説明

保湿剤

【課題】新規保湿剤を提供する。
【解決手段】保湿剤は、一般式(1):
【化1】


(式中、Rは、メチル基及び水酸基から選ばれる1種以上が置換していてもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、nは、1乃至3の整数である。)
で表わされるメントール誘導体又はp−メンタン−3,8−ジオールからなる。これを含有する保湿組成物は優れた保湿性を示し、皮膚外用剤として好ましく使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿剤に関するものであり、これを含む保湿組成物及び、該保湿組成物を配合した皮膚外用剤をも提供するものである。
【背景技術】
【0002】
香粧品、トイレタリー製品、入浴剤又は医薬品などに代表される皮膚に塗布する外用剤の効能を保持し、使用感を保つためには該外用剤の湿潤性を保持することが必要であり、そのための保湿剤として、古くからエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ソルビトール等が使用されてきた。さらに、製品ニーズの多様化に伴い、ピロリドンカルボン酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ等の新たな保湿剤が開発されるに至っている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】新化粧品学、第2版、152〜156頁、光井武夫編、2001年1月18日、南山堂
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新たなタイプの皮膚外用剤用の保湿剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
保湿効果につき検討した結果、特定のメントール誘導体及び/又はp−メンタン−3,8−ジオールの1種以上を含有させた場合に、極めて長時間にわたって保湿性が保持されることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明は、一般式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Rは、メチル基及び水酸基から選ばれる1種以上が置換していてもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、nは、1乃至3の整数である。)
で表される特定のメントール誘導体又はp−メンタン−3,8−ジオールからなる保湿剤に関する。そして、この保湿剤の1種以上を含有させることにより保湿組成物が得られ、また該保湿組成物の配合により保湿性の良好な皮膚外用剤が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた保湿素質を有する保湿組成物が提供でき、これを含有する皮膚用剤は長時間にわたり湿潤性を保持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の保湿剤は、上記一般式(1)で表わされるメントール誘導体又はp−メンタン−3,8−ジオールからなる。保湿組成物は、成分(A)として、上記一般式(1)で表わされるメントール誘導体及びp−メンタン−3,8−ジオールから選ばれる1種以上を有効成分として含有する。本発明で用いられる有効成分、即ち一般式(1)で表わされるメントール誘導体及びp−メンタン−3,8−ジオールとしては、具体的には、例えば、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(メントキシ)エタン−1−オール、3−(メントキシ)プロパン−1−オール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2−メントキシエチル)エタノール及びp−メンタン−3,8−ジオール等が挙げられる。
【0010】
また、本発明の保湿剤においては、一般式(1)のメントール誘導体が、下記一般式(2):
【0011】
【化2】

(式中、Rは、メチル基及び水酸基から選ばれる1種以上が置換していてもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、nは、1乃至3の整数である。)
で表わされるl−メントール誘導体であることが好ましい。
【0012】
一般式(2)で表わされるl−メントール誘導体としては、具体的には、例えば3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール及び2−(2−l−メントキシエチル)エタノール等が挙げられる。
【0013】
これらの化合物は、保湿組成物において、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物は、無色、ほぼ無臭の油状物質であり、通常の皮膚外用剤との相溶性は極めて高い。
【0014】
これらメントール誘導体及びp−メンタン−3,8−ジオールの中では、特に3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオールが、保湿性に優れ、さらに香粧品、トイレタリー製品、入浴剤又は医薬品などの皮膚外用剤に使用されたときの保湿効果の面から好ましい。
【0015】
なお、一般式(1)で表わされる3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが冷感効果を有することは、既に特開昭58−88334公報、特開昭47−16647号公報などに、さらに香料の保留効果を有することは特開2002−88391号公報などによって知られているが、上記一般式(1)のメントール誘導体及び/又はp−メンタン−3,8−ジオールが、保湿効果を有すること、各種皮膚外用剤の保湿効果を著しく高める効果を有することを示唆する報告はない。
【0016】
本発明において用いられる上記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる化合物は既知化合物であり、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール(特許文献1)、2−(メントキシ)エタン−1−オール(特許文献2)、3−(メントキシ)プロパン−1−オール(特許文献3)、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール(特許文献4)、2−(2−メントキシエチル)エタノール(特許文献5)及びp−メンタン−3,8−ジオール(特許文献6)などに記載されている方法で合成することができる。
【0017】
【特許文献1】特開昭58−88334号公報
【特許文献2】英国特許1315626号公報
【特許文献3】特開2001−294546号公報
【特許文献4】特開平9−217083号公報
【特許文献5】特開2005−343915号公報
【特許文献6】特開平11−130710号公報
【0018】
本発明の保湿剤を含有する保湿組成物は、成分(B)として、一般式(3):
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1は、水酸基及び/又は二重結合を有していても良い炭素数9〜23のアルキル基であり、R2は、アセチル基並びに水酸基及び/又は二重結合を有していても良い炭素数14〜30のアシル基である。)
で表わされるセラミド類から選ばれる1種以上をさらに加えることにより、保湿効果を高めた保湿組成物を調製することができる。
【0021】
前記一般式(3)で表わされるセラミド類としては、具体的に例をあげると、2−アセチルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−テトラデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−ヘキサデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−エイコサノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−オレオイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−リノレオノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−(2−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−(3−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノオクタデカン−1,3−ジオール、2−アセチルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−テトラデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−ヘキサデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−オクタデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−エイコサノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−オレオイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−リノレオノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−(2−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノヘキサデカン−1,3−ジオール、2−アセチルアミノオクタデカン−1,3,4−トリオール、2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3,4−トリオールなどが挙げられるがこれに限定されるわけではない。
【0022】
特に、一般式(3)で表わされるセラミド類が、下記一般式(4)で表わされる光学活性な天然型のD−エリスロ構造であるセラミド類が好ましく用いられる。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R1は、水酸基及び/又は二重結合を有していても良い炭素数9〜23のアルキル基であり、R2は、アセチル基若しくは水酸基及び/又は二重結合を有していても良い炭素数14〜30のアシル基である。)
【0025】
一般式(4)で表される化合物としては、具体的に例をあげると、(2S,3R)−2−アセチルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−テトラデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−ヘキサデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−ノナデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−エイコサノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−オレオイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−リノレオノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−(2−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−(3−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノオクタデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−アセチルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−テトラデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−ヘキサデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−ノナデカノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−エイコサノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−オレオイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−リノレオノイルアミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3R)−2−(2−ヒドロキシヘキサデカノイル)アミノヘキサデカン−1,3−ジオール、(2S,3S,4R)−2−アセチルアミノオクタデカン−1,3,4−トリオール、(2S,3S,4R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3,4−トリオールなどが挙げられるがこれに限定されるわけではない。
【0026】
この中でも特に好ましい一例としては、(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール及び(2S,3R)−2−アセチルアミノオクタデカン−1,3−ジオールを挙げることができる。
【0027】
本発明の保湿剤を含有する保湿組成物では、一般式(3)或いは一般式(4)で表わされるセラミド類を一種のみ使用することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。一般式(3)或いは一般式(4)で表わされるセラミド類は、難溶性素材であり、水に殆ど溶解せず、且つ、油性成分との大気圧下、室温の条件では溶解しにくく、微細な結晶又はアモルファス状の固形物を析出するような性質を有するものである。そこで、一般式(3)或いは一般式(4)で表わされるセラミド類を加溶化して使用することが好ましく、加溶化する方法としては、特許文献7、特許文献8、特許文献9などに記載されている方法で可溶化することができる。
【0028】
【特許文献7】特開平11−12118号公報
【特許文献8】特開2001−348320号公報
【特許文献9】特開2004−331595号公報
【0029】
本発明の保湿剤を含有する保湿組成物は、追加成分(C)として、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヨクイニン抽出物、キトサン誘導体から選ばれる1種以上をさらに加えることにより、更に保湿効果を高めた保湿組成物を調製することができる。
【0030】
本発明の保湿剤を含有する保湿組成物における成分(A)であるメントール誘導体及び/又はp−メンタン−3,8−ジオール、成分(B)であるセラミド類、及び追加成分(C)の香料組成物或いは皮膚外用剤への配合量、或いは適用方法は、それが配合される香料組成物或いは皮膚外用剤の種類、使用目的などにより、適宜最適な量及び方法とされる。例えば、本発明の保湿剤を含有する保湿組成物の香料組成物に対する配合量は、通常、香料組成物全量に対して0.0001〜20質量%が好ましい。また、保湿組成物配合香料組成物の皮膚外用剤への配合量は、通常、皮膚外用剤の全組成に対して0.0001〜10質量%が好ましい。成分別に見ると、成分(A)が香料組成物中に配合される場合には、香料組成物全量に対して0.0001〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.001〜10質量%である。皮膚外用剤への成分(A)を含有する香料組成物の配合量は、通常、皮膚外用剤の全組成に対して0.0001〜10質量%、特に0.001〜3質量%の濃度で用いるのが好ましい。また、成分(B)が香料組成物中に配合される場合には、香料組成物全量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1質量%である。また、皮膚外用剤への成分(B)を含有する香料組成物の配合量は、通常、皮膚外用剤の全組成に対して0.01〜5質量%、特に0.1〜1質量%の濃度で用いるのが好ましい。さらに、成分(C)が香料組成物中に配合される場合には、香料組成物全量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1質量%である。また、皮膚外用剤への成分(C)を含有する香料組成物の配合量は、通常、皮膚外用剤の全組成に対して0.001〜5質量%、特に0.1〜1質量%の濃度で用いるのが好ましい。
【0031】
一方、皮膚外用剤に直接配合される場合の配合量は、皮膚外用剤の形態、使用目的に応じて任意に配合可能であるが、通常、皮膚外用剤の全組成に対して0.0001〜10質量%が好ましい。成分別に見ると、成分(A)が皮膚外用剤中に配合される場合には、皮膚外用剤の全組成に対して、0.0001〜10質量%、特に0.0005〜1質量%の濃度で用いるのが好ましい。また、成分(B)が皮膚外用剤中に配合される場合には、皮膚外用剤の全組成に対して、0.0001〜5質量%、特に0.0005〜1質量%の濃度で用いるのが好ましい。更に、成分(C)が皮膚外用剤中に配合される場合には、皮膚外用剤の全組成に対して、0.0001〜50質量%、特に0.0005〜30質量%の濃度で用いるのが好ましい。
【0032】
また、本発明の保湿剤を含有する保湿組成物が配合された香料組成物に使用できる香料としては、特に制限はなく、合成香料及び天然香料いずれも用いることができる。たとえば、非特許文献2に記載されているような広い範囲の香料成分を使用することができる。
【0033】
【非特許文献2】ArctanderS.,“Perfume and Flavor Chemicals”,published by the author,Montclair,N.J.(U.S.A.)1969年
【0034】
香料組成物に使用できる上記の香料及び最近の代表的な香料を下記する。代表的な天然香料としては、例えば、アニスシード、イランイラン、エレミ、オリス、オレンジ、ガルバナム、クラリーセージ、クローブ、コリアンダー、サンダルウッド、シトロネラ、シナモン、ジャスミン、スペアーミント、セダーウッド、ゼラニウム、セロリ、タンジェリン、トンカビーンズ、ネロリ、バイオレット、パチョリ、ピーチ、ベチバー、ペチグレン、ペパーミント、ペルーバルサム、ベルガモット、ユーカリ、ライラック、ラズベリー、ラベンダー、リリーオブザバレー、レモン、レモングラス、ライム、ローズなどの天然精油;アンバー、カストリウム、シベット、ムスクなどの動物性香料等が挙げられる。
【0035】
代表的な合成香料としては、例えば、ピネン、リモネン、カリオフィレン、ロンギホレン、ミルセンなどの炭化水素類;シス−3−ヘキセノール、レボサンドール(高砂香料工業株式会社)、p−t−ブチロシクロヘキサノール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、メントール、テルピネオール、ボルネオール、イソボルネオール、イソカンフィルシクロヘキサノール、ファルネソール、セドロール、ベンジルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、シンナミックアルコール、アミルシンナミックアルコール、チモール、オイゲノールなどのアルコール類;シネオール、エストラゴール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、ジフェニルオキサイド、セドロールメチルエーテル、イソアミルフェニルエチルエーテル、アンブロキサン(花王株式会社)、グリサルバ(IFF社)、ローズオキサイド、ジヒドロローズオキサイド、リモネンオキサイド、メントフラン、アンバーコア(花王株式会社)などのエーテル類;C9〜C12脂肪族アルデヒド、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、マイラックアルデヒド(IFF社)、コバノール(高砂香料工業株式会社)、ベルンアルデヒド(Givaudan SA社)、ベンズアルデヒド、シクラメンアルデヒド、スザラール(高砂香料工業株式会社)、リリアール(Givaudan SA社)、シンナミックアルデヒド、メチルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、ヘリオブーケ(高砂香料工業株式会社)などのアルデヒド類;cis−ジャスモン、ジヒドロジャスミン、ジヒドロジャスモン酸メチル(ヘディオン、Firmenich SA社)、シクロテン、ダマセノン、ダマスコン、ダイナスコン、ヨノン、メチルヨノン、イロン、カシュメラン(IFF社)、イソ・イー・スーパー(IFF社)、カルボン、メントン、アセチルセドレン、イソロンギホラノン、ラズベリーケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどのケトン類;γ−ウンデカラクトン、クマリン、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、テロペニルアセテート、セドリルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート(ベルテネックス;IFF社)、2−t−ブチルシクロヘキシルアセテート(ベルドックス;IFF社)、トリシクロデセニルアセテート(エリカアセテート;高砂香料工業株式会社)、ベンジルアセテート、フェニルアリルアセテート、スチラリルアセテート、イソアミルアセテート、ローズフェノン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ジャスマール(IFF社)、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリチレート、ヘキシルサリチレート、メチルアトラレート、メチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、オーランチオール(Givaudan SA社)、トリメチルシクロヘキサンカルボン酸エチル(テサロン;高砂香料工業株式会社)、フルテート(花王株式会社)などのエステル類;ムスコン、ムスコール、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、シクロヘキサデセノン(アンブレトン;高砂香料工業株式会社)、シクロペンタデカノリド、10−オキサヘキサデカノリド、エチレンブラシレート(ムスクT;高砂香料工業株式会社)、エチレンドデカンジオエート、セレストリド(IFF社)、トナリド(PFW社)、ガラクソライド(IFF社)、トラセオライド(Givaudan SA社)、ファントリド(PFW社)などのムスク類等がそれぞれ挙げられる。これらの香料は単独で用いてもよいし、2種以上を調合して調合香料として用いてもよい。
【0036】
また、通常使用される香料保留剤の1種又は2種以上を配合しても良く、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン(アビエチン酸メチル)等と併用することも可能である。
【0037】
皮膚外用剤は、各種基剤及び本発明の保湿剤を含有する保湿組成物或いは本発明の保湿剤を含有する保湿組成物を配合した香料組成物を混和することにより調製される。本発明の保湿剤を含有する保湿組成物或いは本発明の保湿剤を含有する保湿組成物を配合した香料組成物は相溶性に優れているため、一般的な外用剤用基剤であれば固体、液体、乳剤、ゲル状体、泡状体等のいずれの場合においても使用し得る。基剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸プロピレングリコール、トリカプリン酸グリセリン等のエステル類、ヒマシ油、オリーブ油、ラノリン、スクワラン、鯨ろう等の動植物性油脂類、パラフィン、流動パラフィン等の鉱物油類、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、シリコン油類、エアゾールの噴射剤類、シリカ、タルク、合成樹脂粉末等の固体担体類などを挙げることができる。
【0038】
また、本発明の保湿剤を含有する保湿組成物或いは本発明の保湿剤を含有する保湿組成物を配合した香料組成物を含有する皮膚外用剤には、通常用いられている他の成分、例えば各種美容成分、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、着色料、界面活性剤等を適宜含有することができる。皮膚外用剤の剤型は任意であり、前記保湿組成物或いは保湿組成物を配合した香料組成物と、上記した基剤やその他の成分を適宜選択して配合することにより、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系等、所望の製剤形態とすることができる。また、皮膚外用剤の製品形態も任意であり、エアゾール、スプレー剤、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプーなどの皮膚洗浄料;軟膏等に用いることが出来る。製剤化方法としては通常の方法が採用でき、例えば非特許文献3、非特許文献4等に記載の方法を挙げることができる。
【0039】
【非特許文献3】香粧品科学―理論と実際,田村健夫(著),広田博(著),フレグランスジャーナル社(1990年9月25日)
【非特許文献4】化粧品製剤実用便覧,蟇目浩吉,日光ケミカル株式会社(1982年)
【0040】
かくして得られる皮膚外用剤は、その用途に応じて、通常の方法により、人の皮膚に施用される。
【0041】
また、本発明の保湿剤を含有する皮膚外用剤は優れた冷感効果をも有しているので、かかる冷感効果を必要とする用途においては有用である。かかる用途においては、本発明のメントール誘導体及び/又はp−メンタン−3,8−ジオールの中でも本発明の3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール及び/又はp−メンタン−3,8−ジオールを使用することが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び試験例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0043】
[試験例1]
表1記載のクリームを調製し、スライドガラスに薄く試料を載せ、試験サンプルを作成した。6時間室温(25℃/60%RH)にて放置後、質量を測定し、水分蒸発量を検定した。また、各サンプル共に3回の試験を行い平均値より水分保持率を求めた。試験結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合したサンプル(実施例1)に優れた水分保持機能が確認された。
【0047】
[試験例2]
表3記載のエモリエントミルクを調製し、各前腕部内部にそれぞれを65mg/cm2塗布し、10分間放置乾燥後、経時的なコンダクタンス値を30分間測定した(n=3)。試験結果を表4に示す(単位:μS)。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
表4から明らかなように、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合したサンプル(実施例2)が持続的にコンダクタンス値が高く、優れた保湿機能が確認された。
【0051】
[試験例3]
表3記載のエモリエントミルクを試験例2と同様に各前腕部内部に塗布し、30分乾燥した部位に一滴の蒸留水を載せ、10秒間給水させた後ふき取り、経時的なコンダクタンス値を15分間測定した(n=3)。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
表5から明らかなように、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合したサンプル(実施例2)塗布部分が高い水分保持機能を示した。
【0054】
[試験例4]
表3記載の3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールをp−メンタン−3,8−ジオールとしたエモリエントミルク(実施例3及び比較例3)を調製し、各前腕部内部にそれぞれを65mg/cm2塗布し、試験例3と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
表6から明らかなように、p−メンタン−3,8−ジオールに優れた水分保持能が確認された。
【0057】
[調製例1]
(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール(一般式(4)中、R1=C1531,R2=C1735である化合物)、(2S,3R)−2−アセチルアミノオクタデカン−1,3−ジオール(一般式(4)中、R1=C1531,R2=CH3である化合物)、コレステロール、コレステリル12−ヒドロキシステアレートを、2:1:1:2の重量比で混合した。この混合物をクロロホルムに溶解させて均一にし、その後、溶媒を完全に除去し、そして空気中にて放冷してペースト状の混合物を得た。この混合物は、液晶構造を有する脂質組成物である。
【0058】
[調整例2]
調製例1で得た脂質組成物を、フローラルグリーンタイプの高級イメージを持つ表7のクリーム用香料組成物に対して0.4重量%添加したクリーム用香料組成物を調製した。これとは別に、表8の処方にしたがってモデルクリームを20g調製し、ここへ、前記クリーム用香料組成物を0.2g配合して、クリームを調製した(実施例4)。また、比較例4として、表8の処方にしたがってモデルクリームを20g調製し、これに、脂質組成物無添加のクリーム用香料組成物を0.2g配合して、クリーム1を調製した。
【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
[試験例5]
表8記載のクリームを、スライドガラスに薄く載せ、試験サンプルを作成した。6時間室温(25℃/60%RH)にて放置後、質量を測定し、水分蒸発量を検定した。また、各サンプル共に3回の試験を行い平均値より水分保持率を求めた。試験結果を表9に示す。
【0062】
【表9】

【0063】
表9から明らかなように3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有する香料組成物を配合したサンプル(実施例4)に優れた水分保持機能が確認された。
【0064】
[実施例5]
常法に従い、表10の成分からなるコンディショニングシャンプー100gを製造した。
【0065】
【表10】

【0066】
[実施例6]
常法に従い、表11の成分からなるヘアーリンス100gを製造した。
【0067】
【表11】

【0068】
[実施例7]
常法に従い、表12の成分からなるヘアーコンディショナー100gを製造した。
【0069】
【表12】

【0070】
[実施例8]
常法に従い、表13の成分からなるヘアートニック100gを製造した。
【0071】
【表13】

【0072】
[実施例9]
常法に従い、表14の成分からなる液体入浴剤100gを製造した。
【0073】
【表14】

【0074】
[実施例10]
常法に従い、表15の成分からなる液体ボディソープ100gを製造した。
【0075】
【表15】

【0076】
上記実施例5〜実施例10のコンディショニングシャンプー、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー、ヘアートニック、液体入浴剤、液体ボディソープは、何れも使用後、優れた保湿性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、メチル基及び水酸基から選ばれる1種以上が置換していてもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、nは、1乃至3の整数である。)
で表わされるメントール誘導体又はp−メンタン−3,8−ジオールからなる保湿剤。
【請求項2】
メントール誘導体が、一般式(2):
【化2】

(式中、Rは、メチル基及び水酸基から選ばれる1種以上が置換していてもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、nは、1乃至3の整数である。)
で表わされるl−メントール誘導体であることを特徴とする請求項1記載の保湿剤。
【請求項3】
保湿剤が、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2−l−メントキシエチル)エタノール又はp−メンタン−3,8−ジオールであることを特徴とする請求項1又は2記載の保湿剤。

【公開番号】特開2012−92150(P2012−92150A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28194(P2012−28194)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2008−5190(P2008−5190)の分割
【原出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】