説明

作業車輌

【課題】湿田などの地盤が軟弱な場所における走行性能の高い作業車両を提供する。
【解決手段】トラクタは、左右一対の前部クローラ走行装置および後部クローラ走行装置を駆動させて走行すると共に、湿田などの地盤が軟弱な場所を走行する場合や、スタットして走行不能になった場合、作業者は増速機能スイッチ77をONにする。増速機能スイッチ77がONになると、増速指令手段76から増速切換実行手段75に制御信号が出力され、油圧指令手段73を介して増速制御バルブ64が制御されて増速切換え変速機構が増速状態へと切換わり、前部クローラ走行装置が後部クローラ走行装置に比して高速に駆動する。前部クローラ走行装置が高速に駆動すると、該前部クローラ走行装置が圃場から受ける機体を上昇させる方向の反力が増大し、機体の沈み込み量が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部及び後部のそれぞれに左右一対の走行装置を備えた作業車両に係り、詳しくは、4クローラ型トラクタなどの湿田等の地盤が軟弱な場所であっても走行することが可能な作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に対して相対回転可能なトラックフレーム(フレーム)を設けると共に、このトラックフレームの前後端にそれぞれ2つのリンク機構を介してアイドラホイール(第1の転輪、第2の転輪)を配設し、前部アイドラホイール(第1の転輪)から車軸中心までの距離を、後部アイドラホイール(第2の転輪)から車軸中心までの距離よりも長くした三角形状のクローラ走行装置を機体の前後に左右一対ずつ備えた4クローラ型車輌が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−109947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載のような、走行装置の構造を改良することによって走破性能を向上させた作業車輌は、障害物や凹凸のある圃場を容易に走行することができるが、このような走行装置であっても、地盤が軟弱な湿田などでは走行装置が一定深さまで埋まり、スタットして走行不能の状態に陥る虞があった。
【0005】
そこで本発明は、作業車輌の走行状態に応じて、クローラ走行装置である前部走行装置を後部走行装置よりも速く駆動させ、この前部走行装置が地面から受ける機体を上昇させる方向の反力を増大させることによって、上記課題を解決した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、機体(2)の前部に設けられた左右一対の前部走行装置(10)と、前記機体(2)の後部に設けられた左右一対の後部走行装置(11)とを備え、駆動源(41)からの動力を変速装置(42)によって変速すると共に、前記前部及び後部走行装置(10,11)に出力して走行する作業車輌(1)において、
これら前部及び後部走行装置(10,11)の内、少なくとも前記前部走行装置(10)は、車軸(16,17)に装着した駆動スプロケット(19,20)と、その下方に設けたトラックフレーム(21,22)の前端に配設した前部アイドラホイール(23,26)と、前記トラックフレーム(21,22)の後端に配設した後部アイドラホイール(25,27)と、これら前後のアイドラホイール(23,25,26,27)間に配設され、前記トラックフレーム(21,22)に回転自在に取付けられた転輪(29,30)とに亘りクローラ(31,32)を巻装したクローラ走行装置(10,11)であり、
前記変速装置(42)は、前記前部走行装置(10)及び前記後部走行装置(11)を略々同じ速度で駆動させる標準状態又は、前記前部走行装置(10)を前記後部走行装置(11)に比して高速で駆動させる増速状態となす変速機構(51)を備え、
前記変速機構(51)を切換え手段(77)によって前記標準状態、又は前記増速状態の何れか一方に切換え可能にしてなる、
ことを特徴とする作業車輌にある。
【0007】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、クローラ走行装置である前部走行装置を後部走行装置よりも高速で回転させることによって、前部駆動装置が地面から受ける機体を上昇させる方向の反力を増大させて、地盤が軟弱なため走行装置が沈下し、走行することが困難な湿田等においても、円滑に走行することができる。特に、一旦、スタットして走行不能状態に陥ったとしても、上述したように前部走行装置を後部走行装置よりも高速で駆動させることによって、走行不能状態から脱出させることができ、再度走行を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面に基づいて本発明に係る実施の形態について説明をする。図1及び図2に示すように、本発明に係る作業車輌としてのトラクタ1は、走行機体2の前方にボンネット3に覆われたエンジン(駆動源)41(図5参照)を有していると共に、その後方にはキャビン5が設けられており、該キャビン5内にはステアリングハンドル6等からなる運転操作部7及び運転座席9が配設されている。
【0010】
上記走行機体2は、前部クローラ走行装置(前部走行装置)10,10と、後部クローラ走行装置(後部走行装置)11,11とによって支持されており、トラクタ1は、機体前後にそれぞれ左右一対ずつ配設されたクローラ走行装置10,10,11,11によって駆動する4クローラ型のトラクタである。
【0011】
[クローラ走行装置の概略]
これらクローラ走行装置10,10,11,11は、フロントアクスルハウジング及びリヤアクスルハウジングとしてのトランスミッションケース13の左右両側にそれぞれ連結されたファイナルケース15に支持されており(図3参照)、ファイナルケース15の先端で車軸16,17に取付けられた駆動スプロケット19,20と、トラックフレーム21,22の前後端に設けられた前後のアイドラホイール23,25,26,27と、これら前後のアイドラホイール23,25,26,27間においてトラックフレーム21,22の下方に回転自在に取付けられた複数の転輪29・・・,30・・・とにクローラ31,32を巻装して構成されている。
【0012】
上記トラックフレーム21,22は、ファイナルケース15,15の先端側の外周に嵌合し、車軸16,17を中心に前後に揺動するホルダ33に、連結ブラケット35,36を介して取付けられており、それによりクローラ走行装置10,10,11,11は、車軸16,17を中心として所定範囲内で前後に揺動自在に構成されている(図1及び図2の2点鎖線部参照)。
【0013】
また、トラックフレーム21,22の下方には、転輪29,30からクローラ31,32が外れるのを防止するクローラガイド38,37が設けられており、これらクローラガイド36,37の両端は、前後のアイドラホイール23,25,26,27の軸芯方向に向いている。
【0014】
[前部クローラ走行装置の説明]
次に、前部クローラ走行装置10について詳しく説明をする。図1に示すように、前部クローラ走行装置10のトラックフレーム21は、機体前端に配置された転輪29aの上方近傍において、機体上方に向けて屈曲して形成されており、この屈曲したトラックフレーム21の前端に前部アイドラホイール23が回転自在に取付けられている。
【0015】
この前部アイドラホイール23は、上方に向けて屈曲したトラックフレーム21の先端に取付けられているため、前部クローラ走行装置10の全高Hの2分の1以上の高さHに位置しており(H≧H/2)、前部アイドラホイール23と機体前端に配置された転輪29aとによって形成されるクローラ前部の仰角αが大きなっている。
【0016】
一方、後部アイドラホイール25は、機体前後方向に平行に延びたトラックフレーム21の後端部に取付けられ、その高さHは、前部クローラ走行装置10の全高Hの2分の1以下になる(H/2>H)ように配設されており、この後部アイドラホイール25によって形成されるクローラ31の後部上方の傾斜面Bと、圃場面とのなす角βは、上記仰角αと略々同じ角度となっている。そのため、クローラ31の前部下方の傾斜面(立ち上がり部)Aと、後部上方の傾斜面Bとが略々平行な関係になり、前部クローラ走行装置10は、全体として略菱形(略平行四辺形)の形状となっている。
【0017】
次に、前部クローラ走行装置10の支持構造について詳しく説明をする。上記前部クローラ走行装置10は、上述したようにファイナルケース15によって支持されており、ファイナルケース15は、図3及び図4に示すように、キングピンケース39を介してフロントアクスルハウジング13に連結されている。
【0018】
トラックフレーム21は、該ファイナルケース15の先端に嵌合しているホルダ33と、連結ブラケット35を介して連結されており、この連結ブラケット35とトラックフレーム21との取付け部には、ゴムなどの弾性部材からなる防振材40が介在している。
【0019】
前部クローラ走行装置10は、左右に操舵されることと、湿田においてスタックしないように仰角αを大きく取っていることとが相俟って接地面積が広くなく、そのため、舗装路面などを走行する際に、クローララグが複数同時に接地したり、一つのクローララグのみが接地したりして上下動現象が生じて走行振動となっているが、上記防振材40は、該走行振動を緩衝するダンパとなっている。
【0020】
なお、防振材40は走行振動を緩衝するためには、ホルダ33と連結ブラケット35との取付け部などに配置してもよく、走行振動を緩衝する観点から、フロントアクスルにサスペンションを設けても良い。
【0021】
[後部クローラ走行装置の説明]
次に後部クローラ走行装置11について詳しく説明をする。後部クローラ走行装置11も、前部クローラ走行装置10と同様に、駆動スプロケット20、前部アイドラホイール26、後部アイドラホイール27及び転輪30・・・にクローラ32を巻装して構成されており、前部アイドラホイール26を転輪30・・・よりも上方に配置して、クローラ前部に仰角γを形成している。
【0022】
図1及び図2に示すように、上記後部クローラ走行装置11の前部アイドラホイール26は、前部クローラ走行装置10の前部アイドラホイール23と略々同じ高さ配設されており(H≒H)、前部クローラ走行装置10の全高Hの2分の1以上の高さに位置している(H≧H/2)。
【0023】
また、後部クローラ走行装置11は、車軸中心(後車軸17)がその前後長の半分よりも後方側に位置しており、その前部アイドラホイール26と、複数の転輪30のうち機体前端側に位置している転輪30aとの間の機体前後方向距離bが、前部クローラ走行装置10に比して前方に長くなるように構成されている(b>a)。そのため、後部クローラ走行装置11の仰角γは、前部クローラ走行装置10の仰角αよりも小さく(γ>α)なっており、地面から上方に向って立ち上がるクローラ32の前方下方の傾斜面(立ち上がり部)Cは、前部クローラ走行装置10の前方下方の傾斜面Aよりも長く形成されている。
【0024】
一方、後部アイドラホイール27は、機体前後方向に平行に延びたトラックフレーム22の後端部に取付けられ、その高さHは、前部アイドラホイール26よりも低く配置されている(H>H)。
【0025】
[トラクタの動力伝達機構の説明]
次にトラクタの動力伝達機構について説明をする。図5に示すように、エンジン41から出力された動力は、変速装置42へと入力される。変速装置42へと入力された動力は、主クラッチ43を介してメインシャフト45へと出力され、複数の変速ギヤ及びクラッチからなる主変速部46及び副変速部47によって変速される。
【0026】
上記主変速部46及び副変速部47によって変速された動力は、後部クローラ走行装置11に動力を出力する2クローラ駆動と、前後のクローラ走行装置10,11に動力を出力する4クローラ駆動とを切換える2クローラ−4クローラ駆動切換え部49へと出力され、該2クローラ−4クローラ駆動切換え部49において後部クローラ走行装置11側に分岐された動力は、差動装置50を介して後部クローラ走行装置11へと出力される。
【0027】
一方、2クローラ−4クローラ駆動切換え部49において前部クローラ走行装置10側に分岐された動力は、前部クローラ走行装置10と後部クローラ走行装置11の駆動速度が略々同じである標準状態と、前部クローラ走行装置10を後部クローラ走行装置11よりも高速に駆動させる増速状態とを切換える増速切換え変速機構(変速機構)51へと出力される。該増速切換え変速機構(変速機構)51によって、標準状態もしくは増速状態に変速された動力は、差動装置52を介して前部クローラ走行装置10へと出力される。
【0028】
また、メインシャフト45に出力された動力は、PTO変速部53を介してPTOシャフト56にも出力され、各種作業機に動力が伝達される。
【0029】
図6に示すように、上記増速切換え変速機構51は、それぞれ歯数の異なる標準ギヤ57及び増速ギヤ59のどちらか一方からの動力を、切換えクラッチ機構60によって前部クローラ走行装置10へ動力を伝達する4クローラ駆動シャフト61に出力することにより標準状態と、増速状態とを切換えており、上記増速ギヤ59は、標準ギヤ57よりも歯数の少ないギヤで形成される。
【0030】
切換えクラッチ機構60は、標準ギヤ57からの動力を断接するボールクラッチ62と、増速ギヤ59からの動力を断接する湿式多板クラッチ63とから構成されており、これら2つのクラッチ62,63は、4クローラ駆動シャフト61に嵌合され、軸方向に移動自在なピストン部材65が増速制御バルブ64(図7参照)からの油圧によって左右に移動することによって係脱されている。
【0031】
上記湿式多板クラッチ63は、4クローラ駆動シャフト61にスプライン嵌合しているハブ部材66と、該ハブ部材の外周に回転自在に遊嵌しているドラム部材67と、上記ピストン部材65とから構成されており、該ドラム部材67には増速ギヤ59と歯合するギヤ67aが形成されている。
【0032】
また、ドラム部材67及びハブ部材66には多数の摩擦係合板が設けられており、ピストン部材65の油室lに4クローラ駆動シャフト61の油路m、オリフィスnを介して油圧が供給されると、ピストン部材65がスプリング69の付勢力に反して上記摩擦係合板を押圧し、これらドラム部材67とハブ部材66が一体に回転することによって、増速ギヤ59からの動力が4クローラ駆動シャフト61に伝達される(図6(b)の状態)。
【0033】
一方、ボールクラッチ62は、ピストン部材65を挟んで湿式多板クラッチ63と対向して設けられており、標準ギヤ57と歯合するギヤ70と、該ギヤ70の基部に設けられたボール孔に配設されたボール71と、ギヤ70側へと向って4クローラ駆動シャフト61に沿って延長されたピストン部材65の延長部65aとから構成されている。
【0034】
また、4クローラ駆動シャフト61には、上記ボール71と対応する位置にテーパー状の凹部61aが形成されていると共に、該ボール71は上記延長部65aに内包されており、ピストン部材65がスプリング69によってギヤ70側に付勢されると、ボール71が延長部65aによって凹部61aへと押圧されて、ギヤ70と4クローラ駆動シャフト61とが一体になって回転する(図6(a)の状態)。
【0035】
また、ピストン部材65の延長部65a先端部(ギヤ70側)は、ボール71と接する内周面が一定厚さ削られており、油室lに油圧が供給されてピストン部材65が湿式多板クラッチ63側に移動すると、ボール71は延長部65aの薄肉部分に当接する。そのため、ボール71は外周側に移動して4クローラ駆動シャフト61の凹部61aから外れ、該4クローラ駆動シャフト61と、ギヤ70との固定が解除される(図6(b)の状態)。
【0036】
[増速制御についての説明]
次に増速制御についての説明をする。上述したように変速装置42は、増速切換え変速機構51を有しており、該増速切換え変速機構51は、変速装置42の油圧制御装置(不図示)の増速制御バルブ64からの油圧によって、標準状態と増速状態とを切換えている。図7に示すように、この増速制御バルブ64は、制御部(マイコンユニット)72(切換え手段)の油圧指令手段73からの制御信号によって油圧を制御しており、該制御部72は、油圧指令手段73、増速切換実行手段75、増速指令手段76を有している。
【0037】
また、制御部72には、図2に示すような、地盤が軟弱な湿田などを走行する場合や、湿田などで少なくとも前後のクローラ走行装置10,11のどちらか一方が空転して走行不能状態(スタット)に陥った場合に作業者が操作する増速機能スイッチ(切換え手段)77、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ79、変速装置42の出力軸の回転数から車速を検出する車速センサ80などが接続されている。
【0038】
上記増速指令手段76は、増速機能スイッチ77がONされることにより入力される増速信号に基づいて、増速切換実行手段75に増速切換え変速機構51を増速側に切換える制御信号を出力する。増速指令手段76からの制御信号が入力された増速切換実行手段75は、油圧指令手段73を介して増速制御バルブ64から切換えクラッチ機構60の油室lに油圧を供給し、湿式多板クラッチ63を係合させて、増速切換え変速機構51を増速状態に切換える。
【0039】
また、増速機能スイッチ77をONすると、増速指令手段76は、エンジン回転数センサ79からのエンジン回転数と、車速センサ80からの車速との差によって自動的にスタック状態(もしくは軟弱地盤走行状態)を判定し、増速切換実行手段75に自動的に切換え信号を出力するように構成してもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る4クローラ型のトラクタ1の作用について説明をする。作業者は、キャビン5に乗り込むとエンジンを始動させ、前後のクローラ走行装置10,11の駆動スプロケット19,20に動力を伝達すると共に、これら4つのクローラ走行装置10,11によってトラクタ1を走行させる。
【0041】
図2に示すように、トラクタ1が耕耘、代掻きなどの作業のため、地盤の軟弱な湿田に進入する際や、クローラ走行装置10,11が空転してスタック状態に陥ると、作業者は増速機能スイッチ77を切換える(ONにする)。
【0042】
増速機能スイッチ77がONになると、制御部72の増速指令手段76から増速切換実行手段75に制御信号が出力されると共に、該増速切換実行手段75が油圧指令手段73を介して増速制御バルブ64に増速切換え変速機構51の油室lへ油圧を供給させる。
【0043】
油室lに油圧が供給されると、スプリング69の付勢力によってボールクラッチ62を係合させていたピストン部材部材65が湿式多板クラッチ63側へと移動し、摩擦係合板を押圧して該湿式多板クラッチ63を係合させる。湿式多板クラッチ63が係合すると、増速ギヤ59からの動力がギヤ67aを介して4クローラ駆動シャフト61に伝達され、増速切換え変速機構51は増速状態へと切換わる。
【0044】
上記増速切換え変速機構51は増速状態へと切換わると、前部クローラ走行装置10が後部クローラ走行装置11に比して高速で駆動し始め、該前部クローラ走行装置10が高速で駆動すると、前部クローラ走行装置10が圃場面から受ける機体を上昇させようとする反力が大きくなることによって、トラクタ1はスタック状態から抜け出して再度走行を開始することが出来たり、直進走行時でも機体の沈み込みを抑制して地盤が軟弱な圃場を円滑に走行する。
【0045】
上記のようにトラクタ1を構成したことによって、湿田のような地盤が軟弱で機体が沈み込んでしまうような圃場でも、前部クローラ走行装置10を後部クローラ走行装置11に比して高速で駆動させることによって、前部クローラ走行装置が地面から受ける機体を上昇させる方向の反力を増大させて円滑に走行することができる。
【0046】
また、一旦スタットして走行不能状態に陥ってしまったとしても、作業者は増速機能スイッチによって増速切換え変速機構51を増速状態にすることで、機体を上昇させる方向の反力を増大させて、走行不能状態から抜け出すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るトラクタの側面図。
【図2】本発明の実施の形態に係るトラクタの湿田走行状態を示す側面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る前部クローラ走行装置の取付け部を示す正面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る前部クローラ走行装置の側面図。
【図5】本発明の実施の形態に係るトラクタの動力伝達図。
【図6】(a)本発明に係る増速切換え変速機構の標準状態を示す断面図、(b)本発明に係る増速切換え変速機構の増速状態を示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態に係るトラクタのブロック図。
【符号の説明】
【0048】
1 トラクタ(作業車輌)
2 走行機体(機体)
10 前部クローラ走行装置(前部走行装置)
11 後部クローラ走行装置(後部走行装置)
16,17 車軸
19,20 駆動スプロケット
21,22 トラックフレーム
23,26 前部アイドラホイール
25,27 後部アイドラホイール
29,30 転輪
31,32 クローラ
42 変速装置
51 増速切換え変速機構(変速機構)
77 増速機能スイッチ(切換え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けられた左右一対の前部走行装置と、前記機体の後部に設けられた左右一対の後部走行装置とを備え、駆動源からの動力を変速装置によって変速すると共に、前記前部及び後部走行装置に出力して走行する作業車輌において、
これら前部及び後部走行装置の内、少なくとも前記前部走行装置は、車軸に装着した駆動スプロケットと、その下方に設けたトラックフレームの前端に配設した前部アイドラホイールと、前記トラックフレームの後端に配設した後部アイドラホイールと、これら前後のアイドラホイール間に配設され、前記トラックフレームに回転自在に取付けられた転輪とに亘りクローラを巻装したクローラ走行装置であり、
前記変速装置は、前記前部走行装置及び前記後部走行装置を略々同じ速度で駆動させる標準状態又は、前記前部走行装置を前記後部走行装置に比して高速で駆動させる増速状態となす変速機構を備え、
前記変速機構を切換え手段によって前記標準状態、又は前記増速状態の何れか一方に切換え可能にしてなる、
ことを特徴とする作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−89676(P2010−89676A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262778(P2008−262778)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】