説明

個人認証システム及び入退室管理システム

【課題】認証する人物の数が増加した場合であっても、人物を正確、且つ、迅速に認証する。
【解決手段】撮像部6が、被認証人物3の顔の画像と証明書4に設けられた記憶素子の画像とを撮像し、認証装置7が、被認証人物3の顔の画像から生体情報データを抽出し、記憶素子の画像から記憶素子に記憶されている生体情報データを読み出し、顔の画像から抽出された生体情報データと記憶素子に記憶されている生体情報データが一致した場合、被認証人物3を認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被認証人物の生体情報データを利用して被認証人物を認証する個人認証システム及びこの個人認証システムを利用して人物の入室及び退室動作を監視,制御する入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像装置によってゲート付近の画像を撮像し、撮像された人物の顔画像からその特徴値を抽出し、データベースに格納されている顔画像の特徴値と抽出された特徴値とを比較することにより、ゲートを通過しようとする人物を認識,認証する認証システムが知られている。そして、このような認証システムによれば、撮像装置の撮像範囲内に存在する複数の人物を同時に認証することができると共に、カード媒体を利用した認証システムとは異なり、ゲートを通過しようとする人物は自身で特別な操作を行うことなく認証を受けることができる。
【特許文献1】特開2005−242778号公報
【特許文献2】特開2004−145608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の認証システムは、上述の通り、データベースに格納されている特徴値を利用して人物を認証する構成になっているために、認証する人物の数が増加した場合、データベースに格納される特徴値の数が増加するために、人物の認識率が低下すると共に、人物の認識処理に要する時間が増加し、認証が完了するまでに多くの時間を要する。また一般に、認証装置とデータベース間は電気通信回線を介して接続されており、認証に使用するデータを電気通信回線を介して転送する必要があるために、認証が完了するまでの時間が長くなる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、認証する人物の数が増加した場合においても、人物を正確、且つ、迅速に認証することが可能な個人認証システム及び入退室管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る個人認証システム及び入退室管理システムは、被認証人物の生体情報を取得する生体情報取得手段と、被認証人物に直接的又は間接的に付され、被認証人物の生体情報を格納する生体情報格納手段と、生体情報格納手段に格納されている生体情報を読み出す生体情報読出手段と、生体情報取得手段により取得された生体情報と生体情報読出手段により読み出された生体情報とが一致するか否かを判断することにより、被認証人物を認証する認証手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る個人認証システム及び入退室管理システムによれば、データベースを用いることなく人物の認証を行うことができるので、認証する人物の数が増加した場合であっても、人物を正確、且つ、迅速に認証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る個人認証システムは、例えば図1に示すような、自動施錠装置1を介して区画Aと区画Bの境界線に設けられた扉2の開閉状態を制御することにより区画A,B間における人物の往来を監視,制御する入退室管理システムに適用することができる。以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる入退室管理システムの構成と動作について詳しく説明する。なお、本実施形態では、入退室管理システムは、自動施錠装置1によって扉2の開閉を制御することとするが、自動ドア等のような自動開閉機構を備えた扉の開閉を制御するようにしてもよい。
【0008】
〔入退室管理システムの構成〕
本発明の実施形態となる入退室管理システムは、図1に示すように、被認証人物3に直接的又は間接的に付された証明書4と、区画A,Bの扉2付近の天井5に設けられた撮像部6と、区画A,Bの天井5内部に設置された認証装置7と、LAN(Local Area Network)等のネットワーク8を介して認証装置7と電気的に接続された表示装置9及び記憶装置10とを主な構成要素として備える。なお、本実施形態では、認証装置7は、天井5の内部に設置されることとしたが、天井5から露出させたり、区画A,Bの床下に設置したりしてもよく、設置場所が天井5の内部に限定されるものではない。
【0009】
上記証明書4は、図2,3に示すように、被認証人物3の生体情報データと被認証人物3固有の識別情報(氏名,所属部署,社員番号等)等の付帯情報とを内部に記憶すると共に、画像から内部に記憶されている情報を読み出し可能な、バーコード(図2参照)及びQRコード(図3参照)等の記憶素子11を備え、図4に示すように、胸や肩等の被認証人物3の顔に近い位置に直接的又は間接的に付される。
【0010】
なお、上記記憶素子11は、可視光画像から内部に記憶されているデータを取得可能なもの(例えば黒色インクで印刷されたもの)の他、赤外線画像等の不可視光画像から内部に記憶されているデータを取得可能なものであってもよい。また、証明書4には、記憶素子11の他に、一般的な入館証のように、被認証人物3の写真,氏名,所属部署等の情報が付されていてもよい。また、本明細書中において「生体情報データ」とは、目,鼻,及び口の位置や大きさ、顔の輪郭等、一般的な顔画像認識処理において用いられる人物の顔の特徴値のことを意味する。
【0011】
上記撮像部6は、高精細画像を撮像可能な公知の撮像装置により構成され、被認証人物3の顔の画像と証明書4に設けられた記憶素子11の画像を撮像する。ここで、本実施形態では、撮像部6と認証装置7を別体により構成したが、撮像部6と認証装置7を一体により構成してもよい。また、撮像部6として距離画像を撮像可能な距離画像カメラを利用してもよい。なお、距離画像カメラは本願発明の出願時点で既に公知であるので、その構成については詳述しないが、本明細書中において「距離画像カメラ」とは、被写体の画像情報と共にカメラから被写体までの距離情報を取得可能な撮像装置であり、画像の濃度によってカメラから被写体までの距離を測定することができるものである。
【0012】
上記認証装置7は、コンピュータシステム等の公知の情報処理装置により構成され、設置場所(区画A,B)の違いに応じて固有の識別情報を有する。認証装置7は、内部のCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行することにより、図5に示す顔捕捉部21,移動情報取得部22,記憶素子捕捉部23,移動情報取得部24,比較部25,対情報生成部26,特徴抽出部27,データ読取部28,判定部29,及び開閉制御部30の機能を実現する。なお、各部の機能については以下に述べる。
【0013】
上記顔捕捉部21は、目,鼻,口,頭髪等を一般化した顔のテンプレートで撮像部6によって撮像された画像をスキャンする等して、撮像部6によって撮像された画像の中から被認証人物3の顔の位置及び画像を検出する。上記移動情報取得部22は、連続する2つのフレームにおける記憶素子11の位置の差分値を算出する等して被認証人物3の顔の動きベクトルを算出する。上記記憶素子捕捉部23は、記憶素子11の画像を一般化したテンプレートで撮像部6によって撮像された画像をスキャンする等して、撮像部6によって撮像された画像の中から記憶素子11の位置を検出する。なお、記憶素子11に予め特定の記号を付与し、記憶素子捕捉部23は、この記号を画像の中から検出することにより記憶素子11の位置を検出するようにしてもよい。上記移動情報取得部24は、連続する2つのフレームにおける記憶素子11の位置の差分値を算出する等して記憶素子11の動きベクトルを算出する。
【0014】
上記比較部25は、移動情報取得部22,24により算出された動きベクトルを比較し、動きベクトルが一致した場合、検出された顔と記憶素子11とが同一の被認証人物3のものであると判定する。このような処理によれば、複数の顔及び記憶素子11の画像が同時に検出された場合であっても、顔と記憶素子11とを正確に関連づけし、撮像部6の撮像範囲内に存在する複数の被認証人物3の顔と記憶素子11の対応関係を一意に決定することができる。
【0015】
なお、本実施形態では、動きベクトルが一致した場合に検出された顔と記憶素子11とが同一の被認証人物3のものであると判断したが、撮像部6として距離画像カメラを用いた場合には、撮像部6から顔の位置までの距離と撮像部6から記憶素子11までの距離とが略同じであるか否かを判別することにより、動きベクトルを算出することなく、検出された顔と記憶素子11とが同一の被認証人物3のものであるか否かを判定することができる。また、撮像部6として距離画像カメラを用いた場合には、距離画像を参照して顔と記憶素子11を検出する範囲を限定することにいより、より正確な認証処理を行うことができる。
【0016】
上記対情報生成部26は、比較部25によって動きベクトルが同一であると判定された場合、検出された顔と記憶素子11とが同一の被認証人物3のものである旨を示す情報を対情報として特徴抽出部27及びデータ読取部28に出力する。上記特徴抽出部27は、対情報生成部26から対情報が出力された場合、被認証人物3の顔の画像から生体情報データを抽出する。上記データ読取部28は、対情報生成部26から対情報が出力された場合、記憶素子11の画像から記憶素子11の内部に記憶されている生体情報データと付帯情報とを読み出す。
【0017】
上記判定部29は、特徴抽出部27とデータ読取部28により抽出された生体情報データが一致するか否かを判別し、一致した場合、ネットワーク8を介してデータ読取部28によって読み出された付帯情報を表示装置9と記憶装置10に転送する。開閉制御部20は、判定部29によって生体情報データが一致すると判定された場合、被認証人物3が認証されたと判断し、自動施錠装置1を開錠することにより扉2を開状態にする。また逆に、判定部29によって生体情報データが一致しないと判定された場合には、開閉制御部20は、自動施錠装置11を施錠することにより扉2を閉状態にする。
【0018】
上記表示装置9は、パーソナルコンピュータ等の公知の情報処理装置により構成され、判定部29から転送される情報に基づいて被認証人物3の認証状況,在室情報,行動履歴等の情報を生成,表示する。なお、情報の表示形態及び表示形式は、特に限定されることはなく、表,グラフ,地図等の表示形態によって情報を表示するようにしてもよい。上記記憶装置10は、一般的な記憶装置により構成され、表示装置9の表示情報を記憶する。なお、本実施形態では、表示装置9と記憶装置10とを別体により構成したが、表示装置9と記憶装置10とを一体により構成してもよい。
【0019】
以上のような構成を有する入退室管理システムは、以下に示す入退室管理処理を実行することにより、区画A,B間における人物の往来を監視,制御する。以下、図6に示すフローチャートを参照して、入退室管理処理を実行する際の入退室管理システムの動作について詳しく説明する。
【0020】
〔入退室管理処理〕
図6に示すフローチャートは、入退室管理システムの電源がオン状態になるのに応じて開始となり、入退室管理処理はステップS1の処理に進む。
【0021】
ステップS1の処理では、表示装置9が、被認証人物3が区画A,Bどちらの認証装置7において認証されたか否かを判定する。なお、既述の通り、認証装置7には設置場所の違いに応じて固有の識別情報が付与されているので、表示装置9は、付帯情報の転送元を識別することにより被認証人物3が区画A,Bどちらの認証装置7において認証されたか否かを判定することができる。そして判別の結果、区画B側の認証装置7において認証されたと判定した場合、表示装置9は入退室管理処理をステップS5の処理に進める。一方、区画A側の認証装置7において認証されたと判定した場合には、表示装置9は入退室管理処理をステップS2の処理に進める。
【0022】
ステップS2の処理では、表示装置9が、被認証人物3が区画Bの認証装置7において認証されたか否かを判定する。そして判別の結果、区画Bの認証装置7において認証されていないと判定された場合、表示装置9は、ステップS3の処置として被認証人物3は区画Aにいると判定した後、入退室管理処理をステップS1の処理に戻す。一方、区画Bの認証装置7において認証されたと判定された場合には、表示装置9は、ステップS4の処理として被認証人物3は区画Aから区画Bに移動したと判定した後、入退室管理処理をステップS1の処理に戻す。
【0023】
ステップS5の処理では、表示装置9が、被認証人物3が区画Aの認証装置7において認証されたか否かを判定する。そして判別の結果、区画Aの認証装置7において認証されていないと判定された場合、表示装置9は、ステップS6の処置として被認証人物3は区画Bにいると判定した後、入退室管理処理をステップS1の処理に戻す。一方、区画Aの認証装置7において認証されたと判定された場合には、表示装置9は、ステップS4の処理として被認証人物3は区画Bから区画Aに移動したと判定した後、入退室管理処理をステップS1の処理に戻す。
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる入退室管理システムによれば、撮像部6が、被認証人物3の顔の画像と証明書4に設けられた記憶素子11の画像とを撮像し、認証装置7が、被認証人物3の顔の画像から生体情報データを抽出し、記憶素子11の画像から記憶素子11に記憶されている生体情報データを読み出し、顔の画像から抽出された生体情報データと記憶素子11に記憶されている生体情報データが一致する場合、被認証人物3を認証する。すなわち、本発明の実施形態となる入退室管理システムは、データベースを用いることなく被認証人物3の認証を行う。従って、本発明の実施形態となる入退室管理システムによれば、被認証人物3の数が増加した場合においても、被認証人物3を正確、且つ、迅速に認証することができる。
【0025】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態では、被認証人物3の顔の画像と記憶素子11の画像のデータを用いて被認証人物3の認証を行ったが、図7に示すように、被認証人物3の指紋情報を記憶する記憶素子11を被認証人物3の爪に設け、指紋センサ41によって被認証人物3の指紋データを読み取り、読取装置42によって記憶素子11内部に記憶されている指紋データを読み取り、読み取られた2つの指紋データが一致するか否かによって被認証人物3の認証を行うようにしてもよい。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態となる入退室管理システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態となる証明書の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施形態となる証明書の構成を示す模式図である。
【図4】図2及び図3に示す証明書の携帯例を説明するための図である。
【図5】図1に示す認証装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態となる入退室管理処理の流れを示すフローチャート図である。
【図7】本発明の他の実施形態となる個人認証システムの構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1:自動施錠装置
2:扉
3:被認証人物
4:証明書
5:天井
6:撮像部
7:認証装置
8:ネットワーク
9:表示装置
10:記憶装置
11:記憶素子
21:顔捕捉部
22,24:移動情報取得部
23:記憶素子捕捉部
25:比較部
26:対情報生成部
27:特徴抽出部
28:データ読取部
29:判定部
30:開閉制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被認証人物の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記被認証人物に直接的又は間接的に付され、当該被認証人物の生体情報を格納する生体情報格納手段と、
前記生体情報格納手段に格納されている生体情報を読み出す生体情報読出手段と、
前記生体情報取得手段により取得された生体情報と前記生体情報読出手段により読み出された生体情報とが一致するか否かを判断することにより、前記被認証人物を認証する認証手段と
を備えることを特徴とする個人認証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の個人認証システムであって、
前記生体情報取得手段と前記生体情報読出手段は前記被認証人物の画像を撮像する撮像手段により構成され、前記生体情報格納手段は画像から内部に格納されている生体情報を読み出し可能な記憶素子により構成され、生体情報取得手段は撮像手段により撮像された被認証人物の顔の画像から前記生体情報を取得し、生体情報読出手段は撮像手段により撮像された記憶素子から前記生体情報を読み出すことを特徴とする個人認証システム。
【請求項3】
請求項2に記載の個人認証システムであって、
前記撮像手段は距離画像を撮像する機能を有し、前記生体情報取得手段と前記生体情報読出手段は撮像手段により取得された距離画像から生体情報を取得することを特徴とする個人認証システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の個人認証システムであって、
前記撮像手段は非可視光領域の光を撮像できる機能を有し、前記記憶素子の画像は非可視光領域において撮像されることを特徴とする個人認証システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の個人認証システムを2つの領域を隔てる境界線の近傍に配置領域が異なるように2つ配置し、個人認証システムによる被認証人物の認証順序に従って2つの領域間における被認証人物の挙動を判断することを特徴とする入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−156813(P2007−156813A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350856(P2005−350856)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】