説明

例示的な乳房組織についての体組織の特徴付けにおけるコンプトン散乱の利用、又はXRF(X線蛍光)及びEDXRD(エネルギ分散型X線回折)の組み合わせの利用

本発明は、体組織を解析する方法を記載しており、上記方法は、XRF、すなわち、体組織試料の第1の測定組織特性を表すデータを得る工程と、EDXRD、すなわち、組織試料の第2の別の組織特性を表すデータを得る工程と、データを組み合わせて用いて組織試料の解析を備える工程とから成る。体組織を正常又は異常として特徴付ける方法も記載している。本発明は、貫通放射ビームが入射する体組織試料から測定されたコンプトン散乱データを取得し、このデータを用いて組織試料の解析及び/又は特徴付けを備えることによって体組織の解析及び/又は特徴付けを行う方法も記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体組織を特徴付ける方法に関する。特に、本発明は、正常(例えば、健康)又は異常(例えば、病的)として体組織を特徴付けることに関する。本発明は、乳癌を含む癌の診断及び管理に対して、必ずしも排他的でないが具体的な適用可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
疑わしい乳癌又は明白な癌を管理するために、組織が、生検材料の形態で患者から除去され、組織病理学者による専門的な解析にかけられる。この情報は、その患者の疾病管理プログラムにつながる。解析は、組織試料の念入りな作製を必要とし、組織試料は次いで、腫瘍のサイズ、タイプやグレードなどの予後パラメータについて顕微鏡検査によって解析される。組織分類における重要なパラメータは、試料内に存在する構成成分の数量化である。組織像の解釈は、組織試料の質的解析に基づいて長年にわたってしか学習することが可能でない知見を必要とし、これは、観察者内で変わりやすいプロセスである。
【0003】
組織病理学的解析の相対的な価値にもかかわらず、個々の症例における腫瘍の挙動を予測するうえでの一定の度合いの不正確性が残る。更なる手法は、現在用いられているものよりも大きな度合いで組織の特徴付けを微調整する潜在性を有し、よって、対象の患者管理を向上させることになる。
【0004】
この分野における既存の調査では、X線蛍光(XRF)手法が、乳房組織の微量元素組成を調べるのに用いられており、乳癌には微量元素における変動が付随し、そうした測定は組織のグレード化に寄与し得る1。X線回折効果が、特定のタイプの組織を区別する効果的な手段として作用することが可能であることも明らかになった2、3。更に、そうした回折効果を適切に解析して組織成分におけるわずかな差を明らかにすることが可能であること、及びこの解析が組織の量的な特徴付けにつながり得ることが明らかになった
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの場合痛みを伴いかつ苦悩を与える生体組織検査に対する必要性を減らすことが可能になるために、生体内でより大きな度合いで組織を特徴付けるのに用いることが可能な手法に対する必要性が特に残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい狙いの1つは、一般に、組織の特徴付けの精度を向上させることが可能な量的解析手法を策定することであり、特に、正常組織と、病気の(例えば、病的)組織との間を区別することである。
【0007】
好ましい狙いは、組織解析のいくつかの主観的成分、特に乳房腫瘍のグレード付けにおいて「得点化される」変数の精度を向上させることである。
【0008】
一般的には、本発明は、2つ以上の別々の種類の測定組織特性の組み合わせを検討することによって結果が得られる、体組織の解析及び/又は特徴付けを行う方法を提供する。
【0009】
一局面では、本発明は、体組織を解析する方法を提供し、この方法は、
体組織試料の第1の測定された組織特性を表すデータを得る工程と、
組織試料の第2の別の組織特性を表すデータを得る工程と、
そのデータを組み合わせて用いて組織試料の解析を備える工程とを備える。
【0010】
一局面では、本発明は、体組織を特徴付ける方法を提供し、この方法は、
組織試料の第1の測定された組織特性を表すデータを得る工程と、
組織試料の第2の別の組織特性を表すデータを得る工程と、
そのデータを組み合わせて用いて組織試料の特徴付けを備える工程とを備える。
【0011】
第2の局面における特徴付けは、組織試料を正常又は異常として特徴付けることから成り得る。あるいは、特徴付けは、多くのグレードの異常を、明らかにして、例えば、一方端が「正常」で他方端が「異常」であり、その間に数多くの位置を備えたスケール上で行うことができる。更なる代替策として、又はあるいは追加として、特徴付けは、組織のタイプ付けの形態をとり得るものであり、この特徴付けは、組織の種類や、癌の段階及び同様なものなどの特定の特性を表すことを含む。
【0012】
何れの局面でも、第3の測定組織特性を表すデータも、組織試料の解析又は特徴付けにおいて他のデータと組み合わせて用いる。
【0013】
4つ以上の測定組織特性を表すデータを組織試料の解析又は特徴付けにおいて組み合わせで用いることが特に好ましい。
【0014】
組織特性データを得るのに用いることが可能な適切な手法には、X線蛍光(XRF)、エネルギ分散型X線回折又は角分散X線回折(EDXRD)、コンプトン散乱密度測定、小角X線散乱、及び線形減衰(伝達)係数の測定がある。
【0015】
測定される組織特性は、組織試料の組成、例えば、特定の元素又は有機化合物の存在、濃度及び/又は比率を含み得る。実際に、組織試料は、2つ以上のタイプの組織、例えば、脂肪組織又は腺組織を含み得るものであり、測定された特性はこれに関する情報を含み得る。
【0016】
好ましくは、上記局面の何れでも、データを組み合わせて用いて、組み合わせたデータを1つ又は複数の組織特性(例えば、正常又は異常)に関係付ける所定のモデルへの入力としてデータを用いることによって所望の結果を得る。
【0017】
更なる局面では、本発明は、体組織の解析及び/又は特徴付けのツールを作成する方法を提供し、上記方法は、2つ以上の(好ましくは、3つ若しくは4つ又は5つ以上の)測定可能組織特性を表すデータを1つ又は複数の組織特性に関係付ける補正モデルを作成する工程を備える。
【0018】
補正モデルは好ましくは、モデルによって判定される対象の1つ又は複数の特性(例えば、正常/異常)が既に知られている組織試料からの測定データ群を用いることによって作成される。こうしたデータ群を用いてモデルを既知のやり方で「訓練」することが可能である。
【0019】
他の多変量解析手法を用いることができる。
【0020】
本発明の更なる狙いは一般に、コンプトン散乱密度測定手法を体組織の解析において用いて健康組織と異常組織又は病気の組織とを非常に効果的に区別し、異常組織のタイプを区別することが可能であるという認識に基づいた解析及び/又は特徴付けの方法を提供することである。更に、コンプトン散乱は、生体内組織特徴付け手法における適用の可能性を有するものとして認識されている。
【0021】
この更なる一般的な狙いの本発明は、体組織の解析及び/又は特徴付けを行う方法を提供し、上記方法は、
貫通(例えば、X線)放射ビームが上に入射する体組織試料から測定されるコンプトン散乱データを得る工程と、
このデータを用いて、組織試料の解析及び/又は特徴付けを提供する工程とを備える。
【0022】
コンプトン散乱は、光子と電子との間で生じる相互作用から生じる。この相互作用の場合、電子は非結合であり、自由粒子としてふるまうものとする。入射光子のエネルギが原子の結合エネルギよりもずっと大きい場合にこの前提をおくことが可能である。図8は、コンプトン相互作用を示し、ここで、E0は入射光子のエネルギであり、E1は散乱光子のエネルギであり、m0c2は電子の静止質量エネルギであり、θは光子の散乱角であり、φは電子の散乱角である。Tは電子に付与される動的エネルギである。
【0023】
相互作用に関与する電子は静止している、すなわち、電子の初期エネルギ(Ee)及び運動量はゼロに等しい。相互作用中に、光子は、そのエネルギの一部を電子に付与する。伝達されるエネルギの量は、電子の反跳の角度及び結果として生じる光子の角度を定める。
【0024】
コンプトン散乱粒子の角度及びエネルギは、エネルギ及び運動量の保存の原理を用いて正確に算出することが可能である。図8から、入射光子はエネルギE0=hvを有し、散乱光子はエネルギE1=hv’を有することが分かり得る。
【0025】
エネルギ及び運動量を水平成分及び垂直成分に分解すると、重要なコンプトン散乱の式
【0026】
【数1】

が得られ、よって、適切なエネルギの光子を特定の角度で検出することによってコンプトン散乱の測定を行うことが可能である。
【0027】
一部の場合には、コンプトン散乱データは、選択された角度/エネルギで特定の期間内に検出される光子のカウントほどに簡単であることで十分なことがあり得る。別の場合には、電子密度の絶対的な測定(又は導き出された特定の他の測定)を得ることが望ましいことがあり得る。特に後者の場合、コンプトン散乱データを好ましくは、組織試料内の減衰について補償する。
【0028】
減衰効果を補償する1つのやり方は、2つの放射源及び2つの検出器を用いることである。これは、骨密度検査に通常用いられる手法であるが、より大量の被爆をもたらすので、特に生体内で組織試料を検査する場合により好ましくない。
【0029】
減衰効果を補償するうえで好ましい方法は、コンプトン散乱測定毎の直接伝達されるX線放射の測定を表すデータを得ることである。このデータを次いで用いて、組織試料内の減衰についてコンプトン散乱データを補償することが可能である。
【0030】
特に小角(90°未満)では、コヒーレントな散乱ピークと、コンプトン散乱測定との区別ができることも重要である。よって、伝達された放射線を、減衰を補償するのに用いるものとする場合、検出された散乱光子のエネルギは、伝達された放射線のものにできる限り近いことが好ましい。このことは、2つの測定について減衰係数があまり違わないことを確実にする。入射する貫通放射ビ―ムのエネルギ及びコンプトン散乱測定に選定される角度は、コンプトン散乱ピーク及びコヒーレントな散乱ピークを、こうしたピークの分離(すなわち、エネルギ)を最小にしながら分解することが可能であるように選ばれる。このことは、自己減衰効果をかなり減らすが、それは、このことによって、両方のピークに影響を及ぼす試料内の減衰係数が実質的に同じであるものとすることが可能になるからである。
【0031】
好ましくは、データは、1つ又は複数の組織特性(例えば、正常若しくは異常、又はスケールの一方端が「通常」で他方端が「異常」である異常スケール)にコンプトン散乱データを関係付ける所定の補正モデルへの入力として用いられる。コンプトン散乱データを多変量解析モデルへの入力として用いることが特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
特定の実施例は本発明の種々の局面を乳癌に関して説明しているが、本発明は一般にずっと広い適用可能性を有している。実際に、癌について乳房組織を解析し、特徴付けるとともに、他の評価(例えば、全身節の評価、肝の評価、膵臓の評価、前立腺の評価、結腸直腸の評価など)が想定され、泌尿器の評価及び婦人科の評価も想定される。
【0033】
本発明の実施例を以下に、添付図面を参照して例として説明する。
【実施例】
【0034】
以下に、乳房組織試料を用いて生体外で行われた研究を説明する。しかし、以下に例示する原理はより広く、例えば、他の組織に、かつ、生体内測定並びに生体外測定において得られたデータに関して適用可能である。上記原理を有用に、生体内の撮像アプリケーションに用いることが可能である。
【0035】
以下に説明する例示的な実施例は、X線蛍光(XRF)手法及びエネルギ分散型X線回折(EDXRD)手法を用いて組織特性を明らかにするものである。しかし、本発明はこれらの2つの手法に限定されず、他の手法を、XRD及びEDXRDに加えて、又はXRD及びEDXRDの代わりに用いることが可能である。用いることができる他の手法には、コンプトン散乱密度検査、小角X線散乱係数及び線形減衰(伝達)係数がある。
【0036】
以下に更に詳細に記載するように、K、Fe、Cu及びZnの濃度がX線蛍光(XEF)手法を用いて77個の乳房組織試料(正常として分類された38個及び病気として分類された39個)において測定された(他の実施例では、他の元素又は有機化合物の濃度を測定し得る。)。コヒーレントな散乱プロファイルも、試料内の脂肪組織及び繊維組織の比率が推定されるエネルギ分散型X線回折(EDXRD)を用いて測定された。
【0037】
30個の正常の試料及び30個の病気の試料からのデータを訓練群として用いて、2つの補正モデルを(1つは部分最小2乗(PLS)回帰を用いて、かつ、1つは、SIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy)手法の主要成分解析(PCA)を用いて)構成した。残りの試料、8個の正常のもの及び9個の病気のものからのデータが各モデルに提示され、予測が組織特性について行われた。
【0038】
XRF、EDXRD、及び両方の組み合わせの3つのデータ群が検査された。XRFデータは単独では、何れのタイプの解析でも病気状態の最も信頼性の低い指標であることが明らかになった。EDXRDデータは改良であったが、しかし、何れのモデリング方法でも、組織タイプを最も高精度で予測することは、データの組み合わせを用いることによってできた。
【0039】
1. 乳房組織試料
組織試料は、乳房切除、乳腺腫瘤摘出及び乳房縮小手術によって得られた。乳房縮小手術に関しては、いくつかの健康な乳房組織試料が得られた。乳房切除又は乳腺腫瘤摘出から得られた組織は概して、病変部位(浸潤性乳管癌として分類される)から得られ、一部の場合に、正常の組織が、腫瘍から離れた領域から得られた。入手可能な試料に応じて、正常と分類された38個の試料及び病気と分類された39個の試料について調査が行われた。試料のそれぞれの重量は、ほぼ1gであった。大半の試料は、厚さが2-3mmの範囲であった。切除後、試料は−85°Cで凍結させた状態に維持し、切除と測定の間には処理や試料作製は行わなかった。XRF測定の場合もEDXRD測定の場合も、試料は、常温で測定される前に解凍が可能にされた。
【0040】
2. 実験手順
2.1XRF
XRF研究は、Bending MagnetビームラインBM28上で機能するEuropean Synchrotron Radiation Facility(ESRF)を利用して行われた5。関心のK吸収端のすぐ上の光子エネルギに合わせた、入射シンクロトロン放射線の単純な配置を用いて、特に低い元素検出限度(<1ppm)が達成可能である。利用可能なXRFの強度が高いことによって、短い測定時間が可能になり、試料スループットが高くなる。シンクロトロン光子ビームの場合、偏光の平面は電子軌道のものと同じである。よって、試料上に向けられた光子と、検出器(Si (Li)、 Gresham Scientific Instruments、 Sirius model)に対する垂直線との間が90°の幾何形状の場合、光子ビームの強い線形偏光によって、散乱光子強度のかなりの抑制が提供される(蛍光には影響を及ぼさない。)。検出器に横方向の長さがあると仮定すれば、検出器に達する残りの試料依存性散乱光子(コヒーレント性及び非コヒーレント性)強度はよって、試料と検出器結晶との間に形成される立体角によって支配される。信号対バックグラウンド比における向上を提供することに加え、散乱放射線強度を制御することによって、散乱ピーク領域を正規化因子として用いることが可能になる。組織はZが低い材料であるので、検出システムがコンプトン成分を分解可能でないことは結果に影響を及ぼすものでない。
【0041】
関心の各元素(K、 Fe、 Cu及びZn)は、そのKα個の蛍光光子放出に関連した光電ピークによって識別された。Kα個の関心光子の最大の生成を図るために、試料は、特定のK吸収端を500eV上回るエネルギの光子によって照射された。これは、散乱した入射ピーク及び蛍光応答の分解も可能にするものである。この方法の例外はKの場合であり、この場合には、Feの場合と同じ入射光子を用いてデータが収集された。関心元素の試料濃度を数量化するために、補正曲線が元素毎に作られた。
【0042】
補正スタンダードは上記元素から成る水溶液であった。補正モデルの水マトリクスは、組織試料の「湿」性に合っている。組織内にみられることが期待されるものを示すように以下の範囲の濃度を補正に用いた。
【0043】
K:100ppm、300ppm、及び1000-4000ppm(1000ppm刻み)
Fe:3-30ppm(3ppm刻み)
Cu:1-10ppm(1ppm刻み)
Zn:2-25ppm(2ppm刻み)。
補正溶液は、理化学用シーリング・フィルム(Merck社LabSeal)によって封止されたペトリ皿内で測定された。組織試料は、先行して精製水によって満たされたそうしたペトリ皿上に配置され、封止された。試料は次いで、同じシーリング・フィルムによって覆われた。試料上のビーム・サイズは3mmx0.5mmであった。
【0044】
標準溶液から得られたスペクトルは、分光用に開発されたソフトウェアPeakFit (SPSS社、 AISN Software社のPeakFit(商標))を用いて解析された。スペクトルは、測定器具の不完全な分解能によって生じるピークブロードニング効果の除去につながる、デコンボルーションに基づいた手順を用いて平滑化された。スペクトルは、Levenburg-Marquardt非線形最小化アルゴリズムに基づいた手順を用いて順次フィッティングされた。このフィッティング処理は、線形のベースラインを考慮に入れ、それによって、光電ピークの幅にわたって、純カウント合計の推定が積分された。蛍光応答を正規化するために、散乱光電ピーク領域も算出された。蛍光対散乱光電ピーク領域の比は次いで、元素蛍光とその濃度との間の関係を導き出すのに用いられた。
【0045】
組織試料は標準溶液に用いたものと同じ条件下で照射された。スペクトルは、関心元素毎に収集された。スペクトルの解析も標準溶液について説明した手順に従った。蛍光対散乱光電ピーク領域の比と元素濃度とを関連付ける、補正データから導き出される最小2乗フィットは、試料のそれぞれにおける各元素のレベルを数量化するのに用いた。なお、小さな試料領域しか照射されていないが、測定は、健康組織と癌性組織との間の重大な差を不均質性がかなり変える訳でないことが明らかになったことを示している。この研究ではマトリクス効果に対する補正は行っていない。しかし、ここでの関心事は健康組織のレベルと癌性組織のレベルとの間の比較であり、何れの誤差も系統誤差であるので、比較は損なわれない。
【0046】
2.2 EDXRD
試料のそれぞれのEDXRD散乱プロファイルは、固定散乱角での多エネルギ光子ビームの散乱を利用する手法を用いて測定された。この手法は、いくつかの医用適用例、特に、骨塩量の推定の適用例6、7、最近では、乳房組織解析2に用いられている。結晶性体組織及び非結晶性体組織におけるX線回折解析の適用例の概要については、例えば、Royleら8を参照されたい。実験の構成を図1に略示する。70kV及び15mAで動作するタングステン・ターゲットX線管が用いられ、固有の濾過は1mmのベリリウムであった。入射ビームは、1mmx2mmの寸法の矩形の断面を形成する硬膜スラブ内に切断されたスリットを介してきっちりと照準が合わせられる。同様な照準配置が、試料の厚さ部分が囲まれた散乱体積につながる6°の散乱角で構成された。試料は、4ミクロンの厚さのフィルム(Glen Spectra Reference Materials社によるUltralene)によって両側を封止して、標準的な35mmのスライド・フレーム内に搭載された。この転移器によって、試料が入射ビームにわたって、この場合3mmの距離、移動し、約12mm3の照射体積をもたらすことができた。散乱光子は、HpGe検出器(EG&G Ortec)を用いて検出された。出力パルスは複数チャネル・アナライザ(EG&G Ortec社、92X Spectrum Master)を用いて解析された。試料毎の測定時間は2400秒であった。
【0047】
3. 結果
3.1 XRF
図2は、正常組織及び病気の組織について4つの関心元素のXRFスペクトル応答全ての平均を示す。元素濃度の数値は、補正線を介してXRF応答ピークと散乱ピークとの比から得られた(図示せず)。
【0048】
表1は、組織試料全てについてこうした結果を要約しており、試料群内の濃度の範囲、平均濃度及び標準偏差を示している。元素の測定レベル、及び健康組織と癌性組織との間の比較に関する詳細については、Gerakiら1による研究を参照されたい。
【0049】
【表1】

3.2 ERXRD
図3は、正常組織の試料全て及び病気の組織の試料全ての平均回折スペクトルを示す。2つのタイプの試料の組成における差は明らかである。
【0050】
脂肪組織からの特徴ピークは1.1nm-1の運動量移行値でみることが可能であり、繊維組織からの特徴ピークは約1.6nm-1である。これらのピークはXRFスペクトルの場合と同じ手法を用いてフィッティングされている。脂肪組織及び繊維組織の存在を反映する評価光電ピーク領域は次いで、X線管スペクトルの形状、及び2つのタイプの組織の減衰特性及び散乱特性における差などの要因について補正されている。2つの散乱ピークの補正相対強度は、各試料における2つの材料の相対量を反映している。
【0051】
こうした結果は、2つの材料の相対量の、試料のタイプに対する強い依存性を示す。健康組織は主に脂肪組織(76±9%)でできていた。一方、腫瘍組織は主に繊維組織(85±4%)でできていた。
【0052】
4. 4. モデリング
上記データは、2つの群に分割された、すなわち、30個の正常試料データ及び30個の病気試料データを訓練群として用いて補正モデルを生成した。各群からの残りの試料(8個の正常試料及び9個の病気試料)を次いで、モデルの入力として用い、組織タイプが予測された。
【0053】
補正処理では、実験データ(すなわち、元素組成及びEDXRDデータ)及び事前知識(すなわち、そのデータを表すことが分かっている数量)を用いて、将来の測定から未知の量的情報を予測する。この単純な適用例では、多変量手法を用いる、すなわち、多くの変数測定X {x (1), x (2).... x (n) }を用いて目標変数Y {y (1), y (2).... y (m)}を数量化する。この場合には、X変数は上記で測定されたデータであり、Y変数は組織の分類、すなわち、正常又は病気、である。
【0054】
後者を前者から予測するために、XがYにどのように関係するかを推定する必要があり、この例は、y=Xb+cの形式の回帰モデルである。未知のパラメータb及びcは、補正データから推定され、それは次いで、yの将来値を測定されたxから予測するのに用いることが可能である。
【0055】
別の方法は、特定の分類の変数を表すモデルが作成される分類手順を用いることである。これは、特定の分類に属するデータに対する主要成分解析を用いて行う。入力データは次いで解析され、モデルと比較され、各分類へのフィットが確かめられる。
【0056】
モデル9を作成するのに利用可能な統計補正方法はいくつか存在し、この研究は、SIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy)分類に用いられる部分最小2乗(PLS)回帰及び主要成分解析(PCA)を用いている。Unscrambler10は、この研究における多変量解析を行うのに用いたソフトウェア・パッケージである。
【0057】
4.1 部分最小2乗(PLS)回帰
3つのモデルがPLS手法を用いて作成された。第1のモデルはXRFデータのみを用いた。第2のモデルはEDXRDデータのみを用いた。第3のモデルは、組み合わせたデータ群を用いた。検査試料(8個の正常試料、9個の病気試料)からの適切なデータが次いでモデルに提示され、組織タイプの予測が行われた。
【0058】
図4及び図5は、3つのモデル全ての正常試料の予測、及び病気の試料の予測のそれぞれを示す。
【0059】
4.2 分類モデル
データ群(XRFデータ、EDXRDデータ、及び組み合わせたデータ)のそれぞれについて、主要成分解析モデルが、健康試料及び癌性試料について構築された。検査試料からの適切なデータがモデルに提示され、モデルのそれぞれに各試料がどれだけ近いかを示す得点が得られた。
【0060】
図6及び図7は、正常分類及び病気分類のそれぞれにおける各試料の予測を示す。
【0061】
5. 5. 考察
PLS手法を用いたXRFモデル予測がEDXRDの場合に最も信頼度が低く、組み合わせたデータの場合にも同様である。しかし、予測における不確実性は、両方のデータ群を組み合わせた場合にかなり低くなる。
【0062】
受け入れ可能な予測パラメータを70%以上の確実性で選んだ場合、高信頼度予測及び偽予測の数を見つけることが可能である。表2は、PLSモデルのデータを要約している。
【0063】
【表2】

【0064】
同様に、分類手法を用いた場合、XRFが最も信頼度が低く、EDXRDデータを用いた改善が示されている。なお、正常の試料の場合、予測は正常の分類においてより高くなっている一方、病気の試料の場合、誤った分類がいくつかの場合に行われている。組み合わせたデータを用いることによって、特に病気の試料を検査する場合に、予測における著しい改善が示されている。
【0065】
上記のように、70%の確率カットオフ限度を選べば、正確な予測の数を見つけることが可能である。表3は上記データを要約している。
【0066】
【表3】

【0067】
検査試料のタイプの予測を首尾良くかつ正確に行ううえで、(XRFとEDXRDとを組み合わせた結果と比較して)XRFデータが相対的に非効率的であることは、大きく関連した標準偏差(表1)によって明らかである、試料群を特徴付ける濃度の広範囲にわたる分散によるものである。
【0068】
上記研究によって示すように、本発明の実施例は、データの組み合わせ、及び適切なモデルを用いて組織タイプの改善された特徴付けを提供することが可能である。分類手法が特に首尾良く行われるものであることが明らかになった。
【0069】
本発明の第1の一般的な狙いの実施例を例によって説明した。なお、特に説明したものに対する種々の修正を本発明から逸脱することなく行うことが可能であることが認識されるであろう。例えば、本発明を例示するために前述した研究には、特性を特徴付ける2つのタイプの組織のみを用いることが関係している。本発明の他の実施例は、特性を特徴付ける3つ以上のタイプの組織、又は特性を特徴付ける別の組織を用いることができる。種々の有用なパラメータを用いて特徴付けられる、試料を用いたモデルの作成によって、有用な組織病理ツ―ルを得ることができる。別々のデータ群が、数量化したいパラメータ全てを表すことが可能であるとすれば、多変量手法は、試料を正確に特徴付けるための有望な方法である。
【0070】
前述の特定の実施例は主に乳癌に関するが、本発明は一般にずっと広い適用可能性を有している。実際に、癌について乳房組織を解析し、特徴付けるとともに、他の評価(例えば、全身の節の評価、肝の評価、膵臓の評価、前立腺の評価、結腸直腸の評価など)が想定され、泌尿器の評価及び婦人科の評価も想定される。
【0071】
コンプトン散乱
第2の一般的な狙いの本発明は、体組織の一様な試料からの体外のコンプトン散乱測定を参照して以下に例示する。一般的な手法は、しかし、体内適用例をはじめとする非一様性組織試料の解析に同様に適用可能である。
【0072】
実験は2度(A及びB)行われ、各回は、2つの部分、すなわち、全試料に対して行われたコンプトン散乱測定、及びそれに続く伝達測定、を備える。これは、2つの測定を試料毎に連続して行うことに優先して行われた。この手法は、2つの理由で適合させた。第1は、機器の移動を最小にすることによって試料間で構成の一貫性を確保することであり、この第2は時間の節約である。
【0073】
理論
コンプトン散乱粒子の角度及びエネルギは、エネルギ及び運動量の保存の原理を用いて正確に算出することが可能である。入射光子がエネルギE1=hvを有し、散乱光子がエネルギE2=hv’を有する場合、エネルギ及び運動量を水平成分及び垂直成分に分解することによって、重要なコンプトンの式
【0074】
【数2】

が得られ、ここで、m0c2は電子の静止質量エネルギであり、θは散乱角である。
【0075】
図1に示す円筒の幾何形状を考えてみる。光子ビームはABの方向でエネルギEを備え、検出器は入射ビームに対する散乱角θに配置される。検出器に達するエネルギE2を備えた散乱光子の数Sは、
【0076】
【数3】

によって表され、ここで、Vは散乱材料の体積であり、ρeは散乱体積内の材料の電子密度であり、μ1は入射エネルギでの光子の減衰係数であり、μは削減されたエネルギE2を備えて角度θにわたって散乱したコンプトン光子の減衰係数である。入射エネルギE1及び散乱角θが念入りに選ばれた場合、E1≒E2であり、よって、μ≒μであると仮定することが可能である。これらの仮定の下では、
【0077】
【数4】

となり、式(2)は
【0078】
【数5】

となる。減衰の指数法則から
【0079】
【数6】

が求められ、ここで、I0は入射光子強度であり、Iは伝達光子強度である。したがって、I0、I及びSの測定を得ることによって、電子密度は
【0080】
【数7】

によって求めることが可能であり、ここで、Sは散乱カウント強度であり、T=I/I0であり、kは、既知の電子密度を備える補正材料を用いて判定される体積項を含む定数である。
【0081】
実験A
方法
理想的には、単一エネルギ源を用いて、コンプトン散乱ピークが容易に検出可能であることを確実にすべきである。X線管によって生成された特徴線を用いて、疑似単一エネルギ源を生成した。この方法を用いて、コンプトン・ピーク及びコヒーレント・ピークを容易に分解し、ウィンドウイングすることが可能である。制動放射線バックグラウンドを次いで減算することが可能である。
【0082】
実験からの所望の結果は、コンプトン・ピーク及びコヒーレント・ピークを、エネルギにおいてできる限り近い状態に維持しながら分解することができることであった。検出器特性は、最小分解可能エネルギが約1keVであることを要求する。
【0083】
上記に表すコンプトン散乱式を用いて、入射ピークと散乱ピークとの間のエネルギにおけるおおよその差を得るのに必要な角度が算出された。E0−E’≒1keVであることを得るためには、選択肢として、より大きなエネルギ及び小さな散乱角(図9にθとして規定する)と、より小さなエネルギ及びより大きな散乱角との何れかがあった。これらの選択肢を何れも考察した。結論は、より大きなエネルギを用い、かつ、上記角度を最小にすることによって、いくつかの利点が提供されるということであった。第1に、組織によるビームの減衰は、エネルギが大きくなると小さくなる。第2に、散乱は、順方向で最大であり、90°で最小である。したがって、検出器に達するフラックスは、角度が小さくなるとずっと大きくなり、それによって、カウント時間がかなり削減される。より小さなビーム・サイズを用いることも可能であり、それによって、測定の精度が向上する。しかし、所望の場合、より大きな散乱角を用いることが可能である。
【0084】
ソース、試料及び検出器の間の距離を、最小に維持して、逆2乗則効果によるフラックスの損失を低減させた。実験の構成を図9に示す。
【0085】
入射X線ビームは、試料の前及び試料の後ろで0.5mmの円に照準が合わせられた。これは、適度なフラックスを維持しながら得ることが可能な最小ビーム・サイズであった。X線源のタングステン・ターゲットからのKα線(Ekα1=59.3keV、Ekα2=57.97keV)が用いられた。このエネルギで、30°の散乱角によって、コンプトン・ピークとコヒーレント・ピークとの間で1keVのピーク分離が得られることになる。この例で構成された角度は厳密には28.2°であった。散乱体積は、入射ビーム及び散乱ビームの交差領域内に含まれる組織を備える。このビーム照準、及び28.2°の散乱角の場合、散乱体積全体が試料内に含まれていた。このことは、散乱体積内に空気やプラスチックが含まれていなかったことを意味する。試料は、試料の周りの12個の位置について位置毎に20分間測定された。
【0086】
試料
各組織タイプの5個の試料が検査に選ばれた。これらは、5個の線維腺腫(良性)試料、5個の浸潤性乳管癌(悪性)試料、及び5個の純粋脂肪(正常)試料であった。試料は、内径が6mmであり、壁厚が1mmのプラスチック容器に入れられた(図10に示す)。容器の壁は比較的厚く、散乱ビームのかなりの減衰を引き起こすものであったが、これらの容器は、いくつかの重要な利点を提供するものであったので選らばれた。
【0087】
1)試料を容器内に入れ、ストッパによってゆるく圧縮させて、容器が歪むことなく空隙を取り除くことが可能であるように側部は完全に固定されたものであった(図10を参照されたい。)。これは、実験を通じて組織の移動を最小にするものでもある。
【0088】
2)容器は費用がかからないものであったので、実験期間中、各試料はそれ自身の容器を有し、それによって、試料を移動させ、高精度で再配置させることができることが可能であった。
【0089】
3)試料は、回転の中心に対して対称である必要もあった。
【0090】
機器
検出器
実験は、産業用X線管(Pantak HF160)を用いてCity University Radiation Laboratoryにおいて行われた。HPGe検出器が用いられた。これは、コンプトン・ピーク及びコヒーレント・ピークの分解を可能にするために、好適なエネルギ分解能がこの実験に必要であったからである。実験全てを通じて用いた検出器であるOrtec GLP-25300 HPGe検出器によって、Am-241ソースを用いて測定されたピークを図11に示す。エネルギ分解能は、図11に示すように、ピークのFWHMとして計算される。この検出器の場合、エネルギ分解能は、59.54 keVで0.435 keV(0.73%)である。同じエネルギでのNal (Li)検出器の分解能は約6-7%である。エネルギ分解能を調べるためにこのピークを用いた理由は、行った実験が、タングステンからの57.97keVのKα2ピークを用いて行われたからである。これは、59.54 keVでのAm-241のピークにエネルギにおいて非常に近く、よって、分解能はおおよそ同じになる。
【0091】
エレクトロニクス
エレクトロニクス連鎖の図を図12に示す。
【0092】
検出器は前置増幅器及び増幅器を介して、一方はコンプトン・ピークを記録し、他方はバックグラウンド領域を記録する2つの単一チャネル・アナライザに接続された。PCとの通信は、イーサネット(登録商標)・カードを介して可能にされた。
【0093】
ウィンドウイング
観察された散乱スペクトルを図13に示す。W状のKα1線及びKα2線の2つのコヒーレント・ピークを識別することが可能である。より小さな2つのコンプトン散乱ピークをみることが可能である。
【0094】
Kα2のコンプトン・ピークがこの実験のために測定された。これは、Kα1のピークは、より強い信号を有するが、2つのコヒーレント・ピークとかなり重なっているからである。
【0095】
伝達測定
方法
伝達測定は、非散乱ピークの強度における低減の測定であり、組織減衰によるカウントの損失の測定である。この測定のために、検出器はゼロ度に配置された(図14を参照されたい。)。
【0096】
システム補正
測定する組織の組成が分からないので、電子密度測定システムを補正する必要がある。これは、既知の電子密度又は計算可能な電子密度を備えた特定の物質を測定することによって行った。包括的な補正グラフを作成するために5つの物質を選んだ。選んだ溶液は、水、イソプロパノール、及び燐酸水素二カリウムK2HPO4の溶液であった。水及びプロパノールは、容易に入手可能であり、扱いやすく、組織の電子密度に近い既知の電子密度を有しているので選んだ。K2HPO4は、細胞の流体にみられる元素と同様な元素を含んでおり、よって、人体組織組成の好適なモデルであるので選んだ。燐酸溶液の濃度を、容易に変えて、異なる電子密度を有する溶液を備えることができた。組織の値に近い値を有するために、2%、5%及び10%の溶液を用いた。
【0097】
補正溶液の散乱データを検証するため、こうした溶液の組成が分かっているので線形差分散乱係数を理論的に計算することが可能である。
【0098】
クライン・仁科の断面は、入射光子エネルギ及び散乱角によって変わってくる。クライン・仁科の差分散乱断面は、28. 2°の散乱角で57.97keVの光子の場合、7.177 x 10-26 cm2/電子として計算される。この値、及びHubbellら(1975)から得たS(x)の集計値を用いて、補正溶液毎のμComptonが計算された。
【0099】
実験値を理論値に対して示すグラフを図15に示す。補正された散乱カウントは、減衰を補正した散乱ピークにおいて測定されたカウントであり、
【0100】
【数8】

によって表し、ここで、Scorrは減衰を補正した散乱ピークにおいて記録されたカウントであり、Smeasは散乱ピークにおけるカウントの数であり、Bsは散乱ピークにおけるバックグラウンド・カウントであり、Imeasは伝達ピークにおけるカウントの数であり、Bγは伝達ピークにおけるバックグランド・カウントの数であり、I0は非減衰カウント強度であり、B0はこれらのカウントのバックグラウンド領域である。
【0101】
図15のグラフを用いて、測定された補正カウントを、コンプトン散乱の差分散乱係数μsに変換することが可能であり、ここで、
【0102】
【数9】

である。上記式(4.14)では、Scorrは式41.3に記載の補正散乱カウントであり、Nは実験上の系統誤差であり、kは、補正グラフを用いて求められる定数である。
【0103】
グラフの傾向線はゼロを通過しないが、y軸と交差する。このことは、期待されたよりも少ないカウントが記録されることをもたらす実験上の系統誤差が存在することを示唆するものである。これは、高光子フラックスから検出器を保護するために伝達測定中にビーム内に配置される小量の銅によるものである可能性が最も高い。構成の幾何形状も、散乱測定と伝達測定との間で変えた。検出器は更に遠ざけるように移動させた。逆2乗則によって、このことは、期待されたよりも少ないカウントが記録されることになることを意味するものである。これらの2つの因子は、この場合、この計算において考慮に入れることが可能であるので、補正されていない。
【0104】
補正溶液の組成が分かっているので、こうした溶液の電子密度を、式
【0105】
【数10】

を用いて計算することが可能であり、ここで、ρは材料の物理密度であり、Z/Aは、質量分率ωの元素毎の原子番号と原子量の比である。Z/A値は集計され、Attix(1996)から得ている。図16のグラフは、測定された散乱係数に対してプロットした理論上の電子密度を示す。
【0106】
このグラフの場合、上記2つの数量が、クライン・仁科の断面に等しいグラディエントとほぼ完全に相関することが分かり得る。これはxの値が高い場合に期待されることであり、非コヒーレント散乱係数はZに等しくなる。この一致は、実験の理論的妥当性を確認するものである。
【0107】
結果
図17は、散乱ピーク測定から得られた結果を示す。
【0108】
図17の表上では、各組織タイプのメジアンを示す(中央の太線)。四分位数間範囲が箱内に含まれており、突起対は範囲全体を示している。
【0109】
解析
電子密度値の計算
図15のグラフは、散乱ピークにおけるカウント数を差分線形散乱係数μsに変換するための補正式を表す。グラフによって表される式は、
【0110】
【数11】

であり、ここでxはコンプトン・ピークにおける補正カウントである。
【0111】
こうした実験散乱係数は次いで、補正溶液値を用いて電子密度に変換される。この変換は、結果グラフ中の傾向線によって示す(図11)。
【0112】
結果を図11のグラフに示す。このグラフ上では、ICRUレポート 44 (ICRU、 1989)に記載された標準組織組成の電子密度の値も示している。このレポートには、別々の組織組成について3つの別個の値が記載されている。これらの6つの組織の元素組成を以下の表に示す。なお、このレポートに引用された値は、悪性組織成長についての公表データが存在しないので、健康組織についてのみである。
【0113】
【表4】

【0114】
通常、悪性組織は健康な腺組織とほぼ同じ構造を有するものとする。これは、腫瘍が通常、純粋の脂肪性(脂肪)組織内で成長するのではなく、繊維組織内にあるからである。
【0115】
得られた最終結果を、以下の表に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
組織タイプ間の測定電子密度間のこの差をモデル(本出願人による同時係属の英国特許出願第0328870.1号明細書に記載されたものなど)において用いて、タイプが未知の試料の組織タイプを判定することが可能である。これは、よって、潜在的に有用な診断ツールを表すものである。コンプトン散乱測定を生体内でも行うことが可能であるので、この手法は、体内の診断手法並びに体外の診断手法として用いるのに潜在的に有用でもある。
【0118】
本明細書中で本発明を例示するのに用いる3つの組織タイプは、「良性」、「悪性」及び「脂肪」であるが、この手法は、他の組織特性の判定や他の組織解析の適用例に適用することが可能である。
【0119】
実験B
材料及び方法
試料
5個の線維腺腫(良性)試料、8個の浸潤性乳管癌(悪性)試料、4個の線維ノウ胞性変化(非悪性異常)試料、及び5個の純粋脂肪(正常)試料の4つの別々の組織タイプの試料群を検査した。各試料は2つの点で検査された。試料は、内径が6mmであり、壁厚が1mmであるポリエチレンの試料バイアルに入れられた。バイアルの壁は比較的厚く、散乱ビームのある程度の減衰を引き起こすものであったが、これらの容器は、いくつかの重要な利点を提供するものであったので選ばれた。
【0120】
試料をバイアル内に入れ、バイアルが歪むことなくストッパによってゆるく圧縮させることが可能であるように側部は完全に固定されたものであった。このストッパは、空隙を取り除くものであり、実験を通して組織の移動を最小にするものでもある。容器は費用がかからないものであったので、実験期間中、各試料はそれ自身のホルダーを有し、それによって、試料を移動させ、高精度で再配置させることができることが可能であった。試料は、回転の中心に対して対称である必要もあった。
【0121】
方法
タングステン・ターゲットX線管によって生成されるKα特徴線を単一エネルギ源として利用して、コンプトン散乱ピークが検出可能であることを確実にした。この方法を用いれば、記録スペクトルからのコンプトン散乱ピーク及びコヒーレント散乱ピークを容易に分解し、ウィンドウイングし、制動放射線バックグラウンドを減算することが可能である。実験の所望の結果は、コンプトン散乱ピーク及びコヒーレント散乱ピークを、エネルギにおいてできる限り近い状態に維持しながら分解することができることであった。検出器特性は、最小分解可能エネルギが約1keVであることを要求した。
【0122】
実験の構成を図9に示す。X線ビームは試料の前にも試料の後ろにも直径0.5mmに照準が合わせられた。これは、適度なフラックスを維持しながら得ることが可能な最小ビーム・サイズであった。X線源のタングステン・ターゲットからのKα線(Ekα2=57.97keV)を用いた。このエネルギで、30°の散乱角によって、コンプトン散乱ピークとコヒーレント散乱ピークとの間で1keVのピーク分離が得られた。散乱体積は、入射ビーム及び散乱ビームの交差領域内に含まれる組織を備える。このビーム照準及び散乱角の場合、試料内に散乱体積全体が、バイアルからの空気やポリエチレンが含まれずに、含まれていた。各試料は、組織の非均質性による誤差を削減するために測定を通して試料を回転させて、計4時間測定された。
【0123】
機器
実験は、Pantak HF160の産業用X線管を用いて行った。コンプトン・ピーク及びコヒーレント・ピークを分解するために必要なエネルギ分解能を生成するためにHPGe検出器を用いた。エネルギ分解能は、59.54 keVで0.435 keV(0.73%)として測定された。検出器は前置増幅器及び増幅器を介して、一方はコンプトン・ピークを記録し、他方はバックグラウンド領域を記録する2つの単一チャネル・アナライザに接続された。悪性組織の観察散乱スペクトルを図20に示す。
【0124】
W状のKα1線及びKα2線の2つのコヒーレント・ピークを識別することが可能であり、より小さな2つのコンプトン散乱ピークをみることが可能である。Kα2のコンプトン・ピークは、Kα2のコヒーレント・ピークの重ね合わせがない領域にわたってウィンドウイングされた。散乱測定にも用いたこのウィンドウイング領域は図20にも示す。試料毎の伝達測定は、ゼロ度に検出器を配置し、ビーム内の位置に試料がある場合及びビーム内の位置に試料がない場合の光子強度を記録することによって行った。
【0125】
システム補正
測定する組織の組成が分からないので、電子密度測定システムを補正する必要があった。これは、既知の電子密度又は計算可能な電子密度を備える物質を測定することによって行った。補正グラフを作成するために5つの物質を選んだ。
【0126】
選んだ溶液は、水、イソプロパノール、及び燐酸水素二カリウムK2HPO4の溶液であった。水及びプロパノールは、容易に入手可能であり、扱いやすく、生物材料の電子密度に近い既知の電子密度を有しているので選んだ。
【0127】
燐酸溶液の濃度を、容易に変えて、異なる電子密度を有する溶液を備えることができる。組織の値に近い値を有するために、2%、5%及び10%の溶液を用いた。
【0128】
補正溶液の散乱データを検証するため、こうした溶液の組成が分かっているので線形差分散乱係数を理論的に計算することが可能である。線形散乱係数は、入射エネルギEの光子が角度θにわたって散乱することになる確率の尺度であり、式(7)によって表される。
【0129】
【数12】

であり、ここで
【0130】
【数13】

である。ここで、Mは材料の分子質量であり、pは質量密度であり、NAはアボガドロ定数である。S(x)は非コヒーレント散乱係数であり、差分散乱断面は、クライン・仁科(Klein-Nishina)断面の略のKNによって表す。コンプトン効果のクライン・仁科差分散乱断面は
【0131】
【数14】

によって表し、ここでEは入射光子エネルギであり、θは光子散乱角であり、αは、入射光子エネルギと電子静止質量エネルギの比であり、
【0132】
【数15】

によって表し、r0は古典電子半径である。
【0133】
クライン・仁科差分散乱断面は、光子エネルギ及び散乱角によって変わってくる。それは、30°の散乱角で57.97 keVの光子の場合、7.177 x10-26 cm2/電子として計算された。この値、及びHubbellらから得られたS (x)の集計値を用いて、補正溶液毎のμComptonの値が計算された。式(7)から計算された散乱係数値に対する実験散乱測定を示すグラフを図21に示す。
【0134】
補正された散乱カウントは、減衰を補正した散乱ピークにおいて測定されたカウントであり、
【0135】
【数16】

によって表し、ここで、Scorrは減衰を補正した散乱ピーク内で記録されたカウントである。Smeasは散乱ピークにおけるカウントの数であり、Bsは散乱ピークにおけるバックグラウンド・カウントであり、Imeasは伝達ピークにおけるカウントの数であり、Bγは伝達ピークにおけるバックグランド・カウントの数であり、I0は非減衰カウント強度であり、B0はこれらのカウントのバックグラウンド領域である。図21を用いて、測定された補正カウントを、コンプトン散乱の差分散乱係数μに変換することが可能であり、ここで
【0136】
【数17】

である。式(12)では、Scorrは式(11)に表すような補正散乱カウントであり、Nは実験上の系統誤差であり、kは、補正曲線を用いて求められる定数である。
【0137】
補正溶液の組成が分かっているので、こうした溶液の電子密度を、式
【0138】
【数18】

を用いて計算することが可能であり、ここで、ρは材料の物理密度であり、Z/Aは、質量分率ωの元素毎の原子番号と原子量の比である。Z/A値は集計され、(Attix 1986)から得ている。図22は、式(12)によって表す測定散乱係数に対してプロットした、式(13)から計算される理論上の電子密度を示す。なお、2つの数量は、クライン・仁科断面に等しいグラディエントとよく相関し、これは期待されることであるが、それは、大きなx値の場合、非コヒーレント散乱係数がZになるからである。
【0139】
結果
図23は各試料上の2つの点から得られた電子密度測定の結果を示す。各組織タイプのメジアンを示す(中央の太線)。四分位数間範囲が箱内に含まれており、突起対は範囲全体を示している。
【0140】
図21のグラフは、補正散乱ピークにおけるカウント数を差分線形散乱係数μに変換するための補正式を表すものである。グラフによって表す式は、
【0141】
【数19】

であり、ここで、xはコンプトン・ピークにおける補正カウントである。
【0142】
こうした実験散乱係数は次いで、クライン・仁科断面を用いて電子密度に変換される。この変換は、図22中の傾向線によって示す。平均結果は図24に示す。
【0143】
図24には、ICRUレポート44 (ICRU 1989)に記載された標準組織組成の電子密度の値も示す。このレポートには、種々の組織組成について3つの別個の値が記載されている。これらの6つの組織の元素組成を表4に表している。このレポートに引用された値は、悪性組織の成長についての公表データがないので健康組織のみについてのものである。
【0144】
【表6】

【0145】
悪性組織が健康腺組織とほぼ同じ構造を有していることが通常みなされる。これは、腫瘍が通常、純粋の脂肪性(脂肪)組織内で成長するのではなく、繊維組織内にあるからである。
【0146】
得られた最終結果を表5に示す。
【0147】
【表7】

【0148】
個々の測定はそれぞれ、統計的にばらつきやすい。誤差σは
【0149】
【数20】

として表し、ここで
【0150】
【数21】

は、読み取りがN回繰り返される場合の平均カウント数である。散乱の読み取りの場合、各測定は、カウントに対する誤差が十分低い(<0.5%)ことを確実にするよう十分な時間(4時間)にわたって測定された。時間の制約によって、読み取りは繰り返されなかった。
【0151】
最大の誤差は、バックグラウンド・カウントの除算に関係する。バックグラウンド・カウントの計算に対する全体誤差は4.2%である。これは、図21における誤差バーによって示す。他の誤差源には、複数散乱の効果、試料の配置における誤差、及び伝達測定のための試料の再配置における誤差がある。検出器に先行するコリメータの受光角によって生じるコンプトン散乱ピークが広がることもある。
【0152】
これらの他の誤差は、数量化するのが難しく、かつ、前述のバックグランド除算誤差に比べて小さいので、考慮に入れていない。
【0153】
考察及び結論
結果によって、脂肪組織の電子密度と悪性組織の電子密度との間の検出可能な差が6.4%の値であることが明らかになった。この差はICRUレポート44からの脂肪組織値及び腺組織値を用いることによって求められる値と一致している。腺組織(ICRU44 腺#2)の平均値は、平均脂肪値(ICRU44 脂肪#2)よりも6.2%高い。
【0154】
良性(線維腺腫)組織又は線維ノウ胞性組織について公表された組成値は存在しない。しかし、この実験B内で行った測定では、良性組織の電子密度と悪性組織の電子密度との差が5.6%の値であり、線維ノウ胞性変化組織と悪性組織との間の差が2.3%であることが明らかになった。
【0155】
この組織タイプを用いた先行研究から公表されたデータは存在しないので文献を用いてこうした結果を検証することは難しい。しかし、補正溶液の場合の相関の度合いが高いこと(図21)は、システムが信頼できる精度を有していることを示している。このことは、良性組織と悪性組織との間の測定可能な差が存在するという結果における確信をもたらすものである。
【0156】
腫瘍細胞の代謝及び生理機能が、正常であり実際に良性の細胞の代謝及び生理機能とは大きく異なることを示唆する証拠が多く存在している。
【0157】
良性腫瘍の成長において、細胞増殖の増加が多くの場合存在するが、細胞自体は比較的正常である。しかし、悪性病変において、腫瘍細胞及び宿主組織の構造及び代謝は異なる生化学構造を有する(Gould 1997)。このことは、正常と比較して良性組織の電子密度における増加は、悪性組織においてみられるような、組成における変化ではなく細胞濃度における増加によることが潜在的にあり得ることを示唆している。このことは、生体外の良性組織は正常の組織よりもわずかにしか高くない電子密度を有し、悪性組織はずっと大きな差を示すと言う結果と一致する。
【0158】
Otto Warburg博士は西暦1930年に初めて、癌細胞は、正常細胞とは基本的に異なるエネルギ代謝を有していることを観察している(Warberg 1930)。以降、研究によって、腫瘍細胞は、ブドウ糖が発酵作用によって乳酸に変換される作用である嫌気性解糖を経ることが明らかになった。この作用は、正常細胞の好気性呼吸と比較して極めて非効率的である。
【0159】
ブドウ糖の消費率は、組織学的グレードに比例することが明らかになっており(Vaupelら1989)、グレードの高い腫瘍は、成長の増大に対する高いエネルギ需要を供給するために約40倍多くのブドウ糖を吸収することが可能である。ブドウ糖のアナログである18F-FDGを用いた腫瘍の撮像にポジトロン断層(PET)撮像を非常に効果的なものにするのはこの作用である。これは、良性組織がブドウ糖消費の増加を表さないので、PETが高精度で良性腫瘍と悪性腫瘍とを区別することが可能にする(Brockら 1997)。
【0160】
嫌気性解糖によって、組織内に乳酸の蓄積が生じる。腫瘍内に蓄積する乳酸(CH3-CH (OH) -CO (OH) )は、8.2 x 1023電子/cm3の宿主組織と比較して高い電子密度を有し、よって、測定される電子密度増加の原因であり得る。ケトン及びグルタミンの増加もあり(Vaupelら1989)、それは、腫瘍組織の全体電子密度も増加させ得る。良性組織及び悪性組織の組成を直接測定することは行わなかったが、上記は、組成にかなりの差があることを示唆している。腫瘍発生中に組織内に生じるいくつかの作用が存在するので組成の変化の厳密な特性を推定するのは難しい。
【0161】
検査した最後の組織タイプは、線維ノウ胞性変化であった。この語は、一定の範囲の組織学的変化を包含するが、大半は組織の繊維症によって特徴付けられる。これは、組織の間質性(結合組織)成分が増加し、コラーゲンが蓄積する瘢痕作用である。成熟コラーゲンの増加は、胸部における他のいくつかの良性の病気の作用においてみられ得るが、最も顕著な増加はおそらく線維ノウ胞性変化の間に生じる。これは、この組織分類が、他の何れのタイプの組織よりも(悪性組織よりも)高い電子密度を有するものであったという結果を説明し得る。
【0162】
線維ノウ胞性変化を表す組織を検査すると、流体によって満たされたポケット(ノウ胞)が何れも組織作製中に散乱してしまい、高密度線維性組織のみが検査対象として残ることになる可能性が高い。
【0163】
本発明は、増加した数の線維腺腫組織、浸潤性乳管癌組織及び家族性大腸癌(FCC)組織の評価に有用であるのみならず、健康な繊維組織及び別の病気の作用を評価するよう構成することもできる。
【0164】
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【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施例による、以下に説明する例示的な方法において用いるEDXRD実験装置の概略図である。
【図2】平均XRF応答を示す一連のグラフである。
【図3】正常の組織及び病気の組織のEDXRD散乱プロファイルを示す図である。
【図4】正常の検査試料のPLSモデル予測を示す図である。
【図5】病気の検査試料のPLSモデル予測を示す図である。
【図6】正常の検査試料の組織タイプの予測を示す図である。
【図7】病気の検査試料の組織タイプの予測を示す図である。
【図8】コンプトン散乱のエネルギ性を示す図である。
【図9】本発明の実施例の例におけるコンプトン散乱測定に用いる実験構成を略示する図である。
【図10】例のコンプトン散乱測定において用いる試料ホルダーを示す図である。
【図11】Am-241ソースを用いて、実験に用いるOrtec GLP-25300 HPGe検出器によって測定されるピークを示す図である。
【図12】電子密度測定に用いるエレクトロニクスの略図である。
【図13】実験中に1つの試料について得られる観察散乱スペクトルを示す図である。
【図14】伝達測定を得るための図2の構成の装置を示す図である。
【図15】電子密度測定の補正グラフを示す図である。
【図16】差分散乱係数対理論上の電子密度のグラフである。
【図17】実験中に全ての試料から得られるコンプトン散乱測定からの結果を示す図である。
【図18】集計された組織値及び実験データのグラフである。
【図19】電子密度の測定のために試料ホルダーとして用いられる円筒幾何形状を示す図である。
【図20】悪性乳房組織試料からの散乱スペクトルを示す図である。
【図21】補正溶液のコンプトン散乱ピークにおいて測定されたカウントに対する算出線形散乱係数の補正グラフを示す図である。
【図22】補正溶液の算出電子密度に対する、実験データからの差分散乱係数のグラフである。
【図23】組織試料から得られた電子密度の結果の箱型図である。
【図24】組織タイプ毎の電子密度値を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体組織を解析する方法であって、少なくとも2つのデータ成分を得る工程を備え、体組織試料の第1の測定組織特性を表すデータが得られ、前記組織試料の第2の別の測定組織特性を表すデータが得られ、前記それぞれのデータを組み合わせて用いて前記組織試料の解析を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
体組織を特徴付ける方法であって、少なくとも2つのデータ成分を得る工程を備え、体組織試料の第1の測定組織特性を表すデータが得られ、前記組織試料の第2の別の測定組織特性を表すデータが得られ、前記それぞれのデータを組み合わせて用いて前記組織試料の特徴付けを備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、前記特徴付けは、前記組織試料を正常又は異常として特徴付けることから成ることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、前記特徴付けは、種々のグレードの異常を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法であって、前記特徴付けは、組織のタイプ付けを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の方法であって、3つの別々の測定組織特性を表すデータの少なくとも3つの成分を得る工程を備え、前記得られたデータを組み合わせて用いて、前記組織試料の前記解析又は前記特徴付けを備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の方法であって、4つの別々の測定組織特性を表すデータの少なくとも4つの成分を得る工程を備え、前記得られたデータを組み合わせて用いて、前記組織試料の前記解析又は前記特徴付けを備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の方法であって、前記組織特性データを得るのに用いる手法が、X線蛍光(XRF)、エネルギ分散型X線回折若しくは角分散X線回折(EDXRD)、コンプトン散乱密度測定、並びに/又は、小角X線散乱、及び線形減衰(伝達)係数の測定を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の方法であって、前記測定組織特性が、前記組織試料の組成を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9記載の方法であって、前記データを組み合わせて用いて、該組み合わせたデータを少なくとも1つの組織特性に関係付ける所定の補正モデルへの入力として前記データを用いることによって所望の結果を得ることを特徴とする方法。
【請求項11】
体組織の解析及び/又は特徴付けのためのツールを作成する方法であって、少なくとも2つの測定可能な組織特性を表すデータを少なくとも1つの組織特性に関連付ける補正モデルを作成する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、少なくとも3つの測定可能な組織特性を表すデータを少なくとも1つの組織特性に関係付ける補正モデルを作成する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法であって、少なくとも4つの測定可能な組織特性を表すデータを少なくとも1つの組織特性に関係付ける補正モデルを作成する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れかに記載の方法であって、前記補正モデルは、前記モデルによって判定される対象に特性が既に分かっている組織試料からの測定データ群を用いることによって生成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
体組織の解析及び/又は特徴付けを行う方法であって、貫通放射ビームが上に入射する体組織試料から測定されるコンプトン散乱データを得る工程と、該データを用いて、前記組織試料の解析及び/又は特徴付けを備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、前記コンプトン散乱データが、選択された角度/エネルギで検出される光子のカウントであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、選択された角度/エネルギで検出された前記光子が、特定の期間に対するカウントであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の方法であって、前記コンプトン散乱データが電子密度の絶対尺度であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れかに記載の方法であって、前記コンプトン散乱データを前記組織試料内の減衰について補正することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、前記減衰は、2つの放射源及び2つの検出器を用いることによって補正されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法であって、コンプトン散乱測定毎の直接伝達されるX線放射の測定を表すデータを得ることによって前記減衰を補正することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項15記載の方法であって、生体内で体組織の解析及び/又は特徴付けを行うことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15記載の方法であって、生体外で体組織の解析及び/又は特徴付けを行うことを特徴とする方法。
【請求項24】
体組織の解析及び/又は特徴付けを行うためのツールを作成する方法であって、コンプトン散乱データを少なくとも1つの組織特性に関係付ける所定の補正モデルを用いる工程を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−513667(P2007−513667A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543624(P2006−543624)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005185
【国際公開番号】WO2005/055827
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506200429)ティシュオミクス リミテッド (6)
【Fターム(参考)】