説明

係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラム

【課題】本発明の目的は、係合構造部に働く反力を精度よく検知することができる係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムを提供する。
【解決手段】本体と扉体とを固定するために用いられる扉体の開閉装置。被係合構造部12は、本体に設けられている。係合構造部本体16は、扉体に対して回転可能に取り付けられている。係合構造部本体16は、被係合構造部12から受ける力F1により角度θ1だけ回転させられて、被係合構造部12に対して係合する。動力伝達部18は、力F1による係合構造部本体16の回転角が角度θ1よりも小さい場合に、モータから力F2を受けて、該係合構造部本体16を回転させて被係合構造部12に対して係合させる。動力伝達部18は、力F2を受けて係合構造部本体16に対して弾性的に変位できるように、係合構造部本体16に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムに関し、より特定的には、第1の部材と第1の部材を固定するために用いられる係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の扉体の開閉装置としては、例えば、特許文献1に記載の扉体と本体とを有する扉体の開閉装置が知られている。該扉体の開閉装置は、扉体に圧接されることにより摺動するスライダを有するプッシュラッチ装置が本体に設けられている。このスライダの動きに連動するフックレバーが本体に回動可能に設けられている。このフックレバーは、扉体と本体に閉じられるときに、扉体に設けられる係合構造部に係合され、閉作動させる。
【0003】
更に、扉体の開閉装置は、以下に説明する方法によって、扉体の所定の閉動作が完了したか否かを判定できる。より詳細には、扉体が所定の閉動作が完了した場合、スライダの位置を所定の本体位置に配置されるリミットスイッチの出力信号よって閉動作の完了が検知できる技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の扉体の開閉装置では、扉体が開閉動作される場合に発生する異常な力、例えば、フックレバーと被係合構造部との係合の不具合によってフックレバーに作用する異常トルクを検知できない課題があった。また、扉体と本体とで形成される内部空間を気密する要求がある場合、扉体又は本体の一部にゴムパッキン、樹脂ラビリンスなどの弾性気密部材が形成されるときがある。この場合、弾性気密部材による弾性力によって扉体によって閉状態にまで押し込むことが困難となり、扉体をアクチュエータで駆動補助させて閉状態を実現させることが考えられる。このとき、扉体の開閉によって発生する反力の大きさを精度よく検知することが困難であった。より詳細には、扉体の開閉装置において、アクチュエータ(例えば電動モータ)は、バッテリからの電力供給を受けて駆動する。ところが、使用状況によってバッテリが供給できる電圧の大きさは変動する。そのため、反力が所定の大きさよりも大きくなったとしても、アクチュエータの駆動電流の大きさが所定値を超えない場合がある。また、反力が所定の大きさよりも大きくなる前に、アクチュエータの駆動電流の大きさが所定値を超えてしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−255566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、扉体が開閉動作される場合に係合構造部に働く反力を精度よく検知することができる係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る係合構造部は、第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置の係合構造部であって、前記第1の部材に対して回転可能に取り付けられている係合構造部本体であって、前記第1の部材と前記第2の部材とが開閉される場合に該第2の部材に設けられる被係合構造部材から受ける第1の力により該第1の部材に対して所定角度だけ回転させられて、該被係合構造部材に対して係合する係合構造部本体と、前記第1の力による前記係合構造部本体の前記第1の部材に対する回転角が前記所定角度よりも小さい場合に、駆動手段から第2の力を受けて、該回転角が該所定角度となるまで該係合構造部本体を回転させて前記被係合構造部に対して係合させる動力伝達部であって、該第2の力を受けて該係合構造部本体に対して変位できるように該係合構造部本体に取り付けられている動力伝達部と、を備えていること、を特徴とする。
【0008】
本発明の一形態に係る開閉装置は、第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置であって、前記第2の部材に設けられている被係合構造部と、前記第1の部材に取り付けられている前記係合構造部と、を備えていること、を特徴とする。
【0009】
本発明の一形態に係る判定方法は、第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置において、該第2の部材に設けられている被係合構造部と、該第1の部材に取り付けられている前記係合構造部と、前記動力伝達部に対して前記第2の力を加える駆動手段と、前記動力伝達部の前記係合構造部本体に対する第2の変位量を検知する第2の検知手段と、を備えている扉体の開閉装置を用いて、該第1の部材と該第2の部材とを固定する際に不具合が発生したか否かを判定する判定方法であって、前記第2の変位量に基づいて、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に加えているときに不具合が発生したか否かを判定すること、を特徴とする。
【0010】
本発明の一形態に係る判定プログラムは、第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置において、該第2の部材に設けられている被係合構造部と、該第1の部材に取り付けられている前記係合構造部と、前記動力伝達部に対して前記第2の力を加える駆動手段と、前記動力伝達部の前記係合構造部本体に対する第2の変位量を検知する第2の検知手段と、を備えている扉体の開閉装置を用いて、該第1の部材と該第2の部材とを固定する際に不具合が発生したか否かを判定する判定プログラムであって、コンピュータに、前記第2の変位量に基づいて、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に前記第2の力を加えているときに不具合が発生したか否かを判定するステップを、実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、係合構造部に働く反力を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る扉体装置の開閉装置を示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係る扉体の開閉装置の構成図である。
【図3】係合構造部本体が被係合部に係合する様子を示した図である。
【図4】係合構造部本体が被係合部に係合する様子を示した図である。
【図5】制御部が行う動作を示したフローチャートである。
【図6】第1の変形例に係る係合構造部の構成図である。
【図7】第2の変形例に係る係合構造部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムについて図面を参照しながら説明する。
【0014】
(扉体の開閉装置の構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る扉体の開閉装置の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る扉体の開閉装置10を備えた扉体装置100を示した図である。図1(a)は、扉体装置100を側方から平面視した図であり、図1(b)は、扉体装置100の扉体102を上方から平面視した図である。図2は、本発明の実施形態に係る扉体の開閉装置10の構成図である。図2(a)は、扉体の開閉装置10を上方から平面視した図であり、図2(b)は、扉体の開閉装置10の断面構造図である。以下では、扉体102の高さ方向をz軸方向、扉体102の幅方向をx軸方向、及び、扉体102の奥行き方向をy軸方向と定義する。
【0015】
扉体装置100は、図1(a)に示すように、扉体102、本体104及びヒンジ106により構成されている。扉体102は、図1(b)に示すように、x軸方向の正方向側の端部において、ヒンジ106を介して、本体104に取り付けられている。これにより、扉体102は、ヒンジ106を中心として、xy平面内において回転運動することができる。
【0016】
扉体の開閉装置10は、扉体102を本体104に対して固定するための装置であり、図2(a)に示すように、被係合構造部12、係合構造部14、スイッチ26、制御部28、モータ34及び記憶部36を備えている。係合構造部14は、図1(a)及び図1(b)に示すように、扉体102のx軸方向の負方向側の端部に設けられている。被係合構造部12は、本体104において、扉体102が閉じられたときに、係合構造部14と対向する部分に設けられている。そして、係合構造部14は、扉体102が閉じられたときに、被係合構造部12に対して係合する。これにより、本体104に対して固定される。
【0017】
被係合構造部12は、図1(a)及び図1(b)に示すように、ベース部12a及び係合部12bにより構成されている。ベース部12aは、金属板であり、ねじ等により本体104に取り付けられている。係合部12bは、係合可能な切り欠きが形成され、例えば、U字型又はL字型をなす部材であり、両端がベース部12aに対して接合されている。なお、係合部12bは、図1(a)及び図1(b)ではU字型である。
【0018】
係合構造部14は、図2(a)に示すように、係合構造部本体16、動力伝達部18、シャフト23及び角度センサ24により構成されている。係合構造部本体16は、長方形状をなす金属板であり、その一辺がU字型に切り欠かれることにより形成された溝16aを有している。以下では、U字型の溝16aの内周面のうち、y軸方向の正方向側に位置する面を内周面16bと定義する。
【0019】
シャフト23は、図2(b)に示すように、z軸方向に延在しており、係合構造部本体16に対して固定されていると共に、扉体102に対してz軸周りに回転可能に取り付けられている。これにより、係合構造部本体16は、扉体102に対して、回転可能に取り付けられている。角度センサ24は、扉体102上に設けられており、シャフト23の回転角(すなわち、係合構造部本体16の扉体102に対する回転角)を検知する。角度センサ24は、例えば、可変抵抗器により構成される。この場合、係合構造部本体16の回転角に応じて、角度センサ24の抵抗値が変化する。角度センサ24には、図2(a)に示すように、一定の電圧が印加されているので、角度センサ24からは、係合構造部本体16の扉体102に対する回転角に応じた電流値が出力される。なお、係合構造部本体16の扉体102に対する回転角の定義については後述する。
【0020】
動力伝達部18は、図2(a)に示すように、動力伝達部本体20及びコイルばね(弾性部材)22により構成されており、外力を受けて、係合構造部本体16に対して変位できるように係合構造部本体16に取り付けられている。動力伝達部本体20は、棒状の部材であり、係合構造部本体16に対して回転可能に取り付けられている。より具体的には、動力伝達部本体20の一端は、係合構造部本体16に対してz軸周りに回転可能に取り付けられている。コイルばね22は、係合構造部本体16と動力伝達部本体20との間に設けられている。そして、コイルばね22は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、動力伝達部本体20が係合構造部本体16に対して反時計回りに回転させられた際に、圧縮される。すなわち、コイルばね22は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、動力伝達部本体20が係合構造部本体16に対して反時計回りに回転することを妨げる力を動力伝達部本体20に対して及ぼす。なお、以下では、z軸方向の正方向側から平面視したときにおける時計回り及び反時計回りを単に時計回り及び反時計回りと称す。
【0021】
スイッチ26は、係合構造部本体16において、動力伝達部本体20の近傍に設けられており、動力伝達部本体20の係合構造部本体16に対する変位量を検知する。具体的には、スイッチ26は、動力伝達部本体20が係合構造部本体16に対して反時計回りに回転することによって、コイルばね22が所定量だけ縮んだ場合に、OFF状態からON状態に切り替わる。
【0022】
モータ34は、動力伝達部本体20が反時計回りに回転する方向に動力伝達部本体20に対して力を加える動力源である。
【0023】
制御部28は、例えば、CPUにより構成され、扉体の開閉装置10の動作を制御する。具体的には、制御部28は、演算処理部30及びモータ制御部32を含んでいる。演算処理部30は、角度センサ24から出力される電流値に基づいて、係合構造部本体16の扉体102に対する回転角を算出する。モータ制御部32は、演算処理部30が算出した回転角に基づいて、モータ34の動作を制御する。なお、記憶部36は、所定の情報を記憶し、例えば、メモリにより構成されている。記憶部36が記憶している情報については、後述する。
【0024】
(扉体の開閉装置の動作)
以上のように構成された扉体の開閉装置10の動作について、以下に図面を参照しながら説明する。図3及び図4は、係合構造部本体16が係合部12bに係合する様子を示した図である。以下では、図1(b)に示すように、扉体102が開いている状態から閉じている状態とされる過程について説明する。
【0025】
扉体102が開いている状態であるときには、図3(a)に示すように、溝16aは、y軸方向の負方向に対してx軸方向の正方向側に約45度傾いた方向に開口している。以下では、この状態を未係合状態とし、係合構造部本体16の回転角θが0度であると定義する。
【0026】
図1(b)に示すように、扉体102が開いている状態から閉じている状態とされる際には、ユーザは、扉体102をy軸方向の正方向側に向かって押す。これにより、図3(a)に示すように、係合構造部本体16が係合部12bに対してy軸方向の正方向側から近づいてくる。なお、図3(a)の状態では、動力伝達部本体20には力が加わっていないので、コイルばね22は、自然長L0である。
【0027】
係合構造部本体16が係合部12bに更に近づくと、係合部12bは、図3(b)に示すように、係合構造部本体16の内周面16bにy軸方向の負方向側から接触する。この際、内周面16bは、係合部12bから力F1を受ける。係合構造部本体16は、力F1によって発生したモーメントにより、シャフト23を中心として反時計回りに回転させられる。なお、図3(b)の状態では、動力伝達部本体20には力が加わっていないので、コイルばね22は、自然長L0である。
【0028】
ここで、力F1が加わり続ける場合には、係合構造部本体16は、図2(a)に示すように、力F1により角度θ1だけ反時計回りに回転させられて、係合部12bに対して係合する。このとき、溝16aの開口は、y軸方向の負方向側に対して鈍角なす方向を向いている。これにより、係合部12bが係合構造部本体16の溝16aから容易に引き抜かれない状態となっている。以下では、図2(a)に示す状態を、係合状態と称す。
【0029】
一方、力F1が加わり続けない場合には、係合構造部本体16は、図3(c)に示すように、力F1により角度θ1よりも小さな角度θ2だけ反時計回りに回転させられて停止する。このとき、溝16aの開口は、x軸方向の正方向側を向いている。この状態では、係合部12bと係合構造部本体16との係合が十分ではないので、扉体102が完全に閉じた状態となっていない。以下では、図3(c)に示す状態を、半係合状態と称す。
【0030】
図3(c)に示すような半係合状態である場合(すなわち、力F1による係合構造部本体16の回転角θが角度θ1よりも小さい場合)には、制御部28は、図3(c)に示すように、動力伝達部本体20に対して力F2をモータ34に加えさせる。力F2は、動力伝達部本体20が係合構造部本体16に対して反時計回りに回転する方向の力である。動力伝達部本体20が力F2を受けると、動力伝達部本体20は、係合構造部本体16に対して反時計回りに回転する(すなわち、係合構造部本体16に対して変位する)。これにより、コイルばね22は、圧縮されて長さL1まで縮む。そして、係合構造部本体16は、動力伝達部本体20及びコイルばね22を介して力F2を受けて、図2に示す係合状態まで(すなわち、回転角θが角度θ1となるまで)反時計回りに回転する。ただし、コイルばね22が長さL1となっている状態では、スイッチ26はOFF状態のままである。
【0031】
ところで、図3(c)に示す半係合状態から図2に示す係合状態までモータ34の力F2により移行する途中において、扉体102と本体104との間に異物が挟み込まれて不具合が発生することがある(以下、挟み込みと称す)。挟み込み等の異常が発生した場合には、図4に示すように、係合構造部本体16に働く反力F3が増加する。反力F3は、係合構造部本体16が反時計回りに回転することを妨げる力であり、扉体102からシャフト23を介して係合構造部本体16へと伝達される。反力F3が増加すると、コイルばね22に加わる力F4も増加し、コイルばね22の長さが長さL1よりも短くなる。そして、図4に示すように、コイルばね22の長さが長さL2になると、スイッチ26がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、制御部28は、挟み込みや係合不良等の異常によって発生させられる所定の値以上の力が発生したことを検知する。すなわち、制御部28は、動力伝達部本体20の変位量に基づいて、モータ34が力F2を動力伝達部本体20に加えているときに異常が発生したか否かを判定する。そして、制御部28は、挟み込みや係合不良等の異常によって発生させられる所定の値以上の異常なトルクが発生した場合には、モータ34の駆動を停止する。
【0032】
(扉体の開閉装置の制御)
以上のように構成された扉体の開閉装置10の動作時に制御部28が行う動作を図面を参照しながら説明する。図5は、制御部28が行う動作を示したフローチャートである。以下に説明する動作は、記憶部36が以下の動作のプログラムを記憶しており、制御部28が該プログラムを読み込んで実行することにより実現される。
【0033】
本処理は、図1(b)に示すような開いている状態の扉体102をy軸方向の正方向側に向かってユーザが押すことにより開始される。これにより、扉体102は、y軸方向の正方向側に向かって移動する。制御部28は、扉体102が停止したか否かの判定を行う(ステップS1)。ステップS1では、制御部28は、扉体の開閉装置10が半係合状態であるか否かを判定している。ステップS1の判定は、角度センサ24が検知している回転角θが一定時間以上変化していないか否かを制御部28が判定することにより行われる。扉体102が停止していない場合には、本処理はステップS1に戻る。扉体102が停止した場合には、本処理はステップS2に進む。
【0034】
扉体102が停止した場合、制御部28は、回転角θが角度θ1(図2参照)に到達したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、制御部28は、扉体の開閉装置10が係合状態になったか否かを判定している。ステップS2では、演算処理部30は、角度センサ24から出力されてくる電流値に基づいて算出した回転角θが、記憶部36が記憶している角度θ1になったか否かを判定する。回転角θが角度θ1に到達していない場合には、本処理はステップS3に進む。回転角θが角度θ1に到達した場合には、本処理はステップS5に進む。
【0035】
回転角θが角度θ1に到達していない場合、制御部28は、扉体の開閉装置10が半係合状態であると判定する。次に、制御部28は、図3(c)に示すように、モータ34を駆動させて、力F2を動力伝達部本体20に対してモータ34に加えさせる(ステップS3)。これにより、モータ34の力F2により、係合構造部本体16が回転させられ、回転角θが増加し始める。
【0036】
次に、制御部28は、回転角θが角度θ1(図2参照)に到達したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部28は、扉体の開閉装置10が係合状態になったか否かを判定している。ステップS4では、演算処理部30は、角度センサ24から出力されてくる電流値に基づいて算出した回転角θが、記憶部36が記憶している角度θ1になったか否かを判定する。回転角θが角度θ1に到達した場合には、本処理はステップS5に進む。回転角θが角度θ1に到達していない場合には、本処理はステップS7に進む。
【0037】
前記ステップS5において、制御部28は、扉体の開閉装置10が係合状態となったと判断する(ステップS5)。そして、制御部28は、モータ34の駆動を停止する(ステップS6)。この後、本処理は終了する。
【0038】
回転角θが角度θ1に到達していない場合、制御部28は、スイッチ26がON状態となったか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7では、制御部28は、異常な回転トルクが発生したか否かを判定している。スイッチ26がON状態となっていない場合には、本処理はステップS4に戻る。スイッチ26がON状態となった場合には、本処理はステップS8に進む。
【0039】
スイッチ26がON状態となった場合には、制御部28は、図4に示すように、異常な回転トルクが発生したと判定する(ステップS8)。そして、制御部28は、モータ34の駆動を停止する(ステップS9)。この後、本処理は終了する。
【0040】
(効果)
以上のように構成された扉体の開閉装置10によれば、係合構造部本体16に働く反力F3を精度よく検知することができる。より詳細には、従来の扉体の開閉装置は、電動モータの駆動電流の大きさが所定値を超えた場合には、反力が所定の大きさよりも大きくなったと判定して、扉体による異常なトルクが発生したと判定している。扉体の開閉装置において、電動モータは、バッテリからの電力供給を受けて駆動する。ところが、使用状況によってバッテリが供給できる電圧の大きさは変動する。そのため、反力が所定の大きさよりも大きくなったとしても、電動モータの駆動電流の大きさが所定値を超えない場合がある。また、反力が所定の大きさよりも大きくなる前に、電動モータの駆動電流の大きさが所定値を超えてしまう場合もある。以上より、従来の扉体の開閉装置の構成では、反力の大きさを精度よく検知することが困難であった。
【0041】
一方、扉体の開閉装置10では、反力F3の検知を係合構造部本体16に設けられている動力伝達部本体20の動作により行っている。動力伝達部本体20は、係合構造部本体16に対して力F2により変位(反時計回りに回転)するように取り付けられている。更に、動力伝達部本体20の反時計回りの回転は、コイルばね22により規制されている。これにより、反力F3が大きくなると、コイルばね22に加わる力F4が増加し、動力伝達部本体20が反時計回りに回転してコイルばね22を縮めるようになる。すなわち、扉体の開閉装置10では、コイルばね22の縮みにより、反力F3の増加を検知している。コイルばね22の縮みは、コイルばね22のばね定数に依存している。コイルばね22のばね定数は、コイルばね22に固有の値であり、電動モータの駆動電流のように使用状況によって変動することがない。よって、扉体の開閉装置10では、係合構造部本体16に働く反力を精度よく検知することができる。
【0042】
また、扉体の開閉装置10では、前記の通り、係合構造部本体16に働く反力F3を精度よく検知することができる。そこで、扉体の開閉装置10では、係合構造部本体16の回転角θが角度θ1(図2に参照)に到達する前に、反力F3の増加が発生したか否かを検知することにより、挟み込みの発生を精度よく検知することが可能となる。
【0043】
また、扉体の開閉装置10では、動力伝達部本体20は、係合構造部本体16に対して回転可能に取り付けられている。そのため、動力伝達部本体20の回転により、反力F3の増加による挟み込みの発生を検知することが可能となる。よって、扉体の開閉装置10では、反力F3の増加による所定値以上の反力の発生を、視覚によっても検知することが可能となる。
【0044】
(変形例)
以下に、第1の変形例に係る係合構造部114について図面を参照しながら説明する。図6は、第1の変形例に係る係合構造部114の構成図である。
【0045】
係合構造部114では、コイルばねの代わりにねじりばね122が用いられている。ねじりばね122は、動力伝達部本体120の回転軸に取り付けられている。ねじりばね122の一端は、動力伝達部本体120に設けられている固定部120aにより、動力伝達部本体120に固定されている。ねじりばね122の他端は、係合構造部本体116に設けられている付勢部材116cに付勢している。これにより、ねじりばね122は、動力伝達部本体120が係合構造部本体16に対して反時計回りに回転することを妨げる力を動力伝達部本体120に対して及ぼしている。係合構造部114のその他の構成は、係合構造部14と同じであるので説明を省略する。
【0046】
係合構造部114では、ねじりばね122を用いることにより、ねじりばね122を係合構造部本体116と動力伝達部本体120との間に配置することが可能となる。その結果、係合構造部114の小型化が図られる。
【0047】
以下に、第2の変形例に係る係合構造部214について図面を参照しながら説明する。図7は、第2の変形例に係る係合構造部214の構成図である。
【0048】
係合構造部214では、コイルばね22の代わりに板ばね220が用いられている。モータ34は、板ばね220に対して力F2を加える。よって、板ばね220は、弾性部材として機能していると共に、動力伝達部本体としても機能している。
【0049】
なお、コイルばね22は、予め所定の長さまで縮められた状態で保持されていてもよい。これにより、コイルばね22は、所定の大きさ以上の力F4を受けたときのみ縮む(変形する)ようになる。所定の大きさ以上の力F4は、モータ34が力F2を動力伝達部本体20に対して加えているとき(すなわち、半係合状態から係合状態へと移行するとき)に、挟み込みが発生した場合に生じる力である。以上の構成によれば、制御部28は、コイルばね22が縮んだことをスイッチ26により検知して、挟み込みが発生したことを検知できる。なお、ねじりばね122を予め所定量だけねじった状態で保持しておいてもよいし、板ばね220を予め所定量だけ曲げた状態で保持しておいてもよい。
【0050】
なお、角度センサ24の代わりの検知手段として、スイッチ等のセンサを用いてもよい。スイッチ等のセンサは、係合構造部本体16の回転によって生じる係合構造部本体16の扉102に対する変位量を検知する。そして、制御部28は、スイッチ等のセンサが検知した変位量が角度θ1に相当する変位量より小さい場合には、モータ34に力F2を動力伝達部本体20に対して加えさせる。
【0051】
なお、扉体装置100は、本体104と該本体104に回転可能に取り付けられた扉102とをからなるものとしているが、扉体装置100の構造はこれに限らない。扉体装置100の構造は、扉102が本体104に対してスライド(平行移動)することによって開閉する引き戸構造であってもよい。
【0052】
なお、図5のステップS4において、制御部28は、角度センサ24が検知している回転角θが角度θ1(図2参照)に到達したか否かを判定して、扉体の開閉装置10が係合状態となったか否かを判定している。しかしながら、扉体の開閉装置10が係合状態となったか否かの判定方法はこれに限らない。制御部28は、角度センサ24の代わりに、スイッチにより係合構造部本体16の変位量を検知することによって、扉体の開閉装置10が係合状態となったか否かを検知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、係合構造部、扉体の開閉装置、判定方法及び判定プログラムに有用であり、特に、係合構造部に働く反力を精度よく検知することができる点において優れている。
【符号の説明】
【0054】
10 扉体の開閉装置
12 被係合構造部
14,114,214 係合構造部
16,116 係合構造部本体
16a 溝
16b 内周面
18 動力伝達部
20,120 動力伝達部本体
22 コイルばね
23 シャフト
24 角度センサ
26 スイッチ
28 制御部
30 演算処理部
32 モータ制御部
34 モータ
36 記憶部
100 扉体装置
102 扉体
104 本体
106 ヒンジ
122 ねじりばね
220 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置の係合構造部であって、
前記第1の部材に対して回転可能に取り付けられている係合構造部本体であって、前記第1の部材と前記第2の部材とが開閉される場合に該第2の部材に設けられる被係合構造部材から受ける第1の力により該第1の部材に対して所定角度だけ回転させられて、該被係合構造部材に対して係合する係合構造部本体と、
前記第1の力による前記係合構造部本体の前記第1の部材に対する回転角が前記所定角度よりも小さい場合に、駆動手段から第2の力を受けて、該回転角が該所定角度となるまで該係合構造部本体を回転させて前記被係合構造部に対して係合させる動力伝達部であって、該第2の力を受けて該係合構造部本体に対して変位できるように該係合構造部本体に取り付けられている動力伝達部と、
を備えていること、
を特徴とする係合構造部。
【請求項2】
前記動力伝達部は、
弾性部材を、
含んでいること、
を特徴とする請求項1に記載の係合構造部。
【請求項3】
前記弾性部材は、所定の大きさ以上の力を受けたときにのみ変形すること、
を特徴とする請求項2に記載の係合構造部。
【請求項4】
前記動力伝達部は、
前記係合構造部本体に対して回転可能に取り付けられている動力伝達部本体を、
更に備え、
前記弾性部材は、前記動力伝達部本体が回転することを妨げる力を及ぼすこと、
を特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の係合構造部。
【請求項5】
前記弾性部材は、コイルばね又はねじりばねであること、
を特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の係合構造部。
【請求項6】
前記動力伝達部は、板ばねであること、
を特徴とする請求項1に記載の係合構造部。
【請求項7】
第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置であって、
前記第2の部材に設けられている被係合構造部と、
前記第1の部材に取り付けられている請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の係合構造部と、
を備えていること、
を特徴とする扉体の開閉装置。
【請求項8】
前記扉体の開閉装置は、
前記動力伝達部に対して前記第2の力を加える駆動手段を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項7に記載の扉体の開閉装置。
【請求項9】
前記扉体の開閉装置は、
前記係合構造部本体の回転によって生じる該係合構造部本体の前記第1の部材に対する第1の変位量を検知する第1の検知手段と、
前記第1の検知手段が検知した前記第1の変位量が前記所定角度に相当する前記第1の変位量より小さい値で変化を停止した場合には、前記駆動手段に前記第2の力を前記動力伝達部に加えさせる制御手段と、
を更に備えていること、
を特徴とする請求項8に記載の扉体の開閉装置。
【請求項10】
前記扉体の開閉装置は、
前記動力伝達部の前記係合構造部本体に対する第2の変位量を検知する第2の検知手段を、
更に備えており、
前記制御手段は、前記第2の変位量に基づいて、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に加えているときに不具合が発生したか否かを判定すること、
を特徴とする請求項9に記載の扉体の開閉装置。
【請求項11】
前記制御手段は、不具合が発生したと判定した場合には、前記駆動手段の駆動を停止すること、
を特徴とする請求項10に記載の扉体の開閉装置。
【請求項12】
前記第1の検知手段は、前記係合構造部本体の前記第1の部材に対する回転角を前記第1の変位量として検知すること、
を特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の扉体の開閉装置。
【請求項13】
前記動力伝達部は、
所定の大きさ以上の力を受けたときにのみ変形する弾性部材を、
含んでおり、
前記所定の大きさ以上の力は、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に加えているときに、不具合が発生した場合に生じること、
を特徴とする請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の扉体の開閉装置。
【請求項14】
第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置において、該第2の部材に設けられている被係合構造部と、該第1の部材に取り付けられている請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の係合構造部と、前記動力伝達部に対して前記第2の力を加える駆動手段と、前記動力伝達部の前記係合構造部本体に対する第2の変位量を検知する第2の検知手段と、を備えている扉体の開閉装置を用いて、該第1の部材と該第2の部材とを固定する際に不具合が発生したか否かを判定する判定方法であって、
前記第2の変位量に基づいて、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に加えているときに不具合が発生したか否かを判定すること、
を特徴とする判定方法。
【請求項15】
第1の部材と第2の部材とを固定するために用いられる扉体の開閉装置において、該第2の部材に設けられている被係合構造部と、該第1の部材に取り付けられている請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の係合構造部と、前記動力伝達部に対して前記第2の力を加える駆動手段と、前記動力伝達部の前記係合構造部本体に対する第2の変位量を検知する第2の検知手段と、を備えている扉体の開閉装置を用いて、該第1の部材と該第2の部材とを固定する際に不具合が発生したか否かを判定する判定プログラムであって、
コンピュータに、
前記第2の変位量に基づいて、前記駆動手段が前記第2の力を前記動力伝達部に前記第2の力を加えているときに不具合が発生したか否かを判定するステップを、
実行させるための判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−184982(P2011−184982A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52941(P2010−52941)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】