチペダル9を、ステアリングハンドル3の右側にアクセルペダル10を立設している。
【0016】
操縦席2の左側には、一速から八速まで変速する主変速レバー11と、低・中・高の三段に変速する副変速レバー12と、トラクタの後部に装着するロータリ等を駆動するPTO出力軸41の駆動断続を行うPTOクラッチレバー13を立設している。
【0017】
操縦席2の右側には、自動耕深レバー15と作業機の高さを調整するポジションレバー14を立設している。16aはトラクター後部の作業機を右上げするスイッチであり、16bはトラクター後部の作業機を右下げするスイッチである。
【0018】
18はトラクター後部の作業機を自動的に水平制御する自動水平スイッチであり、17はトラクターの後進時に後部の作業機を自動的に上昇させるバックアップスイッチである。
【0019】
原動部1のエンジン出力を前後輪4,5とPTO出力軸41に増減速して伝動するミッションケース23は、フロアステップ8と操縦席2の下側において機体のメインフレームとしても機能し、前ケース19、繋ぎケース20、中間ケース21、後ケース22の4つの中空ケースを一体に連結した構成である。
【0020】
次に、ミッションケース23内の動力伝動機構を図3で説明する。
エンジン24の出力軸回転が前記クラッチペダル9で断続されるメインクラッチ34を介してミッションケース23の入力軸35へ伝動される。この入力軸35の回転は増速ギア25,26で増速されて油圧無段変速装置27の入力軸28に伝動される。
【0021】
油圧無段変速装置27は可変容量型の油圧ポンプ29と固定容量型の油圧モータ31で構成され、油圧ポンプ29の可動斜板30の傾きを変えることで油圧モータ31の回転を変更する。可動斜板30の傾きは前記主変速レバー11や前後進切換レバー6の動きを検出して作動する油圧シリンダ36(図4、図5)によって変更されて、油圧モータ31のモータ出力軸33の回転が変速される。油圧ポンプ29に繋がるポンプ出力軸32の回転は入力軸28の回転数と同じである。
【0022】
ポンプ出力軸32の回転は、PTO正逆クラッチ37を経て、PTO第一中間軸38からPTO第二中間軸39へ伝動され、さらにPTO副変速クラッチ40を経て最終的にPTO出力軸41でミッションケース23の外部へ取り出されて、ロータリー等の作業機を駆動する。
【0023】
PTO正逆クラッチ37について説明する。図3のシフトギア43の位置は、中立の位置を示している。
ポンプ出力軸32に連結したクラッチ軸42に固定のギア43aに噛み合うシフトギア43を左側に移動して伝動上手側の逆転ギア44aと噛み合わせると、逆転ギア44aと一対のギア44が走行第一軸51に遊嵌した二連ギア46の一方のギア45に噛み合っているので、クラッチ軸42の動力は、ギア43a、シフトギア43、逆転ギア44a、ギア44を経由して二連ギア46のギア45に伝動される。そして、二連ギア46の他方のギア47からPTOカウンタ軸50aに固定のギア48へ伝動される。この伝動系の流れでPTO第一中間軸38が逆転する。
【0024】
また、シフトギア43を伝動下手側の正転ギア49aと噛み合わせると、クラッチ軸42の動力は、ギア43a、シフトギア43を経由して正転ギア49aに伝動される。正転ギア49aはギア49と一体であるので、動力はギア49からPTO第一中間軸38に固定のギア48へ伝動される。この伝動系の流れでPTO第一中間軸38が正転する。
【0025】
PTO副変速クラッチ40は、PTO第一中間軸38に連結したPTO第二中間軸39に小ギア52と中ギア53と大ギア54を固着し、このPTO第二中間軸39と平行に設けたPTO出力軸41に小ギア52に噛み合わせた大クラッチギア55を游嵌し、中ギア56と小ギア57を形成したシフトギア58をスライド可能に係合している。前記大クラッチギア55の側面にはギアドック55aを形成している。また、中ギア56の側面にもギアドック56aを形成している。
【0026】
シフトギア58を左スライドして、中ギア56のギアドック56aと大クラッチギア55のギアドック55aとを係合すると、PTO1速(低速)でPTO出力軸41が駆動される。また、シフトギア58を左スライドさせて中ギア53と中ギア56とを噛み合わせると、PTO2速(中速)でPTO出力軸41が駆動される。また、シフトギア58を右スライドして、大ギア54と小ギア57とを噛み合わせると、PTO3速(高速)でPTO出力軸41が駆動される。
【0027】
油圧モータ31のモータ出力軸33は、前後輪4,5を駆動しているが、その伝動径路は、次のとおりである。
出力軸33に連結した走行第一軸51に固着のギア59を走行第二軸61に遊嵌したクラッチギア60に噛み合わせ、高・中・低に変速する副変速クラッチ63を介して走行第二軸61を駆動し、後輪5への伝動を行う伝動径路と、走行第二軸61から前輪クラッチ90を介して前輪4を駆動する伝動径路を有する。
【0028】
ギア59の歯面に接近してその回転を検出する出力センサ127を設けて、モータ出力軸33の回転を検出して制御装置96にその回転状態が入力する。なお、出力センサ127はモータ出力軸33の回転を直接検出するようにしても良い。
【0029】
副変速クラッチ63は、次のとおりに変速する。
クラッチギア60の動力は、PTO第一中間軸38に遊嵌した三連ギア70の大ギア88へ、クラッチギア60と一体のギア64を噛み合わせて三連ギア70を常時回転している。走行第二軸61に固着のギア62に常時噛み合ってスライド可能にした内歯副変速クラッチ63をクラッチギア60と一体のギア65に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア65、内歯副変速クラッチ63とギア62を介して走行第二軸61に伝わり高速で回転する。(副変速高速)
ギア62の伝動下手側にはギア69とギア66が一体で走行第二軸61に遊嵌している。また、ギア68とギア67が一体で、前記ギア69とギア66の中間部分に遊嵌している。前記ギア69は前記PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70のギア73に噛み合っており、前記ギア68は前記PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70のギア72と噛み合っている。
【0030】
内歯副変速クラッチ63を右側にスライドしてギア67に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア64、ギア88、ギア73、ギア69、ギア66、内歯副変速クラッチ63、ギア62を介して走行第二軸61に伝わり、走行第二軸61を中速で回転する(副変速中速)。
【0031】
内歯副変速クラッチ63をさらに右側にスライドしてギア67に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア64、ギア88、ギア72、ギア68、ギア67、内歯副変速クラッチ63、ギア62を介して走行第二軸61に伝わり、走行第二軸61を低速で回転する(副変速低速)。
【0032】
走行第二軸61の後端部には後輪用デフギア機構74を装着して後輪5を駆動している。また、走行第二軸61に固着のギア71から、PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70に対してさらに遊嵌しているギア75と、前輪軸77に固定のギア76を介して前輪軸77へ伝動している。
【0033】
前輪軸77には油圧クラッチ入力軸78を連結し、等速クラッチ79を繋ぐと入力軸78の回転がそのままで油圧クラッチ出力軸84に同速伝動される。また、増速クラッチ80を繋ぐとギア86,83で増速して中継軸81を回転し、さらにギア82,87で油圧クラッチ出力軸84を回転する増速駆動になる。等速クラッチ79と増速クラッチ80を共に繋がない場合は、動力が伝動されないで後輪駆動のみになる。そして、油圧クラッチ出力軸84の回転は、前輪用デフギア機構85を介して前輪4を駆動する。
【0034】
次に、主変速レバー11による油圧無段変速装置27の変速機構を図4から図6で説明する。
ミッションケース23を構成する中間ケース21の側面に立設したピン91に変速プレート92を枢支して、この変速プレート92を主変速レバー11にリンク94で連結する。変速プレート92はガイドプレート93に沿って八箇所で軽く係止されて変速段を八段階に感じるようにしている。(図4参照)この変速プレート92の回動位置は、変速センサ95で制御装置96へ送信される。
【0035】
油圧無段変速装置27は、ミッションケース23を構成する前ケース19の中に配置して設けられている。この前ケース19内で前記可動斜板30に連結したトラニオン軸97を前後進中立位置に保持する中立保持機構98を構成している。(図6参照)
この中立保持機構98は、油圧無段変速装置27の上面において、可変ポンプ29と油圧モータ31を内装しているケース89の内部から突出したトラニオン軸97にカムプレート99を固定し、このカムプレート99の周縁カム部にばね筒101によって付勢されたローラ100を押し付けて、カムプレート99の周縁カム部の凹部99aにローラ100が落ち込むと,トラニオン軸97が中立位置に戻るようにしている。図6に示している状態が中立状態である。
【0036】
長孔104aを有するガイドプレート104は、ミッションケース23を構成する前ケース19に固定して設けられている。そして、前ケース19の外部へ貫通したシフト軸102の下側にリンク(プレート)105を固定され、このリンク105には連結ピン114が立設して受けられている。さらに、連結ピン114はガイドプレート104の長孔104aに挿入されていて、長孔104aにそって動く構成としている。連結ピン114にはリンク(ロッド)103が連結して設けられており、このリンク103は前記カムプレート99に連結している。したがって、シフト軸102を回動すると連結ピン114が長孔104aにそって移動し、リンク(ロッド)103、カムプレート99を介してトラニオン軸97が回動して変速を行えるようにしている。
【0037】
ガイドプレート104上にはリンク103を受けて戴置している状態なので、滑らかに動くようリンク104の下側を下方へ折り曲げて折曲部104bを構成している。この中立保持機構98は、前ケース19の上側を開口して点検・修理を行うが、ミッションケース23の上側のため、内部のオイルを抜くことなく作業が行えるので、メンテナンスが容易である。
【0038】
シフト軸102の前ケース19から上方へ突出した部分では、前ケース19の側面にブラケット115で取り付けた油圧シリンダ36のロッド110先端とシフト軸102に固着のアーム113を、リンク111、リンク111a、ロッド112で連結している。リンク111とリンク111aは、支点111bを支点として回動し、リンク111aの回動の動きを受けてロッド112が動く構成である。したがって、油圧シリンダ36の作動でシフト軸102が回動し、軸102の回動を受けてトラニオン軸97が回動して油圧無段変速装置27を変速する構成である。
【0039】
シフト軸102の回動角度、即ち、トラニオン軸97の回動角を検出するシフト角センサ106をアーム113とロッド112の連結ピン117に係合させている。シフト角センサ106は、シフト軸取付プレート107に取り付けてシフト軸関連部品のサブ組み立て時に組み付けられるようにしている。また、シフト軸取付プレート107にはストッパボルト108,109を設けており、シフト軸102と一緒に回動するプレート102aがストッパボルト108,109に当接することで、シフト軸102の回り過ぎ(オーバーラン)を防ぐようにしている。
【0040】
油圧シリンダ36のロッド110側において、ロッド110の先端には該ロッド110と前記リンク111とを連結するピン110aを設けているが、ロッド110の動き過ぎを規制するストッパ118を設けたブラケット116を前ケース19の側面に取り付けている。そして、前記ピン110aがストッパ118に当接することでロッド110の動き過ぎを規制する。また、図4に示す118aは、ロッド110の縮小側のストッパである。ブラケット115は油圧シリンダ36を前ケース19の壁面へ近づけるために、ブラケット115のシリンダ位置においては凹部を形成して凹ませる構成である。
【0041】
油圧シリンダ36のロッド110とシフト軸102をリンク111、リンク111a、ロッド112及びアーム113で連結する組み付け作業前において、油圧シリンダ36の仮中立設定手段で制御装置96に仮中立位置を記憶させ、制御装置96でロッド110を連結位置へ動かして連結作業し、その後に、中立保持機構98で中立になるロッド110の位置を正しい正式中立位置として制御装置96に記憶させる。なお、仮中立位置記憶状態では、主変速レバー11を最速にしてもロッド110の動きを半分程度にして走行速度を制限し、組立作業中の移動速度を制限している。
【0042】
油圧シリンダ36は、主として主変速レバー11の変速位置を目標速度として変速センサ95でその位置を検出して増速ソレノイド123或いは減速ソレノイド124を作動し油圧シリンダ36を作動して、トラニオン軸97を目標速度になるように回動する。
【0043】
このとき、トラニオン軸97が回動するが、このトラニオン軸97の回動の動きは、リンク機構Rの途中に設けているシフト角センサ106で検出を行い、制御装置96はシフト角センサ106からの信号を受信することで、トラニオン軸97の回動量が目標位置になるようにフィードバックしている。即ち、主変速レバー11の動きを検出する変速センサ95は、あくまでも主変速レバー11の位置を制御装置96に送信するのみであり、実際のトラニオン軸97の位置の確認は、シフト角センサ106で行う。
【0044】
トラニオン軸97の回動角度は、前記出力センサ127の回転検出が零となる角度を中立として制御装置96に記憶し、これを基準に油圧シリンダ36を作動して角度を変えて変速する。従って、前後進切換レバー6を中立にすると、出力センサ127の出力が零となるように油圧シリンダ36を作動させるのである。
【0045】
なお、変速制御は、シフト角センサ106や出力センサ127等の検出データを使って油圧シリンダ36を制御しているので、各センサのどれかが異常データを出力して故障と判断した場合には、油圧シリンダ36の作動オイルをタンクへ戻して保持力を無くし、前記トラニオン軸97の中立保持機構98でトラニオン軸97が中立に戻るようにすると共に、前後輪4,5のブレーキを作動しエンジン回転数制御をアイドリング回転として走行を停止する。
【0046】
図7は、油圧回路図で、作業機の制御と走行の制御に使うメインポンプ140と油圧無段変速装置27とパワーステアリング144の作動圧を送るサブポンプ143を有し、前記トラニオン軸97を回動する油圧シリンダ36の制御油圧は、メインポンプ140からリリーフ弁141を通ってそのトラニオン弁142へ供給しているので、圧油の作動圧が安定している。
【0047】
サブポンプ143からの圧油は、パワーステアリング144へ供給された後に、リリー弁145とオイルクーラ146を通って、油圧無段変速装置27へ供給している。
メインポンプ140からの圧油は、メインリリーフ弁151で油圧を調整して走行バルブ147を通してメインクラッチ34を制御すると共に、ブレーキバルブ148を通して左右のブレーキシリンダ149,150を制御し、さらに、分流した圧油が作業機関係の制御へ送られている。
【0048】
その作業機関係の圧油は、分流バルブ152で水平シリンダ154とメイン昇降シリンダ157へ送られている。水平シリンダ154は水平バルブ153で制御され、メイン昇降シリンダ157は電子油圧バルブ155とスローリターン用チェックバルブ156で制御され、圧油がセーフティリリーフバルブ158を通ってミッションケース23内へ戻される。
【0049】
油圧シリンダ36を制御する制御装置96には、図8に示す情報が入力し、油圧制御バルブの増速ソレノイド123と減速ソレノイド124へ油圧シリンダ36の制御信号が出力する。その入力信号は、前後進切換レバー6の基部に設けた前後進スイッチ119からの前進或いは後進信号、前記主変速レバー11の変速センサ95からの変速位置信号、前記シフト角センサ106からのトラニオン軸97の回動角信号、クラッチペダル9の踏込みを検出するクラッチペダルスイッチ120からの踏込み信号、エンジン回転数制御スイッチ121のオン・オフ信号、副変速レバー12の副変速位置検出スイッチ122からの副変速位置信号、アクセルレバー7とアクセルペダル10のアクセルセンサ126からのエンジン増減速信号、出力センサ127からのモータ出力軸33回転数である。
【0050】
この制御装置96による走行速度制御は、次の如く行っている。
図9のフローチャートは、油圧シリンダ36を駆動するトラニオン弁142の増減速ソレノイド123,124へ送る駆動電力の周波数制御を示している。
【0051】
ステップS1で変速センサ95の変速センサ値を読み込み、ステップS2でクラッチペダルスイッチ120のオン・オフ信号を読み込み、ステップS3でアクセルセンサ126のエンジン増減速信号を読み込み、ステップS4でシフト角センサ106のトラニオン軸97回動角を読み込み、ステップS5で前後進スイッチ119の前進或いは後進信号を読み込み、ステップS6で副変速位置検出スイッチ122の副変速位置信号を読み込む。
【0052】
ステップS7で変速センサ値で設定するトラニオン軸97の目標回動角とシフト角センサ106で検出するトラニオン軸97の現在回動角を比較し、その差が大きい場合(YESの場合)には、ステップS8で増減速ソレノイド123,124への駆動電力の周波数を長く(例えば、駆動周期150msec)にして、ステップS10で油圧シリンダ36を駆動して走行速度をゆっくりと目標速度に変更する。なお、駆動電力の周波数は、オフの時間を長くする。
【0053】
ステップS7での判定がNOの場合には、ステップS9で増減速ソレノイド123,124への駆動電力の周波数を短く(例えば、駆動周期100msec)にして、ステップS10に移行する。
【0054】
図10のフローチャートは、前記のフローチャートで、ステップS7の判定をステップS11の判定に代えた制御で、ステップS11の判定は、主変速レバー11の変速位置が5速以上か、の判定で、5速以上では速度の変化が大きくなるので駆動電力の周波数を長くするのである。
【0055】
図11のフローチャートは、図9のフローチャートで、ステップS7の判定をステップS12の判定に代えた制御で、ステップS12の判定は、副変速レバー12の変速位置が高速か、の判定で、高速では速度の変化が大きくなるので駆動電力の周波数を長くするのである。
【0056】
なお、作業機を機体に装着した場合には走行速度の変化が遅くなるので、作業機装着を感知する作業機装着センサを設けて、その作業機装着センサがオンすると増減速ソレノイド123,124への駆動電力の出力オンタイムを2倍程度に増加することで走行速度変化を速くすることが出来る。
【0057】
図12のフローチャートは、トラニオン軸97を前後進中立位置に戻す制御で、ステップS15の判定に至るデータ読み込みのステップは図9と同一である。
制御不感帯に第一不感帯(例えば、±10bit)と第二不感帯(例えば、±5bit)を設けて、トラニオン軸97が中立位置に近づくと第一不感帯から第二不感帯に切換えて、出力オンタイムを徐々に増加させて(例えば、200msec毎に1msec増加させる)、なるべく中立位置で停止するようにした制御である。
【0058】
ステップS1からステップS6までで各種制御データを読み込み、ステップS15で第一不感帯終了の判定を行う。最初はNOの判定になるので、ステップS16でトラニオン制御の不感帯を第一不感帯(例えば、目標値±10bit或いは目標値―10bit〜目標値+0bit)にする。次に、ステップS17で前後進方向と主変速レバーに対応するトラニオンアーム角度となるよう上記不感帯出調節する。さらに、ステップS18で第一不感帯調節に入れば終了をセットする。
【0059】
ステップS15の第一不感帯終了の判定が、YESになれば、ステップS19でトラニオン制御の不感帯を狭く(例えば、±5bit)する。
次に、ステップS20で、前後進方向と主変速レバーに対応するトラニオンアーム角度となるようバルブが作動しない出力オンタイムから所定時間毎に所定オンタイムを増加させ、上記不感帯に入るまで調節出力する。
【0060】
図13のフローチャートは、前記図12のフローチャートで、ステップS17とステップS18の間にステップS21を入れた制御で、ステップS21では目標(−10bit)を外れるまで調整出力を行う。この制御で、一回の動き量を少なくしてトラニオン軸97の中立調節精度の向上を図ることが出来る。
【0061】
図14のフローチャートは、トラニオン軸97と油圧シリンダ36を連結するリンク機構のガタを制御装置96に記憶させる制御で、ステップS1からステップS6までで各種制御データを読み込み、ステップS25でトラニオン調整モード判定がYESであれば、ステップS26で、トラニオンセンサ値の最大値と最低値を読み込み更新する。
【0062】
ステップS27で水平感度スイッチをオンにしていれば、ステップS28へ移行し、トラニオンセンサ値の最大値と最低値で平均値を求め、その平均値を中立基準値として不揮発記憶する。
【0063】
そして、ステップS29で、油圧シリンダ36の伸び出力を行い、トラニオンセンサ値が±2bit変化しなくなれば、その時の値を伸び最大基準値とし、不揮発記憶する。
更に、ステップS30で、油圧シリンダ36の縮み出力を行い、トラニオンセンサ値が±2bit変化しなくなれば、その時の値を縮み最大基準値とし、不揮発記憶する。
【0064】
図15のフローチャートは、トラニオン軸97の中立位置調整制御で、経年変化による中立位置のズレを調整する。ステップS31で、前後進切換レバー6を前進から中立へ戻すか後進から中立へ戻す判定がYESならば、ステップS32でトラニオン制御中立を判定し、これもYESならば、ステップS33で、前後進切換レバー6を前進から中立へ戻す中立停止時のトラニオンセンサ値と後進から中立へ戻す中立停止時のトラニオンセンサ値の数回分で平均値を求め、現在の中立基準値を補正する。
【0065】
ステップS31とステップS32の判定がNOであれば、ステップS34で、前後進方向と主変速レバー11に対応するトラニオンアーム角度となるよう上記不感帯(?)で調節する。
【0066】
図16のフローチャートは、作業機上昇を他の制御に優先させる制御のフローチャートである。
ステップS40で変速センサ95の変速センサ値を読み込み、ステップS41でリフトアームセンサ値でを読み込み、ステップS42でデプスセンサ値を読み込み、ステップS43でシフト角センサ値を読み込み、ステップS44で前後進スイッチ119の前進或いは後進信号を読み込み、ステップS45で副変速位置検出スイッチ122の副変速位置信号を読み込み、ステップS46でスロープセンサ値でを読み込み、ステップS47でストロークセンサ値でを読み込み、ステップS48で切れ角センサ値でを読み込む。
【0067】
そして、ステップS49で作業機の上昇を開始し、ステップS50で上昇出力初期(例えば、0.5秒以内)であれば、ステップS51の作業機上昇用ソレノイド以外の制御用ソレノイドバルブの出力を抑制して、作業機の上昇開始を素早く行う。
【0068】
図17のフローチャートは、同じく、作業機上昇を他の制御に優先させる制御のフローチャートで、ステップS50で上昇出力初期であれば、ステップS52で上昇ソレノイドバルブの流量データを一定量増加出力し、上昇出力初期を過ぎれば、ステップS53で上昇ソレノイドバルブの流量データを通常に戻す。
【0069】
図18のフローチャートは、走行速度を一定に保つオートクルーズ走行を行う場合に増減速の変化率を一定に維持する制御のフローチャートで、ステップS60でオートクルーズに設定していれば、例えば、ステップS61で増速が開始されると、ステップS62で前回の増速時の速度変化率を目標車速変化率と比較し、変化率が大きければステップS63でトラニオン駆動量を減少させ、変化率が小さければステップS64でトラニオン駆動量を増加させる。
【0070】
なお、オートクルーズ走行は、作業機を機体に装着して作業を行う場合に必要な機能であるために、作業機装着センサを設けて、この作業機装着センサが作業機装着を感知しない場合にはオートクルーズ走行を不可にする制御を行う。
【0071】
オートクルーズ走行は、走行中にオートクルーズスイッチをオンすることで働き、その走行速度を維持すべくトラニオン軸97の回動角度を保持するようになる。また、走行速度を設定するオートクルーズダイヤルを設け、このオートクルーズダイヤルで設定した速度まで増速した後は主変速レバー11を操作しても変速しないようにする。或いは、主変速レバー11を操作して変速位置を変えて一定時間経過するとその変速位置の速度に再設定されるようにしても良い。或いは、主変速レバー11を操作して変速位置を変えると直ちにオートクルーズ走行を停止するようにしても良い。また、ブレーキペダルを踏み込んでブレーキペダルセンサ125をオンすると直ちにオートクルーズ走行を停止するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】油圧駆動車両(トラクタ)の平面図である。
【図2】油圧駆動車両(トラクタ)の側面図である。
【図3】ミッションケース内の動力伝動線図である。
【図4】一部の拡大側面図である。
【図5】一部の拡大側面図である。
【図6】ミッションケース内の一部拡大平面図である。
【図7】油圧回路図である。
【図8】制御ブロック図である。
【図9】制御フローチャート図である。
【図10】制御フローチャート図である。
【図11】制御フローチャート図である。
【図12】制御フローチャート図である。
【図13】制御フローチャート図である。
【図14】制御フローチャート図である。
【図15】制御フローチャート図である。
【図16】制御フローチャート図である。
【図17】制御フローチャート図である。
【図18】制御フローチャート図である。
【符号の説明】
【0073】
11 主変速レバー
27 油圧無段変速装置
33 変速出力軸
36 油圧シリンダ
51 走行第一軸
59 ギア
97 トラニオン軸
98 中立保持機構
127 出力センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧駆動作業車では、トランスミッションケース内に油圧無段変速装置とギア変速装置を組み込み、操縦操作席の近傍に設けた変速レバー等で油圧変速装置の変速出力回転数とギア変速装置の変速段を適宜に組み合わせて所望の走行速度で走行するようにしている。
【0003】
たとえば、特開2002−250437号公報に、主変速レバーと前後進切換レバーを設けて、この主変速レバーの変速位置と前後進切換レバーの変速位置で油圧無段変速装置を構成する油圧ポンプの可動斜板傾倒角を変更して油圧モータの出力回転数を変更し最終的に走行装置の走行速度を変更するようにした油圧駆動作業車が記載されている。
【特許文献1】特開2002−250437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の油圧駆動作業車では、前後進切換レバーを中立位置にした場合に油圧無段変速装置から出力がなされていないことを検出する手段として、可動斜板に繋がるトラニオン軸の回動角度を検出する角度センサが中立位置の信号を出している状態と車軸回転数センサが出力していない状態と油圧無段変速装置の入力側圧力センサと出力側圧力センサの検出圧力に差が無い状態で判定するようにしている。
【0005】
しかしながら、トラニオン軸の回動角度による中立位置は調整不足によって正確で無い場合があり、車軸回転数センサが出力していない状態はトランスミッションケース内の伝動径路のクラッチを切った状態の場合があり、油圧無段変速装置の入力側圧力センサと出力側圧力センサの検出圧力は作動オイルの温度変化や配管からの漏れ及び油圧無段変速装置以外の油圧機器の作動等により変動して圧力差による油圧無段変速装置の中立判定が正確に行えない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、主変速レバーや前後進切換レバーで油圧無段変速装置を中立にして走行を停止させる場合に、油圧無段変速装置からの出力回転が無いことを確実に判定し走行速度の制御を正確に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、油圧無段変速装置(27)の変速出力軸(33)或いは該変速出力軸(33)の直結している部分の走行第一軸(51)、又は該走行第一軸(51)に連結しているギア(59)にその回転を検出する出力センサ(127)を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)による中立位置設定時において、前記出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動するように構成し、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、前記出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両の構成とした。
【0008】
この構成で、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)を走行停止状態にすると、出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動する。そして、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるようにする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とした。
【0010】
この構成で、油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、油圧無段変速装置(27)からの回転出力が直接出力センサ(127)で検出されるので、油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動し、出力センサ(127)の回転検出を無くなるようにすることで出力回転を停止出来るので、出力センサ(127)によって中立状態の精度が高くなる。
【0012】
また、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中においては、出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置するようにしているので、安全性が向上するようになる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持できるので、精度のよい機体の停止状態が確保できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1と図2は、油圧駆動車両の実施例であるトラクタの全体を示す図面で、機体の前側にエンジン24を搭載した原動部1を設け、後側に作業者が搭乗して座る操縦席2を設け、前後中間位置にステアリングハンドル3を立設して、底部に前後輪4,5を装着している。
【0015】
ステアリングハンドル3の左右には前後進切換レバー6とアクセルレバー7を側方へ突設し、フロアステップ8上であってステアリングハンドル3の左側にクラッチペダル9を、ステアリングハンドル3の右側にアクセルペダル10を立設している。
【0016】
操縦席2の左側には、一速から八速まで変速する主変速レバー11と、低・中・高の三段に変速する副変速レバー12と、トラクタの後部に装着するロータリ等を駆動するPTO出力軸41の駆動断続を行うPTOクラッチレバー13を立設している。
【0017】
操縦席2の右側には、自動耕深レバー15と作業機の高さを調整するポジションレバー14を立設している。16aはトラクター後部の作業機を右上げするスイッチであり、16bはトラクター後部の作業機を右下げするスイッチである。
【0018】
18はトラクター後部の作業機を自動的に水平制御する自動水平スイッチであり、17はトラクターの後進時に後部の作業機を自動的に上昇させるバックアップスイッチである。
【0019】
原動部1のエンジン出力を前後輪4,5とPTO出力軸41に増減速して伝動するミッションケース23は、フロアステップ8と操縦席2の下側において機体のメインフレームとしても機能し、前ケース19、繋ぎケース20、中間ケース21、後ケース22の4つの中空ケースを一体に連結した構成である。
【0020】
次に、ミッションケース23内の動力伝動機構を図3で説明する。
エンジン24の出力軸回転が前記クラッチペダル9で断続されるメインクラッチ34を介してミッションケース23の入力軸35へ伝動される。この入力軸35の回転は増速ギア25,26で増速されて油圧無段変速装置27の入力軸28に伝動される。
【0021】
油圧無段変速装置27は可変容量型の油圧ポンプ29と固定容量型の油圧モータ31で構成され、油圧ポンプ29の可動斜板30の傾きを変えることで油圧モータ31の回転を変更する。可動斜板30の傾きは前記主変速レバー11や前後進切換レバー6の動きを検出して作動する油圧シリンダ36(図4、図5)によって変更されて、油圧モータ31のモータ出力軸33の回転が変速される。油圧ポンプ29に繋がるポンプ出力軸32の回転は入力軸28の回転数と同じである。
【0022】
ポンプ出力軸32の回転は、PTO正逆クラッチ37を経て、PTO第一中間軸38からPTO第二中間軸39へ伝動され、さらにPTO副変速クラッチ40を経て最終的にPTO出力軸41でミッションケース23の外部へ取り出されて、ロータリー等の作業機を駆動する。
【0023】
PTO正逆クラッチ37について説明する。図3のシフトギア43の位置は、中立の位置を示している。
ポンプ出力軸32に連結したクラッチ軸42に固定のギア43aに噛み合うシフトギア43を左側に移動して伝動上手側の逆転ギア44aと噛み合わせると、逆転ギア44aと一対のギア44が走行第一軸51に遊嵌した二連ギア46の一方のギア45に噛み合っているので、クラッチ軸42の動力は、ギア43a、シフトギア43、逆転ギア44a、ギア44を経由して二連ギア46のギア45に伝動される。そして、二連ギア46の他方のギア47からPTOカウンタ軸50aに固定のギア48へ伝動される。この伝動系の流れでPTO第一中間軸38が逆転する。
【0024】
また、シフトギア43を伝動下手側の正転ギア49aと噛み合わせると、クラッチ軸42の動力は、ギア43a、シフトギア43を経由して正転ギア49aに伝動される。正転ギア49aはギア49と一体であるので、動力はギア49からPTO第一中間軸38に固定のギア48へ伝動される。この伝動系の流れでPTO第一中間軸38が正転する。
【0025】
PTO副変速クラッチ40は、PTO第一中間軸38に連結したPTO第二中間軸39に小ギア52と中ギア53と大ギア54を固着し、このPTO第二中間軸39と平行に設けたPTO出力軸41に小ギア52に噛み合わせた大クラッチギア55を游嵌し、中ギア56と小ギア57を形成したシフトギア58をスライド可能に係合している。前記大クラッチギア55の側面にはギアドック55aを形成している。また、中ギア56の側面にもギアドック56aを形成している。
【0026】
シフトギア58を左スライドして、中ギア56のギアドック56aと大クラッチギア55のギアドック55aとを係合すると、PTO1速(低速)でPTO出力軸41が駆動される。また、シフトギア58を左スライドさせて中ギア53と中ギア56とを噛み合わせると、PTO2速(中速)でPTO出力軸41が駆動される。また、シフトギア58を右スライドして、大ギア54と小ギア57とを噛み合わせると、PTO3速(高速)でPTO出力軸41が駆動される。
【0027】
油圧モータ31のモータ出力軸33は、前後輪4,5を駆動しているが、その伝動径路は、次のとおりである。
出力軸33に連結した走行第一軸51に固着のギア59を走行第二軸61に遊嵌したクラッチギア60に噛み合わせ、高・中・低に変速する副変速クラッチ63を介して走行第二軸61を駆動し、後輪5への伝動を行う伝動径路と、走行第二軸61から前輪クラッチ90を介して前輪4を駆動する伝動径路を有する。
【0028】
ギア59の歯面に接近してその回転を検出する出力センサ127を設けて、モータ出力軸33の回転を検出して制御装置96にその回転状態が入力する。なお、出力センサ127はモータ出力軸33の回転を直接検出するようにしても良い。
【0029】
副変速クラッチ63は、次のとおりに変速する。
クラッチギア60の動力は、PTO第一中間軸38に遊嵌した三連ギア70の大ギア88へ、クラッチギア60と一体のギア64を噛み合わせて三連ギア70を常時回転している。走行第二軸61に固着のギア62に常時噛み合ってスライド可能にした内歯副変速クラッチ63をクラッチギア60と一体のギア65に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア65、内歯副変速クラッチ63とギア62を介して走行第二軸61に伝わり高速で回転する。(副変速高速)
ギア62の伝動下手側にはギア69とギア66が一体で走行第二軸61に遊嵌している。また、ギア68とギア67が一体で、前記ギア69とギア66の中間部分に遊嵌している。前記ギア69は前記PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70のギア73に噛み合っており、前記ギア68は前記PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70のギア72と噛み合っている。
【0030】
内歯副変速クラッチ63を右側にスライドしてギア67に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア64、ギア88、ギア73、ギア69、ギア66、内歯副変速クラッチ63、ギア62を介して走行第二軸61に伝わり、走行第二軸61を中速で回転する(副変速中速)。
【0031】
内歯副変速クラッチ63をさらに右側にスライドしてギア67に噛み合わせると、クラッチギア60の回転は、ギア64、ギア88、ギア72、ギア68、ギア67、内歯副変速クラッチ63、ギア62を介して走行第二軸61に伝わり、走行第二軸61を低速で回転する(副変速低速)。
【0032】
走行第二軸61の後端部には後輪用デフギア機構74を装着して後輪5を駆動している。また、走行第二軸61に固着のギア71から、PTO第一中間軸38に遊嵌している三連ギア70に対してさらに遊嵌しているギア75と、前輪軸77に固定のギア76を介して前輪軸77へ伝動している。
【0033】
前輪軸77には油圧クラッチ入力軸78を連結し、等速クラッチ79を繋ぐと入力軸78の回転がそのままで油圧クラッチ出力軸84に同速伝動される。また、増速クラッチ80を繋ぐとギア86,83で増速して中継軸81を回転し、さらにギア82,87で油圧クラッチ出力軸84を回転する増速駆動になる。等速クラッチ79と増速クラッチ80を共に繋がない場合は、動力が伝動されないで後輪駆動のみになる。そして、油圧クラッチ出力軸84の回転は、前輪用デフギア機構85を介して前輪4を駆動する。
【0034】
次に、主変速レバー11による油圧無段変速装置27の変速機構を図4から図6で説明する。
ミッションケース23を構成する中間ケース21の側面に立設したピン91に変速プレート92を枢支して、この変速プレート92を主変速レバー11にリンク94で連結する。変速プレート92はガイドプレート93に沿って八箇所で軽く係止されて変速段を八段階に感じるようにしている。(図4参照)この変速プレート92の回動位置は、変速センサ95で制御装置96へ送信される。
【0035】
油圧無段変速装置27は、ミッションケース23を構成する前ケース19の中に配置して設けられている。この前ケース19内で前記可動斜板30に連結したトラニオン軸97を前後進中立位置に保持する中立保持機構98を構成している。(図6参照)
この中立保持機構98は、油圧無段変速装置27の上面において、可変ポンプ29と油圧モータ31を内装しているケース89の内部から突出したトラニオン軸97にカムプレート99を固定し、このカムプレート99の周縁カム部にばね筒101によって付勢されたローラ100を押し付けて、カムプレート99の周縁カム部の凹部99aにローラ100が落ち込むと,トラニオン軸97が中立位置に戻るようにしている。図6に示している状態が中立状態である。
【0036】
長孔104aを有するガイドプレート104は、ミッションケース23を構成する前ケース19に固定して設けられている。そして、前ケース19の外部へ貫通したシフト軸102の下側にリンク(プレート)105を固定され、このリンク105には連結ピン114が立設して受けられている。さらに、連結ピン114はガイドプレート104の長孔104aに挿入されていて、長孔104aにそって動く構成としている。連結ピン114にはリンク(ロッド)103が連結して設けられており、このリンク103は前記カムプレート99に連結している。したがって、シフト軸102を回動すると連結ピン114が長孔104aにそって移動し、リンク(ロッド)103、カムプレート99を介してトラニオン軸97が回動して変速を行えるようにしている。
【0037】
ガイドプレート104上にはリンク103を受けて戴置している状態なので、滑らかに動くようリンク104の下側を下方へ折り曲げて折曲部104bを構成している。この中立保持機構98は、前ケース19の上側を開口して点検・修理を行うが、ミッションケース23の上側のため、内部のオイルを抜くことなく作業が行えるので、メンテナンスが容易である。
【0038】
シフト軸102の前ケース19から上方へ突出した部分では、前ケース19の側面にブラケット115で取り付けた油圧シリンダ36のロッド110先端とシフト軸102に固着のアーム113を、リンク111、リンク111a、ロッド112で連結している。リンク111とリンク111aは、支点111bを支点として回動し、リンク111aの回動の動きを受けてロッド112が動く構成である。したがって、油圧シリンダ36の作動でシフト軸102が回動し、軸102の回動を受けてトラニオン軸97が回動して油圧無段変速装置27を変速する構成である。
【0039】
シフト軸102の回動角度、即ち、トラニオン軸97の回動角を検出するシフト角センサ106をアーム113とロッド112の連結ピン117に係合させている。シフト角センサ106は、シフト軸取付プレート107に取り付けてシフト軸関連部品のサブ組み立て時に組み付けられるようにしている。また、シフト軸取付プレート107にはストッパボルト108,109を設けており、シフト軸102と一緒に回動するプレート102aがストッパボルト108,109に当接することで、シフト軸102の回り過ぎ(オーバーラン)を防ぐようにしている。
【0040】
油圧シリンダ36のロッド110側において、ロッド110の先端には該ロッド110と前記リンク111とを連結するピン110aを設けているが、ロッド110の動き過ぎを規制するストッパ118を設けたブラケット116を前ケース19の側面に取り付けている。そして、前記ピン110aがストッパ118に当接することでロッド110の動き過ぎを規制する。また、図4に示す118aは、ロッド110の縮小側のストッパである。ブラケット115は油圧シリンダ36を前ケース19の壁面へ近づけるために、ブラケット115のシリンダ位置においては凹部を形成して凹ませる構成である。
【0041】
油圧シリンダ36のロッド110とシフト軸102をリンク111、リンク111a、ロッド112及びアーム113で連結する組み付け作業前において、油圧シリンダ36の仮中立設定手段で制御装置96に仮中立位置を記憶させ、制御装置96でロッド110を連結位置へ動かして連結作業し、その後に、中立保持機構98で中立になるロッド110の位置を正しい正式中立位置として制御装置96に記憶させる。なお、仮中立位置記憶状態では、主変速レバー11を最速にしてもロッド110の動きを半分程度にして走行速度を制限し、組立作業中の移動速度を制限している。
【0042】
油圧シリンダ36は、主として主変速レバー11の変速位置を目標速度として変速センサ95でその位置を検出して増速ソレノイド123或いは減速ソレノイド124を作動し油圧シリンダ36を作動して、トラニオン軸97を目標速度になるように回動する。
【0043】
このとき、トラニオン軸97が回動するが、このトラニオン軸97の回動の動きは、リンク機構Rの途中に設けているシフト角センサ106で検出を行い、制御装置96はシフト角センサ106からの信号を受信することで、トラニオン軸97の回動量が目標位置になるようにフィードバックしている。即ち、主変速レバー11の動きを検出する変速センサ95は、あくまでも主変速レバー11の位置を制御装置96に送信するのみであり、実際のトラニオン軸97の位置の確認は、シフト角センサ106で行う。
【0044】
トラニオン軸97の回動角度は、前記出力センサ127の回転検出が零となる角度を中立として制御装置96に記憶し、これを基準に油圧シリンダ36を作動して角度を変えて変速する。従って、前後進切換レバー6を中立にすると、出力センサ127の出力が零となるように油圧シリンダ36を作動させるのである。
【0045】
なお、変速制御は、シフト角センサ106や出力センサ127等の検出データを使って油圧シリンダ36を制御しているので、各センサのどれかが異常データを出力して故障と判断した場合には、油圧シリンダ36の作動オイルをタンクへ戻して保持力を無くし、前記トラニオン軸97の中立保持機構98でトラニオン軸97が中立に戻るようにすると共に、前後輪4,5のブレーキを作動しエンジン回転数制御をアイドリング回転として走行を停止する。
【0046】
図7は、油圧回路図で、作業機の制御と走行の制御に使うメインポンプ140と油圧無段変速装置27とパワーステアリング144の作動圧を送るサブポンプ143を有し、前記トラニオン軸97を回動する油圧シリンダ36の制御油圧は、メインポンプ140からリリーフ弁141を通ってそのトラニオン弁142へ供給しているので、圧油の作動圧が安定している。
【0047】
サブポンプ143からの圧油は、パワーステアリング144へ供給された後に、リリー弁145とオイルクーラ146を通って、油圧無段変速装置27へ供給している。
メインポンプ140からの圧油は、メインリリーフ弁151で油圧を調整して走行バルブ147を通してメインクラッチ34を制御すると共に、ブレーキバルブ148を通して左右のブレーキシリンダ149,150を制御し、さらに、分流した圧油が作業機関係の制御へ送られている。
【0048】
その作業機関係の圧油は、分流バルブ152で水平シリンダ154とメイン昇降シリンダ157へ送られている。水平シリンダ154は水平バルブ153で制御され、メイン昇降シリンダ157は電子油圧バルブ155とスローリターン用チェックバルブ156で制御され、圧油がセーフティリリーフバルブ158を通ってミッションケース23内へ戻される。
【0049】
油圧シリンダ36を制御する制御装置96には、図8に示す情報が入力し、油圧制御バルブの増速ソレノイド123と減速ソレノイド124へ油圧シリンダ36の制御信号が出力する。その入力信号は、前後進切換レバー6の基部に設けた前後進スイッチ119からの前進或いは後進信号、前記主変速レバー11の変速センサ95からの変速位置信号、前記シフト角センサ106からのトラニオン軸97の回動角信号、クラッチペダル9の踏込みを検出するクラッチペダルスイッチ120からの踏込み信号、エンジン回転数制御スイッチ121のオン・オフ信号、副変速レバー12の副変速位置検出スイッチ122からの副変速位置信号、アクセルレバー7とアクセルペダル10のアクセルセンサ126からのエンジン増減速信号、出力センサ127からのモータ出力軸33回転数である。
【0050】
この制御装置96による走行速度制御は、次の如く行っている。
図9のフローチャートは、油圧シリンダ36を駆動するトラニオン弁142の増減速ソレノイド123,124へ送る駆動電力の周波数制御を示している。
【0051】
ステップS1で変速センサ95の変速センサ値を読み込み、ステップS2でクラッチペダルスイッチ120のオン・オフ信号を読み込み、ステップS3でアクセルセンサ126のエンジン増減速信号を読み込み、ステップS4でシフト角センサ106のトラニオン軸97回動角を読み込み、ステップS5で前後進スイッチ119の前進或いは後進信号を読み込み、ステップS6で副変速位置検出スイッチ122の副変速位置信号を読み込む。
【0052】
ステップS7で変速センサ値で設定するトラニオン軸97の目標回動角とシフト角センサ106で検出するトラニオン軸97の現在回動角を比較し、その差が大きい場合(YESの場合)には、ステップS8で増減速ソレノイド123,124への駆動電力の周波数を長く(例えば、駆動周期150msec)にして、ステップS10で油圧シリンダ36を駆動して走行速度をゆっくりと目標速度に変更する。なお、駆動電力の周波数は、オフの時間を長くする。
【0053】
ステップS7での判定がNOの場合には、ステップS9で増減速ソレノイド123,124への駆動電力の周波数を短く(例えば、駆動周期100msec)にして、ステップS10に移行する。
【0054】
図10のフローチャートは、前記のフローチャートで、ステップS7の判定をステップS11の判定に代えた制御で、ステップS11の判定は、主変速レバー11の変速位置が5速以上か、の判定で、5速以上では速度の変化が大きくなるので駆動電力の周波数を長くするのである。
【0055】
図11のフローチャートは、図9のフローチャートで、ステップS7の判定をステップS12の判定に代えた制御で、ステップS12の判定は、副変速レバー12の変速位置が高速か、の判定で、高速では速度の変化が大きくなるので駆動電力の周波数を長くするのである。
【0056】
なお、作業機を機体に装着した場合には走行速度の変化が遅くなるので、作業機装着を感知する作業機装着センサを設けて、その作業機装着センサがオンすると増減速ソレノイド123,124への駆動電力の出力オンタイムを2倍程度に増加することで走行速度変化を速くすることが出来る。
【0057】
図12のフローチャートは、トラニオン軸97を前後進中立位置に戻す制御で、ステップS15の判定に至るデータ読み込みのステップは図9と同一である。
制御不感帯に第一不感帯(例えば、±10bit)と第二不感帯(例えば、±5bit)を設けて、トラニオン軸97が中立位置に近づくと第一不感帯から第二不感帯に切換えて、出力オンタイムを徐々に増加させて(例えば、200msec毎に1msec増加させる)、なるべく中立位置で停止するようにした制御である。
【0058】
ステップS1からステップS6までで各種制御データを読み込み、ステップS15で第一不感帯終了の判定を行う。最初はNOの判定になるので、ステップS16でトラニオン制御の不感帯を第一不感帯(例えば、目標値±10bit或いは目標値―10bit〜目標値+0bit)にする。次に、ステップS17で前後進方向と主変速レバーに対応するトラニオンアーム角度となるよう上記不感帯出調節する。さらに、ステップS18で第一不感帯調節に入れば終了をセットする。
【0059】
ステップS15の第一不感帯終了の判定が、YESになれば、ステップS19でトラニオン制御の不感帯を狭く(例えば、±5bit)する。
次に、ステップS20で、前後進方向と主変速レバーに対応するトラニオンアーム角度となるようバルブが作動しない出力オンタイムから所定時間毎に所定オンタイムを増加させ、上記不感帯に入るまで調節出力する。
【0060】
図13のフローチャートは、前記図12のフローチャートで、ステップS17とステップS18の間にステップS21を入れた制御で、ステップS21では目標(−10bit)を外れるまで調整出力を行う。この制御で、一回の動き量を少なくしてトラニオン軸97の中立調節精度の向上を図ることが出来る。
【0061】
図14のフローチャートは、トラニオン軸97と油圧シリンダ36を連結するリンク機構のガタを制御装置96に記憶させる制御で、ステップS1からステップS6までで各種制御データを読み込み、ステップS25でトラニオン調整モード判定がYESであれば、ステップS26で、トラニオンセンサ値の最大値と最低値を読み込み更新する。
【0062】
ステップS27で水平感度スイッチをオンにしていれば、ステップS28へ移行し、トラニオンセンサ値の最大値と最低値で平均値を求め、その平均値を中立基準値として不揮発記憶する。
【0063】
そして、ステップS29で、油圧シリンダ36の伸び出力を行い、トラニオンセンサ値が±2bit変化しなくなれば、その時の値を伸び最大基準値とし、不揮発記憶する。
更に、ステップS30で、油圧シリンダ36の縮み出力を行い、トラニオンセンサ値が±2bit変化しなくなれば、その時の値を縮み最大基準値とし、不揮発記憶する。
【0064】
図15のフローチャートは、トラニオン軸97の中立位置調整制御で、経年変化による中立位置のズレを調整する。ステップS31で、前後進切換レバー6を前進から中立へ戻すか後進から中立へ戻す判定がYESならば、ステップS32でトラニオン制御中立を判定し、これもYESならば、ステップS33で、前後進切換レバー6を前進から中立へ戻す中立停止時のトラニオンセンサ値と後進から中立へ戻す中立停止時のトラニオンセンサ値の数回分で平均値を求め、現在の中立基準値を補正する。
【0065】
ステップS31とステップS32の判定がNOであれば、ステップS34で、前後進方向と主変速レバー11に対応するトラニオンアーム角度となるよう上記不感帯(?)で調節する。
【0066】
図16のフローチャートは、作業機上昇を他の制御に優先させる制御のフローチャートである。
ステップS40で変速センサ95の変速センサ値を読み込み、ステップS41でリフトアームセンサ値でを読み込み、ステップS42でデプスセンサ値を読み込み、ステップS43でシフト角センサ値を読み込み、ステップS44で前後進スイッチ119の前進或いは後進信号を読み込み、ステップS45で副変速位置検出スイッチ122の副変速位置信号を読み込み、ステップS46でスロープセンサ値でを読み込み、ステップS47でストロークセンサ値でを読み込み、ステップS48で切れ角センサ値でを読み込む。
【0067】
そして、ステップS49で作業機の上昇を開始し、ステップS50で上昇出力初期(例えば、0.5秒以内)であれば、ステップS51の作業機上昇用ソレノイド以外の制御用ソレノイドバルブの出力を抑制して、作業機の上昇開始を素早く行う。
【0068】
図17のフローチャートは、同じく、作業機上昇を他の制御に優先させる制御のフローチャートで、ステップS50で上昇出力初期であれば、ステップS52で上昇ソレノイドバルブの流量データを一定量増加出力し、上昇出力初期を過ぎれば、ステップS53で上昇ソレノイドバルブの流量データを通常に戻す。
【0069】
図18のフローチャートは、走行速度を一定に保つオートクルーズ走行を行う場合に増減速の変化率を一定に維持する制御のフローチャートで、ステップS60でオートクルーズに設定していれば、例えば、ステップS61で増速が開始されると、ステップS62で前回の増速時の速度変化率を目標車速変化率と比較し、変化率が大きければステップS63でトラニオン駆動量を減少させ、変化率が小さければステップS64でトラニオン駆動量を増加させる。
【0070】
なお、オートクルーズ走行は、作業機を機体に装着して作業を行う場合に必要な機能であるために、作業機装着センサを設けて、この作業機装着センサが作業機装着を感知しない場合にはオートクルーズ走行を不可にする制御を行う。
【0071】
オートクルーズ走行は、走行中にオートクルーズスイッチをオンすることで働き、その走行速度を維持すべくトラニオン軸97の回動角度を保持するようになる。また、走行速度を設定するオートクルーズダイヤルを設け、このオートクルーズダイヤルで設定した速度まで増速した後は主変速レバー11を操作しても変速しないようにする。或いは、主変速レバー11を操作して変速位置を変えて一定時間経過するとその変速位置の速度に再設定されるようにしても良い。或いは、主変速レバー11を操作して変速位置を変えると直ちにオートクルーズ走行を停止するようにしても良い。また、ブレーキペダルを踏み込んでブレーキペダルセンサ125をオンすると直ちにオートクルーズ走行を停止するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】油圧駆動車両(トラクタ)の平面図である。
【図2】油圧駆動車両(トラクタ)の側面図である。
【図3】ミッションケース内の動力伝動線図である。
【図4】一部の拡大側面図である。
【図5】一部の拡大側面図である。
【図6】ミッションケース内の一部拡大平面図である。
【図7】油圧回路図である。
【図8】制御ブロック図である。
【図9】制御フローチャート図である。
【図10】制御フローチャート図である。
【図11】制御フローチャート図である。
【図12】制御フローチャート図である。
【図13】制御フローチャート図である。
【図14】制御フローチャート図である。
【図15】制御フローチャート図である。
【図16】制御フローチャート図である。
【図17】制御フローチャート図である。
【図18】制御フローチャート図である。
【符号の説明】
【0073】
11 主変速レバー
27 油圧無段変速装置
33 変速出力軸
36 油圧シリンダ
51 走行第一軸
59 ギア
97 トラニオン軸
98 中立保持機構
127 出力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧無段変速装置(27)の変速出力軸(33)或いは該変速出力軸(33)の直結している部分の走行第一軸(51)、又は該走行第一軸(51)に連結しているギア(59)にその回転を検出する出力センサ(127)を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)による中立位置設定時において、前記出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動するように構成し、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、前記出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
油圧無段変速装置(27)の変速出力軸(33)或いは該変速出力軸(33)の直結している部分の走行第一軸(51)、又は該走行第一軸(51)に連結しているギア(59)にその回転を検出する出力センサ(127)を設け、機体の走行速度を変速する主変速レバー(11)による中立位置設定時において、前記出力センサ(127)が走行第一軸(57)又はギア(59)の回転を検出しなくなるように油圧無段変速装置(27)のトラニオン軸(97)を油圧シリンダ(36)で回動するように構成し、主変速レバー(11)を操作して機体が走行中において、前記出力センサ(127)が回転状態を検出しなくなると、油圧シリンダ(36)を作動させてトラニオン軸(97)を中立位置となるように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧シリンダ(36)の作動を停止した状態においては、中立保持機構(98)によりトラニオン軸(97)を中立状態に保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−275024(P2008−275024A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117146(P2007−117146)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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