説明

侵入検知装置

【課題】 ミューティング状態を継続したい場合などに、ミューティングが強制終了されるまでの時間を必要に応じて延長することができる侵入検知装置を提供する。
【解決手段】 侵入検知センサ11の検出結果に基づいて警報信号を出力する警報信号出力部12と、ミュートセンサA,A2の出力に基づいて、ミューティングを開始させるミュート開始判別部13と、ミューティングが開始されたことを検知してミューティング継続時間の計測を開始するミューティング時間計測部14と、ミューティング継続時間の計測値及び第1上限値を比較する比較部16と、比較部16による比較結果及びミュートセンサB1の出力に基づいて、ミューティングを終了させるミュート終了判別部17と、ミューティング継続許可信号に基づいて、ミューティング継続時間の計測を再スタートさせる計測値リセット部20により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入検知装置に係り、さらに詳しくは、侵入検知センサによる侵入物の検知を一時的に解除するミューティング機能を有する侵入検知装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入禁止エリア内への侵入を検知してエリア内の機器を停止させる侵入検知装置として、多光軸光電式侵入検知装置が知られている。多光軸光電式侵入検知装置は、複数の発光素子が線状に配置された投光ユニットと、各発光素子からの光をそれぞれ受光する複数の受光素子が配置された受光ユニットと、侵入禁止エリア内への侵入を検知する検知部により構成される。投光ユニット及び受光ユニットは、対向配置され、検知部が各受光素子の出力に基づいて投光ユニット及び受光ユニット間における光の遮断を検出することにより、エリア内への人などの侵入が検知される。
【0003】
投光ユニット及び受光ユニットは、例えば、ワークを加工する加工機へワークを搬入するための搬入口やワークを加工機から搬出するための搬出口に配置され、搬入口又は搬出口を通過する侵入物が検知される。このため、上述した多光軸光電式侵入検知装置は、通常、ワークを侵入禁止エリア内へ搬入する際やエリア内から搬出する際に、侵入物の検知を一時的に解除する、いわゆるミューティング機能を有している(例えば、特許文献1)。このミューティング機能は、投光ユニット及び受光ユニットがワークを搬送する搬送装置を挟んで対向配置されている場合、投光ユニット及び受光ユニットよりも搬送経路の上流側に配置される2つの光電センサの出力を用いて実現される。
【0004】
図9は、従来の多光軸光電式侵入検知装置を含む搬送システムを示した斜視図である。この搬送システムは、ワークWを搬送する搬送装置Vと、加工機へのワークWの搬入口に配置された投光ユニット1及び受光ユニット2からなる侵入検知センサを含む多光軸光電式侵入検知装置とにより構成される。ワークWは、加工対象物であり、搬送装置Vにより一方向に搬送されている。この侵入検知装置は、侵入禁止エリア内への侵入物の侵入を検知してエリア内の機器を停止させるための装置であり、搬入口を通過する侵入物を光の遮断により検知する、いわゆるライトカーテンとなっている。この例では、侵入検知センサよりも搬送経路の下流側で防護柵(ケージ)Cにより囲まれているエリアが侵入禁止エリアとなっている。
【0005】
ミュートセンサA1,A2,B1及びB2は、侵入物検知のミューティング機能を実現するためのセンサであり、いずれも光電センサとなっている。ミュートセンサA1及びA2は、センサ出力がミューティングを開始するか否かを判別するのに用いられ、侵入検知センサよりも搬送経路の上流側に配置されている。さらに、ミュートセンサA1は、ミュートセンサA2よりも更に搬送経路の上流側に配置され、ミュートセンサA2よりも搬送経路の上流側でワークWを検出するセンサとなっている。
【0006】
ミュートセンサB1及びB2は、侵入検知センサよりも搬送経路の下流側に配置されるセンサである。このうち、ミュートセンサB2よりも侵入検知センサ側に配置されているミュートセンサB1は、侵入物が侵入検知センサ間を通過したことを検出するためのセンサ、すなわち、通過センサとなっている。
【0007】
これらのミュートセンサA1,A2、B1,B2は、ワークWが搬送経路に沿って移動することによって投光部から射出された光が遮断され、このワークWによる光の遮断によって非検出状態から検出状態に遷移する。ワークWが侵入検知センサ間を通過したことは、ミュートセンサB1が検出状態から非検出状態に遷移することによって検出される。
【0008】
この侵入検知装置では、光電センサA1が検出状態に遷移した後に光電センサA2が検出状態に遷移した場合に、ミューティングが開始される。ミューティング中は、検知部が侵入物を検知した場合であっても、エリア内の機器を停止させるための警報信号などは出力されない。この様なミューティングは、通常、光電センサB1が侵入物の通過を検出すると、終了される。
【0009】
上述した多光軸光電式侵入検知装置は、単に、2つの光電センサA1,A2がこの順序で検出状態に遷移すれば、ミューティングを開始させるので、一方の光電センサA1が故障や光軸のずれによって常時検出状態となると、他方の光電センサA2が検出状態に遷移しただけでミューティングが開始されてしまうという問題があった。そこで、従来の侵入検知装置には、光電センサB1が侵入物の通過を検出しなくても、ミューティングが開始されてから所定時間が経過するとタイムアップし、ミューティングを強制終了させるタイムアップ機能が設けられている。ところが、侵入検知装置の運用状況によってはこの様なタイムアップ機能を無効化したいという要求があった。例えば、加工機のメンテナンスなどのためにワークWの搬送を一時的に停止させるようなケースでは、メンテナンス中にミューティングが強制終了されてしまうということが考えられる。
【0010】
そこで、所定時間の経過によってミューティングを強制終了させることなく、光電センサB1が侵入物を検出するまでミューティング状態を継続するように構成することが考えられる。ところが、この様な構成では、一方の光電センサA1が故障や光軸のずれによって常時検出状態となり、他方の光電センサA2が検出状態に遷移しただけでミューティングが開始された場合であっても、光電センサB1が侵入物を検出するまでミューティング状態が継続されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2003−218679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した通り、従来の多光軸光電式侵入検知装置では、メンテナンスの際のようにミューティング状態を継続させたい場合であっても所定時間が経過すればミューティングが強制終了されてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、多様な用途に使用可能なミューティング機能を有する侵入検知装置を提供することを目的とする。特に、ミューティング状態を継続したい場合などに、ミューティングが強制終了されるまでの時間を必要に応じて延長することができる侵入検知装置を提供することを目的とする。また、ミューティングを開始させるためのセンサに不具合が生じることによってミューティングが誤って開始された場合に、ミューティング状態が継続されるのを抑制することができる侵入検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明による侵入検知装置は、侵入物を検知するための侵入検知センサと、上記侵入検知センサの検出結果に基づいて警報信号を出力する警報信号出力手段と、第1センサ及び第2センサの出力に基づいて、ミューティングを開始させるミュート開始判別手段と、ミューティングが開始されたことを検知してミューティング継続時間の計測を開始するミューティング時間計測手段と、上記ミューティング時間計測手段による上記ミューティング継続時間の計測値及び第1上限値を比較する比較手段と、上記比較手段による比較結果、及び、侵入物が上記侵入検知センサを通過したことを検出する通過センサの出力に基づいて、ミューティングを終了させるミュート終了判別手段とを有し、上記警報信号出力手段がミューティング中であれば上記警報信号を出力しない侵入検知装置であって、ミューティング継続許可信号に基づいて、上記ミューティング時間計測手段による上記ミューティング継続時間の計測を再スタートさせる計測値リセット手段を備えて構成される。
【0014】
この様な構成によれば、ミューティング継続許可信号に基づいてミューティング継続時間の計測を再スタートさせることによって、ミューティングを終了させるためのミューティング継続時間の計測値がリセットされるので、ミューティング状態を継続したい場合などに、ミューティング継続許可信号によってミューティングが強制終了されるまでの時間を必要に応じて延長することができる。また、ミューティング継続許可信号によってミューティングの強制終了までの時間を延長した場合であっても、再スタート後の計測値に基づいてミューティングが終了されるので、通過センサに不具合が生じた場合などにミューティング状態が無限に継続されるのを防ぐことができる。
【0015】
第2の本発明による侵入検知装置は、上記構成に加え、第1センサ及び第2センサの出力に基づいて、第1センサが検出状態に遷移してから第2センサが検出状態に遷移するまでの経過時間を計測する経過時間計測手段を備え、上記ミュート開始判別手段が、第1センサが検出状態に遷移した後に第2センサが検出状態に遷移した場合に、ミューティングを開始させ、上記ミュート終了判別手段が、上記計測値が第1上限値を越えるか、或いは、上記通過センサが侵入物の通過を検出した場合に、ミューティングを終了させ、上記計測値リセット手段が、上記経過時間が第2上限値以下であり、かつ、ミューティング中に上記ミューティング継続許可信号が入力された場合に、上記ミューティング時間計測手段による計測を再スタートさせ、上記経過時間が第2上限値を越えている場合には、ミューティング中に上記ミューティング継続許可信号が入力されても計測を再スタートさせないように構成される。
【0016】
この様な構成によれば、第1センサが検出状態に遷移してから第2センサが検出状態に遷移するまでの経過時間が第2上限値を越えていれば、ミューティング中にミューティング継続許可信号が入力されてもミューティング継続時間の計測値はリセットされないので、ミューティングを開始させるためのセンサに不具合が生じることによってミューティングが誤って開始された場合に、ミューティング状態が継続されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による侵入検知装置によれば、ミューティング継続許可信号に基づいてミューティング継続時間の計測値がリセットされるので、ミューティング状態を継続したい場合などに、ミューティング継続許可信号によってミューティングが強制終了されるまでの時間を必要に応じて延長することができる。さらに、ミューティング継続許可信号によってミューティングの強制終了までの時間を延長した場合であっても、再スタート後の計測値に基づいてミューティングが終了されるので、通過センサに不具合が生じた場合などにミューティング状態が無限に継続されるのを防ぐことができる。また、第1センサが検出状態に遷移してから第2センサが検出状態に遷移するまでの経過時間が第2上限値を越えていれば、ミューティング中にミューティング継続許可信号が入力されてもミューティング継続時間の計測値はリセットされないので、ミューティングを開始させるためのセンサに不具合が生じることによってミューティングが誤って開始された場合に、ミューティング状態が継続されるのを抑制することができる。従って、多様な用途に使用可能なミューティング機能を有する侵入検知装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による侵入検知装置を含む搬送システムの一例を示した図であり、搬送装置Vの側方から見た様子が示されている。この搬送システムは、図9に示した搬送システムと同様のシステムである。ここでは、各ミュートセンサA1,A2,B1,B2が所定条件を満たすように配置されているものとする。
【0019】
その所定条件とは、(1)Ta<T1=D1/V1<Tb、(2)D2<L1、(3)D3<L1となっている。ここでは、搬送方向に関して、ミュートセンサA1及びミュートセンサA2間の間隔をD1とし、ミュートセンサA2及びミュートセンサB2間の間隔をD2とし、ミュートセンサA1及びミュートセンサB1間の間隔をD3としている。また、ワークW(長さL1)の移動速度(搬送速度)をV1としている。また、Ta及びTbは、予め定められた固定値であるものとする。
【0020】
上記条件(1)は、ワークWの移動によってセンサA1が検出状態に遷移してからセンサA2が検出状態に遷移するまでの時間(通過時間)T1=D1/V1が所定範囲内にあることを要求するものとなっている。条件(2)は、センサB2が検出状態に遷移する前にセンサA2が非検出状態となるのを防止するためのものである。条件(3)は、センサB1が検出状態に遷移する前にセンサA1が非検出状態となるのを防止するためのものである。
【0021】
条件(1)を満たすように各センサA1,A2を配置することにより、ワークWの侵入と、ワークW以外の侵入物の侵入とをセンサA1が検出状態に遷移してからセンサA2が検出状態に遷移するまでの通過時間によって判別することができる。また、条件(2)及び(3)を満たすように各センサA1,A2,B1,B2を配置することにより、搬送方向の長さが異なることを利用して、ワークWの侵入と、ワークW以外の侵入物の侵入とを判別することができる。
【0022】
図2は、図1の搬送システムにおける侵入検知装置10の一構成例を示したブロック図である。この侵入検知装置10は、侵入検知センサ11、警報信号出力部12、ミュートセンサA1,A2,B1、ミュート開始判別部13、ミューティング時間計測部14、閾値記憶部15、比較部16、ミュート終了判別部17、ミューティング信号生成部18,PLCインターフェース部19及び計測値リセット部20により構成される。
【0023】
侵入検知センサ11は、侵入物を検知するための検知ユニットであり、投光ユニット1、受光ユニット2及び検知制御部3からなる。検知制御部3は、受光ユニット2における各受光素子の出力に基づいて侵入物を検知し、この検出結果に基づいて検出信号を生成する動作を行っている。投光ユニット1から射出された光が侵入物によって遮断されることにより、非検出状態から検出状態に遷移する。
【0024】
例えば、検知制御部3では、各発光素子のうちの1素子だけ点灯させ、点灯させる素子を隣接素子に順次に変更する走査制御が行われる。そして、点灯素子に対応する受光ユニット2の受光素子による受光量が順次に検出され、この検出結果に基づいて検出信号が生成される。
【0025】
警報信号出力部12は、検知制御部3からの検出信号に基づいて警報信号を出力する動作を行っている。この警報信号は、侵入禁止エリア内の加工機を停止させるための制御信号として使用される。
【0026】
ミュート開始判別部13は、ミュートセンサA1及びA2の出力に基づいて、ミューティングを開始させる動作を行っている。このミュート開始判別部13では、ミュートセンサA1が検出状態に遷移した後に、ミュートセンサA2が検出状態に遷移した場合に、ミュートセンサA2の状態遷移に基づいてミューティングを開始させる動作が行われる。
【0027】
ミューティング時間計測部14は、ミューティングを強制終了させるためのミューティング継続時間を計測するタイマーであり、ミューティングがミュート開始判別部13によって開始されたことに基づいてタイマーを作動させて、ミューティング継続時間の計測を開始する動作を行っている。
【0028】
比較部16は、ミューティング時間計測部14によるミューティング継続時間の計測値と、第1上限値とを比較し、この比較結果をミュート終了判別部17へ出力する動作を行っている。第1上限値は、予め定められた固定値であり、閾値記憶部15に保持されている。
【0029】
ミュート終了判別部17は、比較部16による比較結果と、ミュートセンサB1の出力とに基づいて、ミューティングを終了させる動作を行っている。具体的には、ミューティング継続時間の計測値が第1上限値を越えるか、或いは、ミュートセンサB1が侵入物の通過を検知した場合に、ミューティングを終了させる動作が行われる。
【0030】
ミューティング信号生成部18は、ミュート開始判別部13及びミュート終了判別部17による判別結果に基づいて、警報信号出力部12に対してミューティングを指示するためのミューティング信号を生成する動作を行っている。
【0031】
警報信号出力部12では、ミューティング中であれば警報信号を出力せず、ミューティング中でなければ、侵入検知センサ11の検出結果に基づいて警報信号を出力する動作が行われる。
【0032】
PLCインターフェース部19は、PLCと通信を行う通信制御部であり、LANなどの通信ネットワークを介してPLCとの間で制御信号が送受信される。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、加工機や搬送装置などを制御する制御装置である。
【0033】
計測値リセット部20は、ミューティング継続許可信号に基づいて、ミューティング時間計測部14によるミューティング継続時間の計測を再スタートさせる動作を行っている。具体的には、PLCインターフェース部19を介して受信したPLCからのミューティング継続許可信号に基づいて、ミューティング時間計測部14による計測が再スタートされ、計測値がリセットされる。或いは、図示しない操作部から入力されたミューティング継続許可信号に基づいて、ミューティング継続時間の計測が再スタートされる。
【0034】
ここでいう計測値のリセットとは、計測値を初期値に戻して計測を改めてスタートさせることである。
【0035】
図3及び図4は、図2の侵入検知装置10の動作の一例を示した図であり、搬送経路に沿ってワークWが侵入検知センサ11を通過する際の様子が示されている。図3(a)には、センサA1の手前、すなわち、センサA1よりも上流側にワークWが位置している場合が示されている。この場合、センサA1,A2,B1,B2及び侵入検知センサ11は全て非検出状態である。この様な状態でワークW以外の侵入物が侵入検知センサ11、すなわち、投光ユニット1及び受光ユニット2間を通過すると、警報信号が出力される。
【0036】
図3(b)には、ワークWの先端部がセンサA1及びA2間に位置し、センサA1の投光部から射出された光をワークWが遮断している場合が示されている。この場合、センサA1のみ検出状態となっている。
【0037】
図3(c)には、ワークWの先端部がセンサA2及び侵入検知センサ11間に位置し、センサA1及びA2の投光部から射出された光をワークWが遮断している場合が示されている。この場合、センサA1,A2は、いずれも検出状態となっており、センサA1,A2がこの順序で検出状態に遷移したことによってミューティングは開始されている。従って、この様なミューティング状態では、ワークWが侵入検知センサ11を通過しても警報信号は出力されない。
【0038】
図4(a)には、ワークWの後端部がセンサA2及び侵入検知センサ11間に位置している場合が示されている。この場合、ワークWは、投光ユニット1及び受光ユニット2間を通過中であり、ミューティング状態は継続されている。
【0039】
図4(b)には、ワークWの後端部がセンサB1及びセンサB2間に位置している場合が示されている。この場合、センサB1が非検出状態に遷移したことにより、ワークWが投光ユニット1及び受光ユニット2間を通過したことが検知され、ミューティングは終了される。
【0040】
図5は、図2の侵入検知装置10の動作の一例を示したタイミングチャートであり、搬送経路に沿ってワークWが侵入検知センサ11を通過する際の様子が示されている。ミュートセンサA1,A2,B1,B2は、非検出状態でローレベルであり、検出状態でハイレベルとなる信号を出力する。ここでは、センサA1,A2,B1,B2について、検出状態をオン状態と呼び、非検出状態をオフ状態と呼ぶことにする。
【0041】
警報信号出力部12に対してミューティングを指示するためのミューティング信号は、ミューティング状態でハイレベルであり、ミューティング中でない場合にローレベルとなる信号となっている。
【0042】
侵入検知センサ11は、非検出状態(入光状態)でハイレベルであり、検出状態(遮光状態)でローレベルとなる信号を検出信号として出力している。警報信号は、ミューティング中でない場合に侵入検知センサ11が検出状態に遷移するとハイレベルに遷移する信号となっている。
【0043】
ワークWが搬送経路に沿って投光ユニット1及び受光ユニット2間を通過する場合、センサA1,A2,B1,B2は、この順序で検出状態に遷移する。
【0044】
センサA1が検出状態に遷移してからセンサA2が検出状態に遷移した際、センサA2の出力信号の立ち上がりに同期してミューティング信号がハイレベルに切り替えられ、ミューティングが開始される。
【0045】
ミューティング信号がハイレベルである間は、ミューティング状態であり、侵入検知センサ11が検出状態に遷移しても警報信号はローレベル状態が保持される。
【0046】
さらに時間が経過すると、センサA1,A2,B1,B2は、この順序で非検出状態に遷移する。その際、センサB1の出力信号の立ち下がりに同期してミューティング信号がローレベルに切り替えられ、ミューティングが終了される。
【0047】
ミューティング状態となってからの経過時間Tが第1上限値を越えた場合には、ミューティングは強制終了される。ミューティング信号がローレベルである間は、非ミューティング状態であり、侵入検知センサ11が検出状態に遷移すると、警報信号はハイレベルに切り替えられる。
【0048】
図6のステップS101〜S109は、図2の侵入検知装置10の動作の一例を示したフローチャートである。まず、ミュート開始判別部13は、ミュートセンサA1,A2がこの順序で検出状態に遷移すれば、その状態遷移に基づいてミューティングを開始させる(ステップS101,S102)。
【0049】
次に、ミューティング時間計測部14は、ミューティングが開始されたことに基づいて、タイマーを作動させ、ミューティング継続時間の計測を開始する(ステップS103,S104)。そして、ミュート終了判別部17は、タイムアップするまでに、ミュートセンサB1が侵入物の通過を検知した場合に、その検知結果に基づいてミューティングを終了させる(ステップS105,S106)。また、ミュート終了判別部17は、ミュートセンサB1が侵入物の通過を検知してなくても、比較部16による比較結果からミューティング継続時間の計測値が第1上限値を越え、ミューティングをタイムアップさせる必要があると判断した場合に、ミューティングを強制終了させる(ステップS105,S107,S106)。
【0050】
一方、計測値リセット部20は、タイムアップするまでの間のミューティング中にミューティング継続許可信号が入力されると、この継続許可信号に基づいてミューティングの継続時間の計測値をリセットし(ステップS105,S107〜S109)、ステップS104以降の処理手順が繰り返される。これに対して、ミューティング中におけるミューティング継続許可信号の入力がなければ、ステップS104以降の処理手順が繰り返される。
【0051】
本実施の形態によれば、ミューティング継続許可信号に基づいてミューティング継続時間の計測を再スタートさせることによって、ミューティング継続時間の計測値がリセットされるので、ミューティング状態を継続したい場合などに、ミューティング継続許可信号によってミューティングが強制終了されるまでの時間を必要に応じて延長することができる。また、ミューティング継続許可信号によってミューティングの強制終了までの時間を延長した場合であっても、再スタート後の計測値に基づいてミューティングが終了されるので、通過センサに不具合が生じた場合などにミューティング状態が無限に継続されるのを防ぐことができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、ミュートセンサとして4つの光電センサが用いられる場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2つの光電センサの出力に基づいて、ミューティング開始の判別と、侵入物が侵入検知センサ11を通過したことの検出とを行わせることができる。
【0053】
図7は、本発明の実施の形態による侵入検知装置におけるミュートセンサの他の構成例を示した図である。この侵入検知装置では、2つのミュートセンサA11及びA21を用いて、侵入検知のミューティング機能が実現される。一方のミュートセンサA11は、投受光部から射出した光をリフレクタA12で反射させ、その反射光を投受光部で受光する、いわゆる回帰反射型の光電センサとなっている。
【0054】
他方のミュートセンサA21は、投受光部から射出した光をリフレクタA22で反射させ、その反射光を投受光部で受光する光電センサとなっている。
【0055】
ミュートセンサA11及びA21は、いずれも侵入検知センサよりも搬送経路の上流側に配置され、リフレクタA12及びA22は、ミュートセンサA11を通過センサとして用いるために、いずれも侵入検知センサよりも下流側に配置されている。また、ミュートセンサA11及びリフレクタA12と、ミュートセンサA21及びリフレクタA22とは、いずれも搬送装置Vを挟んで配置されている。
【0056】
さらに、各ミュートセンサA11,A21は、両ミュートセンサの光軸が、侵入禁止エリア内の位置23で交差するように配置されている。つまり、ミュートセンサA11,A21の光軸は、侵入検知センサよりも下流側で交差している。また、ミュートセンサA11,A21の光軸が交差する上記位置23は、ワークWの中心を通って搬送方向に平行な直線上以外の位置となっている。つまり、位置23は、搬送装置Vの中央よりも端部側に形成されている。
【0057】
ワークWが搬送経路に沿って移動する場合、まず、ワークWの先端部がミュートセンサA11から射出された光を検出位置21で遮断し、ミュートセンサA11を検出状態に遷移させる。この状態からさらにワークWが移動すると、ワークWの先端部がミュートセンサA21から射出された光を検出位置22で遮断し、ミュートセンサA21を検出状態に遷移させる。
【0058】
検出位置21及び22は、いずれも侵入検知センサよりも搬送経路の上流側に形成され、しかも、検出位置21は、検出位置22よりも上流側に形成されている。搬送方向に関する検出位置21及び22間の間隔D11は、D11<L1を満たすものとし、通過時間T10=D11/V1が所定範囲内となるように、ミュートセンサA11,A21が配置されるものとする。
【0059】
ワークWが侵入検知センサを通過した後は、ワークWの後端部がミュートセンサA11の光軸上から外れ、ミュートセンサA11が非検出状態に遷移する。つまり、ミュートセンサA11は、非検出状態への遷移によりワークWが侵入検知センサ11を通過したことを検出する通過センサとなっている。
【0060】
この様な構成によっても、多様な用途に使用可能なミューティング機能を有する侵入検知装置を実現することができる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態1では、計測値リセット部20がミューティング中におけるミューティング継続許可信号の入力に基づいて、ミューティング時間計測部14による計測を再スタートさせる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、ミュートセンサA1が検出状態に遷移してからミュートセンサA2が検出状態に遷移するまでの経過時間が第2上限値以下である場合にのみ、ミューティング継続許可信号によって計測を再スタートさせる場合について説明する。
【0062】
図8は、本発明の実施の形態2による侵入検知装置30の構成例を示したブロック図である。この侵入検知装置30は、図2の侵入検知装置10と比較すれば、経過時間計測部31を備えている点で異なる。
【0063】
経過時間計測部31は、ミュートセンサA1及びA2の出力に基づいて、ミュートセンサA1が検出状態に遷移してからミュートセンサA2が検出状態に遷移するまでの経過時間を計測するタイマーである。
【0064】
計測値リセット部20は、上記経過時間が第2上限値以下であり、かつ、ミューティング中にミューティング継続許可信号が入力された場合に、ミューティング時間計測部14による計測を再スタートさせる。一方、上記経過時間が第2上限値を越えている場合には、ミューティング中にミューティング継続許可信号が入力されても、ミューティング時間計測部14による計測を再スタートさせない。つまり、ミュートセンサA1,A2がこの順序で検出状態に遷移した際の状態遷移間の経過時間が所定の第2上限値以下である場合にのみ、ミューティング継続時間の計測を再スタートさせ、経過時間が第2上限値を越えている場合には、再スタートさせずに、計測を継続させる。
【0065】
本実施の形態によれば、ミュートセンサA1が検出状態に遷移してからミュートセンサA2が検出状態に遷移するまでの経過時間が第2上限値を越えていれば、ミューティング中にミューティング継続許可信号が入力されてもミューティング継続時間の計測値はリセットされないので、ミューティングを開始させるためのセンサA1,A2に不具合が生じることによってミューティングが誤って開始された場合に、ミューティング状態が継続されるのを抑制することができる。
【0066】
なお、実施の形態1及び2では、侵入検知センサ11として多光軸光電式センサを用い、投光ユニット1及び受光ユニット2間の2次元領域を侵入物が通過したことを検知する場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。侵入検知センサ11として、1対の投光部及び受光部からなる光電センサを用いて1次元的に侵入物を検知するものや、ワークWの搬送方向に位置を異ならせて光電センサを配置して3次元的に侵入物を検知するものも用いることができる。
【0067】
また、実施の形態1及び2では、侵入検知センサ11、ミュートセンサA1,A2,B1及びB2に光電センサを用い、侵入物による光の遮断によって侵入物が検知される場合の例について説明した。これらのセンサA1,A2,B1,B2において侵入物の検知に用いる光は、可視光だけでなく、赤外光や紫外光であっても良い。また、侵入検知センサ、ミュートセンサA1,A2,B1及びB2には、この様な光を用いるものだけでなく、電波、音波、超音波を用いて侵入物を検知するセンサであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1による侵入検知装置を含む搬送システムの一例を示した図であり、搬送装置Vの側方から見た様子が示されている。
【図2】図1の搬送システムにおける侵入検知装置10の一構成例を示したブロック図である。
【図3】図2の侵入検知装置10の動作の一例を示した図であり、搬送経路に沿ってワークWが侵入検知センサ11を通過するまでの様子が示されている。
【図4】図2の侵入検知装置10の動作の一例を示した図であり、搬送経路に沿ってワークWが侵入検知センサ11を通過した際の様子が示されている。
【図5】図2の侵入検知装置10の動作の一例を示したタイミングチャートであり、搬送経路に沿ってワークWが侵入検知センサ11を通過する際の様子が示されている。
【図6】図2の侵入検知装置10の動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態による侵入検知装置におけるミュートセンサの他の構成例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態2による侵入検知装置30の構成例を示したブロック図である。
【図9】従来の多光軸光電式侵入検知装置を含む搬送システムを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1 投光ユニット
2 受光ユニット
3 検知制御部
10 侵入検知装置
11 侵入検知センサ
12 警報信号出力部
13 ミュート開始判別部
14 ミューティング時間計測部
15 閾値記憶部
16 比較部
17 ミュート終了判別部
18 ミューティング信号生成部
19 PLCインターフェース部
20 計測値リセット部
30 侵入検知装置
31 経過時間計測部
A1,A2,B1,B2 ミュートセンサ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入物を検知するための侵入検知センサと、
上記侵入検知センサの検出結果に基づいて警報信号を出力する警報信号出力手段と、
第1センサ及び第2センサの出力に基づいて、ミューティングを開始させるミュート開始判別手段と、
ミューティングが開始されたことを検知してミューティング継続時間の計測を開始するミューティング時間計測手段と、
上記ミューティング時間計測手段による上記ミューティング継続時間の計測値及び第1上限値を比較する比較手段と、
上記比較手段による比較結果、及び、侵入物が上記侵入検知センサを通過したことを検出する通過センサの出力に基づいて、ミューティングを終了させるミュート終了判別手段とを有し、
上記警報信号出力手段がミューティング中であれば上記警報信号を出力しない侵入検知装置において、
ミューティング継続許可信号に基づいて、上記ミューティング時間計測手段による上記ミューティング継続時間の計測を再スタートさせる計測値リセット手段を備えたことを特徴とする侵入検知装置。
【請求項2】
第1センサ及び第2センサの出力に基づいて、第1センサが検出状態に遷移してから第2センサが検出状態に遷移するまでの経過時間を計測する経過時間計測手段を備え、
上記ミュート開始判別手段は、第1センサが検出状態に遷移した後に第2センサが検出状態に遷移した場合に、ミューティングを開始させ、
上記ミュート終了判別手段は、上記計測値が第1上限値を越えるか、或いは、上記通過センサが侵入物の通過を検出した場合に、ミューティングを終了させ、
上記計測値リセット手段は、上記経過時間が第2上限値以下であり、かつ、ミューティング中に上記ミューティング継続許可信号が入力された場合に、上記ミューティング時間計測手段による計測を再スタートさせ、上記経過時間が第2上限値を越えている場合には、ミューティング中に上記ミューティング継続許可信号が入力されても計測を再スタートさせないことを特徴とする請求項1に記載の侵入検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−225012(P2009−225012A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66188(P2008−66188)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】