修飾型エンドリシンPly511
本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と比較して変化したアミノ酸配列を少なくとも一つのアミノ酸の位置に有するポリペプチドに関する。本発明は、さらに、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列を含むベクター、およびポリペプチドの発現のための宿主細胞に関する。本発明は、さらに、ポリペプチドの、ヒト用、動物用の医療用もしくは診断用の物質としての使用、食物における使用、化粧品における使用、消毒剤としての使用、または環境領域における使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と比較して変化したアミノ酸配列を少なくとも一つのアミノ酸の位置に有するポリペプチドに関する。本発明は、さらに、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列を含むベクター、およびポリペプチドの発現のための宿主細胞に関する。本発明は、さらに、ポリペプチドの、ヒト用、動物用の医療用もしくは診断用の物質としての使用、食物における使用、化粧品における使用、消毒剤としての使用、または環境領域における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リステリアは、食物の領域において広く蔓延しているヒトおよび動物の病原菌であり、リステリア症という疾患を引き起こす。魚、肉、および乳製品のような食物は、リステリアにより汚染されることが多い。リステリア綱は、16の異なる血清型を有する6つの異なる種を含む。詳細には、これらは、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス(monocytogenes);血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア(innocua);血清型5を有するL.イバノビー(ivanovii);血清型1/2a、1/2b、1/2c、4b、4c、4d、6bを有するL.シーリゲリ(seeligeri);血清型1/2a、4c、6a、6b、U/Sを有するL.ウェルシメリ(welshimeri)、および血清型グレイ(Grayi)を有するL.グレイである。L.モノサイトゲネス種およびL.イバノビー種は、いずれも、病原体であることが公知である。第三の種、L.シーリゲリは、非病原性であると考えられているが、L.シーリゲリがヒトにおいて髄膜炎を引き起こした症例が一例公知である。残りの種は非病原性であると考えられている。リステリア症のおよそ90%は、L.モノサイトゲネス血清型1/2a、1/2b、および4bに起因する(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Diseases 185 (Suppl 1): S18-S24/非特許文献1)。
【0003】
リステリア症は、稀な疾患ではあるが、重篤な疾患であって、死亡率が高いため、深刻に扱われなければならない。リステリアによって引き起こされる食物関連疾患は、極一部であるが(米国においては、およそ1%)、毎年、食物病原体によって引き起こされる致命的な疾患のほぼ30%が、この病原菌によって引き起こされている。影響を受けるのは、主として、免疫が抑制されている者、例えば、高齢者、糖尿病患者、癌患者、および/またはエイズ患者である。妊婦および出生前の子供が、リステリア症患者の全症例のおよそ25%を占める。血液脳関門または胎盤関門を通過することができるため、リステリアは、髄膜炎、脳炎、流産、および死産を引き起こす場合がある(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Deseases 185 (Suppl 1): S18-S24/非特許文献1; Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001/非特許文献2)。
【0004】
リステリアは、食物生産の環境において生存するためによく適合している。それらは、弱酸に対して耐性であり、比較的高い塩濃度で、1℃〜45℃の温度で繁殖することができる。主要な感染源は、食物、特に、消費前に熱処理されない食物、例えば、多くの乳製品、薫製魚、肉製品、そして増加中のRTE(ready-to-eat)製品(特に、肉含有製品)である。リステリアによる汚染は、食物の加工(調理容器からの取り出し、切断、装飾、梱包等)の間に起こることが多い。熱処理されない種菌の補助により生産される食物(例えば、生乳チーズ、サラミ)も、種菌もしくは原料自体によって汚染されることがあり、または成熟もしくは保管の間にも汚染されることがある。米国においては、RTE食物におけるL.モノサイトゲネスの許容量はゼロであるが、多くのヨーロッパ諸国またはカナダは、ある種の食物への最大100CFU(コロニー形成単位)/g食物のリステリア汚染を許容している。しかしながら、いずれにせよ、食物はリステリア汚染について分析されなければならない。多くの食物、例えば、魚介類、スモークサーモン、または乳製品は、短い貯蔵寿命を有し、またはRTE生製品も同様である。従って、リステリア汚染または許容限度を超える汚染が、輸送後にこれらの製品において検出された場合には、高コストの製品リコールが発生することが多い。
【0005】
この理由のため、リステリアの検出および除染のための方法を提供することは、極めて興味深い。さらに、抗微生物物質の適用は、リステリアの増殖を阻害するためにも、存在するリステリアを死滅させるためにも重要である。とりわけ、EP 0781349(特許文献1)は、上述の適用のために使用され得るファージA511由来のリステリアファージリシンPly511を記載している。その広い宿主スペクトルのため、Ply511は、多数のリステリア血清型に対して使用され得るが、比較的低い安定性のため、食物において使用するには適していない。Turnerら(2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67/非特許文献3)は、食物において適用される可能性のあるラクトバチルスにおけるPly511の発現におけるタンパク質分解問題に言及し、Ply511の安定性をそれぞれの適用のために増加させるべきであると提唱している。しかしながら、Ply511安定性の増加に関する解決のための指示は、Turnerによっては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 0781349
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Deseases 185 (Suppl 1): S18-S24
【非特許文献2】Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001
【非特許文献3】2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、より安定しているエンドリシンPly511を提供することである。
【0009】
その目的は、特許請求の範囲において定義されるような主題によって解決される。
【0010】
以下の図面は、本発明を例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。各行の最初のアミノ酸残基の番号が、左側に示されている。EADを形成するアミノ酸残基は、イタリック体であり、かつ下線が引かれている。CBD1を形成するアミノ酸残基はイタリック体であり、CBD2は下線が引かれている。K260は、CBD1の最後のアミノ酸残基であり、同時に、CBD2の最初のアミノ酸残基でもある。EADとCBD1との間(アミノ酸残基175〜203)およびCBD1とCBD2との間(アミノ酸残基245〜282)のドメインリンカー配列は、太字で示されている。
【図2】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。各行の最初のアミノ酸残基の番号が、左側に示されている。EADを形成するアミノ酸残基は、イタリック体であり、かつ下線が引かれている。CBD1を形成するアミノ酸残基はイタリック体であり、CBD2は下線が引かれている。K260は、CBD1の最後のアミノ酸残基であり、同時に、CBD2の最初のアミノ酸残基でもある。太字のアミノ酸残基は、新生エンドリシン断片のN末端配列決定によって決定された、プロテアーゼ切断部位である。
【図3】Ply511の貯蔵中のプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。レーン1は、分子量標準物を示し、レーン2は、ネイティブ全長Ply511を示し、レーン3は、保管後のPly511を示す。「1」と表示されたバンドは全長Ply511であり、バンド「2」は消化されたバンドである。kDaはキロダルトンを意味する。
【図4】トリプシン消化後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果、Wt-Ply511と変異体との間の比較を示す。図4Aは、二重変異体Ply511-T241S-T242SとWt-Ply511との間の比較を示す。図4Bは、変異体Ply511-S245AおよびPly511-D222A-S245Aの両方の消化を示す。左側の数字は、分子量(キロダルトン)である。左レーン(M)には、分子量標準物がそれぞれ負荷されている。トリプシン消化の動力学が、対応するレーンの上にゲルの上に分で与えられている。右側の線は、未消化の全長タンパク質の位置を表示している。
【図5】キモトリプシン消化後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果、Wt-Ply511と変異体との間の比較を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-D222A-S245AおよびPly511-K246Q-K248Qを、1分間、2分間、または5分間、キモトリプシンにより消化し、続いて、SDSゲルに負荷した。キモトリプシンが添加されていない対照試料は「K」と表示されている。左側の数字は、分子量(キロダルトン)である。右側の線は、全長タンパク質の位置を表示している。
【図6】リステリア細胞の溶解のためにエンドリシンを使用した、液相溶解試験の評価のグラフ図を示す。0.1μg、0.3μg、または0.7μg(曲線は左から右へ減少するタンパク質量をそれぞれ表す)の量のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-K246Q-K248Q(黒菱形)を、リステリア996株(血清型1/2b)の熱不活化された細胞へ添加する。時間の関数としての600nmにおける光学密度(OD600)の減少。tは時間を意味し;[s]は秒を意味する。
【図7】リステリア細胞の溶解のためにエンドリシンを使用した、液相溶解試験の評価のグラフ図を示す。Wt-Ply511(白丸)および本発明に係るPly511変異体(黒菱形)を、リステリア776株(血清型4b)の熱不活化された細胞に添加し、600nmにおける光学密度(OD600)の減少を時間の関数として測定した。図7A 10μg/mlの濃度のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-G249A(黒菱形)。図7B 0.3μg/mlの濃度のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-Δ195-262(黒菱形)。tは時間を意味し;[s]は秒を意味する。
【図8】Wt-Ply511および種々の変異体の耐熱性試験の評価のグラフ図を示す。Wt-Ply511(白丸)、ならびに変異体Ply511-G249A(黒菱形)、Ply511-S245A(白三角)、Ply511-D222A-S245A(黒三角)、およびPly511-D222A(黒四角)を、光度計において加熱し、(360nmの波長における吸光度(A)の増加に対応する)タンパク質凝集の増加を、温度(T)(摂氏度)の関数としてモニタリングした。
【図9】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-L243I-L244I、Ply511-Δ195-262、およびPly511-D222Aを、大腸菌において発現させ、大腸菌溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質のバンドの位置が、右側に示されている(1:Ply511全長タンパク質、2:短縮型Ply511-Δ195-262)。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。下境界部の数字は、インキュベーション時間(日)である。
【図10】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-S245A、Ply511-K246Q-K248Q、およびPly511-S245A-K246Q-K248Qを、大腸菌において発現させ、大腸菌粗溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質(-1)、および2個の顕著な消化断片(-2、-3)のバンドの位置が、右側に示されている。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。
【図11】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-K275A(図11A)、Ply511-K267Q-K268Q、およびPly511-K285Q-K289Q(図11B)を、大腸菌において発現させ、大腸菌粗溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質(-1)、および2個の顕著な消化断片(-2、-3)のバンドの位置が、右側に示されている。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。楕円は、変異体Ply511-K267Q-K268Qがおよそ28〜30kDaのサイズの消化中間体を欠いている位置を表示している。
【図12】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。プロテアーゼクロストリパイン(Clostripain)の可能性のある切断サイズ(P1位のR)に下線が引かれている。実験的に決定されたアミノ酸の位置R62位およびR221位にある特に感受性の高い切断部位は、いずれも、下線が引かれ、かつ太字である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「プロテアーゼ」という用語は、本明細書において使用されるように、タンパク質および/またはペプチドのペプチド結合を加水分解的に切断することができる酵素を意味する。この用語には、アミノ末端またはカルボキシル末端から単一アミノ酸残基を切断するペプチダーゼも含まれるし、タンパク質またはポリペプチドの内部を切断するプロテイナーゼも含まれる。
【0013】
「野生型」または「Wt」という用語は、本明細書において使用されるように、SEQ ID NO:1に示されるようなファージA511のエンドリシンPly511のアミノ酸配列を意味する。この用語は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列も意味する。ファージA511から単離されたヌクレオチド配列が、エンドリシンPly511をコードし、SEQ ID NO:2に示される。この用語には、単一アミノ酸残基についてSEQ ID NO:2に示されたものとは別のコドンを含むが、暗号の縮重のために同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0014】
「変異」という用語は、本明細書において使用されるように、初期アミノ酸配列の改変を意味する。それによって、単一もしくは複数の連続アミノ酸配列、または不変アミノ酸残基によって中断されたアミノ酸配列が、欠失、挿入もしくは付加、または置換されていてもよい。この用語には、上述の単一変化の組み合わせも含まれる。この用語には、タンパク質タグまたはペプチドタグのN末端またはC末端における融合も含まれる。
【0015】
「修飾」という用語は、本明細書において使用されるように、「変異」の同義語として使用され得る;しかしながら、この用語には、さらに、アミノ酸残基の化学変化、例えば、ビオチン化、アセチル化、アミノ基、SH基、またはカルボキシル基の化学変化も含まれる。
【0016】
「欠失」という用語は、本明細書において使用されるように、それぞれの初期配列からの1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸残基の除去を意味する。以後、除去されたアミノ酸残基は、記号「Δ」の後に示される:例えば、「Δ195-262」とは、195位(これを含む)から262位(これを含む)のアミノ酸残基が、初期配列から除去されていることを意味する。
【0017】
「挿入」または「付加」という用語は、本明細書において使用されるように、それぞれの初期配列への1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸残基の付加を意味する。
【0018】
「置換」という用語は、本明細書において使用されるように、ある位置に存在するアミノ酸残基の、もう一つのアミノ酸残基への交換を意味する。以後、置換は以下のように示される:一文字表記の変化したアミノ酸残基の後に、変化したアミノ酸残基の位置が示され、続いて、挿入された新たなアミノ酸残基が一文字表記で示される。例えば、Y4Aとは、4位のアミノ酸残基チロシンがアミノ酸残基アラニンに変化したことを意味する。
【0019】
「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」という用語は、本明細書において使用されるように、ある機能的特色および/または構造的特色を示すアミノ酸配列の小領域を意味する。アミノ酸配列相同性のため、公知のドメインを含む無料で入手可能なデータベース;例えば、NCBIの保存ドメインデータベース(CDD)(Marchler-Bauer et al., 2005, Nucleic Acids Res. 33, D 192-6)、Pfam(Finn et al., 2006, Nucleic Acids Research 34, D247-D251)、またはSMART(Schultz et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 5857-5864、Letunic et al., 2006, Nucleic Acids Res 34, D257-D260)のアミノ酸配列を比較するコンピュータープログラムによって、ドメインを予測し得ることが多い。
【0020】
本明細書において使用されるように、「ドメインリンカー」という用語は、単一タンパク質ドメイン間を連結する機能を有するアミノ酸配列を意味する。一般に、ドメインリンカーは、αヘリックスまたはβプリーツシートのような規則的な二次構造要素を全くまたはほとんど形成せず、それぞれの構造環境において異なるコンフォメーションを形成することができる。最先端技術は、リンカー配列の特色、およびそれらの同定の方法を記載している(George & Heringa, 2003, Protein Engineering, 15, 871-879、Bae et al., 2005, Bioinformatics, 21, 2264-2270)。
【0021】
野生型エンドリシンPly511は、341アミノ酸残基という長さを示す。それは、他の公知のエンドリシンとの相同性を各々示す3個の機能ドメインを有する。12位〜166位のN末端アミノ酸残基は、アミダーゼ2の群に属する、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼの機能を有する酵素活性ドメイン(EAD)を表す。Ply511の細胞結合ドメイン(CBD)は、二つの部分に分割される。198位〜260位のアミノ酸を含む第1のCBD(CBD1)は、リステリアファージA118のエンドリシンPly118のCBDとの類似性を示す。260位〜341位のアミノ酸を含む、C末端に位置するさらなるCBD(CBD2)は、バチルスファージΦ105由来のエンドリシンのCBDとの類似性を示す。単一ドメインはドメインリンカーによって連結されている。EADとCBD1との間のドメインリンカーは、アミノ酸残基175〜203の領域に位置し、2つのCBDの間のドメインリンカーは、アミノ酸残基245〜282の領域に位置する。
【0022】
大腸菌におけるWt-Ply511の組換え発現の間、全長タンパク質に加えて、多数の異なる断片が発生することが判明した。このことは、より長い時間にわたり貯蔵された場合には、精製されたPly511にすら当てはまる。この安定性の喪失は、活性の喪失に関連しているため、十分な活性を達成するためには、大量のタンパク質を導入しなければならない。Wt-Ply511エンドリシンを安定化するため、プロテアーゼに対して特に感受性の高い領域がPly511内に存在するか否かを分析した。入手されたPly511の断片を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を介してサイズによって分離し、続いて、ゲルから明確なタンパク質バンドを溶出させた。それぞれのバンドのポリペプチドのN末端配列決定を使用することにより、プロテアーゼの切断部位を決定した。どのプロテアーゼが分解を担うのかが不明である、大腸菌溶解物中または精製タンパク質中に存在する断片に加え、どのアミノ酸残基の後を好んで切断するのかが公知である、市販のプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、スブチリシン、トリプシン、ペプシン、スタフィロコッカスペプチダーゼI、プロテイナーゼK)によるプロテアーゼ消化も実施した。プロテアーゼ切断部位はエンドリシン内に均一には分布していないが、ある領域が特に感受性が高いことが判明した。タンパク質は、EADの開始点の上流に位置するN末端領域において高頻度に切断された。EADおよびCBD1、ならびにCBD1とCBD2との間のリンカーにも、いくつかの切断部位が見出された。アミノ酸243位〜248位を含み、CBD1のC末端に位置するアミノ酸配列LLSKIKには、多数のプロテアーゼ切断部位が存在する。
【0023】
従って、本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する天然に存在するエンドリシンPly511と比較して変化したアミノ酸配列を示すポリペプチドに関する。本発明は、さらに、付加的に修飾を含む本発明に係るポリペプチドに関する。本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に関する。本発明に係るポリペプチドは、より高いか、等しいか、またはより低いが、完全には失われていない、Wt-Ply511エンドリシンの溶解活性を示す。活性は、当業者に公知のアッセイ、例えば、プレート溶解試験または液相溶解試験によって測定される。
【0024】
アミノ酸配列の改変は、欠失、挿入および付加のそれぞれ、置換、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0025】
SEQ ID NO:1による天然に存在するPly511のアミノ酸配列に導入される欠失は、好ましくは、タンパク質の活性の喪失なしにプロテアーゼ切断部位が除去されるよう、アミノ酸配列を短縮するべきである。
【0026】
欠失は、1個または複数個のアミノ酸残基に影響を与えることができる。より多いアミノ酸残基が欠失している場合、欠失アミノ酸残基は連続していてもよい。単一の欠失アミノ酸残基またはより多くの欠失アミノ酸残基を含む領域は、1個または複数個の非欠失アミノ酸残基によってさらに分離されていてもよい。従って、1個または複数個の欠失が、SEQ ID NO:1のPly511の初期配列へ導入され得る。
【0027】
欠失は、好ましくは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位のアミノ酸の領域、特に、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位、195位〜255位、195位〜262位、238位〜341位、241位〜341位、267位〜341位、および270位〜341位のアミノ酸の領域へ導入される。特に好ましいのは、欠失領域が、示された位置からタンパク質の末端まで、従って、341位のアミノ酸までに影響を与える、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列における237位のC末端側、特に好ましくは、266位のC末端側の欠失である。さらに、C末端の一部分にのみ影響を与える欠失、特に、現在のアミノ酸配列SEQ ID NO:1のアミノ酸残基195〜262および195〜255の欠失が好ましい。これらの欠失ポリペプチドは、完全に可溶性に発現され、プレート溶解試験においても液相溶解試験においても、Wt-Ply511と比較して増加した活性を示すことができる。さらに、タンパク質はプロテアーゼ分解に対してより安定していた。
【0028】
驚くべきことに、1位〜およそ11位、特に、2位〜9位のアミノ酸の領域におけるN末端欠失は、タンパク質の可溶性を有意に減少させるのみならず、活性も完全に失われることが判明した。
【0029】
本発明に係る好ましいポリペプチドは、表1に例として要約される。
【0030】
【表1】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコット(Scott)A(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
-/+:かろうじて検出可能な溶解活性
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
6xH:6個のヒスチジン残基を含むN末端Hisタグ
【0031】
天然に存在するPly511のSEQ ID NO:1のアミノ酸配列へ導入される置換は、好ましくは、タンパク質の活性の喪失なしにプロテアーゼ切断部位が除去されるよう、アミノ酸配列を変化させるべきである。
【0032】
置換は、1個または複数個のアミノ酸残基に影響を与えることができる。数個のアミノ酸残基が置換される場合、置換アミノ酸残基は連続していてもよい。単一の置換アミノ酸残基、または数個の置換アミノ酸残基を含む領域は、1個または数個の非置換アミノ酸残基によってさらに相互に分離されていてもよい。従って、1個または複数個の置換が、SEQ ID NO:1のPly511の初期配列に挿入され得る。
【0033】
プロテアーゼ切断部位を除去するための好ましい置換は、Y4AおよびT5Pである。4位のアミノ酸のさらなる好ましい置換は、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、およびKである。さらなる好ましい置換は、E7アミノ酸残基の他の任意のアミノ酸残基への置換である。特に好ましいのは、置換E7AおよびE7Qである。N末端における置換とさらなる置換との組み合わせを有するPly511変異体、特に、Ply511-Y4A-E7Q、Ply511-T5P-E7A、Ply511-T5P-E7A-Δ195-262、Ply511-T5P-E7A-K246A、Ply511-Y4A-E7Q-K246A、Ply511-Y4A-E7Q-K246H、およびPly511-Y4A-E7Q-Δ195-262も、好ましい。さらに、R92およびR221のアミノ酸残基の、R以外の任意の全てのアミノ酸残基への置換、特に、置換Ply511-R92K-R221KおよびPly511-R92A-R221Aを有する変異体が、好ましい。
【0034】
本発明に係る好ましいポリペプチドは、表2に例として要約される。
【0035】
【表2】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:検出可能な溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0036】
変異体Ply511-Y4A、Ply511-T5P、Ply511-E7Aの活性は、Wt-Ply511の活性と等しく、Ply511-E7Qはさらに高い活性を示すことが示された。多重変異体Ply511-T5P-E7A-Δ195-262およびPly511-T5P-E7A-K246Aは有利であることが判明したが、表2にリストされたその他の多重変異体は、まだ酵素活性は示すが、Wt-Ply511と比較して低い可溶性を有する。Ply511の最初の10個のアミノ酸残基(MVKYTVENKI)が、アミノ酸残基MASKKTNANK(変異体Ply511-MVKYTVENKI(1-10)MASKKTNANK)またはアミノ酸残基MASGGG(変異体Ply511-MVKYTVENKI(1-10)MASGGG)に交換された場合には、活性のない不溶性タンパク質が発生し、このことからもN末端の重要性が強調される。
【0037】
さらに、12位〜166位のアミノ酸の領域にあるEADの領域における置換、特に、酸性アミノ酸残基および芳香族アミノ酸残基の置換が好ましい。好ましいのは、A、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、およびKより選択される、24位、43位、83位、92位、および99位のアミノ酸の置換である。
【0038】
好ましい置換は表3に要約される。
【0039】
【表3】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0040】
24位、43位、および83位の置換は有利な効果を有するが、40位と、特に89位の置換は、活性に対して負の効果を有することが示された。変異体Ply511-Y43A、Ply511-Y43Sは、活性に関してWt-Ply511と等しく、変異体Ply511-F24IおよびPly511-Y83IはWtよりさらに活性が高い。このことは、これらの置換の組み合わせ、特に、欠失Δ195-262との組み合わせにも当てはまる。変異体Ply511-F24I-Δ195-262は、特に有利であることが判明した。変異体Ply511-F99Aのプロテアーゼ切断部位の除去の後、変異体は活性を維持するが、タンパク質の可溶性はWtと比較して低下する。しかしながら、従って、わずかに低い可溶性が許容される場合には、この変異は、プロテアーゼ安定性を増加させるために適用され得る。酵素活性は、40位および89位の置換によって負の影響を受け、特に、変異体Ply511-E40A、Ply511-E40Q、Ply511-E89A、Ply511-E89Qは、かろうじて活性を示すか、または活性を全く示さない。このことは、単一変異が、Ply511の機能および安定性に対して正の効果を有するような変異の組み合わせ、例えば、Ply511-E40Q-Y43S、Ply511-E40A-Δ195-262、Ply511-E40Q-Δ195-262、およびPly511-E40Q-Y43S-Δ195-262にも当てはまる。
【0041】
さらに、198位〜260位のアミノ酸の領域にあるCBD1における置換、特に、208位、218位、221位、222位、および228位の芳香族アミノ酸残基、塩基性アミノ酸残基、および酸性アミノ酸残基の置換が好ましい。208位、218位、221位、222位、および228位のアミノ酸の好ましい置換は、A、V、I、K、L、およびMである。さらに、222位のDからAへの置換が好ましい。
【0042】
好ましい置換は表4に要約される。
【0043】
【表4】
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
【0044】
218位および228位の置換、特に、変異体Ply511-Y218VおよびPly511-Y228Iは、一定の活性および安定性増加をもたらすが、233位の置換、特に、変異体Ply511-Y233IおよびPly511-Y233Mは、最初に存在していたアミノ酸残基Yと比較して、有意な活性の減少、および大腸菌溶解物中でのさらに高い分解をもたらす。置換D222Aは、発現率、可溶性、および活性に関してWt-Ply511と比較可能であるが、驚くべきことに、変異体Ply511-D222Aの耐熱性は、野生型と比較して有意に増加しており、トリプシン消化物および大腸菌溶解物におけるプロテアーゼ安定性も増加していることが示された。
【0045】
さらに、アミノ酸配列LLSKIKを示す243位〜248位のアミノ酸、およびこの配列のN末端側またはC末端側に隣接するアミノ酸の位置の領域における置換、特に、アミノ酸残基240〜249の領域における置換が好ましい。それにより、単一変異が導入されてもよいし、多重変異が導入されてもよい。
【0046】
好ましい置換は表5に要約される。
【0047】
【表5】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0048】
一連の置換は、プロテアーゼ安定性を改善し、Wt-Ply511の酵素活性を維持するために適当である。これらは、特に、変異体Ply511-K246A、Ply511-K246H、Ply511-S245A、Ply511-T241A、Ply511-T242A、および二重変異体Ply511-T241S-T242Sである。これらの置換は、他の変異と組み合わせられても正の効果を示す。D222AおよびK246Q-K248Qと組み合わせられた二重変異T241S-T242Sも、わずかに安定化し、正の影響を活性に与える。変異K246Aは、二重変異L243I-L244Iの負の効果を低下させるために適当であって、三重変異体Ply511-L243I-L244I-K246Aの活性は再びWtタンパク質のレベルに達する。変異S245Aは、それ自体、大腸菌粗溶解物中でのPly511の安定性を増加させ、不安定化二重変異K246Q-K248Qに対して正の効果を及ぼすために既に適当である。二重変異体Ply511-D222A-S245Aは、さらに、トリプシン消化物および大腸菌溶解物において、より長いインキュベーション時間で、Wtタンパク質と比較して有意に高いプロテアーゼ安定性を示す。しかしながら、変異体Ply511-S245Aは、耐熱性試験において野生型と比較してわずかに不安定であり、変異D222AおよびS245Aの組み合わせのみが、耐熱性試験において野生型の安定性と比較可能な安定性を有するタンパク質をもたらす。タンパク質の酵素活性および可溶性は、変異体Ply511-K248A、Ply511-K246Q、およびPly511-K248Q、ならびに二重変異体Ply511-K246Q-K248Qによって維持される;しかしながら、プロテアーゼ安定性はこれらの変異によって減少する。
【0049】
この配列領域内の数個の置換は、酵素活性および/またはプロテアーゼ安定性に負の影響も与える。これらは、特に、変異Ply511-I247P、Ply511-G249A、Ply511-N240Q、Ply511-N240A、およびPly511-L243A、ならびに二重変異Ply511-L243I-L244Iである。変異体Ply511-G249Aは、精製の間の減少した耐熱性およびプロテアーゼ安定性を示す;しかしながら、酵素活性は、プレート溶解試験においても液相溶解試験においても野生型と比較してわずかにしか減少しない。さらなる変異との全ての組み合わせにおいても、二重変異Ply511-L243I-L244Iは、プロテアーゼ安定性および酵素活性に負の影響を与える。このことは、変異N240QおよびG249Aとの組み合わせにも当てはまる。
【0050】
さらに、260位〜341位のアミノ酸の領域にあるCBD2における置換が好ましい。さらに、変異体Ply511-Δ195-262における278位のアミノ酸の置換が好ましい。さらなる好ましい置換は、表6に要約される。
【0051】
【表6】
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
【0052】
変異体Ply511-W278Iの酵素活性は、Wtタンパク質のレベルに維持されている;しかしながら、大腸菌溶解物中でのプロテアーゼ感受性は有意に高い。このことは、この変異の、さらなる変異との組み合わせにも当てはまる。変異Ply511-K267Q-K268M、Ply511-K275A、Ply511-K285Q、Ply511-K289Q(この中でも特に二重変異体Ply511-K267Q-K268M)は、Ply511エンドリシンのプロテアーゼ安定性を増加させるために適しており、同時に、Wtタンパク質のものと比較可能な酵素活性が維持されることが判明した。特に、K267位およびK268位の、R以外の他のアミノ酸残基への変異、特に、変異体Ply511-K267Q-K268Mは、CBD2内のプロテアーゼ感受性領域を安定化するために適していることが判明する。
【0053】
Ply511のプロテアーゼ安定性を増加させる変異は、EAD、CBD1、CBD2、またはCBD1とCBD2の組み合わせのようなエンドリシンPly511の断片の安定性を増加させるためにも適している。EADを構成するアミノ酸領域はSEQ ID NO:1の配列の1〜166であり、CBD1を構成する領域は198〜260であり、CBD2を構成する領域は260〜341である。従って、CBD全体は、アミノ酸残基166以降の領域から構成される。ドメインは、活性を示す限り、N末端またはC末端でさらに短縮されてもよい。EADを構成する領域について、この活性は、リステリア細胞の溶解(プレート溶解試験または液相溶解試験)であるが、CBDのみを構成する領域については、CBDはアミダーゼ活性を示さないため、この活性は、リステリア細胞の溶解ではなく、結合のみである。プロテアーゼ安定性に正の影響を与える、記載されたドメイン境界内に位置する、さらなる上述の変異は、全て、エンドリシンPly511の対応する断片を安定化するためにも適している。
【0054】
タンパク質の調製を容易にするため、N末端もしくはC末端のタグ、または単一アミノ酸残基の化学的修飾のような修飾を付加してもよい。例えば、Hisタグ(Nieba et al., 1997, Anal. Biochem., 252, 217-228)もしくはStrepタグ(Voss & Skerra, 1997, Protein Eng., 10, 975-982)を、より容易な精製のため付加してもよいし、その適用を改良するため、例えば、Strapタグ、Aviタグ(米国特許第5,723,584号;米国特許第5,874,239号)、JSタグ(WO 2008/077397)を付加してもよいし、またはストレプトアビジンもしくはアビジンを示す表面への固定化のため、化学的ビオチン化を付加してもよいし、または可溶性もしくは安定性を増加させるため、例えば、PEG化(PEGylation)を付加してもよい。
【0055】
好ましくは、本発明は、さらに、本発明に係る記載された修飾型ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。本発明は、さらに、本発明に係る核酸分子を含むベクター、および本発明に係るポリペプチドの発現のための適当な宿主細胞に関する。
【0056】
本発明に係る修飾型Ply511エンドリシンは、全て、天然に存在するPly511によっても示される溶解活性を示す。さらに、上述の修飾は、正の効果を引き起こし、エンドリシンの商業的適用に有利な影響を与える。これらの正の効果には、増加したプロテアーゼ安定性、耐熱性、または化学的変性剤に対する安定性が含まれ得る。安定化は、さらに、より高い発現率、可溶性、またはより長い貯蔵寿命をもたらし得る。正の効果は、さらに、増加した活性であってもよい。
【0057】
増加したプロテアーゼ安定性は、タンパク質の組換え調製のために既に重要である。調製によって既に開始するプロテアーゼ分解のため、より多量のPly511を調製することは、極めて困難である。より多量のプロテアーゼ阻害剤の添加は高コストであり、エンドリシン調製物中に多くの添加物質を含むであろう。さらに、高度のクロマトグラフィ技術によって、分解されたタンパク質を全長タンパク質から分離し得るかもしれない;しかしながら、発生する分解断片の一部は、全長タンパク質よりわずか数キロダルトン小さいに過ぎず、分解断片は、精製に関して、ネイティブタンパク質に類似した特色を示すため、これは困難であろう。増加したプロテアーゼ安定性は、単離されたPly511の保管に関して、さらに重要である。多くのプロテアーゼを含有している食物におけるPly511の使用に関しても、プロテアーゼ安定性が望まれる。改善されたプロテアーゼ安定性は、添加された本発明に係る修飾型Ply511が有効である持続時間を増加させる。
【0058】
増加した耐熱性も有利である。食物技術において、例えば、チーズまたはヨーグルトの生産においては、しばしば、高温が使用される。この場合にも、適切な温度で活性を保持しているのであれば、リステリアの抗微生物溶解のために、Ply511エンドリシンを適用することができる。増加した耐熱性は、本発明に係るポリペプチドの組換え調製においても有利であることが判明する。可溶化するのが困難であるかまたは不安定なタンパク質は、発現産物が可溶性であるよう、低温(例えば、25℃または30℃)で発現させなければならないことが多い。しかし、より高温(例えば、37℃)での発現は経済的利点を提供する。なぜなら、これらの温度では、タンパク質産生がより高速であって、より高い細胞密度が達成され得るため、より多くのタンパク質が産生され得るためである。
【0059】
増加した耐熱性、プロテアーゼ安定性を示し、または化学的変性剤に対しても増加した安定性を示すタンパク質は、一般に、より長期間の貯蔵に対しても安定している。これは、より多い量が保管され得るため、製造業者にとっても適用者にとっても費用対効果が高いことが判明する。
【0060】
タンパク質の良好な可溶性は、効率的で費用対効果の高い方式でエンドリシンを調製するために重要である。不溶性タンパク質は、一般に、変性しており、もはやネイティブのコンフォメーションを保有しておらず、従って、完全な活性を保有していない。発現産物が不溶性である場合には、ネイティブのコンフォメーションおよび活性を再入手するために、再折り畳みを試みることができる。しかしながら、これは、技術的に高度であり、高コストであり、ネイティブタンパク質の収率に関して非効率的であるため、好ましくは、良好な可溶性を有するタンパク質が発現される。
【0061】
より高い活性は、適用しなければならない酵素がより少なくなるため、経済的に有利である。
【0062】
本発明は、さらに、本発明に係るタンパク質の、ヒト用、動物用、および診断用の物質としての使用、食物もしくは化粧品における抗微生物物質としての使用、または消毒剤としての使用に関する。
【0063】
本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドを含む医薬に関する。本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドを含む薬学的組成物に関する。本発明に係る薬学的組成物は、好ましくは、薬学的に許容される緩衝剤、薬学的な許容される希釈剤、または薬学的に許容される担体物質を含んでいてもよい。本発明に関する薬学的組成物は、さらに、適切な安定剤、香料添加剤、またはその他の適切な試薬を含有していてもよい。
【0064】
本発明のもう一つの局面は、リステリアによって引き起こされる疾患の治療もしくは防止のための、またはリステリア汚染の診断のための、ヒト用、動物用の医療用または診断用の物質として使用するための、本発明に係るポリペプチドに関する。
【0065】
リステリアによって引き起こされる疾患には、とりわけ、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症、スメア感染によって引き起こされる局所創傷感染、ならびに結膜および角膜の炎症が含まれる。
【0066】
本発明のもう一つの局面は、感染、特に、リステリアによって引き起こされる感染の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。このリステリア感染は、特に、L.モノサイトゲネス、好ましくは、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス、特に、L.モノサイトゲネス1442 SV1/2a、L.モノサイトゲネス1042 SV 4b、L.モノサイトゲネス1019 SV 4c、および/またはL.モノサイトゲネス1001 SV 1/2 cによる感染であり得る。この感染は、さらに、L.イノキュア、好ましくは、血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア、特に、L.イノキュア2011 SV 6aによって引き起こされるリステリア感染であってもよい。患者は、ヒト患者であってもよいし、または動物、好ましくは、反芻動物(例えば、ウシ、雌ウシ、ヒツジ、およびヤギ)、ブタ、ウマ、家禽、捕獲野鳥、ウサギ、もしくは捕食動物のような、家畜飼育もしくは酪農業において使用される動物であってもよい。好ましくは、本発明のポリペプチドは、感染の位置で、または感染に対して予防的に処置される位置で、適切な量で使用される。
【0067】
もう一つの好ましい態様は、胃腸炎、特に、リステリアによって引き起こされる胃腸炎の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0068】
もう一つの好ましい態様は、リステリア症、髄膜炎、脳炎、敗血症、ならびにスメア感染によって引き起こされる創傷感染ならびに結膜および角膜の炎症、特に、リステリアによって引き起こされるものの処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0069】
もう一つの好ましい態様は、出生前管理における上述の疾患の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0070】
特に好ましい態様は、処置または防止される感染が、耐性リステリア株によって引き起こされる場合の、医学的処置のための本発明に係るポリペプチドの使用である。本発明のポリペプチドは、さらに、抗生物質、例えば、エンドリシン等のような他の酵素のような従来の抗菌活性成分と組み合わせて投与することにより、感染の処置のための方法において使用されてもよい。
【0071】
上述の疾患の処置および/または予防のための方法において使用される投薬量および投与モードは、特定の疾患にも、処置すべき感染の位置にも依る。投与のモードは、本発明の特定の態様において、例えば、経口、局所、非経口、静脈内、直腸、またはその他の任意の投与モードであり得る。感染の位置(または感染のリスクを有する位置)への本発明に係るポリペプチドの適用のため、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが、プロテアーゼのような環境的影響、酸化、または免疫応答等から防御されるよう製剤化され得る。
【0072】
従って、本発明のポリペプチドは、カプセル、被包錠、錠剤、坐剤、注射可能溶液、またはその他の任意の医療用の適切なガレノス製剤(galenic formulation)に存在し得る。本発明のいくつかの態様において、このガレノス製剤は、付加的に、適当な担体、安定剤、香料添加剤、緩衝剤、またはその他の適当な試薬を含有していてもよい。
【0073】
本発明のポリペプチドは、例えば、ローションまたは絆創膏(band-aid)として、局所適用のため投与されてもよい。
【0074】
坐剤製剤を、腸の処置のために使用してもよい。または、経口投与を考慮に入れることもできる。この場合、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが感染の位置に到達するまで、消化器系の環境的影響から防御されなければならない。これは、例えば、胃内消化という初期工程を生き延び、その後、腸の環境において本発明のポリペプチドを放出する細菌を担体として使用することによって、達成され得る。
【0075】
本発明のポリペプチドが、リステリア菌に到達した後、特異的かつ迅速にそれらを溶解する効果に、全ての医学的適用が基づく。これは、病原菌および細菌負荷量を低下させ、同時に免疫系を支持することによって、処置された患者の健康に直ちに影響を及ぼす。この目的のため、この適用のための従来の薬物と同様のガレノス製剤が使用されてもよい。
【0076】
もう一つの局面において、本発明のポリペプチドは、化粧用組成物の一部である。本発明に係る化粧用組成物は、例えば、リステリア菌による皮膚感染によって引き起こされる刺激を阻害するかまたは防止するために使用され得る。本発明に係る化粧用組成物は、好ましくは、既存のリステリア菌および/または最近定着したリステリア菌を溶解するために十分な量の本発明に係るポリペプチドを含有している。
【0077】
本発明のもう一つの局面は、例えば、乳製品、薫製魚、塩漬け魚、凍結魚介類、肉製品、サラダ、およびRTE製品(特に、肉製品および生RTE製品)のような食物における抗微生物物質としての、本発明に係るポリペプチドおよび/または宿主細胞の使用に関する。
【0078】
本発明のもう一つの局面は、食物加工装置、食物加工施設、貯蔵所、コンテナ、または食物の貯蔵もしくは加工のために使用される装置のような食物に曝される表面、および食物がリステリア菌により汚染される可能性のある全てのその他の情況における、抗微生物物質としての、本発明に係るポリペプチドの使用に関する。これに関して、本発明に係るポリペプチドは、単独で使用されてもよいし、または消毒剤、抗生物質、もしくは、例えば、他のエンドリシンのような酵素のような他の抗微生物物質と組み合わせて使用されてもよい。
【0079】
本発明に係るポリペプチドは、多数の技術によって、例えば、本発明に係るポリペプチドを食品中に混合することによって、本発明に係るポリペプチドを施設装置へ噴霧することによって、かつ/または本発明に係るポリペプチドを施設装置に直接適用することによって、食品および/または食物加工施設内の種々の技術的な位置に適用され得る。
【0080】
本発明のもう一つの局面は、薬物、食物産業および食物分析、家畜飼育、飲料水の分析、または環境分析におけるリステリア汚染の診断および検出における、本発明に係るポリペプチドの使用に関する。
【0081】
種々の試料、例えば、液状溶液および水と有機溶媒との混合物、食物、媒体、血液、血液製剤、血漿、血清、尿、大便試料、タンパク質溶液、水とエタノールとの混合物、ならびに分析または単離すべき非液状固形物質、例えば、タンパク質、DNA、RNA、糖、塩、食物、食物媒体ホモジネート(food-media-homogenates)、医薬、ワクチン、有機および無機の化学薬品、例えば、NaCl、MgCl2、プリン、およびピリミジンを含有している溶液において、本発明に係るポリペプチドの補助により、リステリア汚染を検出することができる。
【0082】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、限定的なものと理解されるべきではない。特記しない限り、Sambrook et al., 1989, Molecular cloning: A Laboratory Manual 2. Auflage, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkによって記載されたような分子生物学の標準的な方法を使用した。
【実施例】
【0083】
実施例1 発現および可溶性の試験
Ply511エンドリシンのためのプラスミドを含有している分析予定の大腸菌クローンを、濁りが可視になるまで、30℃で1ml LB培養物中で振とうしながらインキュベートした。陰性対照を除く培養物を、1mM IPTGにより誘導した。30℃における3〜4時間のインキュベーションの後、細胞を卓上遠心機で採集した(4℃で10分間、13,000rpm)。発現試験のため、ペレットを100μl 1×SDS試料緩衝液中で煮沸し(95℃で5分)、SDSゲル上で分析した。可溶性試験のため、ペレットを細胞溶解緩衝液(25mMトリス、250mM NaCl、pH 7.5)に再懸濁させ、超音波処理によって溶解した(20s)。遠心分離(4℃で10分間、13,000rpm)による不溶性タンパク質の沈降の後、試料緩衝液を上清(可溶性タンパク質画分)およびペレット(不溶性タンパク質画分)の一定分量へ添加し、続いて、煮沸(95℃で5分間)を行った。いずれの場合にも、試料をSDSゲル電気泳動によって分析し、続いて、ゲルのクーマシー染色を行った。
【0084】
実施例2 修飾されたエンドリシンPly511および天然に存在するPly511の精製
Ply511タンパク質を、誘導された大腸菌培養物(30℃、1mM IPTG)の細胞から精製した。細胞ペレットを、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)により、負荷緩衝液A1(25mMトリス、250mM NaCl、1mM MgCl2、pH 8.0)中で溶解した。遠心分離の後、上清を、流線型直接HSTカラム(陽イオン交換、GE healthcare)で予備精製した。従って、10カラム容量の緩衝液A1および10カラム容量の緩衝液A2(25mMホウ酸、250mM NaCl、pH 9.0)を洗浄のために使用し、続いて、緩衝液B1(25mMホウ酸、500mM NaCl、pH 10.0)を溶出のために使用した。フェニルセファロースHPを、二次精製工程のために使用した。試料を、緩衝液B4(25mMホウ酸Na、1.1M硫酸アンモニウム、pH 8.0)で負荷し、緩衝液A5(25mMホウ酸Na、pH 8.0)により溶出させた(Ply511誘導体は、素通り画分に存在する)。続いて、4℃で40mMトリス、100mM NaCl、pH 8.0に対する透析によって塩を除去し、およそ18時間以内に2回、緩衝液を交換した。
【0085】
実施例3 Ply511の貯蔵後の分解バンドの分析
精製されたPly511を、貯蔵緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、pH 8.0)中で、4℃で、2日間インキュベートし、続いて、最近精製されたPly511と比較しながら、SDSゲル上で分析した。貯蔵の間、およそ26キロダルトンのバンドが顕著に分解され、いくつかのより小さい分解バンドが発生し、従って、タンパク質がプロテアーゼによって分解されたこと、そしてタンパク質がより長い期間の貯蔵において安定していないことが示された。プロテアーゼ分解を受けたタンパク質調製物は、全長タンパク質より低い活性を示す。
【0086】
実施例4 Ply511配列内のプロテアーゼ感受性領域の同定
エンドリシンPly511のどの領域が例外的にプロテアーゼ感受性であるかを決定するため、異なる市販のプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、スブチリシン、スタフィロコッカスペプチダーゼI、プロテイナーゼK、サーモリシン)によるプロテアーゼ消化実験を実施した。Ply511を、それぞれ、製造業者によって記載された異なる緩衝液の中で、異なる期間(数分〜数時間)、室温または37℃で、プロテアーゼと共にインキュベートした。発生したプロテアーゼ断片をSDSゲル上で分離した。得られたタンパク質バンドを、PVDF(フッ化ポリビニリデン)膜にブロットし、よく識別可能なバンドを切り出し、N末端配列決定した。市販のプロテアーゼに加え、大腸菌溶解物の発生した断片も配列決定した。類似したサイズを有する断片が高頻度に発生したこと、全ての断片を配列決定したわけではなかったこと、そして異なる特異性を有するさらなるプロテアーゼも存在することから、言及されたアミノ酸の位置の他に、近傍のアミノ酸も、プロテアーゼ感受性領域内に位置していると想定しなければならない。
【0087】
実施例5 活性分析のためのプレート溶解試験
溶解プレートの調製のため、L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b、株番号776)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2b、株番号996、もしくは血清型1/2a、株番号1095)、またはリステリア・イノキュア(血清型6b、株番号1147)、またはさらなるリステリア株の熱不活化された細胞(80℃で20分間)を、密な濁った細胞層が発生するよう、LB-TopAgarに添加する。形質転換された大腸菌クローンの溶解活性を試験すべき場合には、LB-TopAgarは、IPTGおよびアンピシリンを含有していた。続いて、溶解活性を試験するため、修飾型Ply511バリアントのためのプラスミドにより形質転換された大腸菌クローン、誘導された大腸菌クローンの細胞溶解物、または精製されたタンパク質溶液のいずれかを、プレートへ播種し(dapped)(およそ5μl溶液、大腸菌の単一コロニーの接種用ループ)、続いて、30℃で一夜のインキュベーションを行った。Ply511エンドリシンが溶解活性を示すのであれば、タンパク質がプレートへ播種された部位に溶解区域が出現し、密な細菌細胞層における孔として溶解区域が可視になるであろう。溶解区域のサイズは、タンパク質の活性に相当する。活性は、Wtタンパク質の活性と比べて記載される。示された表の活性データは、全て、プレート溶解試験の補助により決定され、記号(+++、++、+、+/-)は、Wt Ply511と比較された溶解区域のサイズに従って決定された。
【0088】
実施例6 活性分析のための液相溶解試験
液相溶解アプローチでは、細菌培養物(L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2bもしくは1/2a)、またはL.イノキュア(血清型6b)、またはさらなるリステリア株)からの熱不活化された細胞(80℃で20分)1mlを、1.0+/-0.1のOD600にまでインキュベートした。細菌培養物を、PBST(20mMリン酸ナトリウム、120mM塩化ナトリウム、0.5%トゥイーン、pH 8.0)に導入し、キュベットに負荷した。エンドリシン(0.1μg/ml〜10μg/mlのタンパク質濃度)の添加後、30℃において、OD600の減少を、時間の関数として測定した。エンドリシンの添加なしのそれぞれの細胞懸濁物を、対照とした。タンパク質量(μmol)(ΔAμmol/分)の関数としての毎分の600nmにおける吸光度の減少(ΔA/分)として、活性を計算した。修飾型エンドリシンの活性を、それぞれ、Wt-Ply511と比較して測定した。リステリア996株(血清型1/2b)を用いた、Wt-Ply511およびPly511-K246Q-K248Qを用いた比較溶解試験においては、0.1μg、0.3μg、または0.7μgのエンドリシンをそれぞれ添加した。タンパク質量が増加するにつれ、リステリアの溶解はより高速になったが、Wt-Ply511および変異体Ply511-K246Q-K248Qは、三つ全てのタンパク質濃度でおよそ同一の溶解活性を示した。さらなる液相溶解試験においては、リステリア776株(血清型4b)と比較して、Wt-Ply511と変異体との間の比較溶解データを決定した。Wt-Ply511および変異体Ply511-G249A(10μg/ml)も、極めて類似した溶解活性を示したが、変異体Ply511-Δ195-262はWt-Ply511と比較してさらに高速の溶解を示した(濃度0.3μg/ml)。
【0089】
実施例7 プロテアーゼ安定性を試験するための大腸菌溶解物におけるプロテアーゼ消化
誘導された大腸菌の培養物1mlを、30℃で3〜4時間のインキュベーションの後、採集した(13,000rpm、10分間、4℃)。続いて、ペレットを細胞溶解緩衝液(25mMトリス、250mM NaCl、pH 7.5)に再懸濁させ、超音波処理(20s)によって溶解した。遠心分離(13,000rpm、10分間、4℃)を介して不溶性成分および未溶解細胞を沈降させた後、細胞溶解物の上清を、室温または37℃でインキュベートした。インキュベーション時間の開始時(t=0)に試料を採取し、次いで、室温では24h毎(t=1日、2日、または3日)に採取し、37℃でインキュベートされた試料は、24時間以内(例えば、t=1h、16h、21h)に採取した。SDS試料緩衝液中で煮沸(5分間、95℃)した後、試料をSDSゲル上で分析した。Wt-Ply511は、25℃で、大腸菌内因性プロテアーゼによる有意なタンパク質分解を示し、2日後、もはや全長タンパク質はほぼ全く存在しなかったが、変異体Ply511-D222AおよびPly511-Δ195-262は、有意に遅延した分解を示し、2日間のインキュベーションの後、全長タンパク質が未だ存在し、より小さい分子量を有する第二の分解バンドはその時間内に全く出現しなかった。しかしながら、二重変異体Ply511-L243I-L244Iは、有意に不安定化されており、25℃での2日間のインキュベーションの後、既に、より小さい分解バンドの分子量(より小さい25kDaの分子量)を有するタンパク質しか存在しなかった。大腸菌におけるもう一つのプロテアーゼ消化を、25℃で最長3日間インキュベートした。Wtタンパク質は、全長タンパク質のバンド(バンド1)のますますの減少を示し、分解バンド(バンド2)が増加を示したが、変異体Ply511-S245Aは、有意に多い量の全長タンパク質が未だ存在していることを示した。しかしながら、二重変異K246Q-K248Qは、タンパク質を不安定化し、3日後、もはや全長タンパク質は基本的に全く存在せず、より小さい分子量を有する分解バンド(バンド3)が出現する。二重変異体K246Q-K248Qと組み合わせられた変異S245Aは、再び、安定化効果を有し、三重変異体Ply511-S235A-K246Q-K248Qでは、全長タンパク質が実験の最後まで存在し、同時に、分解バンド3が占める程度がより少なかった。およそ28〜30kDaのサイズを有する分解断片をもたらす、トリプシン感受性切断部位が、CBD2内に存在することが示された。種々の変異の導入によって、これらのプロテアーゼ切断部位を見出し安定化することを試みた。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-K275A、Ply511-K267Q-K268M、およびPly511-K285Q-K289Qを、1時間、16時間、または21時間、37℃で、大腸菌溶解物中でインキュベートした。それらは、全て、少なくともWt-Ply511に等しいプロテアーゼ安定性を示した。しかしながら、変異体Ply511-K267Q-K268Mには、およそ28〜30kDaの分解中間体が存在しなかったため、この変異体においては、可能性のあるトリプシン切断部位と共に、普遍的なプロテアーゼ切断部位も除去されたことが示された。
【0090】
実施例8 プロテアーゼ安定性を試験するためのトリプシン消化
Wt-Ply511(SEQ ID NO:1)ならびに試験された変異体(Ply511-T241S-T242S、Ply511-S245A、およびPly511-D222A-S245A)を、実施例2に記載されたようにして精製した。それらを、25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0に対して全部でおよそ18時間、2回、透析した後、プロテアーゼ消化を行った。透析緩衝液を、トリプシン消化のためにも使用した。エンドリシン30μgを、150μlの試料容量に導入した。トリプシンストック溶液(25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0中1mg/ml)2.5μlを、消化工程へ導入し、室温で、1分間、2分間、5分間、13分間、25分間、および35分間、消化した。それぞれの試料を言及された時点で採取し、試料緩衝液を添加し、続いて、全ての試料を12%SDSゲル上で分析した。トリプシンと共にインキュベートされていない試料を対照とした。二重変異体Ply511-T241S-T242Sは、Wtタンパク質と類似した動力学で分解されるが、変異体Ply511-S245AおよびPly511-D222A-S245Aの両方(特に、Ply511-D222A-S245A)は、プロテアーゼ分解に対して安定化されている。分解の動力学が有意に遅い。それぞれ、およそ29kDaおよび26kDaの分子量を有する2本の明確な分解バンドが、主として発生する。直接のトリプシン切断部位に相当するアミノ酸(リジンおよびアルギニン)は交換されていないが、記載された変異体のトリプシンに対するプロテアーゼ安定性が増加したことは注目すべきである。それは、記載された変異が、ある種の連続的に決定されたプロテアーゼのある種の切断部位が除去されたという意味でだけでなく、プロテアーゼ一般に対して、タンパク質を安定化したことを意味する。
【0091】
実施例9 プロテアーゼ安定性を試験するためのキモトリプシン消化
Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-D222A-S245AおよびPly511-K246Q-K248Qを、実施例2に記載されたようにして精製した。それらを、25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0に対して、全部でおよそ18時間、2回、透析した後、プロテアーゼ消化を行った。透析緩衝液を、キモトリプシンによる消化のためにも使用した。24μgのPly511を、室温で、150μlの試料容量で、1分間、2分間、または5分間、3μgのキモトリプシンと共にインキュベートし、言及された時点でSDS試料緩衝液に添加し、続いて、12%SDSゲル上で分析した。キモトリプシンと共にインキュベートされていない試料を対照とした。二重変異体Ply511-K246Q-K248Qは、Wtタンパク質よりわずかに速く分解されたが、変異体Ply511-D222A-S245Aは、プロテアーゼ分解に対して有意に安定化されている。
【0092】
実施例10 タンパク質凝集に関する耐熱性試験
耐熱性試験のため、それぞれのタンパク質100μgを、25mMリン酸Na、100mM NaCl、ph 8.0に導入し、撹拌可能な石英キュベット(容量1ml)に負荷した。20〜90℃(加熱速度1℃/分)での加熱の間の光学密度(タンパク質の凝集による光拡散)の増加を、360nmの波長で光度計で測定した。例示された実験において、Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-G249A、Ply511-S245A、Ply511-D222A-S245A、およびPly511-D222Aを、光度計で加熱し、タンパク質凝集の増加を、温度の関数として測定した。Wt-Ply511はおよそ65℃で凝集するが、変異体Ply511-G249AおよびPly511-S245Aにおいては、不安定化するG249AおよびS245Aのため、60℃で既に凝集が起こることが示された。対照的に、変異体Ply511-D222Aは、有意に耐熱性が高く、およそ75℃まで凝集しない。変異D222AおよびS245Aが組み合わせられた場合、二重変異体Ply511-D222A-S245Aは、Wtと比較してわずかに増加した耐熱性を示し、単一変異の効果が多少相加的に作用している。
【0093】
実施例11 タンパク質活性に関する耐熱性試験
より高い耐熱性がタンパク質活性に影響を与える可能性を試験するため、種々のPly511バリアント(タンパク質濃度0.3mg/ml)を、緩衝液(40mMトリス、100mM NaCl、pH 8.0)中で、増加した温度で、20分間、各々インキュベートし、続いて、残存活性を液相溶解試験(実施例6参照)で決定した。それにより、活性は、溶解曲線の初期において、毎分の600nmにおける吸光度の減少(ΔA/分)に相関する。Wt-Ply511および変異体Ply511-G249A(各々、濃度3μg/ml)を、50℃でPBSTで20分間インキュベートし、対照は4℃で保管した。その期間の後、残存活性を、室温で液相溶解試験で測定した。Wt-Ply511は、その活性の98%をこれらの条件の下で維持するが、変異体Ply511-G249Aは15%の残存活性しか示さないことが示された。
【0094】
実施例12 化学的変性剤に対する安定性
ネイティブの型のタンパク質は、特徴的な蛍光発光スペクトルを示す。塩化グアニジウム(GdmCl)または尿素のような化学的変性剤における変性の間、発光極大の位置および蛍光シグナルの強度が変化する。タンパク質の安定性に関する情報を得るため、ネイティブタンパク質と変性タンパク質との間のシグナルの変化が最大となるような波長で、変性剤の添加の関数として、タンパク質蛍光を測定する。タンパク質の変性遷移期の中央点がより高い場合(変性剤濃度(M))、そのタンパク質はより安定している。修飾型Ply511エンドリシンの安定性を、それぞれ、Wtタンパク質の安定性と比較する。GdmClストック溶液を、0.5M毎に0〜8Mで水で調製し、続いて、屈折計で変性剤の濃度を制御する。タンパク質ストック溶液を、4倍濃縮PBS緩衝液(PBS:20mMリン酸ナトリウム、120mM塩化ナトリウム、pH 8.0)で100μg/mlで調製する。GdmClストック溶液およびPBS緩衝液を無菌ろ過する。タンパク質ストック溶液0.75mlにつき、2.25mlの異なるGdmClストック溶液と混合し、試料を25℃でインキュベートする。蛍光の測定のため、それぞれの試料から0.75mlを採取し、続いて、蛍光シグナルを測定する。それにより、タンパク質が添加されていない対応するGdmCl濃度を有する緩衝液についてのブランク値を、各測定点から差し引く。タンパク質変性のための定常状態が既に準備されているか否かを制御するため、その測定をおよそ7日後に繰り返し、必要であれば、その後、再び繰り返す。続いて、変性の中央点の決定のため、補正された蛍光値を、変性剤の濃度に対してブロットする。
【0095】
実施例13 Ply511の非酵素活性バリアント、特に、CBD含有断片に関する細胞結合試験
Ply511-CBD断片を、hisタグまたはstrepタグのようなN末端またはC末端のタグと融合させ、大腸菌において異種発現させる。結合したCBDの蛍光検出のため、タグとPly511-CBD配列との間にGFPマーカーを融合させることができる。製造業者のプロトコルに従い、アフィニティクロマトグラフィを介して、タグの補助によりタンパク質を精製する。L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2bもしくは1/2a)、またはリステリア・イノキュア(血清型6b)、またはさらなるリステリア株の予備培養物50μlを、およそ2μgの精製されたタンパク質と混合し、室温で10分間インキュベートする。1mlのPBST(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05%トゥイーン20、pH 8.0)の添加の後、細胞を遠心分離し、0.5mlで2回洗浄し、50mlのPBSTに再懸濁させる。リステリア細胞へのPly511-CBDの結合を、蛍光顕微鏡下で制御する。Strepタグを有するPly511-CBD融合体については、ストレプトアビジンまたはアビジンによりコーティングされた磁気ビーズを使用することが可能である。この場合、細菌に結合したStrepタグ-Ply511-CBDを、適切な磁気ビーズと共にインキュベートする。続いて、リステリア細胞とPly511-CBDとの複合体を、磁気分離器の補助により試料から分離する。次いで、従来の方法(例えば、PCR、微生物検出技術)により、リステリアの検出を実施する。
【0096】
実施例14:リステリアエンドリシン内のクロストリパイン切断部位の同定
クロストリパインの可能性のある切断部位は、エンドリシンに多量に存在することが多い。全ての可能性のある切断部位の置換は、エンドリシンの活性に負の影響を及ぼす可能性があるため、プロテアーゼにとってアクセス可能な切断部位を決定し、これらのみを修飾することが有用であるかもしれない。リステリアエンドリシンPly511は、クロストリパインの可能性のある切断部位を、6個、含有している。クロストリパインによるPly511の消化を、エンドリシンのクロストリパイン感受性領域を決定するために実施した。Ply511(0.1mg/ml)を、以下の組成を有する60μlの試料容量で、それぞれ、3時間および一夜、5単位(製造業者Sigmaによる単位の定義)のクロストリパインにより、室温で消化した:25mMリン酸ナトリウム、1mM酢酸カルシウム、2.5mM DTT、pH 7.6。発生したタンパク質断片を、SDSゲル電気泳動によって分離した(勾配ゲル10〜20%アクリルアミド)。3本のバンドが発生し(分子量およそ25kDa、およそ14kDa、およそ10kDa)、それらをPVDF膜にブロットし、続いて、切り出し、N末端エドマン分解を介して配列決定した。
【0097】
断片について、以下のN末端配列が出現した:
1. (M)VKYTVENK;N末端メチオニンは部分的に解離していた。
2. DKLAK
3. TSNATTF
この結果は、6個の可能性のあるクロストリパイン切断部位(R46、R62、R92、R221、R312、R326)のうちの2個、すなわち、R92、R221が、プロテアーゼによって認識されたことを示す。本発明により安定化されたPly511のバリアントは、これらの位置におけるRの他のアミノ酸残基への交換、特に、R62KまたはR62AおよびR221KまたはR221Aを保有している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と比較して変化したアミノ酸配列を少なくとも一つのアミノ酸の位置に有するポリペプチドに関する。本発明は、さらに、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列を含むベクター、およびポリペプチドの発現のための宿主細胞に関する。本発明は、さらに、ポリペプチドの、ヒト用、動物用の医療用もしくは診断用の物質としての使用、食物における使用、化粧品における使用、消毒剤としての使用、または環境領域における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リステリアは、食物の領域において広く蔓延しているヒトおよび動物の病原菌であり、リステリア症という疾患を引き起こす。魚、肉、および乳製品のような食物は、リステリアにより汚染されることが多い。リステリア綱は、16の異なる血清型を有する6つの異なる種を含む。詳細には、これらは、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス(monocytogenes);血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア(innocua);血清型5を有するL.イバノビー(ivanovii);血清型1/2a、1/2b、1/2c、4b、4c、4d、6bを有するL.シーリゲリ(seeligeri);血清型1/2a、4c、6a、6b、U/Sを有するL.ウェルシメリ(welshimeri)、および血清型グレイ(Grayi)を有するL.グレイである。L.モノサイトゲネス種およびL.イバノビー種は、いずれも、病原体であることが公知である。第三の種、L.シーリゲリは、非病原性であると考えられているが、L.シーリゲリがヒトにおいて髄膜炎を引き起こした症例が一例公知である。残りの種は非病原性であると考えられている。リステリア症のおよそ90%は、L.モノサイトゲネス血清型1/2a、1/2b、および4bに起因する(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Diseases 185 (Suppl 1): S18-S24/非特許文献1)。
【0003】
リステリア症は、稀な疾患ではあるが、重篤な疾患であって、死亡率が高いため、深刻に扱われなければならない。リステリアによって引き起こされる食物関連疾患は、極一部であるが(米国においては、およそ1%)、毎年、食物病原体によって引き起こされる致命的な疾患のほぼ30%が、この病原菌によって引き起こされている。影響を受けるのは、主として、免疫が抑制されている者、例えば、高齢者、糖尿病患者、癌患者、および/またはエイズ患者である。妊婦および出生前の子供が、リステリア症患者の全症例のおよそ25%を占める。血液脳関門または胎盤関門を通過することができるため、リステリアは、髄膜炎、脳炎、流産、および死産を引き起こす場合がある(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Deseases 185 (Suppl 1): S18-S24/非特許文献1; Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001/非特許文献2)。
【0004】
リステリアは、食物生産の環境において生存するためによく適合している。それらは、弱酸に対して耐性であり、比較的高い塩濃度で、1℃〜45℃の温度で繁殖することができる。主要な感染源は、食物、特に、消費前に熱処理されない食物、例えば、多くの乳製品、薫製魚、肉製品、そして増加中のRTE(ready-to-eat)製品(特に、肉含有製品)である。リステリアによる汚染は、食物の加工(調理容器からの取り出し、切断、装飾、梱包等)の間に起こることが多い。熱処理されない種菌の補助により生産される食物(例えば、生乳チーズ、サラミ)も、種菌もしくは原料自体によって汚染されることがあり、または成熟もしくは保管の間にも汚染されることがある。米国においては、RTE食物におけるL.モノサイトゲネスの許容量はゼロであるが、多くのヨーロッパ諸国またはカナダは、ある種の食物への最大100CFU(コロニー形成単位)/g食物のリステリア汚染を許容している。しかしながら、いずれにせよ、食物はリステリア汚染について分析されなければならない。多くの食物、例えば、魚介類、スモークサーモン、または乳製品は、短い貯蔵寿命を有し、またはRTE生製品も同様である。従って、リステリア汚染または許容限度を超える汚染が、輸送後にこれらの製品において検出された場合には、高コストの製品リコールが発生することが多い。
【0005】
この理由のため、リステリアの検出および除染のための方法を提供することは、極めて興味深い。さらに、抗微生物物質の適用は、リステリアの増殖を阻害するためにも、存在するリステリアを死滅させるためにも重要である。とりわけ、EP 0781349(特許文献1)は、上述の適用のために使用され得るファージA511由来のリステリアファージリシンPly511を記載している。その広い宿主スペクトルのため、Ply511は、多数のリステリア血清型に対して使用され得るが、比較的低い安定性のため、食物において使用するには適していない。Turnerら(2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67/非特許文献3)は、食物において適用される可能性のあるラクトバチルスにおけるPly511の発現におけるタンパク質分解問題に言及し、Ply511の安定性をそれぞれの適用のために増加させるべきであると提唱している。しかしながら、Ply511安定性の増加に関する解決のための指示は、Turnerによっては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 0781349
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Deseases 185 (Suppl 1): S18-S24
【非特許文献2】Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001
【非特許文献3】2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、より安定しているエンドリシンPly511を提供することである。
【0009】
その目的は、特許請求の範囲において定義されるような主題によって解決される。
【0010】
以下の図面は、本発明を例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。各行の最初のアミノ酸残基の番号が、左側に示されている。EADを形成するアミノ酸残基は、イタリック体であり、かつ下線が引かれている。CBD1を形成するアミノ酸残基はイタリック体であり、CBD2は下線が引かれている。K260は、CBD1の最後のアミノ酸残基であり、同時に、CBD2の最初のアミノ酸残基でもある。EADとCBD1との間(アミノ酸残基175〜203)およびCBD1とCBD2との間(アミノ酸残基245〜282)のドメインリンカー配列は、太字で示されている。
【図2】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。各行の最初のアミノ酸残基の番号が、左側に示されている。EADを形成するアミノ酸残基は、イタリック体であり、かつ下線が引かれている。CBD1を形成するアミノ酸残基はイタリック体であり、CBD2は下線が引かれている。K260は、CBD1の最後のアミノ酸残基であり、同時に、CBD2の最初のアミノ酸残基でもある。太字のアミノ酸残基は、新生エンドリシン断片のN末端配列決定によって決定された、プロテアーゼ切断部位である。
【図3】Ply511の貯蔵中のプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。レーン1は、分子量標準物を示し、レーン2は、ネイティブ全長Ply511を示し、レーン3は、保管後のPly511を示す。「1」と表示されたバンドは全長Ply511であり、バンド「2」は消化されたバンドである。kDaはキロダルトンを意味する。
【図4】トリプシン消化後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果、Wt-Ply511と変異体との間の比較を示す。図4Aは、二重変異体Ply511-T241S-T242SとWt-Ply511との間の比較を示す。図4Bは、変異体Ply511-S245AおよびPly511-D222A-S245Aの両方の消化を示す。左側の数字は、分子量(キロダルトン)である。左レーン(M)には、分子量標準物がそれぞれ負荷されている。トリプシン消化の動力学が、対応するレーンの上にゲルの上に分で与えられている。右側の線は、未消化の全長タンパク質の位置を表示している。
【図5】キモトリプシン消化後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果、Wt-Ply511と変異体との間の比較を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-D222A-S245AおよびPly511-K246Q-K248Qを、1分間、2分間、または5分間、キモトリプシンにより消化し、続いて、SDSゲルに負荷した。キモトリプシンが添加されていない対照試料は「K」と表示されている。左側の数字は、分子量(キロダルトン)である。右側の線は、全長タンパク質の位置を表示している。
【図6】リステリア細胞の溶解のためにエンドリシンを使用した、液相溶解試験の評価のグラフ図を示す。0.1μg、0.3μg、または0.7μg(曲線は左から右へ減少するタンパク質量をそれぞれ表す)の量のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-K246Q-K248Q(黒菱形)を、リステリア996株(血清型1/2b)の熱不活化された細胞へ添加する。時間の関数としての600nmにおける光学密度(OD600)の減少。tは時間を意味し;[s]は秒を意味する。
【図7】リステリア細胞の溶解のためにエンドリシンを使用した、液相溶解試験の評価のグラフ図を示す。Wt-Ply511(白丸)および本発明に係るPly511変異体(黒菱形)を、リステリア776株(血清型4b)の熱不活化された細胞に添加し、600nmにおける光学密度(OD600)の減少を時間の関数として測定した。図7A 10μg/mlの濃度のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-G249A(黒菱形)。図7B 0.3μg/mlの濃度のWt-Ply511(白丸)および変異体Ply511-Δ195-262(黒菱形)。tは時間を意味し;[s]は秒を意味する。
【図8】Wt-Ply511および種々の変異体の耐熱性試験の評価のグラフ図を示す。Wt-Ply511(白丸)、ならびに変異体Ply511-G249A(黒菱形)、Ply511-S245A(白三角)、Ply511-D222A-S245A(黒三角)、およびPly511-D222A(黒四角)を、光度計において加熱し、(360nmの波長における吸光度(A)の増加に対応する)タンパク質凝集の増加を、温度(T)(摂氏度)の関数としてモニタリングした。
【図9】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-L243I-L244I、Ply511-Δ195-262、およびPly511-D222Aを、大腸菌において発現させ、大腸菌溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質のバンドの位置が、右側に示されている(1:Ply511全長タンパク質、2:短縮型Ply511-Δ195-262)。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。下境界部の数字は、インキュベーション時間(日)である。
【図10】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-S245A、Ply511-K246Q-K248Q、およびPly511-S245A-K246Q-K248Qを、大腸菌において発現させ、大腸菌粗溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質(-1)、および2個の顕著な消化断片(-2、-3)のバンドの位置が、右側に示されている。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。
【図11】大腸菌粗溶解物におけるプロテアーゼ消化の後のSDSポリアクリルアミドゲルにおけるポリペプチド分離の結果を示す。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-K275A(図11A)、Ply511-K267Q-K268Q、およびPly511-K285Q-K289Q(図11B)を、大腸菌において発現させ、大腸菌粗溶解物中で、25℃で、異なる期間、インキュベートした。未消化のタンパク質(-1)、および2個の顕著な消化断片(-2、-3)のバンドの位置が、右側に示されている。左側の数字は分子量(キロダルトン)である。楕円は、変異体Ply511-K267Q-K268Qがおよそ28〜30kDaのサイズの消化中間体を欠いている位置を表示している。
【図12】エンドリシンPly511のアミノ酸配列を示す。プロテアーゼクロストリパイン(Clostripain)の可能性のある切断サイズ(P1位のR)に下線が引かれている。実験的に決定されたアミノ酸の位置R62位およびR221位にある特に感受性の高い切断部位は、いずれも、下線が引かれ、かつ太字である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「プロテアーゼ」という用語は、本明細書において使用されるように、タンパク質および/またはペプチドのペプチド結合を加水分解的に切断することができる酵素を意味する。この用語には、アミノ末端またはカルボキシル末端から単一アミノ酸残基を切断するペプチダーゼも含まれるし、タンパク質またはポリペプチドの内部を切断するプロテイナーゼも含まれる。
【0013】
「野生型」または「Wt」という用語は、本明細書において使用されるように、SEQ ID NO:1に示されるようなファージA511のエンドリシンPly511のアミノ酸配列を意味する。この用語は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列も意味する。ファージA511から単離されたヌクレオチド配列が、エンドリシンPly511をコードし、SEQ ID NO:2に示される。この用語には、単一アミノ酸残基についてSEQ ID NO:2に示されたものとは別のコドンを含むが、暗号の縮重のために同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0014】
「変異」という用語は、本明細書において使用されるように、初期アミノ酸配列の改変を意味する。それによって、単一もしくは複数の連続アミノ酸配列、または不変アミノ酸残基によって中断されたアミノ酸配列が、欠失、挿入もしくは付加、または置換されていてもよい。この用語には、上述の単一変化の組み合わせも含まれる。この用語には、タンパク質タグまたはペプチドタグのN末端またはC末端における融合も含まれる。
【0015】
「修飾」という用語は、本明細書において使用されるように、「変異」の同義語として使用され得る;しかしながら、この用語には、さらに、アミノ酸残基の化学変化、例えば、ビオチン化、アセチル化、アミノ基、SH基、またはカルボキシル基の化学変化も含まれる。
【0016】
「欠失」という用語は、本明細書において使用されるように、それぞれの初期配列からの1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸残基の除去を意味する。以後、除去されたアミノ酸残基は、記号「Δ」の後に示される:例えば、「Δ195-262」とは、195位(これを含む)から262位(これを含む)のアミノ酸残基が、初期配列から除去されていることを意味する。
【0017】
「挿入」または「付加」という用語は、本明細書において使用されるように、それぞれの初期配列への1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸残基の付加を意味する。
【0018】
「置換」という用語は、本明細書において使用されるように、ある位置に存在するアミノ酸残基の、もう一つのアミノ酸残基への交換を意味する。以後、置換は以下のように示される:一文字表記の変化したアミノ酸残基の後に、変化したアミノ酸残基の位置が示され、続いて、挿入された新たなアミノ酸残基が一文字表記で示される。例えば、Y4Aとは、4位のアミノ酸残基チロシンがアミノ酸残基アラニンに変化したことを意味する。
【0019】
「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」という用語は、本明細書において使用されるように、ある機能的特色および/または構造的特色を示すアミノ酸配列の小領域を意味する。アミノ酸配列相同性のため、公知のドメインを含む無料で入手可能なデータベース;例えば、NCBIの保存ドメインデータベース(CDD)(Marchler-Bauer et al., 2005, Nucleic Acids Res. 33, D 192-6)、Pfam(Finn et al., 2006, Nucleic Acids Research 34, D247-D251)、またはSMART(Schultz et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 5857-5864、Letunic et al., 2006, Nucleic Acids Res 34, D257-D260)のアミノ酸配列を比較するコンピュータープログラムによって、ドメインを予測し得ることが多い。
【0020】
本明細書において使用されるように、「ドメインリンカー」という用語は、単一タンパク質ドメイン間を連結する機能を有するアミノ酸配列を意味する。一般に、ドメインリンカーは、αヘリックスまたはβプリーツシートのような規則的な二次構造要素を全くまたはほとんど形成せず、それぞれの構造環境において異なるコンフォメーションを形成することができる。最先端技術は、リンカー配列の特色、およびそれらの同定の方法を記載している(George & Heringa, 2003, Protein Engineering, 15, 871-879、Bae et al., 2005, Bioinformatics, 21, 2264-2270)。
【0021】
野生型エンドリシンPly511は、341アミノ酸残基という長さを示す。それは、他の公知のエンドリシンとの相同性を各々示す3個の機能ドメインを有する。12位〜166位のN末端アミノ酸残基は、アミダーゼ2の群に属する、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼの機能を有する酵素活性ドメイン(EAD)を表す。Ply511の細胞結合ドメイン(CBD)は、二つの部分に分割される。198位〜260位のアミノ酸を含む第1のCBD(CBD1)は、リステリアファージA118のエンドリシンPly118のCBDとの類似性を示す。260位〜341位のアミノ酸を含む、C末端に位置するさらなるCBD(CBD2)は、バチルスファージΦ105由来のエンドリシンのCBDとの類似性を示す。単一ドメインはドメインリンカーによって連結されている。EADとCBD1との間のドメインリンカーは、アミノ酸残基175〜203の領域に位置し、2つのCBDの間のドメインリンカーは、アミノ酸残基245〜282の領域に位置する。
【0022】
大腸菌におけるWt-Ply511の組換え発現の間、全長タンパク質に加えて、多数の異なる断片が発生することが判明した。このことは、より長い時間にわたり貯蔵された場合には、精製されたPly511にすら当てはまる。この安定性の喪失は、活性の喪失に関連しているため、十分な活性を達成するためには、大量のタンパク質を導入しなければならない。Wt-Ply511エンドリシンを安定化するため、プロテアーゼに対して特に感受性の高い領域がPly511内に存在するか否かを分析した。入手されたPly511の断片を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を介してサイズによって分離し、続いて、ゲルから明確なタンパク質バンドを溶出させた。それぞれのバンドのポリペプチドのN末端配列決定を使用することにより、プロテアーゼの切断部位を決定した。どのプロテアーゼが分解を担うのかが不明である、大腸菌溶解物中または精製タンパク質中に存在する断片に加え、どのアミノ酸残基の後を好んで切断するのかが公知である、市販のプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、スブチリシン、トリプシン、ペプシン、スタフィロコッカスペプチダーゼI、プロテイナーゼK)によるプロテアーゼ消化も実施した。プロテアーゼ切断部位はエンドリシン内に均一には分布していないが、ある領域が特に感受性が高いことが判明した。タンパク質は、EADの開始点の上流に位置するN末端領域において高頻度に切断された。EADおよびCBD1、ならびにCBD1とCBD2との間のリンカーにも、いくつかの切断部位が見出された。アミノ酸243位〜248位を含み、CBD1のC末端に位置するアミノ酸配列LLSKIKには、多数のプロテアーゼ切断部位が存在する。
【0023】
従って、本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する天然に存在するエンドリシンPly511と比較して変化したアミノ酸配列を示すポリペプチドに関する。本発明は、さらに、付加的に修飾を含む本発明に係るポリペプチドに関する。本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に関する。本発明に係るポリペプチドは、より高いか、等しいか、またはより低いが、完全には失われていない、Wt-Ply511エンドリシンの溶解活性を示す。活性は、当業者に公知のアッセイ、例えば、プレート溶解試験または液相溶解試験によって測定される。
【0024】
アミノ酸配列の改変は、欠失、挿入および付加のそれぞれ、置換、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0025】
SEQ ID NO:1による天然に存在するPly511のアミノ酸配列に導入される欠失は、好ましくは、タンパク質の活性の喪失なしにプロテアーゼ切断部位が除去されるよう、アミノ酸配列を短縮するべきである。
【0026】
欠失は、1個または複数個のアミノ酸残基に影響を与えることができる。より多いアミノ酸残基が欠失している場合、欠失アミノ酸残基は連続していてもよい。単一の欠失アミノ酸残基またはより多くの欠失アミノ酸残基を含む領域は、1個または複数個の非欠失アミノ酸残基によってさらに分離されていてもよい。従って、1個または複数個の欠失が、SEQ ID NO:1のPly511の初期配列へ導入され得る。
【0027】
欠失は、好ましくは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位のアミノ酸の領域、特に、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位、195位〜255位、195位〜262位、238位〜341位、241位〜341位、267位〜341位、および270位〜341位のアミノ酸の領域へ導入される。特に好ましいのは、欠失領域が、示された位置からタンパク質の末端まで、従って、341位のアミノ酸までに影響を与える、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列における237位のC末端側、特に好ましくは、266位のC末端側の欠失である。さらに、C末端の一部分にのみ影響を与える欠失、特に、現在のアミノ酸配列SEQ ID NO:1のアミノ酸残基195〜262および195〜255の欠失が好ましい。これらの欠失ポリペプチドは、完全に可溶性に発現され、プレート溶解試験においても液相溶解試験においても、Wt-Ply511と比較して増加した活性を示すことができる。さらに、タンパク質はプロテアーゼ分解に対してより安定していた。
【0028】
驚くべきことに、1位〜およそ11位、特に、2位〜9位のアミノ酸の領域におけるN末端欠失は、タンパク質の可溶性を有意に減少させるのみならず、活性も完全に失われることが判明した。
【0029】
本発明に係る好ましいポリペプチドは、表1に例として要約される。
【0030】
【表1】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコット(Scott)A(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
-/+:かろうじて検出可能な溶解活性
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
6xH:6個のヒスチジン残基を含むN末端Hisタグ
【0031】
天然に存在するPly511のSEQ ID NO:1のアミノ酸配列へ導入される置換は、好ましくは、タンパク質の活性の喪失なしにプロテアーゼ切断部位が除去されるよう、アミノ酸配列を変化させるべきである。
【0032】
置換は、1個または複数個のアミノ酸残基に影響を与えることができる。数個のアミノ酸残基が置換される場合、置換アミノ酸残基は連続していてもよい。単一の置換アミノ酸残基、または数個の置換アミノ酸残基を含む領域は、1個または数個の非置換アミノ酸残基によってさらに相互に分離されていてもよい。従って、1個または複数個の置換が、SEQ ID NO:1のPly511の初期配列に挿入され得る。
【0033】
プロテアーゼ切断部位を除去するための好ましい置換は、Y4AおよびT5Pである。4位のアミノ酸のさらなる好ましい置換は、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、およびKである。さらなる好ましい置換は、E7アミノ酸残基の他の任意のアミノ酸残基への置換である。特に好ましいのは、置換E7AおよびE7Qである。N末端における置換とさらなる置換との組み合わせを有するPly511変異体、特に、Ply511-Y4A-E7Q、Ply511-T5P-E7A、Ply511-T5P-E7A-Δ195-262、Ply511-T5P-E7A-K246A、Ply511-Y4A-E7Q-K246A、Ply511-Y4A-E7Q-K246H、およびPly511-Y4A-E7Q-Δ195-262も、好ましい。さらに、R92およびR221のアミノ酸残基の、R以外の任意の全てのアミノ酸残基への置換、特に、置換Ply511-R92K-R221KおよびPly511-R92A-R221Aを有する変異体が、好ましい。
【0034】
本発明に係る好ましいポリペプチドは、表2に例として要約される。
【0035】
【表2】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:検出可能な溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0036】
変異体Ply511-Y4A、Ply511-T5P、Ply511-E7Aの活性は、Wt-Ply511の活性と等しく、Ply511-E7Qはさらに高い活性を示すことが示された。多重変異体Ply511-T5P-E7A-Δ195-262およびPly511-T5P-E7A-K246Aは有利であることが判明したが、表2にリストされたその他の多重変異体は、まだ酵素活性は示すが、Wt-Ply511と比較して低い可溶性を有する。Ply511の最初の10個のアミノ酸残基(MVKYTVENKI)が、アミノ酸残基MASKKTNANK(変異体Ply511-MVKYTVENKI(1-10)MASKKTNANK)またはアミノ酸残基MASGGG(変異体Ply511-MVKYTVENKI(1-10)MASGGG)に交換された場合には、活性のない不溶性タンパク質が発生し、このことからもN末端の重要性が強調される。
【0037】
さらに、12位〜166位のアミノ酸の領域にあるEADの領域における置換、特に、酸性アミノ酸残基および芳香族アミノ酸残基の置換が好ましい。好ましいのは、A、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、およびKより選択される、24位、43位、83位、92位、および99位のアミノ酸の置換である。
【0038】
好ましい置換は表3に要約される。
【0039】
【表3】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0040】
24位、43位、および83位の置換は有利な効果を有するが、40位と、特に89位の置換は、活性に対して負の効果を有することが示された。変異体Ply511-Y43A、Ply511-Y43Sは、活性に関してWt-Ply511と等しく、変異体Ply511-F24IおよびPly511-Y83IはWtよりさらに活性が高い。このことは、これらの置換の組み合わせ、特に、欠失Δ195-262との組み合わせにも当てはまる。変異体Ply511-F24I-Δ195-262は、特に有利であることが判明した。変異体Ply511-F99Aのプロテアーゼ切断部位の除去の後、変異体は活性を維持するが、タンパク質の可溶性はWtと比較して低下する。しかしながら、従って、わずかに低い可溶性が許容される場合には、この変異は、プロテアーゼ安定性を増加させるために適用され得る。酵素活性は、40位および89位の置換によって負の影響を受け、特に、変異体Ply511-E40A、Ply511-E40Q、Ply511-E89A、Ply511-E89Qは、かろうじて活性を示すか、または活性を全く示さない。このことは、単一変異が、Ply511の機能および安定性に対して正の効果を有するような変異の組み合わせ、例えば、Ply511-E40Q-Y43S、Ply511-E40A-Δ195-262、Ply511-E40Q-Δ195-262、およびPly511-E40Q-Y43S-Δ195-262にも当てはまる。
【0041】
さらに、198位〜260位のアミノ酸の領域にあるCBD1における置換、特に、208位、218位、221位、222位、および228位の芳香族アミノ酸残基、塩基性アミノ酸残基、および酸性アミノ酸残基の置換が好ましい。208位、218位、221位、222位、および228位のアミノ酸の好ましい置換は、A、V、I、K、L、およびMである。さらに、222位のDからAへの置換が好ましい。
【0042】
好ましい置換は表4に要約される。
【0043】
【表4】
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
【0044】
218位および228位の置換、特に、変異体Ply511-Y218VおよびPly511-Y228Iは、一定の活性および安定性増加をもたらすが、233位の置換、特に、変異体Ply511-Y233IおよびPly511-Y233Mは、最初に存在していたアミノ酸残基Yと比較して、有意な活性の減少、および大腸菌溶解物中でのさらに高い分解をもたらす。置換D222Aは、発現率、可溶性、および活性に関してWt-Ply511と比較可能であるが、驚くべきことに、変異体Ply511-D222Aの耐熱性は、野生型と比較して有意に増加しており、トリプシン消化物および大腸菌溶解物におけるプロテアーゼ安定性も増加していることが示された。
【0045】
さらに、アミノ酸配列LLSKIKを示す243位〜248位のアミノ酸、およびこの配列のN末端側またはC末端側に隣接するアミノ酸の位置の領域における置換、特に、アミノ酸残基240〜249の領域における置換が好ましい。それにより、単一変異が導入されてもよいし、多重変異が導入されてもよい。
【0046】
好ましい置換は表5に要約される。
【0047】
【表5】
776:リステリア・モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)
996:リステリア・モノサイトゲネス(1/2b)
1095:リステリア・モノサイトゲネス(1/2a)
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
n.p.:実験未実施
-:溶解活性なし
+:Wtより有意に弱い細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++++:Wtより強い細胞溶解
【0048】
一連の置換は、プロテアーゼ安定性を改善し、Wt-Ply511の酵素活性を維持するために適当である。これらは、特に、変異体Ply511-K246A、Ply511-K246H、Ply511-S245A、Ply511-T241A、Ply511-T242A、および二重変異体Ply511-T241S-T242Sである。これらの置換は、他の変異と組み合わせられても正の効果を示す。D222AおよびK246Q-K248Qと組み合わせられた二重変異T241S-T242Sも、わずかに安定化し、正の影響を活性に与える。変異K246Aは、二重変異L243I-L244Iの負の効果を低下させるために適当であって、三重変異体Ply511-L243I-L244I-K246Aの活性は再びWtタンパク質のレベルに達する。変異S245Aは、それ自体、大腸菌粗溶解物中でのPly511の安定性を増加させ、不安定化二重変異K246Q-K248Qに対して正の効果を及ぼすために既に適当である。二重変異体Ply511-D222A-S245Aは、さらに、トリプシン消化物および大腸菌溶解物において、より長いインキュベーション時間で、Wtタンパク質と比較して有意に高いプロテアーゼ安定性を示す。しかしながら、変異体Ply511-S245Aは、耐熱性試験において野生型と比較してわずかに不安定であり、変異D222AおよびS245Aの組み合わせのみが、耐熱性試験において野生型の安定性と比較可能な安定性を有するタンパク質をもたらす。タンパク質の酵素活性および可溶性は、変異体Ply511-K248A、Ply511-K246Q、およびPly511-K248Q、ならびに二重変異体Ply511-K246Q-K248Qによって維持される;しかしながら、プロテアーゼ安定性はこれらの変異によって減少する。
【0049】
この配列領域内の数個の置換は、酵素活性および/またはプロテアーゼ安定性に負の影響も与える。これらは、特に、変異Ply511-I247P、Ply511-G249A、Ply511-N240Q、Ply511-N240A、およびPly511-L243A、ならびに二重変異Ply511-L243I-L244Iである。変異体Ply511-G249Aは、精製の間の減少した耐熱性およびプロテアーゼ安定性を示す;しかしながら、酵素活性は、プレート溶解試験においても液相溶解試験においても野生型と比較してわずかにしか減少しない。さらなる変異との全ての組み合わせにおいても、二重変異Ply511-L243I-L244Iは、プロテアーゼ安定性および酵素活性に負の影響を与える。このことは、変異N240QおよびG249Aとの組み合わせにも当てはまる。
【0050】
さらに、260位〜341位のアミノ酸の領域にあるCBD2における置換が好ましい。さらに、変異体Ply511-Δ195-262における278位のアミノ酸の置換が好ましい。さらなる好ましい置換は、表6に要約される。
【0051】
【表6】
1147:リステリア・イノキュア(6b)
可溶性:+ Wt-Ply511と同等、- Wt-Ply511より低い
+++:Wtと比較可能な細胞溶解
++:Wtよりわずかに弱い細胞溶解
【0052】
変異体Ply511-W278Iの酵素活性は、Wtタンパク質のレベルに維持されている;しかしながら、大腸菌溶解物中でのプロテアーゼ感受性は有意に高い。このことは、この変異の、さらなる変異との組み合わせにも当てはまる。変異Ply511-K267Q-K268M、Ply511-K275A、Ply511-K285Q、Ply511-K289Q(この中でも特に二重変異体Ply511-K267Q-K268M)は、Ply511エンドリシンのプロテアーゼ安定性を増加させるために適しており、同時に、Wtタンパク質のものと比較可能な酵素活性が維持されることが判明した。特に、K267位およびK268位の、R以外の他のアミノ酸残基への変異、特に、変異体Ply511-K267Q-K268Mは、CBD2内のプロテアーゼ感受性領域を安定化するために適していることが判明する。
【0053】
Ply511のプロテアーゼ安定性を増加させる変異は、EAD、CBD1、CBD2、またはCBD1とCBD2の組み合わせのようなエンドリシンPly511の断片の安定性を増加させるためにも適している。EADを構成するアミノ酸領域はSEQ ID NO:1の配列の1〜166であり、CBD1を構成する領域は198〜260であり、CBD2を構成する領域は260〜341である。従って、CBD全体は、アミノ酸残基166以降の領域から構成される。ドメインは、活性を示す限り、N末端またはC末端でさらに短縮されてもよい。EADを構成する領域について、この活性は、リステリア細胞の溶解(プレート溶解試験または液相溶解試験)であるが、CBDのみを構成する領域については、CBDはアミダーゼ活性を示さないため、この活性は、リステリア細胞の溶解ではなく、結合のみである。プロテアーゼ安定性に正の影響を与える、記載されたドメイン境界内に位置する、さらなる上述の変異は、全て、エンドリシンPly511の対応する断片を安定化するためにも適している。
【0054】
タンパク質の調製を容易にするため、N末端もしくはC末端のタグ、または単一アミノ酸残基の化学的修飾のような修飾を付加してもよい。例えば、Hisタグ(Nieba et al., 1997, Anal. Biochem., 252, 217-228)もしくはStrepタグ(Voss & Skerra, 1997, Protein Eng., 10, 975-982)を、より容易な精製のため付加してもよいし、その適用を改良するため、例えば、Strapタグ、Aviタグ(米国特許第5,723,584号;米国特許第5,874,239号)、JSタグ(WO 2008/077397)を付加してもよいし、またはストレプトアビジンもしくはアビジンを示す表面への固定化のため、化学的ビオチン化を付加してもよいし、または可溶性もしくは安定性を増加させるため、例えば、PEG化(PEGylation)を付加してもよい。
【0055】
好ましくは、本発明は、さらに、本発明に係る記載された修飾型ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。本発明は、さらに、本発明に係る核酸分子を含むベクター、および本発明に係るポリペプチドの発現のための適当な宿主細胞に関する。
【0056】
本発明に係る修飾型Ply511エンドリシンは、全て、天然に存在するPly511によっても示される溶解活性を示す。さらに、上述の修飾は、正の効果を引き起こし、エンドリシンの商業的適用に有利な影響を与える。これらの正の効果には、増加したプロテアーゼ安定性、耐熱性、または化学的変性剤に対する安定性が含まれ得る。安定化は、さらに、より高い発現率、可溶性、またはより長い貯蔵寿命をもたらし得る。正の効果は、さらに、増加した活性であってもよい。
【0057】
増加したプロテアーゼ安定性は、タンパク質の組換え調製のために既に重要である。調製によって既に開始するプロテアーゼ分解のため、より多量のPly511を調製することは、極めて困難である。より多量のプロテアーゼ阻害剤の添加は高コストであり、エンドリシン調製物中に多くの添加物質を含むであろう。さらに、高度のクロマトグラフィ技術によって、分解されたタンパク質を全長タンパク質から分離し得るかもしれない;しかしながら、発生する分解断片の一部は、全長タンパク質よりわずか数キロダルトン小さいに過ぎず、分解断片は、精製に関して、ネイティブタンパク質に類似した特色を示すため、これは困難であろう。増加したプロテアーゼ安定性は、単離されたPly511の保管に関して、さらに重要である。多くのプロテアーゼを含有している食物におけるPly511の使用に関しても、プロテアーゼ安定性が望まれる。改善されたプロテアーゼ安定性は、添加された本発明に係る修飾型Ply511が有効である持続時間を増加させる。
【0058】
増加した耐熱性も有利である。食物技術において、例えば、チーズまたはヨーグルトの生産においては、しばしば、高温が使用される。この場合にも、適切な温度で活性を保持しているのであれば、リステリアの抗微生物溶解のために、Ply511エンドリシンを適用することができる。増加した耐熱性は、本発明に係るポリペプチドの組換え調製においても有利であることが判明する。可溶化するのが困難であるかまたは不安定なタンパク質は、発現産物が可溶性であるよう、低温(例えば、25℃または30℃)で発現させなければならないことが多い。しかし、より高温(例えば、37℃)での発現は経済的利点を提供する。なぜなら、これらの温度では、タンパク質産生がより高速であって、より高い細胞密度が達成され得るため、より多くのタンパク質が産生され得るためである。
【0059】
増加した耐熱性、プロテアーゼ安定性を示し、または化学的変性剤に対しても増加した安定性を示すタンパク質は、一般に、より長期間の貯蔵に対しても安定している。これは、より多い量が保管され得るため、製造業者にとっても適用者にとっても費用対効果が高いことが判明する。
【0060】
タンパク質の良好な可溶性は、効率的で費用対効果の高い方式でエンドリシンを調製するために重要である。不溶性タンパク質は、一般に、変性しており、もはやネイティブのコンフォメーションを保有しておらず、従って、完全な活性を保有していない。発現産物が不溶性である場合には、ネイティブのコンフォメーションおよび活性を再入手するために、再折り畳みを試みることができる。しかしながら、これは、技術的に高度であり、高コストであり、ネイティブタンパク質の収率に関して非効率的であるため、好ましくは、良好な可溶性を有するタンパク質が発現される。
【0061】
より高い活性は、適用しなければならない酵素がより少なくなるため、経済的に有利である。
【0062】
本発明は、さらに、本発明に係るタンパク質の、ヒト用、動物用、および診断用の物質としての使用、食物もしくは化粧品における抗微生物物質としての使用、または消毒剤としての使用に関する。
【0063】
本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドを含む医薬に関する。本発明は、さらに、本発明に係るポリペプチドを含む薬学的組成物に関する。本発明に係る薬学的組成物は、好ましくは、薬学的に許容される緩衝剤、薬学的な許容される希釈剤、または薬学的に許容される担体物質を含んでいてもよい。本発明に関する薬学的組成物は、さらに、適切な安定剤、香料添加剤、またはその他の適切な試薬を含有していてもよい。
【0064】
本発明のもう一つの局面は、リステリアによって引き起こされる疾患の治療もしくは防止のための、またはリステリア汚染の診断のための、ヒト用、動物用の医療用または診断用の物質として使用するための、本発明に係るポリペプチドに関する。
【0065】
リステリアによって引き起こされる疾患には、とりわけ、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症、スメア感染によって引き起こされる局所創傷感染、ならびに結膜および角膜の炎症が含まれる。
【0066】
本発明のもう一つの局面は、感染、特に、リステリアによって引き起こされる感染の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。このリステリア感染は、特に、L.モノサイトゲネス、好ましくは、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス、特に、L.モノサイトゲネス1442 SV1/2a、L.モノサイトゲネス1042 SV 4b、L.モノサイトゲネス1019 SV 4c、および/またはL.モノサイトゲネス1001 SV 1/2 cによる感染であり得る。この感染は、さらに、L.イノキュア、好ましくは、血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア、特に、L.イノキュア2011 SV 6aによって引き起こされるリステリア感染であってもよい。患者は、ヒト患者であってもよいし、または動物、好ましくは、反芻動物(例えば、ウシ、雌ウシ、ヒツジ、およびヤギ)、ブタ、ウマ、家禽、捕獲野鳥、ウサギ、もしくは捕食動物のような、家畜飼育もしくは酪農業において使用される動物であってもよい。好ましくは、本発明のポリペプチドは、感染の位置で、または感染に対して予防的に処置される位置で、適切な量で使用される。
【0067】
もう一つの好ましい態様は、胃腸炎、特に、リステリアによって引き起こされる胃腸炎の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0068】
もう一つの好ましい態様は、リステリア症、髄膜炎、脳炎、敗血症、ならびにスメア感染によって引き起こされる創傷感染ならびに結膜および角膜の炎症、特に、リステリアによって引き起こされるものの処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0069】
もう一つの好ましい態様は、出生前管理における上述の疾患の処置および/または予防のための方法における、本発明に係るポリペプチドの使用である。
【0070】
特に好ましい態様は、処置または防止される感染が、耐性リステリア株によって引き起こされる場合の、医学的処置のための本発明に係るポリペプチドの使用である。本発明のポリペプチドは、さらに、抗生物質、例えば、エンドリシン等のような他の酵素のような従来の抗菌活性成分と組み合わせて投与することにより、感染の処置のための方法において使用されてもよい。
【0071】
上述の疾患の処置および/または予防のための方法において使用される投薬量および投与モードは、特定の疾患にも、処置すべき感染の位置にも依る。投与のモードは、本発明の特定の態様において、例えば、経口、局所、非経口、静脈内、直腸、またはその他の任意の投与モードであり得る。感染の位置(または感染のリスクを有する位置)への本発明に係るポリペプチドの適用のため、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが、プロテアーゼのような環境的影響、酸化、または免疫応答等から防御されるよう製剤化され得る。
【0072】
従って、本発明のポリペプチドは、カプセル、被包錠、錠剤、坐剤、注射可能溶液、またはその他の任意の医療用の適切なガレノス製剤(galenic formulation)に存在し得る。本発明のいくつかの態様において、このガレノス製剤は、付加的に、適当な担体、安定剤、香料添加剤、緩衝剤、またはその他の適当な試薬を含有していてもよい。
【0073】
本発明のポリペプチドは、例えば、ローションまたは絆創膏(band-aid)として、局所適用のため投与されてもよい。
【0074】
坐剤製剤を、腸の処置のために使用してもよい。または、経口投与を考慮に入れることもできる。この場合、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが感染の位置に到達するまで、消化器系の環境的影響から防御されなければならない。これは、例えば、胃内消化という初期工程を生き延び、その後、腸の環境において本発明のポリペプチドを放出する細菌を担体として使用することによって、達成され得る。
【0075】
本発明のポリペプチドが、リステリア菌に到達した後、特異的かつ迅速にそれらを溶解する効果に、全ての医学的適用が基づく。これは、病原菌および細菌負荷量を低下させ、同時に免疫系を支持することによって、処置された患者の健康に直ちに影響を及ぼす。この目的のため、この適用のための従来の薬物と同様のガレノス製剤が使用されてもよい。
【0076】
もう一つの局面において、本発明のポリペプチドは、化粧用組成物の一部である。本発明に係る化粧用組成物は、例えば、リステリア菌による皮膚感染によって引き起こされる刺激を阻害するかまたは防止するために使用され得る。本発明に係る化粧用組成物は、好ましくは、既存のリステリア菌および/または最近定着したリステリア菌を溶解するために十分な量の本発明に係るポリペプチドを含有している。
【0077】
本発明のもう一つの局面は、例えば、乳製品、薫製魚、塩漬け魚、凍結魚介類、肉製品、サラダ、およびRTE製品(特に、肉製品および生RTE製品)のような食物における抗微生物物質としての、本発明に係るポリペプチドおよび/または宿主細胞の使用に関する。
【0078】
本発明のもう一つの局面は、食物加工装置、食物加工施設、貯蔵所、コンテナ、または食物の貯蔵もしくは加工のために使用される装置のような食物に曝される表面、および食物がリステリア菌により汚染される可能性のある全てのその他の情況における、抗微生物物質としての、本発明に係るポリペプチドの使用に関する。これに関して、本発明に係るポリペプチドは、単独で使用されてもよいし、または消毒剤、抗生物質、もしくは、例えば、他のエンドリシンのような酵素のような他の抗微生物物質と組み合わせて使用されてもよい。
【0079】
本発明に係るポリペプチドは、多数の技術によって、例えば、本発明に係るポリペプチドを食品中に混合することによって、本発明に係るポリペプチドを施設装置へ噴霧することによって、かつ/または本発明に係るポリペプチドを施設装置に直接適用することによって、食品および/または食物加工施設内の種々の技術的な位置に適用され得る。
【0080】
本発明のもう一つの局面は、薬物、食物産業および食物分析、家畜飼育、飲料水の分析、または環境分析におけるリステリア汚染の診断および検出における、本発明に係るポリペプチドの使用に関する。
【0081】
種々の試料、例えば、液状溶液および水と有機溶媒との混合物、食物、媒体、血液、血液製剤、血漿、血清、尿、大便試料、タンパク質溶液、水とエタノールとの混合物、ならびに分析または単離すべき非液状固形物質、例えば、タンパク質、DNA、RNA、糖、塩、食物、食物媒体ホモジネート(food-media-homogenates)、医薬、ワクチン、有機および無機の化学薬品、例えば、NaCl、MgCl2、プリン、およびピリミジンを含有している溶液において、本発明に係るポリペプチドの補助により、リステリア汚染を検出することができる。
【0082】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、限定的なものと理解されるべきではない。特記しない限り、Sambrook et al., 1989, Molecular cloning: A Laboratory Manual 2. Auflage, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkによって記載されたような分子生物学の標準的な方法を使用した。
【実施例】
【0083】
実施例1 発現および可溶性の試験
Ply511エンドリシンのためのプラスミドを含有している分析予定の大腸菌クローンを、濁りが可視になるまで、30℃で1ml LB培養物中で振とうしながらインキュベートした。陰性対照を除く培養物を、1mM IPTGにより誘導した。30℃における3〜4時間のインキュベーションの後、細胞を卓上遠心機で採集した(4℃で10分間、13,000rpm)。発現試験のため、ペレットを100μl 1×SDS試料緩衝液中で煮沸し(95℃で5分)、SDSゲル上で分析した。可溶性試験のため、ペレットを細胞溶解緩衝液(25mMトリス、250mM NaCl、pH 7.5)に再懸濁させ、超音波処理によって溶解した(20s)。遠心分離(4℃で10分間、13,000rpm)による不溶性タンパク質の沈降の後、試料緩衝液を上清(可溶性タンパク質画分)およびペレット(不溶性タンパク質画分)の一定分量へ添加し、続いて、煮沸(95℃で5分間)を行った。いずれの場合にも、試料をSDSゲル電気泳動によって分析し、続いて、ゲルのクーマシー染色を行った。
【0084】
実施例2 修飾されたエンドリシンPly511および天然に存在するPly511の精製
Ply511タンパク質を、誘導された大腸菌培養物(30℃、1mM IPTG)の細胞から精製した。細胞ペレットを、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)により、負荷緩衝液A1(25mMトリス、250mM NaCl、1mM MgCl2、pH 8.0)中で溶解した。遠心分離の後、上清を、流線型直接HSTカラム(陽イオン交換、GE healthcare)で予備精製した。従って、10カラム容量の緩衝液A1および10カラム容量の緩衝液A2(25mMホウ酸、250mM NaCl、pH 9.0)を洗浄のために使用し、続いて、緩衝液B1(25mMホウ酸、500mM NaCl、pH 10.0)を溶出のために使用した。フェニルセファロースHPを、二次精製工程のために使用した。試料を、緩衝液B4(25mMホウ酸Na、1.1M硫酸アンモニウム、pH 8.0)で負荷し、緩衝液A5(25mMホウ酸Na、pH 8.0)により溶出させた(Ply511誘導体は、素通り画分に存在する)。続いて、4℃で40mMトリス、100mM NaCl、pH 8.0に対する透析によって塩を除去し、およそ18時間以内に2回、緩衝液を交換した。
【0085】
実施例3 Ply511の貯蔵後の分解バンドの分析
精製されたPly511を、貯蔵緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、pH 8.0)中で、4℃で、2日間インキュベートし、続いて、最近精製されたPly511と比較しながら、SDSゲル上で分析した。貯蔵の間、およそ26キロダルトンのバンドが顕著に分解され、いくつかのより小さい分解バンドが発生し、従って、タンパク質がプロテアーゼによって分解されたこと、そしてタンパク質がより長い期間の貯蔵において安定していないことが示された。プロテアーゼ分解を受けたタンパク質調製物は、全長タンパク質より低い活性を示す。
【0086】
実施例4 Ply511配列内のプロテアーゼ感受性領域の同定
エンドリシンPly511のどの領域が例外的にプロテアーゼ感受性であるかを決定するため、異なる市販のプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、スブチリシン、スタフィロコッカスペプチダーゼI、プロテイナーゼK、サーモリシン)によるプロテアーゼ消化実験を実施した。Ply511を、それぞれ、製造業者によって記載された異なる緩衝液の中で、異なる期間(数分〜数時間)、室温または37℃で、プロテアーゼと共にインキュベートした。発生したプロテアーゼ断片をSDSゲル上で分離した。得られたタンパク質バンドを、PVDF(フッ化ポリビニリデン)膜にブロットし、よく識別可能なバンドを切り出し、N末端配列決定した。市販のプロテアーゼに加え、大腸菌溶解物の発生した断片も配列決定した。類似したサイズを有する断片が高頻度に発生したこと、全ての断片を配列決定したわけではなかったこと、そして異なる特異性を有するさらなるプロテアーゼも存在することから、言及されたアミノ酸の位置の他に、近傍のアミノ酸も、プロテアーゼ感受性領域内に位置していると想定しなければならない。
【0087】
実施例5 活性分析のためのプレート溶解試験
溶解プレートの調製のため、L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b、株番号776)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2b、株番号996、もしくは血清型1/2a、株番号1095)、またはリステリア・イノキュア(血清型6b、株番号1147)、またはさらなるリステリア株の熱不活化された細胞(80℃で20分間)を、密な濁った細胞層が発生するよう、LB-TopAgarに添加する。形質転換された大腸菌クローンの溶解活性を試験すべき場合には、LB-TopAgarは、IPTGおよびアンピシリンを含有していた。続いて、溶解活性を試験するため、修飾型Ply511バリアントのためのプラスミドにより形質転換された大腸菌クローン、誘導された大腸菌クローンの細胞溶解物、または精製されたタンパク質溶液のいずれかを、プレートへ播種し(dapped)(およそ5μl溶液、大腸菌の単一コロニーの接種用ループ)、続いて、30℃で一夜のインキュベーションを行った。Ply511エンドリシンが溶解活性を示すのであれば、タンパク質がプレートへ播種された部位に溶解区域が出現し、密な細菌細胞層における孔として溶解区域が可視になるであろう。溶解区域のサイズは、タンパク質の活性に相当する。活性は、Wtタンパク質の活性と比べて記載される。示された表の活性データは、全て、プレート溶解試験の補助により決定され、記号(+++、++、+、+/-)は、Wt Ply511と比較された溶解区域のサイズに従って決定された。
【0088】
実施例6 活性分析のための液相溶解試験
液相溶解アプローチでは、細菌培養物(L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2bもしくは1/2a)、またはL.イノキュア(血清型6b)、またはさらなるリステリア株)からの熱不活化された細胞(80℃で20分)1mlを、1.0+/-0.1のOD600にまでインキュベートした。細菌培養物を、PBST(20mMリン酸ナトリウム、120mM塩化ナトリウム、0.5%トゥイーン、pH 8.0)に導入し、キュベットに負荷した。エンドリシン(0.1μg/ml〜10μg/mlのタンパク質濃度)の添加後、30℃において、OD600の減少を、時間の関数として測定した。エンドリシンの添加なしのそれぞれの細胞懸濁物を、対照とした。タンパク質量(μmol)(ΔAμmol/分)の関数としての毎分の600nmにおける吸光度の減少(ΔA/分)として、活性を計算した。修飾型エンドリシンの活性を、それぞれ、Wt-Ply511と比較して測定した。リステリア996株(血清型1/2b)を用いた、Wt-Ply511およびPly511-K246Q-K248Qを用いた比較溶解試験においては、0.1μg、0.3μg、または0.7μgのエンドリシンをそれぞれ添加した。タンパク質量が増加するにつれ、リステリアの溶解はより高速になったが、Wt-Ply511および変異体Ply511-K246Q-K248Qは、三つ全てのタンパク質濃度でおよそ同一の溶解活性を示した。さらなる液相溶解試験においては、リステリア776株(血清型4b)と比較して、Wt-Ply511と変異体との間の比較溶解データを決定した。Wt-Ply511および変異体Ply511-G249A(10μg/ml)も、極めて類似した溶解活性を示したが、変異体Ply511-Δ195-262はWt-Ply511と比較してさらに高速の溶解を示した(濃度0.3μg/ml)。
【0089】
実施例7 プロテアーゼ安定性を試験するための大腸菌溶解物におけるプロテアーゼ消化
誘導された大腸菌の培養物1mlを、30℃で3〜4時間のインキュベーションの後、採集した(13,000rpm、10分間、4℃)。続いて、ペレットを細胞溶解緩衝液(25mMトリス、250mM NaCl、pH 7.5)に再懸濁させ、超音波処理(20s)によって溶解した。遠心分離(13,000rpm、10分間、4℃)を介して不溶性成分および未溶解細胞を沈降させた後、細胞溶解物の上清を、室温または37℃でインキュベートした。インキュベーション時間の開始時(t=0)に試料を採取し、次いで、室温では24h毎(t=1日、2日、または3日)に採取し、37℃でインキュベートされた試料は、24時間以内(例えば、t=1h、16h、21h)に採取した。SDS試料緩衝液中で煮沸(5分間、95℃)した後、試料をSDSゲル上で分析した。Wt-Ply511は、25℃で、大腸菌内因性プロテアーゼによる有意なタンパク質分解を示し、2日後、もはや全長タンパク質はほぼ全く存在しなかったが、変異体Ply511-D222AおよびPly511-Δ195-262は、有意に遅延した分解を示し、2日間のインキュベーションの後、全長タンパク質が未だ存在し、より小さい分子量を有する第二の分解バンドはその時間内に全く出現しなかった。しかしながら、二重変異体Ply511-L243I-L244Iは、有意に不安定化されており、25℃での2日間のインキュベーションの後、既に、より小さい分解バンドの分子量(より小さい25kDaの分子量)を有するタンパク質しか存在しなかった。大腸菌におけるもう一つのプロテアーゼ消化を、25℃で最長3日間インキュベートした。Wtタンパク質は、全長タンパク質のバンド(バンド1)のますますの減少を示し、分解バンド(バンド2)が増加を示したが、変異体Ply511-S245Aは、有意に多い量の全長タンパク質が未だ存在していることを示した。しかしながら、二重変異K246Q-K248Qは、タンパク質を不安定化し、3日後、もはや全長タンパク質は基本的に全く存在せず、より小さい分子量を有する分解バンド(バンド3)が出現する。二重変異体K246Q-K248Qと組み合わせられた変異S245Aは、再び、安定化効果を有し、三重変異体Ply511-S235A-K246Q-K248Qでは、全長タンパク質が実験の最後まで存在し、同時に、分解バンド3が占める程度がより少なかった。およそ28〜30kDaのサイズを有する分解断片をもたらす、トリプシン感受性切断部位が、CBD2内に存在することが示された。種々の変異の導入によって、これらのプロテアーゼ切断部位を見出し安定化することを試みた。Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-K275A、Ply511-K267Q-K268M、およびPly511-K285Q-K289Qを、1時間、16時間、または21時間、37℃で、大腸菌溶解物中でインキュベートした。それらは、全て、少なくともWt-Ply511に等しいプロテアーゼ安定性を示した。しかしながら、変異体Ply511-K267Q-K268Mには、およそ28〜30kDaの分解中間体が存在しなかったため、この変異体においては、可能性のあるトリプシン切断部位と共に、普遍的なプロテアーゼ切断部位も除去されたことが示された。
【0090】
実施例8 プロテアーゼ安定性を試験するためのトリプシン消化
Wt-Ply511(SEQ ID NO:1)ならびに試験された変異体(Ply511-T241S-T242S、Ply511-S245A、およびPly511-D222A-S245A)を、実施例2に記載されたようにして精製した。それらを、25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0に対して全部でおよそ18時間、2回、透析した後、プロテアーゼ消化を行った。透析緩衝液を、トリプシン消化のためにも使用した。エンドリシン30μgを、150μlの試料容量に導入した。トリプシンストック溶液(25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0中1mg/ml)2.5μlを、消化工程へ導入し、室温で、1分間、2分間、5分間、13分間、25分間、および35分間、消化した。それぞれの試料を言及された時点で採取し、試料緩衝液を添加し、続いて、全ての試料を12%SDSゲル上で分析した。トリプシンと共にインキュベートされていない試料を対照とした。二重変異体Ply511-T241S-T242Sは、Wtタンパク質と類似した動力学で分解されるが、変異体Ply511-S245AおよびPly511-D222A-S245Aの両方(特に、Ply511-D222A-S245A)は、プロテアーゼ分解に対して安定化されている。分解の動力学が有意に遅い。それぞれ、およそ29kDaおよび26kDaの分子量を有する2本の明確な分解バンドが、主として発生する。直接のトリプシン切断部位に相当するアミノ酸(リジンおよびアルギニン)は交換されていないが、記載された変異体のトリプシンに対するプロテアーゼ安定性が増加したことは注目すべきである。それは、記載された変異が、ある種の連続的に決定されたプロテアーゼのある種の切断部位が除去されたという意味でだけでなく、プロテアーゼ一般に対して、タンパク質を安定化したことを意味する。
【0091】
実施例9 プロテアーゼ安定性を試験するためのキモトリプシン消化
Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-D222A-S245AおよびPly511-K246Q-K248Qを、実施例2に記載されたようにして精製した。それらを、25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0に対して、全部でおよそ18時間、2回、透析した後、プロテアーゼ消化を行った。透析緩衝液を、キモトリプシンによる消化のためにも使用した。24μgのPly511を、室温で、150μlの試料容量で、1分間、2分間、または5分間、3μgのキモトリプシンと共にインキュベートし、言及された時点でSDS試料緩衝液に添加し、続いて、12%SDSゲル上で分析した。キモトリプシンと共にインキュベートされていない試料を対照とした。二重変異体Ply511-K246Q-K248Qは、Wtタンパク質よりわずかに速く分解されたが、変異体Ply511-D222A-S245Aは、プロテアーゼ分解に対して有意に安定化されている。
【0092】
実施例10 タンパク質凝集に関する耐熱性試験
耐熱性試験のため、それぞれのタンパク質100μgを、25mMリン酸Na、100mM NaCl、ph 8.0に導入し、撹拌可能な石英キュベット(容量1ml)に負荷した。20〜90℃(加熱速度1℃/分)での加熱の間の光学密度(タンパク質の凝集による光拡散)の増加を、360nmの波長で光度計で測定した。例示された実験において、Wt-Ply511、ならびに変異体Ply511-G249A、Ply511-S245A、Ply511-D222A-S245A、およびPly511-D222Aを、光度計で加熱し、タンパク質凝集の増加を、温度の関数として測定した。Wt-Ply511はおよそ65℃で凝集するが、変異体Ply511-G249AおよびPly511-S245Aにおいては、不安定化するG249AおよびS245Aのため、60℃で既に凝集が起こることが示された。対照的に、変異体Ply511-D222Aは、有意に耐熱性が高く、およそ75℃まで凝集しない。変異D222AおよびS245Aが組み合わせられた場合、二重変異体Ply511-D222A-S245Aは、Wtと比較してわずかに増加した耐熱性を示し、単一変異の効果が多少相加的に作用している。
【0093】
実施例11 タンパク質活性に関する耐熱性試験
より高い耐熱性がタンパク質活性に影響を与える可能性を試験するため、種々のPly511バリアント(タンパク質濃度0.3mg/ml)を、緩衝液(40mMトリス、100mM NaCl、pH 8.0)中で、増加した温度で、20分間、各々インキュベートし、続いて、残存活性を液相溶解試験(実施例6参照)で決定した。それにより、活性は、溶解曲線の初期において、毎分の600nmにおける吸光度の減少(ΔA/分)に相関する。Wt-Ply511および変異体Ply511-G249A(各々、濃度3μg/ml)を、50℃でPBSTで20分間インキュベートし、対照は4℃で保管した。その期間の後、残存活性を、室温で液相溶解試験で測定した。Wt-Ply511は、その活性の98%をこれらの条件の下で維持するが、変異体Ply511-G249Aは15%の残存活性しか示さないことが示された。
【0094】
実施例12 化学的変性剤に対する安定性
ネイティブの型のタンパク質は、特徴的な蛍光発光スペクトルを示す。塩化グアニジウム(GdmCl)または尿素のような化学的変性剤における変性の間、発光極大の位置および蛍光シグナルの強度が変化する。タンパク質の安定性に関する情報を得るため、ネイティブタンパク質と変性タンパク質との間のシグナルの変化が最大となるような波長で、変性剤の添加の関数として、タンパク質蛍光を測定する。タンパク質の変性遷移期の中央点がより高い場合(変性剤濃度(M))、そのタンパク質はより安定している。修飾型Ply511エンドリシンの安定性を、それぞれ、Wtタンパク質の安定性と比較する。GdmClストック溶液を、0.5M毎に0〜8Mで水で調製し、続いて、屈折計で変性剤の濃度を制御する。タンパク質ストック溶液を、4倍濃縮PBS緩衝液(PBS:20mMリン酸ナトリウム、120mM塩化ナトリウム、pH 8.0)で100μg/mlで調製する。GdmClストック溶液およびPBS緩衝液を無菌ろ過する。タンパク質ストック溶液0.75mlにつき、2.25mlの異なるGdmClストック溶液と混合し、試料を25℃でインキュベートする。蛍光の測定のため、それぞれの試料から0.75mlを採取し、続いて、蛍光シグナルを測定する。それにより、タンパク質が添加されていない対応するGdmCl濃度を有する緩衝液についてのブランク値を、各測定点から差し引く。タンパク質変性のための定常状態が既に準備されているか否かを制御するため、その測定をおよそ7日後に繰り返し、必要であれば、その後、再び繰り返す。続いて、変性の中央点の決定のため、補正された蛍光値を、変性剤の濃度に対してブロットする。
【0095】
実施例13 Ply511の非酵素活性バリアント、特に、CBD含有断片に関する細胞結合試験
Ply511-CBD断片を、hisタグまたはstrepタグのようなN末端またはC末端のタグと融合させ、大腸菌において異種発現させる。結合したCBDの蛍光検出のため、タグとPly511-CBD配列との間にGFPマーカーを融合させることができる。製造業者のプロトコルに従い、アフィニティクロマトグラフィを介して、タグの補助によりタンパク質を精製する。L.モノサイトゲネス・スコットA(血清型4b)、L.モノサイトゲネス(血清型1/2bもしくは1/2a)、またはリステリア・イノキュア(血清型6b)、またはさらなるリステリア株の予備培養物50μlを、およそ2μgの精製されたタンパク質と混合し、室温で10分間インキュベートする。1mlのPBST(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05%トゥイーン20、pH 8.0)の添加の後、細胞を遠心分離し、0.5mlで2回洗浄し、50mlのPBSTに再懸濁させる。リステリア細胞へのPly511-CBDの結合を、蛍光顕微鏡下で制御する。Strepタグを有するPly511-CBD融合体については、ストレプトアビジンまたはアビジンによりコーティングされた磁気ビーズを使用することが可能である。この場合、細菌に結合したStrepタグ-Ply511-CBDを、適切な磁気ビーズと共にインキュベートする。続いて、リステリア細胞とPly511-CBDとの複合体を、磁気分離器の補助により試料から分離する。次いで、従来の方法(例えば、PCR、微生物検出技術)により、リステリアの検出を実施する。
【0096】
実施例14:リステリアエンドリシン内のクロストリパイン切断部位の同定
クロストリパインの可能性のある切断部位は、エンドリシンに多量に存在することが多い。全ての可能性のある切断部位の置換は、エンドリシンの活性に負の影響を及ぼす可能性があるため、プロテアーゼにとってアクセス可能な切断部位を決定し、これらのみを修飾することが有用であるかもしれない。リステリアエンドリシンPly511は、クロストリパインの可能性のある切断部位を、6個、含有している。クロストリパインによるPly511の消化を、エンドリシンのクロストリパイン感受性領域を決定するために実施した。Ply511(0.1mg/ml)を、以下の組成を有する60μlの試料容量で、それぞれ、3時間および一夜、5単位(製造業者Sigmaによる単位の定義)のクロストリパインにより、室温で消化した:25mMリン酸ナトリウム、1mM酢酸カルシウム、2.5mM DTT、pH 7.6。発生したタンパク質断片を、SDSゲル電気泳動によって分離した(勾配ゲル10〜20%アクリルアミド)。3本のバンドが発生し(分子量およそ25kDa、およそ14kDa、およそ10kDa)、それらをPVDF膜にブロットし、続いて、切り出し、N末端エドマン分解を介して配列決定した。
【0097】
断片について、以下のN末端配列が出現した:
1. (M)VKYTVENK;N末端メチオニンは部分的に解離していた。
2. DKLAK
3. TSNATTF
この結果は、6個の可能性のあるクロストリパイン切断部位(R46、R62、R92、R221、R312、R326)のうちの2個、すなわち、R92、R221が、プロテアーゼによって認識されたことを示す。本発明により安定化されたPly511のバリアントは、これらの位置におけるRの他のアミノ酸残基への交換、特に、R62KまたはR62AおよびR221KまたはR221Aを保有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リステリアを溶解する生物学的活性を有するポリペプチドであって、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と比較して変化したアミノ酸配列を少なくとも一つのアミノ酸の位置に有する、ポリペプチド。
【請求項2】
変化したアミノ酸配列が、欠失、付加、および/または置換である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
変化したアミノ酸配列が、直接連続するアミノ酸の位置に存在するか、または1個もしくは複数個の不変アミノ酸残基によって分離されたアミノ酸の位置に存在する、請求項1または2いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位のアミノ酸の領域に欠失を有する、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位、195位〜255位、195位〜262位、238位〜341位、241位〜341位、267位〜341位、および270位〜341位のアミノ酸の欠失を有する、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
4位、5位、7位、24位、43位、46位、83位、92位、99位、208位、218位、221位、222位、228位、246位、249位、267位、268位、275位、278位、285位、もしくは289位のアミノ酸、または12位〜166位、198位〜260位、240位〜249位、260位〜341位のアミノ酸の領域に1個または複数個の置換を有する、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
4位、24位、43位、83位、92位、および99位のアミノ酸の置換がA、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、またはKであり、249位のアミノ酸の置換がAであり、208位、218位、221位、および228位のアミノ酸の置換がA、V、I、K、L、またはMである、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項8】
4位のアミノ酸の置換がAであり、5位のアミノ酸の置換がPであり、7位のアミノ酸の置換がAまたはQであり、24位のアミノ酸の置換がIであり、43位のアミノ酸の置換がAまたはSであり、83位のアミノ酸の置換がIであり、92位のアミノ酸の置換がAまたはKであり、99位のアミノ酸の置換がAであり、221位のアミノ酸の置換がAまたはKであり、222位のアミノ酸の置換がAであり、246位のアミノ酸の置換がAまたはHであり、245位のアミノ酸の置換がAであり、241位のアミノ酸の置換がAであり、242位のアミノ酸の置換がAであり、248位のアミノ酸の置換がAまたはQであり、246位のアミノ酸の置換がQであり、275位のアミノ酸の置換がAであり、278位のアミノ酸の置換がIであり、285位のアミノ酸の置換がQであり、289位のアミノ酸の置換がQであり、267位および268位のアミノ酸の置換がRでない、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項9】
Y4AおよびE7Q、またはT5PおよびE7A、またはT5P、E7A、およびK246A、またはY4A、E7Q、およびK246A、またはY4A、E7Q、およびK246H、またはD222AおよびS245A、またはT241SおよびT242S、またはT241S、T242S、およびD222A、またはT241S、T242S、K246Q、およびK248Q、またはL243I、L244I、およびK246A、またはS245A、K246Q、およびK248Q、またはK246QおよびK248Q、またはK267QおよびK268M、またはK46AおよびW278I、またはR92AおよびR221A、またはR92KおよびR221Kのアミノ酸の置換を示す、請求項6〜8いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
T5P、E7A、およびΔ195-262、またはY4A、E7Q、およびΔ195-262、またはF24IおよびΔ195-262、またはW278IおよびΔ195-262のアミノ酸の欠失および置換を示す、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項12】
請求項11記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項13】
請求項11記載の核酸分子または請求項12記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
ヒト用、動物用の医療用もしくは診断用の物質として、食物もしくは化粧品における抗微生物物質として、消毒剤として、または環境領域において使用するための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
食物が、乳製品、薫製魚、塩漬け魚、凍結魚介類、肉製品、サラダ、またはRTE(ready-to-eat)製品である、請求項14記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項16】
リステリアによって引き起こされる疾患の治療および/もしくは防止において、またはリステリア汚染の診断のため、ヒト用、動物用の医療用または診断用の物質として使用するための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項17】
リステリアによって引き起こされる疾患が、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症;スメア感染によって引き起こされる局所創傷感染、ならびに結膜炎および角膜炎を含む、請求項16記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項18】
妊娠管理における請求項16または17いずれか一項記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項19】
薬物、食物産業および食物分析、家畜飼育、飲料水、または環境分析におけるリステリア汚染の検出のための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項20】
食物もしくは化粧品における抗微生物物質としての、消毒剤としての、または環境領域における、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項21】
食物加工装置、食物加工施設、食物に曝される表面、および食物の保管または加工のために使用される施設における抗微生物物質としての、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項22】
抗微生物物質が、他の消毒剤、抗生物質、および/または酵素と組み合わせて使用される、請求項21記載の使用。
【請求項1】
リステリアを溶解する生物学的活性を有するポリペプチドであって、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と比較して変化したアミノ酸配列を少なくとも一つのアミノ酸の位置に有する、ポリペプチド。
【請求項2】
変化したアミノ酸配列が、欠失、付加、および/または置換である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
変化したアミノ酸配列が、直接連続するアミノ酸の位置に存在するか、または1個もしくは複数個の不変アミノ酸残基によって分離されたアミノ酸の位置に存在する、請求項1または2いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位のアミノ酸の領域に欠失を有する、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の186位〜341位、195位〜255位、195位〜262位、238位〜341位、241位〜341位、267位〜341位、および270位〜341位のアミノ酸の欠失を有する、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
4位、5位、7位、24位、43位、46位、83位、92位、99位、208位、218位、221位、222位、228位、246位、249位、267位、268位、275位、278位、285位、もしくは289位のアミノ酸、または12位〜166位、198位〜260位、240位〜249位、260位〜341位のアミノ酸の領域に1個または複数個の置換を有する、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
4位、24位、43位、83位、92位、および99位のアミノ酸の置換がA、G、T、S、C、I、V、E、Q、D、N、R、またはKであり、249位のアミノ酸の置換がAであり、208位、218位、221位、および228位のアミノ酸の置換がA、V、I、K、L、またはMである、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項8】
4位のアミノ酸の置換がAであり、5位のアミノ酸の置換がPであり、7位のアミノ酸の置換がAまたはQであり、24位のアミノ酸の置換がIであり、43位のアミノ酸の置換がAまたはSであり、83位のアミノ酸の置換がIであり、92位のアミノ酸の置換がAまたはKであり、99位のアミノ酸の置換がAであり、221位のアミノ酸の置換がAまたはKであり、222位のアミノ酸の置換がAであり、246位のアミノ酸の置換がAまたはHであり、245位のアミノ酸の置換がAであり、241位のアミノ酸の置換がAであり、242位のアミノ酸の置換がAであり、248位のアミノ酸の置換がAまたはQであり、246位のアミノ酸の置換がQであり、275位のアミノ酸の置換がAであり、278位のアミノ酸の置換がIであり、285位のアミノ酸の置換がQであり、289位のアミノ酸の置換がQであり、267位および268位のアミノ酸の置換がRでない、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項9】
Y4AおよびE7Q、またはT5PおよびE7A、またはT5P、E7A、およびK246A、またはY4A、E7Q、およびK246A、またはY4A、E7Q、およびK246H、またはD222AおよびS245A、またはT241SおよびT242S、またはT241S、T242S、およびD222A、またはT241S、T242S、K246Q、およびK248Q、またはL243I、L244I、およびK246A、またはS245A、K246Q、およびK248Q、またはK246QおよびK248Q、またはK267QおよびK268M、またはK46AおよびW278I、またはR92AおよびR221A、またはR92KおよびR221Kのアミノ酸の置換を示す、請求項6〜8いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
T5P、E7A、およびΔ195-262、またはY4A、E7Q、およびΔ195-262、またはF24IおよびΔ195-262、またはW278IおよびΔ195-262のアミノ酸の欠失および置換を示す、請求項1〜3いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項12】
請求項11記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項13】
請求項11記載の核酸分子または請求項12記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
ヒト用、動物用の医療用もしくは診断用の物質として、食物もしくは化粧品における抗微生物物質として、消毒剤として、または環境領域において使用するための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
食物が、乳製品、薫製魚、塩漬け魚、凍結魚介類、肉製品、サラダ、またはRTE(ready-to-eat)製品である、請求項14記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項16】
リステリアによって引き起こされる疾患の治療および/もしくは防止において、またはリステリア汚染の診断のため、ヒト用、動物用の医療用または診断用の物質として使用するための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項17】
リステリアによって引き起こされる疾患が、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症;スメア感染によって引き起こされる局所創傷感染、ならびに結膜炎および角膜炎を含む、請求項16記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項18】
妊娠管理における請求項16または17いずれか一項記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項19】
薬物、食物産業および食物分析、家畜飼育、飲料水、または環境分析におけるリステリア汚染の検出のための、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項20】
食物もしくは化粧品における抗微生物物質としての、消毒剤としての、または環境領域における、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項21】
食物加工装置、食物加工施設、食物に曝される表面、および食物の保管または加工のために使用される施設における抗微生物物質としての、請求項1〜10いずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項22】
抗微生物物質が、他の消毒剤、抗生物質、および/または酵素と組み合わせて使用される、請求項21記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−520439(P2011−520439A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508928(P2011−508928)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055869
【国際公開番号】WO2009/138475
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(309037974)バイオメリュー エス.エー. (4)
【出願人】(510046402)ヒグロス インベスト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055869
【国際公開番号】WO2009/138475
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(309037974)バイオメリュー エス.エー. (4)
【出願人】(510046402)ヒグロス インベスト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】
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