説明

便器洗浄装置

【課題】 ドップラーセンサによって人体検知及び便器内の水流検知を行なう便器洗浄装置において、ドップラーセンサによる電力消費を低減すること。
【解決手段】 送信した電波の周波数とその反射波の周波数の差分から差分信号を生成するドップラーセンサと、人体及び便器内の流水を検知対象とした検知制御を行なう制御手段と、を備え、制御手段は、検知対象に応じた周期で、ドップラーセンサから電波を間欠送信させて、検知制御を行なう。また、制御手段は、検知対象に応じた周期で、ドップラーセンサからの電波送信のオン時間を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器や大便器等を洗浄するための便器洗浄装置に関し、特に、マイクロ波などを利用したドップラーセンサによって人体検知及び水流検知を行う便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器洗浄装置においては、用足し後の便器本体の洗浄を自動化するために、便器に赤外線センサ等の人体検知センサを設置し、この人体検知センサが一定時間以上使用者を検知した場合には、その後に使用者が離れたことを検知して、給水路に設けられた電磁弁を開閉することにより一定量の洗浄水を流すようにしたものがある。
【0003】
人体検知センサとしては、赤外線を利用した赤外線センサが一般的であり、このセンサは安価なため、広く利用されている。しかしながら、この人体検知センサは、光の反射を利用しているため、人体検知センサの設置位置は光を妨げるものがない位置に限定されてしまう。また、窓が汚れたりすると検知精度が劣化する。しかも、検知範囲を広くするには、光の出力を大きくし光を拡散しなければならないので、広範囲の検知は難しいといった問題点があった。
【0004】
そのため、近年、電波を利用したドップラーセンサによって人体検知をする便器洗浄装置が提案又は提供されてきている。このドップラーセンサは、樹脂や陶器を透過できる電波を利用しているため、本体カバーの中に隠蔽でき、見栄えが良く、悪戯もされにくい。しかも、人が近づいているのか遠ざかっているのかなども検知することができる。さらに、このドップラーセンサによって、人体検知だけでなく、尿流や洗浄水の検知も行なうことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、ドップラーセンサには、マイクロ波を送信する送信手段と、送信手段によって送信された電波の反射波を受信する受信手段と、受信手段で受信した信号の周波数と送信手段によって送信された信号の周波数との差分を求めてその差分に応じた信号を生成する差分検知手段が備えられている。
【0006】
そして、このドップラーセンサは、電波によるドップラー効果を利用して以下の原理で物体(動き)検知に用いられている。
【0007】
基本式:ΔF=FS−Fb=2×FS×ν/c
ΔF:ドップラ周波数
FS:送信周波数
Fb:反射周波数
ν:物体の移動速度
c:光速(300×106m/s)
アンテナから送信されたFSは、物体に反射し、相対運動νによるドップラ周波数シフトを受けFbとなる。この時、送信波と反射波の周波数差ΔFが出力信号として取り出せる。
【0008】
そして、アンテナと検知対象物(人体や尿流等)の距離は、ΔFの振幅の大きさに反比例することから、このΔFの周波数スペクトルを解析することにより、人が近づいているのか、遠ざかっているのかの検知や便器内に水流が存在するのか否かの検知が可能となる。
【特許文献1】国際公開第03/021052号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、便器洗浄装置においては、施工性、メンテナンス性の向上や省エネルギー化のために、洗浄水の給水路に翼車の回転により発電する発電機を設け、この発電機の電力を電磁弁の開閉のための電源に利用した発電機内蔵タイプの便器洗浄装置の要請が高まっている。
【0010】
しかし、上記特許文献1の便器洗浄装置では、このドップラーセンサを用いて人体検知及び便器内の水流検知を行なうことができるものの、このドップラーセンサを連続的に動作させているために、消費電力が大きくなってしまう。そのため、発電機内蔵タイプの便器洗浄装置へは容易に適用することができない。
【0011】
そこで、本発明は、ドップラーセンサによって人体検知及び便器内の水流検知を行なう便器洗浄装置において、ドップラーセンサによる電力消費を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、便器本体内に洗浄水を供給可能とした便器洗浄装置において、送信した電波の周波数とその反射波の周波数の差分から差分信号を生成するドップラーセンサと、人体及び前記便器内の流水を検知対象とした検知制御を行なう制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検知対象に応じた周期で、前記ドップラーセンサから電波を間欠送信させて、検知制御を行なうことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記制御手段は、前記電波の間欠送信に同期させて、前記反射波の間欠受信を行なわせることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明であって、前記制御手段は、前記電波の間欠送信を、前記検知対象に応じたオン時間で行わせることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明であって、前記差分信号のうち第1の周波数帯域の信号を抽出し、人体の有無を検知する人体検知手段と、前記差分信号のうち第2の周波数帯域の信号を抽出し、前記便器内の水流の有無を検知する水流検知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明であって、前記制御手段は、前記人体検知手段及び/又は前記水流検知手段の検知結果に基づいて、前記検知対象を変更することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明であって、前記制御手段は、前記人体検知手段によって人体を検知すると、前記電波の間欠送信の周期を短くすることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明であって、前記制御手段は、前記人体検知手段によって人体を検知後、前記電波の間欠送信の周期を短くすると共に、前記水流検知手段によって水流が検知されると、前記電波の間欠送信のオン時間を短くすることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明であって、前記制御手段は、前記開閉弁によって洗浄水が供給される期間に、その期間よりも短い所定期間に前記ドップラーセンサから電波を送信させることを特徴とする。
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ドップラーセンサから電波を間欠に送信することができるので、ドップラーセンサの駆動による消費電力を低減させることができる。しかも、人体検知や水流検知等の検知対象によって、ドップラーセンサの間欠送信周期を変更するようにしているので、可及的に消費電力の低減を図ることができる。さらに、便器洗浄装置が隣接して配置されているような場合、一般的には、相互に電波干渉して誤作動する恐れが有るが、ドップラーセンサが駆動する時間が少なくて済むため、隣接する便器洗浄装置のドップラーセンサへの影響が少ない。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、ドップラーセンサの間欠送信に同期させて、その反射波の受信を間欠で行なうことにしており、反射波の受信が不要な場合には受信を行なわないため、これによって消費電力の低減を図ることができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、ドップラーセンサの間欠送信をその間欠周期だけでなく、そのオン時間をも変更するようにしたので、さらに消費電力の低減を図ることができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、人体検知及び水流検知のために必要な周波数帯域をそれぞれ抽出する手段を設けたので、ドップラーセンサの差分信号に基づいて、容易に人体検知と水流検知とを分けて検知することができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、人体検知や水流検知の結果に応じて、次の検知対象を変更することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明によれば、検知が遅れてもよい人体検知についてドップラーセンサの間欠送信の周期を長くしたので、消費電力の低減を図ることができる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明によれば、水流検知後は、間欠送信のオン時間を短縮することによって、さらに消費電力の低減を図ることができる。
【0027】
また、請求項8に記載の発明によれば、洗浄水が供給するときにだけ、その水流を検知するようにしたので、さらに消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る便器洗浄装置の全体的な構成を示す図、図2は本発明の実施形態に係るドップラーセンサの機能構成を示す図、図3はドップラーセンサを間欠動作させるための別の構成を示す図、図4は本発明の実施形態に係る洗浄制御部の構成を示す図である。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態における便器洗浄装置1は、内部のドップラーセンサ5が収められた小便器本体2と、この小便器本体2に接続され、小便器本体2のボール部2a内空間を洗浄するための水(以下、「洗浄水」とする。)を供給する給水管3と、この給水管3の中途部に配置されて小便器本体2への洗浄水の供給及びその停止を行うための開閉弁であるバルブ4と、このバルブ4を制御して洗浄水の供給及び停止を行うと共に、ドップラーセンサ5の制御等を行う洗浄制御部6とを備えている。また、小便器本体2のボール空間内に流れる小便や洗浄水は、小便器本体2に連結された排水路7から排水される。
【0030】
このように構成された便器洗浄装置1は、ドップラーセンサ5を用いて、洗浄制御部6により人体検知や流水検知(尿流検知や洗浄水検知を含む)が行い、バルブ4を制御して洗浄水の供給を行なって、便器を洗浄するように動作する。すなわち、洗浄制御部6は、人体検知や流水検知を検知対象として、検知制御を行い、その検知状況に従って動作をする。
【0031】
ここで、ドップラーセンサ5の構成について、図2を参照して、以下具体的に説明する。
【0032】
ドップラーセンサ5は、例えば、10.525GHz(FS)の信号を生成する発振回路10と、発振回路10で生成された信号を電波であるマイクロ波として送信する送信手段である送信回路11と、この送信回路11が送信したマイクロ波の反射波を受信する受信手段である受信回路12と、送信回路11が送信するマイクロ波の周波数FSと受信回路12が受信するマイクロ波の周波数Fbとの周波数差ΔFの信号(以下、「差分信号」とする。)を出力する差分検出手段である差分検出回路13と、から構成されている。
【0033】
したがって、このドップラーセンサ5が動作しているときには、送信回路11からマイクロ波が送信され、受信回路12でその反射波を受信して、差分検出回路13から差分信号が出力される。
【0034】
また、ドップラーセンサ5には、発振回路10と送信回路11との間、及び受信回路12と差分検出回路13との間の接続を制御するスイッチ14,15が設けられており、これらのスイッチ14,15は、洗浄制御部6からの駆動信号に基づいて動作する。
【0035】
たとえば、洗浄制御部6から駆動信号としてHighレベルの電圧がスイッチ14,15に印加されると、発振回路10と送信回路11との間、及び受信回路12と差分検出回路13との間が、これらのスイッチ14,15によって、それぞれ接続状態とされ、送信回路11からマイクロ波が出力されると共に、差分検出回路13から差分信号が出力される。
【0036】
一方、洗浄制御部6から駆動信号としてLowレベルの電圧がスイッチ14,15に印加されると、発振回路10と送信回路11との間、及び受信回路12と差分検出回路13との間は、これらのスイッチ14,15によって、それぞれ非接続状態とされ、送信回路11からのマイクロ波の出力及び差分検出回路13からの差分信号の出力が停止される。
【0037】
このように、本実施形態における便器洗浄装置1は、洗浄制御部6から駆動信号を出力させ、その駆動信号に基づいて、ドップラーセンサ5を連続的に動作させることも、間欠的に動作させることも可能な構成としている。例えば、間欠に動作させるための駆動信号がこのドップラーセンサ5に入力されると、送信手段からのマイクロ波の間欠送信に同期して、差分検出回路13でその反射波の間欠受信が行なわれる。
【0038】
なお、ドップラーセンサ5にスイッチ14,15を設けるのではなく、図3に示すように、ドップラーセンサ5への電源供給をオン及びオフするスイッチ16を駆動信号によって動作させることによって、このドップラーセンサ5を連続的に動作させたり、間欠的に動作させたりするようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態の便器洗浄装置1では、電波を用いた場合のドップラ効果を利用する構成としたが、これに限られず、例えば、超音波等の音波を利用するドップラーセンサを用いてもよい。
【0040】
次に、便器洗浄装置1の洗浄制御部の構成について、具体的に説明する。
【0041】
本実施形態における便器洗浄装置1は、図4に示すように、マイクロコンピュータ21と、ドップラーセンサ5の差分検出回路13から出力された差分信号を増幅する増幅回路17と、増幅回路17によって増幅された差分信号の低周波成分を低減させ、さらに増幅をするハイパスフィルタ増幅回路18(以下、「HPF増幅回路」とする。)と、マイクロコンピュータ21からの信号に基づいて、ドップラーセンサ5を間欠的に制御するための駆動信号を出力するセンサ駆動回路19と、マイクロコンピュータ21から出力される信号に基づいて、バルブ4の開閉を行なうバルブ駆動回路20とを備えている。
【0042】
ここで、マイクロコンピュータ21は、CPU(中央処理装置)、ROMやRAMなどの記憶手段27、入出力ポート、タイマ、A/Dコンバータなどを内蔵しており、このCPUが記憶手段27から動作用プログラムを読み出すことによって、本願発明のローパスフィルタ22(以下、「LPF」とする。)、バンドパスフィルタ23(以下、「BPF」とする。)、比較手段24,25及び制御手段26として動作する構成となっている。なお、LPF22、BPF23、比較手段24,25はハードウェア回路であってもよく、この場合にはマイクロコンピュータ21は制御手段26として機能する。
【0043】
そして、増幅回路17の出力信号とHPF増幅回路18の出力信号を、それぞれマイクロコンピュータ21によって、デジタル的に信号処理し、それによりドップラーセンサ5から出力される差分信号を解析して、人体検知や流水検知などの検知制御を行う構成としている。以下、洗浄制御部6でのデジタル信号処理について具体的にその動作について説明する。
【0044】
まず、LPF22及び比較手段24について説明した後、BPF23及び比較手段25について説明する。
【0045】
LPF22及び比較手段24は、人体検知に必要な15〜30Hzの周波数帯域の差分信号を抽出するように信号処理する。
【0046】
例えば、LPF22は、カットオフ周波数40Hzの特性を持つローパスフィルタであり、増幅回路17から出力された増幅差分信号は、このLPF22により40Hz付近以上の周波数の信号レベルが低減されて、比較手段24に入力される。
【0047】
このように入力された差分信号は、比較手段24において所定の閾値と比較され、所定の閾値以上の差分信号が出力される。すなわち、比較手段24によって出力される差分信号の周波数帯域FAは、0〜40Hz近辺までの範囲であり、人体検知に必要な15〜30Hzを抽出することが可能となる。
【0048】
また、HPF増幅回路18、BPF23及び比較手段25は、流水検知に必要な80〜180Hzの周波数帯域の差分信号を抽出するように信号処理する。
【0049】
例えば、HPF増幅回路18は、カットオフ周波数50Hzのハイパスフィルタ機能と増幅機能を有しており、増幅回路17から出力された増幅差分信号は、このHPF増幅回路18により、50Hz近辺以下の周波数の信号レベルが低減されて、マイクロコンピュータ21へ入力される。
【0050】
BPF23は、低域カットオフ周波数80Hz及び広域カットオフ周波数180Hzの特性を持つバンドパスフィルタであり、増幅回路17から出力された増幅差分信号は、このBPF23により80Hz付近以下及び180Hz以上の周波数の信号レベルが低減され、比較手段25に入力される。
【0051】
このように入力された差分信号は、比較手段25において所定の閾値と比較され、所定の閾値以上の差分信号が出力される。すなわち、比較手段25によって出力される差分信号の周波数帯域FBは、80〜180Hz近辺までの範囲であり、尿流検知に必要な80〜180Hzを抽出することが可能となる。
【0052】
以上のように構成された便器洗浄装置1においては、図5に示すように、人体接近検知期間(T1)、尿流検知期間(T2)、人体離反検知期間(T3)、洗浄検知期間(T4)の4つの期間ごとに、ドップラーセンサ5の間欠動作を異ならせることによって、消費電力の低減を図っており、その動作を図5及び図6に基づいて以下具体的に説明する。
【0053】
ここで、図5は、本実施形態の便器洗浄装置におけるドップラーセンサの間欠動作の変化を示す図であり、図6は本実施形態の便器洗浄装置における人体検知及び水流検知の動作フローチャートを示す図である。
【0054】
まず、便器洗浄装置1に電源が投入されると、マイクロコンピュータ21は、内部のメモリからプログラムを読み出し、人体検知手段、水流検知手段及び制御手段26として機能が開始する。なお、人体検知手段は、LFP22と比較手段24とから構成され、差分信号のうち本発明の第1の周波数帯域である周波数帯域FAの信号を抽出し、人体の有無を検知する。また、水流検知手段は、BFP23と比較手段25とから構成され、差分信号のうち本発明の第2の周波数帯域である周波数帯域FBの信号を抽出し、小便器本体2内の水流の有無を検知する。
【0055】
制御手段は、図5に示す人体検知期間(T1)とするため、記憶手段27の所定領域から人体検知用センサ駆動値を取出し、この値に基づいて駆動信号を生成する。そして、この駆動信号に基づいてドップラーセンサ5を間欠動作させる(ステップS10)。
【0056】
ここで、記憶手段27には、人体検知用センサ駆動値として、間欠周期2s、オン時間70msが記憶されており、制御手段26は、2秒周期で70msのHigh信号を駆動信号として、センサ駆動回路19を介して、ドップラーセンサ5へ出力する。そして、ドップラーセンサ5は、その駆動信号に基づいて、2秒周期で70msのマイクロ波を出力すると共に、その送信マイクロ波の反射波を受信することによって、2秒毎に70msの差分信号を増幅回路17へ出力する。
【0057】
なお、人体接近を検知するときには、2秒程度の検知遅れでも問題ないことから、2秒の間欠周期とし、又人体の接近は15〜30Hzの周波数帯域で検知可能であることから、この周波数帯域の信号が1周期分以上取り込むことができる70msのオン時間としている。
【0058】
続いて、制御手段26は、2秒周期の70msオン時間の差分信号から、人体の検知ができたかどうかを判定する(ステップS11)。この判定は、増幅回路17から出力される差分信号をLPF22で高域周波数をカットし、比較手段24で所定の閾値と比較することによって行なう。すなわち、比較手段24によって所定閾値以上の差分信号検出することによって、人体が接近したことを検知する。
【0059】
また、オン時間の設定に関し、オン時間は電力消費を低減する為には短くすべきであるが、正確な検知の為には、短くする限度がある。この下限値は、検知対象に対してドップラーセンサの出力信号周波数範囲を想定した場合に、その下限周波数での1周期相当の時間となる。例えば、ある検知対象に対して、10Hzから20Hzの範囲の信号が得られるとすれば、1周期は長くても100msなので、オン時間を100msとすれば、少なくとも1周期の波形が得られることになる。実際には、オン時間は、ノイズとの判別等の目的で長くすれば正確な検知判定が可能となるが、電力消費の低減とは相反するので、検知対象や用途に応じて妥当な値を設定するのが望ましい。
【0060】
そして、人体検知ができたとき(ステップS11:Y)、制御手段26は、図5に示す尿流検知期間(T2)に移行し、記憶手段27の所定領域から尿流検知用センサ駆動値を取出し、この値に基づいて駆動信号を生成する。そして、この駆動信号に基づいてドップラーセンサ5を間欠動作させる(ステップS12)。
【0061】
ここで、記憶手段27には、尿流検知用センサ駆動値として、間欠周期0.5s、オン時間50msが記憶されており、制御手段26は、0.5秒周期で50msのHigh信号を駆動信号として、センサ駆動回路19を介して、ドップラーセンサ5へ出力する。そして、ドップラーセンサ5は、その駆動信号に基づいて、0.5秒周期で50msのマイクロ波を出力すると共に、その送信マイクロ波の反射波を受信することによって、0.5秒毎に50msの差分信号を増幅回路17へ出力する。
【0062】
なお、尿流を検知するときには、0.5秒程度の検知精度が必要であるため、0.5秒の間欠周期とし、又尿流は80〜180Hzの周波数帯域FBで検知可能であることから、この周波数帯域FBの信号が4周期分以上取り込むことができる50msのオン時間としている。なお、このように周波数帯域FBの4周期分以上のオン時間としているのは、ドップラーセンサ5の差分信号に含まれるノイズ等との識別をするためである。
【0063】
続いて、制御手段26は、0.5秒周期の50msの差分信号から、人体離反又は尿流の検知ができたかどうかを判定する(ステップS13、14)。この人体離反判定は、LPF22を介して、増幅回路17から出力される差分信号が所定閾値以上の差分信号であるかを比較手段24により検知することによって行う。また、尿流判定は、HPF増幅回路18及びBPF23を介して、増幅回路17から出力される差分信号が所定閾値以上の差分信号であるかを比較手段24により検知することによって行う。
【0064】
なお、尿流検知用センサ駆動値として、2つの値、例えば、間欠周期0.5s、オン時間70msと、間欠周期0.5s、オン時間50msとを記憶手段27に記憶しておくようにしてもよい。
【0065】
このように、尿流検知用センサ駆動値を2つ持つようにすれば、制御手段は、まずオン時間70msでドップラーセンサ5を動作させて、水流検知手段によって尿流の検知開始し、一旦、水流検知手段によって尿流の検知をすると、そのドップラーセンサ5のオン時間を50msとしてドップラーセンサ5を動作させることができる。このようにまずオン時間を70msと長くしておくことで、人体離反の検知の精度を上げることができると共に、一旦尿流が検知されれば、人体がすぐには離反しないため、尿流だけを検知することで、ドップラーセンサ5のオン時間を短くすることができる。
【0066】
そして、人体離反検知ができたとき(ステップS13:Y)、制御手段26は、ステップS10の人体検知期間(T1)に再び移行する。
【0067】
一方、尿流検知ができ、かつその尿流検知ができなくなったと判定する(ステップS14:Y)と、制御手段26は、図5に示す人体離反期間(T3)に以降し、記憶手段27の所定領域から人体離反用センサ駆動値を取出し、この値に基づいて駆動信号を生成する。そして、この駆動信号に基づいてドップラーセンサ5を間欠動作させる(ステップS15)。
【0068】
ここで、記憶手段27には、人体離反用センサ駆動値として、間欠周期1s、オン時間70msが記憶されており、制御手段26は、1秒周期で70msのHigh信号を駆動信号として、センサ駆動回路19を介して、ドップラーセンサ5へ出力する。そして、ドップラーセンサ5は、その駆動信号に基づいて、1秒周期で70msのマイクロ波を出力すると共に、その送信マイクロ波の反射波を受信することによって、1秒毎に70msの差分信号を増幅回路17へ出力する。
【0069】
なお、人体離反を検知するときには、1秒程度の検知遅れでも問題ないことから、1秒の間欠周期とし、又人体の接近は15〜30Hzの周波数帯域で検知可能であることから、人体接近検知と同様に70msのオン時間としている。
【0070】
続いて、制御手段26は、1秒周期の70msの差分信号から、ステップS13と同様に手順で、人体離反の検知ができたかどうかを判定する(ステップS16)。この人体離反検知は、比較手段24にて所定以上の差分信号を検知した後、その差分信号が検知できなくなったときに、その検知が行なわれる。
【0071】
このように人体離反検知ができたとき(ステップS16:Y)、制御手段26は、図5に示す洗浄水検知期間(T4)に以降し、小便器本体2に洗浄水を供給するために、所定期間バルブ4を開状態にするための信号を、バルブ制御回路20から出力する(ステップS17)。
【0072】
また、制御手段26は、記憶手段27の所定領域から洗浄水検知用センサ駆動値を取出し、この値に基づいて駆動信号を生成する。そして、ステップS17におけるバルブ4を開状態にするタイミングで、この駆動信号に基づいてドップラーセンサ5を動作させる(ステップS18)。
【0073】
なお、記憶手段27には、洗浄水検知用センサ駆動値として、間欠周期0、オン時間50msが記憶されており、制御手段26は、一回の50msのHigh信号を駆動信号として、センサ駆動回路19を介して、ドップラーセンサ5を駆動する。制御手段26は、洗浄水の供給のタイミングを把握しているため、その供給タイミングで、洗浄水が給水される時間よりも短い、必要最小限必要な50ms程度の間のみ行なうようにしている。
【0074】
続いて、制御手段26は、50msの差分信号から、洗浄水の検知ができたかどうかを判定する(ステップS19)。この洗浄水検知は、比較手段24にて所定以上の差分信号を検知することによって、その検知が行なわれる。
【0075】
ステップS19において、制御手段26は、洗浄水検知ができた判定したとき、ステップS10に戻って人体検知期間(T1)に移行し、一方、洗浄水が検知できなかったと判定したとき、洗浄水機能を異常と判定して、動作を終了する(ステップS20)。
【0076】
なお、上述のステップS19では、洗浄水の供給のみを検知するようにしたが、その供給の停止を検知するようにしてもよい。この場合、制御手段26は、バルブ駆動回路20を停止させた後、記憶手段27の所定領域から洗浄水停止用センサ駆動値を読み出して、ドップラーセンサ5へ所定期間駆動信号を出力することによって、洗浄水の供給の停止を検知する。この場合、制御手段26は、10〜200Hz程度の周波数帯域FCを検知するため、100msの駆動信号を所定のタイミングで出力することで、確実に洗浄水の停止を検知することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、増幅回路17の出力信号とHPF増幅回路18の出力信号とがマイクロコンピュータ21のA/Dコンバータに入力され、それぞれLPF22、BPF23によってフィルタリングされることとしたが、増幅回路17の出力信号を一つのA/Dコンバータに入力し、状況に応じてLPF22とBPF23とを切り替えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係る便器洗浄装置の全体的な構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係るドップラーセンサの機能構成を示す図。
【図3】ドップラーセンサを間欠動作させるための別の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る洗浄制御部の構成を示す図。
【図5】本実施形態の便器洗浄装置におけるドップラーセンサの間欠動作の変化を示す図。
【図6】実施形態の便器洗浄装置における人体及び水流検知の動作フローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0079】
1 便器洗浄装置
5 ドップラーセンサ
22 ローパスフィルタ
23 バンドパスフィルタ
24,25 比較手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体内に洗浄水を供給可能とした便器洗浄装置において、
送信した電波の周波数とその反射波の周波数の差分から差分信号を生成するドップラーセンサと、
人体及び前記便器内の流水を検知対象とした検知制御を行なう制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検知対象に応じた周期で、前記ドップラーセンサから電波を間欠送信させて、検知制御を行なうことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電波の間欠送信に同期させて、前記反射波の間欠受信を行なわせることを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電波の間欠送信を、前記検知対象に応じたオン時間で行わせることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項1に記載の便器洗浄装置であって、
前記差分信号のうち第1の周波数帯域の信号を抽出し、人体の有無を検知する人体検知手段と、
前記差分信号のうち第2の周波数帯域の信号を抽出し、前記便器内の水流の有無を検知する水流検知手段と、を備えた請求項1〜3のいずれか1項に便器洗浄装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記人体検知手段及び/又は前記水流検知手段の検知結果に基づいて、前記検知対象を変更することを特徴とする請求項4に記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記人体検知手段によって人体を検知すると、前記電波の間欠送信の周期を短くすることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記人体検知手段によって人体を検知後、前記電波の間欠送信の周期を短くすると共に、前記水流検知手段によって水流が検知されると、前記電波の間欠送信のオン時間を短くすることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の便器洗浄装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記開閉弁によって洗浄水が供給される期間に、その期間よりも短い所定期間に前記ドップラーセンサから電波を送信させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の便器洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−274761(P2006−274761A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99500(P2005−99500)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】