説明

供給装置、蒸着装置

【課題】必要量の有機材料を正確に加熱して膜厚制御をする。
【解決手段】回転軸35は中心軸37と、中心軸37の周囲に螺旋状に設けられた突条36とを有しており、突条36はSi34を主成分とするセラミック材料で構成されている。突条36は機械的に研磨され、平滑になっているから、有機材料39は堰き止められずに、突条36間の溝を通過して、タンク31から蒸発室21に移動する。回転軸35の先端はセラミック材料で構成され、誘導加熱されないから、回転軸35に接触する有機材料39は蒸発しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は近年最も注目される表示素子の一つであり、高輝度で応答速度が速いという優れた特性を有している。有機EL素子は、ガラス基板上に赤、緑、青の三色の異なる色で発色する発光領域が配置されている。発光領域は、アノード電極膜、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及びカソード電極膜がこの順序で積層されており、発光層中に添加された発色剤で、赤、緑、又は青に発色するようになっている。
ホール輸送層、発光層、電子輸送層等は一般に有機材料で構成されており、このような有機材料の膜の成膜には蒸着装置が広く用いられる。
【0003】
図4の符号203は、従来技術の蒸着装置であり、真空槽211の内部に蒸着容器212が配置されている。蒸着容器212は、容器本体221を有しており、該容器本体221の上部は、一乃至複数個の放出口224が形成された蓋部222で塞がれている。
蒸着容器212の内部には、粉体の有機蒸着材料200が配置されている。
【0004】
蒸着容器212の側面と底面にはヒータ223が配置されており、真空槽211内を真空排気し、ヒータ223が発熱すると蒸着容器212が昇温し、蒸着容器212内の有機蒸着材料200が加熱される。
有機蒸着材料200が蒸発温度以上の温度に加熱されると、蒸着容器212内に、有機材料蒸気が充満し、放出口224から真空槽211内に放出される。
【0005】
放出口224の上方にはホルダ210が配置されており、ホルダ210に基板205を保持させておけば、放出口224から放出された有機材料蒸気が基板205表面に到達し、ホール注入層やホール輸送層や発光層等の有機薄膜が形成される。
【0006】
有機材料蒸気を放出させながら、基板205を一枚ずつ放出口224上を通過させれば、複数枚の基板205に逐次有機薄膜を形成することができる。
しかし、複数枚の基板205に成膜するには、蒸着容器212内に多量の有機材料を配置する必要がある。実際の生産現場では、有機材料を250℃〜450℃に加熱しながら120時間以上連続して成膜処理を行うため、蒸着容器212内の有機蒸着材料200は長時間高温に曝されることになり、蒸着容器212中の水分と反応して変質したり、加熱による分解が進行する。
その結果、初期状態に比べて有機蒸着材料200が劣化し、有機薄膜の膜質が悪くなる。
【0007】
突条が螺旋状に形成された回転軸(スクリュー)を筒内で回転させることで、突条間の溝を通った有機蒸着材料が、少量ずつ加熱用の容器に供給される装置が知られており(例えば、特許文献1、3)、この装置によれば、有機蒸着材料は一度に多量に加熱されないから、有機蒸着材料が劣化し難い。
しかし、加熱用の容器を加熱する際には、回転軸も加熱されやすく、有機蒸着材料は加熱手段に到達する前に、突条間の溝で蒸発してしまい、有機蒸着材料を加熱用容器に配置することが困難になる。
【特許文献1】特開平10−140334号公報
【特許文献2】特開2006−307239号公報
【特許文献3】特開2007−70687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、有機蒸着材料を加熱用の容器に少量ずつ配置し、効率よく成膜を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、底面に開口が形成されたタンクと、一端が前記タンクの開口に接続され、他端が前記タンクの外部空間に露出された接続管と、前記接続管に挿入された回転軸と、前記回転軸を回転させる回転手段と、前記回転軸は中心軸と、前記中心軸の周囲に螺旋状に形成された突条とを有し、前記突条間の溝を介して、前記タンクの内部空間が、前記接続管の他端が露出する外部空間に接続された供給装置であって、前記突条はSi34を主成分とするセラミック材料で構成された供給装置である。
本発明は供給装置であって、前記中心軸は前記突条と同じ前記セラミック材料で構成された供給装置である。
本発明は、コイルと、前記コイルの内側の電磁場形成空間に位置する高温体と、前記コイルに接続された交流電源とを有し、前記交流電源から前記コイルに交流電圧を印加すると、前記高温体が誘導加熱される供給装置であって、前記中心軸の先端は前記電磁場形成空間に位置する供給装置である。
本発明は、真空槽と、放出装置と、前記供給装置とを有し、前記供給装置の前記高温体が配置された空間が、前記放出装置の内部空間に接続され、前記放出装置には、前記真空槽の内部空間と前記放出装置の内部空間とを接続する放出口が形成された蒸着装置である。
【0010】
尚、本発明で主成分とは、主成分とする物質を全体の50重量%以上含有することであり、Si34を主成分とするセラミック材料とは、Si34を50重量%含有するセラミック材料の意味である。
【発明の効果】
【0011】
回転軸に接触する蒸着材料が加熱されないので蒸着材料が変質しない。蒸着材料は回転軸の溝を通って、タンクから蒸発室へ移動する間に蒸発せず、途中で詰まることもないので、必要量の蒸着材料を正確に蒸発室に配置可能である。必要量の蒸着材料を蒸発室内に正確に配置できるから、成膜される薄膜は決められた膜厚になる。必要量の蒸着材料だけが加熱されるから、蒸着材料の劣化がおこり難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1の符号1は成膜装置(有機EL製造装置)の一例を示している。
成膜装置1は複数の蒸着装置10a〜10cを有しており、ここでは、各蒸着装置10a〜10cは搬送室2に接続され、蒸着装置10a〜10cが接続された搬送室2には、搬入室3aと、搬出室3bと、処理室6と、スパッタ室7と、マスク収容室8とが接続されている。マスク収容室8内部には複数のマスクが収容されており、蒸着装置10a〜10cやスパッタ室7内部に配置されたマスクと定期的に交換される。
【0013】
真空排気系9により、搬送室2内部と、蒸着装置10a〜10cの内部と、処理室6内部と、スパッタ室7内部と、マスク収容室8内部と、搬入室3a内部と、搬出室3b内部に真空雰囲気が形成される。
搬送室2の内部には搬送ロボット5が配置されている。
【0014】
表面上に下部電極が形成された基板は搬入室3aに搬入され、該基板は搬送ロボット5によって真空雰囲気中を搬入室3aから搬送室2へ搬入され、処理室6で加熱処理やクリーニング処理等の処理がされ、蒸着装置10a〜10c内部で、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層等の有機薄膜が形成され、スパッタ室7内部で上部電極膜が形成され、製造された有機EL素子は搬出室3bから外部に搬出されるようになっている。
【0015】
例えば、下部電極は基板表面の複数の領域にそれぞれ形成され、発光層は2色以上の異なる色の着色層(例えば赤、緑、青)が、異なる領域上に形成されて構成されている。
上部電極に通電した状態で、選択した電極に通電すれば、選択された電極上にある着色層だけが発光する。このように、2色以上の着色層で発光層を構成することで、フルカラー表示が可能となる。
【0016】
図2は発光層の成膜に用いられる本発明の蒸着装置10bの模式的な斜視図、図3はその蒸着装置10bの断面図を示している。
蒸着装置10bは、真空槽11と、放出装置50と、1又は2以上(ここでは3つ)の供給装置20a〜20cとを有している。各供給装置20a〜20cは同じ構成を有しており、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
【0017】
供給装置20a〜20cはタンク31(収容部)と、接続管42と、回転軸35と、回転手段41と、蒸発室21と、高温体22と、加熱手段24とを有している。
【0018】
タンク31は容器32と、蓋34を有しており、蓋34を開けるとタンク31の内部空間が大気雰囲気に接続され、蓋34を閉めると容器32の開口が密閉され、タンク31の内部空間が大気雰囲気から遮断される。
タンク31の底面(ここでは容器32の底面)はすり鉢状になっており、すり鉢状の底面の下端には開口が形成されている。タンク31は開口が形成された底面を下方に向けて配置され、蒸発室21は該開口の下方位置に配置されている。
【0019】
接続管42は上端がタンク31の開口に気密に接続され、下端が蒸発室21内部に気密に挿入されている。従って、接続管42の下端は蒸発室21の内部空間、即ち、タンク31の外部空間に露出している。
接続管42は直管である。回転軸35は直線状の棒でからなる中心軸37と、中心軸37の周囲に螺旋状に形成された突条36とを有している。突条36は螺旋状であるから、突条36間の溝も螺旋状になっている。
【0020】
回転軸35は突条36が形成された領域の少なくとも一部が接続管42内に位置するように接続管42に挿通されている。従って、突条36間の溝を介してタンク31の内部空間と蒸発室21の内部空間とが接続される。
【0021】
図2は蓋34を開けて有機材料39をタンク31内に収容した後、蓋34を閉めた状態を示している。上述したようにタンク31の底面はすり鉢状になっているから、有機材料39はすり鉢下端の開口に向かって滑り落ちる。
本発明に用いられる蒸着材料は粉体の有機材料である。
【0022】
突条36の表面と接続管42の内壁面との間の隙間は、その有機材料の粒径(例えば粒径100μm以上200μm以下)よりも小さくなっており、すり鉢下端に滑り落ちた有機材料39は突条36と接続管42内壁面との間の隙間を通らず、落下しない。
【0023】
また、突条36の水平面に対する角度は、回転軸35が静止した状態では、突条36と突条36の溝の間に有機材料39が入り込まない程小さくされている。従って、回転軸35が静止した状態では、有機材料39はタンク31の開口よりも下方に移動せず、タンク31内に留まる。
【0024】
回転手段41は回転軸35に接続されている。突条36は中心軸37に固定されており、回転手段41の動力を回転軸35に伝達させると、中心軸37と一緒に突条36が一緒に回転し、回転軸35全体が上昇も下降もせず、接続管42に挿通された状態を維持しながら、接続管42の中心軸線を中心として回転する。
【0025】
このときの回転方向は、回転軸35を螺合する雌ネジに挿入したと仮定したとき時に、回転によって先端が雌ネジから突き出る方向になっており、回転軸35が回転すると、有機材料39に突条36の斜面に沿って下向きに移動する力が加わる。
【0026】
ここでは、回転軸35は突条36が形成された部分が、タンク31の開口よりも上方に突き出るように接続管42に挿通されており、タンク31に収容された有機材料39は突条36の斜面を滑って突条36と突条36の溝に入り込み、突条36の斜面に沿って下向きに移動する。
【0027】
突条36の斜面は予め機械的に研磨されている。回転軸35の少なくとも突条36はSi34を主成分とするセラミック材料で構成されている。Si34はアルミナ等に比べて機械的強度が高いので、破損することなく機械的に研磨され、斜面が平滑になっている。
従って、突条36間の溝を通る有機材料39は、途中で詰まることなく移動し、接続管42の下端から落下して蒸発室21内に供給される。
【0028】
有機材料39は途中で詰まることが無いから、回転軸35の回転量と、蒸発室21に供給される有機材料39の量(例えば質量)との関係は変らない。その関係から、必要量の有機材料39を蒸発室21に供給するために、必要な回転軸35の回転量が分かる。
【0029】
高温体22は高温容器22bと、高温容器22bの底面略中央位置に設けられた突部22aとを有しており、高温容器22bの開口は接続管42下端の開口よりも大きく、突部22aの先端は接続管42下端の開口よりも小さくなっている。
【0030】
高温体22は、高温容器22bの開口が上側に向けられ、突部22a先端の中心が、接続管42の中心軸線の鉛直下方に位置するように、蒸発室21内部に配置されており、接続管42の下端開口の縁は、高温容器22bの開口の縁と、突部22aの先端外周との間の、リング状の領域の真上に位置する。
【0031】
接続管42の下端から落下する有機材料39は、高温容器22b側面と突部22a側面の間に、突部22aを取り囲むように配置されるから、後述するように高温体22を加熱した時に、有機材料39の加熱効率が高い。
【0032】
加熱手段24は、蒸発室21の周囲に巻き回されたコイル25と、コイル25に接続された交流電源26とを有しており、交流電源26からコイル25に交流電圧を印加すると、蒸発室21の内部空間に電磁場が形成される。
【0033】
回転軸35の下端は蒸発室21の天井よりも下方に突き出され、回転軸35の下端部分(ここでは中心軸37の下端部分)と高温体22は、蒸発室21の内部空間、即ち、電磁場が形成される電磁場形成空間に位置する。
突部22aと高温容器22bは、それぞれステンレス等の高抵抗の導電材料で構成されている。
【0034】
これに対し、中心軸37は突条36と同じセラミック材料で構成されており、そのセラミック材料は絶縁性である。従って、回転軸35の電磁場形成空間に位置する部分は絶縁性であり、蒸発室21内部に電磁場を形成すると、高温体22は誘導加熱されるが、回転軸35は誘導加熱されない。
【0035】
真空槽11と、放出装置50と、タンク31と、蒸発室21はそれぞれ真空排気系9に接続されている。
真空排気系9によって蒸発室21内部に真空雰囲気を形成した状態で、加熱した高温体22に有機材料39を配置すると、蒸発室21の内部に有機材料39の蒸気が発生する。上述したように、回転軸35は誘導加熱されないから、回転軸35に接触する有機材料39は蒸発せず、接続管42内やタンク31内に蒸気が発生しない。
【0036】
蒸発室21は切替装置65を介して放出装置50に接続されている。
切替装置65は一端が蒸発室21に接続され、他端が放出装置50に接続された配管59a〜59cと、配管59a〜59cの一端と他端の間に設けられたバルブ57a〜57cとを有している。
【0037】
放出装置50内部に真空雰囲気を形成し、蒸発室21内に蒸気を発生させた状態で、バルブ57a〜57cを空け、蒸発室21を放出装置50に接続すると、圧力差により、蒸気が配管59a〜59cを通って放出装置50へ移動する。バルブ57a〜57cを閉状態にすると蒸発室21が放出装置50から遮断され、蒸気が移動しない。
【0038】
ここでは、1つの放出装置50に複数の供給装置20a〜20cが接続されており、開状態にするバルブ57a〜57cを選択することで、所望の供給装置20a〜20cの蒸発室21を放出装置50へ接続し、該蒸発室21で発生する蒸気を放出装置50へ供給することができる。
【0039】
放出装置50は、箱状の放出容器(筐体)51と、放出容器51の内部に配置された供給管(ヘッダ)52とを有しており、放出装置50に供給された蒸気は供給管52に供給される。
供給管52には噴出口53が形成されており、供給管52に供給された蒸気は噴出口53から放出容器51内部に放出される。
【0040】
放出装置50には放出口55が形成され、放出装置50は、各放出口55が真空槽11の内部空間に露出するように、一部又は全部が真空槽11の内部に配置されており、放出容器51内部に放出された蒸気は、放出口55から真空槽11内部に放出される。
【0041】
真空槽11内部の基板ホルダ15が配置され、真空槽11に搬入された基板81は基板ホルダ15に配置される。基板ホルダ15は放出装置50上に位置しており、基板ホルダ15に配置された基板81は放出装置50上に位置する。
基板ホルダ15に配置された基板81と放出装置50の間の位置にはマスク16が配置されている。マスク16は板状の遮蔽部18と、遮蔽部18に形成された開口17とを有している。
【0042】
基板ホルダ15とマスク16のいずれか一方又は両方はアライメント手段60に接続されている。アライメント手段60は、基板81とマスク16に形成されたアライメントマークを観察しながら、基板ホルダ15と一緒に、基板81をマスク16に対して相対的に移動させ、位置合わせを行う。
【0043】
次に、本発明の蒸着装置10bを用いて実際の成膜を行う前の予備試験について説明する。
通常、成膜すべき薄膜の膜厚は予め決められている。
【0044】
予備試験は、実際の成膜に用いるものと同じ有機材料39をタンク31に収容しておき、真空雰囲気の圧力、高温体22の加熱温度等の成膜条件を、実際の成膜工程と同じにし、蒸発室21に有機材料39を供給して蒸気を発生させ、放出装置50上に基板(成膜工程でマスク16を使用するならばマスク16と基板)とを配置した状態で、その蒸気を放出装置50から放出させて薄膜を形成し、蒸発室21内への有機材料39の供給量と、成膜された薄膜の膜厚とを調べ、決められた膜厚の成膜に必要な、有機材料39の供給量(必要供給量)を求める。
【0045】
上述したように、回転軸35の回転量と、蒸発室21への有機材料39の供給量との関係は変らないから、その関係から、有機材料39を必要供給量供給するための回転軸35の回転量(必要回転量)が分かる。
【0046】
次に、予備試験の結果に基づいて、本発明の蒸着装置10bで発光層を成膜する工程について説明する。
放出装置50に接続された供給装置20a〜20cの数は、発光層を構成する着色層の色の数と同じかそれ以上である。例えば、着色層は赤、緑、青色の3色である。
【0047】
有機材料39は、主成分である有機発光材料(ホスト)に、着色層と同じ色の有機色素がドーパントとして添加された混合物である。
供給装置20a〜20cのタンク31に異なる色の有機材料39をそれぞれ収容してから、タンク31の蓋34を閉じ、タンク31と、蒸発室21と、真空槽11と、放出装置50と、切替装置65を真空排気し、所定圧力(例えば10-5Pa)の真空雰囲気を形成しておく。
【0048】
真空槽11と、タンク31と、放出装置50と、蒸発室21の真空雰囲気を維持しながら、各供給装置20a〜20cの蒸発室21をそれぞれ放出装置50から遮断し、各高温体22を所定温度(例えば200℃〜300℃)に加熱しておく。
赤、緑、青のうち、いずれか1色を第一の色、残りの二色のうち、一方を第二の色、他方を第三の色とする。
【0049】
第一の色の有機材料39が収容された供給装置20aの、蒸発室21に接続された真空排気系9のバルブを閉じた状態で、その供給装置20aの回転軸35を必要回転量回転させ、予備試験で求めた必要供給量の有機材料39を、所定温度に加熱した高温体22に配置し、必要供給量の有機材料39の蒸気を発生させる。
放出装置50に真空排気系9が接続されている場合は、放出装置50に接続された真空排気系9のバルブを閉じておく。
【0050】
有機材料39を高温体22に配置してから所定時間経過後か、蒸発室21内の圧力が所定圧力に達したら、蒸発室21に接続された真空排気系9のバルブと、放出装置50に接続された真空排気系9のバルブをそれぞれ閉じたまま、第一の色の有機材料39の蒸気が発生した蒸発室21を放出装置50に接続し、その蒸気を放出口55から放出させる。
【0051】
少なくとも、放出口55からの蒸気の放出が開始する前に、基板81を真空槽11内部に搬入して基板ホルダ15に配置し、第一の色の着色層が形成されるべき領域が開口17と対面するよう位置合わせをしておく。
【0052】
蒸気の放出開始から所定時間が経過するか、蒸発室21の内部の圧力が所定圧力以下になり、必要供給量の有機材料39から発生した蒸気が放出口55から放出されなくなる成膜終了時まで、位置合わせしたマスク16と基板81を放出装置50上に配置しておくと、基板81の決められた領域に、決められた膜厚の第一の色の着色層が形成される。
【0053】
決められた膜厚の着色層が形成されたら、第一の色の有機材料39の蒸気を発生させた蒸発室21を放出装置50から遮断し、該蒸発室21と、真空槽11と、放出装置50とを真空排気して、第一の色の有機材料39の蒸気を蒸着装置10b内から排出する。
【0054】
次に、第二の色の着色層が形成されるべき領域と、開口17とが対面するように基板81とマスク16を位置合わせする。
第一の色の有機材料39が収容された供給装置20aに代え、第二の色の有機材料39が収容された供給装置20bで、第一の色の着色層を成膜した時と同じ工程で、必要供給量の第二の色の有機材料39の蒸気を発生させ、該蒸気を放出装置50から放出させる。蒸気の放出開始から成膜終了時まで、位置合わせしたマスク16と基板81を放出装置50上に配置しておくと、第二の色の着色層が形成されるべき領域に、決められた膜厚の第二の色の着色層が形成される。
【0055】
成膜終了後、蒸着装置10bから蒸気を排出し、第三の色の着色層が形成されるべき領域と、開口とが対面するよう位置合わせし、第三の色の有機材料39が収容された供給装置20cで、必要供給量の第三の色の有機材料39の蒸気を発生させ、該蒸気を放出装置50から放出させ、蒸気の放出開始から成膜終了まで、位置合わせしたマスク16と基板81を放出装置50上に配置しておくと、第三の色の着色層が形成されるべきに決められた膜厚の第三の色の着色層が形成され、基板81表面上に3色の着色層からなる発光層が形成される。
【0056】
発光層が形成された基板81を基板ホルダ15から取り外して真空槽11外部に搬出し、新たな基板81を真空槽11内部に搬入して基板ホルダ15に配置する基板交換と、上述した発光層の形成とを繰り返せば、複数枚の基板81に発光層を形成することができる。
【0057】
蒸発室21の内部空間に露出する壁面(例えば回転軸35の先端や蒸発室21の内壁面)の温度が低いと、蒸発室21で発生した蒸気が析出して析出物が生じる。複数枚の基板81の成膜処理を行った後は析出物の層が厚くなり、その析出物が高温体22に落下すると、高温体22に必要供給量を超える有機材料39が配置され、着色層の膜厚が決められた膜厚を超えてしまう。
【0058】
本発明では、高温体22が放出する赤外線(輻射熱)が、蒸発室21内部に露出する壁面全部に入射するようになっており、露出する壁面全部が有機材料39が蒸発する温度以上に加熱される。従って、蒸気が析出せず、着色層が正確に決められた膜厚となる。
【0059】
上述したように中心軸37は突条36と同じ、Si34を主成分とするセラミック材料で構成されている。該セラミック材料は断熱性が高いので、回転軸35の先端(中心軸37の先端)が高温になっても、中心軸37の他の部分や突条36は有機材料39が蒸発する温度には到達せず、突条36に接触する有機材料39は蒸発しない。従って、回転軸35の回転量と、有機材料39の供給量の関係が変らない。
【0060】
本発明では、マスク16を放出装置50上に配置したまま複数の基板81の成膜を行うことができるが、成膜を繰り返すと、マスク16に有機材料39が付着し、成膜精度が劣化するので、予め決めた所定枚数の基板81の成膜が終了したら、マスク16を交換することが望ましい。
【0061】
以上は、1つの蒸着装置10b内で複数種類の薄膜(着色層)を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、1つの放出装置50に供給装置20a〜20cを1つだけ接続し、1種類の薄膜だけを形成することもできる。
本発明の蒸着装置10bは発光層だけでなく、ホール輸送層、ホール注入層、電子注入層、電子輸送層等、他の有機薄膜の成膜に用いることもできる。
【0062】
1つの真空槽11内部には、1又は複数の放出装置50を配置することができる。1つの真空槽11内部に複数の放出装置50を配置する場合、各放出装置50から放出される蒸気が混合されないよう、放出装置50同士の距離を十分に離すか、真空槽11内部に蒸気の流れを遮蔽する遮蔽板を設けることが望ましい。
【0063】
以上は、有機材料39としてホストとドーパントとが予め混合されたものを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、1つの放出装置50に複数の供給装置20a〜20cを接続しておき、ホストとドーパントをそれぞれ異なる供給装置20a〜20cのタンク31に収容する。
【0064】
ホストの蒸気とドーパントの蒸気を異なる供給装置20a〜20cで発生させ、それらの蒸気を同じ放出装置50に一緒に供給すれば、蒸気は放出装置50内部で混合されるから、放出口55からはホストの蒸気とドーパントの蒸気の混合蒸気が放出され、ホストとドーパントを両方含有する薄膜が成長する。
【0065】
放出装置50と、基板ホルダ15のいずれか一方又は両方を揺動手段58に接続しておき、着色層を成長させる間、基板81とマスク16を相対的に静止させた状態で、放出装置50と基板ホルダ15のいずれか一方又は両方を水平面内で往復移動又は円運動させ、基板ホルダ15に保持された基板81を基板ホルダ15と一緒に、放出装置50に対して移動させれば、着色層の膜厚が均一になる。
【0066】
基板ホルダ15と放出装置50との相対的な往復移動の方向は特に限定されないが、例えば、供給管52が、所定間隔を空けて略平行に配置された複数本の分岐管を有する場合は、基板81と放出装置50を、該分岐管と交差する方向に水平面内で相対的に移動させる。
【0067】
供給管52の噴出口53は、放出容器51の放出口55と対面しない位置に設ければ、噴出口53から噴出される蒸気は、放出容器51に充満してから放出口55から放出されるため、放出速度が安定する。具体的には、放出口55が放出容器51の天井に設けられている場合は、噴出口53は供給管52の放出容器51の底面又は側面と対向する部分に設ける。
【0068】
放出装置50(ここでは放出容器51)の放出口55が形成された面(前面)を、基板81よりも大面積にし、放出口55を前面に所定間隔を空けて分散配置しておけば、基板81を放出装置50上に位置させたまま、基板81表面全部に亘って薄膜を形成することができる。この方法によれば、基板81を搬送しながら成膜する必要がなく、真空槽11内での基板81の移動距離が短くなるので、基板81の搬送によるダストの発生量が少ない。
【0069】
放出装置50の温度が低いと、蒸気が放出装置50内で析出してしまうので、放出装置50の壁面(例えば放出容器51の壁面)にヒーター68を取り付け、ヒーター68で放出装置50を加熱しながら、蒸気を放出装置50に供給することが望ましい。
【0070】
このとき、放出装置50からの輻射熱でマスク16が加熱されると、熱膨張が起こり、成膜精度が下がるので、放出装置50とマスク16との間に断熱材(冷却板)57を配置し、ヒーター68を冷却板57で覆うことが望ましい。
【0071】
冷却板57の放出口55上の位置に、放出口55が露出する開口(蒸気放出口)を設けておき、該開口の大きさを、放出口55から放出される蒸気が接触しない程度に大きくすれば、蒸気が冷却板57に析出しない。
高温体22の加熱は誘導加熱に限定されず、加熱手段からの熱伝導で加熱してもよい。更に、有機材料39にレーザービーム等を照射して、有機材料39を直接加熱してもよい。
高温体22を誘導加熱以外の方法で加熱する場合や、回転軸35全部が電磁場形成空間の外部にある場合や、中心軸37は誘導加熱可能な材料であっても構わない。
【0072】
しかし、回転軸35全体の強度を考慮すると、突条36と中心軸37を同じセラミック材料で一体成形することが望ましい。具体的には、回転軸35は、型に溶融したセラミック材料を流し込み、固めた後、型がら取り外し、表面を機械的に研磨して形成される。
【0073】
セラミック材料はSi34を主成分とするものに限定されないが、機械的強度と、絶縁性の両方の機能を考慮すると、本発明には、Si34を主成分とするセラミック材料が最も適している。
【0074】
蒸発室21を直接真空排気系に接続せずに、蒸発室21を放出装置50に接続した状態で、真空槽11を真空排気することで、蒸発室21内部を真空排気してもよい。この場合、蒸発室21から放出装置50を遮断することで、蒸発室21内部の真空排気を停止させてから、有機材料39を蒸発室21内部で加熱する。
【0075】
高温体22の設置場所は特に限定されず、有機材料39を高温体22に配置可能であれば、接続管42下端の斜め下方に配置してもよい。高温体22の形状も特に限定されず、有機材料39を配置可能であれば板状であってもよい。
マスク16は各着色層の成膜で同じものを用いてもよいし、変えてもよい。
着色層の色の組合わせは赤、青、緑に限定されず、例えば、赤、青、黄等他の組合わせであってもよい。また、着色層の色の数は3色に限定されず、2色又は4色以上であってもよい。
【0076】
以上は、第一、第二の薄膜(着色層)を積層せずに異なる領域にそれぞれ形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、マスクを用いないか、マスクの開口と基板との位置関係を変えずに2種以上の有機薄膜(例えば、ホール輸送層、ホール注入層、電子輸送層、電子注入層等)を成膜し、各有機薄膜を同じ場所に積層させることもできる。
【0077】
本発明に用いる蒸着材料は有機材料に限定されず、無機材料を用いることもできる。蒸発室21から蒸気を放出装置50に供給する際、蒸発室21にキャリアガス(例えばN2)を導入すれば、蒸気の供給効率が高くなるが、着色層のような有機薄膜を成膜する場合には、キャリアガスが有機薄膜に取り込まれる虞があるので好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】成膜装置の一例を説明するための模式的な平面図
【図2】本発明の蒸着装置の模式的な斜視図
【図3】本発明の蒸着装置の断面図
【図4】従来技術の蒸着装置を説明するための断面図
【符号の説明】
【0079】
10b……蒸着装置 11……真空槽 15……基板ホルダ 16……マスク 20a〜20c……供給装置 21……蒸発室 31……タンク 35……回転軸 36……突条 37……中心軸 39……有機材料 42……接続管 50……放出装置 81……基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に開口が形成されたタンクと、
一端が前記タンクの開口に接続され、他端が前記タンクの外部空間に露出された接続管と、
前記接続管に挿入された回転軸と、
前記回転軸を回転させる回転手段と、
前記回転軸は中心軸と、前記中心軸の周囲に螺旋状に形成された突条とを有し、
前記突条間の溝を介して、前記タンクの内部空間が、前記接続管の他端が露出する外部空間に接続された供給装置であって、
前記突条はSi34を主成分とするセラミック材料で構成された供給装置。
【請求項2】
前記中心軸は前記突条と同じ前記セラミック材料で構成された請求項1記載の供給装置。
【請求項3】
コイルと、前記コイルの内側の電磁場形成空間に位置する高温体と、前記コイルに接続された交流電源とを有し、
前記交流電源から前記コイルに交流電圧を印加すると、前記高温体が誘導加熱される請求項2記載の供給装置であって、
前記中心軸の先端は前記電磁場形成空間に位置する供給装置。
【請求項4】
真空槽と、放出装置と、請求項3記載の供給装置とを有し、
前記供給装置の前記高温体が配置された空間が、前記放出装置の内部空間に接続され、
前記放出装置には、前記真空槽の内部空間と前記放出装置の内部空間とを接続する放出口が形成された蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−87869(P2009−87869A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259069(P2007−259069)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】