説明

信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム及びその記録媒体

【課題】 入力信号に精度良く同期した信号を迅速に生成する。
【解決手段】
直交信号生成部110Aが、信号源910からの信号SIAに含まれる角周波数ωCのパイロット信号の位相を反映し、互いの直交化が図られた信号PSA1,PSA2を生成する。これらの信号PSA1,PSA2に基づいて、位相算出部120Aが、パイロット信号の位相を算出する。こうして算出されたパイロット信号の位相に基づいて、基準信号生成部130Aが、パイロット信号と所定関係にある基準信号BSAを生成する。そして、基準信号BSAを利用して、信号加工部140が、信号SIAを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、及び、当該信号処理プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、復調処理等のための基準となるパイロット信号等の所定信号を含む複合信号であるFM(Frequency Modulation)放送波等を受信して処理するFM受信装置等が広く普及している。こうした装置においては、当該所定信号を再生したり、当該所定信号の周波数の整数倍の周波数の信号を生成したりするために、位相同期ループ(PLL)の手法が一般的に採用されている(特許文献1参照;以下、「従来例1」という)。
【0003】
かかる従来例1の技術とは別に、PLLの手法を採用せずに、当該所定信号を再生したり、当該所定信号の周波数の整数倍の周波数の信号を生成したりする技術も提案されている(特許文献2参照;以下、「従来例2」という)。この従来例の技術では、内部的に発生したベースとなる信号と、当該所定信号との位相差を求める。そして、求められた位相差を当該ベースとなる信号に付与することにより、所定信号の再生を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−13339号公報
【特許文献2】特表2006−528451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例1の技術ではPLLの手法を採用するが、PLLは、一般に設計が難しい。また、PLLの手法を用いた場合には、例えばFM放送波の移動受信等の場合のように受信環境が変化する状況においては、当該所定信号に対して追従性良く同期させることは困難である。
【0006】
また、上述した従来例2の技術では、当該所定信号の位相に合わせるための基準となる信号が必要である。しかしながら、マルチパスの発生などにより、当該所定信号の周波数や位相が変動する場合には、精度良く当該所定信号と同期をとるための基準信号を生成することは、必ずしも容易ではない。
【0007】
このため、簡易にかつ迅速に所定信号との同期が図られた信号を生成することができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、入力信号に精度良く同期した信号を迅速に生成することができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、所定周波数帯の所定信号を含む入力信号に関する処理を行う信号処理装置であって、前記所定信号の位相を反映し、互いの直交化が図られた第1信号及び第2信号を生成する直交信号生成手段と;前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する位相算出手段と;前記位相算出手段による算出結果に基づいて、前記所定信号と所定関係にある基準信号を生成する基準信号生成手段と;を備えることを特徴とする信号処理装置である。
【0010】
請求項14に記載の発明は、所定周波数帯の所定信号を含む入力信号に関する処理を行う信号処理方法であって、前記所定信号の位相を反映し、互いの直交化が図られた第1信号及び第2信号を生成する直交信号生成工程と;前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する位相算出工程と;前記位相算出工程における算出結果に基づいて、前記所定信号と所定関係にある基準信号を生成する基準信号生成工程と;を備えることを特徴とする信号処理方法である。
【0011】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴する信号処理プログラムである。
【0012】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図7を参照しつつ説明する。
【0015】
<構成>
図1には、本第1実施形態に係る信号処理装置100Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。この信号処理装置100Aは、信号源910Aから出力された信号SIAを、入力端子191を介して受信して処理し、出力端子192から加工結果信号MSAとして出力する装置である。
【0016】
本第1実施形態では、信号SIAは、図2に示されるように、角周波数ωcのパイロット信号PS(∝sin(ωct+φ0))と、角周波数ωc〜3ωcの周波数帯の信号成分SG2を含んでいるものとする。ここで、信号成分SG2は、角周波数0〜ωcの帯域の信号により、パイロット信号PSの2倍の角周波数の信号(∝sin[2(ωct+φ0)])を振幅変調した信号であるものとする。本第1実施形態においては、信号処理装置100Aは、パイロット信号PSに基づいて角周波数2ωcの基準信号BSA(∝sin[2(ωct+φ0)])を生成し、基準信号BSAを利用して、振幅変調信号SG2を、復調するようになっている。
【0017】
なお、本第1実施形態においては、図2に示されるように、信号SIAには角周波数0〜ωcの周波数帯の信号成分SG1も含まれているが、信号処理装置100Aによる処理対象目的の信号成分ではない。そこで、図2においては、信号成分SG1を破線で表現している。また、本第1実施形態では、信号SIAは、所定のサンプリング周波数fSM(>6ωc/(2π))でサンプルされてデジタル化されたデジタル信号であるものとする。
【0018】
また、本第1実施形態においては、説明を簡略化するため、信号SIAに含まれているパイロット信号PSは、次の(1)式によって表されるものとする。
PS(t)∝sin[θC(t)]=sin(ωCt+φ0) …(1)
ここで、値φ0は、時間t=0としたときのパイロット信号PSの位相である。
【0019】
なお、信号処理装置100Aが車両等での移動受信やマルチパス環境下での受信等を行う場合、角周波数ωCや初期位相値φ0は一定というわけではない。
【0020】
かかる(1)式で表される信号としては、例えば、FM放送波をFM検波した信号であるコンポジット信号中のパイロット信号等を挙げることができる。
【0021】
図1に戻り、信号処理装置100Aは、直交信号生成手段としての直交信号生成部110Aと、位相算出手段としての位相算出部120Aとを備えている。また、信号処理装置100Aは、基準信号生成手段としての基準信号生成部130Aと、第1種信号加工手段としての信号加工部140とを備えている。
【0022】
直交信号生成部110Aは、入力端子191を介して受信した信号SIAから、それぞれが角周波数ωCを含む帯域の信号であって、角周波数ωCの成分が互いに直交する2つの信号PSA1,PSA2を生成する。かかる機能を有する直交信号生成部110Aは、図3に示されるように、直交化手段としての直交化部112Aと、フィルタ手段としてのフィルタ(FIL)113A1,113A2とを備えている。
【0023】
直交化部112Aは、信号SIAに含まれる角周波数ωCの成分(すなわち、パイロット信号PS)に基づいて、互いに直交するとともに、パイロット信号PSの位相θC(t)を反映した2つの信号OSA1,OSA2を生成する。かかる機能を有する直交化部112Aは、図4に示されるように、角周波数ωCの信号に関する90°移相部119を備えている。
【0024】
このように構成された直交化部112Aでは、受信した信号SIAと同相の信号が、信号OSA1として、FIL113A1へ向けて出力される。一方、直交化部112Aにおいては、受信した信号SIAについて、角周波数ωCの成分について90°だけ位相がずらされ、信号OSA2としてFIL113A2へ向けて出力する。
【0025】
図3に戻り、FIL113A1は、無限インパルス応答(IIR)フィルタ等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113A1は、直交化部112Aからの信号OSA1を受ける。そして、FIL113A1は、信号OSA1における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA1として位相算出部120Aへ向けて出力する。
【0026】
なお、FIL113A1を介することにより、フィルタリング演算に伴う固定的な位相シフトΔθが発生する場合がある。本第1実施形態では、かかる位相シフトΔθが発生するものとする。この位相シフトΔθは、FIL113A1の構成にて定まるものであり、FIL113A1の設計段階で定まる。
【0027】
本第1実施形態では、FIL113A1から出力される信号PSA1は、次の(2)式のように表される。
PSA1(t)=A(t)・sin[θS(t)]
=A(t)・sin[θC(t)−Δθ]
=A(t)・sin[(ωCt+φ0)−Δθ] …(2)
ここで、A(t)は、パイロット信号PSの振幅値を表す。
【0028】
FIL113A2は、FIL113A1と同様に構成されている。このFIL113A2は、直交化部112Aからの信号OSA2を受ける。そして、FIL113A2は、信号OSA2における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA2を出力する。
【0029】
かかるFIL113A2から出力される信号PSA2は、次の(3)式のように表される。
PSA2(t)=A(t)・cos[θS(t)]
=A(t)・cos[θC(t)−Δθ]
=A(t)・cos[(ωCt+φ0)−Δθ] …(3)
【0030】
図1に戻り、位相算出部120Aは、直交信号生成部110Aからの信号PSA1及び信号PSA2に基づいて、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Aは、例えば、信号PSA1及び信号PSA2についてarctan等の演算を行ったうえで、上述した位相シフトΔθの分を補正して、位相θCを算出する。
【0031】
こうして算出された位相θCは、信号PHAとして、位相算出部120Aから基準信号生成部130Aへ向けて出力される。
【0032】
基準信号生成部130Aは、位相算出部120Aからの信号PHAに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSA(∝sin[2(ωct+φ0)])を生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Aは、図5に示されるように、位相加工部131Aと、信号発生部132とを備えている。
【0033】
位相加工部131Aは、位相算出部120Aからの信号PHAを受けて、信号PHAが示す位相θC(t)を加工する。本第1実施形態においては、位相加工部131Aは、次の(4)式により、位相θM(t)を算出する。
θM(t)=2θC(t)=2(ωCt+φ0) …(4)
【0034】
すなわち、本第1実施形態では、位相加工部131Aは、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍の位相θM(t)を算出する。こうして算出された位相θM(t)は、位相加工信号MPAとして信号発生部132へ向けて出力される。
【0035】
信号発生部132は、位相加工部131Aからの位相加工信号MPAに基づいて、基準信号BSAを生成する。本第1実施形態では、信号発生部132は、位相値に対応した振幅値が登録された正弦値テーブルを備えており、位相加工信号MPAによって示された位相θM(t)の正弦波信号を基準信号BSAとして生成する。
【0036】
この基準信号BSAは、次の(5)式で表される。
BSA(t)=C0・sin[θM(t)]
=C0・sin[2θC(t)]
=C0・sin[2(ωCt+φ0)] …(5)
ここで、C0は定数である。
【0037】
こうして生成された基準信号BSAは、基準信号生成部130Aから信号加工部140へ向けて出力される。
【0038】
図1に戻り、信号加工部140は、入力端子191を介した信号SIA及び基準信号生成部130Aからの基準信号BSAを受ける。そして、信号加工部140は、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。かかる機能を有する信号加工部140は、図6に示されるように、乗算部141と、ローパスフィルタ(LPF)142とを備えている。
【0039】
乗算部141は、A端子で信号SIAを受け、B端子で基準信号BSAを受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から混合信号MXAとしてLPF142へ向けて出力される。ここで、信号SIAにおける信号成分SG2は、角周波数ωC〜3ωCの角周波数成分を有し、基準信号BSAは角周波数2ωCの成分のみを有している。このため、混合信号MXAにおける信号成分SG2に対応する信号成分は、角周波数0〜ωCの成分と、角周波数3ωC〜5ωCの成分とに角周波数変換される。
【0040】
LPF142は、有限インパルス応答フィルタ(FIR)等のローパスフィルタとして構成されている。このLPF142は、乗算部141からの混合信号MXAにおける角周波数0〜ωCの信号成分を選択的に通過させ、加工結果信号MSAとして、出力端子192を介して、外部へ出力する。
【0041】
<動作>
次に、上記のように構成された信号処理装置100Aにおける信号処理動作について説明する。
【0042】
信号源910Aからの信号SIAが、入力端子191を介して信号処理装置100Aで受信されると、信号処理装置100Aは、信号SIAが、直交信号生成部110A及び信号加工部140へ供給される(図1参照)。信号SIAの供給を受けた直交信号生成部110Aでは、まず、直交化部112Aが、信号SIAに含まれる角周波数ωCの成分が互いに直交する2つの信号OSA1,OSA2を生成し、FIL113A1,113A2へ送る(図4参照)。
【0043】
引き続き、信号OSA1を受けたFIL113A1が、信号OSA1における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA1として位相算出部120Aへ向けて出力する。また、信号OSA2を受けたFIL113A2が、信号OSA2における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA2として位相算出部120A向けて出力する(図3参照)。
【0044】
ここで、信号PSA1は、上述した(2)式で表される波形となる。一方、信号PSA2は、上述した(3)式で表される波形となる。
【0045】
信号PSA1,PSA2を受けた位相算出部120Aは、上述したように、信号PSA1及び信号PSA2、並びに位相シフトΔθに基づいて、パイロット信号PSの位相θCを算出する。こうして算出された位相θCは、信号PHAとして基準信号生成部130Aへ送られる(図1参照)。
【0046】
信号PHAを受けた基準信号生成部130Aは、信号PHAに基づいて、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍である基準信号BSAを生成する。かかる基準信号BSAの生成に際して、基準信号生成部130Aでは、まず、位相加工部131Aが、上述した(4)式により、角周波数2ωCを有する位相θM(t)を算出し、信号発生部132へ送る(図5参照)。位相θM(t)を受けた信号発生部132は、位相θM(t)に基づいて内部の正弦値テーブルを参照して、上述した(5)式で表される正弦波信号である基準信号BSAを生成する。こうして生成された基準信号BSAは、信号加工部140へ送られる(図5参照)。
【0047】
基準信号生成部130Aからの基準信号BSA、及び、信号源910Aからの信号SIAを受けた信号加工部140は、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。かかる加工に際して、信号加工部140では、まず、乗算部141が、信号SIAと基準信号BSAとの乗算を行い、混合信号MXAを生成する。ここで、上述したように、信号SIAにおける信号成分SG2は、角周波数ωC〜3ωCの角周波数成分を有し、基準信号BSAは角周波数2ωCの成分のみを有しているので、混合信号MXAにおける信号成分SG2に対応する信号成分は、角周波数0〜ωCの成分と、角周波数3ωC〜5ωCの成分とに角周波数変換される。こうして生成された混合信号MXAは、LPF142へ向けて送られる(図6参照)。
【0048】
混合信号MXAを受けたLPF142は、角周波数0〜ωCの信号成分を選択的に通過させる。この結果、信号成分SG2に対応し、図7に示されるように、角周波数0〜ωCの周波数帯の加工結果信号MSAが生成されて、出力端子192を介して、外部へ出力する。
【0049】
以上説明したように、本第1実施形態では、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む信号SIAから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θCを導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られた基準信号BSAを生成することができる。
【0050】
また、本第1実施形態では、基準信号BSAを利用して信号SIA中の信号成分SG2の加工を行うので、迅速にかつ精度良く、信号成分SG2に対して所望の加工を行うことができる。
【0051】
また、本第1実施形態では、FIL113A1,113A2における位相ずれΔθがある場合には、これを考慮して、パイロット信号PSの位相θCの算出を行うので、精度良く位相θCを算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSAを生成することができる。
【0052】
なお、本第1実施形態では、FIL113A1,113A2として、位相シフトが発生しないフィルタを採用することもできる。この場合には、位相算出部120AにおけるFIL113A1,113A2に対応する位相補償の計算が不要となる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図8〜図13を主に参照しつつ説明する。
【0054】
図8には、本第2実施形態に係る信号処理装置100Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。なお、信号処理装置100Bは、第1実施形態における信号処理装置100Aと同様に、信号源910Aから出力された信号SIAを、入力端子191を介して受信して処理し、出力端子192から加工結果信号MSAとして出力する装置である。
【0055】
図8に示されるように、信号処理装置100Bは、上述した信号処理装置100Aと比べて、直交信号生成部110Aに代えて直交信号生成部110Bを備えるとともに、位相算出部120Aに代えて位相算出部120Bを備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0056】
直交信号生成部110Bは、入力端子191を介して受信した信号SIAから、互いに直交する2つの信号PSB1,PSB2を生成する。かかる機能を有する直交信号生成部110Bは、図9に示されるように、帯域制限手段としての帯域制限フィルタ111Bと、直交化手段としての直交化部112Bと、フィルタ手段としてのフィルタ(FIL)113B1,113B2とを備えている。
【0057】
帯域制限フィルタ111B、無限インパルス応答フィルタ(IIR)等のデジタルフィルタとして構成されている。帯域制限フィルタ111Bは、信号SIAにおける角周波数ωCを含む所定の周波数帯の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSBとして直交化部112Bへ向けて出力する。
【0058】
本第2実施形態では、帯域制限フィルタ111Bは、直交化部112Bにおける角周波数変換に際して行われる正弦波(∝sin(ωSH・t))の乗算の結果、周波数0で折り返された成分が、パイロット信号PSの周波数シフトの結果(本第2実施形態では、角周波数(ωSH−ωC)の成分)と重ならない(又は、十分に抑圧されている)ように、通過させる信号の周波数帯域を制限する。また、帯域制限フィルタ111Bは、サンプリング周波数fSMの1/2の周波数(fSM/2)で折り返された成分が、パイロット信号PSの周波数シフトの結果と重ならない(又は、十分に抑圧されている)ように、通過させる信号の周波数帯域を制限する。かかる機能を有する帯域制限フィルタ111Bは、例えば、IIR方式のバンドパスフィルタとして実現することができる。
【0059】
なお、帯域制限フィルタ111Bを介することにより、フィルタ遅延により、位相シフトが発生する場合がある。本第2実施形態では、当該帯域制限フィルタ111Bにおけるフィルタ遅延による位相シフトΔθ1が発生するものとして、以下の説明を行う。
【0060】
以上にように構成された帯域制限フィルタ111Bから出力された帯域制限信号LSBにおけるパイロット信号PSに対応する信号成分PS’は、次の(6)式で表されるようになっている。
PS’(t)∝sin[θC(t)−Δθ1
=sin[(ωCt+φ0)−Δθ1] …(6)
【0061】
直交化部112Bは、帯域制限信号LSBに基づいて、互いに直交するとともに、パイロット信号PSの位相θC(t)を反映した2つの信号OSB1,OSB2を生成する。かかる機能を有する直交化部112Bは、本第2実施形態では、図10に示されるように、発振部210と、乗算部2201,2202とを備えている。
【0062】
発振部210は、乗算部2201へ供給すべき信号OTS1、及び、乗算部2202へ供給すべき信号OTS2を発生する。本第2実施形態では、信号OTS1及び信号OTS2は、次の(7)及び(8)式で表されるようになっている。
OTS1(t)=B0・cos(ωSH・t) …(7)
OTS2(t)=B0・sin(ωSH・t) …(8)
ここで、B0は定数である。
【0063】
本実施形態では、角周波数ωSHは、3ωCよりも大きな所定値に設定されている。かかる角周波数ωSHの値は、パイロット信号PSの周波数シフト結果へのノイズ成分の混入の防止という観点から、上述した帯域制限フィルタ111Bによる帯域制限の仕様と併せた総合的な見地から定められる。
【0064】
乗算部2201は、帯域制限信号LSBをA端子で受け、発振部210からの信号OTS1をB端子で受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から信号OSB1としてFIL113B1へ向けて出力される。ここで、信号SIAにおけるパイロット信号PSは、角周波数ωCを有し、信号OTS1は角周波数ωSHの成分のみを有している。このため、信号OSB1おけるパイロット信号PSに対応する信号成分は、角周波数(ωSH−ωC)及び角周波数(ωSH+ωC)の2成分に角周波数変換される。
【0065】
乗算部2202は、帯域制限信号LSBをA端子で受け、発振部210からの信号OTS2をB端子で受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から信号OSB2としてFIL113B2へ向けて出力される。ここで、信号SIAにおけるパイロット信号PSは、角周波数ωCを有し、信号OTS2は角周波数ωSHの成分のみを有している。このため、信号OSB2おけるパイロット信号PSに対応する信号成分は、信号OSB1との場合と同様に、角周波数(ωSH−ωC)及び角周波数(ωSH+ωC)の2成分に角周波数変換される。
【0066】
図9に戻り、FIL113B1は、有限インパルス応答(FIR)フィルタ等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113B1は、直交化部112Bからの信号OSB1を受ける。そして、FIL113B1は、信号OSB1におけるパイロット信号PSに対応する信号成分の一方、本第2実施形態では角周波数(ωSH−ωC)の成分を選択的に通過させ、信号PSB1として位相算出部120Bへ向けて出力する。
【0067】
なお、本第2実施形態では、FIL113B1として、位相シフトが生じないFIR方式のローパスフィルタを採用している。
【0068】
かかるFIL113B1から出力される信号PSB1は、次の(9)式のように表される。
PSB1(t)∝A(t)・sin[θS(t)]
=A(t)・sin[ωSHt−θC(t)+Δθ1
=A(t)・sin[ωSHt−(ωCt+φ0)+Δθ1] …(9)
ここで、A(t)は、パイロット信号PSの振幅値を表す。
【0069】
FIL113B2は、FIL113B1と同様に構成されている。このFIL113B2は、直交化部112Bからの信号OSB2を受ける。そして、FIL113B2は、信号OSB2におけるパイロット信号PSに対応する信号成分の一方、本第2実施形態では角周波数(ωSH−ωC)の成分を選択的に通過させ、信号PSB2を出力する。
【0070】
かかるFIL113B2から出力される信号PSB2は、次の(10)式のように表される。
PSB2(t)=A(t)・cos[θS(t)]
=A(t)・cos[ωSHt−θC(t)+Δθ1
=A(t)・cos[ωSHt−(ωCt+φ0)+Δθ1] …(10)
【0071】
図8に戻り、位相算出部120Bは、直交信号生成部110Bからの信号PSB1及び信号PSB2に基づいて、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Bは、例えば、信号PSB1及び信号PSB2についてarctan等の演算を行ったうえで、上述した位相シフトΔθ1及び角周波数ωSHによる時間変化の分を補正して、位相θCを算出する。
【0072】
こうして算出されたθC(t)は、信号PHAとして、位相算出部120Bから基準信号生成部130Aへ向けて出力される。
【0073】
<動作>
次に、上記のように構成された信号処理装置100Bにおける信号処理動作について説明する。
【0074】
信号源910Aからの信号SIAが、入力端子191を介して信号処理装置100Bで受信されると、信号処理装置100Bは、信号SIAが、直交信号生成部110B及び信号加工部140へ供給される(図8参照)。信号SIAの供給を受けた直交信号生成部110Bでは、まず、帯域制限フィルタ111Bが、信号SIAにおける角周波数ωCを含む所定の周波数帯の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSBとして直交化部112Bへ送る(図9参照)。この結果、図11において二点鎖線で示されるように、信号SIAが角周波数3ωCよりも高い角周波数領域に広く信号成分を有する場合であっても、例えば、図12に示されるように、信号成分の角周波数帯域が制限される。
【0075】
帯域制限信号LSBを受けた直交化部112Bは、帯域制限信号LSBに基づいて、互いに直交する2つの信号OSB1,OSB2を生成し、FIL113B1,113B2へ送る(図9参照)。ここで、信号OSBj(j=1,2)のそれぞれは、図13に示されるように、パイロット信号PSに対応する信号成分として、角周波数(ωSH−ωC)の信号成分PSMj及び角周波数(ωSH+ωC)の信号成分PSPjの2つの信号成分を含んでいる。
【0076】
なお、本実施形態では、直交化部112Bが帯域制限信号LSBの角周波数変換を行うことにしている。このため、上述した図11において二点鎖線で示されるように高い角周波数領域に広く信号成分を有する信号SIAの角周波数変換を行った場合に生じ得る信号成分PSMj及び信号成分PSPjへのノイズの混入(図13における一点鎖線を参照)を防止することができるようになっている。
【0077】
引き続き、信号OSB1を受けたFIL113B1が、信号OSB1における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSB1として位相算出部120Bへ向けて出力する。また、信号OSB2を受けたFIL113B2が、信号OSB2における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSB2として位相算出部120Bへ向けて出力する(図9参照)。
【0078】
ここで、信号PSB1は、上述した(9)式で表される波形となる。一方、信号PSB2は、上述した(10)式で表される波形となる。
【0079】
信号PSB1,PSB2を受けた位相算出部120Bは、上述したように、信号PSB1及び信号PSB2、並びに位相シフトΔθ1及び角周波数ωSHに基づいて、パイロット信号PSの位相θCを算出する。こうして算出された位相θCは、信号PHAとして基準信号生成部130Aへ送られる(図8参照)。
【0080】
以後、第1実施形態の信号処理装置100Aの場合と同様に、信号PHAを受けた基準信号生成部130Aが、信号PHAに基づいて、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍である基準信号BSAを生成し、信号加工部140へ送る(図8参照)。そして、基準信号生成部130Aからの基準信号BSA、及び、信号源910Aからの信号SIAを受けた信号加工部140が、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調し、加工結果信号MSAを生成する。そして、生成された加工結果信号MSAが、出力端子192を介して、外部へ出力される。
【0081】
以上説明したように、本第2実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む信号SIAから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θCを導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られた基準信号BSAを生成することができる。
【0082】
また、本第2実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、基準信号BSAを利用して信号SIA中の信号成分SG2の加工を行うので、迅速にかつ精度良く、信号成分SG2に対して所望の加工を行うことができる。
【0083】
また、本第2実施形態では、帯域制限フィルタ111Bにおける位相ずれΔθ1がある場合には、これを考慮して、パイロット信号PSの位相θCの算出を行うので、精度良く位相θCを算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSAを生成することができる。
【0084】
また、本第2実施形態では、直交化部112Bにおいて周波数変換を行ないつつ直交化を行うので、ヒルベルト変換等を用いて直交化する場合と比べて演算量を削減することができる。
【0085】
また、本第2実施形態では、帯域制限フィルタ111Bにより信号SIAを帯域制限した帯域制限信号LSBを、角周波数変換を行いつつ直交化するので、パイロット信号PSの角周波数変換結果へのノイズの混入を低減させることができる。
【0086】
なお、本第2実施形態では、FIL113B1,FIL113B2を介することにより、位相シフトは発生しないものとした。これに対し、例えば、FIL113B1,FIL113B2を介することにより、位相シフトΔθ2が発生する構成とした場合には、第1の実施形態における場合と同様に、位相シフトΔθ2分の位相補償を、位相算出部120Bが行うようにすればよい。
【0087】
また、本第2実施形態では、帯域制限フィルタ111Bとして、位相シフトが発生しないフィルタを採用することもできる。この場合には、位相算出部120Bにおける帯域制限フィルタ111Bに対応する位相補償の計算が不要となる。
【0088】
[第3実施形態]
次いで、本発明の第3実施形態を、図14及び図15を主に参照しつつ説明する。
【0089】
図14には、本第3実施形態に係る信号処理装置100Cの概略的な構成がブロックにて示されている。なお、信号処理装置100Cは、第1及び第2実施形態における信号処理装置100A,100Bと同様に、信号源910Aから出力された信号SIAを、入力端子191を介して受信して処理し、出力端子192から加工結果信号MSAとして出力する装置である。
【0090】
図14に示されるように、信号処理装置100Cは、上述した信号処理装置100Bと比べて、直交信号生成部110Bに代えて直交信号生成部110Cを備える点、及び、位相算出部120Bに代えて位相算出部120Cを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0091】
なお、本実施形態において、信号加工部140は、第2種信号加工手段として機能する。
【0092】
直交信号生成部110Cは、図15に示されるように、上述した直交信号生成部110Bと比べて、帯域制限フィルタ111Bに代えて帯域制限フィルタ111Cを備える点、及び、FIL113B1,113B2に代えてフィルタ手段としてのFIL113C1,113C2を備える点が異なっている。そして、帯域制限フィルタ111Cから出力された帯域制限信号LSCが、直交化部112Bへ送られるとともに、信号加工部140へも送られる点のみが、直交信号生成部110Bの場合と異なっている。
【0093】
帯域制限フィルタ111Cは、有限インパルス応答(FIR)フィルタ等のデジタルフィルタとして構成されている。帯域制限フィルタ111Cは、信号SIAにおける角周波数ωC及び信号加工部140における加工対象となる信号SIA中の信号成分SG2の周波数帯(角周波数ωc〜3ωc)を含む所定の周波数帯の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSCとして直交化部112Bへ向けて出力する。
【0094】
本第3実施形態では、帯域制限フィルタ111Cは、直交化部112Bにおいて行われる角周波数変換に際して行われる正弦波(∝sin(ωSH・t))の乗算の結果、周波数0で折り返された成分が、パイロット信号PSの周波数シフトの結果(本第3実施形態では、角周波数(ωSH−ωC)の成分)と重ならない(又は、十分に抑圧されている)ように、通過させる信号の周波数帯域を制限する。また、帯域制限フィルタ111Cは、サンプリング周波数fSMの1/2の周波数(fSM/2)で折り返された成分が、パイロット信号PSの周波数シフトの結果と重ならない(又は、十分に抑圧されている)ように、通過させる信号の周波数帯域を制限する。さらに、帯域制限フィルタ111Cは、角周波数ωc〜3ωcにおいて信号通過域が平坦となる特性を有している。かかる機能を有する帯域制限フィルタ111Cは、例えば、FIR方式のローパスフィルタとして実現することができる。
【0095】
なお、本第3実施形態では、帯域制限フィルタ111Cを介することによる位相シフトは発生しないものとする。
【0096】
直交化部112Bは、上記の第2実施形態の場合と同様に動作する。すなわち、直交化部112Bは、帯域制限信号LSCに基づいて、互いに直交するとともに、パイロット信号PSの位相θC(t)を反映した2つの信号OSC1,OSC2を生成する。そして、直交化部112Bは、信号OSC1,OSC2をFIL113C1,113C2へ向けて出力する。
【0097】
FIL113C1は、無限インパルス応答(IIR)フィルタ等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113C1は、直交化部112Bからの信号OSC1を受ける。そして、FIL113C1は、信号OSC1におけるパイロット信号PSに対応する信号成分の一方、本第3実施形態では角周波数(ωSH−ωC)の成分を選択的に通過させ、信号PSC1として位相算出部120Cへ向けて出力する。FIL113C1としては、例えば、IIR方式のバンドパスフィルタを採用することができる。
【0098】
なお、FIL113C1を介することにより、フィルタリング演算に伴う固定的な位相シフトΔθ2が発生する場合がある。本第3実施形態では、かかる位相シフトΔθ2が発生するものとする。
【0099】
かかるFIL113C1から出力される信号PSC1は、次の(11)式のように表される。
PSC1(t)=A(t)・sin[θS(t)]
=A(t)・sin[ωSHt−θC(t)−Δθ2
=A(t)・sin[ωSHt−(ωCt+φ0)−Δθ2] …(11)
ここで、A(t)は、パイロット信号PSの振幅値を表す。
【0100】
FIL113C2は、FIL113C1と同様に構成されている。このFIL113C2は、直交化部112Bからの信号OSC2を受ける。そして、FIL113C2は、信号OSC2におけるパイロット信号PSに対応する信号成分の一方、本第3実施形態では角周波数(ωSH−ωC)の成分を選択的に通過させ、信号PSC2を出力する。
【0101】
かかるFIL113C2から出力される信号PSC2は、次の(12)式のように表される。
PSC2(t)=A(t)・cos[θS(t)]
=A(t)・cos[ωSHt−θC(t)−Δθ2
=A(t)・cos[ωSHt−(ωCt+φ0)−Δθ2] …(12)
【0102】
図14に戻り、位相算出部120Cは、直交信号生成部110Cからの信号PSC1及び信号PSC2に基づいて、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Cは、例えば、信号PSC1及び信号PSC2についてarctan等の演算を行ったうえで、上述した位相シフトΔθ2及び角周波数ωSHの寄与分を補正して、位相θCを算出する。
【0103】
こうして算出されたθC(t)は、信号PHAとして、位相算出部120Cから基準信号生成部130Aへ向けて出力される。
【0104】
<動作>
次に、上記のように構成された信号処理装置100Cにおける信号処理動作について説明する。
【0105】
信号源910Aからの信号SIAが、入力端子191を介して信号処理装置100Cで受信されると、信号SIAが、直交信号生成部110Cへ供給される(図14参照)。信号SIAの供給を受けた直交信号生成部110Cでは、まず、帯域制限フィルタ111Cが、信号SIAにおける角周波数ωC及び信号成分SG2の角周波数帯域(角周波数ωC〜3ωC)含む所定の周波数帯の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSCとして直交化部112B及び信号加工部140へ送る(図15参照)。
【0106】
帯域制限信号LSCを受けた直交化部112Bは、帯域制限信号LSCに基づいて、互いに直交する2つの信号OSC1,OSC2を生成し、FIL113C1,113C2へ送る(図15参照)。ここで、信号OSCj(j=1,2)のそれぞれは、上記の第2実施形態の場合における信号OSBjと同様に、パイロット信号PSに対応する信号成分として、角周波数(ωSH−ωC)の信号成分PSMj及び角周波数(ωSH+ωC)の信号成分PSPjの2つの信号成分を含んでいる(図13参照)。
【0107】
なお、本第3実施形態では、直交化部112Bが帯域制限信号LSCの角周波数変換を行うことにしている。このため、第2実施形態の場合と同様に、高い角周波数領域に広く信号成分を有する信号SIAの角周波数変換を行った場合に生じ得る信号成分PSMj及び信号成分PSPjへのノイズの混入を防止することができるようになっている(第2実施形態において参照した図11〜図13参照)。
【0108】
引き続き、信号OSC1を受けたFIL113C1が、信号OSC1における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSC1として位相算出部120Cへ向けて出力する。また、信号OSC2を受けたFIL113C2が、信号OSC2における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSC2として位相算出部120Cへ向けて出力する(図15参照)。
【0109】
ここで、信号PSC1は、上述した(11)式で表される波形となる。一方、信号PSC2は、上述した(12)式で表される波形となる。
【0110】
信号PSC1,PSC2を受けた位相算出部120Cは、上述したように、信号PSC1及び信号PSC2、並びに位相シフトΔθ2及び角周波数ωSHに基づいて、パイロット信号PSの位相θCを算出する。こうして算出された位相θCは、信号PHAとして基準信号生成部130Aへ送られる(図14参照)。
【0111】
以後、第2実施形態の信号処理装置100Bの場合と同様に、信号PHAを受けた基準信号生成部130Aが、信号PHAに基づいて、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍であるの基準信号BSAを生成し、信号加工部140へ送る(図14参照)。そして、基準信号生成部130Aからの基準信号BSA、及び、直交信号生成部110Cからの帯域制限信号LSCを受けた信号加工部140が、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調し、加工結果信号MSAを生成する。そして、生成された加工結果信号MSAが、出力端子192を介して、外部へ出力される。
【0112】
以上説明したように、本第3実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む信号SIAから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θCを導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られた基準信号BSAを生成することができる。
【0113】
また、本第3実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、基準信号BSAを利用して信号SIA中の信号成分SG2の加工を行うので、迅速にかつ精度良く、信号成分SG2に対して所望の加工を行うことができる。
【0114】
また、本第3実施形態では、FIL113C1,113C2における位相ずれΔθ2がある場合には、これを考慮して、パイロット信号PSの位相θCの算出を行うので、精度良く位相θCを算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSAを生成することができる。
【0115】
また、本第3実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、直交化部112Bにおいて周波数変換を行ないつつ直交化を行うので、ヒルベルト変換等を用いて直交化する場合と比べて演算量を削減することができる。
【0116】
また、本第3実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、帯域制限フィルタ111Cにより信号SIAを帯域制限した帯域制限信号LSCを、角周波数変換を行いつつ直交化するので、パイロット信号PSの角周波数変換結果へのノイズの混入を低減させることができる。
【0117】
なお、本第3実施形態では、帯域制限フィルタ111Cを介することにより、位相シフトは発生しないものとした。これに対し、帯域制限フィルタ111Cを介することにより、位相シフトΔθ1が発生する場合には、第2実施形態におけるのと同様にして、位相シフトΔθ1分の位相補償を、位相算出部120Cが行うようにする。そして、基準信号生成部130Aに代えて、図16に示される構成の基準信号生成部130Cを備えるようにすればよい。
【0118】
かかる基準信号生成部130Cは、位相算出部120Cからの信号PHAに基づいて、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍の基準信号BSCを生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Cは、上述した基準信号生成部130Aと比べて、位相加工部131Aに代えて位相加工部131Cを備える点のみが異なっている。
【0119】
位相加工部131Cは、位相算出部120Cからの信号PHAを受けて、信号PHAが示す位相θC(t)を加工する。かかる加工に際して、位相加工部131Cは、次の(13)式により、位相θM(t)を算出する。
θM(t)=2(θC(t)−Δθ1
=2(ωCt+φ0−Δθ1) …(13)
【0120】
こうして算出された位相θM(t)は、位相加工信号MPCとして信号発生部132へ向けて出力される。この位相加工信号MPCを受けた信号発生部132は、基準信号BSCを生成する。本第3実施形態では、信号発生部132は、位相値に対応した振幅値が登録された正弦値テーブルを備えており、位相加工信号MPCによって示された位相θM(t)の正弦波信号を基準信号BSCとして生成する。
【0121】
この基準信号BSCは、次の(14)式で表される。
BSC(t)=C0・sin[θM(t)]
=C0・sin[2(θC(t)−Δθ1)]
=C0・sin[2(ωCt+φ0−Δθ1)] …(14)
【0122】
こうして生成された基準信号BSCは、基準信号生成部130Cから信号加工部140へ向けて出力される。この結果、信号加工部140は、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSCを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。
【0123】
また、本第3実施形態では、FIL113C1,FIL113C2として、位相シフトが発生しないフィルタを採用することもできる。この場合には、位相算出部120CにおけるFIL113C1,FIL113C2に対応する位相補償の演算が不要となる。
【0124】
また、帯域制限フィルタ111Cを、信号SIAにおける信号成分SG1(及び、場合によっては信号成分SG2)のサンプルレートを下げるためのデシメーションフィルタとしても利用可能な場合がある。こうした場合には、当該帯域制限フィルタ111Cに、デシメーションフィルタとしての機能を同時に発揮させるようにすることができる。
【0125】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を、図17〜図21を主に参照しつつ説明する。
【0126】
<構成>
図17には、本第4実施形態に係る信号処理装置100Dの概略的な構成がブロック図にて示されている。この信号処理装置100Dは、信号源910Dから出力された信号SIDを、入力端子191を介して受信して処理し、出力端子1921,1922から加工結果信号MSA,MSDとして出力する装置である。
【0127】
本第4実施形態では、信号SIDは、図18に示されるように、角周波数ωcのパイロット信号PSと、角周波数ωc〜3ωcの周波数帯の信号成分SG2とに加えて、角周波数3ωc〜5ωcの周波数帯の信号成分SG3を更に含んでいるものとする。ここで、信号成分SG3は、角周波数0〜ωcの帯域の信号により、パイロット信号PSの4倍の角周波数の信号(∝sin[4(ωct+φ0))])を振幅変調した信号であるものとする。本第4実施形態においては、信号処理装置100Dは、パイロット信号PSに基づいて、角周波数2ωcの基準信号BSA(∝sin[2(ωct+φ0)])及び角周波数4ωcの基準信号BSD(∝sin[4(ωct+φ0))])を生成する。そして、信号処理装置100Dは、基準信号BSAを利用して、振幅変調信号SG2を復調するとともに、基準信号BSDを利用して、振幅変調信号SG3を復調するようになっている。
【0128】
図17に示されるように、信号処理装置100Dは、上述した信号処理装置100Aと比べて、基準信号生成部130Aに代えて基準信号生成部130Dを備えるとともに、信号加工手段として、信号加工部1401と信号加工部1402とを備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0129】
基準信号生成部130Dは、位相算出部120Aからの信号PHAに基づいて、パイロット信号に同期し、角周波数が2倍の基準信号BSA、及び、パイロット信号に同期し、角周波数が4倍の基準信号BSDを生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Dは、図19に示されるように、上述した基準信号生成部130Aと比べて、位相加工部131Dと、信号発生部133とを更に備える点のみが異なっている。
【0130】
位相加工部131Dは、位相算出部120Aからの信号PHAを受けて、信号PHAが示す位相θC(t)を加工する。本第4実施形態においては、位相加工部131Dは、次の(15)式により、位相θN(t)を算出する。
θN(t)=4θC(t)=4(ωCt+φ0) …(15)
【0131】
すなわち、本第4実施形態では、位相加工部131Dは、角周波数4ωCで変化する位相θN(t)を算出する。こうして算出された位相θN(t)は、位相加工信号MPDとして信号発生部133へ向けて出力される。
【0132】
信号発生部133は、位相加工部131Dからの位相加工信号MPDに基づいて、基準信号BSDを生成する。この信号発生部133は、信号発生部132と同様に構成されている。
【0133】
こうして生成される基準信号BSDは、次の(16)式で表される。
BSD(t)=C0・sin[θN(t)]
=C0・sin[4θC(t)]
=C0・sin[4(ωCt+φ0)] …(16)
【0134】
こうして生成された基準信号BSDは、基準信号生成部130Dから信号加工部1402へ向けて出力される。なお、基準信号生成部130Dにおける位相加工部131A及び信号発生部132を利用して生成された基準信号BSAは、基準信号生成部130Dから信号加工部1401へ向けて出力される。
【0135】
信号加工部1401,1402のそれぞれは、上述した信号加工部140と同様に構成されている。ここで、信号加工部1401は、入力端子191を介した信号SID及び基準信号生成部130Dからの基準信号BSAを受ける。そして、信号加工部1401は、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。こうして生成された加工結果信号MSAは、出力端子1921を介して、外部へ出力される。
【0136】
また、信号加工部1402は、入力端子191を介した信号SID及び基準信号生成部130Dからの基準信号BSDを受ける。そして、信号加工部1402は、振幅変調信号である信号成分SG3を、基準信号BSDを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。こうして生成された加工結果信号MSDは、出力端子1922を介して、外部へ出力される。
【0137】
<動作>
次に、上記のように構成された信号処理装置100Dにおける信号処理動作について説明する。
【0138】
信号源910Dからの信号SIDが、入力端子191を介して信号処理装置100Dで受信されると、信号SIDが、直交信号生成部110A及び信号加工部1401,1402へ供給される(図17参照)。信号SIDの供給を受けた直交信号生成部110Aでは、上述した第1実施形態の場合と同様にして、直交化部112A及びFIL113A1,113A2を使用し、信号PSA1,PSA2が生成される。こうして生成された信号PSA1,PSA2は、位相算出部120Aへ送られる。
【0139】
信号PSA1,PSA2を受けた位相算出部120Aは、第1実施形態の場合と同様にして信号PSA1及び信号PSA2に基づいて、パイロット信号PSの位相θCを算出する。こうして算出された位相θCは、信号PHAとして基準信号生成部130Dへ送られる(図17参照)。
【0140】
信号PHAを受けた基準信号生成部130Dは、信号PHAに基づいて、パイロット信号PSに同期し、角周波数が2倍の基準信号BSA及び角周波数が4倍の基準信号BSDを生成する。かかる基準信号BSAの生成に際しては、基準信号生成部130Dでは、上述した基準信号生成部130Aの場合と同様にして、位相加工部131A及び信号発生部132を利用する、こうして生成された基準信号BSAは、信号加工部1401へ送られる。
【0141】
また、基準信号BSDの生成に際しては、基準信号生成部130Dでは、位相加工部131Dが、上述した(15)式により、角周波数4ωCを有する位相θN(t)を算出し、信号発生部133へ送る(図19参照)。位相θN(t)を受けた信号発生部133は、位相θN(t)に基づいて内部の正弦値テーブルを参照して、上述した(16)式で表される正弦波信号である基準信号BSDを生成する。こうして生成された基準信号BSDは、信号加工部1402へ送られる(図19参照)。
【0142】
基準信号生成部130Dからの基準信号BSA、及び、信号源910Dからの信号SIDを受けた信号加工部1401は、上述した信号加工部140の場合と同様にして、振幅変調信号である信号成分SG2を、基準信号BSAを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。こうして、信号成分SG2に対応し、図20(図7を再掲)に示されるように、角周波数0〜ωCの帯域の加工結果信号MSAが生成され、出力端子1921を介して、外部へ出力される。
【0143】
基準信号生成部130Dからの基準信号BSD、及び、信号源910Dからの信号SIDを受けた信号加工部1402は、振幅変調信号である信号成分SG3を、基準信号BSDを利用して加工し、角周波数0〜ωcの帯域の信号に復調する。かかる加工に際して、信号加工部1402では、まず、信号加工部1402内の乗算部141が、信号SIDと基準信号BSDとの乗算を行い、混合信号MXDを生成する。ここで、上述したように、信号SIDにおける信号成分SG3は、角周波数3ωC〜5ωCの角周波数成分を有し、基準信号BSDは角周波数4ωCの成分のみを有しているので、混合信号MXDにおける信号成分SG3に対応する信号成分は、角周波数0〜ωCの成分と、角周波数7ωC〜9ωCの成分とに角周波数変換される。こうして生成された混合信号MXDは、信号加工部1402内のLPF142へ向けて送られる。
【0144】
混合信号MXDを受けたLPF142は、角周波数0〜ωCの信号成分を選択的に通過させる。この結果、信号成分SG3に対応し、図21に示されるように、角周波数0〜ωCの周波数帯の加工結果信号MSDが生成されて、出力端子1922を介して、外部へ出力される。
【0145】
以上説明したように、本第4実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む信号SIDから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θCを導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られた基準信号BSA,BSDを生成することができる。
【0146】
また、本第4実施形態では、基準信号BSA,BSDを利用して信号SID中の信号成分SG2,SG3の加工を行うので、迅速にかつ精度良く、信号成分SG2,SG3に対して所望の加工を行うことができる。
【0147】
また、本第4実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、FIL113A1,113A2における位相ずれΔθがある場合には、これを考慮して、パイロット信号PSの位相θCの算出を行うので、精度良く位相θCを算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSA,BSDを生成することができる。
【0148】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を、図22〜図24を主に参照しつつ説明する。
【0149】
<構成>
図22には、本第5実施形態に係る信号処理装置100Eの概略的な構成がブロック図にて示されている。この信号処理装置100Eは、信号源910Aから出力された信号SIAを、入力端子191を介して受信して処理し、出力端子192から加工結果信号MSEとして出力する装置である。
【0150】
図22に示されるように、信号処理装置100Eは、上述した信号処理装置100Aと比べて、基準信号生成部130Aに代えて基準信号生成部130Eを備えるとともに、位相オフセット設定部150を更に備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0151】
基準信号生成部130Eは、位相算出部120Aからの信号PHAに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSEを生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Eは、図23に示されるように、上述した基準信号生成部130Aと比べて、位相加工部131Aと信号発生部132との間に配置された加算部135を更に備えている。
【0152】
加算部135は、位相加工部131Aからの位相加工信号MPAと、位相オフセット設定部150からのオフセット位相信号POSを受ける。そして、加算部135は、位相加工信号MPAにより報告された位相θM(t)と、オフセット位相信号POSにより指定されたオフセット位相Δφとの加算を行い、位相θPの算出を行う。
【0153】
ここで、位相θPは、次の(17)式で表される。
θP(t)=θM(t)+Δφ=2θC(t)+Δφ
=2(ωCt+φ0)+Δφ …(17)
【0154】
こうして算出された位相θP(t)は、位相加工信号MPEとして信号発生部132へ向けて出力される。この結果、信号発生部132により、次の(18)式で表される基準信号BSEが生成される。
BSE(t)=C0・sin[θP(t)]
=C0・sin[2θC(t)+Δφ]
=C0・sin[2(ωCt+φ0)+Δφ] …(18)
【0155】
こうして生成された基準信号BSEは、基準信号生成部130Eから信号加工部140へ向けて出力される。
【0156】
図22に戻り、位相オフセット設定部150は、入力端子191を介した信号SIAを受ける。そして、位相オフセット設定部150は、信号SIAの信号レベルや、信号SIAにおける角周波数3ωCより高い角周波数の成分であるノイズのレベルに基づいて、予め定められたアルゴリズムに従って、オフセット位相Δφを算出する。こうして算出されたオフセット位相Δφは、オフセット位相信号POSとして基準信号生成部130Eへ向けて出力される。
【0157】
<動作>
次に、上記のように構成された信号処理装置100Eにおける信号処理動作について説明する。
【0158】
信号源910Aからの信号SIAが、入力端子191を介して信号処理装置100Eで受信されると、信号SIAが、直交信号生成部110A、信号加工部140及び位相オフセット設定部150へ供給される(図22参照)。信号SIAの供給を受けた位相オフセット設定部150は、上述したように、信号SIAの信号レベルやノイズレベルに基づいてオフセット位相Δφを算出し、オフセット位相信号POSとして、基準信号生成部130Eへ向けて送る。
【0159】
また、信号SIAの供給を受けた直交信号生成部110Aは、上述した第1実施形態の場合と同様にして、直交化部112A及びFIL113A1,113A2を使用し、信号PSA1,PSA2が生成される。こうして生成された信号PSA1,PSA2は、位相算出部120Aへ送られる。
【0160】
信号PSA1,PSA2を受けた位相算出部120Aは、第1実施形態の場合と同様にして、信号PSA1,PSA2に基づいて、パイロット信号PSの位相θCを算出する。こうして算出された位相θCは、信号PHAとして基準信号生成部130Eへ送られる(図22参照)。
【0161】
信号PHAを受けた基準信号生成部130Eは、位相算出部120Aからの信号PHA及び位相オフセット設定部150からのオフセット位相信号POSに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSEを生成する。かかる基準信号BSEの生成に際しては、基準信号生成部130Eでは、上述した基準信号生成部130Aの場合と同様にして、位相加工部131Aが、上述した(4)式により、角周波数2ωCを有する位相θM(t)を算出し、位相加工信号MPAとして加算部135へ送る(図23参照)。
【0162】
位相θMを受けた加算部135は、上述した(17)式に従って、オフセット位相信号POSにより指定されているオフセット位相Δφを位相θMに加算し、位相θPを算出する。こうして算出された位相θPは、信号発生部132へ送られる(図23参照)。
【0163】
位相θPを受けた信号発生部132は、位相θPに基づいて内部の正弦値テーブルを参照して、上述した(18)式で表される正弦波信号である基準信号BSEを生成する。こうして生成された基準信号BSEは、信号加工部140へ送られる(図23参照)。
【0164】
基準信号生成部130Eからの基準信号BSE、及び、信号源910Aからの信号SIAを受けた信号加工部140は、基準信号BSEを利用して信号SIAにおける信号成分SG2を加工して、周波数帯(角周波数0〜ωc)とする。こうして生成された加工結果信号MSEは、次の(19)式で表されるように、cos(Δφ)の値に比例する。
MSE(t)∝cos(Δφ) …(19)
【0165】
このため、加工結果信号MSEは、図24に示されるように、角周波数0〜ωcの角周波数帯域の信号成分を有するとともに、オフセット位相Δφの設定値を変化させることにより、振幅値が変化する信号となっている。こうして生成された加工結果信号MSEは、出力端子192を介して、外部へ出力される。
【0166】
以上説明したように、本第5実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む信号SIAから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θCを導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られた基準信号BSEを生成することができる。
【0167】
また、本第5実施形態では、基準信号BSEを利用して信号SIA中の信号成分SG2の加工を行うので、迅速にかつ精度良く、信号成分SG2に対して所望の加工を行うことができる。
【0168】
また、本第5実施形態では、第1実施形態の場合と同様にして、FIL113A1,113A2における位相ずれΔθがある場合には、これを考慮して、パイロット信号PSの位相θCの算出を行うので、精度良く位相θCを算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSEを生成することができる。
【0169】
また、本第5実施形態では、信号源910Aからの信号SIAの信号レベルやノイズレベルに対応したオフセット位相Δφを設定し、オフセット位相Δφを反映した基準信号BSEを生成するので、加工結果信号MSEの振幅を、信号SIAの信号レベルやノイズレベルに対応して変化させることができる。なお、オフセット位相Δφを、予め定められた固定値とすることもできる。
【0170】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の第1〜第5実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0171】
例えば、上記の第1〜第5実施形態では、基準信号として、パイロット信号PSの角周波数ωCの2倍の角周波数2ωCを有する信号を生成するようにした。これに対し、信号源から信号における加工対象信号成分の態様に応じて、角周波数ωCの任意倍の角周波数を有する信号を、基準信号として生成するようにすることもできる。さらに、第2及び第3実施形態の場合には、角周波数ωCとシフト角周波数ωSHとの任意の線形結合によって得られる角周波数を有する信号を基準信号として生成するようにすることもできる。
【0172】
また、上記の第1〜第5実施形態では、加工結果信号の角周波数帯域を角周波数0〜ωCの帯域としたが、基準信号の角周波数を変化させて、加工結果信号の角周波数帯域を任意の角周波数帯域とすることができる。
【0173】
また、上記の第1〜第5実施形態では、位相算出部がパイロット信号PSの位相を算出するようにしたが、パイロット信号PSを反映した信号の位相であれば、パイロット信号PS以外の信号の位相を算出するようにしてもよい。例えば、第2及び第3実施形態におけるパイロット信号PSに対する周波数シフトが行われた後の信号の位相を算出するようにしてもよい。
【0174】
また、上記の第3及び第4の実施形態では、周波数変換後のパイロット信号PSに対応する信号のうち、角周波数(ωSH−ωC)の信号を抽出して利用するようにしたが、角周波数(ωSH+ωC)の信号を抽出して利用するようにしてもよい。
【0175】
また、上記の第4の実施形態では、2つの基準信号を生成し、信号源からの信号に含まれる2つの角周波数帯の信号を加工することにしたが、3つ以上の基準信号を生成し、信号源からの信号に含まれる3つの角周波数帯の信号を加工するようにすることもできる。
【0176】
また、上記の第4の実施形態では、角周波数が異なる複数の基準信号を生成するようにした。これに対し、角周波数が同一で、位相が所望の値だけ異なる複数の基準信号を生成するようにし、同一周波数帯の信号を加工するようにしてもよい。
【0177】
また、上記の第5実施形態では、信号源からの信号のレベルやノイズレベルに対応してオフセット位相Δφを設定するようにしたが、利用者の指令に従ってオフセット位相Δφを設定するようにしてもよい。
【0178】
また、第1実施形態に対する第2又は第3実施形態への変形を、第4又は第5実施形態に適用することもできるし、第1実施形態に対する第4又は第5実施形態への変形を、第2又は第3実施形態に適用することもできる
【0179】
なお、第1〜第5実施形態の信号処理装置を、DSP(Digital Signal Processor)におけるプログラムの実行によっても実現することができる。これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明の第1実施形態に係る信号処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態において想定する信号源からの信号の周波数分布を説明するための図である。
【図3】図1の装置における直交信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図4】図3における直交化部の構成を示すブロック図である。
【図5】図1の装置における基準信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図6】図1の装置における信号加工部の構成を示すブロック図である。
【図7】図1の装置による加工結果信号の周波数分布を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る信号処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図9】図8の装置における直交信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図10】図9における直交化部の構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施形態において想定する信号源からの信号の周波数分布を説明するための図である。
【図12】帯域制限フィルタから出力される帯域制限信号の周波数分布を説明するための図である。
【図13】図10の直交化部による周波数変換結果を示すための図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る信号処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図15】図14の装置における直交信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図16】図14の装置における基準信号生成部の変形例の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る信号処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図18】第4実施形態において想定する信号源からの信号の周波数分布を説明するための図である。
【図19】図17の装置における基準信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図20】図17の装置による加工結果信号の周波数分布を説明するための図(その1)である。
【図21】図17の装置による加工結果信号の周波数分布を説明するための図(その2)である。
【図22】本発明の第5実施形態に係る信号処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図23】図22の装置における基準信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図24】図22の装置による加工結果信号の周波数分布及び振幅を説明するための図である。
【符号の説明】
【0181】
100A〜100E … 信号処理装置
110A〜110C … 直交信号生成部(直交信号生成手段)
111B,111C … 帯域制限フィルタ(帯域制限手段)
112A,112B … 直交化部(直交化手段)
113A1,113A2 … フィルタ(フィルタ手段)
113B1,113B2 … フィルタ(フィルタ手段)
113C1,113C2 … フィルタ(フィルタ手段)
120A〜120C … 位相算出部(位相算出手段)
130A … 基準信号生成部(基準信号生成手段)
130D,130E … 基準信号生成部(基準信号生成手段)
140 … 信号加工部(第1種及び第2種信号加工手段)
1401,1402 … 信号加工部(第1種信号加工手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数帯の所定信号を含む入力信号に関する処理を行う信号処理装置であって、
前記所定信号の位相を反映し、互いの直交化が図られた第1信号及び第2信号を生成する直交信号生成手段と;
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する位相算出手段と;
前記位相算出手段による算出結果に基づいて、前記所定信号と所定関係にある基準信号を生成する基準信号生成手段と;
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記基準信号は、前記所定信号における位相に対し、所定倍の位相を有する信号である、ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記基準信号は、前記所定信号における位相に対し、所定倍の位相と所定の固定位相値との和で表される位相を有する信号である、ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記基準信号を利用して前記入力信号を加工する第1種加工手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記直交信号生成手段は、
前記所定信号の位相を反映し、互いに直交化が図られた第1直交化信号及び第2直交化信号を生成する直交化手段と;
前記第1直交化信号に含まれる前記第1信号、及び、前記第2直交化信号に含まれる前記第2信号を選択的に通過させるフィルタ手段と;
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記位相算出手段は、前記フィルタ手段における位相ずれを考慮して、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する、ことを特徴とする請求項5に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記直交信号生成手段は、前記直交化に加えて、周波数シフトを行い、
前記位相算出手段は、前記周波数シフトによる周波数シフト量を考慮して、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する、
ことを特徴する請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記基準信号は、前記所定信号を反映した信号の位相と、前記周波数シフト量に対応する位相との線形結合によって算出される位相を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記基準信号は、所定の固定位相値分だけ更にずれた位相を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記入力信号の周波数帯域を制限した帯域制限信号を生成し、前記直交化手段に供給する帯域制限手段を更に備える、ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項11】
前記位相算出手段は、前記帯域制限手段による位相ずれを考慮して、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する、ことを特徴とする請求項10に記載の信号処理装置。
【請求項12】
前記基準信号を利用して前記帯域制限信号を加工する第2種加工手段を更に備える、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の信号処理装置。
【請求項13】
前記基準信号生成手段は、前記位相算出手段による算出結果に基づいて、前記所定信号と所定関係にある複数の基準信号を生成する、ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項14】
所定周波数帯の所定信号を含む入力信号に関する処理を行う信号処理方法であって、
前記所定信号の位相を反映し、互いの直交化が図られた第1信号及び第2信号を生成する直交信号生成工程と;
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記所定信号を反映した信号の位相を算出する位相算出工程と;
前記位相算出工程における算出結果に基づいて、前記所定信号と所定関係にある基準信号を生成する基準信号生成工程と;
を備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴する信号処理プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−65234(P2009−65234A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228744(P2007−228744)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】