説明

侵入者監視システム

【課題】侵入者監視システムにおいて、監視範囲内における正規入場者と不正侵入者の区別と追跡を可能にすること。
【解決手段】侵入者監視システム50は、監視範囲内に存在する物体を経時的に測距する物体測距手段24と、人の位置を経時的に認識する人検出手段25と、ID読み取り手段22と、ID認証手段23と、ID認証結果12と人検出結果14との対応をとる人追跡手段とを具備する。人追跡手段26は、認識エリア21内で測距された物体32aが人検出手段24により人として検出され、その際にID読み取り手段22で読み取ったIDがID認証手段23で正常と認証された場合に、その人を正規入場者と判定してその動きを経時的に追跡する。人追跡手段26は、監視範囲31内で測距された物体32bが人検出手段25により人として検出され、その人が正規入場者か判定して正規入場者でない場合に不正侵入者と判定してその動きを経時的に追跡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入者監視システムに係り、特に監視範囲内の物体を経時的に測距する物体測距手段を備えた侵入者監視システムに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の侵入者監視システムとして、例えば特開平11−88870号公報(特許文献1)に示されたものがある。この侵入者監視システムは、所定の監視範囲における任意方向を撮像可能な撮像手段を設け、監視範囲に位置する物体までの距離を測定する距離測定手段を設け、この距離測定手段による測定距離が変化したときはその方向を検出する移動体検出手段を設け、この移動体検出手段による検出方向を撮像するように撮像手段の撮像方向を調整した状態で当該撮像手段を駆動する制御手段を設けている。
【0003】
ここで、監視範囲に不正侵入者が侵入したときは、距離測定手段による測定距離が変化するので、移動体検出手段は、距離が変化した方向を検出する。そして、制御手段は、移動体検出手段による検出方向に撮像手段の撮像方向を調整した状態で撮像手段を駆動するので、監視範囲に侵入した不正侵入者を撮像手段により撮影することができる。この場合、不正侵入者が移動したときは、撮像手段の撮影方向も不正侵入者の移動に応じて移動するので、不正侵入者を自動追尾しながら撮影することができる。
【0004】
また、従来のゲート装置として、例えば特開平11−250290号公報(特許文献2)に示されたものがある。このゲート装置は、ゲートを通行する通行者に付与し、ゲートの通行を許可する情報を記録した記録媒体と、ゲートの通行者を検出する検出手段と、ゲートの通行者から記録媒体の情報を読み取る読み取り手段と、読み取り手段の読み取りに基づいて通行の禁止を判定した通行者に対し通行を禁止する旨を報知すると共に、通行者の進行に対応して、報知状態を変更する報知手段とを備えている。
【0005】
さらには、従来、マンションや雑居ビルなどにおいては、例えば、エントランスに暗号、磁気カード、生体認証情報などで入場時にチェックを行い、侵入者を入場させない手段がとられてきた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−88870号公報
【特許文献2】特開平11−250290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の侵入者監視システムでは、所定の監視範囲内に侵入した人を全て不正侵入者とみなして監視するものであり、正規入場者が監視範囲内に侵入した場合については配慮されていない。このため、正規入場者が入場することのない状態での不正侵入者の監視には適しているが、正規入場者が入場する状態での不正侵入者の監視ができないという問題があった。
【0008】
また、上述した特許文献2のゲート装置では、記録媒体を所持する正規入場者である通行者と一緒に不正侵入者がゲートを通る場合については配慮されていない。このため、正規入場者と一緒にゲートを通った不正侵入者の監視ができないという問題があった。
【0009】
さらには、上述した従来のマンションや雑居ビル等における侵入者を入場させない手段では、住人や社員等の正規入場者が鍵を開けた後、ドアが開いている間に第三者が侵入してしまうことが容易である。また、そのような方法により侵入者が入場してしまった後は、正規入場者と不正侵入者とを区別することが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、監視範囲内における正規入場者と不正侵入者の区別と追跡が可能な侵入者監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明は、監視範囲内に存在する物体を経時的に測距する物体測距手段と、前記物体測距手段で測距した物体データから人を区別してその人の位置を経時的に認識する人検出手段と、前記監視範囲内の認証エリアに配置され、人を特定するIDを読み取るID読み取り手段と、前記ID読み取り手段で読み取ったIDの正常性を認証するID認証手段と、前記ID認証手段の認証結果と前記人検出手段の検出結果との対応をとる人追跡手段とを具備し、前記人追跡手段は、前記認識エリア内で測距された物体が前記人検出手段により人として検出され、その際に前記ID読み取り手段で読み取ったIDが前記ID認証手段で正常と認証された場合に、その人を正規入場者と判定してその動きを経時的に追跡すると共に、前記監視範囲内で測距された物体が前記人検出手段により人として検出され、その人が正規入場者か判定して正規入場者でない場合に不正侵入者と判定してその動きを経時的に追跡するように構成されていることにある。
【0012】
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記認識エリアは実質的に一人分の領域に設定されていること。
(2)前記人追跡手段は不正侵入者と判定した場合に侵入警報を発するように構成されていること。
(3)前記人追跡手段は不正侵入者と判定した場合にその不正侵入者の動きを経時的に追跡して警報するように構成したこと。
(4)前記物体測距手段は前記監視範囲内の複数の物体を多方面から測距する複数の物体測距装置をからなっており、人検出手段は前記物体測距装置からの複数の物体データに基づいて前記監視範囲内の複数の人を区別して検出し経時的に追跡するように構成されていること。
(5)前記物体測距手段は前記監視範囲に死角が存在しないように配置した複数のレーザ測距装置や赤外線測距装置などの光線を用いて物体を測距する装置で構成されていること。
【発明の効果】
【0013】
かかる構成の本発明によれば、監視範囲内における正規入場者と不正侵入者の区別と追跡が可能な侵入者監視システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の侵入者監視システムの一実施形態について図1から図4を用いて説明する。
【0015】
本実施形態の侵入者監視システム50は、物体測距手段24、人検出手段25、ID読み取り手段22、ID認証手段23及び人追跡手段26を具備している。
【0016】
物体測距手段24は監視範囲31内に存在する物体を経時的に測距する手段である。この物体測距手段24は、物体との距離を測定する手段であり、その測定結果より人の位置が検出可能であれば如何なるものでも良く、具体的にはレーザ測距装置や赤外線測距装置などの光線を用いて物体を測距する装置が適している。本実施形態では、物体測距手段24は、監視範囲31に死角が存在しないように、監視範囲31内の物体を多方面から測距する複数のレーザ測距装置からなっている。レーザ測距装置は、前方にある物体までの距離を測定し、測距データ13として出力する。また、監視範囲31は、マンションや雑居ビルなどエントランス、駅の改札場などの不正侵入者の監視を必要とする所定の範囲である。
【0017】
人検出手段25は、物体測距手段24で測距したデータから人を区別してその人の位置を経時的に検出する手段であり、その結果を人検出結果14として出力する。この人を区別する方法としては、歩行パターンを検出することにより行われる。本実施形態では、人検出手段25は物体測距装置24からの複数の物体データに基づいて監視範囲31内の複数の人を区別して検出し経時的に追跡するように構成されている。
【0018】
ID読み取り手段22は、監視範囲31内の認証エリア21に配置され、人を特定するIDを読み取るものである。このID読み取り手段22は、バーコードリーダまたは生体情報読み取り装置などで構成されている。正規入場者は、IDがバーコードとして印刷されたカードをこのバーコードリーダに読み取らせること、または、生体の一部(手のひら、指など)をこの生体情報読み取り装置に読み取らせることで、バーコードより読み取った文字列や生体より読み取った情報がIDデータ11として出力される。なお、IDとは、正規入場者と不正侵入者とを区別できる情報であれば如何なるものでも良く、具体的には暗証番号や手のひら・指静脈情報などを用いることができる。
【0019】
また、認証エリア21は、正規入場者か不正侵入者かを識別するためにID読み取り手段22を有した領域であり、実質的に一人分の領域に設定されている。換言すれば、認証エリア21はID読み取り手段22を内部に含む領域であり、この領域の大きさは人が1人だけ入れるものとすることにより、認証エリア21内に居る人とIDを提示した人とが同じ人となる。
【0020】
ID認証手段23は、ID読み取り手段22で読み取ったIDの正常性を認証し、IDが正規入場者のものかどうかを認証する手段であり、その結果をID認証結果12として出力する。
【0021】
人追跡手段26は、ID認証手段23の認証結果と、人検出手段25の検出結果との対応をとる手段であり、不正侵入者と判定した場合に報知するように構成されている。本実施形態では、この報知は、サイレン、アナウンス、ランプ点灯、ディスプレイ表示などの侵入警報15を発するようになっている。この人追跡手段26は、認識エリア21内で測距された物体(例えば物体32a)が人検出手段により人として検出され、その際にID読み取り手段22で読み取ったIDがID認証手段24で正常と認証された場合に、その人を正規入場者と判定してその動きを経時的に追跡するように構成されている。また、この人追跡手段26は、監視範囲31内で測距された物体(例えば物体32b)が人検出手段24により人として検出され、その人が正規入場者か判定して正規入場者でない場合に不正侵入者と判定してその動きを経時的に追跡するように構成されている。
【0022】
上述したID認証手段23、人検出手段25、人追跡手段26は、それぞれパソコンのプログラムで構成されている。これらのプログラムは、侵入者監視システムがオンされることにより開始され、オフされることにより終了される。
【0023】
図2はID認証手段23の処理動作を表すフローチャートである。ID認証手段23は、IDデータ11を受信したか経時的に判定する(ステップS21)。そして、IDデータ11を受信した場合には、そのIDデータ11が正規入場者のIDかどうかを確認する(ステップS22)。その確認で、IDデータ11が正規入場者のIDである時は、ID認証結果12として「ID正常」と出力し(ステップS23)、それ以外の時はID認証結果12として「ID異常」と出力する。ステップ22、23の動作は、ステップ21でIDデータ11が経時的に受信された場合には、経時的に動作することとなり、D正常」の出力または「ID異常」の出力が経時的に行われる。
【0024】
図3は人検出手段25の処理動作を表すフローチャートである。人検出手段25は、複数の物体測距手段24で測距した各測距データ13が経時的に入力され、その複数の測距データ13を1つにまとめて経時的な測距データとする(ステップS31)。この1つにまとめた経時的な測距データ13より、人を検出したかを判定する(ステップS32)。この人の検出は、1つにまとめた経時的な測距データに人の歩行パターンが含まれているかで判断される。人を検出すると、人検出結果14として人が検出された位置を座標として出力し(ステップS33)、この座標を経時的に保存して人の軌跡とする(ステップS34)。
【0025】
図4は人追跡手段26の処理動作を表すフローチャートである。人追跡手段26は、人検出結果14を受信したか経時的に判定する(ステップS41)。そして、人検出結果14を受信した場合には、人検出結果14で検出された人について、正規入場者、侵入者の区別が既についているか、いないかを判断する(ステップS42)。ここで、区別がついている場合には、その人の位置を記憶してその人の移動軌跡を把握し、ステップ41に戻る。
【0026】
ステップ42で区別がついていない場合には、検出された人が認証エリア21に居るか判定する(ステップS43)。ここで、認証エリア21に人がいる場合には、ID認証結果12が送られてきたか確認する(ステップS44)。ここで、送られてきていない場合にはステップ41に戻り、送られてきている場合にはID認証結果12が「ID正常」であるか確認する(ステップS45)。ここで、「ID正常」である場合には、検出した人を正常入場者とする(ステップS46)。
【0027】
ステップ43で認証エリア21に人が居ない場合及びステップ44で「ID正常」でない場合には、検出した人を不正侵入者とし(ステップS47)、ユーザに対して侵入警報を出力する(ステップS48)。なお、不正侵入者が検出された時、侵入警報15として画面に侵入者の座標を表示する。
【0028】
人追跡手段26は、このようにして正規入場者と不正侵入者との区別をして、以後もその位置の対応をとり続ける。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、監視範囲31内における正規入場者32aと不正侵入者32bの区別と追跡が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の侵入者監視システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態のID認証手順の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の人検出手順の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の人追跡手段の処理動作を示穿フローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
11…IDデータ、12…ID認証結果、13…測距データ、21…認証エリア、22…ID読み取り手段、23…ID認証手段、24…物体測距手段、25…人検出手段、26…人追跡手段、31…監視範囲、32a、32b…物体(人)、50…侵入者監視システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視範囲内に存在する物体を経時的に測距する物体測距手段と、
前記物体測距手段で測距した物体データから人を区別してその人の位置を経時的に認識する人検出手段と、
前記監視範囲内の認証エリアに配置され、人を特定するIDを読み取るID読み取り手段と、
前記ID読み取り手段で読み取ったIDの正常性を認証するID認証手段と、
前記ID認証手段の認証結果と前記人検出手段の検出結果との対応をとる人追跡手段とを具備し、
前記人追跡手段は、
前記認識エリア内で測距された物体が前記人検出手段により人として検出され、その際に前記ID読み取り手段で読み取ったIDが前記ID認証手段で正常と認証された場合に、その人を正規入場者と判定してその動きを経時的に追跡すると共に、
前記監視範囲内で測距された物体が前記人検出手段により人として検出され、その人が正規入場者か判定して正規入場者でない場合に不正侵入者と判定してその動きを経時的に追跡するように構成されている、
ことを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載された侵入者監視システムにおいて、前記認識エリアは実質的に一人分の領域に設定されていることを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載された侵入者監視システムにおいて、前記人追跡手段は不正侵入者と判定した場合に侵入警報を発するように構成されていることを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載された侵入者監視システムにおいて、前記人追跡手段は不正侵入者と判定した場合にその不正侵入者の動きを経時的に追跡して警報するように構成したことを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載された侵入者監視システムにおいて、前記物体測距手段は前記監視範囲内の複数の物体を多方面から測距する複数の物体測距装置をからなっており、人検出手段は前記物体測距装置からの複数の物体データに基づいて前記監視範囲内の複数の人を区別して検出し経時的に追跡するように構成されていることを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載された侵入者監視システムにおいて、前記物体測距手段は前記監視範囲に死角が存在しないように配置した複数のレーザ測距装置や赤外線測距装置などの光線を用いて物体を測距する装置で構成されていることを特徴とする侵入者監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−293485(P2007−293485A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118942(P2006−118942)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】