説明

信号レベル検出回路

【課題】増幅回路の動作に必要な電流値を増加させることなく、ヒステリシスを用いて耐ノイズ特性を向上させることができる信号レベル検出回路を提供すること。
【解決手段】増幅回路6aの電圧利得は、増幅回路6bの電圧利得より大きく、切替装置6cは、ピークホールド回路7aに増幅回路6aの出力信号が入力している場合に比較回路9からアラーム信号を受信すると、ピークホールド回路7aに出力する信号を増幅回路6aの出力信号から増幅回路6bの出力信号に切り替え、ピークホールド回路7aに増幅回路6bの出力信号が入力している場合に比較回路9からアラーム信号を受信すると、ピークホールド回路7aに出力する信号を増幅回路6bの出力信号から増幅回路6aの出力信号に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号レベル検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の受信信号検出回路及び受信信号処理装置は、信号を増幅するための可変ゲインアンプ回路と、基準電圧を調整するための可変ゲインアンプ回路と、これら二つの可変ゲインアンプ回路のそれぞれの出力側に設けられた二つのピークホールド回路と、この二つのピークホールド回路の出力を比較するヒステリシスコンパレータ回路とを備え、LOS(loss of signal)の検出レベル(電圧)に応じて二つの可変ゲインアンプ回路の利得を制御できる。比較器にヒステリシスコンパレータ回路が用いられることによって耐ノイズ特性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の可変ゲインアンプ回路は、LOS解除の検出レベル付近まで線形性が必要となるが、耐ノイズ特性を向上させる場合には、比較的大きなヒステリシスが必要となるので、この場合、比較的広いダイナミックレンジが可変ゲインアンプ回路に要求される。耐ノイズ特性を向上させる場合、このようなダイナミックレンジを考慮すれば、LOSの検出レベルに対する十分なバックオフ(少なくともヒステリシス量に対応する分のバックオフ)が必要となるので、可変ゲインアンプ回路の消費電流の増大を招く。そこで本発明の目的は、増幅回路の動作に必要な電流値を増加させることなく、ヒステリシスを用いて耐ノイズ特性を向上させることができる信号レベル検出回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の信号レベル検出回路は、入力信号の電圧値を増幅する第1及び第2増幅回路と、前記第1増幅回路又は前記第2増幅回路の何れか一方の出力信号のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第1検出信号を出力する第1ピークホールド回路と、前記第1増幅回路の出力信号と前記第2増幅回路の出力信号とを切り替えて何れか一方の出力信号を前記第1ピークホールド回路に出力する切替装置と、所定の直流電源のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第2検出信号を出力する第2ピークホールド回路と、前記第1検出信号の示すピーク電圧値と前記第2検出信号の示すピーク電圧値とを比較し、この比較結果を示すアラーム信号を前記切替装置に送信する比較回路とを備え、前記第1増幅回路の電圧利得は、前記第2増幅回路の電圧利得より大きく、前記切替装置は、前記第1ピークホールド回路に前記第1増幅回路の出力信号が入力している場合に前記比較回路から前記アラーム信号を受信すると、前記第1ピークホールド回路に出力する信号を前記第1増幅回路の出力信号から前記第2増幅回路の出力信号に切り替え、前記第1ピークホールド回路に前記第2増幅回路の出力信号が入力している場合に前記比較回路から前記アラーム信号を受信すると、前記第1ピークホールド回路に出力する信号を前記第2増幅回路の出力信号から前記第1増幅回路の出力信号に切り替える、ことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、アラーム信号に応じて、予め異なった電圧利得に設定された第1及び第2増幅回路を切り替えることによってヒステリシスが得られる。従って、第1及び第2増幅回路の動作に必要な電流値を増加させることなく、十分なヒステリシス量が得られる。
【0007】
更に、本発明の信号レベル検出回路では、前記第1増幅回路及び前記第2増幅回路のそれぞれは差動増幅回路であるのが好ましい。従って、差動増幅回路である第1及び第2増幅回路のそれぞれの差動対に応じた電圧利得が取得できる。
【0008】
更に、本発明の信号レベル検出回路では、前記第1増幅回路は、第1差動対と、該第1差動対に電流を供給する第1電流源と、第1抵抗器とを有し、前記第1抵抗器の一方の端子は、前記第1差動対の一方の増幅器と前記第1電流源とを接続する電気配線に接続され、前記第1抵抗器の他方の端子は、前記第1差動対の他方の増幅器と前記第1電流源とを接続する電気配線に接続され、前記第2増幅回路は、第2差動対と、該第2差動対に電流を供給する第2電流源と、前記第2差動対を構成する二つの増幅器の間に設けられた第2抵抗器とを有し、前記第2抵抗器の一方の端子は、前記第2差動対の一方の増幅器と前記第2電流源とを接続する電気配線に接続され、前記第2抵抗器の他方の端子は、前記第2差動対の他方の増幅器と前記第2電流源とを接続する電気配線に接続されているのが好ましい。
【0009】
更に、前記第1抵抗器の抵抗値は、前記第2抵抗器の抵抗値よりも小さいのが好ましい。従って、第1及び第2抵抗器の抵抗値を調整することによって、電圧利得が調整できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、増幅回路の動作に必要な電流値を増加させることなく、ヒステリシスを用いて耐ノイズ特性を向上させることができる信号レベル検出回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る信号レベル検出回路の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るヒステリシス制御増幅器の構成を示す図である。
【図3】実施形態に係る信号レベル検出回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1に、実施形態に係る信号レベル検出回路1の構成を示す。信号レベル検出回路1は、入力信号レベルがLOS状態(LOS:Loss of Signal)となっているか否かを、ヒステリシスを用いて検出する装置である。信号レベル検出回路1は、信号入力端子2、増幅回路3、増幅回路4、信号出力端子5、ヒステリシス制御増幅器6、ピークホールド回路7a、ピークホールド回路7b、直流電源8、比較回路9及びアラーム出力端子10を備える。増幅回路3は、外部のトランスインピーダンス回路等から信号入力端子2を介して入力した信号を増幅し、この増幅後の信号(電圧値V1)を後段の増幅回路4及びヒステリシス制御増幅器6に出力する。増幅回路4は、増幅回路3から出力された増幅後の信号を一定の飽和出力になるまで増幅し、この増幅後の信号を信号出力端子5を介して後段のCDR(Clock Data Recovery Unit)等の受信信号処理回路に出力する。
【0013】
ヒステリシス制御増幅器6は、増幅回路6a、増幅回路6b及び切替装置6cを有する。増幅回路3から出力された増幅後の信号は、増幅回路6a及び増幅回路6bに入力する。増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれの出力端子は切替装置6cに接続されている。増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれは、増幅回路3から出力された増幅後の信号が入力すると、この信号を増幅し、そして、この増幅後の信号を切替装置6cに出力する。切替装置6cは、スイッチ64a及びスイッチ64bを有する。切替装置6cは、増幅回路6aの出力信号と増幅回路6bの出力信号とを切り替えて何れか一方の出力信号をピークホールド回路7aに出力する。
【0014】
ピークホールド回路7aは、切替装置6cを介して入力する増幅回路6a又は増幅回路6bの何れか一方の出力信号のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第1検出信号(電圧値V2)を後段の比較回路9に出力する。ピークホールド回路7bは、ピークホールド回路7aと同様の特性(同規格)を有する。ピークホールド回路7bは、基準電圧Vrefを供給する直流電源8のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第2検出信号(電圧値V3)を後段の比較回路9に出力する。
【0015】
比較回路9は、ピークホールド回路7aから出力される第1検出信号の示すピーク電圧値と、ピークホールド回路7bから出力される第2検出信号の示すピーク電圧値とを比較し、この比較結果を示すアラーム信号を前記切替装置に送信する。このアラーム信号の電圧値V4は、受信信号レベル判定出力であり、論理値(“0”値又は“1”値)を表す(図3(B)を参照)。比較回路9から出力されるアラーム信号は、増幅回路3からヒステリシス制御増幅器6に入力する信号の電圧値V1が所定基準値(電圧値V3)以下の場合(LOS状態)に“1”値を示す信号となり、電圧値V1がこの所定基準値を上回っているSD(Signal Detect)状態の場合に“0”値を示す信号となる。比較回路9から出力されるアラーム信号は、アラーム出力端子10を介して外部に出力され、例えば光データリンクの状態監視等に使用される。また、比較回路9から出力されるアラーム信号は、切替装置6cに出力される。
【0016】
切替装置6cは、SD状態の場合に、比較回路9から“1”値のアラーム信号を受信すると(SD状態からLOS状態に変わると)、ピークホールド回路7aに出力する信号を増幅回路6aの出力信号から増幅回路6bの出力信号に切り替える。切替装置6cは、LOS状態の場合に、比較回路9から“0”値のアラーム信号を受信すると(LOS状態からSD状態に変わると)、ピークホールド回路7aに出力する信号を増幅回路6bの出力信号から増幅回路6aの出力信号に切り替える。
【0017】
なお、図1に示す切替装置6cは、切替装置6cの機能(ピークホールド回路7aに入力する信号を増幅回路6aの出力信号と増幅回路6bの出力信号との間で切り替える機能)を模式的に示したものであり、増幅回路6a及び増幅回路6bの各出力端子が切替装置6cに接続されている図1の構成でなくてもよい。以下、本実施形態において、切替装置6cは、増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれの動作を切り替えるものとする(増幅回路6a及び増幅回路6bの何れか一方のみを動作させる)。この場合、増幅回路6a及び増幅回路6bそれぞれの出力端子は、いずれも、切替装置6cを介さずにピークホールド回路7aに接続された状態となっている(図2参照)。
【0018】
増幅回路6aの電圧利得は、増幅回路6bの電圧利得よりも大きい。増幅回路6aの入出力特性における線形範囲(ダイナミックレンジ)の上限(線形範囲内において電圧値V1のとり得る上限)は、LOS-Assertレベルk1に設定されており、増幅回路6bの入出力特性における線形範囲の上限(線形範囲内において電圧値V1のとり得る上限)はLOS-Deassertレベルk2に設定されている(図3(A)及び図3(C)を参照)。LOS-Deassertレベルk2は、LOS-Assertレベルk1より大きく、LOS-Deassertレベルk2とLOS-Assertレベルk1との差は、信号レベル検出回路1のヒステリシス量に対応している。
【0019】
次に、ヒステリシス制御増幅器6の構成を説明する。図2に、実施形態に係るヒステリシス制御増幅器6の構成を示す。ヒステリシス制御増幅器6は、増幅回路6a、増幅回路6b及び切替装置6cを有する。増幅回路6aは、差動増幅回路であり、トランスコンダクタンス増幅回路61aと抵抗器R1とを有する。増幅回路6bは、差動増幅回路であり、トランスコンダクタンス増幅回路61bと抵抗器R2とを有する。切替装置6cは、スイッチ64aとスイッチ64bとを有する。なお、増幅回路6a及び増幅回路6bは、差動でなくシングルエンドであってもよい。
【0020】
ヒステリシス制御増幅器6は、入力端子INP及び入力端子INNと、出力端子OUTP及び出力端子OUTNとを更に有する。入力端子INP及び入力端子INNは、増幅回路3の出力端子に接続されており、増幅回路3の出力信号(電圧値V1)は入力端子INP及び入力端子INNを介して増幅回路6a及び増幅回路6bに入力する。出力端子OUTP及び出力端子OUTNはピークホールド回路7aの入力端子に接続されており、増幅回路6a又は増幅回路6bの出力信号は切替装置6cを介してピークホールド回路7aに入力する。入力端子INP及び入力端子INNから入力される信号は、増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれにおいて増幅され、この増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれによって増幅された各信号は、出力端子(出力端子OUTP及び出力端子OUTN)及び切替装置6cを介してピークホールド回路7aに出力される。
【0021】
トランスコンダクタンス増幅回路61aは、差動対62aと電流源63aとを有する。差動対62aは、トランジスタQ1a、トランジスタQ2a及び抵抗器R3aを有する。電流源63aは、トランジスタQ3a、トランジスタQ4a、抵抗器R4a及び抵抗器R5aを有する。トランジスタQ1aのベース端子は入力端子INPに接続され、トランジスタQ1aのエミッタ端子はトランジスタQ3aのコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ1aのコレクタ端子は出力端子OUTNに接続され、更に、抵抗器R1を介して電源Vccに接続されている。トランジスタQ2aのベース端子は入力端子INNに接続され、トランジスタQ2aのエミッタ端子はトランジスタQ4aのコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ2aのコレクタ端子は出力端子OUTPに接続され、更に、抵抗器R2を介して電源Vccに接続されている。
【0022】
トランジスタQ3aのベース端子は切替装置6cのスイッチ64aに接続され、トランジスタQ3aのエミッタ端子は抵抗器R4aを介してGNDに接続され、トランジスタQ3aのコレクタ端子はトランジスタQ1aのエミッタ端子に接続されている。トランジスタQ4aのベース端子は切替装置6cのスイッチ64aに接続されている。トランジスタQ4aのエミッタ端子は抵抗器R5aを介してGNDに接続され、トランジスタQ4aのコレクタ端子はトランジスタQ2aのエミッタ端子に接続されている。
【0023】
抵抗器R3aの一方の端子は、トランジスタQ1aのエミッタ端子とトランジスタQ3aのコレクタ端子とに接続されている。抵抗器R3aの他方の端子は、トランジスタQ2aのエミッタ端子とトランジスタQ4aのコレクタ端子とに接続されている。
【0024】
トランスコンダクタンス増幅回路61bは、差動対62bと電流源63bとを有する。差動対62bは、トランジスタQ1b、トランジスタQ2b及び抵抗器R3bを有する。電流源63bは、トランジスタQ3b、トランジスタQ4b、抵抗器R4b及び抵抗器R5bを有する。トランジスタQ1bのベース端子は入力端子INPに接続され、トランジスタQ1bのエミッタ端子はトランジスタQ3bのコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ1bのコレクタ端子は出力端子OUTNに接続され、更に、抵抗器R2を介して電源Vccに接続されている。トランジスタQ2bのベース端子は入力端子INNに接続され、トランジスタQ2bのエミッタ端子はトランジスタQ4bのコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ2bのコレクタ端子は出力端子OUTPに接続され、更に、抵抗器R1を介して電源Vccに接続されている。
【0025】
トランジスタQ3bのベース端子は切替装置6cのスイッチ64bに接続され、トランジスタQ3bのエミッタ端子は抵抗器R4bを介してGNDに接続され、トランジスタQ3bのコレクタ端子はトランジスタQ1bのエミッタ端子に接続されている。トランジスタQ4bのベース端子は切替装置6cのスイッチ64bに接続されている。トランジスタQ4bのエミッタ端子は抵抗器R5bを介してGNDに接続され、トランジスタQ4bのコレクタ端子はトランジスタQ2bのエミッタ端子に接続されている。
【0026】
抵抗器R3bの一方の端子は、トランジスタQ1bのエミッタ端子とトランジスタQ3bのコレクタ端子とに接続されている。抵抗器R3bの他方の端子は、トランジスタQ2bのエミッタ端子とトランジスタQ4bのコレクタ端子とに接続されている。
【0027】
スイッチ64aは、アラーム入力端子LOSを介して比較回路9から入力されるアラーム信号(“1”値又は“0”値)に応じて、トランジスタQ3aのベース端子とトランジスタQ4aのベース端子とを共に、直流電源Vbに接続するか、又は、GNDに接続する。スイッチ64bは、アラーム入力端子LOSを介して比較回路9から入力されるアラーム信号(“1”値又は“0”値)に応じて、トランジスタQ3bのベース端子とトランジスタQ4bのベース端子とを共に、直流電源Vbに接続するか、又は、GNDに接続する。また、スイッチ64aとスイッチ64bとは相補動作を行う。すなわち、スイッチ64aが、トランジスタQ3aのベース端子とトランジスタQ4aのベース端子とを共に、直流電源Vbに接続する場合に、トランジスタQ3bのベース端子とトランジスタQ4bのベース端子とを共に、GNDに接続する。スイッチ64aが、トランジスタQ3aのベース端子とトランジスタQ4aのベース端子とを共に、GNDに接続する場合に、トランジスタQ3bのベース端子とトランジスタQ4bのベース端子とを共に、直流電源Vbに接続する。
【0028】
ここで、トランジスタQ1aとトランジスタQ1bとは同様の特性(同規格)を有しており、トランジスタQ2aとトランジスタQ2bとは同様の特性(同規格)を有しており、トランジスタQ3aとトランジスタQ3bとは同様の特性(同規格)を有しており、トランジスタQ4aとトランジスタQ4bとは同様の特性(同規格)を有している。抵抗器R1の抵抗値と抵抗器R2の抵抗値とは同様の特性(同規格)を有しており、抵抗器R4aの抵抗値と抵抗器R4bの抵抗値とは同様の特性(同規格)を有しており、抵抗器R5aの抵抗値と抵抗器R5bの抵抗値とは同様の特性(同規格)を有している。抵抗器R3aの抵抗値は、抵抗器R3bの抵抗値よりも小さい。また、トランジスタQ1aのエミッタ端子とトランジスタQ3aのコレクタ端子との間の電流値、トランジスタQ2aのエミッタ端子とトランジスタQ4aのコレクタ端子との間の電流値、トランジスタQ1bのエミッタ端子とトランジスタQ3bのコレクタ端子との間の電流値、及び、トランジスタQ2bのエミッタ端子とトランジスタQ4bのコレクタ端子との間の電流値は同様であり、電流Ioとする。
【0029】
従って、増幅回路6aの差動利得は、2×(抵抗器R1の抵抗値)/(2×VT/Io+(抵抗器R3aの抵抗値))となり、増幅回路6aの差動利得は、2×(抵抗器R2の抵抗値)/(2×VT/Io+(抵抗器R3bの抵抗値))となる。VTは、バイポーラトランジスタにおける熱電圧(kT/qであり、摂氏27度において26mVとなる)(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、q:素電荷量)である。このように、抵抗器R1の抵抗値と抵抗器R2の抵抗値とが同様の特性(同規格)を有し、電流値Ioが共通しているので、抵抗器R3aの抵抗値と抵抗器R3bの抵抗値とをそれぞれ変えることによって、増幅回路6aの差動利得と増幅回路6bの差動利得とをそれぞれ調整することができる。従って、増幅回路6aの差動利得と増幅回路6bの差動利得との差分も、抵抗器R3a及び抵抗器R3bのそれぞれの抵抗値を変えることによって調整可能となる。一方、出力端子OUTP及び出力端子OUTNから出力される差動出力電圧の最大値は、増幅回路6aを動作させた場合には2×Io×(抵抗器R1の抵抗値)となり、増幅回路6bを動作させた場合には2×Io×(抵抗器R2の抵抗値)となり、抵抗器R1の抵抗値と抵抗器R2の抵抗値とは同様であり、電流値Ioも共通しているので、増幅回路6a又は増幅回路6bの何れを動作させた場合であっても同様となっている。以上のような構成のヒステリシス制御増幅器6によれば、比較回路9からのアラーム信号に応じて、互いに電圧利得の異なる増幅回路6aと増幅回路6bとを切り替えるので、消費電流を増やすことなく、ヒステリシスに必要な線形性(ダイナミックレンジ)を確保できる。
【0030】
次に、図3を参照して、信号レベル検出回路1の動作を説明する。図3(A)は、増幅回路3からヒステリシス制御増幅器6に入力する信号の強度(電圧値V1)の時間変化の一例を示す図である。図3(B)は、図3(A)に示す信号変化に応じて比較回路9から出力されるアラーム信号(電圧値V4)の時間変化を示す図である。ステップS1(時刻T1までの期間)において、電圧値V1は、時間の経過と共に減少し、LOS-Deassertレベルk2を下回る。ステップS1の場合、電圧値V4は“0”値を示す(SD状態)。そして、ピークホールド回路7aには、増幅回路6aから出力される信号が入力している。
【0031】
ステップS1の後、ステップS2(時刻T1)において電圧値V1がLOS-Assertレベルk1と同様の値になると、電圧値V4は“1”値を示す(LOS状態)。そして、切替装置6cは、ピークホールド回路7aに入力する信号を、増幅回路6aの出力信号から増幅回路6bの出力信号に切り替える。ステップS2の後、ステップS3(時刻T1〜時刻T2)において、電圧値V1は更に減少する。ステップS3の場合、電圧値V4は“1”値を示す。ステップS3の後、ステップS4(時刻T2〜時刻T3)において、電圧値V1は、LOS-Assertレベルk1を上回り、LOS-Deassertレベルk2に至るまで増加する。ステップS4の場合、電圧値V4は“1”値を示す。ステップS3〜ステップS4の場合、ピークホールド回路7aには、増幅回路6bからの出力信号が入力する。
【0032】
ステップS4の後、ステップS5(時刻T3)において電圧値V1がLOS-Deassertレベルk2と同様の値になると、電圧値V4は“0”値を示す。そして、切替装置6cは、ピークホールド回路7aに入力する信号を、増幅回路6bの出力信号から増幅回路6aの出力信号に切り替える。
【0033】
以上説明したステップS1〜ステップS5の内容を図3(C)を参照して説明する。図3(C)には、ヒステリシス制御増幅器6に入力する信号(電圧値V1)と、ヒステリシス制御増幅器6からピークホールド回路7aを介して出力される第1検出信号(電圧値V2)との相関関係が示されている。ステップS1において、電圧値V2は、電圧値V1の減少に応じて、ピークホールド回路7bから出力される第2検出信号の電圧値V3(ポイントP1)に至るまで(電圧値V1がLOS-Assertレベルk1に至るまで)、増幅回路6aの動作を示すグラフG1に沿って減少する。ステップS1の場合、アラーム信号は“0”値を示す。
【0034】
ステップS1の後、ステップS2において電圧値V1がLOS-Assertレベルk1と同様の値になると、切替装置6cは、アラーム信号が“0”値から“1”値に切り替わること応じて、ピークホールド回路7aに入力する信号を、増幅回路6aの出力信号から増幅回路6bの出力信号に切り替えるので、電圧値V2は、増幅回路6aの動作を示すグラフG1上のポイントP1から増幅回路6bの動作を示すグラフG2上のポイントP2に遷移する。ステップS2の後、電圧値V2は、ステップS3において、電圧値V1の減少に応じて、グラフG2に沿って更に減少し、グラフG2上のポイントP3に至る。ステップS3の後、電圧値V2は、ステップS4において、電圧値V1の増加に応じて、電圧値V3(ポイントP4)に至るまで(電圧値V1がLOS-Deassertレベルk2に至るまで)、グラフG2に沿って増加する。ステップS3〜ステップS4の場合、アラーム信号は“1”値を示す。
【0035】
ステップS4の後、ステップS5において電圧値V1がLOS-Deassertレベルk2と同様の値になると、切替装置6cは、アラーム信号が“1”値から“0”値に切り替わることに応じて、ピークホールド回路7aに入力する信号を、増幅回路6bの出力信号から増幅回路6aの出力信号に切り替えるので、電圧値V2は、増幅回路6bの動作を示すグラフG2上のポイントP4から増幅回路6aの動作を示すグラフG1上のポイントP5に遷移する。
【0036】
以上説明したように、信号レベル検出回路1は、アラーム信号の値(“1”値又は“0”値)に応じて、予め異なった電圧利得に設定された増幅回路6aと増幅回路6bとを切り替えることによってヒステリシスを得ている。従って、増幅回路6a及び増幅回路6bの動作に必要な電流値を増加させることなく、十分なヒステリシス量が得られる。更に、増幅回路6a及び増幅回路6bは差動増幅回路なので、増幅回路6a及び増幅回路6bのそれぞれの差動対(差動対62a及び差動対62b)に応じた電圧利得が取得できる。
【0037】
増幅回路6aの電圧利得と増幅回路6bの電圧利得との差は、増幅回路6aの差動対62aを構成するトランジスタQ1a及びトランジスタQ2aのエミッタ端子間(このエミッタ端子は電流源63aに接続されている)に設けられた抵抗器R3aと、増幅回路6bの差動対62bを構成するトランジスタQ1b及びトランジスタQ2bのエミッタ端子間(このエミッタ端子は電流源63bに接続されている)に設けられた抵抗器R3bとの抵抗値の差に依存する。そして、増幅回路6a及び増幅回路6bの電圧利得の線形性(ダイナミックレンジ)は、抵抗器R3a及び抵抗器R3bの抵抗値にそれぞれ依存する。従って、抵抗器R3a及び抵抗器R3bの抵抗値を調整することによって、増幅回路6a及び増幅回路6bの電圧利得が調整できるので、好適なヒステリシス量と電圧利得の線形性とが得られる。
【0038】
特に上記線形性の範囲を拡大するには(広いダイナミックレンジを確保するには)、増幅回路6aの抵抗器R1の抵抗値と増幅回路6bの抵抗器R2の抵抗値とを大きくする方法と、増幅回路6aの差動対62aと増幅回路6bの差動対62bとに供給する電流値Ioを増加する方法とがあるが、抵抗器R1の抵抗値と増幅回路6bの抵抗器R2の抵抗値とを大きくすれば10Gb/s等の高速動作に対応するのが困難となり、また、電流Ioを増加すれば消費電流の増大を招く。これに対し、本実施形態に係る信号レベル検出回路1の場合、抵抗器R3a及び抵抗器R3bの抵抗値のみを調整することによって、線形性の範囲の調整が行える。
【0039】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0040】
1…信号レベル検出回路、10…アラーム出力端子、2…信号入力端子、3,4…増幅回路、5…信号出力端子、6…ヒステリシス制御増幅器、61a,61b…トランスコンダクタンス増幅回路、62a,62b…差動対、63a,63b…電流源、64a,64b…スイッチ、6a,6b…増幅回路、6c…切替装置、7a,7b…ピークホールド回路、8…直流電源、9…比較回路、INP…入力端子、INN…入力端子、k1…LOS-Assertレベル、k2…LOS-Deassertレベル、LOS…アラーム入力端子、OUTP…出力端子、OUTN…出力端子、Q1a,Q1b,Q2a,Q2b,Q3a,Q3b,Q4a,Q4b…トランジスタ、R1,R2,R3a,R3b,R4a,R4b,R5a,R5b…抵抗器、Vb…直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の電圧値を増幅する第1及び第2増幅回路と、
前記第1増幅回路又は前記第2増幅回路の何れか一方の出力信号のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第1検出信号を出力する第1ピークホールド回路と、
前記第1増幅回路の出力信号と前記第2増幅回路の出力信号とを切り替えて何れか一方の出力信号を前記第1ピークホールド回路に出力する切替装置と、
所定の直流電源のピーク電圧値を検出し、この検出結果を示す第2検出信号を出力する第2ピークホールド回路と、
前記第1検出信号の示すピーク電圧値と前記第2検出信号の示すピーク電圧値とを比較し、この比較結果を示すアラーム信号を前記切替装置に送信する比較回路と
を備え、
前記第1増幅回路の電圧利得は、前記第2増幅回路の電圧利得より大きく、
前記切替装置は、前記第1ピークホールド回路に前記第1増幅回路の出力信号が入力している場合に前記比較回路から前記アラーム信号を受信すると、前記第1ピークホールド回路に出力する信号を前記第1増幅回路の出力信号から前記第2増幅回路の出力信号に切り替え、前記第1ピークホールド回路に前記第2増幅回路の出力信号が入力している場合に前記比較回路から前記アラーム信号を受信すると、前記第1ピークホールド回路に出力する信号を前記第2増幅回路の出力信号から前記第1増幅回路の出力信号に切り替える、ことを特徴とする信号レベル検出回路。
【請求項2】
前記第1増幅回路及び前記第2増幅回路のそれぞれは差動増幅回路である、ことを特徴とする請求項1に記載の信号レベル検出回路。
【請求項3】
前記第1増幅回路は、第1差動対と、該第1差動対に電流を供給する第1電流源と、第1抵抗器とを有し、
前記第1抵抗器の一方の端子は、前記第1差動対の一方の増幅器と前記第1電流源とを接続する電気配線に接続され、
前記第1抵抗器の他方の端子は、前記第1差動対の他方の増幅器と前記第1電流源とを接続する電気配線に接続され、
前記第2増幅回路は、第2差動対と、該第2差動対に電流を供給する第2電流源と、前記第2差動対を構成する二つの増幅器の間に設けられた第2抵抗器とを有し、
前記第2抵抗器の一方の端子は、前記第2差動対の一方の増幅器と前記第2電流源とを接続する電気配線に接続され、
前記第2抵抗器の他方の端子は、前記第2差動対の他方の増幅器と前記第2電流源とを接続する電気配線に接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号レベル検出回路。
【請求項4】
前記第1抵抗器の抵抗値は、前記第2抵抗器の抵抗値よりも小さい、ことを特徴とする請求項3に記載の信号レベル検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−263428(P2010−263428A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112903(P2009−112903)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】