信号処理装置およびその方法
【課題】ESPRITによる信号処理だけで複数の候補値を算出しこれらから推定値を得ることで推定値の信頼性を高めた信号処理装置および方法を提供する。
【解決手段】所望のパラメータに関し、アレー状の複数の受信素子の各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する信号処理において、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割し、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する。
【解決手段】所望のパラメータに関し、アレー状の複数の受信素子の各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する信号処理において、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割し、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ装置等に適応可能なアレー状の複数の受信素子で受信された信号の処理を行う信号処理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、例えば非特許文献1に開示されているESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)による信号処理では、一つの選択行列対により一つの推定値を出力している。しかし、一つの推定値では信頼性が得られない。このため、特許文献1の装置では、複数の信号処理アルゴリズムを用いて複数の推定値を得ることにより、信頼性を高めている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−108851号公報
【非特許文献1】R. Roy and T. Kailath、”ESPRIT − Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques,”IEEE Trans., vol. ASSP−37、pp.984−995、July 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、ESPRITによる信号処理だけで複数の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を得ることにより、推定値の信頼性を高めた信号処理装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、アレー状の複数の受信素子と、所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、を備え、前記信号処理手段が、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割するサブアレー選択手段を含み、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する、ことを特徴とする信号処理装置およびその方法にある。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、ESPRITによる信号処理だけで複数の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を得ることにより、推定値の信頼性を高めた信号処理装置およびその方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図を示す。図1において、信号処理装置は、対象物等からの到来波を受けるアレー状に形成される複数のL個の受信素子11〜1L、各受信素子11〜1Lからのアナログ信号をディジタル信号x1〜xLに変換するL個のA/D変換器(ADC)21〜2L、ディジタル信号x1〜xLの共分散行列を算出する共分散行列演算処理部3、固有値と固有ベクトルを算出する固有値・固有ベクトル演算処理部4、固有ベクトル内にサブアレーを定めるN個のサブアレー選択部51〜5N、最小二乗法の演算を行うN個の最小二乗演算処理部61〜6N、最小二乗法の解から候補値q1〜qNを算出するN個の候補値算出処理部71〜7N、候補値q1〜qNから最終的な推定値を判定する推定値判定処理部8、および最終的な推定値を出力する推定値出力部9を備える。
【0008】
なお、共分散行列演算処理部3が共分散行列演算処理手段、固有値・固有ベクトル演算処理部4が固有値・固有ベクトル演算処理手段、N個のサブアレー選択部51〜5Nがサブアレー選択手段、N個の最小二乗演算処理部61〜6Nが最小二乗演算処理手段、N個の候補値算出処理部71〜7Nが候補値算出処理手段、推定値判定処理部8が推定値判定処理手段、および推定値出力部9が推定値出力手段をそれぞれ構成する。そしてこれら全体で、例えばコンピュータにより構成される信号処理手段を構成する。
【0009】
以下、動作について説明する。受信素子11〜1Lにより信号を観測し、その観測信号をA/D変換器21〜2Lでアナログ信号からディジタル信号x1〜xLへ変換する。ディジタル信号x1〜xLから共分散行列演算処理部3で共分散行列を算出し、共分散行列を固有値・固有ベクトル演算処理部4で固有値と固有ベクトルに展開する。
【0010】
サブアレー選択部51〜5Nでは、固有値・固有ベクトル演算処理部4で得られる固有ベクトルの要素を、各選択方法で独立して異なる2つのサブアレーに分割する。図2はサブアレー選択部51とサブアレー選択部52の動作の一例を示す。固有ベクトルが要素y1〜y6で構成されるものとし、サブアレー選択部51は要素y1〜y5であるサブアレーz11と要素y2〜y6であるサブアレーz21を選択し、サブアレー選択部52は要素y1〜y3であるサブアレーz12と要素y4〜y6であるサブアレーz22を選択する。このようにサブアレー選択部51〜5Nにおいて、サブアレーz11〜z1Nおよびz21〜z2Nを構成する。これらサブアレーz11〜z1Nおよびz21〜z2Nは、固有値・固有ベクトル演算処理部4で得られる固有ベクトルのうち、信号に対応する全ての固有ベクトルに対して構成する。
【0011】
最小二乗演算処理部61〜6Nは、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られる2つの行列の関係を最小二乗法で解く。最小二乗法にはTLS(Total Least Square)法等を用いることも可能である。候補値算出処理部71〜7Nでは、最小二乗法の解から推定値の候補値q1〜qNを算出する。なお、サブアレー間の長さにより、候補値q1〜qNの各々が複数の数値を含む場合もある。
【0012】
推定値判定処理部8では、サブアレー選択部51〜5Nで定めたサブアレー間隔の情報等を用いて、候補値q1〜qNから最終的な推定値を判定する。図3は推定値判定処理部8の動作の一例を示す。図3では、サブアレー間の長さが短い候補値ξ1(1つのサブアレー選択方法に基づいて得られたもの)を基準として、サブアレー間の長さが長い候補値ξ2a〜ξ2cの複数個(別の1つのサブアレー選択方法に基づいて得られたもの)から最も近い候補値ξ2bを最終的な推定値として選択する。
【0013】
一般に、サブアレー間の長さが短い候補値は、曖昧性が少ないために候補値が一意に定まるが、候補値がパラメータ真値へ漸近する確率が低い。一方、サブアレー間の長さが長い候補値は、曖昧性が多く複数個の候補値が得られることがあるが、複数個の候補値の一つがパラメータ真値へ漸近する確率が高い。この2つの性質を併用することにより、推定値は、曖昧性を減らし、パラメータ真値への漸近性を高めることができる。
【0014】
そして推定値出力部9では最終的な推定値を出力する。
【0015】
図4はESPRITによる従来の信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。図4において、図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。従来のものには図1のサブアレー選択部51〜5N及び推定値判定処理部8はなく、また1組の最小二乗演算処理部61と候補値算出処理部71が設けられているだけである。さらに候補値算出処理部71の出力がそのまま推定値となる。
【0016】
図4の信号処理装置では、単一の推定値しか得られない。しかし、図1の信号処理装置では、サブアレー選択部51〜5Nに基づいて特性が異なるN個の推定値が得られるため、推定値判定処理部8により信頼性の高い推定値を得ることができる。
【0017】
また文献、M. Haardt and J. A. Nossek、”Unitary ESPRIT: how to obtain increased estimation accuracy with a reduced computational burden”IEEE Trans. Signal Processing、vol. 43、no. 5、pp. 1232-1242、May, 1995、に開示されるUnitary ESPRITによる信号処理装置においても、上記と同様の装置構成により実施可能である。
【0018】
実施の形態2.
図5はこの発明の別の実施の形態による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。サブセット選択部101〜10Mはディジタル信号x1〜xLからサブセットを選択する。共分散行列演算処理部31〜3Mは図1の共分散行列演算処理部3と同様のもの、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mは図1の固有値・固有ベクトル演算処理部4と同様のもの、最小二乗演算処理部61〜6Mは図1の最小二乗演算処理部61〜6Nと同様のもの、候補値算出処理部71〜7Mは図1の候補値算出処理部71〜7Nと同様のものである。
【0019】
図5の信号処理装置では、サブセット選択部101〜10Mにおいてそれぞれ異なるサブセットをディジタル信号x1〜xLから選択することにより、図1の信号処理装置と同様に複数の候補値q1〜qMを得る。異なるサブセットの具体例としては、サブセット選択部101ではディジタル信号x1〜xLを選択し、サブセット選択部102ではディジタル信号x2〜xLを選択し、サブセット選択部103ではディジタル信号x1、x3〜xLを選択する、というものなどが挙げられる。
【0020】
さらに、図6の信号処理装置は、図1の信号処理装置と図5の信号処理装置を組み合わせた変形例による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。上述の図と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図6の信号処理装置では、サブセット選択部101〜10Mで複数のサブセットを作る処理と、サブアレー選択部51〜5Nで複数のサブアレーを作る処理を併用することで、より多数の候補値を得るころが可能である。
【0021】
ただし、演算処理量の観点からは、図6の信号処理装置よりも図1の信号処理装置の方が優れた実施の形態である。これは、図4のESPRITによる信号処理装置において、固有値・固有ベクトル演算処理部4の演算処理量が信号処理装置全体の演算処理量の大部分を占めるためである。よって、図5や図6の信号処理装置において、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mの個数Mを削減することが、演算処理量の低減に直結する。つまり、図1の信号処理装置のように、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mを1つに共通化した実施の形態の方が低演算処理量の信号処理装置として望ましい。固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mの全てを共通化しないまでも、部分的に共通化することも有効である。
【0022】
実施の形態3.
図7はこの発明のさらに別の実施の形態による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図7において、第1の切替手段である切替スイッチ111は、サブアレー選択部51〜5Nを時間帯毎に切替える。
【0023】
切替スイッチ111を時間帯毎に切替えることで、複数の時間帯における候補値q1〜qNを推定値判定処理部8で実施の形態1と同様に処理できる。また、候補値q1〜qNが異なる時間帯のものであるため、推定値判定処理部8では追尾処理を行うことも可能である。
【0024】
同様に、図8の信号処理装置は図5の信号処理装置へ第2の切替手段である切替スイッチ121を適用したものである。切替スイッチ121を時間帯毎に切替えることにより、複数の時間帯における候補値q1〜qNを得ることができる。
【0025】
実施の形態4.
なお、アレー状の複数の受信素子からの受信信号に基づき、所望のパラメータの推定値を判定する上述の実施の形態1〜3の信号処理装置は、推定値を求める所望のパラメータが、目標対象物の速度、距離、到来時間、仰角、方位角、あるいは受信信号の周波数等である速度推定信号処理装置、距離推定信号処理装置、時間推定信号処理装置、高度推定信号処理装置、角度推定信号処理装置、周波数推定信号処理装置に適用可能である。
【0026】
実施の形態5.
図9はこの発明のさらに別の実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図9において、送信素子141〜14Kは信号を送信し、アレー状に形成されるL個の受信素子131〜13Lは送信素子141〜14Kからの送信波の目標対象物での反射波である到来波を受信する。送信切替手段である送信切替スイッチ151は送信素子141〜14Kの切替えを行い、信号発信器161は送信信号の発信源である。
【0027】
送信切替スイッチ151により送信素子141〜14Kを切替えることにより、受信素子131〜13Lを大開口アレーアンテナに仮想化可能である。このように仮想化された大開口アレーアンテナに対しても、上述の各実施の形態の信号処理装置が適用可能である。
【0028】
図9の信号処理装置では、送信素子141〜14Kの配置と送信切替スイッチ151の切り替え方法によって、共分散行列演算処理部3で算出する共分散行列を変えることが可能である。共分散行列演算処理部3は、送信切替スイッチ151の切り替え方法に連動し、複数回の観測によるディジタル信号x1〜xLを合わせた共分散行列を算出する。また、サブアレー選択部51〜5Nのサブアレー選択方法も、共分散行列演算処理部3と同様に、送信切替スイッチ151の切り替えに連動して変化させる。
【0029】
図10は図9の信号処理装置における受信素子と送信素子の構成例である。図10において、送信素子141と送信素子142を切替えて観測したデータを合成すると、十分遠方に存在する目標(対象物)に対して、送信素子141と送信素子142を図11に示すように一つの送信素子181に仮想化し、4つの受信素子131〜134を8つの受信素子171〜178に仮想化した素子構成で観測したデータとして扱うことができる。
【0030】
図11におけるESPRITの信号処理では、受信素子群(171、173、175、177)のサブアレー1と受信素子群(172、174、176、178)のサブアレー2に対応する選択行列対を設定したり、受信素子群(171、172、173、174)のサブアレー1と受信素子群(175、176、177、178)のサブアレー2に対応する選択行列対を設定したりする。
【0031】
図11のように仮想化した受信素子群を用いて、高度(仰角)推定処理や角度(方位角)推定処理を図9の信号処理装置で行うことができる。
【0032】
図9は図1の信号処理装置へ送信素子141〜14K、送信切替スイッチ151と信号発信器161を追加した信号処理装置である。同様に、他の実施の形態の信号処理装置へも送信素子141〜14K、送信切替スイッチ151と信号発信器161を追加することで実施が可能である。
【0033】
なお、この発明は上述の各の実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組合せを全て含むことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1のサブアレー選択部の動作の一例を説明するための図である。
【図3】図1の推定値判定処理部の動作の一例を説明するための図である。
【図4】従来のESPRITによる信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2による信号処理装置の別の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による信号処理装置の別の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態5による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態5による信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態5による信号処理装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
11〜1L,131〜13L,171〜178 受信素子、21〜2L A/D変換器、3,31〜3M 共分散行列演算処理部、4,41〜4M 固有値・固有ベクトル演算処理部、51〜5N サブアレー選択部、61〜6M,6N 最小二乗演算処理部、71〜7M,7N 推定値算出処理部、8 推定値判定処理部、9 推定値出力部、101〜10M サブセット選択部、111,121 切替スイッチ、141〜14K,181 送信素子、151 送信切替スイッチ、161 信号発信器。
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ装置等に適応可能なアレー状の複数の受信素子で受信された信号の処理を行う信号処理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、例えば非特許文献1に開示されているESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)による信号処理では、一つの選択行列対により一つの推定値を出力している。しかし、一つの推定値では信頼性が得られない。このため、特許文献1の装置では、複数の信号処理アルゴリズムを用いて複数の推定値を得ることにより、信頼性を高めている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−108851号公報
【非特許文献1】R. Roy and T. Kailath、”ESPRIT − Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques,”IEEE Trans., vol. ASSP−37、pp.984−995、July 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、ESPRITによる信号処理だけで複数の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を得ることにより、推定値の信頼性を高めた信号処理装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、アレー状の複数の受信素子と、所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、を備え、前記信号処理手段が、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割するサブアレー選択手段を含み、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する、ことを特徴とする信号処理装置およびその方法にある。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、ESPRITによる信号処理だけで複数の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を得ることにより、推定値の信頼性を高めた信号処理装置およびその方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図を示す。図1において、信号処理装置は、対象物等からの到来波を受けるアレー状に形成される複数のL個の受信素子11〜1L、各受信素子11〜1Lからのアナログ信号をディジタル信号x1〜xLに変換するL個のA/D変換器(ADC)21〜2L、ディジタル信号x1〜xLの共分散行列を算出する共分散行列演算処理部3、固有値と固有ベクトルを算出する固有値・固有ベクトル演算処理部4、固有ベクトル内にサブアレーを定めるN個のサブアレー選択部51〜5N、最小二乗法の演算を行うN個の最小二乗演算処理部61〜6N、最小二乗法の解から候補値q1〜qNを算出するN個の候補値算出処理部71〜7N、候補値q1〜qNから最終的な推定値を判定する推定値判定処理部8、および最終的な推定値を出力する推定値出力部9を備える。
【0008】
なお、共分散行列演算処理部3が共分散行列演算処理手段、固有値・固有ベクトル演算処理部4が固有値・固有ベクトル演算処理手段、N個のサブアレー選択部51〜5Nがサブアレー選択手段、N個の最小二乗演算処理部61〜6Nが最小二乗演算処理手段、N個の候補値算出処理部71〜7Nが候補値算出処理手段、推定値判定処理部8が推定値判定処理手段、および推定値出力部9が推定値出力手段をそれぞれ構成する。そしてこれら全体で、例えばコンピュータにより構成される信号処理手段を構成する。
【0009】
以下、動作について説明する。受信素子11〜1Lにより信号を観測し、その観測信号をA/D変換器21〜2Lでアナログ信号からディジタル信号x1〜xLへ変換する。ディジタル信号x1〜xLから共分散行列演算処理部3で共分散行列を算出し、共分散行列を固有値・固有ベクトル演算処理部4で固有値と固有ベクトルに展開する。
【0010】
サブアレー選択部51〜5Nでは、固有値・固有ベクトル演算処理部4で得られる固有ベクトルの要素を、各選択方法で独立して異なる2つのサブアレーに分割する。図2はサブアレー選択部51とサブアレー選択部52の動作の一例を示す。固有ベクトルが要素y1〜y6で構成されるものとし、サブアレー選択部51は要素y1〜y5であるサブアレーz11と要素y2〜y6であるサブアレーz21を選択し、サブアレー選択部52は要素y1〜y3であるサブアレーz12と要素y4〜y6であるサブアレーz22を選択する。このようにサブアレー選択部51〜5Nにおいて、サブアレーz11〜z1Nおよびz21〜z2Nを構成する。これらサブアレーz11〜z1Nおよびz21〜z2Nは、固有値・固有ベクトル演算処理部4で得られる固有ベクトルのうち、信号に対応する全ての固有ベクトルに対して構成する。
【0011】
最小二乗演算処理部61〜6Nは、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られる2つの行列の関係を最小二乗法で解く。最小二乗法にはTLS(Total Least Square)法等を用いることも可能である。候補値算出処理部71〜7Nでは、最小二乗法の解から推定値の候補値q1〜qNを算出する。なお、サブアレー間の長さにより、候補値q1〜qNの各々が複数の数値を含む場合もある。
【0012】
推定値判定処理部8では、サブアレー選択部51〜5Nで定めたサブアレー間隔の情報等を用いて、候補値q1〜qNから最終的な推定値を判定する。図3は推定値判定処理部8の動作の一例を示す。図3では、サブアレー間の長さが短い候補値ξ1(1つのサブアレー選択方法に基づいて得られたもの)を基準として、サブアレー間の長さが長い候補値ξ2a〜ξ2cの複数個(別の1つのサブアレー選択方法に基づいて得られたもの)から最も近い候補値ξ2bを最終的な推定値として選択する。
【0013】
一般に、サブアレー間の長さが短い候補値は、曖昧性が少ないために候補値が一意に定まるが、候補値がパラメータ真値へ漸近する確率が低い。一方、サブアレー間の長さが長い候補値は、曖昧性が多く複数個の候補値が得られることがあるが、複数個の候補値の一つがパラメータ真値へ漸近する確率が高い。この2つの性質を併用することにより、推定値は、曖昧性を減らし、パラメータ真値への漸近性を高めることができる。
【0014】
そして推定値出力部9では最終的な推定値を出力する。
【0015】
図4はESPRITによる従来の信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。図4において、図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。従来のものには図1のサブアレー選択部51〜5N及び推定値判定処理部8はなく、また1組の最小二乗演算処理部61と候補値算出処理部71が設けられているだけである。さらに候補値算出処理部71の出力がそのまま推定値となる。
【0016】
図4の信号処理装置では、単一の推定値しか得られない。しかし、図1の信号処理装置では、サブアレー選択部51〜5Nに基づいて特性が異なるN個の推定値が得られるため、推定値判定処理部8により信頼性の高い推定値を得ることができる。
【0017】
また文献、M. Haardt and J. A. Nossek、”Unitary ESPRIT: how to obtain increased estimation accuracy with a reduced computational burden”IEEE Trans. Signal Processing、vol. 43、no. 5、pp. 1232-1242、May, 1995、に開示されるUnitary ESPRITによる信号処理装置においても、上記と同様の装置構成により実施可能である。
【0018】
実施の形態2.
図5はこの発明の別の実施の形態による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。サブセット選択部101〜10Mはディジタル信号x1〜xLからサブセットを選択する。共分散行列演算処理部31〜3Mは図1の共分散行列演算処理部3と同様のもの、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mは図1の固有値・固有ベクトル演算処理部4と同様のもの、最小二乗演算処理部61〜6Mは図1の最小二乗演算処理部61〜6Nと同様のもの、候補値算出処理部71〜7Mは図1の候補値算出処理部71〜7Nと同様のものである。
【0019】
図5の信号処理装置では、サブセット選択部101〜10Mにおいてそれぞれ異なるサブセットをディジタル信号x1〜xLから選択することにより、図1の信号処理装置と同様に複数の候補値q1〜qMを得る。異なるサブセットの具体例としては、サブセット選択部101ではディジタル信号x1〜xLを選択し、サブセット選択部102ではディジタル信号x2〜xLを選択し、サブセット選択部103ではディジタル信号x1、x3〜xLを選択する、というものなどが挙げられる。
【0020】
さらに、図6の信号処理装置は、図1の信号処理装置と図5の信号処理装置を組み合わせた変形例による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。上述の図と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図6の信号処理装置では、サブセット選択部101〜10Mで複数のサブセットを作る処理と、サブアレー選択部51〜5Nで複数のサブアレーを作る処理を併用することで、より多数の候補値を得るころが可能である。
【0021】
ただし、演算処理量の観点からは、図6の信号処理装置よりも図1の信号処理装置の方が優れた実施の形態である。これは、図4のESPRITによる信号処理装置において、固有値・固有ベクトル演算処理部4の演算処理量が信号処理装置全体の演算処理量の大部分を占めるためである。よって、図5や図6の信号処理装置において、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mの個数Mを削減することが、演算処理量の低減に直結する。つまり、図1の信号処理装置のように、固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mを1つに共通化した実施の形態の方が低演算処理量の信号処理装置として望ましい。固有値・固有ベクトル演算処理部41〜4Mの全てを共通化しないまでも、部分的に共通化することも有効である。
【0022】
実施の形態3.
図7はこの発明のさらに別の実施の形態による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図7において、第1の切替手段である切替スイッチ111は、サブアレー選択部51〜5Nを時間帯毎に切替える。
【0023】
切替スイッチ111を時間帯毎に切替えることで、複数の時間帯における候補値q1〜qNを推定値判定処理部8で実施の形態1と同様に処理できる。また、候補値q1〜qNが異なる時間帯のものであるため、推定値判定処理部8では追尾処理を行うことも可能である。
【0024】
同様に、図8の信号処理装置は図5の信号処理装置へ第2の切替手段である切替スイッチ121を適用したものである。切替スイッチ121を時間帯毎に切替えることにより、複数の時間帯における候補値q1〜qNを得ることができる。
【0025】
実施の形態4.
なお、アレー状の複数の受信素子からの受信信号に基づき、所望のパラメータの推定値を判定する上述の実施の形態1〜3の信号処理装置は、推定値を求める所望のパラメータが、目標対象物の速度、距離、到来時間、仰角、方位角、あるいは受信信号の周波数等である速度推定信号処理装置、距離推定信号処理装置、時間推定信号処理装置、高度推定信号処理装置、角度推定信号処理装置、周波数推定信号処理装置に適用可能である。
【0026】
実施の形態5.
図9はこの発明のさらに別の実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図を示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図9において、送信素子141〜14Kは信号を送信し、アレー状に形成されるL個の受信素子131〜13Lは送信素子141〜14Kからの送信波の目標対象物での反射波である到来波を受信する。送信切替手段である送信切替スイッチ151は送信素子141〜14Kの切替えを行い、信号発信器161は送信信号の発信源である。
【0027】
送信切替スイッチ151により送信素子141〜14Kを切替えることにより、受信素子131〜13Lを大開口アレーアンテナに仮想化可能である。このように仮想化された大開口アレーアンテナに対しても、上述の各実施の形態の信号処理装置が適用可能である。
【0028】
図9の信号処理装置では、送信素子141〜14Kの配置と送信切替スイッチ151の切り替え方法によって、共分散行列演算処理部3で算出する共分散行列を変えることが可能である。共分散行列演算処理部3は、送信切替スイッチ151の切り替え方法に連動し、複数回の観測によるディジタル信号x1〜xLを合わせた共分散行列を算出する。また、サブアレー選択部51〜5Nのサブアレー選択方法も、共分散行列演算処理部3と同様に、送信切替スイッチ151の切り替えに連動して変化させる。
【0029】
図10は図9の信号処理装置における受信素子と送信素子の構成例である。図10において、送信素子141と送信素子142を切替えて観測したデータを合成すると、十分遠方に存在する目標(対象物)に対して、送信素子141と送信素子142を図11に示すように一つの送信素子181に仮想化し、4つの受信素子131〜134を8つの受信素子171〜178に仮想化した素子構成で観測したデータとして扱うことができる。
【0030】
図11におけるESPRITの信号処理では、受信素子群(171、173、175、177)のサブアレー1と受信素子群(172、174、176、178)のサブアレー2に対応する選択行列対を設定したり、受信素子群(171、172、173、174)のサブアレー1と受信素子群(175、176、177、178)のサブアレー2に対応する選択行列対を設定したりする。
【0031】
図11のように仮想化した受信素子群を用いて、高度(仰角)推定処理や角度(方位角)推定処理を図9の信号処理装置で行うことができる。
【0032】
図9は図1の信号処理装置へ送信素子141〜14K、送信切替スイッチ151と信号発信器161を追加した信号処理装置である。同様に、他の実施の形態の信号処理装置へも送信素子141〜14K、送信切替スイッチ151と信号発信器161を追加することで実施が可能である。
【0033】
なお、この発明は上述の各の実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組合せを全て含むことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施の形態による信号処理装置の基本構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1のサブアレー選択部の動作の一例を説明するための図である。
【図3】図1の推定値判定処理部の動作の一例を説明するための図である。
【図4】従来のESPRITによる信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2による信号処理装置の別の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による信号処理装置の別の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態5による信号処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態5による信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態5による信号処理装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
11〜1L,131〜13L,171〜178 受信素子、21〜2L A/D変換器、3,31〜3M 共分散行列演算処理部、4,41〜4M 固有値・固有ベクトル演算処理部、51〜5N サブアレー選択部、61〜6M,6N 最小二乗演算処理部、71〜7M,7N 推定値算出処理部、8 推定値判定処理部、9 推定値出力部、101〜10M サブセット選択部、111,121 切替スイッチ、141〜14K,181 送信素子、151 送信切替スイッチ、161 信号発信器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレー状の複数の受信素子と、
所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、
を備え、
前記信号処理手段が、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割するサブアレー選択手段を含み、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する、
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
ESPRITによる信号処理におけるサブアレー間の長さが短い場合の候補値を元に、サブアレー間の長さが長い場合に得られる複数の候補値の中から推定値を判定することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
ESPRITによる信号処理におけるサブアレー間の長さが短い場合と、サブアレー間の長さが長い場合を組み合わせて候補値の中から推定値を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
複数のサブアレー選択方法毎に得られた推定値を統合し1つの推定値を出力することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
信号処理手段が複数のサブアレー選択方法を時間帯毎に切替える第1の切替手段を含み、時間帯でサブアレー選択方法を切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
推定値を求める所望のパラメータが、受信信号に係わる対象物の速度、距離、到来時間、受信信号の周波数のいずれか1つであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
推定値を求める所望のパラメータが、受信信号に係わる対象物の仰角又は方位角であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
複数の送信素子及びこれらを切り替える送信切替手段をさらに備え、受信素子が送信素子からの送信波の対象物での反射波を受信し、信号処理手段が共分散行列の演算及びそれぞれのサブアレー選択方法を送信素子の切り替えに連動して変更して行うことを特徴とする請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号処理手段が、異なる複数のサブセット選択方法によりそれぞれに、複数の受信素子から組合せの異なる複数を選択するサブセット選択手段を含み、前記複数のサブセット毎の複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項10】
信号処理手段が複数のサブセットを時間帯毎に切替える第2の切替手段を含み、時間帯でサブセットを切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の信号処理装置。
【請求項11】
アレー状の複数の受信素子と、
所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、
を備え、
前記信号処理手段が、異なる複数のサブセット選択方法によりそれぞれに、複数の受信素子から組合せの異なる複数を選択するサブセット選択手段を含み、前記複数のサブセット毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項12】
信号処理手段が複数のサブセットを時間帯毎に切替える切替手段を含み、時間帯でサブセットを切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項13】
所望のパラメータに関し、アレー状の複数の受信素子の各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する信号処理方法において、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割し、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする信号処理方法。
【請求項1】
アレー状の複数の受信素子と、
所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、
を備え、
前記信号処理手段が、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割するサブアレー選択手段を含み、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定する、
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
ESPRITによる信号処理におけるサブアレー間の長さが短い場合の候補値を元に、サブアレー間の長さが長い場合に得られる複数の候補値の中から推定値を判定することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
ESPRITによる信号処理におけるサブアレー間の長さが短い場合と、サブアレー間の長さが長い場合を組み合わせて候補値の中から推定値を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
複数のサブアレー選択方法毎に得られた推定値を統合し1つの推定値を出力することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
信号処理手段が複数のサブアレー選択方法を時間帯毎に切替える第1の切替手段を含み、時間帯でサブアレー選択方法を切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
推定値を求める所望のパラメータが、受信信号に係わる対象物の速度、距離、到来時間、受信信号の周波数のいずれか1つであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
推定値を求める所望のパラメータが、受信信号に係わる対象物の仰角又は方位角であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
複数の送信素子及びこれらを切り替える送信切替手段をさらに備え、受信素子が送信素子からの送信波の対象物での反射波を受信し、信号処理手段が共分散行列の演算及びそれぞれのサブアレー選択方法を送信素子の切り替えに連動して変更して行うことを特徴とする請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号処理手段が、異なる複数のサブセット選択方法によりそれぞれに、複数の受信素子から組合せの異なる複数を選択するサブセット選択手段を含み、前記複数のサブセット毎の複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項10】
信号処理手段が複数のサブセットを時間帯毎に切替える第2の切替手段を含み、時間帯でサブセットを切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の信号処理装置。
【請求項11】
アレー状の複数の受信素子と、
所望のパラメータに関し、各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する、信号処理手段と、
を備え、
前記信号処理手段が、異なる複数のサブセット選択方法によりそれぞれに、複数の受信素子から組合せの異なる複数を選択するサブセット選択手段を含み、前記複数のサブセット毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項12】
信号処理手段が複数のサブセットを時間帯毎に切替える切替手段を含み、時間帯でサブセットを切り替えて信号処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項13】
所望のパラメータに関し、アレー状の複数の受信素子の各受信素子から得られる受信信号に対してESPRITによる信号処理により、共分散行列を演算し、算出された共分散行列を固定値と固有ベクトルに展開し、固有ベクトルに選択行列対を適用して得られた2つの行列の関係を最小二乗法で解き、最小二乗法の解から所望のパラメータの推定値の候補値を算出して出力する信号処理方法において、複数のサブアレー選択方法によりそれぞれに、固有ベクトルの複数の要素を各選択方法で異なるサブアレーに分割し、複数のサブアレー選択方法毎にそれぞれESPRITによる信号処理で所望のパラメータの推定値の候補値を算出し、算出された複数の候補値を組み合わせて推定値を判定することを特徴とする信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−267909(P2008−267909A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109423(P2007−109423)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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