説明

保持器を備えた有限直動案内ユニット

【課題】本願発明は,保持板自体にローラ保持機能を持たせ,製造時や組立時の部品の取り扱いを容易にし,ローラ間の配設ピッチを極力小さくしてローラ本数を増やして高負荷容量に構成した。
【解決手段】保持板4には,長手方向に沿って複数のローラ保持窓孔20が形成され,ローラ保持窓孔20が保持板4の幅方向に長軸を持つ形状に形成され,ローラ保持窓孔20の長軸端部29には,ローラ10の両端面19をそれぞれ保持するため,互いに対向した弾性変形可能な楔状のエッジ21から成る端面支持部25がそれぞれ突出形成されている。エッジ21は,ローラ端面19に接してローラ10を支持する楔状の支持傾斜面22に形成され,支持傾斜面22が互いに対称的に対向して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,一対の軌道台が長手方向に沿って軌道台間に配設された保持器に保持された転動体であるローラを介して予め決められた所定距離を互いに相対摺動する有限直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,有限直動案内ユニットは,互いに相対摺動する一対の軌道台を備えており,軌道台間に配設された保持器によって転動体である複数のローラが所定間隔に保持されており,保持器を構成する保持板は相対移動する軌道台のストローク長さに対して半分のストローク長さで相対移動するように構成されている。しかしながら,有限直動案内ユニットにかかる負荷変動,軌道台に形成された軌道溝の加工精度,立て軸仕様,高速高加減速等の条件により,保持器と軌道台との所定の相対位置が僅かずつ位置ずれが生じていた。そこで,有限直動案内ユニットは,保持器の位置ずれを防止するために種々の保持器のずれ防止機構が設けられている。従来の保持器のずれ防止機構は,保持器にピニオンを設け,軌道台の軌道溝にそれぞれにラックを設けて,ラックとピニオンとを噛み合わせることで相対位置が矯正されて保持器のずれを防止するラック&ピニオン機構で構成されている。
【0003】
本出願人は,有限直動案内ユニットとして,ラック・ピニオン機構によって保持器のずれや脱落を防止するものを先に開発して特許出願した。該有限直動案内ユニットは,高負荷条件に対応するために,保持器において転動体のローラ間の配設ピッチを極力小さくして所定長さに対するローラ本数を増やして構成されており,軌道台においてV字状の軌道溝の深さを深くしてローラに対して軌道面の接触幅,即ち有効軌道面幅を大きくして高負荷容量に構成されている。上記有限直動案内ユニットは,高加減速運動に対応するために,ピニオンギアとピニオンギアホルダーの組立体が保持器に装着され,軌道台のそれぞれに設けたラックギアとピニオンギアが噛み合うことで軌道台と保持器の相対位置が矯正される構造で,高加減速運動に対応していた。ラックは,ピニオンが噛み合うための予め決められた間隔に隔置して設けられた歯部,及び歯部の両側面で長手方向に連続して延び且つ少なくとも隣接する歯部を互いに連結する側壁部から形成されている。ラックの側壁部は,末広がり形状の肉厚に形成され,軌道台における軌道溝に形成された逃げ溝の末広がり形状の壁面に係止し,ラックを軌道台の逃げ溝内に固定している(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,本出願人は,有限直動案内ユニットとして,ラック&ピニオン構造におけるピニオンのホルダを,一対のホルダ部材をスナップフィット結合で固定する構造として,ホルダの小型化によって大きな形番にも対応できる構造に構成したものを先に開発して特許出願した。該有限直動案内ユニットにおいて,ずれ防止機構は,保持器に取り付けられたホルダ,軌道台の壁面に設けられたラック,及びラックに噛み合う歯部を備え且つホルダに回転自在に装着されたピニオンを有する。ホルダは,嵌着孔の領域で保持器の一側面に位置するホルダ部材と他側面に位置するホルダ部材から成る。ホルダは,ホルダ部材の袖部によって嵌着孔の保持板の縁面を両側から狭着して保持器に固設されている(例えば,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3950683号公報
【特許文献2】特開2007−232061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,特許文献2に開示されている有限直動案内ユニットは,転動体であるローラの保持器の保持構造は,保持板の二面幅よりも幅広のスペースを必要とする保持爪でローラ端面を支持し,ローラを保持する構造になっていた。その結果,ローラに対して軌道面の接触幅,即ち有効軌道面幅を大きくして高負荷容量化するのが難しい構成になっていた。また,軌道溝の深さを深くして,ローラに対して軌道面の接触幅を大きくするために,保持板の厚みは極力薄くして,保持板に設けられたローラを配置する窓部にはローラを保持する構造が無く,有限直動案内ユニットの組立時には,保持器からローラが脱落する構造になっていて部品の取り扱いが難しかった。
【0007】
ところで,近年,有限直動案内ユニットは,より高負荷であり,より高加減速運動の使用環境にも対応可能なものが求められている。しかしながら,有限直動案内ユニットにおいて,例えば,図18に示すように,保持器45を構成する保持板46に形成されているローラ保持窓孔47は,楕円形状に形成されており,ローラ保持窓孔47にはローラを保持するための爪部等が設けられていないので,保持板46自体ではローラを保持できない形状に構成されている。
【0008】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,安価な構造のラック&ピニオン機構でなる保持器のずれ防止機構を備えて高加減速運動に適用できる先に特許出願した特願2009−84743号に開示した有限直動案内ユニットにおける保持器を構成する保持板に適用して好ましいものであり,保持板自体にローラ保持機能を持たせ,製造時や組立時の部品の取り扱いを容易にするものであり,ローラ保持方式ではローラと軌道台の軌道面とが接触する有効軌道面幅を大きく出来なかった従来商品に対して,ローラ間の配設ピッチを極力小さくして保持板の所定長さに対するローラ本数を増やし,ローラと軌道台の軌道面とが接触する有効軌道面幅を極力大きくして高負荷容量に構成して,より高負荷容量を有する構造に構成すると共に,保持板にローラを保持するエッジから成る新たな端面支持部を形成して保持板自体にローラを保持する機能を持たせ,部品単体の取扱上の利便性を向上させたことを特徴とする有限直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,互いに対向する長手方向の壁面に軌道溝がそれぞれ形成された相対移動する一対の軌道台,前記軌道台の前記軌道溝間に形成された軌道路に配設され且つ前記軌道溝に形成された軌道面を転動する複数の転動体であるローラ,及び前記ローラを予め決められた所定間隔で交互に傾きを変えて支持する長手方向に延びた平らな保持板でなる保持器から構成されている有限直動案内ユニットにおいて,
前記保持器の前記保持板には,長手方向に沿って前記ローラが配設され且つ前記保持板の幅方向に長軸を持つ形状の複数のローラ保持窓孔が形成されており, 前記ローラ保持窓孔の前記長軸の両長軸端部には,前記ローラの両ローラ端面をそれぞれ保持するため,互いに対向した弾性変形可能な楔状のエッジから成る端面支持部がそれぞれ突出形成されており,
前記端面支持部の前記エッジは,前記ローラ端面に接して前記ローラを支持する楔状の支持傾斜面に形成されており,
前記長軸端部における前記支持傾斜面は,互いに対称的に対向して形成されていることを特徴とする保持器を備えた有限直動案内ユニットに関する。
【0010】
また,この有限直動案内ユニットにおいて,前記ローラ保持窓孔に前記端面支持部で係止された前記ローラは,隣接する前記ローラ保持窓孔ごとに前記ローラの転動軸が交互に90°異なって傾斜して配設されている。
【0011】
この有限直動案内ユニットにおいて,前記端面支持部は,前記ローラ保持窓孔における前記保持板の板厚内において該板厚より小さい厚さであって前記長軸端部から前記ローラ保持窓孔の中心に向ってそれぞれ突出して形成され,前記保持板の残りの前記板厚の領域内の前記長軸端部には潤滑剤を保持可能な凹部に形成されている。
【0012】
この有限直動案内ユニットにおいて,前記ローラ保持窓孔への前記ローラの組み込みは,一方の前記端面支持部の前記エッジの前記支持傾斜面に前記ローラの一端側の前記ローラ端面を当接させた状態で,他方の前記端面支持部の前記エッジの背面に他端側のローラ転動面を押し当てて前記ローラを回転させ,前記ローラ転動面が前記エッジを弾性変形させて前記エッジを乗り越え,両端の前記ローラ端面が前記端面支持部にそれぞれ係止して前記ローラが前記ローラ保持窓孔に組み込まれている。
【0013】
また,この有限直動案内ユニットにおいて,前記保持器が前記軌道台との予め決められた所定の相対位置からずれるのを防止する保持器ずれ防止機構は,前記保持板の長手方向の中央に形成された嵌着孔に嵌着したホルダに回転自在に配設されたピニオンと,前記ピニオンに噛み合い且つ前記軌道台に形成された軌道溝の前記長手方向に沿ってそれぞれ配設されたラックとから成るラック&ピニオン機構によって構成されている。
【0014】
この有限直動案内ユニットにおいて,前記端面支持部に形成された前記エッジの前記支持傾斜面は,前記保持板に対して45°傾いた姿勢で組み込まれた前記ローラ端面に接する平面に形成され,前記ローラ保持窓孔の対向する前記長軸端部において互いに向かい合うように形成されている。
【0015】
また,この有限直動案内ユニットにおいて,前記ローラ保持窓孔の位置における前記保持板の断面形状における前記ローラ保持窓孔の壁面は,前記保持板の主面に対して直角を成す平面,又は所定の角度だけ傾いた傾斜面を成している。
【0016】
この有限直動案内ユニットにおいて,前記ローラ保持窓孔の形状は,前記保持板の幅方向に長軸を持ち且つ長手方向に短軸を持つ楕円形状,又は前記保持板の幅方向に長軸を持って長手方向に短軸を持ち且つ前記保持板の幅方向の中央位置に互いに対向して平行に延びる直線部分を持つ多角形形状に形成されている。
【0017】
この有限直動案内ユニットにおいて,前記ローラ保持窓孔は,前記保持板の幅方向中央部分がローラ径が挿通できるサイズの直線部分に形成され,前記直線部分から前記長軸端部に向って前記ローラ保持窓孔の壁面間が短くなった縁部に形成され,前記端面支持部で係止された前記ローラが前記縁部によって前記ローラ保持窓孔から脱落しないように支持している。
【発明の効果】
【0018】
この有限直動案内ユニットは,上記のように,高負荷条件に適用するために,軌道台間に配設された保持器の保持板に長手方向に可及的に近接してローラ保持窓孔を多数形成し,ローラ間の配設ピッチを極力小さくして所定長さに対するローラの個数を増大させると共に,軌道台に形成されたV字状の軌道溝の深さを深くして,ローラに対して軌道面の接触幅である有効軌道面幅を大きく形成して高負荷容量に対応できるように構成すると共に,薄型の保持板の板厚の範囲内で,長軸端部に対向した突出する弾性変形可能な単純なエッジによってローラ保持機能を持たせた端面支持部を形成し,エッジによってローラの保持板への配設着脱を容易にして保持板の組立時の取り扱いを容易にしつつ,単純な構造でコンパクトで安価な形状に構成され,半導体製造装置,精密測定機,検査機,組立機,各種ロボット等の各種装置に使用して好ましく,また,保持板の嵌着孔に嵌着されたホルダーにピニオンを設け,ピニオンの噛み合うラックを軌道台の軌道溝に設けて,ラック・ピニオン機構によって保持器のずれを防止して高加減速運動に対応できるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明による有限直動案内ユニットの一実施例を示す一部破断した断面部分を含む斜視図である。
【図2】図1の有限直動案内ユニットにおける保持器を構成する保持板に形成されたローラ保持窓孔にローラが配設された状態を示す斜視図である。
【図3】図1の有限直動案内ユニットにおける保持器を構成する保持板の一実施例を示す平面図である。
【図4】図3に示す保持板に形成されたローラ保持窓孔における窓孔中心点を通る保持器長手方向に直交する平面で切断したX−X断面を示す断面図である。
【図5】図3に示す保持板に形成されたローラ保持窓孔における窓孔中心点を通る保持器長手方向に直交する平面で切断したY−Y断面を示す断面図である。
【図6】図3に示す保持板に形成されたローラ保持窓孔におけるZ−Z断面を示す断面図である。
【図7】保持板に形成されたローラ保持窓孔にローラが組み込まれた状態を示し,図2とはローラの傾斜方向が逆の状態を示す斜視図である。
【図8】保持板に形成されたローラ保持窓孔にローラが組み込まれる工程を説明するため保持板のローラ保持窓孔の断面図において説明する説明図である。
【図9】保持板に形成されたローラ保持窓孔にローラが組み込まれた状態を示す断面図である。
【図10】保持板に形成されたローラ保持窓孔にローラが組み込まれた状態を示す平面図である。
【図11】図10のローラ保持窓孔の中心位置を通る平面であるA−A断面位置における断面図であって,保持板の端面支持部が一方の主面側に向いたローラ端面に接触する向きの形状であり,ローラが保持板の一方の主面側から他方の主面側方向に抜けないように支えている状態を示す説明図である。
【図12】ローラ端面を支持する端面支持部と対の位置関係にある端面支持部側でローラ外形の円筒部分を支える位置B−B断面における保持板とローラとの関係を示す断面図である。
【図13】保持板に形成されたローラ保持窓孔の中心位置におけるローラ保持窓孔の断面形状の一例を示す断面図である。
【図14】保持板に形成されたローラ保持窓孔の中心位置におけるローラ保持窓孔の断面形状の別の例を示し,図13のD−D断面を示す断面図である。
【図15】保持板に形成されたローラ保持窓孔の中心位置におけるローラ保持窓孔の断面形状の更に別の例を示し,図13のD−D断面を示す断面図である。
【図16】図1の有限直動案内ユニットにおける保持器を構成する保持板の別の実施例を示し,楕円形状以外の形状を示し,ローラ端面を支える端面支持部とローラ外形の二箇所を窓孔の縁部分で支える状態を示す平面図である。
【図17】図16の保持板のC−C断面を示す断面図である。
【図18】従来の保持器を構成する保持板に形成されたローラ保持窓孔を示し,該ローラ保持窓孔には端面支持部を有していない例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,図面を参照して,この発明による保持器を備えた有限直動案内ユニットの実施例を説明する。この発明による有限直動案内ユニットは,概して,図1に示すように,一対の長尺状でなる軌道台1,2が転動体である複数のローラ10を介して予め決められた所定距離を互いに相対摺動するものであり,軌道台1,2間に形成された軌道路34を転動する隣接する各ローラ10を予め決められた所定間隔に保持する保持板4でなる保持器3を備えている。また,この有限直動案内ユニットは,軌道台1,2が相対摺動する毎に保持器3がずれるのを防止するため,ずれ防止機構を備えており,ずれ防止機構は,保持板4の中央に形成された嵌着孔17に嵌入されたホルダ6にピニオン7を取り付けられたピニオン&ホルダ組立体5と,軌道台1,2のそれぞれに長手方向に延びて形成された軌道溝26に固定されたラック8,9とから構成され,ラック8,9とピニオン7とを噛み合わせることによって保持器3が予め決められた所定位置の相対位置からのずれが矯正されてずれが防止されるラック・ピニオン機構から構成されている。
【0021】
この有限直動案内ユニットにおいて,軌道台1,2は,断面略矩形状に形成されており,対向面の壁面27にその長手方向に沿ってV字状の軌道溝26が形成され,軌道溝27が一対の軌道面11,12で形成されており,それらの軌道面11,12間に逃げ溝36が設けられ,逃げ溝36の奥である底部に長手方向に沿ってラック8,9が装着されている。ローラ10は,長手方向に延びる転動軸を中心に転動する転動面18と,転動面18の両端のローラ端面19とから成る形状に形成されている。V字状の軌道溝26に形成された上下の軌道面11,12は,ローラ10の転動軸の傾きに対応して軌道台1,2の壁面に対して45°に傾斜し,上下の軌道面11,12は互いに90°の角度になるように構成されている。軌道台1,2間には,転動体である複数のローラ10をそれぞれ予め決められた所定間隔に保持する平らな保持板4からなる保持器3が配設されている。保持器3を構成する保持板4の中央位置には,例えば,平らな板状のホルダ6が嵌着する嵌着孔17が形成されている。ホルダ6には,回転軸が長手方向に直交する状態に収納され且つ回転自在に支持されたピニオン7が配設されている。ピニオン7は,一対のラック8,9と噛み合っている。ピニオン7を中心に保持板4の両側には,ローラ10が,保持板4の平らな板状平面である主面24に対して45°傾斜して隣り合うローラ10の軸心が交互に交差して配設されている。
【0022】
ラック8,9は,例えば,本出願人に係る特許第3950683号公報に開示されたものを適用することができ,はしご状の構造を有しており,軌道台1,2の逃げ溝36の底部に,逃げ溝36の溝幅よりも幅広に形成された嵌挿溝に装着されている。軌道台1,2の両端部にそれぞれ取り付けられた端部ねじ16は,軌道台1,2に形成された軌道溝27を覆う状態に配設され,ストローク規制,保持器3の飛ぴ出し規制等を行うため,ストッパとして機能している。また,軌道台1,2には,軌道溝26が形成された壁面27と直交する壁面37,38に,予め決められた所定間隔でベース又はテーブル(図示せず)にボルト(図示せず)で取り付けるために,取付け用孔13が形成されている。取付け用孔13は,ボルトの頭が隠れるようにザグリ穴に形成され,また,ベース側又はテーブル側からもボルトが螺着できるように取付けねじ孔14に形成されている。
【0023】
次に,図2〜図15を参照して,この発明による有限直動案内ユニットについての一実施例の特徴とする構成について説明する。本願発明は,上記の従来例の高負荷で高加減速運動の使用環境に適用しつつ,保持器3がローラ10を保持できることによって,商品の組立性を向上させるために開発されたものであり,特に,保持板4に形成したローラ保持窓孔20にローラ10を係止する構成に特徴を有している。この有限直動案内ユニットでは,保持器3は,軌道台1,2の間の小さなスペースにおいて,簡単なエッジ21でローラ10を保持できるように構成されており,部品点数が少なく,シンプルな構造でコンパクト及び安価に構成することに特徴を有している。この実施例では,ローラ保持窓孔20の形状は,保持板4の幅方向に長軸を持ち,長手方向に短軸を持つ楕円形状に形成されている。この有限直動案内ユニットは,特に,保持器3を構成する平らな板状の保持板4の構成に特徴を有しており,保持板4に係止するローラ保持窓孔20の対向する長軸端部29に設けた端面支持部25を備えていることを特徴としている。この有限直動案内ユニットについては,特に,第1に,保持板4の長軸端部29に形成された端面支持部25は,保持板4の板幅である二面幅の範囲内に収まる大きさに形成されており,板幅よりはみ出すサイズではなく,第2に,保持器3のローラ保持構造を構成する端面支持部25は,保持板4のローラ保持窓孔20にローラ10を挿入して1つの窓孔20あたり,長軸端部29の対向する位置に突出して2箇所形成された形状に構成されていることを特徴としている。
【0024】
この有限直動案内ユニットは,保持器3の保持板4には,長手方向に沿ってローラ10が配設される複数のローラ保持窓孔20が形成され,ローラ保持窓孔20が保持板4の幅方向に長軸を持ち且つ長手方向に短軸を持つ形状に形成されている。ローラ保持窓孔20の長軸端部29には,特に,ローラ10の両端面19をそれぞれ保持するため,互いに対向した弾性変形可能な楔状のエッジ21から成る端面支持部25がそれぞれ突出形成されており,端面支持部25のエッジ21は,ローラ10のローラ端面19に接してローラ10を支持する楔状の支持傾斜面22に形成され,長軸端部29の支持傾斜面22が互いに対称的に対向して形成されていることを特徴としている。保持板4の長軸端部29からローラ保持窓孔20の中心へ延びる端面支持部25のエッジ21は,保持板4の板厚の範囲内であって板厚からはみ出すことはなく,保持板4の板厚の中心側に45°に傾いた支持傾斜面22が形成され,背面35側は保持板4の主面24と同一面に形成されている。エッジ21は,その背面35側からローラ10の端面19で押圧すれば,先端が細くなっているので,弾性変形する状態になっており,ローラ10の端面19がエッジ21の先端部を乗り越えることができるように構成されている。
【0025】
この有限直動案内ユニットは,保持器3の保持板4が薄型に形成され,保持板4の長手方向の中央にずれ防止機構を構成するピニオン&ホルダ組立体5を配設する嵌着孔17が形成され,保持板4には,嵌着孔17からそれぞれ長手方向に沿って各ローラ10を予め決められた所定間隔に配設するための楕円形のローラ保持窓孔20が形成されている。ローラ保持窓孔20の形状は,保持対象のローラ10の直径よりも僅かに大きい形状に形成されている。ローラ保持窓孔20に配設されるローラ10は,隣接するローラ保持窓孔20ごとに,ローラ10の転動軸が交互に90°異なって傾斜しているものである。更に,端面支持部25は,ローラ保持窓孔20における保持板4の板厚内において該板厚より小さい厚さであって長軸端部29からローラ保持窓孔20の中心に向ってそれぞれ突出して形成され,また,保持板4の残りの板厚の領域内の長軸端部29には,潤滑剤を保持可能な溜まり部として機能する凹部23に形成されている。この実施例では,端面支持部25は,ローラ保持窓孔20における保持板4の板厚の略中心位置までの半分即ち1/2の板厚の領域内であって長軸端部29からローラ保持窓孔20の中心へ突出して形成され,また,残りの半分即ち1/2の板厚の領域内の長軸端部29には潤滑剤を保持可能な凹部23に形成されている。
【0026】
また,この有限直動案内ユニットについては,図8及び図9に示すように,ローラ保持窓孔20へのローラ10の組み込みは,一方の端面支持部25のエッジ21の支持傾斜面22にローラ10の一端側のローラ端面19を当接させた状態で,他方の端面支持部25のエッジ21の背面に他端側のローラ転動面18を押し当ててローラ10を回転させ,それによって,ローラ転動面18がエッジ21を弾性変形させてエッジ21を乗り越えさせ,両端のローラ端面19を端面支持部25にそれぞれ係止させ,ローラ10をローラ保持窓孔20に組みこむことができる。また,この有限直動案内ユニットでは,端面支持部25は,保持板4の板厚の略半分即ち1/2の量だけ長軸方向に上下にオフセットした形状の楕円に近い形状であり,ローラ保持窓孔20の中心位置から長軸方向の上下に保持板4の板厚の半分の範囲内で形成されており,端面支持部25は,保持板4に対して45°傾いた姿勢で組み込まれるローラ10の端面19と平行になる平面,従って,エッジ21の支持傾斜面22は,保持板4の主面24に対して45°傾斜して形成されている。端面支持部25は,1つのローラ保持窓孔20あたりローラ端面19を支える側に形成され,楕円形の長軸両側に形成されて,ローラ10を支持する面である支持傾斜面22が互いに向かい合うように形成されている。
【0027】
この有限直動案内ユニットにおいて,端面支持部25に形成されたエッジ21の支持傾斜面22は,保持板4に対して45°傾いた姿勢で組み込まれるローラ端面19と平行に接する平面に形成され,ローラ保持窓孔20の対向する長軸端部29において互いに向かい合うように形成されている。図10には,保持板4に形成されたローラ保持窓孔20にローラ10が組み込まれた状態を示している。図11には,ローラ保持窓孔20の中心位置を通る平面である図10のA−A断面位置における断面図が示されており,保持器3の端面支持部25は,保持板4の一方の主面24側に向いたローラ端面19に接触する向きの傾斜した形状であり,ローラ10が保持板4の反対側の主面24側から一方の主面24側の方向に抜けないように支えている状態が示されている。また,図12には,ローラ端面19を支持する端面支持部25の一端と対の位置関係にある他端側でローラ外形の円筒部分を支える位置であるB−B断面における保持板4とローラ10の関係が示されている。図12は,図11のB−B断面位置では,ローラの外形最大幅寸法に対してローラ保持窓孔20の幅寸法が狭く,ローラ10が保持板4の一方の主面24側から他方の主面24側に抜けない形状になっている状態を示している。また,ローラ保持窓孔20の位置における保持板4の断面形状におけるローラ保持窓孔20の側壁は,保持板4の主面24に対して,また,図13のD−D断面を示す図14に示すように,保持板4の主面24と直角を成す平面39の縁部15,又は図13のD−D断面を示す図15に示すように,保持板4の主面24と所定の角度だけ傾いた傾斜面40の縁部15を成しているものである。
【0028】
この有限直動案内ユニットにおいて,図10〜図12に示すように,ローラ保持窓孔20は,保持板4の幅方向中央部分がローラ径が挿通できるサイズの直線部分28に形成され,直線部分28から長軸端部29に向ってローラ保持窓孔20の壁面間が短くなった楕円曲線の縁部15に形成され,端面支持部25で係止されたローラ10の転動面18が縁部15に当たって,ローラ10がローラ保持窓孔20から脱落しないように保持している。ローラ保持窓孔20において,直線部分28が対向した領域では,直線部分28間がローラ10の直径より長く形成されてローラ10がローラ保持窓孔20を挿通できる状態になっている。例えば,ローラ10がローラ直径と転動面の長さが同一であり,ローラ直径をDとしたときに,ローラ10の対角線の長さがD×√2になる。ローラ保持窓孔20の長軸端部29から1/4の位置までの縁部15の長さは〔D×√2〕/4=D/2√2になり,そこから更にD/2√2の位置までがローラ保持窓孔20の楕円形の中心の位置となり,ローラ保持窓孔20の中心位置では,ローラ保持窓孔20の壁面は直線部分28となって,対向する直線部分28間の長さは,ローラ10の直径より僅かに大きいサイズに形成されている。そこで,保持器3に組み込まれたローラ形状を保持板4に投影したときの形状の幅がローラ直径Dと等しくなる位置として,ローラ保持窓孔20の楕円形の中心から長軸端部29方向にD/2√2だけ延びた位置,その位置から端面支持部25までの楕円曲線の縁部15において,ローラ保持窓孔20の幅寸法はローラ10の幅寸法よりも小さく,ローラ10が脱落しないように,ローラ保持窓孔20の縁部15でローラ転動面18を支持できるように構成できる。
【0029】
次に,図16及び図17を参照して,この有限直動案内ユニットの別の実施例を説明する。この実施例では,ローラ保持窓孔30の形状は,保持板4の幅方向に長軸を持ち,長手方向に短軸を持つ,更に,保持板4の幅方向の中央位置に互いに平行に対向して延びる直線部分43を持つ多角形形状に形成されている。即ち,ローラ保持窓孔30の形状は,上記範囲の楕円曲線をその楕円に接する接線に置き換えた中央位置での直線部分43と,直線部分43から長軸端部42へ延びる縁部の漸次縮小直線部分44と,長軸端部42の端面支持部41とから形成されている。端面支持部41は,長軸端部42から中心部へ延びるエッジ31から成り,エッジ31は,ローラ端面19を当接支持する支持傾斜面32に形成されている。この実施例では,ローラ保持窓孔30にローラ10が配設された状態では,ローラ10の端面19は,端面支持部41の支持傾斜面32に接した状態になって端面支持部41のエッジ31に係止した状態になり,その上で,支持傾斜面32がエッジ状に細くなっているので,保持板4の板厚との間に凹部33が形成され,それによって凹部33が潤滑剤の溜まり部として機能することになる。端面支持部41のエッジ31で構成される多角形の形状でもローラ10を保持することができる。この実施例では,ローラ保持窓孔30の形状がローラ保持窓孔20の形状と相違するが,機能は同一機能を達成できる。即ち,ローラ保持窓孔30において,直線部分43が対向した領域では,直線部分43間がローラ10の直径より長く形成されてローラ10がローラ保持窓孔30を挿通できる状態になっている。そして,ローラ保持窓孔30において,漸次縮小直線部分44では長軸端部42の近傍では,漸次縮小直線部分44間がローラ10の直径より短くなってローラ10の転動面18を保持するように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願発明は,半導体製造装置,精密測定機,検査機,組立機,工作機械,各種ロボットなどの摺動部に使用される。
【符号の説明】
【0031】
1,2 軌道台
3 保持器
4 保持板
5 ピニオン&ホルダ組立体
6 ホルダ
7 ピニオン
8,9 ラック
10 ローラ
11,12 軌道面
15 縁部
17 嵌着孔
18 ローラ転動面
19 ローラ端面
20,30 ローラ保持窓孔
21,31 エッジ
22,32 支持傾斜面
23,33 凹部
24 主面
25,41 端面支持部
26 軌道溝
27 壁面
28,43 直線部分
29,42 長軸端部
34 軌道路
35 背面
39 平面
40 傾斜面
D ローラ直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する長手方向の壁面に軌道溝がそれぞれ形成された相対移動する一対の軌道台,前記軌道台の前記軌道溝間に形成された軌道路に配設され且つ前記軌道溝に形成された軌道面を転動する複数の転動体であるローラ,及び前記ローラを予め決められた所定間隔で交互に傾きを変えて支持する長手方向に延びた平らな保持板でなる保持器から構成されている有限直動案内ユニットにおいて,
前記保持器の前記保持板には,長手方向に沿って前記ローラが配設され且つ前記保持板の幅方向に長軸を持つ形状の複数のローラ保持窓孔が形成されており, 前記ローラ保持窓孔の前記長軸の両長軸端部には,前記ローラの両ローラ端面をそれぞれ保持するため,互いに対向した弾性変形可能な楔状のエッジから成る端面支持部がそれぞれ突出形成されており,
前記端面支持部の前記エッジは,前記ローラ端面に接して前記ローラを支持する楔状の支持傾斜面に形成されており,
前記長軸端部における前記支持傾斜面は,互いに対称的に対向して形成されていることを特徴とする保持器を備えた有限直動案内ユニット。
【請求項2】
前記ローラ保持窓孔に前記端面支持部で係止された前記ローラは,隣接する前記ローラ保持窓孔ごとに前記ローラの転動軸が交互に90°異なって傾斜して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項3】
前記端面支持部は,前記ローラ保持窓孔における前記保持板の板厚内において該板厚より小さい厚さであって前記長軸端部から前記ローラ保持窓孔の中心に向ってそれぞれ突出して形成され,前記保持板の残りの前記板厚の領域内の前記長軸端部には潤滑剤を保持可能な凹部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項4】
前記ローラ保持窓孔への前記ローラの組み込みは,一方の前記端面支持部の前記エッジの前記支持傾斜面に前記ローラの一端側の前記ローラ端面を当接させた状態で,他方の前記端面支持部の前記エッジの背面に他端側のローラ転動面を押し当てて前記ローラを回転させ,前記ローラ転動面が前記エッジを弾性変形させて前記エッジを乗り越え,両端の前記ローラ端面が前記端面支持部にそれぞれ係止して前記ローラが前記ローラ保持窓孔に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項5】
前記保持器が前記軌道台との予め決められた所定の相対位置からずれるのを防止する保持器ずれ防止機構は,前記保持板の長手方向の中央に形成された嵌着孔に嵌着したホルダに回転自在に配設されたピニオンと,前記ピニオンに噛み合い且つ前記軌道台に形成された軌道溝の前記長手方向に沿ってそれぞれ配設されたラックとから成るラック&ピニオン機構によって構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項6】
前記端面支持部に形成された前記エッジの前記支持傾斜面は,前記保持板に対して45°傾いた姿勢で組み込まれた前記ローラ端面に接する平面に形成され,前記ローラ保持窓孔の対向する前記長軸端部において互いに向かい合うように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項7】
前記ローラ保持窓孔の位置における前記保持板の断面形状における前記ローラ保持窓孔の壁面は,前記保持板の主面に対して直角を成す平面,又は所定の角度だけ傾いた傾斜面を成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の保持器を備えた有限直動案内ユニット。
【請求項8】
前記ローラ保持窓孔の形状は,前記保持板の幅方向に長軸を持ち且つ長手方向に短軸を持つ楕円形状,又は前記保持板の幅方向に長軸を持って長手方向に短軸を持ち且つ前記保持板の幅方向の中央位置に互いに対向して平行に延びる直線部分を持つ多角形形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項9】
前記ローラ保持窓孔は,前記保持板の幅方向中央部分がローラ径が挿通できるサイズの直線部分に形成され,前記直線部分から前記長軸端部に向って前記ローラ保持窓孔の壁面間が短くなった縁部に形成され,前記端面支持部で係止された前記ローラが前記縁部によって前記ローラ保持窓孔から脱落しないように支持していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−21572(P2012−21572A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159315(P2010−159315)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】