説明

作業車

【課題】運転席の両側方に配備されるフェンダを支持する支持強度、該フェンダの強度並びに手摺を支持する支持強度を確保する。
【解決手段】操向ハンドル26と、該操向ハンドル26の後方に位置する運転席22との間にステップ50が設けられると共に、該運転席22の両側方に後輪フェンダ45L、45Rがそれぞれ配備されている。該運転席22の後方には、前記後輪フェンダ45L、45Rの近傍からそれぞれ上方に伸びる一対の支柱56L、56Rを備えたロプス55が配備されており、運転席22の側方には、支柱56L、56Rからステップ50に亘って手摺60がそれぞれ架け渡されており、該手摺60が同側に配備されている後輪フェンダ45L、45Rを支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のフェンダ間に運転席を備えた作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業車としてトラクタが公知であり、該トラクタにおいては、操向ハンドルと、該操向ハンドルの後方に位置する運転席との間にステップが設けられると共に、該運転席の両側方に後輪フェンダがそれぞれ配備されている。また、各後輪フェンダの近傍から上方に伸びる一対の支柱を備えたロプスを運転席の後方に備えたロプス型のトラクタが公知である。
例えば特許文献1には、上述の如きロプス型のトラクタが開示されている。該トラクタにおいては、運転席から左右方向に隔離した位置にロプスの支柱が立設固定され、該ロプス支柱の左右外方に後輪フェンダがそれぞれ位置付けされている。各後輪フェンダは、立面部がロプス支柱に固着されている。また、左右一対の後輪フェンダの前側と後側のそれぞれに前・後サポートが架設され、該前・後サポートを介して左右の後輪フェンダの立面部が互いに連結されている。また、後輪フェンダの上面には、運転席の側方となる位置に手摺が配備されている。
【特許文献1】特開平7−304467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のトラクタにおいては、前・後サポートによって後輪フェンダの支持強度が確保されているため、運転席周囲の省スペース化を図るべく前・後サポートを取り外すと、後輪フェンダの支持強度を確保することができない問題があった。
また、通常、後輪フェンダは所定の厚さを有する金属板にプレス加工を施すことにより形成されている。しかし、上記トラクタにおいて車体の軽量化等の目的で後輪フェンダを樹脂や薄板等の比較的低強度の素材によって形成すると、後輪フェンダとしての強度が低下するのみならず後輪フェンダ上に配備されている手摺を支持する支持強度を確保することも困難となる問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、運転席の両側方に配備されるフェンダを支持する支持強度、該フェンダの強度並びに手摺を支持する支持強度を確保することができる作業車を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、操向ハンドルと、該操向ハンドルの後方に位置する運転席との間にステップが設けられると共に、該運転席の両側方にフェンダがそれぞれ配備され、該運転席の後方には、前記フェンダ又はその近傍からそれぞれ上方に伸びる一対の支柱を備えたロプスが配備されている作業車において、
少なくとも前記運転席の一側方には、該一側方に位置する一方の支柱からステップに亘って手摺が架け渡されており、該手摺が前記一側方に位置する一方のフェンダを支持していることを特徴とする。
【0006】
これによれば、手摺は、ロプスとステップに支持されることとなり、手摺の支持強度が確保される。また、フェンダは、手摺に支持されることによってその強度が向上する。また、手摺にフェンダが支持されることにより、フェンダは手摺を介してロプスとステップに支持されることとなり、該フェンダの支持強度も確保される。
また、前記手摺は、前記一方のフェンダの上面に沿ってステップから前記一方の支柱まで延伸されており、該手摺の中途部には、前記一方のフェンダを支持するフェンダ支持部が突設されていることが好ましい。
【0007】
これによれば、フェンダの上面が手摺によって防護されることとなる。このため、外方よりフェンダの上面に向けて落下物等が落下する場合にも、該落下物等が手摺に衝突した後にフェンダ上面又はフェンダ下方に落下することにより、該フェンダの損傷は軽度なものとなる。
また、前記ステップは、作業者が乗降するための乗降路を前記一側方のフェンダの前方に備え、前記手摺は、前記乗降路の後上方となる位置に、後方に向かうにしたがって左右方向外方に移行する屈曲状に形成されて前記乗降路から乗降する作業者が把持可能な乗降把持部を有することが好ましい。
【0008】
これによって、作業者は乗降把持部を把持しながら車体外方から運転席に向けて乗降路を移動することができ、姿勢を安定させた状態で運転席に搭乗することができる。
また、前記手摺は、前記運転席の一側方の側縁と対向する位置に、前記運転席に近接するように屈曲すると共に該側縁に沿って延伸されて前記運転席に着座する作業者が把持可能な着座把持部を有することが好ましい。
これによれば、運転席に近接した位置に着座把持部が延伸されることとなり、運転席に座した作業者は姿勢を崩すことなく手摺を把持することができる。また、後方を視認する等、作業者が運転席に座した状態でその姿勢を大きく変更する場合、作業者は着座把持部を把持することによってその姿勢を支え、また、維持することができる。
【0009】
また、前記運転席と前記一方のフェンダとの間及び/又は該フェンダの上面には1又は複数の操作レバーが配備されており、前記手摺は、前記操作レバーの上方を通過して延伸されていることが好ましい。
これによれば、操作レバーが手摺によって防護される。このため、作業時にフェンダ上面を通過する低木の枝葉等が手摺によって払い除けられることとなり、該枝葉の操作レバーへの絡みつきに起因する該操作レバーの操作不良は改善される。
また、前記一方のフェンダは、後部が前記一方の支柱に支持されると共に前部が前記フェンダ支持部に支持されていることが好ましい。
【0010】
これにより、フェンダの支持強度はさらに向上することとなる。
さらに、前記一方のフェンダは、樹脂により形成されていることが好ましい。
これにより、車体の軽量化が図られる。また、該フェンダは手摺に支持されるため、厚肉化による強度向上を図ることなく強度が確保されることとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転席の両側方に配備されるフェンダを支持する支持強度、該フェンダの強度並びに手摺を支持する支持強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るトラクタ1においては、図5に示す如く、2軸4車輪形の車体2を備え、該車体2は、左右一対の前輪3と左右一対の後輪4とを備えている。前輪3は、操向輪であると共に駆動可能とされ、これによってトラクタ1は四輪駆動とされているが、前輪3への動力を断接することにより二輪駆動に切換可能である。
車体2は、エンジン5の後部にクラッチハウジング6を介してミッションケース7を連接することによって構成されている。また、エンジン5及びラジエータ等のエンジン補器(図示省略)は、天板を開閉自在としたボンネット8によって被われている。
【0013】
車体2の後部には、左右一対のリフトアームや油圧昇降機等から構成される油圧装置10が搭載されており、該油圧装置10を介して作業機等をトラクタ1の後部に連結することができる。
また、車体2の上部には、エンジン5の後方から油圧装置10の上面に亘ってフロアシート11が配備されている。該フロアシート11は、図1に示す如く、ボンネット8の後方から油圧装置10の前方に亘ってミッションケース7の上方を覆う床部12と、該床部12の後端から略鉛直に立ち上がる立上り部13と、該立上り部13の上端から車体2の後上方に向けて延設されて油圧装置10の上方を覆う平坦部14とを備えている。
【0014】
また、図5に示す如く、該フロアシート11の上方に運転操縦部20が設けられている。
該運転操縦部20は、エンジン5の後方に設けられたフロントパネル21と、該フロントパネル21の後方に設けられた運転席22と、該運転席22の両側に配備された左右一対の操縦部23L、23Rとを備えている。
図2〜図4に示す如く、フロントパネル21は、エンジン5の背部と対向した状態でフロアシート11の床部12の前端に立設されている。また、フロントパネル21は、ハンドルポスト25を介して操向ハンドル26を支持すると共に、ブレーキペダル、フットアクセルペダル、クラッチペダル等、複数の吊下げ式のペダル装置27を揺動自在に枢支している。また、フロントパネル21には、操向ハンドル26よりも前方となる位置にメータパネル28が配備されている。
【0015】
運転席22は、操向ハンドル25の後方となる位置に配備され、フロアシート11の平坦部14の上面にシート支持体(図示省略)を介して配備されている。また、運転席22は、図2に示す如く、該シート支持体に上下方向の軸心を介して揺動可能に支持された座30と、該座30の後部に立設された背もたれ31と、該背もたれ31の上下方向中途部から車体2の前方に向けて伸びる左右一対のアームレスト32とを備えている。
図2に示す如く、右側の操縦部(以下、右操縦部という)23Rには、車体2の主変速機構を操作するための主変速レバー36と、車体2の副変速機構を操作するための副変速レバー37と、手動でアクセル操作を行うためのハンドアクセルレバー38と、油圧装置10に連結された作業機等を遠隔操作するための補助コントロールレバー39とが集中して配備されている。また、これらの操作レバーの下端は、各レバーのガイド溝を有するカバー41によって覆われている。
【0016】
また、左側の操縦部(以下、左操縦部という)23Lには、サイドブレーキレバー40やその他の操作レバーが設けられている。
また、運転操縦部20の両側には、運転席22よりも車体2の側方となる位置に左右一対の後輪フェンダ(フェンダ)45L、45Rが配備されている。左側の後輪フェンダ(以下、左後輪フェンダという)45Lは、図5に示す如く、後輪4の前方から後上方に亘って該後輪4のトレッド面及び内側のサイドウォールと対向する位置に配備されている。
また、左後輪フェンダ45Lは、型成形によるFRP樹脂製であり、後輪4の内側のサイドウォールと左操縦部23Lの外側縁との間に位置する立面壁46Lと、該立面壁46Lの上縁から車体2の外側方に向けて延設されて後輪4のトレッド面と対向する湾曲壁47Lとを備えている。
【0017】
なお、右側の後輪フェンダ(以下、右後輪フェンダという)45Rも左後輪フェンダ45Lと同様の構成からなり、立面壁46Rと湾曲壁47Rとを備えている。
また、図2に示す如く、フロントパネル21と運転席22との間に位置するフロアシート11の床部12には、ステップ50が設けられている。該ステップ50は、各後輪フェンダ45L、45Rとフロントパネル21との間となる位置に、作業者が運転席22に乗降するための通路となる乗降路51L、51Rをそれぞれ有している。また、これら左右一対の乗降路51L、51Rは、フロントパネル21と運転席22との間に設けられて該運転席22に着座した作業者の足置きスペースを介して連通されている。
【0018】
また、図3又は図4に示す如く、運転席22の後方にはロプス55が立設されている。該ロプス55は、左右一対の支柱56L、56Rと、該左右一対の支柱56L、56Rとを連結するU字梁57とを備えている。該U字梁57は、左右一対の支柱56L、56Rの先端にヒンジ機構58L、58Rを介して折畳み可能に連結されている。
また、左側の支柱(以下、左支柱という)56Lは、図1及び図4に示す如く、左操縦部23Lの後方であって且つ左後輪フェンダ45Lの立面壁46Lと当接する位置にて車体2の上下方向に延伸されており、左支柱56Lの基端は車体2に連結支持されている。また、右側の支柱(以下、右支柱という)56Rも同様に、右操縦部23の後方であって且つ右後輪フェンダ45Rの立面壁46Rと当接する位置にて車体2の上下方向に延伸されており、右支柱56Rの基端は車体2に連結支持されている。
【0019】
図1〜図4に示す如く、運転席22の側方には、車体2の前後方向に伸びる左右一対の手摺60が配備されている。右側の手摺60は、ロプス55の右支柱56Rから右後輪フェンダ45Rの前部と対向しているステップ50の右側後端部まで延伸されており、該右側の手摺60とステップ50との連結部分は、図2中に示す如く、運転席22の前側右端と右操縦部23のカバー41の前側突出部とを結ぶ直線よりもフェンダ前部側に位置している。これにより、該右側の手摺60によって右乗降路51Rを通過する作業者の移動が妨げられる虞はない。
【0020】
また、左側の手摺60は、ロプス55の左支柱56Lから左後輪フェンダ45Lの前部と対向しているステップ50の左側後端部まで延伸されている。
また、左乗降路51Lには、ステップ50前部からフロントパネル21の左上部に亘ってガード体59が配備されている。
以下、左右一対の手摺60は、左右対称形状であって同様の構成を有するので、ここでは左側の手摺60に関してのみ説明し、右側の手摺60についてはその説明を省略する。
手摺60は、ステップ50に連結支持される前支持部61と、左支柱56Lに連結支持される後支持部62と、前支持部61から後支持部62まで延伸する胴部63とを備えている。
【0021】
前支持部61は、胴部63の先端に平板状の座部64を取り付けて構成されており、該座部64がボルト等の締結具を介してステップ50に取付固定されている。また、後支持部62も前支持部61と同様の構成を有しており、胴部63の後端に平板状の座部65を取り付けて構成され、該座部64がボルト等の締結具を介して左支柱56Lに取付固定されている。これにより、該手摺60はロプス55の左支柱56Lとステップ50によって支持されることとなり、十分な支持強度を有することとなる。
ここで、後支持部62は、図2に示す如く、左支柱56Lの外側面に取付固定されるため、平面視で前支持部61に対して90℃程度捻られた状態で該外側面に当接している。これにより、手摺60は、前支持部61にて上下方向の圧着力によってステップ50に連結支持されると共に後支持部62にて左右方向の圧着力によって支柱に連結される。
【0022】
したがって、手摺60は、互いに直交する2方向の圧着力を介して支持されることとなり、該手摺60に上下方向に作用する外力及び左右方向に作用する外力に対して十分な耐力を発揮するばかりでなく、斜め方向に作用する外力に対しても十分な耐力を発揮する。
また、後支持部62の90℃捻られている部位には、胴部63を短絡するアングル材66が架け渡されており、該アングル材66には、図3に示す如くバックライトを取り付けるためのライト取付部67が設けられている。
胴部63は、金属製のパイプ又は丸棒材を屈曲形成して構成されており、左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lの上面に沿って前記前支持部61から後支持部62まで延伸されている。これにより、左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lの上方に胴部63が位置することとなり、トラクタ1の外方から該湾曲壁47Lの上面に向けて落下する落下物の多くは手摺60の胴部63に衝突した後に湾曲壁47Lに落下することとなる。即ち、該胴部63によって湾曲壁47Lが防護されることとなり、前記落下物等による湾曲壁47Lの損傷は軽減される。また、手摺60の胴部63は、トラクタ1の湾曲壁47Lの上面に沿ってステップ50から左支柱56Lまで滑らかに架け渡されているので、走行作業時に運転操縦部20の側方を通過する背の高い草や低木の枝葉等は該手摺60の胴部63に沿って前方から後方に逃げる(或いは後方から前方に逃げる)こととなり、これら草や枝葉が手摺60に引っ掛かってしまう虞はない。
【0023】
また、胴部63は、左乗降路51Lと対向する位置に該左乗降路51Lから乗降する作業者が把持可能な乗降把持部71を有すると共に、運転席22の左側と対向する位置に該運転席22に着座する作業者が把持可能な着座把持部72を有する。
乗降把持部71は、図2及び図3に示す如く、前支持部61から後支持部62に向かうにつれて(左乗降路56Lから離間するにつれて)運転席22の外側方に向けて屈曲状に形成されている。また、着座把持部72は、運転席22に近接するように屈曲すると共に、該運転席22の左側に沿って後支持部62に向けて延伸されている。また、該着座把持部72と乗降把持部71とは、図3中に示す後輪フェンダ45の湾曲壁47を前後方向に伸びる中心線に沿う連結部73を介して連結されている。
【0024】
そして、図2又は図4に示す如く、該連結部73から左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lに向けてフェンダ支持部74が突設されている。該フェンダ支持部74は、胴部63よりも縮径された金属製の管若しくは棒材によって形成されている。
また、左後輪フェンダ45Lは、立面壁46Lの後部がロプス55の左支柱56Lにボルト等の締結具を介して締結されており、立面壁46Lの前部下端がフロアシート11の左側縁部にボルト等の締結具を介して締結されている。そして、図4に示す如く、立面壁46Lの前部下端とフロアシート11との連結部分の上方となる位置にて、該左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lが手摺60のフェンダ支持部74によって支持されている。
【0025】
これにより、左後輪フェンダ45Lは、互いに離間する3位置にて支持されることとなり、十分な支持強度を有することとなる。また、左後輪フェンダ45Lは、適正位置にて支持されることにより、その強度も向上することとなる。
ここで、手摺60の胴部63の連結部73は、図2に示す左後輪フェンダ45Lの前後方向中心線に沿って伸びているため、該連結部73に突設されたフェンダ支持部74は左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lの左右方向略中央部を上方より吊下げ支持している。即ち、左後輪フェンダ45Lは、立面壁46Lのみならず湾曲壁47Lも手摺60を介してロプス55の左支柱Lとステップ50に支持されることとなり、極めて大きな支持強度を有する。
【0026】
図6〜図8は、他の手摺60の構造を示している。
該手摺60は、上記手摺60と同様の前支持部61と後支持部62とを備えている。また、該前支持部61と後支持部62の間に延伸される胴部81は、前記運転席22の外側方に膨出する中途部を有する平面視円弧状に形成されている。また、胴部81がかかる円弧状に形成されることに伴って、該胴部81は、前記左乗降路51Lと対向する前部に該乗降路51Lから離間するにつれて前記運転席22の外側方に膨出する乗降把持部82を有している。
【0027】
また、該乗降把持部82の後部は、図7中に1点鎖線で示す左後輪フェンダ45Lの湾曲壁47Lの左右方向中央部近傍まで運転席22の外側方に膨出しており、該乗降把持部82の後部となる位置にフェンダ支持部74が突設されている。また、胴部63の後部にアングル材66が架け渡される等、他の構造は上記手摺60と略同様である。
上記実施の形態によれば、左右一対の手摺60はそれぞれ、ロプス55の支柱56L、56Rとステップ50とによって支持されるため、十分な支持強度を持って支持されることとなる。また、後輪フェンダ45L、45Rは、同側に配備されている手摺60に支持されるため、後輪フェンダ45L、45Rを上述の如き比較的低強度の素材によって形成する場合にも、後輪フェンダ45L、45Rは手摺60に支持されることによって十分な強度を発揮するのである。
【0028】
また、該後輪フェンダ45L、45Rは、同側に位置するロプス55の支柱56L、56R及びステップ50によっても支持されるため、十分な支持強度をも有することとなる。
また、図9〜図11は、本発明の比較例を示している。
該比較例は、低床用のトラクタとして構成されており、右側の手摺60は、運転席22の右側方にてステップ50からロプス55の右支柱56Rまで延伸されており、ステップ50に連結支持される前支持部61と、右支柱56Rに連結支持される後支持部62と、これら前支持部61と後支持部62の間を延伸する胴部91とを備えている。
【0029】
胴部91は、右後輪フェンダ45Rの立面壁46Rと右操縦部23Rのカバー41との連結部分に沿って車体2の前後方向に延伸されている。また、該胴部91は、前支持部61から右操縦部23の前上方に向けて立ち上がる立上り部91と、該立上り部91の上端から右操縦部23の外側上方に向けて屈曲すると共に該右操縦部23に沿って伸びて後支持部62に連結される側延部93とを備えている。また、該側延部93は、図9及び図11に示す如く、該右操縦部23の複数の操作レバー36、37、38、39の上方を通過する。詳述すると、該側延部93はこれら操作レバー36、37、38、39の外側上方を通過している。
【0030】
また、該胴部91の形状に伴って、後支持部62は右支柱56Lの前面に連結されている。
本比較例によれば、右操縦部23Rの前方に胴部91の立上り部92が位置していると共に右操縦部23Rの複数の操作レバーの外側上方を胴部63の側延部93が通過しているため、作業時に右後輪フェンダ45R上を低木の枝葉等が通過する場合にも、該枝葉等は胴部91の立上り部92及び側延部93によって右操縦部23Rへの侵入を妨げられる。これにより、該枝葉等の操作レバーへの絡みつきは大幅に低減されることとなり、これら枝葉等によって作業者のレバー操作が妨げられる虞はない。
【0031】
また、左側の手摺60は、胴部94が左側の後輪フェンダ45の立面壁46に沿って車体2の前後方向に延伸されている形状を有しており、他の構造は右側の手摺60と同様である。
また、本比較例においては、図10に2点鎖線によって示す如く、手摺60の胴部91の中途部にフェンダ支持部74を突設し、該フェンダ支持部74によって後輪フェンダ45L、45Rを支持する構成とすることももちろん可能である。
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、ステップ50の複数位置やロプス55の支柱56L、56Rの複数位置で手摺60を支持する場合にも本実施の形態と同様の効果を奏する。また、手摺60の後支持部62は、ロプス55の内面や背面に支持されるものであっても構わない。
【0032】
また、手摺60の複数位置にフェンダ支持部74を設け、これら複数のフェンダ支持部74によって後輪フェンダ45を支持する構成とすることも可能である。また、フェンダ支持部74を断面H型、I型、T型、X型等の棒材や板材によって形成することも可能である。
また、該手摺60の胴部は、乗降把持部71、着座把持部72及び側延部93の何れか1つ若しくは複数を有する構成を採用することも可能である。
また、後輪フェンダ45をロプス55の支柱56L、56Rとフェンダ支持部74のみによって支持する構成を採用する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【0033】
また、ロプス55の支柱56L、56Rを後輪フェンダ45L、45Rから離間した位置に配備する構成や後輪フェンダ45L、45Rの湾曲壁47L、47Rの後部を貫通する位置に配備する構成を採用する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
また、右操縦部23Rの複数の操作レバーを右後輪フェンダ45Rの湾曲壁47Rの上方に延出させる構成や、該右後輪フェンダ45Rに複数の操縦レバーを配備する構成を採用することも可能である。
また、本実施の形態の手摺60を運転席22の一側方にのみ配備する構成とすることも採用可能であり、後輪フェンダ45を薄板や板金製とする構成を採用することも可能である。
【0034】
また、上記手摺60及び後輪フェンダ45L、45Rの構成は、左右一対の後輪をクローラ式走行装置に置換したセミクローラ型の作業車に採用する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るトラクタの運転席周囲を示す斜視図である。
【図2】運転操縦部の正面図である。
【図3】運転操縦部の平面図である。
【図4】運転操縦部の左側面図である。
【図5】トラクタの左側面図である。
【図6】他の手摺の正面図である。
【図7】他の手摺の平面図である。
【図8】他の手摺の左側面図である。
【図9】比較例の運転操縦部の正面図である。
【図10】比較例の運転操縦部の平面図である。
【図11】比較例の運転操縦部の左側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 トラクタ
2 車体
3 前輪
4 後輪
20 運転操縦部
22 運転席
26 操向ハンドル
45L 左後輪フェンダ
45R 右後輪フェンダ
50 ステップ
51L 左乗降路
51R 右乗降路
55 ロプス
56L 左支柱
56R 右支柱
60 手摺
71 乗降把持部
72 着座把持部
92 立上り部
93 側延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向ハンドル(26)と、該操向ハンドル(26)の後方に位置する運転席(22)との間にステップ(50)が設けられると共に、該運転席(22)の両側方にフェンダ(45L、45R)がそれぞれ配備され、該運転席(22)の後方には、前記フェンダ(45L、45R)又はその近傍からそれぞれ上方に伸びる一対の支柱(56L、56R)を備えたロプス(55)が配備されている作業車において、
少なくとも前記運転席(22)の一側方には、該一側方に位置する一方の支柱(56L)からステップ(50)に亘って手摺(60)が架け渡されており、該手摺(60)が前記一側方に位置する一方のフェンダ(45L)を支持していることを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記手摺(60)は、前記一方のフェンダ(45L)の上面に沿ってステップ(50)から前記一方の支柱(56L)まで延伸されており、該手摺(60)の中途部には、前記一方のフェンダ(45L)を支持するフェンダ支持部(74)が突設されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記ステップ(50)は、作業者が乗降するための乗降路(51L)を前記一側方のフェンダ(45L)の前方に備え、前記手摺(60)は、前記乗降路(51L)の後上方となる位置に、後方に向かうにしたがって左右方向外方に移行する屈曲状に形成されて前記乗降路(51L)から乗降する作業者が把持可能な乗降把持部(71)を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記手摺(60)は、前記運転席(22)の一側方の側縁と対向する位置に、前記運転席(22)に近接するように屈曲すると共に該側縁に沿って延伸されて前記運転席(22)に着座する作業者が把持可能な着座把持部(72)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の作業車。
【請求項5】
前記運転席(22)と前記一方のフェンダ(45L)との間及び/又は該フェンダ(45L)の上面には1又は複数の操作レバーが配備されており、前記手摺(60)は、前記操作レバーの上方を通過して延伸されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の作業車。
【請求項6】
前記一方のフェンダ(45L)は、後部が前記一方の支柱(56L)に支持されると共に前部が前記フェンダ支持部(74)に支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の作業車。
【請求項7】
前記一方のフェンダ(45L)は、樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−145143(P2007−145143A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340995(P2005−340995)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】