説明

信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置

【課題】信号(電磁波)の漏洩を防止することができるようにする。
【解決手段】間隔を空けて互いに対向配置される第1および第2の基板10,20を備える。第1および第2の基板10,20を互いに対向配置した状態において、第1および第2の共振部1,2が並列的に配置され、それぞれが所定の共振周波数f1で共振して互いに電磁結合することで、所定の共振周波数f1を含む所定の通過帯域で信号伝送を行う。第1および第2の基板10,20が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、第1および第2の共振部1,2を構成していた各共振器11,21,12,22がそれぞれ、所定の共振周波数f1とは異なる他の共振周波数f0で共振する。これにより、第1および第2の基板10,20を互いに十分に離した状態では、各共振器11,21,12,22からの信号の漏洩を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号(電磁波)の伝送を行う信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の共振器を電磁結合させて信号(電磁波)の伝送を行う伝送装置が知られている。例えば非特許文献1には、空中に配置されたスパイラル状の送電側コイルおよび受電側コイルを、共鳴(Resonance)現象を利用して電磁結合することで、無線式の送電システムを実現する方法が提案されている。この送電システムでは、送電側コイルおよび受電側コイルのそれぞれに、励振用のループ状導体を配置し、送電側のループ状導体には電力を供給する高周波電源回路が接続され、受信側のループ状導体には負荷となるデバイスが接続される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances", Science vol.317,pp.83-86,2007-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の無線式の送電システムでは、送電側コイルおよび受電側コイル、ならびに励振用のループ状導体はそれぞれ同一の共振周波数f0で共振する。基本的には、送電側コイルと受電側コイルとで、共振周波数f0を通過帯域とする2段のBPF(パンドパスフィルタ)として動作する。この送電システムでは、送電側コイルと受電側コイルとを電磁結合させていない場合の単独での共振周波数の帯域が、電磁結合させている状態での共振周波数f0の帯域に含まれているため、例えば送電側コイルと受電側コイルとを電磁結合させていない状態であっても、送電側コイルから電力が放射されてしまう。この送電システムと同様の原理で信号の伝送を行う場合には、信号(電磁波)の漏洩が問題となる。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、信号(電磁波)の漏洩を防止することができるようにした信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る信号伝送装置は、複数の基板と、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の方向とは異なる第2の方向に並列的に配置され、それぞれが所定の共振周波数で共振して互いに電磁結合することで、隣接するもの同士の間で所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号の伝送を行う複数の共振部とを備え、複数の基板のうち少なくとも1つの基板は第2の方向に2以上の共振器を有し、他の1または2以上の基板は第2の方向にそれぞれ1以上の共振器を有しているものである。
そして、複数の共振部のうち少なくとも1つの共振部は、複数の基板間において第1の方向に互いに対向する複数の共振器で構成され、それら互いに対向する複数の共振器が互いに混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、結合共振器を形成していた複数の共振器が、各基板ごとに所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するようにしたものである。
【0007】
本発明によるフィルタは、上記した本発明の第1の観点に係る信号伝送装置と同様の構成でフィルタとして動作させるようにしたものである。
【0008】
本発明による基板間通信装置は、上記した本発明の第1の観点に係る信号伝送装置の構成において、複数の基板のうちの少なくとも1つの基板における第1の共振器に物理的に直接接続、または第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の入出力端子と、第1の共振器が形成された基板とは異なる少なくとも1つの他の基板における他の共振器に物理的に直接接続、または他の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の入出力端子とをさらに備え、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、異なる基板間で信号伝送を行うようにしたものである。
【0009】
本発明の第1の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置では、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の方向とは異なる第2の方向に複数の共振部が並列的に配置される。複数の共振部は、それぞれが所定の共振周波数で共振して互いに電磁結合することで、隣接するもの同士の間で所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号の伝送を行う。複数の共振部のうち少なくとも1つの共振部は、複数の共振器が混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、結合共振器を形成していた複数の共振器が、各基板ごとに所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振する。
すなわち、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態での周波数特性と、互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、複数の基板が互いに電磁結合している状態では所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送するが、電磁結合しないよう十分に離間した状態では所定の通過帯域では信号伝送しない状態となる。
【0010】
本発明の第1の観点に係る信号伝送装置またはフィルタにおいて、複数の共振部のうち第1の共振部を構成する少なくとも1つの第1の共振器に物理的に直接接続、または第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の入出力端子と、第1の共振部とは異なる他の共振部を構成する少なくとも1つの他の共振器に物理的に直接接続、または他の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の入出力端子とをさらに備え、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、異なる基板間または同一の基板内で信号伝送を行うようにしても良い。
【0011】
また、本発明の第1の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、第1の入出力端子に、所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数の信号を遮断するフィルタ手段が接続されていても良い。
【0012】
また、本発明の第1の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、結合共振器を形成する複数の共振器は、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、各基板ごとにそれぞれ同一の他の共振周波数で共振するようにしても良い。
または、複数の基板のうち、第2の方向に2以上の共振器を有する基板内では、隣り合う共振器の単独での共振周波数が互いに異なるものとされていても良い。
【0013】
また、本発明の第1の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、複数の共振部のうち、第1の共振部と第2の共振部とがそれぞれ、結合共振器を形成する構成とされ、第1の共振部を構成する複数の共振器と、第2の共振部を構成する他の複数の共振器とが、同一の2以上の基板に形成されていても良い。
または、複数の共振部のうち、第1の共振部と第2の共振部とがそれぞれ、結合共振器を形成する構成とされ、第1の共振部と第2の共振部とが互いに第2の方向に隣接配置され、第1の共振部を構成する複数の共振器と、第2の共振部を構成する他の複数の共振器とが、部分的に異なる基板に形成されていても良い。
【0014】
本発明の第2の観点に係る信号伝送装置は、複数の基板と、複数の基板のそれぞれに形成された共振器と、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、互いに対向する複数の共振器同士が互いに混成共振モードで電磁結合することにより形成され、全体として所定の共振周波数で共振する結合共振器と、複数の基板のうちの少なくとも1つの基板の共振器に対して設けられ、結合共振器との間で所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号を通過させるフィルタ手段とを備えたものである。そして、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、結合共振器を形成していた複数の共振器が、各基板ごとに所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされ、フィルタ手段が、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数の信号を遮断するようにしたものである。
【0015】
本発明の第2の観点に係る信号伝送装置では、複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、複数の共振器が混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、結合共振器を形成していた複数の共振器が、各基板ごとに所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振する。すなわち、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態での周波数特性と、互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、複数の基板が互いに電磁結合している状態では所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送するが、電磁結合しないよう十分に離間した状態では所定の通過帯域では信号伝送しない状態となる。
さらに、少なくとも1つの基板では、複数の基板を互いに対向配置しているか否かに関わらず、フィルタ手段によって、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数の信号が遮断される。これにより、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、所定の通過帯域では信号伝送しない状態になると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数でも信号伝送しない状態になる。
【0016】
なお、本発明の第1もしくは第2の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、「信号伝送」とは、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のような信号伝送に限らず、電力の送電/受電のような電力伝送も含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1もしくは第2の観点に係る信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置によれば、複数の共振器を混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、結合共振器を形成していた複数の共振器が、各基板ごとに所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するようにしたので、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態での周波数特性と、互いに電磁結合している状態での周波数特性とを異なる状態にすることができる。このため、複数の基板が互いに電磁結合している状態では所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送するが、電磁結合しないよう十分に離間した状態では所定の通過帯域では信号伝送しない状態となり、これにより、複数の基板を互いに十分に離した状態では、各基板に形成された共振器からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0018】
特に、本発明の第2の観点に係る信号伝送装置によれば、少なくとも1つの基板において、フィルタ手段によって、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数の信号を遮断するようにしたので、複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、所定の通過帯域では信号伝送しない状態になると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数でも信号伝送しない状態になる。これにより、信号(電磁波)の漏洩をより効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(フィルタ、基板間通信装置)の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図2】比較例の共振器構造を有する基板を示す断面図である。
【図3】図2に示した基板を2つ対向配置した構造を示す断面図である。
【図4】(A)は1つの共振器による共振周波数を示す説明図であり、(B)は2つの共振器による共振周波数を示す説明図である。
【図5】結合共振器を2つ並列配置した場合の共振周波数を示す説明図である。
【図6】通過帯域についての説明図である。
【図7】共振器の第1の具体例を示す平面図である。
【図8】共振器の第2の具体例を示す平面図である。
【図9】共振器の第3の具体例を示す平面図である。
【図10】共振器の第4の具体例を示す平面図である。
【図11】共振器の第5の具体例を示す平面図である。
【図12】共振器の第6の具体例を示す平面図である。
【図13】共振器の第7の具体例を示す平面図である。
【図14】共振器の第8の具体例を示す平面図である。
【図15】共振器の第9の具体例を示す回路図である。
【図16】共振器の第10の具体例を示す回路図である。
【図17】図1に示した信号伝送装置の変形例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の第1の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の第2の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の第3の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の第4の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図23】本発明の第4の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図24】本発明の第5の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図25】本発明の第6の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図26】本発明の第7の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図27】本発明の第8の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図28】本発明の第9の実施の形態に係る信号伝送装置の第1の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図29】本発明の第9の実施の形態に係る信号伝送装置の第2の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図30】本発明の第9の実施の形態に係る信号伝送装置の第3の構成例を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図31】直列共振回路によるバンドパスフィルタの一例を示す回路図である。
【図32】並列共振回路によるバンドパスフィルタの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
[信号伝送装置の全体構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(基板間通信装置またはフィルタ)の全体構成例を示している。本実施の形態に係る信号伝送装置は、第1の方向(図のZ方向)に互いに対向配置される第1の基板10および第2の基板20を備えている。この信号伝送装置はまた、第1の入出力端子51および第2の入出力端子52を備えている。第1の基板10および第2の基板20は誘電体基板であり、基板材料とは異なる材料による層(誘電率の異なる層、例えば空気層)を挟んで、間隔(基板間距離Da)を空けて互いに対向配置されている。
【0022】
第1の基板10には、第2の方向(図のY方向)に第1および第2の共振器11,12が並列的に形成されている。第2の基板20にも同様に、第2の方向に第1および第2の共振器21,22が並列的に形成されている。第1の基板10における第1および第2の共振器11,12は、後述する図7〜図16に示すような種々のタイプの共振器で構成されている。例えば、線路状の電極パターンよりなる線路型共振器、例えばλ/4共振器(1/4波長共振器)、λ/2共振器(1/2波長共振器)、3λ/4共振器(3/4波長共振器)、またはλ共振器(1波長共振器)で構成されている。第2の基板20における第1および第2の共振器21,22についても同様である。なお、図1では、各共振器11,12,21,22が基板内部に形成された例を示しているが、各共振器11,12,21,22がストリップ線路のようにして、基板10,20の表面(または裏面)に形成されていても良い。
【0023】
この信号伝送装置は、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第1の共振部1が形成されている。また、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1および第2の共振部1,2が第2の方向に並列的に配置されている。
【0024】
第1および第2の共振部1,2は、それぞれが所定の共振周波数(後述の混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2)で共振して互いに電磁結合するようになっている。第1および第2の共振部1,2の間では、所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送が行われるようになっている。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう離間した状態では、第1および第2の共振部1,2を形成していた各共振器11,12,21,22は、所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数f0で共振するものとされている。
【0025】
第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21は、例えば空気層を介して互いに、主として磁界成分による電磁結合(磁界結合)をしていることが好ましい。同様に、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22は、主として磁界成分による電磁結合(磁界結合)をしていることが好ましい。主として磁界成分による電磁結合をさせることにより、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布がほとんど無くなる。これにより、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第1の共振部1および第2の共振部2における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離Daの変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0026】
第1の入出力端子51は、第1の基板10における第1の共振器11に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。これにより、第1の入出力端子51と第1の共振部1との間で信号伝送が可能とされている。第2の入出力端子52は、第2の基板20における第2の共振器22に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。これにより、第2の入出力端子52と第2の共振部2との間で信号伝送が可能とされている。第1の共振部1と第2の共振部2は電磁結合されているので、第1の入出力端子51と第2の入出力端子52との間での信号伝送が可能とされている。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10と第2の基板20との2つの基板間での信号伝送が可能とされている。
【0027】
[動作および作用]
この信号伝送装置では、第1の共振部1は、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とが後述する混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とのそれぞれの単独の共振周波数が、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる他の共振周波数f0となる。
【0028】
同様に、第2の共振部2は、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22とが後述する混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10における第2の共振器21と第2の基板20における第2の共振器22とのそれぞれの単独の共振周波数が、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる他の共振周波数f0となる。
【0029】
従って、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態では第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を含む所定の通過帯域で信号伝送する。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では単独の他の共振周波数f0で共振するために、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を含む所定の通過帯域では信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを十分に離した状態では、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)と同帯域の信号が入力されたとしても反射されるので、各共振器11,12,21,22からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0030】
(混成共振モードによる信号伝送の原理)
ここで、上述の混成共振モードによる信号伝送の原理について説明する。説明を簡単にするために、比較例の共振器構造として、図2に示したように第1の基板110の内部に1つの共振器111が形成されているものを考える。この比較例の共振器構造では、図4(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような共振モードとなる。これに対して、図3に示したように、図2に示した比較例の共振器構造と同様の構造を有する第2の基板120を、基板間距離Daを空けて第1の基板110に対向配置して電磁結合した場合について考える。第2の基板120の内部には1つの共振器121が形成されている。第2の基板120における共振器121についても、第1の基板110における共振器111と構造的には同じなので、第1の基板110に電磁結合していない単独の状態では、図4(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような単独の共振モードとなる。しかしながら、図3に示した2つの共振器111,121を電磁結合した状態では、電波の飛び移り効果により、単独での共振周波数f0で共振するのではなく、図4(B)に示したように、単独での共振周波数f0よりも低い第1の共振周波数f1となる第1の共振モードと、単独での共振周波数f0よりも高い第2の共振周波数f2となる第2の共振モードとの混成共振モードを形成して共振する。
【0031】
図3に示した混成共振モードで電磁結合する2つの共振器111,121を全体として1つの結合共振器101とみなすと、同様の共振器構造を並列配置することで、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を含む帯域を通過帯域とするフィルタを構成することができる。この第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)近傍の周波数の信号を入力することで信号伝送が可能となる。図1に示した本実施の形態に係る信号伝送装置は、そのような構成とされている。
【0032】
以上の原理を踏まえ、本実施の形態に係る信号伝送装置における共振モードについて、より詳細に説明する。図1における第1の共振部1と第2の共振部2はそれぞれ、図3の結合共振器101と同様の構造であるため、各共振部は単独では図4(B)に示したように、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とで共振するが、第1の共振部1と第2の共振部2は互いに並列配置されて電磁結合しているので、共振周波数のピークは、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とのそれぞれについて、図5に示したように2つに分裂した状態となる。すなわち、共振周波数f0よりも低い周波数側では、共振周波数のピークが、第1の共振周波数f1よりも低い周波数となる共振周波数f11と第1の共振周波数f1よりも高い周波数となる共振周波数f12とに分裂する。また、共振周波数f0よりも高い周波数側では、共振周波数のピークが、第2の共振周波数f2よりも低い周波数となる共振周波数f21と第2の共振周波数f2よりも高い周波数となる共振周波数f22とに分裂する。この場合、共振周波数f0よりも低い周波数側では、第1の共振周波数f1を中心として共振周波数f11から共振周波数f12までを含む範囲で、ある帯域幅を持つ所定の通過帯域が形成される。また、共振周波数f0よりも高い周波数側では、第2の共振周波数f2を中心として共振周波数f21から共振周波数f22までを含む範囲で、ある帯域幅を持つ所定の通過帯域が形成される。ここで言う通過帯域とは、図6に示したように、通過特性の最大値から3dB下がった通過特性になる範囲を指す。この通過帯域の定義は、後述する図17以降に示す他の構成例についても同様である。本実施の形態および後述する他の構成例での信号伝送装置は、上述の定義による信号の通過帯域内に、共振周波数f0が含まれないような構成とされている。
【0033】
以上説明したように、図1の信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、第1の基板10と第2の基板20とが空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態では、図5および図6に示したような第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を含む所定の通過帯域の周波数で信号伝送する。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、信号伝送する周波数とは異なる単独の他の共振周波数f0を含む他の通過帯域の周波数で共振するために、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを十分に離した状態では、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)と同帯域の信号が入力されたとしても反射されるので、各共振器11,12,21,22からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0034】
[共振器の具体的な構成例]
次に、各共振器11,12,21,22の具体的な構成例について説明する。各共振器11,12,21,22は例えば、図7〜図12に示すような線路型共振器で構成することができる。ここで、図7は直線状のλ/2共振器201、図8は直線状のλ/4共振器202、図9はリング状のλ/2共振器203、図10はリング状のλ共振器204の構成例を示している。図11はスパイラル構造の共振器205、図12はミアンダ構造の共振器206の構成例を示している。各共振器11,12,21,22はまた、図13〜図14に示すような、ディスクリート部品と線路型共振器とを組み合わせた構成であっても良い。図13は、スパイラル構造の共振器205の両端部にチップコンデンサ210を接続してLC共振器を構成した例を示している。図14は、ミアンダ構造の共振器206の両端部にチップコンデンサ210を接続してLC共振器を構成した例を示している。
【0035】
各共振器11,12,21,22はまた、図15〜図16に示すような、集中定数型共振器で構成することもできる。図15は集中定数型共振器を磁気結合した構成例を示している。図15の構成例では、第1の基板10における第1の共振器11が、第1のコンデンサ211と第1のコイル212からなる第1のLC共振器で構成され、第2の基板20における第1の共振器21が、第2のコンデンサ213と第2のコイル214からなる第2のLC共振器で構成されている。この構成例では、第1の基板10と第2の基板20とを互いに対向配置した状態において、第1のコイル212と第2のコイル214とが磁気結合することで、第1の共振器11と第1の共振器21とが磁気結合する。
【0036】
図16は集中定数型共振器を電界結合した構成例を示している。図16の構成例では、第1の基板10における第1の共振器11が、第1のコイル212と第1のコイル212の第1の端部に接続された第1のコンデンサ電極221と第1のコイル212の第2の端部に接続された第2のコンデンサ電極231とを有する第1のLC共振器で構成されている。第2の基板20における第1の共振器21は、第2のコイル214と第2のコイル214の第1の端部に接続された第3のコンデンサ電極222と第2のコイル214の第2の端部に接続された第4のコンデンサ電極232とを有する第2のLC共振器で構成されている。この構成例では、第1の基板10と第2の基板20とを互いに対向配置した状態において、第1のコンデンサ電極221と第3のコンデンサ電極222とが対向することで互いに電界結合して第1のコンデンサを形成する。同様にして、第2のコンデンサ電極231と第4のコンデンサ電極232とが対向することで互いに電界結合して第2のコンデンサを形成する。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを互いに対向配置した状態では、第1の共振器11と第1の共振器21とが電界結合する。なお、第1の基板10と第2の基板20とが十分に離れた状態では、第1の基板10における第1のコンデンサ電極221と第2のコンデンサ電極231とがそれぞれ、例えばグランド電極等との間で容量(例えば、基板内や基板外に設けられているグランド電極との間の容量、或いは対地容量)を形成することで、第1のコイル212と共に共振周波数f0で共振する第1のLC共振器を構成する。同様に、第2の基板20における第3のコンデンサ電極222と第4のコンデンサ電極232とがそれぞれ、例えばグランド電極等との間で容量を形成することで、第2のコイル214と共に共振周波数f0で共振する第2のLC共振器を構成する。
【0037】
[変形例]
図1の構成例では、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の共振部1と第2の共振部2との2つの共振器が並列配置されていたが、3つ以上の共振部が並列配置されていても良い。図17は、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の共振部1および第2の共振部2に加えて、第3の共振部3が並列配置された構成例を示している。
【0038】
図17の変形例では、第1の基板10には、第2の方向(図のY方向)に第1および第2の共振器11,12に加えて、第3の共振器13が並列的に形成されている。第2の基板20にも同様に、第2の方向に第1および第2の共振器21,22に加えて、第3の共振器33が並列的に形成されている。第3の共振器13,33は第1の共振器11等と同様に例えば、線路状の電極パターンよりなる線路型共振器であり、例えばλ/4波長共振器、λ/2波長共振器、3λ/4波長共振器、またはλ波長共振器からなる。またこれら線路型共振器は、例えば片側短絡型、両端短絡型、または両端開放型からなる。
【0039】
第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第3の共振器13と第2の基板20における第3の共振器23とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第3の共振部3が形成されている。第3の共振部3は、所定の共振周波数(混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2)で共振して隣接する第2の共振部2と互いに電磁結合するようになっている。第2および第3の共振部2,3の間では、所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送が行われるようになっている。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう離間した状態では、第3の共振部3を形成していた各共振器13,23は、所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数f0で共振するものとされている。
【0040】
この変形例では、第2の入出力端子52は、第2の基板20における第3の共振器23に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。これにより、第2の入出力端子52と第3の共振部3との間で信号伝送が可能とされている。第1の共振部1は第2の共振部2に電磁結合され、第2の共振部2は第3の共振部3に電磁結合されているので、第1の入出力端子51と第2の入出力端子52との間での信号伝送が可能とされている。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10と第2の基板20との2つの基板間での信号伝送が可能とされている。
【0041】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0042】
図18は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第1の構成例を示している。この第1の構成例に係る信号伝送装置の基本構成は図17の信号伝送装置と同様であるが、図17の信号伝送装置に対して第1の入出力端子51にLPF(ローパスフィルタ)61が接続されている。この信号伝送装置では、第1、第2および第3の共振部1,2,3はそれぞれ、所定の共振周波数として、混成共振モードによる低い方の周波数(第1の共振周波数f1)で電磁結合し、その第1の共振周波数f1を含む帯域を信号の通過帯域としている。LPF61は、所定の共振周波数としての第1の共振周波数f1を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12,13,21,22,23が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第1の共振周波数f1では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第1の入出力端子51側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、LPF61によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第1の基板10における第1の共振器11から第1の入出力端子51側への共振周波数f0での信号の出力も、LPF61によって遮断される。従って、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0043】
図19は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第2の構成例を示している。この第2の構成例に係る信号伝送装置の基本構成は図17の信号伝送装置と同様であるが、図17の信号伝送装置に対して第1の入出力端子51にHPF(ハイパスフィルタ)62が接続されている。この信号伝送装置では、第1、第2および第3の共振部1,2,3はそれぞれ、所定の共振周波数として、混成共振モードによる高い方の周波数(第2の共振周波数f2)で電磁結合し、その第2の共振周波数f2を含む帯域を信号の通過帯域としている。HPF62は、所定の共振周波数としての第2の共振周波数f2を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12,13,21,22,23が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第2の共振周波数f2では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第1の入出力端子51側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、HPF62によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第1の基板10における第1の共振器11から第1の入出力端子51側への共振周波数f0での信号の出力も、HPF62によって遮断される。従って、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0044】
図20は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第3の構成例を示している。この第3の構成例に係る信号伝送装置の基本構成は図17の信号伝送装置と同様であるが、図17の信号伝送装置に対して第1の入出力端子51にBPF(バンドパスフィルタ)63が接続されている。この信号伝送装置では、第1、第2および第3の共振部1,2,3はそれぞれ、所定の共振周波数として、混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2で電磁結合し、第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む帯域を信号の通過帯域としている。BPF63は、所定の共振周波数としての第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12,13,21,22,23が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第1の入出力端子51側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、BPF63によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第1の基板10における第1の共振器11から第1の入出力端子51側への共振周波数f0での信号の出力も、BPF63によって遮断される。従って、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0045】
図21は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第4の構成例を示している。この第4の構成例に係る信号伝送装置の基本構成は図17の信号伝送装置と同様であるが、図17の信号伝送装置に対して第1の入出力端子51に共振器64が接続されている。共振器64は、第1の基板10における第1の共振器11には物理的に直接接続されてはおらず、第1の共振器11に対して間隔を空けて配置されている。
【0046】
この図21の信号伝送装置では、第1、第2および第3の共振部1,2,3はそれぞれ、所定の共振周波数として、混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2で電磁結合し、第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む帯域を信号の通過帯域としている。共振器64は、所定の共振周波数としての第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。共振器64の共振周波数は信号通過帯域である第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2とされている。従って、共振器64は、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2で電磁結合している状態では、第1の共振器11(第1の共振部1)に電磁結合する。この状態では、第1の入出力端子51から第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2の信号が入力されると、共振器64を介して第1の共振部1に信号が伝送される。
【0047】
図21の信号伝送装置において、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12,13,21,22,23が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2では信号を伝送しない状態となる。また、この状態では、第1の入出力端子51に接続された共振器64の共振周波数とは異なる状態となるために、共振器64は第1の共振器11には電磁結合しない。従って、この状態で、仮に第1の入出力端子51側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、共振器64によって共振周波数f0の信号が反射される。従って、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0048】
なお、図18〜図21では、第1の入出力端子51側にLPF61や共振器64等を接続した例を挙げたが、第2の入出力端子52側にLPF61や共振器64等を接続するようにしても良い。また、第1の入出力端子51側と第2の入出力端子52側との双方に、LPF61や共振器64等を接続するようにしても良い。
【0049】
また、図18〜図21では、フィルタ手段として、LPF(ローパスフィルタ)、HPF(ハイパスフィルタ)、BPF(バンドパスフィルタ)、または共振器を設けた例を挙げたが、それらに代えて、例えば、各共振器の単独での共振周波数f0の信号を遮断するBEF(バンドエリミネーションフィルタ)を設けても良く、所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するようなフィルタ手段であれば良い。
【0050】
また、図18〜図21では、フィルタ手段を基板外部で接続するようにしたが、基板の内部に形成されていても良い。
【0051】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0052】
図22は、本実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示している。この構成例に係る信号伝送装置の基本構成は図17の信号伝送装置と同様であるが、図17の信号伝送装置に対して、各共振器11,12,13,21,22,23の単独での共振周波数の関係が異なっている。図17の信号伝送装置では、第1、第2および第3の共振部1,2,3を構成する各共振器11,12,13,21,22,23の単独での共振周波数をすべてf0で同一のものとしていたが、図22の信号伝送装置では異なる共振周波数としている。
【0053】
具体的には、第1の基板10における第1の共振器11の単独での共振周波数はf0、第2の共振器12の単独での共振周波数はfb、第3の共振器13の単独での共振周波数はfb’とされている。また、第2の基板20における第1の共振器21の単独での共振周波数はf0、第2の共振器22の単独での共振周波数はfa、第3の共振器23の単独での共振周波数はfa’とされている。すなわち、同一の基板内で、隣り合う共振器の共振周波数は互いに異なるものとされている(f0≠fb≠fb’、f0≠fa≠fa’)。また、第2および第3の共振部2,3について、対向する各共振器の単独での共振周波数は異なるものとされている(fb≠fa、fb’≠fa’)。
【0054】
なお、第2および第3の共振部2,3について、対向する各共振器の単独での共振周波数は異なるが、第1の基板10と第2の基板20とを対向配置して混成共振モードで電磁結合させている状態での全体の共振周波数は共に所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で同じである。すなわち、本実施の形態においても、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する。同様に、第1の基板10における第3の共振器13と第2の基板20における第3の共振器23とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する。
【0055】
本実施の形態によれば、第1の基板10における各共振器11,12,13について、隣り合う共振器の共振周波数は互いに異なっているので、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10内では第1の共振器11と第2の共振器12とが互いに電磁結合せず、第2の共振器12と第3の共振器13も互いに電磁結合しない。また、第1の共振器11と第3の共振器13との電磁結合は非常に小さい或いは無視できる。同様に、第2の基板20における各共振器21,22,23について、隣り合う共振器の共振周波数は互いに異なっているので、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第2の基板20内では第1の共振器21と第2の共振器22とが互いに電磁結合せず、第2の共振器22と第3の共振器23も互いに電磁結合しない。また、第1の共振器21と第3の共振器23との電磁結合は非常に小さい或いは無視できる。各共振器21,22,23同士が互いに電磁結合しない。従って、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0056】
なお、同一の基板内で、各共振器の単独の共振周波数が異なるものとされている(f0≠fb≠fb’かつf0≠fb’、f0≠fa≠fa’かつf0≠fa’)場合には、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10内では各共振器11,12,13同士が互いに電磁結合せず、同様に、第2の基板20内では各共振器21,22,23同士が互いに電磁結合しないため、各共振器11,12,13,21,22,23からの信号(電磁波)の漏洩をより一層効果的に防ぐことができるため好ましい。
【0057】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第3の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
上記第1ないし第3の実施の形態では、2つの基板10,20を対向配置させた信号伝送装置の構成例を挙げたが、3つ以上の基板を対向配置させて信号伝送装置を構成してもよい。図23は、そのような構成の一例として、図22の信号伝送装置の構成に対して、第3の基板30を追加した構成例を示している。
【0059】
第3の基板30には、第2の方向(図のY方向)に第1、第2および第3の共振器31,32,33が並列的に形成されている。第1の入出力端子51は、第3の基板30における第1の共振器31に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。第3の基板30における第1の共振器31の単独での共振周波数はf0、第2の共振器32の単独での共振周波数はfc、第3の共振器33の単独での共振周波数はfc’とされている(f0≠fc≠fc’)。
【0060】
この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20と第3の基板30とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の方向に互いに対向すると共に、第1の基板10における第1の共振器11と第3の基板30における第1の共振器31とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第1の共振部1が形成されている。また、第1の基板10と第2の基板20と第3の基板30とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22とが第1の方向に互いに対向すると共に、第1の基板10における第2の共振器12と第3の基板30における第2の共振器32とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。また、第1の基板10と第2の基板20と第3の基板30とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第3の共振器13と第2の基板20における第3の共振器23とが第1の方向に互いに対向すると共に、第1の基板10における第3の共振器13と第3の基板30における第3の共振器33とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第3の共振部3が形成されている。これにより、第1の基板10と第2の基板20と第3の基板30とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1、第2および第3の共振部1,2,3が第2の方向に並列的に配置されている。
【0061】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第4の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
上記各実施の形態では、1つの基板内では第1の方向(Z方向)に1つの共振器のみを形成した構成例を挙げたが、1つの基板内で第1の方向に複数の共振器を積層配置するようにしても良い。図24は、そのような構成の一例として、図22の信号伝送装置の構成に対して、第2の基板20内の共振器の構造を変えた構成例を示している。
【0063】
図24の構成例では、図22における第2の基板20内の第2の共振器22を第1の方向に積層配置された2つの第2の共振器22−1,22−2で構成している。また、第2の共振器23を第1の方向に積層配置された3つの第3の共振器23−1,23−2,23−3で構成している。第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、2つの第2の共振器22−1,22−2は、全体として図22における第2の共振器22と同様の共振周波数faで共振する。また、3つの第3の共振器23−1,23−2,23−3は、全体として図22における第3の共振器23と同様の共振周波数fa’で共振する。図24の信号伝送装置による信号伝送動作は、実質的に図22の信号伝送装置と同様である。
【0064】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第5の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
上記各実施の形態では、各共振部を構成する共振器がすべて同一の複数の基板に形成されている構成例を挙げたが、各共振部を構成する共振器が部分的に異なる基板に形成されていても良い。図25は、そのような構成の一例として、図23の信号伝送装置の構成に対して、さらに第4の基板40を備え、各共振部を構成する基板の組み合わせを各共振部で変えた構成例を示している。
【0066】
図25の構成例では、第1の基板10内には第1の共振器11と第2の共振器12とが形成されている。第2の基板20内には第1の共振器21と第2の共振器22とが形成されている。第3の基板30内には第1の共振器31のみが形成されている。第4の基板40内には第1の共振器41のみが形成されている。第2の入出力端子52は、第4の基板40における第1の共振器41に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。
【0067】
図25の構成例では、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第1の共振器11と第3の基板30における第1の共振器31とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第1の共振部1が形成されている。また、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。また、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第2の基板20における第2の共振器22と第4の基板40における第1の共振器41とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第3の共振部3が形成されている。これにより、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1、第2および第3の共振部1,2,3が第2の方向に、かつ斜め方向に並列的に配置されている。
【0068】
このように複数の共振部を第2の方向に、かつ斜め方向に並列的に配置することにより、各基板に配置する共振器の数を減らすことができる。また、各基板のサイズを、配置された共振器の数に相当する大きさにした場合には信号伝送装置の小型化が可能となる。さらに、第1の入出力端子51が物理的に直接接続(直接的に導通)されている第3の基板30の第1の共振器31に電磁結合する他の共振器が第3の基板30に並列配置されていないため、第3の基板30が他の基板と互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、共振器31からの信号(電磁波)の漏洩を効果的に防ぐことができる。同様に、第2の入出力端子52が物理的に直接接続(直接的に導通)されている第4の基板40の第1の共振器41に電磁結合する他の共振器が第4の基板40に並列配置されていないため、第4の基板40が他の基板と互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、共振器41からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0069】
<第7の実施の形態>
次に、本発明の第7の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第6の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
上記各実施の形態では、2以上の基板を対向配置した状態において2以上の共振部のそれぞれが、2以上の共振器を混成共振モードで結合させた結合共振器で構成されている例を挙げたが、1つの共振部のみが混成共振モードの結合共振器を構成していても良い。図26は、そのような構成の一例として、図17の信号伝送装置の構成に対して、第2の共振部2のみを混成共振モードの結合共振器で構成した例を示している。
【0071】
図26の構成例では、第1の基板10内には第1の共振器11と第2の共振器12とが形成されている。第2の基板20内には第1の共振器21と第2の共振器22とが形成されている。第2の入出力端子52は、第2の基板20における第2の共振器22に物理的に直接接続(直接的に導通)されている。
【0072】
図26の構成例では、第1および第2の基板10,20を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。第1の共振部1は、第1の基板10内の第1の共振器11のみで構成されている。第3の共振部3は、第2の基板20内の第2の共振器22のみで構成されている。第1の基板10における第1の共振器11は、第2の基板10,20を第1の方向に互いに対向配置した状態において、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振すると共に、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態においても、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する。同様に、第2の基板20における第2の共振器22は、第2の基板10,20を第1の方向に互いに対向配置した状態において、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振すると共に、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態においても、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する。
【0073】
このように1つの共振部のみが混成共振モードの結合共振器を構成している場合であっても、その、1つの共振部の作用によって、複数の基板が互いに電磁結合している状態では所定の共振周波数を含む所定の通過帯域で信号伝送するが、電磁結合しないよう十分に離間した状態では所定の通過帯域では信号伝送しない状態となり、これにより、複数の基板を互いに十分に離した状態では、各基板に形成された共振器からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0074】
<第8の実施の形態>
次に、本発明の第8の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第7の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0075】
上記各実施の形態では、2つの入出力端子51,52を用いた構成例を挙げたが、3つ以上の入出力端子を備えていても良い。図27は、そのような構成の一例として、3つの第1の入出力端子51−1,51−2,51−3と、3つの第2の入出力端子52−1,52−2,52−3とを備えた構成例を示している。
【0076】
図27の構成例では、図25の構成例と同様に、4つの基板10,20,30,40を備えている。第1の基板10内には第1の共振器11と第2の共振器12と第3の共振器13とが形成されている。第2の基板20内には第1の共振器21と第2の共振器22と第3の共振器23とが形成されている。第3の基板30内には、第1の共振器31と第2の共振器32とが第1の方向に積層配置されている。第4の基板40内には第1の共振器41のみが形成されている。
【0077】
図27の構成例では、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第1の共振器11と第3の基板30における第2の共振器32とが第1の方向に互いに対向して電磁結合すると共に、第1の基板10における第1の共振器11と第2の基板20における第1の共振器21とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第1の共振部1が形成されている。また、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第2の共振器12と第2の基板20における第2の共振器22とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。また、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第3の共振器13と第2の基板20における第3の共振器23とが第1の方向に互いに対向して電磁結合すると共に、第2の基板20における第3の共振器23と第4の基板40における第1の共振器41とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第3の共振部3が形成されている。これにより、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1、第2および第3の共振部1,2,3が第2の方向に並列的に配置されている。
【0078】
1つ目の第1の入出力端子51−1は、第3の基板30内の第1の共振器31に直接接続(直接的に導通)されている。2つ目の第1の入出力端子51−2は、第3の基板30内の第2の共振器32に直接接続されている。3つ目の第1の入出力端子51−3は、第2の基板20内の第1の共振器21に直接接続されている。
【0079】
1つ目の第2の入出力端子52−1は、第1の基板10内の第3の共振器13に直接接続されている。2つ目の第2の入出力端子52−2は、第4の基板40内の第1の共振器41に直接接続されている。
【0080】
この構成例では、各基板を第1の方向に互いに対向配置した状態では、各共振部は所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で電磁結合するので、3つの第1の入出力端子51−1,51−2,51−3と3つの第2の入出力端子52−1,52−2,52−3とのどの端子から信号が入力されたとしても、他の任意の端子に信号を伝送することができる。特に、3つ目の第1の入出力端子51−3と3つ目の第2の入出力端子52−3とを用いて信号を入出力した場合には、同一基板内(この場合には第2の基板20内)での信号伝送が可能となる。
【0081】
<第9の実施の形態>
次に、本発明の第9の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第8の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0082】
上記各実施の形態では、複数の基板を対向配置した状態において、2つ以上の共振部(結合共振器)が並列配置された構成について説明したが、1つのみの共振部(結合共振器)に対して、LPF(ローパスフィルタ)等のフィルタ手段を接続した構成であっても良い。この場合、フィルタ手段は、少なくとも信号の出力側に設けることが好ましい。
【0083】
図28は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第1の構成例を示している。この第1の構成例に係る信号伝送装置は、図1の信号伝送装置における第2の共振部2(第2の共振器12,22)を構成要素から省き、フィルタ手段としてLPF161を追加した構成とされている。LPF161は、第2の入出力端子52側(第2の基板20における第1の共振器21)に接続されている。この信号伝送装置では、第1の共振部1は、所定の共振周波数として、混成共振モードによる低い方の周波数(第1の共振周波数f1)を含む帯域を信号の通過帯域としている。LPF161は、所定の共振周波数としての第1の共振周波数f1を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器11,12の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第1の共振周波数f1では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第2の入出力端子52側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、LPF161によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第2の基板20における第1の共振器21から第2の入出力端子52側への共振周波数f0での信号の出力も、LPF161によって遮断される。従って、各共振器11,12からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0084】
図29は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第2の構成例を示している。この第2の構成例に係る信号伝送装置は、図1の信号伝送装置における第2の共振部2(第2の共振器12,22)を構成要素から省き、フィルタ手段としてHPF(ハイパスフィルタ)162を追加した構成とされている。HPF162は、第2の入出力端子52側(第2の基板20における第1の共振器21)に接続されている。この信号伝送装置では、第1の共振部1は、所定の共振周波数として、混成共振モードによる高い方の周波数(第2の共振周波数f2)を含む帯域を信号の通過帯域としている。HPF162は、所定の共振周波数としての第2の共振周波数f2を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器11,12の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第2の共振周波数f2では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第2の入出力端子52側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、HPF162によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第2の基板20における第1の共振器21から第2の入出力端子52側への共振周波数f0での信号の出力も、HPF162によって遮断される。従って、各共振器11,12からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0085】
図30は、本実施の形態に係る信号伝送装置の第3の構成例を示している。この第3の構成例に係る信号伝送装置は、図1の信号伝送装置における第2の共振部2(第2の共振器12,22)を構成要素から省き、フィルタ手段としてBPF(バンドパスフィルタ)163を追加した構成とされている。BPF163は、第2の入出力端子52側(第2の基板20における第1の共振器21)に接続されている。この信号伝送装置では、第1の共振部1は、所定の共振周波数として、混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む帯域を信号の通過帯域としている。BPF163は、所定の共振周波数としての第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器11,12の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するフィルタ手段である。この信号伝送装置では、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、各共振器11,12が単独の他の共振周波数f0で共振するために、信号通過帯域である第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2では信号を伝送しない状態となる。また、この状態で、仮に第2の入出力端子52側に他の共振周波数f0での信号が入力されたとしても、BPF163によって共振周波数f0の信号が反射される。また、第2の基板20における第1の共振器21から第2の入出力端子52側への共振周波数f0での信号の出力も、BPF163によって遮断される。従って、各共振器11,12からの信号(電磁波)の漏洩をさらに効果的に防ぐことができる。
【0086】
図31は、BPF163の第1の構成例を示している。この第1の構成例は、キャパシタC1とインダクタL1とを直列接続した直列共振タイプのLC共振回路となっている。このLC共振回路は、第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2で直列共振する。
【0087】
図32は、BPF163の第2の構成例を示している。この第2の構成例は、第1のキャパシタC11および第1のインダクタL11からなる第1のLC共振回路と、第2のキャパシタC12および第2のインダクタL12からなる第2のLC共振回路とを並列的に配置して磁界Mで結合させた、並列共振タイプのLC共振回路となっている。このLC共振回路は、第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2で並列共振する。
【0088】
なお、図28〜図30では、第2の入出力端子52側(第2の基板20における第1の共振器21)に対してLPF161等のフィルタ手段を接続した例を挙げたが、第1の入出力端子51側(第1の基板10における第1の共振器11)に対してフィルタ手段を接続するようにしても良い。また、第1の入出力端子51側と第2の入出力端子52側との双方に、フィルタ手段を接続するようにしても良い。
【0089】
また、図28〜図30では、フィルタ手段として、LPF(ローパスフィルタ)、HPF(ハイパスフィルタ)、またはBPF(バンドパスフィルタ)を設けた例を挙げたが、それらに代えて、例えば、各共振器の単独での共振周波数f0の信号を遮断するBEF(バンドエリミネーションフィルタ)を設けても良く、所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号を通過させると共に、所定の通過帯域の帯域外にある他の共振周波数(各共振器の単独での共振周波数f0)の信号を遮断するようなフィルタ手段であれば良い。
【0090】
また、図28〜図30では、フィルタ手段を基板外部で接続するようにしたが、基板の内部に形成されていても良い。
【0091】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施の形態の信号伝送装置は、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のための信号伝送のみならず、電力の送電/受電のための電力伝送装置としても利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…第1の共振部、2…第2の共振部、3…第3の共振部、10…第1の基板、11,21,31,41…第1の共振器、12,22,22−1,22−2,32…第2の共振器、13,23,23−1,23−2,23−3,33…第3の共振器、20…第2の基板、51,51−1,51−2,51−3…第1の入出力端子、52,52−1,52−2…第2の入出力端子、61,161…LPF、62,162…HPF、63,163…BPF、64…共振器、101…結合共振器、110…第1の基板、111,121…共振器、120…第2の基板、Da…基板間距離、201,203…λ/2共振器、202…λ/4共振器、204…λ共振器、205…スパイラル構造の共振器、206…ミアンダ構造の共振器、210…チップコンデンサ、211…第1のコンデンサ、212…第1のコイル、213…第2のコンデンサ、214…第2のコイル、221…第1のコンデンサ電極、231…第2のコンデンサ電極、222…第3のコンデンサ電極、232…第4のコンデンサ電極、C1…キャパシタ、L1…インダクタ、C11…第1のキャパシタ、C12…第2のキャパシタ、L11…第1のインダクタ、L12…第2のインダクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板と、
前記複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、前記第1の方向とは異なる第2の方向に並列的に配置され、それぞれが所定の共振周波数で共振して互いに電磁結合することで、隣接するもの同士の間で前記所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号の伝送を行う複数の共振部と
を備え、
前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板は前記第2の方向に2以上の共振器を有し、他の1または2以上の基板は前記第2の方向にそれぞれ1以上の共振器を有し、
前記複数の共振部のうち少なくとも1つの共振部は、前記複数の基板間において前記第1の方向に互いに対向する複数の共振器で構成され、それら互いに対向する複数の共振器が互いに混成共振モードで電磁結合することにより全体として前記所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、前記複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、前記結合共振器を形成していた前記複数の共振器が、各基板ごとに前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされている
信号伝送装置。
【請求項2】
前記複数の共振部のうち第1の共振部を構成する少なくとも1つの第1の共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第1の入出力端子と、
前記第1の共振部とは異なる他の共振部を構成する少なくとも1つの他の共振器に物理的に直接接続、または前記他の共振器に対して間隔を空けて電磁結合された第2の入出力端子と
をさらに備え、
前記複数の基板を前記第1の方向に互いに対向配置した状態において、異なる基板間または同一の基板内で信号伝送を行う
請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記第1の入出力端子に、前記所定の通過帯域の信号を通過させると共に、前記所定の通過帯域の帯域外にある前記他の共振周波数の信号を遮断するフィルタ手段が接続されている
請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記結合共振器を形成する前記複数の共振器は、前記複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、各基板ごとにそれぞれ同一の他の共振周波数で共振する
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記複数の基板のうち、前記第2の方向に2以上の共振器を有する基板内では、隣り合う共振器の単独での共振周波数が互いに異なるものとされている
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記複数の共振部のうち、第1の共振部と第2の共振部とがそれぞれ、前記結合共振器を形成する構成とされ、
前記第1の共振部を構成する複数の共振器と、前記第2の共振部を構成する他の複数の共振器とが、同一の2以上の基板に形成されている
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記複数の共振部のうち、第1の共振部と第2の共振部とがそれぞれ、前記結合共振器を形成する構成とされ、
前記第1の共振部と前記第2の共振部とが互いに前記第2の方向に隣接配置され、
前記第1の共振部を構成する複数の共振器と、前記第2の共振部を構成する他の複数の共振器とが、部分的に異なる基板に形成されている
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
複数の基板と、
前記複数の基板を前記第1の方向に互いに対向配置した状態において、前記第1の方向とは異なる第2の方向に並列的に配置され、それぞれが所定の共振周波数で共振して互いに電磁結合することで、隣接するもの同士の間で前記所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号の伝送を行う複数の共振部と
を備え、
前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板は前記第2の方向に2以上の共振器を有し、他の1または2以上の基板は前記第2の方向にそれぞれ1以上の共振器を有し、
前記複数の共振部のうち少なくとも1つの共振部は、前記複数の基板間において前記第1の方向に互いに対向する複数の共振器で構成され、それら互いに対向する複数の共振器が互いに混成共振モードで電磁結合することにより全体として前記所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、前記複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、前記結合共振器を形成していた前記複数の共振器が、各基板ごとに前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされている
フィルタ。
【請求項9】
第1および第2の入出力端子と、
複数の基板と、
前記複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、前記第1の方向とは異なる第2の方向に並列的に配置され、それぞれが所定の共振周波数で共振して互いに電磁結合することで、隣接するもの同士の間で前記所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号の伝送を行う複数の共振部と
を備え、
前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板は前記第2の方向に2以上の共振器を有し、他の1または2以上の基板は前記第2の方向にそれぞれ1以上の共振器を有し、
前記複数の共振部のうち少なくとも1つの共振部は、前記複数の基板間において前記第1の方向に互いに対向する複数の共振器で構成され、それら互いに対向する複数の共振器が互いに混成共振モードで電磁結合することにより全体として前記所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を形成し、かつ、前記複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、前記結合共振器を形成していた前記複数の共振器が、各基板ごとに前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされ、
前記第1の入出力端子は、前記複数の基板のうちの少なくとも1つの基板における第1の共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振器に対して間隔を空けて電磁結合され、
前記第2の入出力端子は、前記第1の共振器が形成された基板とは異なる少なくとも1つの他の基板における他の共振器に物理的に直接接続、または前記他の共振器に対して間隔を空けて電磁結合され、
前記複数の基板を前記第1の方向に互いに対向配置した状態において、異なる基板間で信号伝送を行う
基板間通信装置。
【請求項10】
複数の基板と、
前記複数の基板のそれぞれに形成された共振器と、
前記複数の基板を第1の方向に互いに対向配置した状態において、互いに対向する複数の前記共振器同士が互いに混成共振モードで電磁結合することにより形成され、全体として所定の共振周波数で共振する結合共振器と、
前記複数の基板のうちの少なくとも1つの基板の共振器に対して設けられ、前記結合共振器との間で前記所定の共振周波数を含む所定の通過帯域の信号を通過させるフィルタ手段と
を備え、
前記複数の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では、前記結合共振器を形成していた前記複数の共振器が、各基板ごとに前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされ、
前記フィルタ手段は、前記所定の通過帯域の帯域外にある前記他の共振周波数の信号を遮断する
信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−75075(P2012−75075A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267139(P2010−267139)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】