説明

保水性ブロックとその製造方法

【課題】優れた透水性と保水性とを兼ね備えると共に高い揚水性能を有する保水性ブロックとその製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質微粒子からなる保水材を含有するコンクリートブロックであって、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とし、好ましくは、保水材が製紙スラッジ焼却灰からなる平均粒径0.15〜1.2mmの多孔質微粒子であり、セメント100質量部に対して37.5〜87.5質量部の保水材を含有する保水性ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保水性と揚水性能を有し、かつ透水性に優れた保水性コンクリートブロックに関する。より詳しくは、本発明は、歩道、駐車場、広場などの舗装用ブロックとして好適な保水性ブロックであって、都市部のヒートアイランド現象を抑制することができる保水性ブロックとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部において、気温が周辺地域より高くなるヒートアイランド現象が問題となっており、その原因として、地表面被覆の人工化(舗装面や建築物の増大による熱の吸収蓄熱の増大など)、人工排熱の増加(自動車や建物の排熱、工場など事業活動による排熱など)、都市形態の変化(弱風化、緑地や水面の減少など)などが指摘されている。
【0003】
都市部における地表の人工被覆の例としては、歩道や広場などの舗装に、コンクリート平板やインターロッキングブロックなどの舗装用ブロックが広く使用されている。この舗装用ブロックのうち、一般的なものは雨水を下方に浸透させない構造となっている。これに対して、内部に比較的大きな連続空隙を設けて雨水を浸透させ、水溜りを防止し、また水はねを抑制して歩行しやすくした舗装用ブロックもある。
【0004】
ところで、路面の温度上昇を抑制するには、日射時に表面の水分が蒸発し、そのときに気化熱を路面から奪うことが効果的であると考えられている。夏場の打ち水もこの現象を利用したものである。しかし、従来の舗装用ブロックは、内部に水を貯める機能や下側から水を吸上げる(揚水機能)が極めて小さく、水分が蒸発するときの気化熱が僅かであるため、路面温度の上昇を抑える効果は小さく、ヒートアイランド現象の抑制には不向きである。
【0005】
このような一般的な舗装用ブロックの他に、保水性を高めた舗装用ブロックとして保水性セラミックスブロックが知られている。例えば、加熱膨張性の珪酸塩質原料と加熱収縮性の珪酸塩質原料を焼成した多孔質焼結体が提案されている(特許文献1)。また、製品の製造の際に廃棄物を利用し、焼成した保水性セラミックスブロックなどの製品も公開されている(非特許文献1)。
【0006】
これらのブロックは、高い保水率を有するので、路面温度を低減する効果が良いものの、透水性に劣り、雨天時に路面の水はけが悪く、透水性が基準を満足しないと云う問題がある。また、焼成して製造するために焼成設備を必要とし、製造が限られる。さらに、製造コストが通常の舗装用ブロックに比べて約3倍程度と高い。
【0007】
一方、透水性を高めたブロックとして、内部に微細な連続空隙を有する軽量骨材を使用した保水性コンクリート硬化体(特許文献2)や、また骨材に陶器瓦の破砕屑や高炉水砕スラグを用いた舗装用ブロックが知られている(特許文献3)。しかし、これらの硬化体ないしブロックは保水率や吸水性が小さいので、路面温度を十分に低減する効果が得られず、またブロック製造時の骨材の管理が煩雑になる等の問題がある。
【特許文献1】特開平8−319179号公報
【非特許文献1】NETIS新技術概要説明情報、登録No.KT-040094
【特許文献2】特開2001−158676号公報
【特許文献3】特開2004−197310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の舗装用コンクリートブロックにおける上記問題を解決したものであり、優れた透水性と保水性とを兼ね備えると共に高い揚水性能を有する保水性ブロックとその製造方法を提供する。なお、本発明においてはモルタルを含めてコンクリートと云う場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の構成によって上記問題を解決した保水性ブロックとその製造方法が提供される。
(1)多孔質微粒子からなる保水材を含有するコンクリートブロックであって、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とする保水性ブロック。
(2)保水量が0.15〜0.3g/cm3、吸上げ高さが70〜100%、透水係数が0.01〜0.1cm/secである上記(1)に記載する保水性ブロック。
(3)保水材が、製紙スラッジ焼却灰からなる平均粒径0.15〜1.2mmの多孔質微粒子である上記(1)または上記(2)に記載する保水性ブロック。
(4)保水材の含有量が、セメント100質量部に対して、37.5〜87.5質量部である上記(1)〜上記(3)の何れかに記載する保水性ブロック。
(5)骨材が平均粒径0.15mm〜1.2mmの微粒砂を含み、保水材と微粒砂の合計質量がセメント100質量部に対して70〜130質量部であって、保水材と微粒砂の合計質量のうち、微粒砂の割合が50質量%未満である上記(1)〜上記(4)の何れかに記載する保水性ブロック。
(6)基層部と表層部とが一体成形されたコンクリートブロックであって、表層部の骨材は細粒を含有し、基層部の骨材は粒径2.5〜13mmの粗粒を骨材の25〜55質量%含有する上記(1)〜上記(5)の何れかに記載する保水性ブロック。
(7)粒径2.5〜13mmの粗粒を25〜55質量%含有する骨材、セメント、および水を混練し、この混練物を型枠に投入し、加圧振動して基層部を形成する工程と、基層部を形成した後に、細粒を含有する骨材とセメントおよび水を混練し、この混練物を上記型枠に投入して上記基層部の上に重ね、加圧振動して表層部を基層部と一体に形成する工程と、形成したブロックを脱型して養生する養生工程とからなることを特徴とする保水性ブロックの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保水性ブロックは、優れた保水性と揚水性能を有するので、舗装用ブロックとして用いたときに、十分な水分を蒸発させることでき、その気化熱によって路面温度を十分に低減する効果が得られる。また、本発明の保水性ブロックは保水性および揚水性能と共に優れた透水性を兼ね備えるので、水捌けが良く、水溜りのない歩き易い歩道や道路を形成することができる。
【0011】
さらに、本発明の保水性ブロックは、好ましくは、保水材として製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子を用いるので、処分に困っていた製紙スラッジ焼却灰を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の保水性ブロックは、多孔質微粒子からなる保水材を配合し、骨材の粒径と含有量を調整することによって、透水性と共に保水性および揚水性を高めた、コンクリートブロックである。
【0013】
本発明の保水性ブロックは、具体的には、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とする保水性ブロックであり、好ましくは、保水量が0.15〜0.3g/cm3、吸上げ高さが70〜100%、透水係数が0.01〜0.1cm/secの保水性ブロックである。
【0014】
本発明の保水性ブロックに用いる保水材は、好ましくは製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子である。製紙スラッジ焼却灰は、古紙から再生紙を製造する際に発生するスラッジ(ペーパースラッジ)を焼却炉にて850℃程度の高温で焼却したときの灰であり、これを焼成炉にて850〜900℃の高温で20〜40分程度焼成することによって顆粒状の多孔質微粒子が得られる。この顆粒状微粒子には多数の微細な空隙が存在し、このため親水性が良く、高い吸水率を有する。また、製紙スラッジを高温焼却して得られるので、焼却灰の主成分であるシリカとアルミナが堅く結合し、化学的に非常に安定なセラミックスとなる。この製紙スラッジ焼却灰の焼成粒子は用途に応じた粒径に粉砕し分級して利用される。
【0015】
本発明の保水性ブロックは、保水材として製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子を含有することによって高い保水性を有することができる。この製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子は平均粒径0.15〜1.2mmの微粒子が好ましい。平均粒径が0.15mm未満では、練混ぜ中にミキサ内でダマが生じ易く、均一なブロックの成形が難しい。また、平均粒径が1.2mmを超えると、練混ぜ中に骨材の剪断、摩擦等の作用によってこの焼却灰粒子が砕かれて細かくなるために、保水量の管理が難しくなる。この多孔質微粒子は平均粒径0.3〜0.6mmの微粒子がさらに好ましい。
【0016】
製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子の含有量は、セメント100質量部に対して、37.5〜87.5質量部が好ましい。この含有量が37.5質量部よりも少ないと高い保水性能(保水量:0.15g/cm3以上、吸上げ高さ:70%以上)が得られ難い。このため路面温度低減効果が小さい。一方、この含有量が87.5質量部よりも多いと保水量は増大するものの、曲げ強度が大きく低下し、透水性ブロックの規格値(3.0N/mm2以上)を満足でき難く、また充填率が大きくなり(空隙率が小さくなり)、規定の透水係数(0.01cm/sec以上)を確保できない場合がある。多孔質微粒子の含有量は50〜70質量部がより好ましい。
【0017】
本発明の保水性ブロックに配合する骨材は、好ましくは、平均粒径0.15mm〜1.2mmの微粒砂を含み、保水材と微粒砂の合計質量がセメント100質量部に対して70〜130質量部であり、保水材と微粒砂の合計質量のうち、微粒砂の割合が50質量%未満であるものが良い。この微粒砂の吸水率は通常の細骨材と同程度であり、製紙スラッジ焼却灰からなる微粒子のように大きくはないが、微細な連続空隙を形成するのに有効な材料である。
【0018】
骨材に含まれる微粒砂の平均粒径が0.15mmよりも小さいと、空隙を充填するペースト分が多くなり、空隙率が減少して透水性が低下するので、目的の透水係数を満足し難くなる。一方、微粒砂の平均粒径が1.2mmよりも大きいと、微細な連続空隙を形成できず、保水性能が劣化し、吸上げ高さも小さくなる。
【0019】
この微粒砂は、通常の砂を篩分けして所定の粒度にしたものでもよく、市販されている珪砂などから所定の粒度のものを選択したものでもよい。例えば、珪砂6号(0.6〜0.075mm)、珪砂7号(0.3〜0.053mm)、珪砂9号(0.212mm以下)などが利用できる。なお、これらに限定するものではない。また、廃鋳物砂などをリサイクル材として利用してもよい。
【0020】
本発明の保水性ブロックに用いるセメントの種類は限定されない。普通ポルトランドセメント(JIS A 5210)、混合セメント(JIS R 5211、5212、5213)など何れも用いることができる。また、骨材の種類も限定されない。例えば、通常のコンクリートブロックに用いる一般的な骨材の他に、スラグ骨材や溶融スラグ骨材などを使用することができる。さらに、水量を減らすために使用する高性能減水剤などの減水性を有する化学混和剤などを使用することができる。
【0021】
本発明の保水性ブロックは、基層部と表層部とが一体成形されたコンクリートブロックであり、基層部はコンクリートによって形成し、表層部はモルタルによって形成することができる。具体的には、例えば、表層部の骨材は細粒を含有するモルタルによって形成し、基層部の骨材は粒径2.5〜13mmの粗粒を骨材の25〜55質量%含有するコンクリートによって形成すると良い。
【0022】
基層部に用いる骨材のうち粒径2.5〜13mmの粗粒は、7号砕石(2.5〜5.0mm)、6号砕石(5〜13mm)などを用いることができる。なお、これらに限定されない。上記粗粒の含有量が25質量%未満では、保水性能は高くなるものの、透水性や曲げ強度が低下し、規格値(透水係数:0.01cm/sec以上、曲げ強度:3.0N/mm2以上)を満たさない場合がある。一方、上記粗粒の含有量が55質量%を上回ると、コンクリートの空隙径が大きくなり、透水係数は大きくなるが、保水性能が大きく低下する傾向がある。上記粗粒の骨材中の含有量は35〜45質量%がより好ましい。
【0023】
このような基層部と表層部とを有する保水性ブロックは、基層部を形成するコンクリートを型枠に入れて加圧振動して成形した後に、表層部を形成するモルタルを上記型枠に投入して基層部のコンクリートの上に重ね、これを加圧振動して基層部と表層部を一体に成形し、脱型した後に養生して製造することができる。
【0024】
具体的には、第一工程(基層部成形工程)として、2.5〜13mmの粗粒を25〜55質量%含有する骨材、セメント、および水を混練してコンクリートを製造し、この混練物を型枠に投入し、加圧振動して基層部を形成する。次に、第二工程(表層部成形工程)として、細粒を含有する骨材とセメントおよび水を混練してモルタルを製造し、この混練物を上記型枠に投入して上記基層部の上に重ね、加圧振動して表層部を基層部と一体に形成する。成形後、脱型して養生することによって基層部と表層部からなる保水性ブロックを得ることができる。
【0025】
上記製造方法において、混練設備や成形設備などは、既存のインターロッキングブロックや平板ブロックなどの製造に用いられているものを使用できる。なお、これらに限定されない。上記製造方法によって、透水性と共に保水性および揚水性能を兼ね備え、曲げ強度の大きい保水性ブロックを効率よく大量生産することができる。具体的には、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、透水係数が0.01cm/sec以上、好ましくは、保水量が0.15〜0.3g/cm3、吸上げ高さが70〜100%、透水係数が0.01〜0.1cm/secの保水性ブロックを得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に示す。なお、本例は特に指定のない限り本発明を限定するものではない。試験方法および使用材料を以下に示す。
【0027】
<試験方法>
(1)コンクリートの練混ぜ
所定の材料をミキサ(50リットル強制攪拌式ミキサ)に投入し、空練り15秒後に水及び高性能減水剤を投入し、90秒間混練後排出した。
(2)供試体(ブロック)の成形方法
即時脱型用テストマシンにより、振動数3140rpm、振幅1.4mm、加圧力0.05N/mm2の条件で、供試体(幅100×長さ200×厚さ60mm)を作製し、試験に供した。
(3)空隙率の測定
即時脱型直後のブロックについて質量、寸法を測定し、以下の式から充填率および空隙率を計算した。ブロックの空隙率0%の理論質量は配合に基づいて算出される。
充填率(%)=(ブロックの質量/ブロックの空隙率0%の理論質量)×100
空隙率(%)=100−充填率
(4)曲げ強度
社団法人インターロッキングブロック舗装技術協会(JIPEA)の試験方法に準拠し、材齢14日にて実施。
(5)透水試験
JIPEAの試験方法に準拠し、材齢14日にて実施。
(6)保水量
保水性舗装ブロック品質規格検討委員会が定めた保水性試験方法により求めた。
保水量(g/cm3)=(湿潤質量−乾燥質量)/供試体の体積
(7)吸上げ高さ
保水性舗装ブロック品質規格検討委員会が定めた吸水性試験方法により求めた。
吸上げ高さ(%)=(30分後の吸上げ質量−絶乾質量)/(湿潤質量−絶乾質量)×100
(8)フィールド試験
2m×2mの面積で実際にブロックを敷設し、路面温度を排水性アスファルト舗装の路面温度と比較した。
【0028】
【表1】

【0029】
〔実施例1〕
材料構成として、通常のインターロッキングブロックの配合(普通タイプ、透水タイプ)とし、製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子(保水材)を混入した本発明のブロック(実施例1)と、多孔質微粒子を配合しない比較例のブロックを製造し、その性状を比較した。配合を表2示し、試験結果を表3に示す。実施例1のブロックは、保水量が比較例1、2の約3倍〜10倍、吸上げ高さが比較例1、2の約8倍〜10倍であり、透水係数は普通タイプのインターロッキングブロックよりも高い。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
〔実施例2〕
製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子(保水材)の平均粒径を3水準(2.5mm、0.6mm、0.15mm以下)に変えて、ブロックの性状を調べた。配合を表4に示し、試験結果を表5に示す。実施例2のブロックは好適な粒径の保水材を含有するので、透水係数、保水量、および吸上げ高さの何れも好ましい範囲である。一方、保水材の粒径が大き過ぎる比較例3のブロック、および保水材の粒径が小さ過ぎる比較例4のブロックは何れも透水係数、保水量、吸上げ高さの全てが実施例2よりも低い。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
〔実施例3〕
製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子(平均粒径0.6mm)の含有量を変えて、ブロックの性状を調べた。配合を表6に示し、試験結果を表7に示す。実施例3のブロックは適量の保水材を有するので、透水係数、保水量、および吸上げ高さの何れも好ましい範囲である。一方、保水材の含有量が少ない比較例5のブロックは実施例3よりも保水量が格段に少なく、吸上げ高さも小さい。また、保水材の含有量が多過ぎる比較例6のブロックは、実施例3よりも保水量および吸上げ高さは大きいが、透水係数が格段に小さい。
【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
〔実施例4〕
基層部と表層部とが一体成形された保水性ブロックについて、基層部の骨材の配合を変えてブロックの性状を調べた。基層部と表層部には何れも平均粒径0.6mmの製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子の保水材を配合した。ブロックの配合を表8に示し、試験結果を表9に示す。実施例4のブロックは基層部に適量の粗骨材を有するので、透水係数、保水量、および吸上げ高さの何れも好ましい範囲である。一方、粗骨材量が多すぎる比較例7は、実施例4よりも保水量と吸上げ高さが格段に小さい。また、粗骨材量が少ない比較例8は透水係数が実施例4よりも大幅に小さい。
【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
〔実施例5〕
微粒砂を混合した骨材を用い、微粒砂の粒径および混合量を変えてブロックを製造し、その性状を調べた。使用材料を表10に示し、配合を表11に示した。また試験結果を表12に示した。実施例5のブロックは保水材と共に、好適な粒径の微粒砂を適量含有するので、透水係数、保水量、および吸上げ高さの何れも好ましい範囲である。一方、比較例9は微粒砂の粒径が大きすぎるので、保水量と吸上げ高さが少ない。また、比較例10は微粒砂の粒径が小さすぎるので、透水係数が大幅に小さい。比較例11は微粒砂の含有量が多く、保水材と同量であるので、透水係数が大幅に小さい。一方、比較例12は微粒砂の含有量が少ないので保水量が格段に少ない。比較例13は微粒砂に対して保水材の含有量が少ないので、保水量が大幅に低い。
【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
〔実施例6−7:路面温度低減試験〕
2m平方の面積(2m×2m)で保水性ブロックを駐車場に敷設し、路面温度を8月上旬に測定した。また、比較例として、アスファルト舗装および従来のインターロッキングブロック(透水タイプ)を同様に敷設して、同時に路面温度を測定した。使用した本発明の保水性ブロックの配合を表13に示し、試験結果を図1に示す。また、比較例14(アスファルト舗装)および比較例15(インターロッキングブロック)の路面温度の測定結果を図2に示す。図1および図2に示すように、本発明の保水性ブロック(実施例6、7)の表面温度は、アスファルト舗装やインターロッキングブロックと比べて著しく低く、優れた路面温度低減効果を有する。また、この効果は持続性があり、長期間効果を維持することができる。
【0046】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例6、7の保水性ブロックの表面温度を示すグラフ
【図2】従来のアスファルト舗装とインターロッキングブロックの表面温度を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質微粒子からなる保水材を含有するコンクリートブロックであって、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とする保水性ブロック。
【請求項2】
保水量が0.15〜0.3g/cm3、吸上げ高さが70〜100%、透水係数が0.01〜0.1cm/secである請求項1に記載する保水性ブロック。
【請求項3】
保水材が、製紙スラッジ焼却灰からなる平均粒径0.15〜1.2mmの多孔質微粒子である請求項1または2に記載する保水性ブロック。
【請求項4】
保水材の含有量が、セメント100質量部に対して、37.5〜87.5質量部である請求項1〜3の何れかに記載する保水性ブロック。
【請求項5】
骨材が平均粒径0.15mm〜1.2mmの微粒砂を含み、保水材と微粒砂の合計質量がセメント100質量部に対して70〜130質量部であって、保水材と微粒砂の合計質量のうち、微粒砂の割合が50質量%未満である請求項1〜4の何れかに記載する保水性ブロック。
【請求項6】
基層部と表層部とが一体成形されたコンクリートブロックであって、表層部の骨材は細粒を含有し、基層部の骨材は粒径2.5〜13mmの粗粒を骨材の25〜55質量%含有する請求項1〜5の何れかに記載する保水性ブロック。
【請求項7】
粒径2.5〜13mmの粗粒を25〜55質量%含有する骨材、セメント、および水を混練し、この混練物を型枠に投入し、加圧振動して基層部を形成する工程と、基層部を形成した後に、細粒を含有する骨材とセメントおよび水を混練し、この混練物を上記型枠に投入して上記基層部の上に重ね、加圧振動して表層部を基層部と一体に形成する工程と、形成したブロックを脱型して養生する養生工程とからなることを特徴とする保水性ブロックの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−145669(P2007−145669A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344498(P2005−344498)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(591072949)東京鋪装工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】