説明

保持治具

【課題】密着保持層に保持された物品の取り外しに支障を来たすことが少なく、密着保持層5の損傷を抑制することのできる保持治具を提供する。
【解決手段】支持基板1に凹み形成される区画空間2と、区画空間2に間隔をおいて配列される複数の支持突起4と、区画空間2を被覆して複数の支持突起4に支持される可撓性の密着保持層5と、区画空間2の空気を外部に排気して密着保持層5を凹凸に変形させる排気孔6とを備える。複数の支持突起4の隣接する3本の支持突起4に平面視で正三角形を描かせ、密着保持層5に微小な複数の電子部品10を着脱自在に保持させる。隣接する支持突起4と支持突起4との距離が常時同等となるので、密着保持層5の伸びが均一化し、密着保持層5に保持された複数の電子部品10の剥離に支障を来たすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、半導体ウェーハ、石英ガラス等の物品を保持する保持治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の保持治具は、図示しないが、支持基板に区画空間が形成され、この区画空間に複数の支持突起が配列されており、区画空間には、半導体ウェーハや微小な複数の電子部品を着脱自在に保持する密着保持層が覆着されている。
【0003】
支持基板には、区画空間の空気を外部に排気して密着保持層を変形させる排気孔が穿孔され、この排気孔を用いた空気の排気により、変形した密着保持層から半導体ウェーハや電子部品が取り外される(特許文献1参照)。また、微小な電子部品は、隣接する支持突起と支持突起との間の距離よりも短い寸法の半導体デバイス等、例えば3mm□、4mm□の大きさを有する半導体デバイス等からなる。
【特許文献1】特開2006‐216775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における保持治具は、以上のように構成され、区画空間に複数の支持突起が正方形を基準とした升目形に単に並べて配列されており、隣接する支持突起と支持突起との距離、特に支持突起から斜め方向に位置する支持突起までの距離が異なる(三平方の定理参照)ので、密着保持層の変形率や伸びが部分的に異なることとなる。すなわち、密着保持層の伸び率が部分的に異同するので、半導体ウェーハのような大きな物品はともかく、密着保持層に保持された微小な複数の電子部品の剥離に支障を来たし、変形した密着保持層から微小な電子部品を円滑に取り外すことができないという問題がある。
【0005】
また、隣接する3本の支持突起が平面視で直角三角形や二等辺三角形等を描くので、密着保持層を繰り返し変形させると、伸び率が部分的に異なる密着保持層のダメージが大きく、密着保持層が部分的に伸びたり、破断するおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、密着保持層に保持された物品の取り外しに支障を来たすことが少なく、密着保持層の損傷を抑制することのできる保持治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、支持基板に凹み形成される区画空間と、この区画空間を被覆する可撓性の密着保持層と、支持基板に設けられ、密着保持層に被覆された区画空間の気体を外部に排気して密着保持層を変形させる排気孔とを備え、密着保持層に物品を着脱自在に保持させるものであって、
区画空間に、密着保持層を支持する複数の支持突起を間隔をおいて配列し、この複数の支持突起の隣接する3本の支持突起に平面視で略正三角形を描かせるようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、支持基板の排気孔には、区画空間の気体を外部に排気する真空ポンプ等の負圧源を接続しても良い。
また、物品を微小な部品とすることができる。
また、微小な部品は、隣接する支持突起間の間隔よりも短い寸法であると良い。
【0009】
さらに、支持基板に区画空間、複数の支持突起、排気孔をそれぞれ設けるとともに、複数の支持突起中の隣接する3本の支持突起に平面略正三角形を描かせ、区画空間を密着保持層により被覆して複数の支持突起に接着支持させ、保持治具を製造するようにしても良い。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における物品には、少なくとも単数複数の各種電子部品、電気部品、半導体ウェーハ、半導体チップ、石英ガラス等が含まれる。また、微小な部品には、少なくとも単数複数の各種電子部品、電気部品、回路素子、半導体チップ、4mm□以下の半導体デバイス等が含まれる。支持突起は、例えば角柱形や角錐台形等に形成することができる。さらに、略正三角形には、正三角形と、おおよそ正三角形と認められる三角形のいずれもが含まれる。
【0011】
本発明によれば、密着保持層から物品を取り外す場合には、密着保持層に密閉された区画空間の気体を排気孔を介して外部に排気すれば良い。すると、密着保持層が複数の支持突起に応じ変形して物品との間に隙間を形成し、この隙間により、物品を取り外すことができる。
【0012】
係る密着保持層の変形の際、隣接する3本の支持突起が等方性を発揮して平面略正三角形を描くので、斜め方向を含む支持突起間の距離が同等となる。したがって、密着保持層の伸びが均一化し、密着保持層に保持された物品、特に隣接する支持突起間の間隔よりも短い寸法の微小な部品の剥離に支障を来たすことが少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の支持突起の隣接する3本の支持突起に平面視で略正三角形を描かせるので、密着保持層に保持された物品の取り外しに支障を来たすことが少なく、密着保持層の損傷を抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る保持治具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における保持治具は、図1や図2に示すように、薄い支持基板1に形成される区画空間2と、この区画空間2に一体的に配列される複数の支持突起4と、区画空間2を被覆する可撓性の密着保持層5と、密着保持層5を変形させる排気孔6とを備え、密着保持層5の表面に微小で軽量な複数の電子部品(例えば、3mm□の半導体デバイス等)10を着脱自在に保持させるようにしている。
【0015】
支持基板1は、図1に示すように、所定の材料を使用して剛性を有する円板形の平板に形成され、周縁部を除く表面の大部分に平面円形の区画空間2が浅く凹み形成されており、この区画空間2の周縁上部には密着保持層5の周縁部を支持する平面リング形の段差部3が切り欠かれる。この支持基板1の所定の材料としては、例えばポリカーボネート、アルミニウム合金、ステンレス、マグネシウム合金、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等があげられる。
【0016】
複数の支持突起4は、図1や図2に示すように、区画空間2内に所定の間隔をおいて配列され、XY方向に隣接する3本の支持突起4の表面中心部が平面正三角形を描くよう配列形成される。複数の支持突起4の隣接する一対の支持突起4間の距離は、微小な電子部品10の寸法よりも大きく設定される(例えば、5mm間隔あるいは7mm間隔等)。
【0017】
複数の支持突起4は、例えば電鋳により金属を所定の形に析出する方法、支持基板1の表面を支持突起部分を残して侵食除去するエッチング法、支持基板1の表面を支持突起部分を残して除去するサンドブラスト法、支持基板1にレジスト層を積層して露光後、現像により支持突起4を配設するレジスト法、スクリーン印刷法等により配設される。
【0018】
各支持突起4は、区画空間2の底から上方に指向する円柱形あるいは円錐台形に形成され、表面(上面)が密着保持層5の裏面に接着剤を介して接着されており、区画空間2の段差部3に張架された密着保持層5を水平に支持するよう機能する。
【0019】
密着保持層5は、図1に示すように、所定の材料を使用して弾性変形可能な薄い円板に形成され、区画空間2の段差部3に接着されて区画空間2と複数の支持突起4とを被覆する。この密着保持層5の所定の材料としては、例えば耐熱性や弾性に優れるフッ素系、シリコーン系のエラストマー、各種の樹脂フィルム等があげられる。この所定の材料には、必要に応じ、補強性フィラーや疎水性シリカ等が選択的に添加される。密着保持層5の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えばカレンダー法、コーティング法、プレス法、印刷法等があげられる。
【0020】
排気孔6は、図1に示すように、例えば支持基板1の中心部厚さ方向に穿孔されて区画空間2に連通し、外部の真空ポンプ7に着脱自在に接続される。このような排気孔6は、真空ポンプ7の駆動により密着保持層5に密閉被覆された区画空間2の空気(図1の矢印参照)を外部に排気して平坦な密着保持層5を複数の支持突起4に応じ断面凹凸に変形させ、密着保持層5と電子部品10との間に空気流入用の隙間を形成して密着状態の電子部品10を取り外し可能とする。
【0021】
上記において、保持治具を製造する場合には、先ず、薄い支持基板1に区画空間2、複数の支持突起4、排気孔6をそれぞれ配設し、複数の支持突起4のXY方向に隣接する3本の支持突起4の表面中心部に平面正三角形を描かせ、区画空間2の段差部3と各支持突起4の表面に接着剤をそれぞれ塗布し、その後、区画空間2に密着保持層5を覆着して各支持突起4に密着保持層5を支持させれば、保持治具を製造することができる。
【0022】
次に、保持治具の密着保持層5に微小な電子部品10を密着保持させる場合には、密着保持層5の表面に電子部品10を密着して押圧すれば、密着保持層5の表面に電子部品10が隙間なく密着し、密着保持層5に電子部品10を着脱自在に粘着保持させることができる。
【0023】
これに対し、密着保持層5から電子部品10を取り外したい場合には、支持基板1の排気孔6に真空ポンプ7を排気管を介して接続し、真空ポンプ7を駆動すれば良い。すると、密着保持層5に密閉被覆された区画空間2の空気が排気孔6と排気管とを順次経由して外部に吸引排気され、平らな密着保持層5が複数の支持突起4に応じ凹凸に変形して電子部品10との間に空気流入用の隙間を複数形成し、この隙間の形成により、粘着された電子部品10を容易に取り外すことが可能となる。
【0024】
この作業の際、XY方向に隣接する3本の支持突起4が平面正三角形を描くので、隣接する支持突起4と支持突起4との距離、特に支持突起4から斜め方向に位置する支持突起4までの距離が常時同等となる。したがって、簡易な構成で密着保持層5の伸びを均一化することができ、密着保持層5に保持された微小な複数の電子部品10の剥離に支障を来たすことが全くなく、複数の電子部品10を安定してピックアップすることができる。
【0025】
さらに、密着保持層5を繰り返し変形させても、密着保持層5に部分的に大きな負荷の作用することがないので、密着保持層5の耐久性が向上してダメージが極めて小さく、密着保持層5が部分的に伸びたり、破断するおそれを有効に排除することができる。したがって、保持治具の寿命を延ばすことができる。
【0026】
なお、上記実施形態では支持基板1を円板形の平板に形成したが、FOUPやFOSBと呼ばれる基板収納容器に収納可能な大きさに形成しても良い。また、密着保持層5に電子部品10ではなく、φ200、300、450mmの半導体ウェーハを粘着保持させても良い。さらに、排気孔6は、支持基板1の中心部に穿孔しても良いし、中心部から半径外方向にずれた箇所に必要数設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る保持治具の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図2】本発明に係る保持治具の実施形態における支持突起の配列パターンを模式的に示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 支持基板
2 区画空間
3 段差部
4 支持突起
5 密着保持層
6 排気孔
10 電子部品(物品、微小な部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板に凹み形成される区画空間と、この区画空間を被覆する可撓性の密着保持層と、支持基板に設けられ、密着保持層に被覆された区画空間の気体を外部に排気して密着保持層を変形させる排気孔とを備え、密着保持層に物品を着脱自在に保持させる保持治具であって、
区画空間に、密着保持層を支持する複数の支持突起を間隔をおいて配列し、この複数の支持突起の隣接する3本の支持突起に平面視で略正三角形を描かせるようにしたことを特徴とする保持治具。
【請求項2】
物品を微小な部品とした請求項1記載の保持治具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36974(P2010−36974A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204431(P2008−204431)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】