説明

作業車

【課題】走行装置に制動力を作動させる制動機構を伝動ケースに備えている作業車を小型に構成する。
【解決手段】伝動ケース20のサイドクラッチ軸27の一方の軸端にブレーキディスク41を備え、このブレーキディスク41を押圧する環状の作動部材42を備え、この作動部材42によるブレーキディスク41の押圧方向を伝動ケース20の中央側からサイドクラッチ軸27の外端側に向かう方向に設定し、サイドクラッチ軸27を支承する軸受38を取り囲む位置に作動部材42を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置に走行駆動力を伝える伝動ケースの伝動軸の回転を拘束することにより前記走行装置に制動力を作用させる制動機構を備えている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車として特許文献1には、伝動ケース(文献ではミッションケース)の伝動軸(文献では副変速軸)の軸端に複数のブレーキディスクを備え、これに外方から圧力を作用させるカムディスクを備え、このカムディスクを回転操作する操作アーム等を備えた制動機構(文献では駐車ブレーキ)が示されている。前述したカムディスクの外面には、このカムディスクの回転方向で深さが異なる係合穴が形成され、この係合穴とブレーキケースとの間にボールが配置されている。
【0003】
この特許文献1の制動機構は、カムディスクとボールとでカム機構が構成され、操作アームを操作することでカムディスクが回転し、カム機構の作用によりカムディスクがブレーキディスクの方向に変位し、複数のブレーキディスク同士を接触させ伝動軸に対して制動力を作用させ、結果として走行装置に制動力を作用させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐79740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される駐車ブレーキは、伝動軸の軸端に備えたブレーキディスクに対しカムディスクから伝動軸の軸芯に沿う方向に圧力を作用させる構造であるため、このカムディスクとボールとで構成されるカム機構を収容する空間を伝動ケースに確保する必要があり、この空間の寸法だけ突出する構造となる。
【0006】
コンバインを例に挙げると、駐車ブレーキは運転部に備えたペダルやレバー等により制動操作されるものであるため、伝動ケースのうち運転部に近い部位に駐車ブレーキを配置してロッドやワイヤ等の操作系の小型化、単純化を図っている。
【0007】
しかしながら、駐車ブレーキが伝動ケースから突出する構成のものでは、小型のコンバインのように伝動ケースと運転部との距離が短い場合には、この駐車ブレーキが運転部の側に突出することになり、運転部として確保される空間を狭小化させることもあり改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、走行装置に制動力を作動させる制動機構を伝動ケースに備えている作業車を小型に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、走行装置に走行駆動力を伝える伝動ケースの伝動軸の回転を拘束することにより前記走行装置に制動力を作用させる制動機構を備えている作業車であって、
前記制動機構が、互いに圧接することにより前記伝動軸に制動力を作用させる複数のブレーキディスクと、押圧方向への作動により前記複数のブレーキディスクを圧接させる作動部材とを備えると共に、
前記作動部材が、前記伝動軸を前記伝動ケースに回転自在に支持する軸受を取り囲む環状に形成され、前記押圧方向が、前記伝動軸の中央側からこの伝動軸の外端側に向かう方向に設定されている点にある。
【0010】
この構成によると、作動部材が、伝動軸の中央側から外端側に向かう方向となる押圧方向に作動することにより複数のブレーキディスクを圧接させることでブレーキディスクにより伝動軸を拘束して走行装置に制動力を作用させることになる。また、作動部材が伝動軸の軸芯を中心とする環状に構成され、伝動軸を回転自在に支持する軸受を取り囲む位置に配置されるので、この作動部材を軸受の外周のスペースにおいて伝動軸の中央側に変位させて配置することが可能となり、このような作動部材の配置により軸芯に沿う方向において制動機構が軸端側へ突出する量を低減できる。その結果、走行装置に制動力を作動させる制動機構を備えた伝動ケースが小型に構成された。
【0011】
本発明は、前記作動部材が前記伝動軸の軸芯を中心にして回転することにより、この作動部材を前記押圧方向に作動させるカム機構を備え、前記作動部材を前記軸芯を中心にして回転させる操作軸を備えても良い。
【0012】
これによると、操作軸を操作することにより作動部材が回転し、この回転に伴いカム機構が作動部材を伝動軸の軸芯方向に作動させ、制動を実現する。また、作動部材が軸受より大径となる構成であるため、軸芯を中心として回転させた場合には小さい回転角だけ回転させた場合には、小径のものと比較して作動部材の外周部分を伝動軸の軸芯に沿う方向に大きく移動させる。このように作動部材の外周部分を伝動軸の軸芯に沿う方向に大きく移動させるため、例えば、カム機構にカム面を備えるものではカム面の傾斜を緩くしてカム機構の円滑な作動を実現する。
【0013】
本発明は、前記走行装置で走行する走行機体に対して運転部が備えられ、前記伝動ケースのうち運転部に向かう外面に前記制動機構が配置されても良い。
【0014】
これによると、伝動ケースの外面からの制動機構の突出量が抑制されるので、運転部の空間の狭小化を招くことがない。
【0015】
本発明は、前記伝動軸から左右の前記走行装置に走行駆動力を伝える左右の伝動系に駆動力を伝動する入り状態と、駆動力を遮断する切り状態とに切換えるクラッチスリーブが前記軸芯に沿って移動自在に備えられ、このクラッチスリーブがクラッチ切り方向に作動することにより互いに圧接して左右の前記走行装置のうち対応するものに制動力を作動させる複数の摩擦ディスクが前記伝動軸に備えられ、この左右の摩擦ディスクより前記伝動軸の外端側に前記軸受が配置され、この左右の軸受の1つより前記伝動軸の外端側に前記制動機構が備えられると共に、
前記複数の摩擦ディスクが支持される第1ブロックと、前記軸受が支持される第2ブロックと、前記複数のブレーキディスクが支持される第3ブロックとが前記軸芯に沿って、この順序で前記伝動ケースに支持されても良い。
【0016】
これによると、伝動ケースに対して第1ブロックを備え、次に第2ブロックを備え、次に第3ブロックを備えることにより、第1ブロックとともに複数の摩擦ディスクを伝動ケースに備え、第2ブロックとともに軸受を備え、第3ブロックとともに複数のブレーキディスクを備えることが可能となり伝動ケース全体の組み立てを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの前部の側面図である。
【図2】コンバイン前部の平面図である。
【図3】伝動ケースの伝動系を示す図である。
【図4】伝動ケースの下部の縦断正面図である。
【図5】駐車ブレーキの構成を示す断面図である。
【図6】駐車ブレーキの作動部材の形状を示す断面図である。
【図7】駐車ブレーキの操作構造を示す側面図である。
【図8】駐車ブレーキの操作構造を示す平面図である。
【図9】ロック状態の駐車ブレーキの操作構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1、図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に刈取部3を昇降自在に備えると共に、走行機体2の前部に運転者が搭乗する運転部10を備え、走行機体2に対して刈取部3から刈取穀稈が供給される脱穀装置4と、この脱穀装置4で選別された穀粒を貯留する穀粒タンク(図示せず)とを備えて作業車の一例としての自脱型のコンバインが構成されている。
【0019】
このコンバインでは、収穫作業時に刈取部3と脱穀装置4とを駆動した状態で走行機体2を前進させることにより、刈取部3で穀稈の株元を切断して穀稈の刈り取りを行い、刈り取った穀稈を脱穀装置4に搬送して脱穀処理を行い、脱穀処理により得られた処理物から穀粒を選別して穀粒タンクに貯留する作動が行われる。
【0020】
運転部10には、運転者が搭乗するステップ11と、運転者が着座する運転座席12とが備えられると共に、運転座席12の前方位置に運転者が操作する操縦レバー13が備えられ、運転座席12の側部位置に変速操作具としての主変速レバー14と、副変速レバー15とが備えられ、ステップ11には制動操作具としての駐車ブレーキペダル16と、クラッチ操作具としてのクラッチペダル17とが備えられている。
【0021】
操縦レバー13は、非操作状態で中立姿勢を維持するものであり、この中立姿勢を基準にして左右方向と前後方向とに揺動操作自在に支持されている。また、操縦レバー13は、左右へ操作されることにより走行機体2の操向・旋回を行い、前後方向へ操作されることにより刈取部3の昇降を行う。主変速レバー14は、無段変速装置21を変速操作することにより走行速度の無段階の変速を行うものであり、走行機体2を停車させる中立位置Nと、この中立位置Nから前方側に形成される前進変速域Fと、中立位置Nから後方側に形成される後進変速域Rとに操作自在に構成されている。副変速レバー15は、副変速装置22(図3、図4を参照)の変速操作を行う。
【0022】
駐車ブレーキペダル16は、図7に示す非操作位置から制動位置(図示せず)を超える領域まで踏み込み操作自在に構成され、制動位置まで操作されることにより伝動ケース20に備えた駐車ブレーキ40(図4、図5を参照)を制動状態にして左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させる。クラッチペダル17は、図7に示す非操作位置から切り位置(図示せず)を超える領域まで踏み込み操作自在に構成され、切り位置まで操作されることにより伝動ケース20に内蔵された左右のクラッチ機構25C(図3、図4を参照)を同時に切り状態にして走行機体2の一時的な停車を実現する。つまり、このクラッチペダル17は、踏み込み操作されることにより刈取部3や脱穀装置4の駆動状態を維持したままクローラ走行装置1に伝えられる動力だけを遮断する。従って、走行機体2が畦際等に達した際にクラッチペダル17を踏み込み操作することによりクローラ走行装置1に伝えられる動力だけを遮断して走行機体2を停車させ、この停車状態において刈取部3での穀稈の刈取を継続的に行い、倒伏穀稈等を無駄なく収穫し脱穀装置4に供給する形態での作業を実現する。
【0023】
運転座席12の下部位置にはエンジン5が備えられ、走行機体2の前部位置で左右方向での中央位置には左右のクローラ走行装置1に駆動力を伝える伝動ケース20(ミッションケース)が配置されている。伝動ケース20の上部には静油圧式の無段変速装置21が連結しており、この無段変速装置21にエンジン5の駆動力を伝えるベルト式の伝動系が形成され、この無段変速装置21からの駆動力は伝動ケース20に伝えられる。図2、図3に示すようにエンジン5の駆動力を脱穀装置4に伝えるベルト式の伝動系が形成され、伝動ケース20からの駆動力を刈取部3に伝えるベルト式の伝動系が形成されている。
【0024】
図3に示すように、無段変速装置21は、エンジン5からの駆動力で回転駆動されるアキシャルプランジャ型の可変容量型の油圧ポンプ21Pと、アキシャルプランジャ型の油圧モータ21Mと備え、これらを油圧回路で接続した構造を有している。この無段変速装置21では図7、図8に示す調節アーム21Aが操作されることにより角度が調節される可動斜板(図示せず)を備えており、エンジン5からの駆動力が伝えられる状態において主変速レバー14によって調節アーム21Aが操作されることにより油圧ポンプ21Pの可動斜板が操作され、この可動斜板の傾斜角度に対応して油圧モータ21Mに供給される作動油の流動方向と油量とが調節され、油圧モータ21Mの回転方向と回転速度とが無段階に制御される。これにより走行機体2の前進と後進との切換を実現するとともに前進と後進との何れの走行においても走行速度の無段階での変速が実現する。
【0025】
〔伝動ケース〕
図3及び図4に示すように、伝動ケース20には、前記副変速レバー15の操作により変速操作が行われる副変速装置22と、前記操縦レバー13が左右方向に操作された際に操作が行われる左右のサイドクラッチブレーキ25と、駐車ブレーキ40とを備え、この伝動ケース20の下端には前記クローラ走行装置1に動力を伝える出力軸31を備えている。この出力軸31の外端にはスプロケット32を備えており、このスプロケット32に対してクローラ走行装置1のクローラベルトが巻回する。
【0026】
具体的な構成として、伝動ケース20には無段変速装置21の油圧モータ21Mの出力軸からの駆動力が伝えられる副変速軸23と、この副変速軸23に対して平行姿勢となる第1中間軸24とが備えられ、これら副変速軸23と第1中間軸24との間に複数のギヤが備えられている。これら副変速軸23と第1中間軸24と複数のギヤとで副変速装置22が構成されている。この副変速装置22では、副変速軸23に備えたスリーブを副変速レバー15で操作することにより副変速軸23から第1中間軸24に動力を伝えるギヤが選択され3段の変速が実現する。
【0027】
副変速軸23の端部が伝動ケース20の左側に突出し、この副変速軸23の突出部に出力プーリ7を備え、この出力プーリ7から刈取部3に動力を伝えるベルト伝動系が構成されている。このようなベルト伝動系を備えることにより刈取部3に対して走行機体2の走行速度に同期した速度の駆動力が伝えられる。
【0028】
第1中間軸24からの駆動力が伝えられるセンタギヤ26と一体回転する伝動軸としてのサイドクラッチ軸27が伝動ケース20に支持されている。このサイドクラッチ軸27にはセンタギヤ26を挟む位置においてスライド移動自在に支持される左右一対のクラッチスリーブ28が配置されている。サイドクラッチブレーキ25は、この左右のクラッチスリーブ28の作動により切り状態(遮断状態)又は入り状態(伝動状態)に操作される左右のクラッチ機構25Cと、左右のクラッチスリーブ28の作動により制動力が制御される左右のブレーキ機構25Bとを備えて構成されている。
【0029】
左右のクラッチスリーブ28には出力ギヤ28Gが備えられ、サイドクラッチ軸27と平行姿勢の第2中間軸29が伝動ケース20に備えられ、出力ギヤ28Gからの駆動力を出力軸31に伝える中間ギヤ機構30が第2中間軸29と出力軸31とに亘って形成されている。このような構成から左右のクラッチスリーブ28の作動で左右のクラッチ機構25Cを断続(遮断又は伝動)することにより左右のクローラ走行装置1に伝えられる動力の断続が可能となる。このようにクラッチ機構25Cを切り操作した状態でクラッチスリーブ28を更に作動させることによりブレーキ機構25Bからの制動力をクローラ走行装置1に作用させることが可能となる。
【0030】
クラッチ機構25Cは、クラッチスリーブ28の内端側(伝動ケース20の中央側)に形成した歯部と、センタギヤ26の両側部に形成された歯部とを備えてドッグクラッチ型に構成されている。サイドクラッチ軸27の外端部にはクラッチスリーブ28の内端側をセンタギヤ26の方向に付勢するクラッチバネ34を備えている。
【0031】
このような構成からセンタギヤ26の歯部にクラッチスリーブ28の歯部が噛み合う状態でクラッチ機構25Cが入り状態(伝動状態)となり、センタギヤ26の駆動力が中間ギヤ機構30等を介してクローラ走行装置1に伝えられる。このクラッチ機構25Cの入り状態はクラッチバネ34の付勢力により維持される。これとは逆に、クラッチスリーブ28がクラッチバネ34の付勢力に抗してセンタギヤ26から離間する方向にシフトし、センタギヤ26の歯部とクラッチスリーブ28の歯部とが離間する状態に達することによりクラッチ機構25Cが切り状態(遮断状態)となりクローラ走行装置1への駆動力が遮断される。
【0032】
ブレーキ機構25Bは、クラッチスリーブ28の外端側(伝動ケース20の外壁側)において、このクラッチスリーブ28に支持されるものと伝動ケース20に支持されるものとを交互に配置した複数の摩擦ディスク35を備えると共に、複数の摩擦ディスク35を圧接させる押圧部材36を備えている。そして、クラッチバネ34の付勢力によりクラッチスリーブ28がセンタギヤ26の方向にシフトする状態(クラッチ機構25Cが入り状態)では複数の摩擦ディスク35は圧接することなく非制動状態にある。これとは逆にクラッチスリーブ28がクラッチバネ34の付勢力に抗してシフトした場合には、クラッチ機構25Cが切り状態に達した後に、複数の摩擦ディスク35が圧接する状態に達し、クローラ走行装置1に制動力が作用する状態に達する。
【0033】
左右のクラッチスリーブ28は伝動ケース20に備えられた左右のシフタ37によって操作されるものであり、この左右のシフタ37は伝動ケース20の外面に備えた左右の油圧シリンダ(図示せず)の作動により独立して操作される。つまり、操縦レバー13の左右方向への操作に連係して操作される制御弁(図示せず)が備えられ、この制御弁からの作動油を油圧シリンダに供給する油路系(図示せず)が構成され、制御弁に対してエンジン5で駆動される油圧ポンプ(図示せず)から作動油が供給される。
【0034】
このような構成から、例えば、操縦レバー13を中立姿勢から左側に操作した場合には、操作の初期にはクラッチスリーブ28の作動により左側のクラッチ機構25Cの切り作動が行われ、左側の地面を中心とする緩旋回が実現する。この状態で操縦レバー13を大きく左側に操作した場合に、クラッチスリーブ28が更に作動することにより左側のブレーキ機構25Bの制動力を左側のクローラベルトに作用させるため左側のクローラベルトの接地面を中心とする信地旋回が実現する。尚、操縦レバー13を右側に操作した場合には作動方向が逆になるものであるが同様の旋回が実現する。
【0035】
〔伝動ケース・駐車ブレーキ〕
図3〜図6に示すように、サイドクラッチ軸27(伝動軸の一例)の両端はボールベアリングで成る軸受38により回転自在に伝動ケース20に支承されており、このサイドクラッチ軸27の軸芯Xと同軸芯上で、このサイドクラッチ軸27の右端側に駐車ブレーキ40が備えられている。この駐車ブレーキ40は、サイドクラッチ軸27を拘束することによりクローラ走行装置1に制動力を作用させる構造を有している。この駐車ブレーキ40は、サイドクラッチ軸27の右側の軸端においてサイドクラッチ軸27に支持されるものと伝動ケース20に支持されるものとを交互に配置した複数のブレーキディスク41を備えると共に、この複数のブレーキディスク41を圧接させるようにサイドクラッチ軸27の中央側(伝動ケース20の中央側と一致する)からサイドクラッチ軸27の外端側に向かう押圧方向に作動自在な環状の作動部材42を備えている。
【0036】
作動部材42は、伝動ケース20(後述する第2ブロック20B2)に対し軸芯Xを中心にして形成された環状溝に嵌め込む状態で、軸芯Xを中心にして回転自在に支持されている。また、この作動部材42を、軸芯Xを中心にして回転させるために伝動ケース20(後述する第3ブロック20B3)に対して回転自在に操作軸43が支持され、作動部材42がサイドクラッチ軸27の軸芯Xを中心にして回転した際に作動部材42を押圧方向に作動させるカム機構44が伝動ケース20に備えられている。この作動部材42とカム機構44とで駐車ブレーキ40の制動機構が構成される。
【0037】
図6に示すように、操作軸43の内端部には、その一部を切り欠いた形状となる操作面43Aが形成され、作動部材42の外周には操作面43Aが接当する凹状の接当面42Aが形成されている。このような構造から、操作軸43が回転作動した場合には操作面43Aからの操作力を作動部材42の接当面42Aに伝え、作動部材42を、軸芯Xを中心に回転させることになる。操作軸43の外端には操作軸43から後方下方に延出された操作アーム45が連結しており、この操作アーム45の先端と前述した駐車ブレーキペダル16との間に操作構造が備えられる(操作構造の詳細は後述する)。
【0038】
また、伝動ケース20の右側に駐車ブレーキ40が配置され、この駐車ブレーキ40の右側に近接する位置に運転部10が配置されるため、駐車ブレーキペダル16の操作力を駐車ブレーキ40に伝える操作構造の小型化が実現する。このコンバインでは、駐車ブレーキ40の外面に対して右側のクローラベルトが接近する位置関係となるが、駐車ブレーキ40の小型化により突出量が抑制され、クローラベルトと駐車ブレーキ40との間隔を確保しながらコンバイン全体の小型化も実現する。
【0039】
カム機構44は、伝動ケース20(後述する第2ブロック20B2)に保持状態で回転自在に係合支持される複数のボール44Aと、作動部材42に形成されたカム溝44Bとで構成されている。操作アーム45の操作端を上方に引き上げる方向への操作に伴い操作軸43が回転した場合には、この操作軸43からの操作力で作動部材42が軸芯Xを中心にして回転する。この回転時に作動部材42を押圧方向に押し出すように、カム溝44Bは、この回転方向の下手側を浅くした形状で形成されている。
【0040】
本発明の駐車ブレーキ40は、作動部材42を、駐車ブレーキ40が配置された側の軸受38を取り囲む位置、即ち、軸芯Xと直交する方向視において軸受38と作動部材42とが重複する位置に配置した配置上の特徴を有している。このような配置から軸芯Xの方向での駐車ブレーキ40の小型化を実現し、この駐車ブレーキ40が運転部10の方向への突出量を低減している。
【0041】
サイドクラッチ軸27の両端部に配置される摩擦ディスク35のうち伝動ケース20に支持されるものは、伝動ケース20の本体に連結される第1ブロック20B1に支持されている。また、この第1ブロック20B1より外側には軸受38を支持する第2ブロック20B2が配置される。
【0042】
特に、伝動ケース20の右側では第2ブロック20B2より外側に第3ブロック20B3が配置され、これに駐車ブレーキ40のブレーキディスク41と操作軸43とが支持され、この第3ブロック20B3と第2ブロック20B2とに挟まれる位置に作動部材42が配置され、操作軸43は第3ブロック20B3の上部の前側寄り箇所に支持されている。駐車ブレーキ40が配置された部位では、第1ブロック20B1と第2ブロック20B2と第3ブロック20B3とを軸芯Xに沿って重ね合わせ、これらが複数のボルト48により連結されている。これとは逆側の部位では、第1ブロック20B1と第2ブロック20B2とを軸芯Xに沿って重ね合わせ、これらが複数のボルト48により連結されている。
【0043】
このように、サイドクラッチ軸27の端部において摩擦ディスク35を支持する第1ブロック20B1と、軸受38を支持する第2ブロック20B2とを伝動ケース20の本体の両側部に備えているので、サイドクラッチブレーキ25のブレーキ機構25Bを組み立てる際には、クラッチスリーブ28と第1ブロック20B1との間に複数の摩擦ディスク35を配置した状態で、これらの状態を視覚的に確認しながら伝動ケース20の本体に組み付けることが可能となる。これと同様に軸受38を備える場合には第2ブロック20B2に軸受38を支持した状態で、軸受38の状態を視覚的に確認しながら第2ブロック20B2を第1ブロック20B1に連結することが可能となる。
【0044】
更に、駐車ブレーキ40のブレーキディスク41及び操作軸43を支持する第3ブロック20B3を備えているため、この駐車ブレーキ40を組み立てる際には、第2ブロック20B2の外面側にカム機構44と作動部材42とを嵌め込む形態で支持することが可能となる。また、ブレーキディスク41を支持した第3ブロック20B3を第2ブロック20B2に重ね合わせるように配置し、これらの位置関係や第1ブロック20B1や第2ブロック20B2の内部の状態を視覚的に確認しながら組み付けを行い、ボルト48で連結固定することも可能となる。また、第1ブロック20B1、第2ブロック20B2、第3ブロック20B3を容易に分解できるので、メンテナンスも容易に行える。
【0045】
〔駐車ブレーキ等の操作構造〕
このコンバインでは、駐車ブレーキペダル16を制動位置まで踏み込むことにより駐車ブレーキ40を制動状態に操作する機械式の駐車操作機構と、駐車ブレーキペダル16が踏み込まれた際に主変速レバー14を中立位置Nに戻す機械式の中立復帰機構とを備えている。
【0046】
図7〜図9に示すように、ステップ11の下面側に連結されたブラケットに横向き姿勢の支持軸芯Yを中心に回転自在に支軸51が備えられている。この支軸51に駐車ブレーキペダル16のペダルアーム16Aが連結し、このペダルアーム16Aのうち支軸51より後端側には、駐車ブレーキペダル16を非操作位置に復帰させる付勢力を得る復帰バネ52の一端が連結している。また、前後向き姿勢(前後方向で長寸となる)の作動アーム53の中央部が支軸51に連結し、この作動アーム53の後端部53R(作動アーム53の一端側)と、駐車ブレーキ40の操作アーム45とがロッド状の制動操作部材54で連動連結している。また、この支軸51と作動アーム53と制動操作部材54とで駐車操作機構が構成されている。
【0047】
ステップ11の前部位置には、駐車ブレーキペダル16が制動位置を超える領域まで踏み込まれた場合に、この踏み込み状態を保持するロック機構を備えている。ロック機構は、横向き姿勢の軸体55を中心にして揺動自在に支持されたロックプレート56と、ロックプレート56に連結するロック操作アーム57と、ロックプレート56を解除方向に付勢する解除バネ58とを備えている。ロックプレート56には係合凹部56Aが形成され、この係合凹部56Aに係脱自在なロックピン16Pがペダルアーム16Aの上部位置の側面に突設されている。このようにロック機構は、係合凹部56Aを有したロックプレート56と、ロック操作アーム57と、ロックピン16Pとを備えて構成されている。
【0048】
これらの構成から、作業者が駐車ブレーキペダル16を踏み込んだ場合には、ペダルアーム16Aと、支軸51と、作動アーム53とが支持軸芯Yを中心に制動方向(図7、図9において反時計回り方向)に一体的に回転し、制動操作部材54からの引き操作力により駐車ブレーキ40の操作アーム45を操作して制動状態を現出する。また、駐車ブレーキペダル16を踏み込んだ状態でロック操作アーム57を引き操作し、駐車ブレーキペダル16の踏み込みを解除することでロックプレート56の係合凹部56Aにロックピン16Pが係合し、図9に示す如く駐車ブレーキペダル16の非操作位置へ戻す変位が阻止され、駐車ブレーキ40から左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させる状態が維持される。駐車ブレーキ40による制動状態を解除する場合にはロック操作アーム57の操作により係合凹部56Aをロックピン16Pから離脱させることにより、復帰バネ52の付勢力により駐車ブレーキペダル16が非操作位置まで復帰し、制動力も解除される。
【0049】
運転座席12の横側のサイドパネルを支持する支持フレームが伝動ケース20の上部から立設されており、この支持フレームに取り付けられたブラケットに揺動軸60が連結されている。横向き姿勢の揺動軸60を中心にして揺動する揺動プレート61に主変速レバー14の基端部が連結し、この揺動プレート61と無段変速装置21の調節アーム21Aとが調速ロッド62によって連動連結されている。また、作動アーム53の前端部53F(作動アーム53の他端側)には水平姿勢の係合ピン63が設けられ、この係合ピン63と揺動プレート61の後部側との間に第1中立操作部材64Aが備えられ、係合ピン63と揺動プレート61の前部側との間に第2中立操作部材64Bが備えられている。
【0050】
第1中立操作部材64Aと第2中立操作部材64Bは、作動アーム53が制動方向に回転した際に主変速レバー14に対して引き操作力を作用させることで中立方向に復帰力を作用させる中立操作部材64の一例であり、下端には係合ピン63が挿通する長孔64Hが形成されている。この作動アーム53と中立操作部材64(第1中立操作部材64A・第2中立操作部材64B)とで中立復帰機構が構成されている。
【0051】
駐車ブレーキ40が踏み込み操作されない状態では、復帰バネ52の付勢力により作動アーム53の前端部53Fが持ち上げられた状態にあるため、主変速レバー14で変速操作が行われる際にも第1中立操作部材64Aと第2中立操作部材64Bとの長孔64Hの端部が係合ピン63に接当することがなく、主変速レバー14による変速操作を自由に行える。
【0052】
これに対して、駐車ブレーキペダル16が踏み込み操作された場合には、作動アーム53が支持軸芯Yを中心にして制動方向に回転するため、作動アーム53の前端部53Fが下方に移動し係合ピン63も下側に移動する。これにより、主変速レバー14が前進変速域Fあるいは後進変速域Rにある状態では、係合ピン63が第1中立操作部材64Aと第2中立操作部材64Bとの長孔64Hの何れかの下端縁に接当し、主変速レバー14を中立位置Nの方向に揺動させ中立位置Nに復帰させる。
【0053】
この中立復帰機構では、駐車ブレーキペダル16を踏み込み操作した場合に、駐車ブレーキ40が制動状態に達するタイミング以前に主変速レバー14が中立位置Nに復帰するようにタイミングを設定することが望ましい。
【0054】
クラッチペダル17は、下側にプッシュロッド66と、操作プレート67とが連結しており、操作プレート67の下側にクラッチバルブ68が配置されている。操作プレート67は正面視においてL字状に折り曲げられた形状であり、上端側となる一方の面にプッシュロッド66が連結し、下側となる他方の面の下側に前述したクラッチバルブ68と、規制手段とが配置されている。この規制手段は、クラッチペダル17が切り位置(図示せず)まで踏み込み操作された状態での駐車ブレーキペダル16の制動側への踏み込み操作を阻止する機能を有している。
【0055】
クラッチバルブ68は、上面に操作片68Aが上方に突出しており、この操作片68Aが下方に押圧操作された場合に、左右のシフタ37を作動させる左右の油圧シリンダに対して同時に作動油を供給する。これにより、クラッチペダル17が切り位置まで踏み込み操作された場合には、左右のクラッチスリーブ28を作動させて左右のクラッチ機構25Cが切り状態に達する。
【0056】
規制手段は、前後向き姿勢の軸部69と、この軸部69により中間位置が揺動自在に支持される規制部材70とを備えている。規制部材70は、屈曲成形された棒状材を用いることで一端側に操作端70Aが形成され、他端側に規制端70Bが形成され、クラッチペダル17が踏み込み操作されない状態では図8に示す如く操作端70Aと規制端70Bとが略等しいレベルに維持される。また、この規制部材70の操作端70Aが操作プレート67の下側に配置され、規制端70Bが駐車ブレーキペダル16のペダルアーム16Aの下側に配置される。このような配置から、クラッチペダル17が踏み込み操作された場合には操作プレート67の下面が操作端70Aに接当して押し下げ力を作用させるため規制部材70が軸部69を中心にして揺動し規制端70Bが上方に変位する。このように規制端70Bが下方側にある位置を非規制位置と称し、規制端70Bが上方側にある位置を規制位置と称する。
【0057】
駐車ブレーキペダル16が踏み込み操作された際にペダルアーム16A(制動操作具に連結する部材の一例)が作動する領域を作動経路として捉えると、規制部材70の規制端70Bが非規制位置にある場合には作動経路から下側に離間し、規制端70Bが規制位置にある場合には、作動経路に入り込むように相対的な位置関係が設定されている。また、ペダルアーム16Aの下端部分には規制端70Bに接当する接当片16Bが形成され、この接当片16Bが規制位置の規制端70Bと接触する位置関係となる。尚、規制部材70が、駐車ブレーキペダル16に対して直接的に接触して作動を規制する規制位置と、接触しない非規制位置とに切換自在に構成されるものでも良い。
【0058】
このような規制手段の構成から、駐車ブレーキペダル16を先に踏み込み操作した状態で、この後にクラッチペダル17を踏み込み操作した場合には、ペダルアーム16Aの接当片16Bに規制部材70の規制端70Bが接触することにより、クラッチペダル17の踏み込みが規制され左右のクラッチ機構25Cが切り状態に達することはない。これとは逆に、クラッチペダル17を先に踏み込み操作した状態で、この後に駐車ブレーキペダル16を踏み込み操作した場合には、規制部材70の規制端70Bにペダルアーム16Aの接当片16Bに接触することにより、クラッチペダル17の踏み込み操作が規制され駐車ブレーキ40が制動状態に達することはない。
【0059】
特に、規制部材70は、駐車ブレーキペダル16の操作力をクラッチペダル17に伝えると共に、これとは逆にクラッチペダル17の操作力を駐車ブレーキペダル16に伝えることも可能な構造を有している。従って、例えば、駐車ブレーキペダル16を左足で踏み込み操作した状態でクラッチペダル17を右足で踏み込み操作した場合や、クラッチペダル17を右足で踏み込み操作した状態で駐車ブレーキペダル16を左足で踏み込み操作した場合には、一方のペダルの操作力が他方のペダルを持ち上げる方向に伝えられるため、運転者は左右の足にペダルから伝えられる感触から不適正な操作が行われたことを認識できることになる。
【0060】
〔駐車ブレーキ等の作動形態〕
これらの構成から、駐車ブレーキペダル16が踏み込み操作された場合には、この操作力によって作動アーム53が制動方向に一体的に回転する。これにより作動アーム53の後端部53Rが持ち上げられ、制動操作部材54の引き操作力が駐車ブレーキ40の操作アーム45に伝えられる。この引き操作力によって操作軸43が回転し、作動部材42が軸芯Xを中心にして回転し、カム機構44が作動部材42を押圧方向に作動させる。この結果、複数のブレーキディスク41が圧接状態に達し、この駐車ブレーキ40からの制動力が左右のクローラ走行装置1に作用するのである。このように駐車ブレーキペダル16が踏み込み操作された状態においてロックプレート56で駐車ブレーキペダル16をロックすることにより駐車ブレーキペダル16が踏み込み位置に保持され制動状態が維持される。
【0061】
また、駐車ブレーキペダル16を踏み込み操作する際に主変速レバー14が前進変速域Fと後進変速域Rとの何れかの変速域に操作されている場合には、作動アーム53の前端部53Fが下降することに伴い主変速レバー14の揺動プレート61に対して第1中立操作部材64Aと第2中立操作部材64Bとの何れかから引き操作力が作用し、揺動プレート61を、揺動軸60を中心にして揺動させ、主変速レバー14を中立位置Nに復帰させ走行機体2を停車させる。
【0062】
また、収穫作業時においてクラッチペダル17を踏み込み操作した場合には、刈取部3と脱穀装置4とを稼動させた状態で走行機体2を停車させ、穀稈の無駄のない刈取を実現することになり、このようにクラッチペダル17を踏み込み操作した状態で駐車ブレーキペダル16を踏み込み操作することがあっても、この駐車ブレーキペダル16の操作が規制され、駐車ブレーキ40が制動状態に操作される不都合は解消される。
【0063】
尚、駐車時にはエンジン5が停止状態にあるため、シフタ37を作動させる油圧シリンダには作動油が供給されず、クラッチスリーブ28はクラッチバネ34の付勢力により中央側の移動端に達し、左右のクラッチ機構25Cは入り状態にある。これにより、駐車ブレーキ40の制動力を左右のクローラ走行装置1に作用させることが可能となる。
【0064】
〔駐車ブレーキ等の操作構造の別実施形態〕
(1)伝動ケース20にギヤ式の前後進切換機構を備え、無段変速装置として走行速度の無段階の変速だけを行うように構成したものでは、主変速レバー14が中立位置Nと変速域との間で操作されるものとなる。このような構成のものでは、駐車ブレーキペダル16が踏み込み操作された場合には、変速域に設定されている主変速レバー14を中立位置Nに戻すように単一の中立操作部材64を備えることで済む。また、中立操作部材64は引き操作力を作用させるものであるため、これをワイヤで構成しても良い。これと同様に制動操作部材54も引き操作力を作用させるワイヤで構成しても良い。
【0065】
(2)この実施形態では、駐車ブレーキペダル16を踏み込み操作した状態において、ロック操作アーム57の手動操作によりロック状態に移行し、駐車ブレーキペダル16の踏み込み状態を保持するものであるが、駐車ブレーキペダル16の踏み込み操作時に自動的にロック状態に達するようにロック機構を構成しても良い。このような構成では手動操作等によりロック状態を解除することになる。
【0066】
(3)また、クラッチペダル17が踏み込み操作された状態で駐車ブレーキペダル16の踏み込み操作を確実に規制するように、例えば、クラッチペダル17を踏み込み操作した場合には横方向に突出するように規制部材70を構成しても良い。このように水平方向に出退する規制部材70では駐車ブレーキペダル16から操作力が出退方向と直交する方向に作用するものであるため、駐車ブレーキペダル16の操作力がクラッチペダル17に伝えられることがなく、確実な規制を実現する。
【0067】
〔実施形態の作用・効果〕
駐車ブレーキ40では、作動部材42が軸受38を取り囲む位置に配置されるので、例えば、作動部材42をブレーキディスク41より外側に配置する構成のものと比較して外方への突出量の低減を実現している。これにより、伝動ケース20が運転部10に隣接して配置された場合でも、駐車ブレーキ40が運転部10の方向に出する不都合を抑制し、クローラベルトに接触する不都合も抑制する。
【0068】
また、作動部材42が軸受38より大径であるため、軸芯Xを中心として作動部材42回転させた場合には、軸芯Xを中心として小さい回転角だけ回転させた場合にも作動部材42の外周部分を必要とする距離だけ移動させ、カム機構44におけるカム溝44Bの傾斜を緩くして円滑な作動を行わせることも可能となる。
【0069】
伝動ケース20の左右のサイドクラッチブレーキ25を組み立てる際には、第1ブロック20B1と第2ブロック20B2とを重ね合わせる状態で視覚により複数の摩擦ディスク35の配置を確認できる。更に、駐車ブレーキ40を組み立てる場合には、第1ブロック20B1と第2ブロック20B2とを重ね合わせる状態で、更に第3ブロック20B3を重ね合わせることになるので、ブレーキディスク41及び操作軸43を視覚的に確認しながら組み付けを行えるものとなる。また、第1ブロック20B1、第2ブロック20B2、第3ブロック20B3を容易に分解できるので、メンテナンスも容易に行える。
【0070】
駐車ブレーキペダル16が踏み込まれた場合には、この操作力が作動アーム53の後端部53Rの上昇により制動操作部材54を引き上げ、引き操作力により駐車ブレーキ40が操作される構成であるため、制動操作部材54に小径のロッドやワイヤの使用を可能にして小型軽量化が可能となる。また、主変速レバー14が前進変速域Fと後進変速域Rとの何れかの変速域に操作されている状況でも、駐車ブレーキペダル16が踏み込まれた場合には作動アーム53の前端部53Fの下降により第1中立操作部材64Aと第2中立操作部材64Bとの何れかからの引き操作力が揺動プレート61に作用して主変速レバー14を中立位置Nに復帰させる。この構成では引き操作力により中立位置Nに復帰させる構成であるので中立操作部材64に小径のロッドやワイヤの使用を可能にして小型軽量化が可能となる。
【0071】
また、穀稈の無駄のない刈取を行うためにクラッチペダル17を踏み込み操作した状態において、駐車ブレーキペダル16が踏み込まれることがあっても、規制部材70が駐車ブレーキ40の制動位置への操作が規制部材70によって規制されるため、駐車ブレーキペダル16を誤操作したことを運転者が認識できるだけでなく、駐車ブレーキ40を無駄に駐車状態に維持する不都合も解消される。
【0072】
〔別実施の形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0073】
(a)駐車ブレーキ40をサイドクラッチ軸27以外に、例えば、前述した実施形態においける副変速軸23(伝動軸の一例)、あるいは、第1中間軸24(伝動軸の一例)の軸端に備える。このように軸端に駐車ブレーキ40を備える場合には、その軸を支持する軸受を取り囲む位置に作動部材42を配置することにより、この駐車ブレーキ40全体の小型化が実現する。
【0074】
(b)駐車ブレーキ40を備える伝動軸として、左右のクラッチ機構25Cだけを備えた軸、あるいは、左右のブレーキ機構25Bだけを備えた軸の軸端に備える。このように軸端に駐車ブレーキ40を備える場合にも、その軸を支持する軸受を取り囲む位置に作動部材42を配置することにより、この駐車ブレーキ40の全体の小型化が実現する。
【0075】
(c)カム機構44としてボールを用いる必要はなく、作動部材42と伝動ケース20との何れかの面、あるいは、双方の面に傾斜面を形成する。このように構成したものでは少ない部品点数でカム機構44を構成することが可能となる。また、カム機構44としてボール44Aを作動部材42と一体的に移動するように支持し、伝動ケース20に対してカム溝44Bを形成するものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、駐車ブレーキを備えた車両全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 走行装置
2 走行機体
10 運転部
20 伝動ケース
20B1 第1ブロック
20B2 第2ブロック
20B3 第3ブロック
27 伝動軸(サイドクラッチ軸)
28 クラッチスリーブ
35 摩擦ディスク
38 軸受
41 ブレーキディスク
42 作動部材
43 操作軸
44 カム機構
X 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に走行駆動力を伝える伝動ケースの伝動軸の回転を拘束することにより前記走行装置に制動力を作用させる制動機構を備えている作業車であって、
前記制動機構が、互いに圧接することにより前記伝動軸に制動力を作用させる複数のブレーキディスクと、押圧方向への作動により前記複数のブレーキディスクを圧接させる作動部材とを備えると共に、
前記作動部材が、前記伝動軸を前記伝動ケースに回転自在に支持する軸受を取り囲む環状に形成され、前記押圧方向が、前記伝動軸の中央側からこの伝動軸の外端側に向かう方向に設定されている作業車。
【請求項2】
前記作動部材が前記伝動軸の軸芯を中心にして回転することにより、この作動部材を前記押圧方向に作動させるカム機構を備え、前記作動部材を前記軸芯を中心にして回転させる操作軸を備えている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記走行装置で走行する走行機体に対して運転部が備えられ、前記伝動ケースのうち運転部に向かう外面に前記制動機構が配置されている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記伝動軸から左右の前記走行装置に走行駆動力を伝える左右の伝動系に駆動力を伝動する入り状態と、駆動力を遮断する切り状態とに切換えるクラッチスリーブが前記軸芯に沿って移動自在に備えられ、このクラッチスリーブがクラッチ切り方向に作動することにより互いに圧接して左右の前記走行装置のうち対応するものに制動力を作動させる複数の摩擦ディスクが前記伝動軸に備えられ、この左右の摩擦ディスクより前記伝動軸の外端側に前記軸受が配置され、この左右の軸受の1つより前記伝動軸の外端側に前記制動機構が備えられると共に、
前記複数の摩擦ディスクが支持される第1ブロックと、前記軸受が支持される第2ブロックと、前記複数のブレーキディスクが支持される第3ブロックとが前記軸芯に沿って、この順序で前記伝動ケースに支持されている請求項2に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61977(P2012−61977A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208279(P2010−208279)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】