説明

侵入検出装置

【課題】小さな可動で侵入者を検出でき、かつ、誤検知の少ない検知精度の高い侵入検出装置を提供する。
【解決手段】侵入検出装置は、感圧手段14と、感圧手段14の出力電圧を基に演算を行い演算結果を出力する演算手段152を有する侵入検出装置である。感圧手段14は、壁状構造体の上面あるいは手すり12等の侵入者が接触する可能性のある部位に装着したものである。感圧手段14は装着部13aと可動部13bとに収納され、侵入時には可動部が撓んで感圧手段14が変形して電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触または押圧を受けてこれを検出する侵入検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の侵入検出装置は、感圧センサを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。図11は特許文献1に記載された従来の侵入検出装置の断面図である。図11はフェンスの断面図で、フェンス1の上面部8の家屋側角縁に沿って形成された切り欠き部9に感圧センサ10が配設してある。上記構成により、フェンス1を乗り越えて侵入者が侵入しようとして、身体の一部が感圧センサ10に接触して押圧すると感圧センサ10が押圧を検出することに基づき侵入判定を行い、警報装置から警報を発生させたり、外部への通報を行うといったような防犯動作を行う。
【0003】
また、特許文献2に記載の装置は、フェンスの笠木にベース材を取り付け、ベース材の上面には押圧によって上下動自在にカバー材を取り付け、ベース材とカバー材の間にスイッチと付勢部材を取り付け、カバー材が押下されることで、スイッチが入り侵入を検知する。段落0012にあるように、スイッチは所定の間隔で設けてあり、カバー材にスイッチの上接点を、また、付勢部材台にスイッチの下接点を設けて、カバー材が押圧移動するとスイッチの上下の接点が接触してスイッチが入る構成である。これは、機械的スイッチで、侵入を検知するためには付勢部材の弾性力に応じて一定以上の荷重で押圧されること、押圧にスイッチの上下接点が接触するために一定距離以上のストロークが必要である。
【特許文献1】特開2002−15380号公報
【特許文献2】特開2003−253917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、感圧センサとして接点式のスイッチを使用しており、侵入者の体重または押圧する勢いを含めた加重が一定値を超えた場合に接点が閉じる(または開く)ことで判定するため、例えば感圧センサをバルコニーに設置した場合、人がバルコニー手摺りに寄りかかった時、雨や風等による振動、猫や鳥などの小動物が侵入検出装置に勢いよく乗った時、布団を干した時、傘などで侵入検出装置をたたいた場合など、本来検出したくない場合であっても、スイッチ接点が反転し、誤検知するという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、接触や押圧を確実に検出し、検出したい接触や押圧と、検出したくない接触や押圧とを詳細に判別する。そして、使用目的に応じて接触や押圧を判別することで誤検知を少なくし、精度の高い侵入検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の侵入検出装置は、接触または押圧を受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い前記侵入者の侵入を判定する演算手段とを備え、前記演算手段は、前記感圧手段の出力信号から検出したい接触や押圧であるか、あるいは検出したくない接触や押圧であるかを判定することを特徴としたものである。これにより、接触状態を詳細に判別して、検知すべき事象を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の侵入検出装置では、接触や押圧を確実に検出し、詳細に判別できて、目的に応じて判定出力することで誤検知を少なくし、精度の高い侵入検出装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、接触または押圧を受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い接触または押圧を判定する演算手段とを備え、前記演算手段は、前記感圧手段の出力信号を積算する積算手段と、前記感圧手段の出力信号のピーク値を検出するピーク値検出手段とを有し、前記積算手段と、前記ピーク値検出手段で算出した値によって、接触または押圧があったことを判定することを特徴とした。
【0009】
これにより、感圧手段の出力信号の積算値とピーク値との両方で接触または押圧があったことを判定し、より詳細な接触状況の判別が可能で、精度の高い接触検知をすることが可能となる。
【0010】
第2の発明は、演算手段は、接触または押圧があったことを判定する積算閾値とピーク閾値とを記憶し、積算手段で積算した積算値が、前記積算閾値を超え、かつピーク値検出手段で検出したピーク値が、ピーク閾値を超えた場合に、接触または押圧があったことを判定することを特徴とした。
【0011】
これにより、例えば、静電気等の瞬間的な変動成分の信号等の場合、出力ピーク値は、接触または押圧を判定するピーク閾値を越えても、出力信号の積算値は積算閾値を超えることがなく、接触または押圧であると誤検出することがない。
【0012】
また、軽振動等で微小な変動成分の信号が継続した場合は、出力信号の積算値は積算閾値を越えても、出力ピーク値はピーク閾値を超えることがなく、接触または押圧であると誤検出することがない。
【0013】
第3の発明は、演算手段は、所定のピーク値に対する積算閾値を記憶し、積算手段で積算した積算値が、検出したピーク値に対する積算閾値を超えた場合に、接触または押圧があったことを判定することを特徴とした。
【0014】
これにより、検出したピーク値に対応する積算閾値を設けることで、押圧または接触があったことを判定する閾値を判定目的に合わせて設定することで判定精度が向上する。
【0015】
第4の発明は、初期判定閾値を記憶し、感圧手段の出力信号が初期判定閾値を超えると、積算手段の積算、ピーク値検出手段のピーク検出を開始することが可能となる。これにより、接触または押圧有無の判定のための各種演算を開始するための出力レベルの閾値が明確になり、ここを起点に演算を行うことで安定した接触または押圧有無の判定を行うことができる侵入検出装置を実現できる。
【0016】
第5の発明は、初期判定閾値と、積算閾値と、ピーク閾値とを調整する閾値調整手段を有することで、設置状況や使用者の用途によって値を調整することができるので利便性の高い侵入検出装置を実現できる。
【0017】
第6の発明は、第1から5の発明において、感圧手段の出力電圧は検出手段を介して演算手段に出力する侵入検出装置となる。すなわち感圧手段からの出力信号を検出手段によって所定の濾波特性で濾波することや、所定の増幅度で増幅するなどを行う。これらの調整を行う検出レベル調整手段により、感圧手段の出力が微小な電圧であっても増幅して伝達することや、装置の取り付け場所の条件や、気象条件、使用者の必要に応じて濾波の特
性や増幅、電圧レベルの微調整を行い、適切な信号レベルで演算を行うことができる。
【0018】
第7の発明は、第1から6の発明において、感圧手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した侵入検出装置となる。これにより、加重ではなく、圧電センサが接触または押圧による変位を受けて撓むことにより発生する電圧レベルに基づき判定を行うものである。また、従来の2点接触式のスイッチでないので、設置性がよい。
【0019】
第8の発明は、第1から7の発明において、感圧手段は、壁状構造体に、侵入者の接触または押圧により変形するように配設されたものである。これにより、侵入者が壁状構造体、例えば、住居の敷地の外周に設けられた塀、柵やフェンス、バルコニーの腰壁、手すりなどの上面またはその近傍で、人が接触しうる部位に装着することが考えられる。これにより塀や柵、フェンス、テラスやバルコニーの手すりなど、住居内部に侵入する手前での接触または押圧検知が可能となる。
【0020】
第9の発明は、第1から第8の発明の侵入検出装置が有する機能の少なくとも一部をコンピュータにより実行するためのプログラムとしている。そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させて本発明の侵入検出装置の少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における侵入検出装置を壁状構造体に取り付けた構成の場合について説明する。図1(a)は、侵入検出装置を設置した壁状構造体の構成図、図1(b)は図1(a)のA−A位置における断面図である。図1(a)において、11は住居のベランダやバルコニーのフェンスや、塀や、敷地を囲うフェンスなどの壁状構造体で、12は壁状構造体11の上部に設置された手すりである。手すり12はなくても良い。13aは装着部、13bは可動部で金属や樹脂や木で構成しており、装着部13aは手すり12に取り付けられている。手すり12がない場合は壁状構造体11に取り付ける。可動部が塀やフェンスなどの上端部になるよう取り付ければよい。装着部13aは1個とは限らず、壁状構造体11または手すり12に取り付けし易いように複数種類の部品を並べたり、あるいは重ねる形態としてもよく、前記上端に安定して取り付けられればよい。ここでは装着部13aは1種類とする。
【0023】
図1(b)に示すように、14は圧電センサ(感圧手段)で装着部13aと可動部13bで形成した場所に収納されている。圧電センサ14は感圧手段としての可撓性を有したケーブル状である。また、16は支持手段で、圧電センサ14は圧電センサ14より柔らかい弾性体からなる支持手段16により支持されている。支持手段16はなくてもよい。ここでは圧電センサ14は支持手段16の一部にスリットを設け、スリットから支持手段16内にはめ込んで支持する構成としている。本実施の形態では弾性体として、EPDMや熱可塑性エラストマーのような合成樹脂の発泡体を用い、圧縮率(単位変位をもたらす荷重値)が圧電センサ14よりも小さくなるよう硬度、発泡率等を選択している。尚、圧電センサ14と支持手段16の近傍、あるいは隣接して非線形撓み部17と押圧部材18を設けている。これにより圧電センサ14が変形しやすくする構成としている。圧電センサ14、支持手段16、押圧部材18の近傍の構成については詳細を後述する。尚、配設構成は図1(b)に限定するものではない。
【0024】
図1(a)に示すように、15は制御ユニットで、圧電センサ14の端部に配設されている。また19は通信ケーブルで、図示しないが制御ユニット15内にある通信手段からの信号を外部に伝達する。通信手段はケーブル19を有さない無線通信でもよい。
【0025】
図2(a)は圧電センサ14と制御ユニット15の構成図、図2(b)は図2(a)のB−B位置における断面図を示すものである。図2(a)において、圧電センサ14は電極の断線・ショート検出用の抵抗体が内蔵された先端部141を備えている。図2(b)において、圧電センサ14は導体からなる中心電極142、圧電体層143、導体からなる外側電極144、弾性体からなる被覆層145を備えている。圧電体層143はポリフッ化ビニリデン等の樹脂系の高分子圧電体を用いることも考えられるが、耐熱温度が上限で80℃程度であり、侵入検出装置は屋外使用が主であって、特に夏季には直射日光により壁状構造体11の表面温度が時には100℃近くの高温になることから、高分子圧電体を用いることは好ましくない。圧電体層143としては特定の樹脂基材中に圧電セラミックスの粉体を混合した複合圧電体を用いると100℃以上の高温耐久性を有することができ、このような複合圧電体を使用することが好ましい。
【0026】
図3は、本発明の第1の実施の形態における侵入検出装置の図1(a)のA−A断面に相当するの断面図の詳細図で、図4Aと図4Bは図3のC−C断面図である。まず、図3と図4Aを用いて第1の実施の形態における侵入検出装置について説明する。図3と図4Aにおいて、12は壁状構造物の手すり、13aは装着部、13bは可動部で金属、樹脂、木等で構成している。装着部13aと可動部13bで形成した空間には圧電センサ14と支持手段16を収納している。装着部13aと可動部13bで形成した空間は、屋外に設置される条件を考慮すると密閉が好ましいが、ごみや水滴の侵入を防げられるような構成であれば必ずしも密閉でなくても良い。装着部13aと可動部13bはコの字状に内側に折り曲げた形状をしており、装着部13aが可動部13bに一部覆われるようにして重ね合わせ、コの字状の両側端部の一部で互いに勘合している。図3に示すような勘合にすることで、可動部13bの可動を規制し、確実な可動を実現している。上からの押圧Fがかかっても、可動部13bの稼動する距離は一定であり、圧電センサ14にかかる押圧は一定にすることが可能となる。また、勘合部は図3のような構成に限らず、一定の可動が実現できる構成とすればよい。20と21は固定手段で装着部13aを手すりに固定している。固定の方法はここではねじ止めとしているが、ひも状の締結部品を使用した方法や、ビスとナットを使用した方法や、接着や、勘合による固定でもよい。
【0027】
非線形撓み部17は固体や中空やバネなどを用いた、押圧に対して撓む変形量が非線形となる機構または材料などで構成したもので、ここでは所定の圧力に対して支持手段16よりも変形しやすくなっている。そして、支持手段16の内部に内包されるかまたは別部品で支持手段16に隣接して構成している。押圧部材18は金属や樹脂や木で構成しており、支持手段16よりも変形しにくい材料または機構となっている。押圧部材18はを支持手段16を介して圧電センサ14に力が加わる位置に設けている。すなわち、侵入者が可動部13bを押したとき、その力により押圧部材18が押され、押圧部材18が支持手段16と圧電センサ14を撓ませる。このとき支持手段16と圧電センサ14は支持手段16よりも変形しやすい非線形撓み部17を押すことになり、支持手段16を押すよりも変形しやすい機構となっている。以上のように圧電センサ14が撓むことにより、侵入者を検出できる。また、図4Aに示すように、押圧部材18は支持手段16と圧電センサ14に圧力が加わりやすいようにここではR面をもった構成としている。これは鋭角または鈍角をもった構成としても良い。もちろん平面でも良い。また、押圧部材18は間隔をあけて配置している。これにより、侵入者に押された近傍の支持手段16と圧電センサ14のみが他と比較して局所的に撓むため確実に電圧出力して検出が更に容易になる。尚、非線形撓み部17、押圧部材18は無くても良い。図4Bは押圧Fがかかった場合に圧電センサ14等が撓んだ状態を表した構成図である。
【0028】
図5は本発明の第1の実施の形態における侵入検出装置のブロック図である。図5において、制御ユニット15は、検出手段151、演算手段152、報知部30で構成されている。報知部30は、例えば他への通信を行う通信手段や威嚇のための音や光や表示を行う威嚇手段を有している。ここでは通信手段や威嚇手段は図示していない。検出手段151は、圧電センサ14からの出力信号を所定の濾波特性で濾波するフィルタ部1511と、所定の増幅度で増幅を行うアンプ部1512と、フィルタの特性や増幅率を変更できる検出レベル調整手段1513を備えている。フィルタ部1511の濾波特性としては、侵入者の手の接触時の周波数は10Hz以下であり、特に3〜8Hzの範囲が多く、降雨による振動は10Hz以上、風による振動は1Hz以下が多いので、濾波特性としては例えば、3〜8Hzの信号成分を通過させるバンドパスフィルタとする。演算手段152は、メモリ手段1521、タイマ手段1522、初期判定部1523、ピーク値検出手段1524、閾値調整手段1525、積算手段1526、侵入判定部1527を備えている。
【0029】
以上のように構成された侵入検出装置について、以下その動作、作用について図6、図7、図8を用いて説明する。図6は、侵入者が壁状構造体11を乗り越えて侵入する際に、体を持ち上げるため壁状構造体11上部に手をかけ、侵入者が侵入した時の圧電センサ14の出力電圧をフィルタ部1511、アンプ1512を通して出力された信号Vと、積算手段1526で、検出手段151からの出力信号Vを積算した値と、検出手段151からの出力信号Vのピーク値を検出した値と、積算した値とピーク値の両方が閾値を超えた場合に、侵入判定部1527から報知部30に出力される出力信号Kの経時変化を示す特性図である。まず、侵入者が壁状構造体11の手すり12に取り付けた可動部13bに手をかけると、手指による押圧で可動部が撓み、その変形が圧電センサ14及び支持手段16に印加される。支持手段16は圧電センサ14より柔軟性を有しているので、指の接触による押圧により支持手段16が圧縮されて、圧電センサ14も容易に変形する。図6の時刻T0で圧電センサ14の変形が開始し、圧電センサ14からは圧電効果により圧電センサ14の変形の加速度に応じた信号が出力される。
【0030】
従来の構成では、手すりの笠木のカバー材が荷重をうけて大きくストロークをもって可動すると、侵入者が気づき易いため侵入検出としては好ましくなかった。また、侵入者でない使用者が寄りかかった場合は、特にバルコニーなどの高い位置にある場合などは不安感を与えることがあったが、本実施の形態1の侵入検出装置の構成は小さなストロークでも確実に感圧手段が検出できる構成としており、侵入者にも気付かれにくく、使用者に安心感を与えることができる。
【0031】
圧電センサ14の出力信号は、フィルタ部1511により手の接触時の周波数帯域である3〜8Hzの信号を通過させ、他の周波数帯の信号は除去される。手の接触時には、Vに基準電位Vより大きな信号成分が現れる。この際、仮に圧電センサ14を壁状構造体11の手すり12の上部に取り付けた構成であれば、手の接触の際の圧電センサ14の変形はわずかであるが、本実施の形態の場合は支持手段16が圧電センサ14よりも柔軟性を有した弾性体からなり、接触の際に支持手段16が容易に圧縮されるので、可動部13bが下向きにスライド可動したり、可動部13bの受圧面が撓む構成となり、圧電センサ14の変形量が増大する。さらに、非線形撓み部17を支持手段16よりも変形しやすい材料や構成とし、押圧部材18を支持手段16よりも変形しにくい材料や構成とすることで、手の押圧を押圧部材18が圧電センサ14に伝達して、圧電センサ14はその変位を受けて撓む。また非線形撓み部17は押圧を受けて変形し、可動部13bのスライド可動が増し、圧電センサ14の撓みによる変化量が増大する。手が可動部13bを押圧したとき、押圧部材18が圧電センサ14に伝達し、圧電センサ14が撓み、また非線形撓み部17が撓みの進行を加速する状況を図4Bに示している。このように圧電センサ14は大きな変形量が得られ、変形量の2次微分値である加速度も大きくなり、結果として圧電セ
ンサ14の出力信号も大きくなる。
【0032】
初期判定部1523は、演算手段で演算を行っていない場合に、圧電センサ14からの出力電圧VのVからの振幅|V−V|がD(初期判定閾値)を超えると、これは体の一部が接触したと判定して、積算手段1526は、|V−V|の値を積算していく。出力電圧VがV以下の場合は、|V−V|の値を積算する。ピーク値検出の場合も同様に、時刻tでピーク値の検出を開始する。ここでは、ピーク値の検出を開始してから、まずピークP0が検出され、次にピークP0を超えるピークP1が検出される。
【0033】
本実施の形態では、図6の時刻tで積算とピーク検出を開始し、時刻tで積算値が積算閾値(I)をこえているが、侵入判定部1527は検出したピーク値が、ピーク閾値を超えていないので、まだ判定出力は行わない。時刻tで検出したピーク値が、ピーク閾値(J)を超えたので、侵入判定部1527は時刻tで判定出力としてLo→Hi→Loのパルス信号を出力する。ピーク値がピーク閾値を超えて、積算値が積算閾値を超えていない場合も同様に、判定出力は行わず、積算値が積算閾値を超えた場合に判定出力を行う。このようにフィルタ部1511で検出した電圧は、アンプ1512で増幅され検出手段151から演算手段152へ伝達され、演算手段で侵入の判定を行う。
【0034】
図7は、強風等で壁状構造体11が揺れた場合の圧電センサ14の出力電圧を表しており、振動が圧電センサ14に伝わるため、同レベルの出力電圧が継続して発生する。この場合、出力電圧が継続して発生するため、積算値は、積算閾値(I)を超えるが、最大ピーク値P0は、直接圧電センサが変形していないため、出力レベルは低く、ピーク閾値(J)を越えないため、判定出力を行わず、強風等で侵入と判定することはない。
【0035】
図8は、静電気等のノイズで発生する圧電センサ14の出力電圧を表している。この場合は、ピーク値P0の出力レベルが高く、ピーク閾値(J)を超えるが、出力電圧を積算した値は小さくなり、積算閾値(I)を超えることはないため、判定出力を行わず、ノイズ等で侵入と判定することはない。
【0036】
このように、侵入とその他の要因で発生するセンサの出力電圧から、両者を判別することが可能となる。
【0037】
次に、演算手段152とその周辺での動きを図9を用いて説明する。圧電センサ14で発生した電位は検出手段151のフィルタ部1511と、アンプ1512を介して演算手段152に伝達される。演算手段152内では、メモリ手段1521に初期判定閾値と、積算閾値と、ピーク閾値を記憶している。初期比較部1523で演算手段152の入力電圧と初期判定閾値を比較し、初期判定閾値を越えているかを判定する(STEP1)。判定の結果、初期判定閾値を越えていれば、次のステップへ移行する(STEP2)。初期比較部1523での比較はタイマ手段1522で計時したタイミングで行う。これにより比較の取りこぼしなどがなくなる。初期判定閾値を超えていると判定した場合、タイマ手段1522は第1の計時を開始し、積算手段1526は演算手段152の入力電圧の積算を開始する。また、ピーク検出手段1524でも入力電圧のピーク値検出を解しする。(STEP3)。この手前までは、侵入検出の演算開始の起点を決定するもので、この時点から侵入検出の演算を行うことになる。次に第1の計時を開始してから所定時間経過したかを判定する(STEP4)。ここで、所定の時間が経過した場合は、計時を停止し、積算値とピーク値をクリアする(STEP5)。(STEP4)で所定の時間経過していない場合は、(STEP6)で積算値が積算閾値を超えていないか、ピーク値がピーク閾値を越えていないか、侵入判定部1527で比較し、両方の値が閾値を超えていた場合は侵入であると判定して報知部30へ判定結果を出力する。尚、報知部30では判定結果をうけて、一定時間アラーム音と光を発生させて侵入者を威嚇する。ここでの威嚇はこの方式
でなくともよい。また、並行して、通信手段により侵入者の侵入があったことを屋内の警報端末や外部電話、警備会社、警察等、適宜必要な箇所へ通報する(STEP7)。
【0038】
なお、本実施の形態では、圧電センサからのアナログ出力信号で演算を行う構成で説明したが、他の接点式のスイッチを用いた場合でも、本実施の形態の演算処理を用いて判別が可能である。
【0039】
また、検出レベル調整部1513により、検知手段151からの検出レベルが調整可能であり、設置状況等に応じて使用者が調整することが可能である。また、閾値調節手段1525により、メモリ手段1521に記憶した各種判定のための閾値や、タイマ手段1522による第1の計時時間を変更できるようになっている。侵入検出装置の設置現場の状況や検知対象に合わせて、各種判定閾値やタイマ手段1522による計時時間の最適化ができる。例えばマイクロコンピュータなどが判定を行う構成とすれば、マイコンプログラムで判定領域の値や電圧比較サイクルすなわち計時時間の調節を行うようにすれば、任意に変更可能で、有用な展開が期待できる侵入検出装置を実現できる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、第1の計時開始から、終了するまでの間を積算値とピーク値検出の有効時間としているが、積算を行う時間または、ピーク値を検出する時間をそれぞれ変えて、開始、終了のタイミングを異ならせることも可能であり、適宜、検知目的に合わせて設定することもできる。このようにすることで、きめ細かく侵入検出することが可能となり、侵入検出装置としての利便性が高まる。
【0041】
また、図10は、所定のピーク値に対する積算閾値を設定し、積算手段で積算した積算値が検出したピーク値に対する積算閾値を超えた場合に、判定出力を行う判定領域を示している。これにより、ピーク値J1が検出された場合、積算閾値はI1以上であれば、判定出力を行う。また、同様にピーク値J2、あるいはJ3が検出された場合は、積算閾値はI2以上、あるいはI3以上で判定出力を行うようにしている。これにより、適宜、検知目的に合わせて設定することができ、きめ細かく侵入検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる侵入検出装置は、小さな可動で侵入者を検出でき、かつ、誤検知の少ない、すなわち検出したくない条件では検出しない侵入検出装置を提供することができる。加えて、住居や工場、鉄道、空港等の屋外の敷地に敷設される多様な形状の壁状構造体に設置して活用できるとともに、例えば、屋内の比較的小さな構成物である机の引出しやドアの取手の裏側などに配設することも可能で、引出しやドアを不正に開けようとした際に警報を発生して通報したり、威嚇したりして不正使用を知らせる等のシステムとしても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)本発明の実施の形態における壁状構造体の構成図(b)同A−A位置における断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における圧電センサ14と制御ユニット15の構成図(b)同B−B位置における断面図
【図3】本発明の実施の形態における侵入検出装置の包装体の輪切り方向の断面図
【図4A】本発明の実施の形態における侵入検出装置の包装体の長手方向の断面図
【図4B】同長手方向で侵入者が押した状態の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における侵入検出装置のブロック図
【図6】本発明の実施の形態1における侵入検出装置で、侵入者が侵入した時の出力信号Vと、積算手段の積算値と、ピーク検出手段のピーク値と、侵入判定部の出力信号Kの経時変化を示す特性図
【図7】本発明の実施の形態1における侵入検出装置で、強風等が発生した時の出力信号Vと、積算手段の積算値と、ピーク検出手段のピーク値と、侵入判定部の出力信号Kの経時変化を示す特性図
【図8】本発明の実施の形態1における侵入検出装置で、静電気等でのノイズが発生した時の出力信号Vと、積算手段の積算値と、ピーク検出手段のピーク値と、侵入判定部の出力信号Kの経時変化を示す特性図
【図9】本発明の実施の形態1における演算手段のフロー図
【図10】本発明の実施の形態1におけるピーク値に対応する積算閾値を示した判定領域図
【図11】従来の他の侵入検出装置の断面図
【符号の説明】
【0044】
11 フェンス(壁状構造体)
12 手すり
13a 装着部
13b 可動部
14 圧電センサ(感圧手段)
15 制御ユニット
16 支持手段
17 非線形撓み部
18 押圧部位
30 報知部
151 検出手段
152 演算手段
1521 メモリ手段
1522 タイマ手段
1523 初期判定部
1524 ピーク値検出手段
1525 閾値調整手段
1526 積算手段
1527 侵入判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触または押圧を受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い接触または押圧を判定する演算手段とを有し、前記演算手段は、前記感圧手段の出力信号を積算する積算手段と、前記感圧手段の出力信号のピーク値を検出するピーク値検出手段とを有し、前記積算手段によって算出された積算値と、前記ピーク値検出手段で算出されたピーク値によって、接触または押圧があったことを判定する侵入検出装置。
【請求項2】
演算手段は、積算閾値とピーク閾値とを記憶し、積算手段で積算した積算値が、前記積算閾値を超え、かつピーク値検出手段で検出したピーク値が、ピーク閾値を超えた場合に、接触または押圧があったことを判定する請求項1記載の侵入検出装置。
【請求項3】
演算手段は、所定のピーク値に対する積算閾値を記憶し、積算手段で積算した積算値が、検出したピーク値に対する積算閾値を超えた場合に、接触または押圧があったことを判定する請求項1記載の侵入検出装置。
【請求項4】
演算手段は、初期判定閾値を記憶し、感圧手段の出力信号が前記初期判定閾値を超えると積算手段の積算と、ピーク値検出手段のピーク検出を開始する請求項1から3のいずれか1項記載の侵入検出装置。
【請求項5】
演算手段は、初期判定閾値と、積算閾値と、ピーク閾値とを調整する閾値調整手段を有する請求項1から3のいずれか1項記載の侵入検出装置。
【請求項6】
感圧手段の出力信号の検出レベルを調整する検出レベル調整手段を有し、前記感圧手段の出力信号は前記検出手段を介して演算手段に出力する請求項1から5のいずれか1項記載の侵入検出装置。
【請求項7】
感圧手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した請求1から6のいずれか1項記載の侵入検出装置。
【請求項8】
感圧手段は、壁状構造体に配設された請求項1から7のいずれか1項記載の侵入検出装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の侵入検出装置の機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−191887(P2008−191887A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25007(P2007−25007)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】