説明

保護回路

【課題】シンプルな構成で保護対象となる回路を電源電圧の変動から確実に保護することができる保護回路を提供する。
【解決手段】エミッタに電源ライン1が接続され、コレクタに前記電源ライン1の電圧を電源電圧として動作する回路を含む需要回路2が接続されるPNPトランジスタTrと、前記電源ライン1の電圧が基準電圧よりも小さいときはロウレベルの電圧を前記PNPトランジスタTrのベースに印加し、前記電源ライン1の電圧が基準電圧よりも大きいときはハイレベルの電圧を前記PNPトランジスタTrのベースに印加する比較器3とを含む保護回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐圧の低い回路を電源電圧の変動から確実に保護するための技術に関し、とくにシンプルな構成で保護対象となる回路を電源電圧の変動から確実に保護することができる保護回路を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等の耐圧の低い素子を有する集積回路の電源供給部には、電源電圧の変動から集積回路を保護するための保護回路が設けられる。このような保護回路として、例えば特許文献1には、電源に過電圧が生じたときに導通するツエナダイオード、被保護回路への電源路に直列に挿入されるMOSFET等からなる第1のトランジスタ、ツエナダイオードの非導通時にトランジスタをオンさせツエナダイオードの導通時に第1のトランジスタをオフさせる第2のトランジスタ及びオペアンプを含んで構成される過電圧保護回路が開示されている。また特許文献2には、電源電圧を分圧する抵抗素子及びツエナダイオードと、分圧された電圧が印加される高耐圧MOSトランジスタと、過電圧が被保護対象となる集積回路に供給されるのを遮断する高耐圧MOSトランジスタを含み、これらを上記集積回路と同一半導体基板上に形成した過電圧保護回路が開示されている。
【特許文献1】特開平6−245366号公報
【特許文献2】特開2003−303890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のいずれの過電圧保護回路についても、能動素子として、複数のトランジスタ、ツエナダイオード、オペアンプが必要であり、回路規模を縮小するには限界がある。またツエナダイオードを用いた回路では、過電圧印加時にツエナダイオードに電流が流れるため、発熱や電力ロス等の問題がある。また特許文献2に記載の過電圧保護回路では、高耐圧のMOSトランジスタを半導体基板上に形成しているが、半導体製造プロセスにおいてMOSトランジスタの耐圧を向上させるには素子のチャネル幅(L)を大きくとる必要があり、チップ面積を縮小するには限界がある。
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、シンプルな構成で保護対象となる回路を電源電圧の変動から確実に保護することができる保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のうち主たる発明は、保護回路であって、エミッタに電源ラインが接続され、コレクタに前記電源ラインの電圧を電源電圧として動作する回路を含む需要回路が接続されるPNPトランジスタと、前記電源電圧の大きさに応じて前記PNPトランジスタのベース電圧を制御する比較器と、を含むこととする。
【0006】
本発明の保護回路は、能動素子としてPNPトランジスタと比較器のみを用いて構成することができるので、回路規模を小さくすることができる。また本発明の保護回路では、過電圧時においてPNPトランジスタが殆ど完全にオフされるので、ツエナダイオードを用いた場合のような発熱や電力ロス等の問題も生じない。
【0007】
なお、本発明の保護回路は、飽和状態で動作しているPNPトランジスタの動作速度が、比較器の動作速度よりも充分に遅いことを利用している。すなわち、電源ラインの電圧が所定の電圧より大きくなってPNPトランジスタのエミッタ電圧が上昇した場合でも、PNPトランジスタのコレクタにはエミッタ側の電圧変化の影響が時間差をもって現れるため、エミッタ側の電圧(需要回路に供給される電圧)が過電圧となる前に比較器が動作してPNPトランジスタがオフされる。つまり、本発明におけるPNPトランジスタは、過電圧が保護対象となる回路に伝達する速度を緩和する緩衝装置としての役割と、過電圧の上記回路への伝達を遮断するスイッチとしての役割とを有する。
【0008】
上記比較器は、比較素子を含んで構成される回路であり、一方の入力に電源ラインの電圧に応じた第1の電圧が印加され、他方の入力に上記第1の電圧と比較される第2の電圧が印加される。上記需要回路は、例えば、MOSトランジスタを含んで構成される回路である。また上記需要回路、PNPトランジスタ、及び比較器を集積化した保護回路を構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シンプルな構成で保護対象となる回路(需要回路)を電源電圧の変動から確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明の一実施形態として説明する保護回路を示している。同図において、電源ライン1には、直流の電源電圧VDDが印加されている。電源ライン1には、PNPトランジスタTrのエミッタが接続しており、またPNPトランジスタTrのコレクタには、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等の耐圧の低い素子を含む回路である需要回路2が接続している。PNPトランジスタTrのベースは抵抗R3を介して電源ライン1に接続されている。
【0011】
PNPトランジスタTrのベースには、インバータINVの出力が印加される。インバータINVには、比較素子OPの出力が印加される。比較素子OPの反転入力には、抵抗R1及び抵抗R2の一端が接続され、電源ライン1の電源電圧VDDを分圧した電圧(以下、第1の電圧という)が印加される。
【0012】
上記抵抗R1の他端は接地されている。また上記抵抗R2の他端は電源ライン1に接続されている。比較素子OPの非反転入力には、基準電圧Vref(以下、第2の電圧という)が印加される。比較素子OPは、第1の電圧と第2の電圧との差分に応じた電圧を出力する。
【0013】
次に、電源ライン1に正常な電圧VDDが供給されている状態(以下、正常状態という)における、図1に示す保護回路の動作について説明する。正常状態では、比較素子OPの非反転入力には電圧Vin=(R/(R+R))×VDDが印加される。正常状態において、非反転入力に印加される電圧Vinと基準電圧Vrefとの関係は、Vin<Vrefの関係になっており、比較素子OPの出力はハイレベルになっている。比較素子OPの出力は、インバータINVによって反転され、これによりPNPトランジスタTrのベース電圧Vswはロウレベルになる。PNPトランジスタTrは、ベースにロウレベルが印加されている間は飽和状態で動作しており、従って、正常状態では、電源ライン1の電源電圧VDDが定常的に需要回路2に印加される。
【0014】
次に、電源電圧に異常が生じて電源ライン1の電圧VDDが変動した場合における保護回路の動作について、図2に示すタイミングチャートとともに説明する。今、電源回路に異常が生じて電圧VDDが変動し(t1)、比較素子OPの反転入力に印加される電圧Vinが基準電圧Vref以上になると(t2)、比較素子OPの出力が、ハイレベルからロウレベルに変化する。この場合、PNPトランジスタTrのベースに印加される電圧Vswはハイレベルとなり、これによりPNPトランジスタTrはオフする。
【0015】
ここで上述したように、正常状態においては、PNPトランジスタTrは飽和状態で動作しているので、電源ライン1に印加される電源電圧VDDが変動した場合、その影響はPNPトランジスタTrのコレクタ側に充分な時間差をもって現れる(図2に示すPNPトランジスタTrのコレクタ電圧Vのt1〜t2の期間における変化を参照)。
【0016】
一方、比較素子OPを含んで構成される比較器3は、電源電圧VDDの変化に応じて高速に動作し、電源ライン1に供給される電源電圧VDDが変動して過電圧が生じた場合には、生じた過電圧がPNPトランジスタTrのコレクタ側に現れるよりも前に比較器3によってPNPトランジスタTrがオフされることとなり、これにより需要回路2に過電圧が印加されてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0017】
次に、比較素子OPの反転入力に印加される電圧Vinが再び基準電圧Vrefよりも小さくなると(t3)、比較素子OPの出力はロウレベルからハイレベルに変化する。これによりPNPトランジスタTrのベースに印加される電圧Vswが再びロウレベルとなってPNPトランジスタTRは再びオンし、需要回路2への電圧供給が再開されて正常状態に復帰する。
【0018】
なお、以上に説明した本実施形態の保護回路は、使用する能動素子の数が少ないため、回路規模の小さな保護回路を実現することができる。また本実施形態の保護回路は、過電圧発生時にはPNPトランジスタTrがほぼ完全にオフされるため、ツエナダイオードを用いて構成される保護回路のように、発熱や電力ロス等の問題も生じない。
【0019】
以上、本発明の一実施形態につき詳細に説明したが、以上の実施形態の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
例えば、BiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)製造プロセス等を用いて本発明の保護回路を需要回路と同一の半導体基板上に形成するようにすれば、製造プロセスを簡素化し回路全体をより一層小型化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態として説明する保護回路である。
【図2】本発明の一実施形態として説明する保護回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1 電源ライン
2 回路
3 比較器
Tr PNPトランジスタ
DD 電源電圧
OP 比較素子
INV インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタに電源ラインが接続され、コレクタに前記電源ラインの電圧を電源電圧として動作する回路を含む需要回路が接続されるPNPトランジスタと、
前記電源電圧の大きさに応じて前記PNPトランジスタのベース電圧を制御する比較器と、
を含むこと
を特徴とする保護回路。
【請求項2】
請求項1に記載の保護回路であって、
前記比較器には、一方の入力に電源ラインの電圧に応じた第1の電圧が印加され、他方の入力に前記第1の電圧と比較される第2の電圧が印加されること
を特徴とする保護回路。
【請求項3】
請求項1に記載の保護回路であって、
前記需要回路は、MOSトランジスタを含んで構成されること
を特徴とする保護回路。
【請求項4】
エミッタに電源ラインが接続され、コレクタに前記電源ラインの電圧を電源電圧として動作する回路を含む需要回路が接続されるPNPトランジスタと、
前記電源電圧の大きさに応じて前記PNPトランジスタのベース電圧を制御する比較器と、
前記需要回路と、
を集積化してなる保護回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−96400(P2007−96400A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279323(P2005−279323)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】