説明

使用済現像液再利用

版処理装置に備わる現像液再利用装置であって、未使用現像液容器(13)と、版処理に備え未使用現像液容器(13)から現像液を受け入れる(15)よう構成されている現像部用タンク(10)と、現像部用タンク(10)から使用済の現像液を受け入れる(16)よう構成されている使用済現像液容器(14)と、使用済の現像液の導電率に応じ使用済現像液容器(14)からの返戻で現像液を補給する(21)よう構成されている補給手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用印刷で版の現像に使用される版処理装置における現像液補給装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタルリソグラフ印刷では、特殊な光機械式版セッタ上でイメージングした版を版処理装置に送り、その版に化学的な現像処理を施す。この現像処理で使用される現像剤は液状である。図1に示すように、版処理装置には、その現像液で充填される現像部用タンク10が従来から備わっている。
【0003】
リソグラフ印刷版がイメージングされ、版処理装置に運び込まれて処理されるたびに、現像部用タンク10内現像液は少しずつ消費されていく。それを補いタンク10内現像液位12を一定に保持するには、版現像サイクル実行毎に、未使用現像液容器13から現像液補給用パイプ系15経由で未使用現像液を補給する必要がある。容器13からタンク10への未使用現像液流入だけでは液位12が一定にならないので、使用済現像液排出用パイプ系16を介しタンク10内現像液の一部を使用済現像液容器14内に排出させることも必要になる。
【0004】
その使用済現像液容器14はいずれ使用済現像液でいっぱいになる。そうなったらその現像液を安全なやり方で除去・廃棄する必要があるが、使用済現像液には環境に対し悪影響を及ぼす性質があるため、その除去・廃棄にはかなりの費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4969002号明細書
【特許文献2】米国特許第5930547号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0346871号明細書(A2)
【特許文献4】欧州特許出願公開第0415392号明細書(A2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、現像液の使用可能期間を複数の版現像サイクルに亘る期間へと延ばし、現像液廃棄量や現像液廃棄頻度を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに、本発明の一実施形態に係り、版処理装置に備わる現像液再利用装置は、未使用現像液容器と、版処理に備えその未使用現像液容器から現像液を受け入れるよう構成されている現像部用タンクと、その現像部用タンクから使用済の現像液を受け入れるよう構成されている使用済現像液容器と、を備える。
【0008】
本装置は、更に、使用済の現像液の導電率に応じ使用済現像液容器からの返戻で現像液を補給するよう構成されている補給手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、現像液を版現像処理複数回に亘り使用することができ、使用済現像液の廃棄頻度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来における現像部用タンク・未使用現像液容器・使用済現像液容器間流通形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明における現像部用タンク・未使用現像液容器・使用済現像液容器間流通形態を模式的に示す図である。
【図3】現像液導電率の経時変化傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が上掲のものを含め本発明の目的、構成及び効果をより好適に理解できるよう、別紙図面を参照しつつ本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0012】
なお、これから本発明の実施形態について詳細に説明するけれども、本発明の技術的範囲は、以下の説明又は図示で示される構成及び部材配置の細部によって限定されるものではない。本発明は、これから説明するものとは別の用途に適用することや、別の形態で実施・実行することが可能である。また、以下の説明で使用している用語法や表現法はあくまで説明目的のものであり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨のものではない。
【0013】
図2に、使用済現像液容器14内に排出された使用済現像液の一部を再利用できるようにした実施形態を示す。本実施形態では、容器14内現像液を、現像部用タンク10内液位12が保たれるよう現像液再利用パイプ系21を介しそのタンク10内に還流させている。また、本実施形態では、版現像サイクル実行毎に、導電率プローブ11でタンク10内現像液の導電率を計測している。こうした容器14内現像液再使用は、その導電率計測値が図3中の導電率限界点(break even point)31に到達するまで、連綿と続くどの版現像サイクルでも実行される。
【0014】
本実施形態が依拠している事実は、時間経過や使用に伴う劣化はあるが、現像液は複数回に亘り再使用可能である、という事実である。図3に示す導電率変化傾向32から読み取れるように、現像液の導電率は時間経過や使用につれ低下し、いずれはある限界点31に達する。従って、上述のように、使用済現像液容器14内現像液を版の現像に再使用するのは導電率が限界点31に達するまでとし、達したらその液を安全に除去・廃棄すればよい。
【0015】
このように、本実施形態によれば、現像液のシステム内使用期間が延びるため、版現像1回当たり所要現像液総量及び費用が減ることとなる。加えて、使用済現像液総量及び使用済現像液容器除去頻度が減るため、環境に対する悪影響及び除去費用も減ることとなる。
【0016】
なお、本発明は、上述した諸特徴を全て有する形態、一部の特徴のみを有する形態、一部の特徴の一部構成部分を使用するが他の構成部分を使用しない形態等で実施可能であるので、ご理解頂きたい。
【符号の説明】
【0017】
1 現像部用タンク、11 導電率プローブ、12 現像液の液位、13 未使用現像液容器、14 使用済現像液容器、15 現像液補給用パイプ系、16 使用済現像液排出用パイプ系、21 現像液再利用パイプ系、31 導電率限界点、32 導電率変化傾向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版処理装置に備わる現像液再利用装置であって、
現像液を蓄える第1タンクと、
版処理に備えその現像液を受け入れる第2タンクと、
第2タンクから使用済の現像液を受け入れる第3タンクと、
第3タンク内現像液の導電率が所定値超なら第3タンク内現像液、所定値未満なら第1タンク内現像液を第2タンクに補給する補給手段と、
を備える現像液再利用装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像液再利用装置であって、第3タンク内にあり第3タンク内現像液の導電率を計測可能な導電率プローブを備える現像液再利用装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像液再利用装置であって、
第2タンク内にあり第2タンク内現像液の導電率を計測可能な導電率プローブと、
第2タンク内現像液の導電率変化に基づき第3タンク内現像液の導電率を導出する手段と、
を備える現像液再利用装置。
【請求項4】
版処理装置における現像液再利用方法であって、
未使用現像液容器から現像部用タンクへと未使用の現像液を移すステップと、
現像部用タンク内の現像液で版を処理するステップと、
その処理で使用された現像液を使用済現像液容器内に収集するステップと、
使用済現像液容器内現像液の導電率が所定値超である場合にその使用済現像液容器から現像部用タンクへと現像液を補給するステップと、
を有する現像液再利用方法。
【請求項5】
請求項4記載の現像液再利用方法であって、使用済現像液容器内現像液の導電率が所定値未満である場合に未使用現像液容器から現像部用タンクへと現像液を補給するステップを有する現像液再利用方法。
【請求項6】
請求項4記載の現像液再利用方法であって、
現像部用タンク内現像液の導電率を計測するステップと、
現像部用タンク内現像液の導電率計測値及び使用済現像液容器内現像液収集量の経時変化に基づき使用済現像液容器内現像液の導電率を導出するステップと、
を有する現像液再利用方法。
【請求項7】
版処理装置に備わる現像液再利用装置であって、
現像液を蓄える第1タンクと、
版処理に備えその現像液を受け入れる第2タンクと、
第2タンクから使用済の現像液を受け入れる第3タンクと、
第2タンク内現像液の導電率が所定値超なら第3タンク内現像液、所定値未満なら第1タンク内現像液を第2タンクに補給する補給手段と、
を備える現像液再利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−518274(P2012−518274A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550120(P2011−550120)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/000230
【国際公開番号】WO2010/093415
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】