説明

信号変調回路

【課題】発振回路からの連続信号のレベル調整を行う場合であっても、送信電力を制御することが可能な信号変調回路を提供する。
【解決手段】信号変調回路の一例であるパルス生成回路は、発振回路と、制御信号発生回路と、逓倍回路と、フィルタと、制御部からなる。発振回路、及び逓倍回路は能動素子で構成されるアクティブ回路である。発振回路から連続信号が出力されて逓倍回路に入力され、制御信号発生回路から出力される制御信号によって逓倍回路が間欠的に動作することでパルス信号を生成し、制御部からの信号により電力レベルを簡易に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス生成回路、及び周波数変調回路などの無線通信における信号変調回路、送信回路に関し、特に、出力電力を調整する機能を有した信号変調回路、送信回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信技術の一方式として、パルス通信技術がある。パルス通信技術においては、パルス信号を如何にして生成するかがシステム性能を左右する。パルス信号を所望の周波数帯域の成分のみを持つ信号とするには、パルス信号をフィルタによって周波数帯域制限して特定の周波数成分のみを抜き出す方法、パルス状の制御信号により発振回路を間欠的に動作させる方法、パルス状の制御信号をミキサに入力してキャリア信号を窓掛けすることでパルス信号を生成する方法がある。
【0003】
これらパルス生成回路は、要求性能として短パルス性、高いオンオフ比がある。短パルス性はパルス信号を用いた通信において通信速度向上に寄与する。高いオンオフ比は、パルス信号を用いた通信において通信品質の向上に寄与する。
【0004】
図12にミキサを用いた短パルス生成回路に関する従来技術のブロック構成を示す。また、図13に図12における信号波形のタイミングチャートを示す。以下、図12と図13を用いて従来技術の説明をする。
【0005】
発振回路1201から出力される信号1301はミキサ1203に入力される。一方で、制御信号発生回路1202から出力される制御信号1302もミキサに入力される。信号1301は制御信号1302により窓掛けされて、パルス信号1303としてミキサ1203から出力される。この回路構成は非常に簡易であり、特段回路遅延要素もなく短パルス性の観点で優れている。しかし、発振回路1201からの信号がオフ時に漏洩するためにオンオフ比が低いという課題がある(非特許文献1参照)。
【0006】
一方で、図14に示すように発振回路を間欠的に動作させることで高いオンオフ比を実現する回路が提案されている。図15は図14における信号波形のタイミングチャートを示す。以下、図14と図15を用いて従来技術の説明をする。
【0007】
発振回路1401は制御信号発生回路1202から出力されるパルス状の制御信号1501によって間欠的に動作し、電圧レベルの高いオン区間に対応してパルス信号1502を生成する。オフ区間では発振回路1401は動作しないので、信号が漏洩することもなく高いオンオフ比を実現できる。しかし、発振回路の動作開始時における動作遅延によりパルス信号1501の過渡特性が劣化し、良好な短パルス性を確保することが困難である(特許文献1参照)。
【0008】
以上に示した従来技術では、短パルス性と高いオンオフ比の要求を同時に満たす回路構成ではない。ミキサ(図12、図13)を用いた従来技術では高いオンオフ比の実現が困難である。また、間欠発振回路を用いた従来技術(非特許文献1)においては、良好な短パルス性の確保が困難である。この二つの課題を解決する方法として、逓倍回路を間欠的に動作させることでパルス信号を生成する間欠逓倍技術がある。
【0009】
間欠逓倍技術では、逓倍回路を制御信号によって直接制御して間欠的に動作させることで、高いオンオフ比を実現する。間欠逓倍技術を用いたパルス生成回路は、発振回路と間欠逓倍回路とフィルタで構成される。発振回路で生成された連続信号は間欠逓倍回路に入力される。間欠逓倍回路には、前期連続信号と、電圧レベルの高いオン区間と電圧レベルの低いオフ区間を有したパルス状の制御信号が入力される。間欠逓倍回路は制御信号によって間欠的に動作する。オン区間においては回路が動作することで高調波を生成し、オフ区間では回路が動作しないことで高調波生成を抑止する。オフ区間に漏洩する連続信号は、間欠逓倍回路の後段に設けるフィルタによって除去され、出力信号としてパルス信号を得る。これにより短パルス性と高いオンオフ比の両立が可能となる。このように、間欠逓倍技術においては、発振回路に発振機能を、間欠逓倍回路に変調機能と逓倍機能を備えることで簡易な構成でパルス通信を実現できる。
【0010】
一方、通信技術の別の一方式として、周波数変調による通信技術がある。パルス通信が振幅の変化にデータを乗せて通信するのに対し、周波数変調による通信は周波数の変化にデータ信号を乗せて通信する技術である。通常、周波数変調による通信を実現するには、直行変調を行う回路を構成するが、回路構成が複雑という欠点がある。この欠点を補う技術としてVCO(Voltage Controlled Oscillator:電力制御型発振器)変調技術がある。VCO変調を行うための回路構成を図16、VCO変調における信号波形を図17に示す。制御信号発生回路1602から出力される制御信号1702がVCO1601の制御信号端子(以下、Vt端子)に入力され、制御信号1702によって発振周波数が変化することで周波数変調を行う。周波数変調された信号1701は後段の逓倍回路1603で周波数が逓倍されて、出力信号1703が出力端子1604から出力される構成である。このようにVCO変調技術においては、VCOに発振機能と変調機能を、逓倍回路に逓倍機能を備えることで簡易な構成で周波数変調による通信を実現できる。
【0011】
【非特許文献1】R.F.Forsythe,“A coherent solid sate,225GHz receiver,”Microwave journal,pp.64−71 1982
【特許文献1】特表2003−513501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に示した間欠逓倍技術を用いたパルス生成回路では、短パルス性と高いオンオフ比を両立できる。また、以上に示したVCO変調技術を用いた周波数変調回路では、簡易な構成で周波数変調回路を構成できる。この間欠逓倍回路を用いたパルス生成回路、及びVCO変調回路を通信装置に備える際に、従来の回路と同様に、送信電力の制御機能を備える必要がある。送信装置の出力端子での送信電力を一定に保つため、また、通信距離によって送信電力を制御するためである。パルス通信においては、従来からあるミキサを用いたパルス生成回路では、発振回路からの連続信号のレベルを調整することで簡易に送信電力を制御できた。また、周波数変調による通信においては、従来からある直行変調の構成では、発振回路からの連続信号のレベルを調整することで簡易に送信電力を制御できた。ともに、従来技術では、発振回路の後段に設けられるミキサに変調機能が備わり、ミキサが線形動作するためである。
【0013】
しかしながら、間欠逓倍回路を用いたパルス生成回路では、仮に発振回路からの連続信号のレベルを調整すると、そのレベルに従って間欠逓倍回路の変換利得特性が変化するため、送信電力を線形的に制御できない。同様に、VCO変調回路では、仮に発振回路からの連続信号のレベルを調整するためにバイアス電圧条件を変更すると、所望の周波数領域で発振させるためのVt値が変化するため、短絡的に送信電力を制御することができない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発振回路からの連続信号のレベル調整を行う場合であっても、送信電力を制御することが可能な信号変調回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の信号変調回路は、発振回路から出力される連続信号に基づいてパルス信号を生成する信号変調回路であって、時間軸において、それぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を出力する制御信号発生回路と、前記第一の制御信号および前記連続信号の入力を受けて、前記第一の制御信号のオン区間に対応する前記連続信号を逓倍して前記パルス信号を出力する間欠逓倍回路と、前記パルス信号のレベルを検出して、前記発振回路から出力される前記連続信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記間欠逓倍回路の変換利得を制御する第三の制御信号を生成する制御部とを備え、前記間欠逓倍回路は、前記第一の制御信号のオン区間における変換利得がオフ区間における変換利得よりも高いものである。
【0016】
この構成により、発振回路からの連続信号のレベル調整を行う場合であっても、良質のパルスを生成することが可能であり、送信電力を制御することができる。具体的には、発振回路からの連続信号のレベル調整と合わせて間欠逓倍回路を制御する制御信号のレベル調整をする、若しくは間欠逓倍回路のバイアス点を調整することで、間欠逓倍回路を用いた短パルス生成回路においても簡易に送信電力レベル調整を行うことが可能である。このように、高いオンオフ比と短パルス性を両立した短パルス生成回路を構成可能であり、出力電力の制御を簡易にすることができる。
【0017】
また、本発明の信号変調回路は、間欠逓倍回路が、前記能動素子と、前記能動素子の制御端子と接続され、前記第一の制御信号が入力される制御信号入力端を有し、前記制御信号入力端から前記能動素子側を測定したインピーダンスのカットオフ周波数が、前記第一の制御信号のオン区間の時間幅の逆数以上である。
【0018】
この構成により、出力信号波形の波形なまりを抑止することができる。
【0019】
また、本発明の信号変調回路は、前記間欠逓倍回路の出力信号を分岐させ、一方を空間に放射して、他方を前記制御部に出力する分岐回路を備えるものである。
【0020】
この構成により、信号変調回路で生成したパルス信号を別回路に出力することができる。
【0021】
また、本発明の信号変調回路は、前記間欠逓倍回路の出力信号を分岐させ、一方を空間に放射して、他方を前記制御部に出力するスイッチ回路を備えるものである。
【0022】
この構成により、当該信号変調回路を送受信機に適用することができる。
【0023】
また、本発明の信号変調回路は、前記間欠逓倍回路が、前記間欠逓倍回路の出力信号の周波数帯成分を通過させ、他の周波数帯成分を抑圧するフィルタを備えるものである。
【0024】
この構成により、所望周波数以外の周波数帯のスプリアス成分を抑圧できる。
【0025】
また、本発明の信号変調回路は、前記第一の制御信号のオフ区間において前記能動素子の制御端子で測定される連続信号の振幅よりも、前記制御信号発生回路から出力される前記第一の制御信号の振幅が大きいものである。
【0026】
この構成により、非常に高いオンオフ比が確保できる。
【0027】
また、本発明の信号変調回路は、前記制御信号入力端と前記能動素子の制御端子との間に、前記第一の制御信号を増幅する増幅部を備え、前記第一の制御信号のオフ区間に、前記連続信号の振幅より大きな振幅の前記増幅部によって増幅された第一の制御信号が前記能動素子に入力される。
【0028】
この構成により、低い電圧レベルの制御信号によっても、非常に高いオンオフ比が確保できる。
【0029】
また、本発明の信号変調回路は、時間軸においてそれぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を生成する制御信号発生回路と、前記第一の制御信号に基づいて周波数変調された変調信号を出力する電圧制御発振器と、前記変調信号のレベルを検出して、前記電圧制御発振器から出力される前記変調信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記電圧制御発振器の電圧制御端子の電圧レベルを制御する第三の制御信号を生成する制御部と、を備える。
【0030】
この構成により、発振回路(電圧制御発信器)の電圧制御により変調された連続信号のレベル調整を行う場合であっても、送信電力を制御することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、発振回路からの連続信号のレベル調整を行う場合であっても、送信電力を制御することが可能である。
例えば、発振回路から出力される連続信号に基づいてパルス信号を生成するパルス生成回路であって、時間軸において、それぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を出力する制御信号発生回路、前記第一の制御信号および前記連続信号の入力を受けて、前記第一の制御信号のオン区間に対応する前記連続信号を逓倍して前記パルス信号を出力する間欠逓倍回路と、前記パルス信号のレベルを検出して、前記発振回路から出力される前記連続信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記間欠逓倍回路の変換利得を制御する第三の制御信号を生成する制御部を備え、前記間欠逓倍回路が、前記第一の制御信号のオン区間における変換利得がオフ区間における変換利得よりも高いことで、高いオンオフ比のパルス信号を生成し、出力電力が簡易に調整できる短パルス生成回路を実現できる。
また、例えば、時間軸においてそれぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を生成する制御信号発生回路と、前記第一の制御信号に基づいて周波数変調された変調信号を出力する電圧制御発振器と、前記変調信号のレベルを検出して、前記電圧制御発振器から出力される前記変調信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記電圧制御発振器の電圧制御端子の電圧レベルを制御する第三の制御信号を生成する制御部と、を備えることで、電圧制御発振器の電圧制御端子に印加されるバイアス電圧を制御することで、簡易に電力制御機能を具備した周波数変調回路を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態における通信装置のブロック図である。図1に示す送信回路は、発振回路101と、制御信号発生回路102と、間欠逓倍回路103と、フィルタ104と、分岐回路105と、制御部106と、出力端子107からなる。発振回路101、及び間欠逓倍回路103は能動素子で構成されるアクティブ回路である。
【0034】
以下、能動素子はFET(電界効果トランジスタ)として説明する。間欠逓倍回路の逓倍数はn(n:正の整数)であるが、以下、出力信号の所望周波数をf0、発振回路の出力信号の周波数をf0/2として、間欠逓倍回路は二逓倍回路として説明する。また、制御信号発生回路102から出力される制御信号の信号波形は任意だが、以下、パルス波形として説明する。
【0035】
発振回路101から連続信号が出力されて間欠逓倍回路103に入力され、制御信号発生回路102から出力される制御信号によって間欠逓倍回路103が間欠的に動作することでパルス信号を生成する。間欠逓倍回路103から出力されるスプリアス成分はフィルタ104で除去される。フィルタを介してスプリアス成分を除去されたパルス信号は分岐回路105に入力され、一方は出力端子107に送出されて送信信号として出力される。一方は制御部106に入力されて受けた信号のレベルを検出する。制御部106において検出した値を基に、発振回路101に入力される制御信号と、間欠逓倍回路103に入力される制御信号を生成する。発振回路101に入力される制御信号は発振回路の出力レベルを制御する。間欠逓倍回路103に入力される制御信号は間欠逓倍回路103の変換利得を制御する。これらの制御信号によって、出力端子107から出力されるパルス信号の出力レベルを制御する。以上の動作により、オンオフ比(オンのときとオフのときの振幅の比)が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整(制御)可能なパルス生成回路が構成される。なお、パルス生成回路は信号変調を行う信号変調回路の一例である。
【0036】
図2は図1に示したブロック構成図における信号、及び制御信号のタイミングチャートである。縦軸は全て電圧、横軸は全て時間である。以下、図1と図2を用いて本実施形態における、オンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路について説明する。
【0037】
発振回路101において信号201が生成され、間欠逓倍回路103へ送出する。発振回路101の回路構成は公知技術なので説明は省略する。
【0038】
制御信号発生回路102から出力される制御信号202が間欠逓倍回路103に入力され、制御信号202の電圧値によって間欠逓倍回路103の構成要素であるFETの動作点を制御する。
【0039】
FETの動作点を制御することで、制御信号202の電圧値が高い区間(以下、オン区間)における変換利得を高く、電圧値が低い区間(以下、オフ区間)における変換利得を低くできる。
【0040】
そのため、信号203におけるオフ区間での主成分はキャリア周波数f0に対して半分である周波数f0/2の信号となり、間欠逓倍回路103から出力される周波数f0の成分はオン区間とオフ区間で振幅値が大きく異なり、その差がオン/オフ比(単位:dB)となる。制御信号202のオン区間とオフ区間の電圧値の設定について、オン区間において変換利得が最大となるように設定することが望ましい。
【0041】
ここで、オンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路を構成するには、間欠逓倍回路103の動作が重要となる。以下、間欠逓倍回路103の動作について説明する。
【0042】
図3は間欠逓倍回路103の一実施例である。図3に示す間欠逓倍回路103は、能動素子301と、整合回路302と、整合回路303と、結合器304と、結合器305と、フィルタ306と、DCフィード器307と、電源308と、パスコン309と、制御信号入力端310からなる。
【0043】
動作点の制御方法は、制御信号202でゲート−ソース間電圧(Vgs)を直接制御する。発振回路101から出力される連続信号201は能動素子301のゲート端子側から入力される。結合器304と結合器305はDCカット用であり、キャパシタ素子や平行結合線路によって構成される。
【0044】
結合器304を通過する高周波信号は発振回路101から出力される連続信号201であり、位相雑音を考慮しなければスペクトラム波形が広がりを持たないため、結合器304の通過帯域は広帯域を要求されない。
【0045】
一方、結合器305を通過する高周波信号はバースト状のパルス信号である。パルス信号のスペクトラム波形は広い帯域を有するため結合器305の通過帯域は広帯域を要求され、その帯域はパルス信号のパルス幅の逆数の二倍以上であることが望ましい。整合回路302は入力側整合回路であり、整合回路303は出力側整合回路である。整合回路の設計は公知の技術なので説明は省略する。なお、整合回路302は、オン区間ではインピーダンスが整合するよう設計を行い、反射が起きないように反射係数を設定する。また、オフ区間では、インピーダンスが不整合となるよう設計を行う。
【0046】
フィルタ306は、整合回路302と結合器304を結ぶ伝送線路上からフィルタ306側のインピーダンスを観測したとき、周波数f0/2においてオープン、若しくはスミスチャート上でその近傍となるフィルタである。分布定数線路では周波数f0/2において電気長λg/4オープンスタブと電気長λg/4線路で構成され、集中定数素子では容量素子と誘電素子で構成される。
【0047】
また、制御信号入力端310からフィルタ306側(つまり能動素子301側)を観測した際の入力インピーダンスの周波数特性は、フィルタ306の周波数特性の影響でDCから低周波数帯においてはLPF(ローパスフィルタ)となる。その際のLPFのカットオフ周波数は制御信号202のパルス幅の逆数以上が望ましい。
【0048】
制御信号202のパルス幅の逆数よりカットオフ周波数が低い場合に、制御信号202の波形が鈍るため、Vgs制御の高速性が損なわれる。これにより、出力信号204の立ち上がりと立ち下がりの波形は、急峻でなくなる。出力信号204の立ち上がりと立ち下がりの波形が急峻でなくなることで、パルス幅が狭くなり、スペクトラム波形が拡がってしまう。それにより、例えば、通信において割り当てられたチャネル帯域の外側の周波数帯にとってスプリアス成分に成り得る。
【0049】
また、波形なまりにより立ち上がり時間と立ち下がり時間の合計がパルス幅以上になった場合、出力信号204の振幅値が下がってしまってSN劣化となる。カットオフ周波数の設定は回路設計において線路長、線路幅、及びスタブによって設定できる。
【0050】
また、フィルタ306は整合回路302と結合器304を結ぶ伝送線路上からフィルタ306側のインピーダンスを観測したとき、周波数f0においてもオープン、若しくはスミスチャート上でその近傍であることが望ましい。これにより、回路上に存在する周波数f0の信号が電源側への回り込みを防止できて回路の安定化に寄与する。
【0051】
DCフィード器307は、整合回路303と結合器305を結ぶ伝送線路上からDCフィード器307側のインピーダンスを観測したとき、少なくとも周波数f0と周波数f0/2においてオープンであり、理想的にはDC成分のみを通過させる。
【0052】
例えば、分布定数線路では電気長λg/4オープンスタブと電気長λg/4線路で構成され、集中定数素子では容量素子と誘電素子で構成される。パスコン309は寄生発振防止用に電源308側に設置する。
【0053】
一方で、制御信号入力端310にはパスコンを設けない。制御信号入力端310にパスコンを設けると、線路や回路に存在する抵抗成分と容量成分と相まって時定数が大きくなって制御信号202の波形がなまってしまう。波形なまりにより上述したように出力波形204の立ち上がりと立ち下がりが急峻でなくなってしまう。
【0054】
図4(a)は、図3の回路構成におけるVgsと出力信号レベルの周波数f0成分のレベルの特性曲線を示した図である。特性曲線は、出力信号レベルの最大値で正規化している。また、この際のドレイン−ソース電圧(以下、Vds)をVds1とする。
【0055】
図4(a)において領域401と領域402での出力信号レベル差は70dB程度であり、オン区間での制御信号202の電圧値を領域401におけるVgs、オフ区間での制御信号202の電圧値を領域402におけるVgsとすることが望ましく、出力信号のオン/オフ比70dBのパルス信号を生成できる。図4(a)の横軸は0.1V/divであり、制御信号202のオン区間とオフ区間の電圧値設定は現実的である。
【0056】
図4(b)は、VgsとIdの関係を示した図である。図4(b)における領域401と領域402は図4(a)と対応させている。このように、領域401におけるVgs、つまり変換利得が最大となるVgsはピンチオフ電圧、若しくはその近傍の電圧値であり、回路を流れるドレイン電流(Id)は非常に小さい値となる。また、オフ区間での制御信号202の電圧値を領域402におけるVgsとしているため、オフ区間では電流は流れていない。そのため、低消費電力で動作し、更に回路が寄生発振しにくいという効果も有する。
【0057】
このとき、オフ区間においてゲート端で観測される連続信号の振幅(電圧値)より、制御信号202のオン区間での振幅(電圧値)が大きくなるように設定する。オフ区間での振幅とは、制御信号202のオン区間での電位とオフ区間での電位との電位差である。オフ区間での連続信号の振幅が、制御信号202のオン区間での振幅より大きいと、オフ区間での連続信号の振幅のピーク値が制御信号202のオン区間での電位より高くなる。制御信号202のオン区間での電位はピンチオフ電圧で設定しているため、オフ区間での連続信号の振幅のピーク値がピンチオフ電圧以上になる。連続信号の振幅がピンチオフ電圧以上になると高調波が発生するため、高調波をオフ区間において発生させないためには、オフ区間での連続信号の振幅が制御信号202のオン区間の振幅より小さくするように設定する必要がある。
【0058】
制御信号入力端310から能動素子301のゲート端の間に制御信号202の電圧値を増幅する増幅部を挿入した場合は、能動素子301のゲート端で観測される連続信号の振幅(電圧値)より、増幅された制御信号202の電圧値が大きくなるように設定すればよく、制御信号202の電圧値は必ずしも能動素子301のゲート端で観測される連続信号の振幅(電圧値)より大きくなくてよい。こうすることで、制御信号202を発生させるベースバンド回路の消費電力を低減する効果を有する。
【0059】
ところで、オフ区間での制御信号202の電圧値を領域403とすることもできるが、高いオン/オフ比の確保が困難であることは明瞭であり、更にIdが大きいため消費電力が高くなり、回路も寄生発振しやすくなる。
【0060】
間欠動作の立ち上がり部において、オフ区間においても電流が流れるためFETの端子間容量や回路に存在する浮遊容量を事前にチャージでき、間欠動作の高速性につながるが、高いオン/オフ比、低消費電力動作、及び回路の安定性の観点からオフ区間での制御信号202の電圧値は領域402に設定することが望ましい。
【0061】
図5は、図3の回路構成におけるVgsと出力信号レベルにおける周波数f0成分のレベルの特性曲線を入力信号レベル毎に比較して示した図である。夫々の特性曲線の縦軸は夫々の出力信号レベル毎に最大値で正規化している。特性曲線501、502、503の順に入力信号レベルが大きくなる。
【0062】
図5より、オン区間での制御信号202の電圧値を領域401におけるVgs、オフ区間での制御信号202の電圧値を領域402におけるVgsとする場合、入力信号レベルが大きい方が、Vgsの変化に対して出力信号レベルの変化開始が早い。
【0063】
換言すると、制御信号202の電圧値(Vgs)の変化に対して、入力信号レベルが大きい方が出力信号204の立ち上がりと立ち下がりが早く、間欠動作の高速性という観点では入力信号レベルが大きい方が望ましい。しかし、入力信号レベル小さい方がオン/オフ比が高く、間欠逓倍回路103への入力信号レベルはシステム仕様に合わせて設計する必要がある。このように、間欠動作の高速性やオン/オフ比は、間欠逓倍回路103への入力信号レベル、つまり発振回路101からの信号201の信号レベルに依存する。
【0064】
図6は、図3の回路構成における信号201の電力レベルに対する変換利得の特性を、Vdを変化させて示した図である。また、実線で示した特性曲線と、破線で示した特性曲線はVdの値が異なる。図6より、連続信号の電力量を変化させることで変換利得が変わる。たとえば図6における実線で示したVd特性において、電力601を間欠逓倍回路に入力した場合の変換利得に対して、電力601より1dB低い電力602を間欠逓倍回路に入力した場合の変換利得は同値でない。そのため、電力601を間欠逓倍回路に入力した場合の出力レベルと、電力602を間欠逓倍回路に入力した場合の出力レベルの差は1dB以下となり、入力電力を1dB制御した場合でも出力電力を1dB制御することが困難である。
【0065】
ここで、入力電力レベルを減少させる一方でVdを制御すると、入力電力レベルを下げながら変換利得を一定に保つことができ、入力電力レベルの減少分と出力電力レベルの減少分が一致する。たとえばVdを実線特性に設定した状態で電力601を入力した場合を考える。出力電力を1dB低下するためには入力電力を電力601から電力602に制御し、合わせてVdを破線特性に設定すればよい。Vdの実線特性における点603と、破線特性における点604の変換利得は同値であるためである。
【0066】
以上に示すように、制御信号のオン区間における間欠逓倍回路103の変換利得とオフ区間における変換利得を変え、オン区間とオフ区間での主成分の周波数を変えることで、高いオン/オフ比のパルス信号を生成する間欠逓倍回路が低消費電力動作で実現できる。また、間欠逓倍回路は図4乃至図6で説明した特性を有する回路である。以上が間欠逓倍回路に関する詳細な説明である。以下、図1と図2を用いてオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路の説明をする。
【0067】
間欠逓倍回路103から出力された信号203はフィルタ104に入力される。フィルタ104は周波数f0帯の信号を通過させ、他の周波数帯成分を抑圧するスプリアス抑圧フィルタであり、例えば、BPF(バンドパスフィルタ)、BEF(バンドエリミネーションフィルタ)であり、集中定数でも分布定数でも構成できる。
【0068】
また、フィルタ104の帯域は信号203のオン区間の時間幅の逆数の二倍以上の帯域を確保することが望ましい。フィルタ104から信号204が出力される際の波形なまりを防止するためである。
【0069】
信号203はフィルタ104を通過することで、周波数f0帯の信号が通過し、周波数f0/2帯の信号を抑圧されるため、分岐回路105から周波数f0帯の周波数成分を有したオン/オフ比の高いパルス信号204が出力される。
【0070】
パルス信号204は分岐回路105に入力され、信号205と信号208に分岐される。ここで信号205は電力レベル調整用のため、送信機の出力信号である信号208に比べて電力レベルは小さい。分岐回路は公知技術なので詳細な説明は省略する。分岐回路105から出力された信号208は出力端子107へ出力される。一方で信号205は制御部106に入力されて信号205のレベルを検出する。制御部106では、周波数f0帯の信号の電力値を検出し、他の帯域の信号の電力値は関与しない構成である。
【0071】
制御部106において、検出した検出値と所望値の比較を行う。所望値は、出力端子107における所望の出力レベルと、分岐回路105での分配比から算出される。例えば、所望の出力レベルがP1であり、分配比が9対1である場合は、制御部106での所望値はP1/10となる。制御部106では、発振回路101の動作を制御する信号206と、間欠逓倍回路の動作を制御する信号207が生成される。制御部106での検出値と所望値に差がある場合は制御信号206と制御信号207によって、発振回路101と間欠逓倍回路103の動作を制御する。このように、発振回路101からの信号201のレベル調整および間欠逓倍回路103における変換利得の調整を行う。
【0072】
具体的には、制御信号206は、発振回路101を制御することで信号201の信号レベルを制御する。制御信号206で制御する発振回路101の部位は、構成要素であるFETのバイアスであり、たとえばドレイン電圧やゲート電圧である。また、発振回路101の後段にスイッチ回路を設けて、当該スイッチを切り替えることで信号201の信号レベルを調整してもよい。これらの手法については、公知技術であるため説明を省略する。
【0073】
また、制御信号207は、間欠逓倍回路103を制御することで間欠逓倍回路の変換利得を制御する。制御信号207で制御する間欠逓倍回路の部位は、構成要素であるFETのバイアスであり、たとえばドレイン電圧やゲート電圧である。
【0074】
ここで例えば、制御部106において、出力端子107での電力レベルが所望値よりも1dB少ないと判断された場合を考える。この場合、制御信号206によって発振回路101から出力される信号201の電力レベルを1dB減少させるように制御するが、図6で説明したように、信号201の電力レベルが変化した際には間欠逓倍回路103の変換利得が変化する。そのため、信号201の電力レベルを1dB減少させても出力電力レベルが1dB減少するとは限らない。
【0075】
これに対し、制御信号207は間欠逓倍回路103を制御することで変換利得を制御する。例えば、間欠逓倍回路103の構成要素であるVdの値を制御すれば変換利得が変化する。図6に示すように、間欠逓倍回路103の変換利得が、電力レベルを1dB減少させる前の変換利得と変化しないように制御すれば、入力電力レベルの減少分だけ出力電力レベルを減少させることができ、簡易に送信電力レベルの制御ができる。
【0076】
以上に示すように、制御信号のオン区間における間欠逓倍回路103の変換利得とオフ区間における変換利得を変え、オン区間とオフ区間での主成分の周波数を変えることで、高いオン/オフ比のパルス信号を生成する間欠逓倍回路を構成できる。この間欠逓倍回路と、この間欠逓倍回路の変換利得を制御する信号を生成する制御信号発生回路と、制御部106を用いることによりオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路を構成できる。
また、例えば、オン区間における制御部106での検出値とパルス信号として生成すべき所望値とに差がある場合に、この所望値に検出値が近づくように、以下の処理を行う。まず、制御信号206を用いて、発振回路101から出力される信号201の信号電力レベルを調整する。更に、制御信号207を用いて、間欠逓倍回路103を調整することで、間欠逓倍回路103の変換利得を一定に保つことができる。以上より、所望のパルス信号を、より確実に生成することが可能となる。
【0077】
なお、ここでは間欠逓倍回路103の制御方法としてVgsを制御信号202で直接制御する方法について説明したが、制御信号によって電流を制御して、その電流が流れることによって抵抗に印加される電圧値を制御する方法でもよい。
【0078】
図7に間欠逓倍回路103の別の一実施例を示す。回路構成として図3に示す回路と異なる点は、電流源701と、抵抗素子702と、電源703、制御信号発生回路704を設け、制御信号発生回路704から制御信号202Bが出力される点である。制御信号202Bは制御信号202と同様にオン区間とオフ区間を有している。制御信号202Bによって電流源701を制御することで、制御信号202Bのオン区間とオフ区間に従って電流が間欠的に抵抗素子702を流れて電圧が印加される。
【0079】
制御信号202Bのオン区間とオフ区間に従って変化する、抵抗素子702に印加される電圧値と電源703によって制御信号202が生成され、図3で説明したように制御信号202によって能動素子301のVgsを制御し、オン区間でのVgsを図4の領域401に、オフ区間でのVgsを領域402とすることで、上述したようにオン/オフ比の高いパルス信号を生成する短パルス生成回路を実現できる。ここで、Vgsの制御方法以外は図3の回路構成と同様であるため動作説明を省略する。
【0080】
また、制御信号によってVdsを直接制御する方法でもよい。図8に間欠逓倍回路103の別の一実施例を示す。回路構成として図3と異なる点は、フィルタ306、DCフィード器307、及び電源308を設けず、フィルタ801と、DCフィード器802と、電源803、制御信号発生回路804を設け、制御信号発生回路804から制御信号202Cが出力される点である。制御信号202Cは制御信号202と同様にオン区間とオフ区間を有しており、パルス幅は等しい。
【0081】
フィルタ801は、図8における整合回路303と結合器305を結ぶ伝送線路上からフィルタ801側のインピーダンスを観測したとき、周波数f0においてオープン、若しくはスミスチャート上でその近傍となるフィルタであり、分布定数線路では周波数f0において電気長λg/4オープンスタブと電気長λg/4線路で構成され、集中定数素子では容量素子と誘電素子で構成される。
【0082】
また、制御信号入力端310からフィルタ801側を観測した際の入力インピーダンスの周波数特性は、フィルタ801の周波数特性の影響でDCから低周波数帯においてはLPFとなる。その際のLPFのカットオフ周波数は制御信号202Cのパルス幅の逆数以上が望ましい。理由は上述したので、説明は省略する。
【0083】
また、フィルタ801は整合回路303と結合器305を結ぶ伝送線路上からフィルタ801側のインピーダンスを観測したとき、周波数f0/2においてもオープン、若しくはスミスチャート上でその近傍であることが望ましい。理由は上述したので、説明は省略する。
【0084】
DCフィード器802は、整合回路302と結合器304を結ぶ伝送線路上からDCフィード器802側のインピーダンスを観測したとき、少なくとも周波数f0/2においてオープンであり、理想的にはDC成分のみを通過させる。例えば、周波数f0/2において分布定数線路では電気長λg/4オープンスタブと電気長λg/4線路で構成され、集中定数素子では容量素子と誘電素子で構成される。
【0085】
また、DCフィード器802は、整合回路302と結合器304を結ぶ伝送線路上からDCフィード器802側のインピーダンスを観測したとき、周波数f0においてもオープンであることが望ましい。理由は上述したので、説明は省略する。パスコン309は寄生発振防止用に電源803側に設置する。一方で、制御信号入力端310にはパスコンを設けない。理由は上述したので、説明は省略する。
【0086】
ここで、Vgsは図4の領域401に常時設定して、制御信号202Cのオン区間におけるVdsをVds1とすることで、オン区間における間欠逓倍回路103の変換利得を最大とすることができる。
【0087】
一方、制御信号202のオフ区間におけるVdsはVds2とする。Vds2はVds1よりも小さい値であり、このときIdはゼロである。このように動作点を設定することで、制御信号202Cのオン区間における変換利得を高く、オフ区間における変換利得を低くでき、オン/オフ比の高いパルス信号を生成する短パルス生成回路を低消費電力で実現できる。
【0088】
また、制御信号によってIdを制御する方法でもよい。図9に間欠逓倍回路103の別の一実施例を示す。回路構成として図8と異なる点は、電源308と電流源901と制御信号発生回路902を設け、制御信号発生回路902から制御信号202Dが出力される点である。
【0089】
制御信号202Dによって電流源901を制御することで、制御信号202Cのオン区間におけるVdsをVds1、オフ区間におけるVdsをVds2として間欠逓倍回路を間欠的に動作させる。Vdsの制御方法以外は図8の回路構成と同様であるため動作説明は省略する。
【0090】
なお、ここでは発振回路101の発振周波数を出力信号の周波数の1/2として、間欠逓倍回路103を二逓倍回路として説明したが、nを正の整数としたとき、発振回路101の発振周波数を出力信号の周波数の1/nとして、間欠逓倍回路103をn逓倍回路として良い。
【0091】
なお、ここでは間欠逓倍回路103の実施例を図3、図7〜9を用いて説明するに当り、フィルタ306とフィルタ801、及びDCフィード器307とDCフィード器802を結合器と整合回路の間に挿入する回路構成として説明したが、整合回路と能動素子301との間に挿入する回路構成としても良い。
【0092】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態におけるオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路の構成を示すブロック図である。前述の第1の実施形態と異なるのは、分岐回路105をスイッチ1001とし、制御部106を検波回路1002と制御部1003で構成した点である。
【0093】
図10に示す構成は、送受信機である。発振回路101、制御信号発生回路102、間欠逓倍回路103、及びフィルタ104で構成される送信機と、検波回路1002と制御部1003を含む受信機とが、スイッチ1001で接続されている。制御部1003は受信機に含まれる検波回路1002で検波した波形を基に、発振回路101と間欠逓倍回路103を制御する。この制御方法については第1の実施形態で説明したとおりである。
【0094】
間欠逓倍回路103に発振回路101からの信号201と、制御信号発生回路102から信号202が入力されて信号203が生成され、フィルタ104を介して信号204が生成される過程については第1の実施形態で説明したので詳細な説明は省略する。
【0095】
信号204はスイッチ1001に入力される。スイッチ1001は、たとえばSPnTスイッチ(n:自然数)であり、送受信を切替える機能を有する。送信のタイミングにおいてスイッチ1001は、間欠逓倍回路103からフィルタ104を介して送出される信号204が出力端子107から放射されるように、送信側をオンする。この際、信号204に対してスイッチ1001のアイソレーション分だけ減少した信号205が受信機に回り込む。受信機に回り込んだ信号205は検波回路1002に入力されて、その信号レベルを検出されて検出値が制御部1003に出力される。
【0096】
信号206と信号207が制御部1003で生成されてから信号208の電力レベルが一定に制御される機構については第1の実施形態で説明したので詳細な説明は省略する。
【0097】
以上に示すように、制御信号のオン区間における間欠逓倍回路103の変換利得とオフ区間における変換利得を変え、オン区間とオフ区間での主成分の周波数を変えることで、高いオン/オフ比のパルス信号を生成する間欠逓倍回路を構成できる。この間欠逓倍回路と、この間欠逓倍回路の変換利得を制御する信号を生成する制御信号発生回路と、検波回路と、制御部を用いることによりオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路を構成できる。
【0098】
なお、以上の説明では制御信号206と制御信号207は制御部1003で生成されるとして説明したが、当該機能を復調器に設けて、制御部1003を復調器に置換してもよい。
【0099】
(第3の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態におけるオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路の構成を示すブロック図である。前述の第1の実施形態と異なるのは、分岐回路105をスイッチ1001とし、制御部106をミキサ1101と制御部1102で構成し、ミキサを動作させるために発振回路101とミキサ1101の間に逓倍回路1103を設けた点である。逓倍回路1103としては、公知のものを使用する。
【0100】
図11に示す構成は、第2の実施形態と同様に送受信機である。発振回路101、制御信号発生回路102、間欠逓倍回路103、及びフィルタ104で構成される送信機と、ミキサ1101と制御部1102を含む受信機とが、スイッチ1001で接続されている。制御部1102は受信機に含まれるミキサ1101の出力波形を基に、発振回路101と間欠逓倍回路103を制御する。この制御方法については第1の実施形態で説明したとおりである。
【0101】
間欠逓倍回路103に発振回路101からの信号201と、制御信号発生回路102から信号202が入力されて信号203が生成され、フィルタ104を介して信号204が生成される過程については第1の実施形態で説明したので詳細な説明は省略する。
【0102】
信号204はスイッチ1001に入力される。スイッチ1001は、たとえばSPnTスイッチ(n:自然数)であり、送受信を切替える機能を有する。送信のタイミングにおいてスイッチ1001は、間欠逓倍回路103からフィルタ104を介して送出される信号204が出力端子107から放射されるように、送信側をオンする。この際、信号204に対してスイッチ1001のアイソレーション分だけ減少した信号205が受信機に回り込む。受信機に回り込んだ信号205はミキサ1101に入力されて、その信号レベルを検出されて検出値が制御部1102に出力される。この際、逓倍回路1103の出力信号もミキサ1101に入力されるが、この信号は周波数を逓倍するためのものである。
【0103】
信号206と信号207が制御部1102で生成されてから信号208の電力レベルが一定に制御される機構については第1の実施形態で説明したので詳細な説明は省略する。
【0104】
以上に示すように、制御信号のオン区間における間欠逓倍回路103の変換利得とオフ区間における変換利得を変え、オン区間とオフ区間での主成分の周波数を変えることで、高いオン/オフ比のパルス信号を生成する間欠逓倍回路を構成できる。この間欠逓倍回路と、この間欠逓倍回路の変換利得を制御する信号を生成する制御信号発生回路と、ミキサと、制御部を用いることによりオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路を構成できる。
【0105】
なお、以上の説明ではミキサ1101の前段に逓倍回路1103を設けたが、逓倍回路1102を設けずに、ミキサ1101をハーモニックミキサとしても同様である。
【0106】
なお、以上の説明ではミキサ1101の前段に逓倍回路1103を設けて、発振回路101を送受信で共用したが、別途設けてもよい。
【0107】
なお、以上の説明では制御信号206と制御信号207は制御部1102で生成されるとして説明したが、当該機能を復調器に設けて、制御部1102を制御器に置換してもよい。
【0108】
(第4の実施形態)
図18は本発明の第4の実施形態における通信装置のブロック図である。図18に示す送信回路は、電圧制御発振回路1801(以下、VCO)と、制御信号発生回路1802と、逓倍回路1803と、分岐回路1804と、出力端子1805と、制御部1806からなる。なお、VCO変調ではPLLでロックさせるとフィードバック制御により変調歪を生じるため、変調歪が生じることを防ぐために、PLLを備えないVCOとして以下説明する。
【0109】
以下、能動素子はFET(電界効果トランジスタ)として説明する。逓倍回路の逓倍数はn(n:正の整数)であるが、以下、出力信号の所望周波数をf0、発振回路の出力信号の周波数をf0/2として、間欠逓倍回路は二逓倍回路として説明する。ただし、これに限られない。
【0110】
制御信号発生回路1802は、制御信号発生回路102と同様に、それぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む制御信号を生成し、出力する。制御信号発生回路1802から出力される制御信号が、VCO1801の一端子であるVt端子1807に入力されることで、VCO1801から周波数変調された信号が出力される。VCO1801は、Vt端子1807に印加される電圧によって発信周波数が変化するという原理に基づいて、周波数変調を行っている。VCO1801から出力される変調信号は、逓倍回路1803により周波数が逓倍される。逓倍された信号は分岐回路を介して、一方は出力端1805から出力され、一方は制御部1806に入力される。制御部1806は、受けた信号のレベルを検出する。制御部1806は、検出したレベルを基に、VCO1801のVt端子とは異なる他端子1808に入力される制御信号と、VCO1801のVt端子1807に入力される制御信号を生成する。VCO1801の他端子1808に入力される制御信号は発振出力レベルを制御し、VCOのVt端子1807に入力される別の制御信号はVCO1801の発振周波数を制御する。これらの制御信号によって、出力端1805から出力される信号の出力レベルおよび出力周波数を制御する。以上の動作により、電力レベルを調整(制御)可能な周波数変調回路が構成される。なお、周波数変調回路は信号変調を行う信号変調回路の一例である。
【0111】
図19は図18に示したブロック構成図における信号、及び制御信号のタイミングチャートである。縦軸は全て電圧、横軸は全て時間である。以下、図18と図19を用いて本実施形態における、電力レベルを調整可能な周波数変調回路について説明する。
【0112】
制御信号発生回路1802から出力される信号1901が、VCO1801のVt端子1807に入力されることで、VCO1801が発振する。VCO1801はVt端子1807に印加される電圧によって発振周波数が変化するため、信号1901がVt端子1807に入力されることで、信号1901に基づいてVCO1801は周波数変調された信号1902を出力する。VCO1801の回路構成は公知技術なので説明は省略する。
【0113】
VCO1801から出力される信号1902は、逓倍回路1803に入力され、逓倍回路1803により信号1902の周波数が逓倍された信号1903が生成される。
【0114】
信号1903は分岐回路1804に入力され、分岐回路1804により信号1904と信号1905に分岐される。ここで信号1905は電力レベル調整用の信号であるため、出力信号1904に比べて電力レベルは小さい。分岐回路は公知技術なので詳細な説明は省略する。分岐回路1804から出力された信号1904は出力端子1805へ出力される。一方で信号1905は制御部1806に入力されて、制御部1806により信号1905のレベルが検出される。制御部1806は、出力信号1904のキャリア周波数帯の信号の電力値を検出し、他の帯域の信号の電力値には関与しない。
【0115】
また、制御部1806は、検出した検出値と所望値の比較を行う。所望値は、出力端子1805における所望の出力レベルと、分岐回路1805での分配比から算出される。例えば、所望の出力レベルがP1であり、分配比が9対1である場合は、制御部1806での所望値はP1/10となる。また、制御部1806は、VCO1801の発振機能を制御する信号1906と、VCO1801の変調機能を制御する信号1907が生成される。制御部1806での検出値と所望値に差がある場合には、制御信号1906と制御信号1907によって、VCO1801の発振機能と変調機能の動作を制御する。
【0116】
具体的には、制御信号1906は、VCO1801のバイアス電圧を制御することで、信号1901の信号レベルを制御する。制御信号1906で制御されるVCO1801の部位は、構成要素であるFETのバイアスであり、ドレイン電圧やゲート電圧である。また、VCO1801の後段にスイッチ回路を設けて、スイッチ回路を制御信号1906により制御し、当該スイッチを切り替えることで、信号1902の信号レベルを調整してもよい。これらの手法については、公知技術であるため説明を省略する。
【0117】
また、制御信号1907は、VCO1801のVt端子のバイアス電圧を制御することでVCO1801の変調機能を制御する。
【0118】
ここで例えば、制御部1806において、出力端子1805での電力レベルが所望値よりも1dB少ないと判断された場合を考える。この場合、制御信号1906によってVCO1801から出力される信号1902の電力レベルを1dB減少させるように制御するが、VCO1801のバイアス電圧を低下させると、Vt端子1807に印加する電圧と発振周波数の特性が変化する。そのため、信号1902の電力レベルを1dB減少させると発振周波数が変化することになる。周波数変調回路に用いるVCO1801において、変調歪を回避するためにPLLを実装しないために起きることがある。
【0119】
これに対し、制御信号1907は、上述のVt端子1807に印加する電圧と発振周波数の特性のずれを修正するために、Vt端子1807のバイアス電圧を制御する。そうすることで、周波数変調信号のキャリア周波数を変化させずに出力電力レベルを減少させることができ、簡易に送信電力レベルの制御ができる。
【0120】
以上に示すように、VCOを直接変調することで構成される周波数変調回路において、VCOのVt端子に印加するバイアス電圧を制御することで簡易に電力制御機能を具備した周波数変調回路を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のオンオフ比が高いパルス信号を生成し、電力レベルを調整可能なパルス生成回路は、間欠逓倍回路の動作点を制御信号の電圧値に従って制御することで変換利得を間欠的に制御し、後段にフィルタを設ければスプリアス成分を抑圧することができ、オンオフ比の高いパルス信号を低消費電力動作で得ることができる効果を有するパルス信号を具備することで、高速無線通信におけるパルス生成回路等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の第1の実施形態における通信装置の回路構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態における信号波形の特徴を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態における間欠逓倍回路の回路構成の一実施例を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における制御信号電圧値と出力信号レベルの関係の特徴を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における制御信号電圧値と出力信号レベルの関係の特徴を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における入力電力レベルと変換利得の関係の特徴を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態における間欠逓倍回路の回路構成の一実施例を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における間欠逓倍回路の回路構成の一実施例を示す図
【図9】本発明の第1の実施形態における間欠逓倍回路の回路構成の一実施例を示す図
【図10】本発明の第2の実施形態における通信装置の回路構成を示す図
【図11】本発明の第3の実施形態における通信装置の回路構成を示す図
【図12】従来技術の短パルス生成回路の回路構成を示す図
【図13】従来技術における制御信号波形を示す図
【図14】従来技術の短パルス生成回路の回路構成を示す図
【図15】従来技術における制御信号波形を示す図
【図16】従来技術における変調回路の回路構成図を示す図
【図17】従来技術における制御信号波形を示す図
【図18】本発明の第4の実施形態における通信装置の回路構成を示す図
【図19】本発明の第4の実施形態における信号波形の特徴を示す図
【符号の説明】
【0123】
101 発振回路
102 制御信号発生回路
103 間欠逓倍回路
104 フィルタ
105 分岐回路
106 制御部
107 出力端子
201〜208 信号
301 能動素子
302 整合回路
303 整合回路
304 結合器
305 結合器
306 フィルタ
307 DCフィード器
308 電源
309 パスコン
310 制御信号入力端
401〜403 制御領域
501〜503 特性曲
601、602 電力値
603、604 特性曲線
701 電流源
702 抵抗素子
703 電源
801 フィルタ
802 DCフィード器
803 電源
901 電流源
1001 スイッチ
1002 検波回路
1003 制御部
1101 ミキサ
1102 制御部
1103 逓倍回路
1201 発振回路
1202 制御信号発生回路
1203 ミキサ
1204 出力端子
1301〜1303 信号
1401 発振回路
1501、1502 信号波形
1601 VCO
1602 制御信号発生回路
1603 逓倍回路
1604 出力端子
1701〜1703 信号
1801 VCO
1802 制御信号発生回路
1803 逓倍回路
1804 分岐回路
1805 出力端子
1806 制御部
1807 VCOのVt端子
1808 VCOの他端子
1901〜1907 信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路から出力される連続信号に基づいてパルス信号を生成する信号変調回路であって、
時間軸において、それぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を出力する制御信号発生回路と、
前記第一の制御信号および前記連続信号の入力を受けて、前記第一の制御信号のオン区間に対応する前記連続信号を逓倍して前記パルス信号を出力する間欠逓倍回路と、
前記パルス信号のレベルを検出して、前記発振回路から出力される前記連続信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記間欠逓倍回路の変換利得を制御する第三の制御信号を生成する制御部と、
を備え、
前記間欠逓倍回路は、前記第一の制御信号のオン区間における変換利得がオフ区間における変換利得よりも高い信号変調回路。
【請求項2】
前記間欠逓倍回路は、能動素子と、前記能動素子の制御端子と接続され、前記第一の制御信号が入力される制御信号入力端を有し、
前記制御信号入力端から前記能動素子側を測定したインピーダンスのカットオフ周波数が、前記第一の制御信号のオン区間の時間幅の逆数以上となる請求項1記載の信号変調回路。
【請求項3】
前記間欠逓倍回路の出力信号を分岐させ、一方を空間に放射して、他方を前記制御部に出力する分岐回路を備える請求項1記載の信号変調回路。
【請求項4】
前記間欠逓倍回路の出力信号を分岐させ、一方を空間に放射して、他方を前記制御部に出力するスイッチ回路を備える請求項1記載の信号変調回路。
【請求項5】
前記間欠逓倍回路は、前記間欠逓倍回路の出力信号の周波数帯成分を通過させ、他の周波数帯成分を抑圧するフィルタを備える請求項1記載の信号変調回路。
【請求項6】
前記第一の制御信号のオフ区間において前記能動素子の制御端子で測定される連続信号の振幅よりも、前記制御信号発生回路から出力される前記第一の制御信号の振幅が大きい請求項1記載の信号変調回路。
【請求項7】
前記制御信号入力端と前記能動素子の制御端子との間に、前記第一の制御信号を増幅する増幅部を備え、
前記第一の制御信号のオフ区間に、前記連続信号の振幅より大きな振幅の前記増幅部によって増幅された第一の制御信号が前記能動素子に入力される請求項1記載の信号変調回路。
【請求項8】
時間軸においてそれぞれ電圧値の異なるオン区間およびオフ区間を含む第一の制御信号を生成する制御信号発生回路と、
前記第一の制御信号に基づいて周波数変調された変調信号を出力する電圧制御発振器と、
前記変調信号のレベルを検出して、前記電圧制御発振器から出力される前記変調信号のレベルを制御する第二の制御信号および前記電圧制御発振器の電圧制御端子の電圧レベルを制御する第三の制御信号を生成する制御部と、
を備える信号変調回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−177801(P2009−177801A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325654(P2008−325654)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】