説明

個人情報保護媒体及びその製造方法

【課題】一度判読不能な状態とした個人情報が復元不能な状態となる個人情報表示媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材10に、剥離剤を含む印字インキ20によって情報を表示し、情報表示部30を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字した個人情報を剥離、除去可能な個人情報保護媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住所や宛名などの個人情報が記載された郵便物等を廃棄する際は、廃棄物からの個人情報の漏洩を防ぐために、個人情報が記載された部分又は郵便物全体を手で細かくちぎったりハサミやシュレッダーで裁断したりしなければならないといった問題があった。特に、個人情報が特定できない程度にまで手作業で(手やハサミで)細かく断片化することは、極めて手間のかかる作業である。
【0003】
しかも、郵便物の中には、印刷物などを収容した樹脂フィルム製の袋に宛先ラベル(配達先の住所や受取人の氏名が記載されたラベル)を貼り付けたものもある。このような郵便物の場合は、樹脂フィルムごと宛先ラベルを手で細かくちぎったり、ハサミやシュレッダーで裁断するわけにはいかないため、宛先ラベルを樹脂フィルムから剥がさねばならない。しかし、宛先ラベルの脱落は郵便事故の原因となりうるため、宛先ラベルは樹脂フィルムに強固に貼り付けられるのが一般的である。このため、宛先ラベルを樹脂フィルム製の袋から剥がすことは容易ではない。
【0004】
このような問題を解決することを目的とした従来技術として、特許文献1に開示される「個人情報が表示されたラベル」がある。特許文献1に開示される発明は、個人情報の表示領域を複数部分に分割するためのスリットが形成されたものである。
【特許文献1】特開2001−175175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される発明は、個人情報を判読不能な状態とするためには個人情報が記載されているラベルの基材を剥がし取らなければならないが、ラベルの基材を容易に剥がし取れるようにすると、不用意にラベル基材が剥離してしまう恐れがあるし、不用意にラベル基材が剥離しないようにすると、個人情報を判読不能な状態とする際に基材を剥がしにくくなってしまう。
また、ラベルに印刷された情報はそのままの状態で断片に残るため、断片をつなぎ合わせれば個人情報を判読可能な状態に復元できてしまう。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、一度判読不能な状態とした個人情報が復元不能な状態となる個人情報保護媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、基材に、剥離剤を含むインキによって情報を表示したことを特徴とする個人情報保護媒体を提供するものである。
【0008】
本発明の第1の態様においては、インキはインキ分散防止剤としてのエラストマーを含むことが好ましい。また、基材は、インキによって情報が表示される部分に剥離処理がなされていることが好ましい。また、情報は、信書の宛先を示す情報であることが好ましい。また、インキが基材から剥離可能であることを表示する注意喚起表示部を有することが好ましく、これに加えて、注意喚起表示部が、剥離性のないインキによって基材上に表示されることがより好ましい。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、基材に、親水性ワックスを含む水性インクジェットプリンタ用インキによって情報を印字することを特徴とする個人情報保護媒体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一度判読不能な状態とした個人情報が復元不能な状態となる個人情報保護媒体及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、図1を参照して、本発明の概要を説明する。
本発明の個人情報保護媒体は、個人情報を表示するための基材10(用紙や封筒、葉書、ラベル台紙等)の一方の面上に、印字インキ20を用いて情報表示部30を形成したものである。印字インキ20は基材10との密着性が低く、基材と略平行な力を局所的に加えると(コインや爪等で擦る)基材10との界面から剥がれる。個人情報となる住所や名前、電話番号等を印字インキ20として印字した個人情報保護媒体では、情報表示部30をコインや爪等で擦ることで、印字された個人情報を判読不能な状態とできる。これにより、廃棄した個人情報保護媒体からの個人情報の漏洩を防げる。
なお、情報表示部30とは反対側の面に粘着層(不図示)を設けてもよく、これを設けることで個人情報保護媒体をラベルとして用いることが可能となる。
【0012】
〔実施の形態〕
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる個人情報保護媒体の断面を示した図である。
図1に示すように、個人情報保護媒体は、基材10から構成され、基材10の一方の面上には、印字インキ20によって個人情報が表示されている。
【0013】
[基材]
基材10は、公知の材料の中から適宜選択することができる。例えば、紙(上質紙、コート紙、アート紙等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等)、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等)、プラスチックフィルム(ポリ塩化ビニルフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム等)、ポリオレフィンからなる合成紙、金属などの材料を適用可能である。
紙を用いる場合には、印字インキ20の剥離性を高める目的から、表面にコート層が存在するコート紙、アート紙であることが好ましい。また、アート紙やコート紙の表面にさらに剥離層を設けたものを基材10として用いても良い。剥離層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂の他、溶剤型熱可塑性樹脂(塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル・スチレン共重合体樹脂、ニトロセルロース、マレイン酸樹脂等)、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロピドン等)、又は各種のアクリル共重合樹脂やポリウレタン等を単独、またはこれらにシリコン樹脂等の剥離剤を添加して使用することで形成可能である。
【0014】
図2は、印字インキ20が基材10から削り取られる様子を示した図である。
図2に示すように、コインや爪等で情報表示部30を削ることで(換言すると、所定値以上の圧力を加えながら情報表示部30を擦ることで)、基材10の上に印字されている印字インキ20が剥離、除去される。なお、印字インキ20と基材10との密着性は、基材10の材料の種類と印字インキ20の組成との組み合わせによって調整可能である。
【0015】
また、個人情報保護媒体は、印字インキ20の剥離作業時以外(郵送時、保存時、取り扱い時等)に、情報表示部30が不必要な摩擦を受ける場合があるが、印字インキ20は、このような摩擦を受けたとしても基材10から不用意に剥離してしまわないような耐摩擦性を必要とする。
【0016】
上記のように、印字インキ10は、必要時に摩損体によって摺動されることで容易に基材10から剥離する一方で、剥離作業時以外に摩耗、傷、剥がれなどが発生しないようにする必要がある。これらは相反する性能であるが、基材10の材料と印字インキ20の組成との組み合わせによって両立させている。
【0017】
印字インキ20は、有色顔料の他に剥離剤、インキ分散防止剤を含んでいる。
【0018】
剥離剤は、印字インキ20に基材10からの剥離性を備えさせるために添加される。
剥離剤としては、天然ワックス(蜜蝋、鯨蝋、木蝋、米ぬか蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等)、合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、ポリエチレンワックス等)、高沸点石油系溶剤(脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等)、高級脂肪酸(マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、フロイン酸、ベヘニン酸など)、アルコール類(ポリオキシアルキシレングリコール類、グリコール類、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、脂肪酸エステル(エチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなど)、脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、リン酸エステル(ポリオキシアルキレンリン酸エステル類など)、金属石鹸(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸ソーダ等)、フッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTTE、ECTFE、PVDF,PVF等)、非反応性シリコーン樹脂(ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、アルキル変性シリコーン樹脂、アラルキル変性シリコーン樹脂、アルキルアラルキル変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、ポリオキシアルキレン変性シリコーン樹脂など)、及び無機離型剤(タルクなど)があげられる。
【0019】
上記のように、適用可能な剥離剤は多様であるが、これらの中でも、天然ワックス、合成ワックス、高沸点石油系溶剤、非反応性シリコーン樹脂などが実用性の面からは好ましい。
なお、剥離剤は二種類以上を併用することも可能である。
【0020】
インキ分散防止剤は、印字インキ20を基材10から剥離させる際に、粉塵の飛散や基材10の汚れを防ぐために添加される。
インキ分散防止剤としては、天然ゴム系エラストマー(天然ゴム、塩素ゴム等)、ブタジエン系エラストマー(ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等)、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等があげられる。これらは、二種類以上併用することも可能である。
【0021】
印字インキ20をシルクスクリーン印刷する場合、塗工前のインキ全体に占めるインキ分散防止剤の割合は、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。一方、インキとしての性能を損なわない観点からすると、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0022】
印字インキ20を用いて基材10に印刷する方法としては、オフセット、凸版、シルクスクリーン、グラビア、フレキソ、インクジェットなどの各印刷方法が適用可能である。これらのなかでも、シルクスクリーン又はインクジェット方式の印刷方法が好ましい。
適用可能なインキの種類としては、蒸発乾燥性インキ、浸透乾燥性インキ、冷却固化乾燥性インキ、酸化重合硬化性インキ、熱硬化性インキ、紫外線硬化性インキ、電子線硬化性インキ等があげられる。
【0023】
印字インキ20に基材10からの剥離性を持たせるためには、基材10の情報表示部30の部分に予め剥離処理を施しておくとよい。剥離処理は、基材10に剥離インキを公知の印刷方法で印刷することで容易に形成できる。
剥離処理に用いる剥離インキは、少なくとも剥離剤とビヒクルとを含有している。剥離剤としては、天然ワックス、合成ワックス、高沸点石油系溶剤、高級脂肪酸、アルコール類、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、リン酸エステル、金属石鹸、フッ素樹脂、非反応性シリコーン樹脂、反応性シリコーン樹脂及び無機離型剤などを適用可能である。
ビヒクルとしては、油類(植物油、加工油、鉱油など)、樹脂類(天然樹脂、加工樹脂、合成樹脂など)、可塑剤、ワックス、溶剤(炭化水素化合物、アルコール類、グリコール類、エステル類、ケトン類など)が適用可能であり、二種類以上を併用することも可能である。
【0024】
本実施形態にかかる個人情報保護媒体をダイレクトメールに用い、印字インキ20によって宛名を表示させる場合には、印刷する内容が基材一枚ごとに異なるため、インクジェット方式で印刷すると最も有利である。よって、印字インキ20をインクジェット方式で記録するためのインクジェット用インキの組成についてより詳細に説明する。インクジェット用インキには水性のものと非水性のものとの二種類がある。
【0025】
〈水性インクジェット用インキ〉
水性インクジェット用インキの組成は、着色顔料、水溶性樹脂(バインダー)、水性媒体(溶剤)及び剥離剤となる。
着色顔料は、従来公知の有機顔料及び無機顔料のいずれも適用可能である。
例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメチン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系、カーボンブラック系(ファーネスブラック、アセチレンブラック)などが適用可能である。
黒色以外の例としては、
Y系:ピグメントイエロー、ジアゾイエロー
M系:ブリリアントカーミン6B、キナクリドンマゼンタ
C系:フタロシアニンブルーG、E
などをあげられる。
【0026】
また、顔料に代えて、分散染料を適用することも可能である。粒径は、ノズルの詰まり防止、着色性及びインキの経時的な分散安定性を考慮すると小さいほうが好ましく、平均粒径が10nm〜200nm、最大粒径が500nm以下のものが好ましい。
【0027】
水性インクジェット用インキ中のこれらの顔料の濃度は、適宜設定可能であるが、着色力やインキの粘度を考慮すると、インキ中で5〜30重量%を占めることが好ましい。
【0028】
バインダーは、水溶性樹脂と水分散性樹脂とに大別できる。水溶性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン系樹脂、石油系樹脂、フッ素系樹脂等があげられる。
【0029】
水性インクジェット用インキは、顔料及び水性樹脂を水性媒体中に分散させ、適宜水で希釈し、後段で説明する種々の添加剤を必要に応じて混合することによって製造できる。ここでいう水性媒体とは、水と混和可能な有機溶剤を表し、水性インクジェット用インキとしてのノズル部分での乾燥、インキの固化を防止し、安定なインクの噴射及びノズル部における経時的な乾燥を防止するものである。換言すると、水性媒体は、水又は親水性有機溶剤単独又はそれらの混合物であり、水性顔料分散体の粘度を低下させ、かつ、顔料の凝集や沈降を生じさせない働きをする。
水性媒体は、単独又は二種類以上を混合してインキ全体の1〜50重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲で用いられる。
【0030】
親水性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6−ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4−メトキシ−4メチルペンタノンなどがあげられる。
また、インキの乾燥を早めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類も適用可能である。
【0031】
これらの親水性有機溶剤は、水性インクジェット用インキの水性媒体のうちの5〜60重量%、好ましくは、10〜50重量%を占めることが好ましい。
【0032】
上記水性インクジェット用インキを構成するエマルジョン樹脂としては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂をあげられる。これらは、上記の着色顔料などの基材に対する決着剤としての役割も果たす。
【0033】
・剥離剤
水性インクジェット用インキの場合には、添加可能な剥離剤としては親水性ワックス、水分散ワックスをあげられる。
親水性ワックスとしては、グリコール酸、高級アルコール、高級脂肪酸及びそれらの誘導体等の親水性の基を有するものに加えて、疎水性ワックスを酸化したり、酸や塩基で変性して親水基を導入したものも適用可能である。例えば、天然ワックス(セラックワックス、ライスワックス、シュガーワックス、うるし蝋、蜜蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、白ロウ等)、合成ワックス(酸化パラフィン、酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン、フィッシャー・トロプシャワックス、エチレンアクリルワックス、エチレン酢酸ビニルワックス)に親水処理を施したものである。
水分散ワックスとは、ワックスが微粒状で水媒体に分散したものをいう。水分散ワックスとしては、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、モンタン系エステルワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックス又はキャンデリラワックスを水に分散させたものなどが適用可能である。
【0034】
水性インクジェット用インキの成分として必須ではないが、適用可能な添加剤について以下に説明する。水性インクジェット用インキには、必要に応じて下記のような種々の添加剤を用いることも可能である。
・浸透剤
基材10が吸収性のある材料(例えば紙)であるときには、基材10へのインキの浸透を早めて見かけ上の乾燥性を高めるために浸透剤を加えてもよい。
浸透剤としては、水性溶剤として例示したジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、アルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等を用いられる。
これらは、インキの0〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0035】
浸透剤は上記の添加量で十分な効果が得られ、過剰に添加した場合には印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こすため好ましくない。
【0036】
・防腐剤
インキにカビや細菌が発生することを防止する目的で防腐剤を添加してもよい。防カビ剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリンー3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を適用可能である。
これらは、水性インクジェット用インキ中に0.05〜1.0重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0037】
・キレート剤
水性インクジェット用インキ中の金属イオンを不活性化するために添加され、エチレンジアミンテトラアセティックアシド、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が適用可能である。
これらは、水性インクジェット用インキ中に0.005〜0.5重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0038】
・pH調整剤
水性インクジェット用インキのpHを調整し、インキの安定性向上や記録装置内のインキ配管への影響の低減を目的としてpH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、アミン、無機塩、アンモニアといったpHそのものを変動させる物質の他、緩衝剤(リン酸など)も適用可能である。
【0039】
・消泡剤
水性インクジェット用インキの吐出時、配管内部での循環、移動時、インキ製造時の泡の発生を防止するために消泡剤を添加してもよい。
【0040】
〈非水性インクジェット用インキ〉
非水性インクジェット用インキは、顔料、樹脂、有機溶剤及び剥離剤からなる。
【0041】
・顔料
カーボンブラックについては、中性、酸性、塩基性等のあらゆるタイプのものを適用可能である。その他の顔料についても、一般的な印刷用のインキ、塗料に使用されている種々の顔料を適用可能である。
【0042】
・樹脂
非水性インクジェット用インキに適用可能な樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢酸ビニル系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素系樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等があげられる。
【0043】
・有機溶剤
非水性インクジェット用インキに適用可能な有機溶剤としては、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)、グリコールアセテート類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エステル類(酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等)があげられる。
【0044】
・剥離剤
上記の各種剥離剤の他、ポリオキシアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルやこれらの塩を適用可能である。
【0045】
非水性インクジェット用インキの成分として必須ではないが、適用可能な添加剤について以下に説明する。非水性インクジェット用インキには、必要に応じて下記の添加剤を用いることも可能である。
【0046】
・分散剤
非水性インクジェット用インキに適用可能な分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖アミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等があげられる。
【実施例】
【0047】
まず、表1に示す原料を混合し、顔料分散液を生成した。
【0048】
【表1】

【0049】
表2に示すように、上記の顔料分散液に他の原料を加えて攪拌し、水性インクジェット用インキを生成した。
【0050】
【表2】

【0051】
作成したインキを用い、コート紙からなる葉書用紙に宛先情報(住所、氏名)をインクジェット方式で印字し、乾燥後、印字部分をコインを用いて擦ったところ、文字が読めない程度にインキを剥離除去できた。
【0052】
通常、図3(a)に示すように個人情報保護媒体に表示されていた住所や名前は、情報表示部30を擦ることによって、図3(b)に示すように削り取られて判読不能な状態となり、復元することは不可能である。しかも、削り取られるのは印字インキ20のみであるから、従来のいわゆる“スクラッチカード”のような削りカスはほとんど発生しない。
【0053】
なお、本実施形態にかかる個人情報保護保護媒体は、外観だけでは印字インキ20を基材10から剥離可能であることをユーザに認識させることが難しいため、図4に示すように、印字インキ20を基材10から剥離可能であることをユーザに知らせるために注意喚起表示部50として個人情報保護媒体の任意の位置に表示しておくと好ましい。ただし、印字インキ20と同様の組成のインキを用いて印字すると、その表示自体が消えて(剥離して)しまう可能性があるため、印字インキ20が基材10から剥離可能であることは、印字インキ20とは異なり剥離性の無いインキで印字することが好ましい。なお、この表示はインキを用いた印字に限定されることはなく、基材10に地紋として表示するなどしてもよい。また、文字や絵柄(例えばコインで削るイメージ図)等、印字インキ20を剥離可能であることをユーザに認識させることができるものであれば表示形式は限定されない。
【0054】
このようにして形成した本実施形態にかかる個人情報保護媒体では、情報表示部30を小さな面圧で擦っても(例えば、指の腹や消しゴムで擦っても)、擦られた部分の印字インキ20は基材10からは剥離しないが、大きな面圧で擦ると(例えば、コインや爪などで擦ると)、擦られた部分の印字インキ20は基材10から剥離する。
【0055】
よって、本実施形態にかかる個人情報保護媒体を郵便物などに適用した場合でも、運送中に印字インキ20が擦れて個人情報が判読不能となって郵便事故が発生することはない。
【0056】
本実施形態にかかる個人情報保護媒体は、所定値以上の圧力を加えながら情報表示部30を擦ることで、印字インキ20が基材10から剥離・除去される。よって、個人情報が印字された個人情報保護媒体を廃棄する際には、簡単な操作で個人情報の判読を不能とすることができ、廃棄物からの個人情報の漏洩を防止できる。
しかも、基材10から削り取られた印字インキ20は原形をとどめないため、これから個人情報を復元することは不可能であり、個人情報が漏洩する恐れがない。
【0057】
なお、上記実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。たとえは、上記実施形態においては、基材10の上に印字インキ20によって個人情報が記載されている個人情報保護媒体を例としたが、印字インキ20が表示する情報は個人情報に限定されることはなく、任意の文字、文章、図柄などを表すものであっても良い。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好適な実施の形態にかかる個人情報保護媒体の構成を示した図である。
【図2】インキ受像層が剥離除去される様子を示した図である。
【図3】(a)は、個人情報が印刷された個人情報保護媒体を示した図である。(b)は、個人情報を剥離除去した状態を示した図である。
【図4】インキ受像層が剥離可能であることを示す表示を個人情報保護媒体に設けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 基材
20 印字インキ
30 情報表示部
50 注意喚起表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、剥離剤を含むインキによって情報を表示したことを特徴とする個人情報保護媒体。
【請求項2】
前記インキはインキ分散防止剤としてのエラストマーを含むことを特徴とする請求項1記載の個人情報保護媒体。
【請求項3】
前記基材は、前記インキによって情報が表示される部分に剥離処理がなされていることを特徴とする請求項1又は2記載の個人情報保護媒体。
【請求項4】
前記情報は、信書の宛先を示す情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の個人情報保護媒体。
【請求項5】
前記インキが前記基材から剥離可能であることを表示する注意喚起表示部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の個人情報保護媒体。
【請求項6】
前記注意喚起表示部が、剥離性のないインキによって前記基材上に表示されたことを特徴とする請求項5記載の個人情報保護媒体。
【請求項7】
基材に、親水性ワックスを含む水性インクジェットプリンタ用インキによって情報を印字することを特徴とする個人情報保護媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216577(P2007−216577A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41334(P2006−41334)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【出願人】(000199289)ヤマトパッキングサービス株式会社 (24)
【Fターム(参考)】