説明

便座装置及びトイレ装置

【課題】便蓋を開いた時に後方の物体との衝突を抑制できる便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】便器800の上に設けられる本体部400と、前記本体部に回動可能に軸支された便座200と、前記本体部に回動可能に軸支された便蓋300と、前記便蓋の重心が前記便蓋の前記回動の軸の鉛直上方よりも閉止側にある状態で前記便蓋の開放を停止させるストッパ480と、前記便蓋を開放側に付勢する弾性体726と、を備えたことを特徴とする便座装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、開閉自在な便蓋を備えた便座装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腰掛便器の便座を覆うように開閉自在の便蓋を設けると、蓋を閉じた状態ですっきりと見栄えがよいばかりでなく、ホコリや汚れなどがつきにくくなり、さらに例えば便座に暖房機能を付与した場合に待機状態における放熱を抑制して節電効果も得られる。また近年、モータにより便座や便蓋を自動開閉する装置も開発されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、便蓋が手動開閉式の場合も電動開閉式の場合も、便蓋の開端角度すなわち最大の開き角度は、取り付け現場により多種多様である。すなわち、ロータンク式のトイレの場合には、便蓋の後方にはロータンクがあり、ロータンクを用いない水道直圧式のトイレの場合には、便器の後方にトイレの棚や出窓などが存在することがある。
【特許文献1】特開平1−270831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、便蓋を開いた時に後方の物体との衝突を抑制できる便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、便器の上に設けられる本体部と、前記本体部に回動可能に軸支された便座と、前記本体部に回動可能に軸支された便蓋と、前記便蓋の重心が前記便蓋の前記回動の軸の鉛直上方よりも閉止側にある状態で前記便蓋の開放を停止させるストッパと、前記便蓋を開放側に付勢する弾性体と、を備えたことを特徴とする便座装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、便器と、前記便器の上に設けられた上記の便座装置と、を備え、前記便器に対する洗浄水の供給を制御する給水制御部が前記本体部に収納されてなることを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、便蓋を開いた時に後方の物体との衝突を抑制できる便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
すなわち、図1は、便座装置の便蓋が開いた状態を表し、図2は、便蓋が閉じた状態を表す。また、図3は、便座装置を横から眺めた模式図である。
【0009】
図3(a)に表したように、本実施形態の便座装置100は、その便蓋300を完全に開いた状態において、便蓋300の重心Gは、その回動軸Cの鉛直上方よりも閉止側にある。換言すると、便蓋300の重心Gは、その回動軸Cにおける鉛直線Vよりも前方にある。すなわち、本実施形態の便座装置100においては、便蓋300は、全開にしたときに、その背面が前傾した状態で中立する。このようにすると、例えば便蓋300の後方にトイレの窓枠などが存在する場合でも、衝突することを防止できる。
【0010】
以下、図1〜図3に表した便座装置100の全体構成について説明する。
本具体例の便座装置100は、洋式腰掛便器800の後方に設けられた本体部400を有する。本具体例のトイレ装置は、「水道直圧式」であり、便器に流す洗浄水を制御するためのバルブ機構が本体部400に内装されている。ただし、本発明はこの具体例には限定されず、いわゆる「ロータンク式」のトイレ装置にも同様に適用できる。
【0011】
本体部400には、便座200及び便蓋300がそれぞれ開閉自在に軸支されている。便座200は本体部400の相対的に前方に設けられた回動軸280により軸支され、一方、便蓋300は本体部400の相対的に後方に設けられた回動軸380により軸支されている。つまり、便座200の回動軸280と便蓋300の回動軸380は、前後方向に離間して設けられている。図1に表したように便蓋300が開いた状態においては、本体部400と便座200はほぼ完全に露出し、使用者は便蓋300に干渉することなく便座200に座ることができる。また、便蓋300を本体部400の後部で軸支することにより、便座200に座る使用者から便蓋300を遠ざけることができる。その結果として、便座200に座る使用者に開放感を与え、快適な使用感が得られる。
【0012】
一方、図2に表したように便蓋300が閉じると、便座200だけでなく本体部400もほぼ完全に便蓋300に覆われた状態となる。このように便蓋300で便座装置のほぼ全体を覆うようにすると、非常にスマート且つシンプルで見栄えがすっきりとする。また、便座装置100の全体を便蓋300で覆うことにより、使用されていない状態において便座200のみならず本体部400の上にも埃やチリなどが積もることはない。さらに、便蓋300を閉じた状態において、便座装置100の上面に「隙間」や「凹凸」などがなくなるため、濡らした雑巾などで拭き掃除をする際にも、便蓋300の上面全体を滑らかにサッと拭くことができ、清掃性が良好になる。
【0013】
また、本具体例の場合、本体部400の側面に段部405(図1)が形成されている。この段部405は、便蓋300が閉じた状態において、便蓋300の周囲に折れ曲がって立設されている側壁303の後部下端305と当接または近接した状態で整合し、本体部400の側面と便蓋300の側面とはほぼ連続した同一面を形成する。その結果として、便蓋300が閉じた状態において、便座装置100の側面にも便蓋300から本体部400に至る連続平面が形成され、さらに見栄えがすっきりとするとともにホコリや汚れが堆積することも防止できる。また、便蓋300を閉じた状態で便座装置100の側面を拭き掃除した場合にも、雑巾がひっかかることなく滑らかにサッと拭くことができる。
【0014】
なお、本実施形態においては、便蓋300や便座200を自動的に開閉する「電動開閉機構」を本体部400に内蔵してもよい。すなわち、本体部400の上面に設けられた人体検知センサ500などにより使用者の存在を検知すると、便蓋300が電動開閉機構により自動的に開いたり、使用者の存在を検知しなくなると、便座200及び便蓋300を自動的に閉じるようにしてもよい。また、使用者が図示しないリモコンなどを操作することにより、便蓋300や便座200が電動開閉機構で開閉するようにしてもよい。
【0015】
また、本体部400には、「便座装置」としての機能がさらに付与されていてもよい。すなわち、使用者のスイッチ操作などに応じて、本体部400から吐水ノズル(図示せず)が便器800のボウル内に伸出し、その先端付近に設けられた吐水口から温水を噴射して、使用者の「おしり」などを洗浄可能としている。また、本体部400には、さらに「脱臭ユニット」や「温風ユニット」、「室内暖房ユニット」などの各種の機構を適宜設けてもよい。また、本体部400の正面に設けられたセンサ窓420の内側には、便器800の前に立つ使用者を検知する人体検知センサや便座200に座った状態の使用者を検知する着座センサが適宜設けられている。さらに、本体部400の側面には、「脱臭ユニット」の排気口440や「室内暖房ユニット」の温風排出口450などが適宜設けられる。
【0016】
そして、本実施形態においては、図3(a)に表したように、便蓋300を完全に開いた状態において、便蓋300は、その回動軸Cの鉛直上方よりも閉止側にある。すなわち、本実施形態の便座装置100においては、便蓋300は、全開にしたときに、その背面が前傾した状態で中立する。
【0017】
図4は、本具体例の便座装置100が搭載されたトイレ装置がトイレに設置された状態を例示する模式図である。
図4(a)は、便蓋300の重心Gがその回動軸Cにおける鉛直線上にのるまで便蓋300を開いた状態を表す。本具体例のトイレ装置は、いわゆる「水道直圧式」であるので、ロータンクは設けられてない。従って、トイレ装置をトイレの後壁950に寄せて設置することが可能である。この時、トイレの後壁950が平坦であれば、図4(a)に表したように、便蓋300は後壁950との間にわずかな隙間を残して開くことも可能である。
【0018】
しかし、トイレの後壁950には、例えば、窓枠や飾り額縁などの突出体960が設けられていることがある。これに対して、本実施形態によれば、便蓋300を全開の状態で前傾させることにより、これら突出体960との干渉を防ぐことができる。つまり、便蓋300を開くたびに突出体960と便蓋300とが衝突する不快感を解消し、便蓋300に傷がつくことも防止できる。
【0019】
トイレの後壁950に設けられる窓枠や飾り額縁などの突出量すなわち厚みは、殆どの場合に、20ミリメータ以内である。従って、本具体例の便座装置100の場合、図3(a)に表した角度θをおよそ7度とすると、突出体960との干渉を防止できる。すなわち、蓋300の重心Gがその回動軸Cにおける鉛直線上にある状態からおよそ7度だけ前方に傾斜させれば、殆どの場合に突出体960と便蓋300との衝突を防止し、快適な使用感が得られる。
【0020】
図5及び図6は、便蓋300の開き角度を規制するストッパを表す部分拡大模式図である。
本体部400からは、便蓋300の回動軸728が横方向に突出している。便蓋300にはスリット状に開口した軸支部370が設けられ、この軸支部370に回動軸728を挿入することにより、便蓋300は本体部に回動自在に軸支される。一方、本体部400の回動軸728の基端部には、ストッパ480が設けられている。便蓋300を開くと、図6に表したように、便蓋300の開口端372がストッパ480に当接し、開端角度が規制される。このようにして、図3に表したように便蓋300の開端角度を確実に規制することができる。
なお、図5及び図6に表したように、本体部400の回動軸728の後方には、受光窓580が設けられている。これは、後に詳述するように、リモコンから送信される赤外線信号を受けるための窓部である。
【0021】
図7は、便蓋300を電動で回動させるために設けることができる便蓋開閉ユニットを例示するブロック図である。
本具体例の便蓋開閉ユニット720は、本体部400に内蔵可能であり、その回動軸728をモータ721により回動可能とされている。その駆動機構は、モータ721の回転出力を減速させる減速機構722、負荷される最大トルクを規制するトルクリミッタ723、回動軸728の回転角度を規制する角度ストッパ724、回動軸728の回転角度を検出する角度検出部725、そして、回動軸728に付勢力を作用させるアシストバネ(弾性体)726を有する。減速機構722は、回転検出部722A、斜歯車722B、ウォーム歯車722C、平歯車722D、遊星歯車722Eなどを有する。
【0022】
この便蓋開閉ユニット720を用いることにより、便蓋300を電動により開閉させることができる。また、この便蓋開閉ユニット720を取り付けた状態でも、便蓋300を手動により開閉できる。そして、電動による場合も手動による場合も、アシストバネ726を設けることにより、便蓋300を軽く開くことができ、図3に関して前述したように、完全に開いたときに前傾した状態を確実に維持できる。
【0023】
図8は、便蓋300の開き角度と、便蓋300の重量により回動軸728に負荷されるトルクとの関係を例示するグラフ図である。
図3(b)に表したように、本具体例の便座装置100の場合、便蓋300を閉じた状態において、その重心Gは、回動軸Cにおける水平線Hよりも鉛直下方にある。従って、この状態から便蓋300を開いていくと、重心Gが水平線Hの上にきた時に、便蓋300の重量のモーメントによる回動軸728でのトルクは最大値Tmaxをとる。便蓋300をさらに開くと、その重量モーメントによるトルクは徐々に減少し、アシストバネ726が設けられていない場合には、重心Gが回動軸728の鉛直上方すなわち鉛直線V(図3)の上にきた時(θ0)に、トルクはゼロとなる。つまり、この角度θ0で便蓋300は中立を維持できる。そして、本実施形態においては、便蓋300の開端角度は、この中立角度θ0よりも小さい。つまり、図5及び図6に関して前述したように、ストッパ480により、開端角度がθ0よりも小さくなるように規制されている。
【0024】
そして、本実施形態においては、アシストバネ726が、便蓋300が開く方向に回動軸728を付勢している。アシストバネ726は、便蓋300の開き角度に対して図8に表したように徐々に低下するトルクを発生させる。このようなアシストバネ726を設けることにより、便蓋300の重量モーメントによるトルクは軽減される。つまり、便蓋300の重量モーメントによるトルクからアシストバネ726のトルクを差し引いた残りが、便蓋300の開閉に必要とされるトルクとなる。従って、両者がバランスする角度θ1においては、便蓋300は中立を維持できる。そして、便蓋300をθ1よりも開くと、回動軸728には開く方向のトルクが負荷される。つまり、便蓋300をθ1よりも開くと、その後は便蓋300は自動的に開端角度まで開く。本実施形態においては、図3(a)に表した便蓋300の最大開き角度をこの角度θ1よりも大きい角度としている。つまり、便蓋300がストッパ480(図5、図6)により停止された状態において、便蓋300の重量モーメントによるトルクよりもアシストバネ726の付勢力によるトルクのほうが大きい。このようにすれば、便蓋300は全開の状態において、アシストバネ726によりストッパ480に向けて付勢されており、前方に倒れることなく前傾姿勢を維持できる。
【0025】
なお、図7には、電動式の便蓋開閉ユニット720にアシストバネ726を内蔵させた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、アシストバネ726は、便蓋開閉ユニット720の外側に設けてもよく、あるいは、便蓋開閉ユニット720を設けず手動操作のみで便蓋を開閉させる場合においても、同様のアシストバネを設けて便蓋300を開く方向に付勢することにより、図3(a)に表したような前傾姿勢を保持することができる。
【0026】
なお、図7に表した便蓋開閉ユニット720は、その減速機構722に設けられた回転検出部722Aと、回動軸728の角度を検出する角度検出部725を利用することにより、便蓋300の位置と動作状態を検知することができる。そして、これらの検知情報に基づき、本体部400に内蔵した制御部640(図10)は、便蓋300の開端角度を学習可能とすることができる。例えば、便蓋300を開いたときに開端角度に達すると、モータ721の回転が停止するので減速機構722の回転検出部722Aがこれを検知する。また、角度検出部725により、便蓋300の開き角度を学習できる。従って、その次に便蓋300を開く時に、その開き角度に近づくにつれて便蓋300の速度が低下し、ゆっくりと開端角度に達するように制御できる。
【0027】
このようにすると、例えば、図4(b)に関して前述した突出体960の突出量が大きいトイレに本具体例のトイレ装置をトイレに設置し、最初に動作させる際に、便蓋300の開き角度を学習させることかできる。そして、その次の動作からは、突出体960に勢いよく衝突することを防止できる。また同様に、本具体例のトイレ装置を設置して使用を開始した後、トイレの後壁に突出量の大きい飾り額縁などを増設したような場合も、便座装置100は、便蓋300の開き角度を新たに学習し、次回の動作からはこれに勢いよく衝突しないように便蓋300の開き動作を制御できる。
【0028】
図9は、本具体例のトイレ装置において便座200と便蓋300を同時に開いた場合の動作を例示する模式図である。
図9(a)に表したように便座200と便蓋300が閉じた状態から、便座200を手動で開いた場合には、図9(b)に表したように、便蓋300は便座200に押されて同時に開く。そして、図9(c)に表したように、便座200が完全に開いた時、便蓋300は、図3に表した全開の状態よりも、およそ10度ほど前方に傾斜した状態となる。ただし、この場合においても、図7及び図8に関して前述したアシストバネ726の付勢力により、便蓋300は閉じることなく開いた状態を維持可能である。
またさらに、図7に関して前述した便蓋開閉ユニット720を設けた場合には、その角度検出部725により便蓋300が図9(c)に表した角度まで開いたことを検知し、その後、モータ721を駆動させて開端角度まで自動的に開くように制御することも可能である。
【0029】
次に、本実施形態において便蓋300の開端角度を規制することにより得られる他の効果について説明する。
便蓋300を前傾姿勢に維持することにより、リモコンから送信される赤外線を確実に受光することができるという効果が得られる。
図10及び図11は、本具体例の便座装置100を操作可能なリモコンを表す模式図である。
本具体例のリモコン900は、本体部902とこれに開閉自在に蝶支されたカバー904とを有する。図10は、カバー904を閉じた状態を表し、図11はカバー904を開けた状態を表す。
【0030】
本体部902及びカバー904にはそれぞれスイッチが設けられ、使用者がこれらスイッチを操作することにより、便座装置100の動作を制御することができる。便座装置100の本体部400への指令信号は、リモコンの上部両端に設けられた赤外線発光部906から送信される。
【0031】
図12及び図13は、本体部400に設けられた受光窓580の位置を表す模式図である。すなわち、図12は、本具体例の便座装置100の便蓋300を閉じた状態で上方から眺めた模式図である。また、図13は、本体部400の斜視図である。
【0032】
図1及び図2に関して前述したように、本具体例の便座装置100は、便蓋300を閉じた状態において、ほぼ全体が便蓋300により覆われる構造を有する。こうすることにより、前述したように、すっきりとした外観が得られ、掃除も容易となる。ただし、便蓋300を閉じた状態においても、リモコン900からの赤外線を受光する必要がある。そこで、図5、図6、図12及び図13に表したように、本具体例においては、便蓋300の軸支部の後方に、下方に向けた段差を設け、ここに受光窓580を設けている。この位置に受光窓580を設けた場合、便蓋300を閉じた状態においても、便器800の正面に立つ使用者から受光窓580は殆ど見えず、すっきりとした外観を損なうことはない。
【0033】
そして、本実施形態によれば、便蓋300を開端角度で前傾姿勢に維持することにより、リモコンから送信される赤外線を確実に受光することができる。
図14は、リモコン900から送信される赤外線の経路を例示する模式図である。
矢印Rで表したように、赤外線Rは、リモコン900に設けられた赤外線発光部906から上方に向けて放出される。放出された赤外線は、トイレの天井で反射し、本体部400に向かう。ところが、便蓋300の開き角度が大きいと、天井で反射した赤外線は便蓋300により遮られて本体部400の受光窓580に到達しにくい場合がある。
【0034】
図15は、赤外線の経路を説明するための模式図である。
図15(a)に表したように、便蓋300の開き角度が大きい場合、トイレの天井で反射した赤外線Rは、便蓋300により遮られやすくなる。特に、トイレ装置をトイレの後壁950に寄せて設置した場合には、便蓋300の開き角度が大きいと、便蓋300とトイレの後壁950との間に隙間が殆どなくなる。このため、天井で反射した赤外線Rは便蓋300の後ろ側に入り込むことができず、受光窓580に達することが困難となる。
【0035】
これに対して、図15(b)に表したように、便蓋300の開き角度を規制し前傾姿勢となるようにすると、トイレ装置を後壁950に寄せて設置した場合でも、便蓋300と後壁950との間が拡がり、十分な隙間ができる。その結果として、天井で反射した赤外線Rは、便蓋300の裏側に入り込むことができ、そのまま、あるいは便蓋300と後壁950との間で反射を適宜繰り返しながら受光窓580に達することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、便蓋300が便座装置100のほぼ全体を覆うようにしつつ、便蓋300が開いた状態においても、リモコン900から送信された赤外線信号を確実に受信し、確実に動作をさせることができる。
【0036】
次に、便座装置100に設けられたライトについて説明する。
図16は、本具体例の便座装置100の便蓋300を開いた状態を表す模式図である。
【0037】
図1にも表したように、本具体例の便座装置100は、本体部400の上部後方にライト792を有する。
図17は、ライト792の断面を表す模式図である。同図に表したように、ライト792は、本体部400の表面と略同一面に埋設された窓793の内側にLED(light emitting diode)794を配置し、そのLED794からから放出された光は、窓793を介してトイレルームの天井に向けて取り出される。そして、この光は、図17(a)に表したように便蓋300が閉じた状態においても、図17(b)に表したように便蓋300が開いた状態においても、外部に取り出され、使用者に心地よい照明を提供することができる。またこのライト792に、例えば、動作の準備中には点滅して使用者に報知する役割を与えることも可能である。
そして、本実施形態によれば、便蓋300を全開の時に前傾姿勢に維持することで、ライト792からの光を効率的に反射させる効果が得られる。すなわち、図17(b)に表したように、便蓋300が開いた状態においては、ライト792は、便蓋300よりも前方(図3参照)にある。つまり、便蓋300が開いた状態においては、その前方でライト792から光が放出される。本実施形態によれば、この光の一部を便蓋300の裏面302により反射させることができる。
【0038】
図18は、ライト792から放出される光の経路を説明するための模式図である。
本実施形態においては、便蓋300が開いた状態で前傾しているので、ライト792から放出された光Lのうちの一部は便蓋300の裏面302により反射され、前方に向けて拡がる。また、同様に、便蓋300の周囲に折れ曲がって立設されている側壁303(図1参照)の内側表面においても、光が反射される。このようにして便座の裏面302や側壁303の内側表面において反射された光Lは、トイレの壁に設けられたリモコン900を照射する。つまり、便座200に座った使用者からみて、後方からの柔らかな光によりリモコン900の操作面を照らすことができる。夜間など、睡眠の途中に目が覚めてトイレを使用する場合などは、トイレの照明はまぶしく感じる場合も多い。本具体例によれば、このような場合でも、本体部400に設けられたライト792から放出される光を、前傾姿勢の便蓋300により効果的に反射させ、リモコン900を操作面を適度な明るさに照らして快適に使用することが可能となる。
【0039】
次に、本具体例の便座装置100の構造についてさらに詳細に説明する。
図19は、本具体例の便座装置100の便蓋300と便座200を開いた状態を表す模式図である。
本具体例においては、本体部400が、便器800のボウル810の開口端に合わせて後退した形状を有する。すなわち、本体部400は、便器800の上部後方に設置され、その前面が、便器800のボウル810の開口端の形状に沿ってボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出するように凹状に湾曲した湾曲凹面402とされている。湾曲凹面402の左右には、ボウル810の開口端に沿って前方に向けて延出した延出部404が設けられている。湾曲凹面402は、その中央付近が高く、左右の延出部404に近づくにしたがって次第に低くなる形状を有する。
【0040】
湾曲凹面402の中央付近の高い部分には、吐水ノズルを進出及び後退させる開口部及びその開口部を覆う閉止部材としてのノズルダンパー460が設けられ、その右側には、温風吹出口及び温風吹出口を覆う閉止部材として温風ダンパー470が設けられている。これらは、いずれも開閉自在に支持され、待機状態においては、いずれも閉じられた状態とされる。そして、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄するために吐水ノズルが進出すると、ノズルダンパー460が開く。また、温風乾燥ユニット620から使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付ける際には、温風ダンパー470が開く。
【0041】
本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成することにより、男性の立位での小用の際にも小水がかかりにくくなり、使用者に対して視覚的な狭窄感を与えることもない。また、湾曲凹面402の中央付近を高くすることにより、男性の立位の小用に際して本体部400に小水がかかったとしても、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分で小水を受けてボウル810に落下させることができる。つまり、小水が本体部400の傾斜面408などにかかることを抑制でき、小水による汚れを可及的に減らすことができる。
【0042】
また、このように本体部400を後退させることにより、本体部400の裏面への汚れの付着も抑制でき、清掃性も格段に改善できる。すなわち、本具体例によれば、便器800の前にしゃがんだ使用者の視線からみて、ボウル810の後端のリム部の上端付近まで見える。従って、使用者は、その姿勢のまま雑巾やブラシなどを用いてボウル810の後端まで清掃し、汚れが落ちてきれいになったことを確実且つ容易に確認できる。また、本実施形態においては、本体部400のボウル810の上への突出量が抑制されているので、その突出部の裏側に付着した汚れなどを清掃することも容易である。例えば、雑巾などで清掃する際にも、使用者が本体部400の裏側に雑巾をあてがった状態で、左右にサッと拭き取ることができる。
【0043】
次に、本具体例の便座装置100の内部構造について詳細に説明する。
図20は、便座装置の本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
本体部400は、筐体を構成するケースカバー430とケースプレート770とを有する。ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500や表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えばトイレ装置に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前部の上部には、便座200を自動開閉させるための便座開閉ユニット780が突出して設けられている。
【0044】
一方、ケースカバー430の内部をみると、その前方には、ノズルユニット610、温風乾燥ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。なお、温風ダンパー470を駆動するモータは、ノズルユニット610の下に設置されている。このようにすると、ノズルユニット610の下のスペースを有効に利用でき、また温風ダンパー470の近くから駆動力を伝達できる。
【0045】
ノズルユニット610は進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル810内の空気を吸引し、脱臭して排気口440から排出する役割を有する。
【0046】
また、ケースカバー430の内部の前部上方にはコントローラ640が設けられ、その後部には、バルブユニット650と熱交換ユニット660が設けられている。バルブユニット650から熱交換ユニット660に供給された水が加熱され、ノズルユニット610に併設されたポンプユニットで水に脈動を付与し、吐水ノズルにこの脈動水を供給する。
【0047】
また、ケースカバー430の側面には、補助操作ユニット(図示せず)が適宜設けられている。補助操作ユニットは、ノズルユニット610による「おしり」の洗浄などを操作するスイッチが設けられ、例えば、リモコン(図10)による操作が不可能な状態においても衛生洗浄機能の動作を制御可能としたものである。
【0048】
一方、ケースカバー430の内部の後部には、便蓋開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット(給水制御部)730とが併設されている。便蓋開閉ユニット720は、便蓋300を開閉する役割を有する。便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、本具体例のトイレ装置は、いわゆる「水道直結給水式」の構造を有し、ロータンクなどを設けずに、水道から供給される水を便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給して洗浄を実施する。ただし、本発明はこれには限定されず、ロータンク式のトイレに取付可能な便座装置も包含する。
【0049】
一方、ケースカバー430の内部の最後部には、室内暖房ユニット740が設けられている。室内暖房ユニット740は、温風を排出口450(図1参照)から排出することによりトイレ装置が設置されたトイレ空間を暖房する役割を有する。
このような各種の機構を備えた本体部400の後端近くに便蓋300を軸支し、便座装置100のほぼ全体を覆うようにすると、外観がすっきりとし掃除もしやすくなる。そして、この便蓋300が全開の状態において前傾姿勢を維持するようにすると、トイレの後壁に窓枠や飾り額縁などが設けられている場合でも、これらとの干渉を防ぐことができる。また、リモコンからの赤外線信号も確実に受信でき、さらにライトから放出される光を反射してリモコンの操作面を適度に照らすことも可能となる。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図20に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、便座装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図20に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】便座装置の便蓋が開いた状態を表す模式斜視図である。
【図2】便蓋が閉じた状態を表す模式斜視図である。
【図3】便座装置を横から眺めた模式図である。
【図4】本具体例の便座装置100が搭載されたトイレ装置がトイレに設置された状態を例示する模式図である。
【図5】便蓋300の開き角度を規制するストッパを表す部分拡大模式図である。
【図6】便蓋300の開き角度を規制するストッパを表す部分拡大模式図である。
【図7】便蓋300を電動で回動させるために設けることができる便蓋開閉ユニットを例示するブロック図である。
【図8】便蓋300の開き角度と、便蓋300の重量により回動軸728に負荷されるトルクとの関係を例示するグラフ図である。
【図9】本具体例のトイレ装置において便座200と便蓋300を同時に開いた場合の動作を例示する模式図である。
【図10】本具体例の便座装置100を操作可能なリモコンを表す模式図である。
【図11】本具体例の便座装置100を操作可能なリモコンを表す模式図である。
【図12】本体部400に設けられた受光窓580の位置を表す模式図である。
【図13】本体部400に設けられた受光窓580の位置を表す模式図である。
【図14】リモコン900から送信される赤外線の経路を例示する模式図である。
【図15】赤外線の経路を説明するための模式図である。
【図16】本具体例の便座装置100の便蓋300を開いた状態を表す模式図である。
【図17】ライト792の断面を表す模式図である。
【図18】ライト792から放出される光の経路を説明するための模式図である。
【図19】本具体例の便座装置100の便蓋300と便座200を開いた状態を表す模式図である。
【図20】便座装置の本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
100 便座装置、200 便座、280 回動軸、300 便蓋、302 裏面、303 側壁、305 後部下端、320 緩衝体、370 軸支部、372 開口端、380 回動軸、400 本体部、402 湾曲凹面、404 延出部、405 段部、408 傾斜面、420 センサ窓、430 ケースカバー、440 排気口、450 排出口、460 ノズルダンパー、470 温風ダンパー、480 ストッパ、500 人体検知センサ、580 受光窓、610 ノズルユニット、620 温風乾燥ユニット、630 脱臭ユニット、640 コントローラ(制御部)、650 バルブユニット、660 熱交換ユニット、670 表示部、720 便蓋開閉ユニット、721 モータ、722 減速機構、724 角度ストッパ、725 角度検出部、726 アシストバネ、728 回動軸、730 便器洗浄バルブユニット、740 室内暖房ユニット、770 ケースプレート、780 便座開閉ユニット、792 ライト、793 窓、800 便器、810 ボウル、900 リモコン、902 本体部、904 カバー、906 赤外線発光部、950 後壁、960 突出体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上に設けられる本体部と、
前記本体部に回動可能に軸支された便座と、
前記本体部に回動可能に軸支された便蓋と、
前記便蓋の重心が前記便蓋の前記回動の軸の鉛直上方よりも閉止側にある状態で前記便蓋の開放を停止させるストッパと、
前記便蓋を開放側に付勢する弾性体と、
を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記便蓋が前記ストッパにより停止された状態において、前記便蓋は前記閉止側に傾いてなることを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記便蓋の前記回動の軸は、前記本体部の後方側端部に設けられ、
前記便蓋は、前記閉止した状態において前記便座装置の略全体を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記便蓋が前記ストッパにより停止された状態において、前記便蓋の重量モーメントによるトルクよりも前記弾性体の付勢力によるトルクのほうが大なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項5】
前記便蓋をモータの駆動力で開閉させる電動開閉機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項6】
前記本体部は、前記便蓋の軸支部よりも後方に設けられリモコンから送信される信号を受信する受光窓を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項7】
便器と、
前記便器の上に設けられた請求項1〜6のいずれか1つに記載の便座装置と、
を備え、
前記便器に対する洗浄水の供給を制御する給水制御部が前記本体部に収納されてなることを特徴とするトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−319412(P2007−319412A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152868(P2006−152868)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】