説明

倒立型移動体、その制御方法及びプログラム

【課題】倒立型移動体の操作性を向上させること。
【解決手段】倒立型移動体1は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する。倒立型移動体1は、搭乗者が把持し上下方向へ伸縮可能なハンドル2と、ハンドル2の伸縮動作をロック状態及びロック解除状態にする第1ロック手段と、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有する制御手段と、第1ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる切替手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗者がハンドルを把持し、その重心移動に応じて倒立状態を維持しつつ走行する倒立型移動体、その制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、搭乗者がハンドルを把持し、その重心移動に応じて倒立状態を維持しつつ走行する倒立型移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような倒立型移動体は、その小回り性からショッピングセンター等で今後普及していくことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−502002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、ショッピングセンターなどで、人が体勢を変えて商品等に手を伸ばしたい場合(体を前屈し、下方にある商品に手を伸ばす場合など)が多々発生する。この場合、上記特許文献1に示す倒立型移動体の搭乗者においては、ハンドルが邪魔になり商品へのアクセスが困難となり、体勢を変えたときにその重心移動により意図しない移動が発生する、などの問題を生じている。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、操作性を向上させた倒立型移動体、その制御方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体であって、搭乗者が把持し上下方向へ伸縮可能なハンドルと、前記ハンドルの伸縮動作をロック状態及びロック解除状態にする第1ロック手段と、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有する制御手段と、前記第1ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる切替手段と、を備えることを特徴とする倒立型移動体である。この一態様によれば、倒立型移動体の操作性を向上させることができる。
【0007】
この一態様において、前記切替手段は、前記第1ロック手段をロック状態からロック解除状態に切替えると共に、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替えてもよい。これにより、搭乗者はハンドルを収縮させると共にその目標位置に停まった状態で安定的に作業等を行うことができる。
【0008】
この一態様において、前記切替手段は、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替えた後、前記第1ロック手段をロック状態からロック解除状態に切替えてもよい。これにより、搭乗者はその目標位置に停まった状態で、安定的に、ハンドルを収縮させ作業等を行うことができる。
【0009】
この一態様において、搭乗者の両足が夫々乗り左右方向へ相互に略平行に傾斜可能に設けられた一対の分割ステップと、前記各分割ステップを左右方向へ略平行に傾斜させるリンク機構と、前記リンク機構の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態にする第2ロック手段と、を更に備え、前記切替手段は、前記第2ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させてもよい。これにより、分割ステップの動作を安定させ、倒立型移動体の操作性をより向上させることができる。
【0010】
この一態様において、前記切替手段は、第2ロック手段によって、前記各分割ステップが略水平状態で維持されるように前記リンク機構をロック状態にした後、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替えてもよい。これにより、分割ステップを水平状態で安定させた後、その目標位置に停めて作業等を行うことができる。
【0011】
この一態様において、前記ハンドルの伸縮状態を検出する伸縮検出手段を更に備え、前記伸縮検出手段により前記ハンドルが収縮状態から伸張状態になったことが検出されたとき、前記制御手段は位置制御モードから通常制御モードに切替てもよい。これにより、搭乗者の利便性を向上させることができる。
【0012】
この一態様において、前記ハンドルの伸縮を検出する伸縮検出手段を更に備え、前記伸縮検出手段により前記ハンドルが収縮状態にならず伸張状態に維持されていることが検出されたとき、前記制御手段は位置制御モードから通常制御モードに切替てもよい。これにより、搭乗者の利便性を向上させることができる。
【0013】
この一態様において、前記切替手段は、前記ハンドルに設けられ、搭乗者が操作可能なスイッチであってもよい。これにより、搭乗者は上記ロック切替え及び制御モードの切替えを容易に行うことができる。
【0014】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体であって、搭乗者の両足が夫々乗り左右方向へ相互に略平行に傾斜可能に設けられた一対の分割ステップと、前記各分割ステップを左右方向へ略平行に傾斜させるリンク機構と、前記リンク機構の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態にする第2ロック手段と、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有する制御手段と、前記第2ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる切替手段と、を備えることを特徴とする倒立型移動体であってもよい。この一態様によれば、倒立型移動体の操作性を向上させることができる。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体の制御方法であって、搭乗者が把持するハンドルの上下方向への伸縮動作をロック状態及びロック解除状態に切替えるロック切替えと、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードとのモード切替えと、を連動して実行させることを特徴とする倒立型移動体の制御方法であってもよい。この一態様によれば、倒立型移動体の操作性を向上させることができる。
【0016】
さらに、上記目的を達成するための本発明の一態様は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体のプログラムであって、搭乗者が把持するハンドルの上下方向への伸縮動作をロック状態及びロック解除状態に切替えるロック切替えと、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードとのモード切替えと、を連動して実行させる処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする倒立型移動体のプログラムであってもよい。この一態様によれば、倒立型移動体の操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作性を向上させた倒立型移動体、その制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る倒立型移動体の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る倒立型移動体の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図3】通常制御モードにおける倒立型移動体の状態の一例を示す側面図である。
【図4】制御部が通常制御モードにおいて実行する制御ブロック図である。
【図5】制御部が位置制御モードにおいて実行する制御ブロック図である。
【図6】位置制御モードにおいてハンドルを収縮状態にした倒立型移動体の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る倒立型移動体の制御処理フローを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る倒立型移動体の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る倒立型移動体の制御処理フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る倒立型移動体の制御処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る倒立型移動体の概略的な構成を示す斜視図である。本実施の形態1に係る倒立型移動体1は、搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持しつつ所望の走行を行う、倒立二輪車として構成されている。
【0020】
倒立型移動体1は、搭乗者が把持するハンドル2と、ハンドル2に連結され搭乗者の両足が乗るステップ台3と、ステップ台3の両側に回転可能に設けられた左右一対の駆動車輪4と、を備えている。倒立型移動体1は、搭乗者の重心移動に応じて、各駆動車輪4を回転させて、前後進、左右旋回、加減速、停止などの所望の走行を行うことができる。
【0021】
例えば、搭乗者がその重心を前方に移動させステップ台3を前傾させることで倒立型移動体1を前進させ、逆に重心を後方に移動させステップ台3を後傾させることで倒立型移動体1を後進させることができる。
【0022】
ハンドル2は、略T字状に形成されており、搭乗者が把持し水平方向に延在する把持部21と、上端が把持部21に接続され下端がステップ台3に接続され上下方向へ伸縮可能な伸縮部22と、を有している。伸縮部22は、把持部21に接続された上側部材221と、上側部材221に上下方向へスライド可能に設けられた下側部材222と、で構成されている。搭乗者は、例えば、走行時にはハンドル2を伸長させ、一方、屈んで作業等を行う時にはハンドル2を収縮させる。これにより、倒立型移動体1の操作性を向上させることができる。
【0023】
なお、上記ハンドル2の構成は一例であり、これに限らず、上下方向へ伸縮可能であれば任意の構成が適用可能である。また、倒立型移動体1は、倒立二輪車として構成されているが、これに限らず、例えば、1つ或いは3つ以上の車輪を有する倒立型車両として構成されていてもよい。
【0024】
図2は、本実施の形態1に係る倒立型移動体の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る倒立型移動体1は、ステップ台3の移動速度を検出する速度検出部51と、ステップ台3の傾斜を検出する傾斜検出部52と、ハンドル2の伸縮を検出する伸縮検出部53と、第1ロック機構56及び制御部57を切替える切替スイッチ54と、各駆動車輪4を駆動する左右一対のモータ55と、ハンドル2の伸縮動作をロック状態及びロック解除状態にする第1ロック機構56と、各モータ55の駆動を制御し、第1ロック機構56のロック状態及びロック解除状態を制御する制御部57と、を備えている。
【0025】
速度検出部51は、例えば、各駆動車輪4に設けられたレゾルバやステップ台3に設けられた加速度センサなどを用いて、ステップ台3の移動速度を検出する。速度検出部51には制御部57が接続されており、速度検出部51は検出したステップ台3の移動速度を制御部57に対して出力する。
【0026】
傾斜検出部52は、例えば、ステップ台3に設けられたレートジャイロセンサや加速度センサなどを用いて、ステップ台3の傾斜(傾斜角度、傾斜角速度、傾斜角加速度など)を検出する。傾斜検出部52には制御部57が接続されており、傾斜検出部52は検出したステップ台3の傾斜を制御部57に対して出力する。
【0027】
伸縮検出部53は、例えば、ハンドル2に設けられたスイッチや光ファイバなどを用いて、ハンドル2が伸張している状態及び収縮している状態を検出する。伸縮検出部53には制御部57が接続されており、伸縮検出部53は、例えば、ハンドル2が伸張している状態の場合にオフ信号を制御部57に対して出力し、ハンドル2が収縮している状態の場合にオン信号を制御部57に対して出力する。
【0028】
切替スイッチ54は、切替手段の一具体例であり、例えば、ハンドル2に設けられ搭乗者が操作可能な押ボタン式スイッチとして構成されている。より具体的には、切替スイッチ54は、オン状態とオフ状態とに切替可能なスイッチであり、搭乗者により押下操作されオン状態になるとオン信号を制御部57に対して出力し、同様に、搭乗者により押下操作されオフ状態になるとオフ信号を制御部57に対して出力する。
【0029】
切替スイッチ54は、後述の如く、第1ロック機構56のロック状態及びロック解除状態の切替えと、制御部57のモード切替えと、を連動して実行させるトリガースイッチとなっている。
【0030】
一対のモータ55は、各駆動車輪4に夫々連結されており、制御部57から各駆動回路58を介して送信される制御信号に応じて、夫々独立して回転駆動する。これにより、倒立型移動体1は、搭乗者の重心移動に応じて所望の走行を行うことができる。
【0031】
第1ロック機構56は、第1ロック手段の一具体例であり、制御部57から出力される制御信号に応じて、ハンドル2の伸縮動作をロックするロック状態と、ハンドル2の伸縮動作を許可するロック解除状態とに切替る。したがって、第1ロック機構56がロック状態になると、搭乗者はハンドル2を伸縮できない。一方、第1ロック機構56がロック解除状態になると、搭乗者はハンドル2を自由に上下方向へ伸縮させることができる。
【0032】
制御部57は、制御手段の一具体例であり、例えば、制御処理、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)57a、CPU57aによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)57b、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)57c、等からなるマイクロコンピュータを中心にしてハードウェア構成されている。
【0033】
制御部57は、速度検出部51から出力されるステップ台3の移動速度と、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜と、伸縮検出部53から出力されるオン/オフ信号と、切替スイッチ54から出力されるオン/オフ信号と、に基づいて、各モータ55及び第1ロック機構56を制御する。
【0034】
制御部57は、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モード(角度制御モード)と、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有している。
【0035】
例えば、通常制御モードにおいて、制御部57は、搭乗者(もしくはステップ台3)の傾斜のみをキャンセルする方向にステップ台3を移動させて、倒立状態を維持させる制御を行う(図3)。また、位置制御モードにおいて、制御部57は、速度検出部51から出力されるステップ台3の移動速度と、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜と、に基づいて、ステップ台3の傾斜をキャンセルする方向にステップ台3を移動させて倒立状態を維持させつつ、ステップ台3を目標位置に停まるようなフィードバック制御を行う。
【0036】
図4は、制御部が通常制御モードにおいて実行する制御ブロック図である。制御部57は、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜角度に対し積分処理を行い、その積分結果に積分ゲインKaiを乗算する。同時に、制御部57は、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜角度に比例ゲインKapを乗算し、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜角速度に微分ゲインKapを乗算する。最後に、制御部57は、上記算出した各ゲインKai、Kapの乗算結果を加算して、各駆動車輪4の速度(車輪速度)を算出するようなPID制御を行う。制御部57は、算出した各駆動車輪4の速度に応じた制御信号を各モータ55に対して出力する。
【0037】
図5は、制御部が位置制御モードにおいて実行する制御ブロック図である。制御部57は、傾斜検出部52から出力されるステップ台3の傾斜角度に対し積分処理を行い、その積分結果に積分ゲインKaiを乗算する。同時に、制御部57は、傾斜検出部52が出力するステップ台3の傾斜角度に対して比例ゲインKapを乗算し、傾斜検出部52が出力するステップ台3の傾斜角速度に対して微分ゲインKadを乗算する。さらに、同時に、制御部57は、速度検出部51から出力されるステップ台3の移動速度に対し積分処理を行い、その積分結果と設定された目標位置との偏差を算出する。そして、制御部57は、算出した偏差に対し積分処理を行い、その積分結果に積分ゲインKxiを乗算し、算出した偏差に対し比例ゲインKxpを乗算する。また、制御部57は、速度検出部51から出力される移動速度に微分ゲインKxdを乗算する。最後に、制御部57は、上記算出した各ゲインKai、Kap、Kad、Kxi、Kxp、Kxdの乗算結果を加算して、各駆動車輪4の速度を算出するようなPID制御を行う。制御部57は、算出した各駆動車輪4の速度に応じた制御信号を各モータ55に対して出力する。
【0038】
ところで、例えば、ショッピングセンターなどにおいて、人が体勢を変えて商品等に手を伸ばしたい場合(体を前屈し、下方にある商品に手を伸ばす場合など)が多々発生する。この場合、従来の倒立型移動体においては、ハンドルが邪魔になり商品へのアクセスが困難となり、体勢を変えたときにその重心移動により意図しない移動が発生する、などの問題を生じている。
【0039】
そこで、本実施の形態1に係る倒立型移動体1においては、搭乗者によるスイッチ操作に応じて、切替スイッチ54はオン信号を制御部57に対して出力する。制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、第1ロック機構56をロック解除状態に制御すると共に、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる。これにより、搭乗者は、ハンドル2が邪魔にならないようにハンドル2を収縮させることができ、その場合でも、ステップ台3はその場所(目標位置)に停止することができ安定した作業を行うことができる(図6)。すなわち、倒立型移動体1の操作性を向上させることができる。
【0040】
次に、本実施の形態1に係る倒立型移動体1の制御方法について、詳細に説明する。図7は、本実施の形態1に係る倒立型移動体の制御処理フローを示す図である。
【0041】
制御部57が通常制御モードの状態において(ステップS101)、搭乗者が切替スイッチ54を押下操作すると、切替スイッチ54は、制御部57に対してオン信号を出力する(ステップS102)。
【0042】
制御部57は、切替スイッチ54から出力されるオン信号に応じて、第1ロック機構56に対して制御信号を送信し、第1ロック機構56をロック状態からロック解除状態に制御する(ステップS103)。これにより、搭乗者は、作業等がし易いように、ハンドル2を自由に収縮することができる。
【0043】
同時に、制御部57は、切替スイッチ54から出力されるオン信号に応じて、ステップ台3の現在位置を目標位置に設定し(ステップS104)、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる(ステップS105)。これにより、搭乗者はステップ台3に乗った状態で、その位置で安定的に作業等を行うことができる。
【0044】
制御部57は、伸縮検出部53から出力されるオン信号に基づいて、ハンドル2が収縮状態にあるか否かを判断する(ステップS106)。制御部57は、伸縮検出部53からオン信号を受信し、ハンドル2が収縮状態にあると判断したとき(ステップS106のYES)、その後、搭乗者の作業が終了し、伸縮検出部53からオフ信号を受信しハンドル2が伸張状態になると(ステップS107)、下記(ステップS109)処理に移行する。一方、制御部57は、伸縮検出部53からオフ信号を受信しハンドル2が伸張状態にあると判断したとき(ステップS106のNO)、再度搭乗者の押下操作により切替スイッチ54からオン信号を受信すると(ステップS108)、下記(ステップS109)処理に移行する。
【0045】
制御部57は、位置制御モードから通常制御モードに切り替わる(ステップS109)。これにより、倒立型移動体1は搭乗者の走行操作に応じて、所望の走行を行うことができる。
【0046】
以上、本実施の形態1に係る倒立型移動体1において、搭乗者によるスイッチ操作に応じて、切替スイッチ54はオン信号を制御部57に対して出力する。制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、第1ロック機構56をロック解除状態に制御すると共に、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる。これにより、搭乗者は、ハンドル2を収縮させることができ、さらに、ステップ台3もその場に停止させることができるため、安定した作業を行うことができる。すなわち、倒立型移動体1の操作性を向上させることができる。
【0047】
次に、上記実施の形態1の変形例について、説明する。
上記実施の形態1において、上記(ステップS102)の切替スイッチ54の押下操作後に、さらに、再度、搭乗者が一定時間(数秒程度)継続して切替スイッチ54を押下し、制御部57が切替スイッチ54からオン信号を一定時間継続して受信したときだけ、第1ロック機構56をロック状態からロック解除状態に制御するようにしてもよい。これは、制御部57のモード切替えを行う際に、必ずしもハンドル2を収縮したい訳ではないためである。上記の如く、切替スイッチ54を長押してハンドル2を収縮したい意図を明確にすることで操作ミスを軽減することができる。
【0048】
さらに、例えば、切替スイッチ54が「半押し」されたとき、切替スイッチ54は第1信号を制御部57に対して出力し、切替スイッチ54が「深押し」されたとき切替スイッチ54は第2信号を制御部57に対して出力するように構成されていてもよい。この場合、切替スイッチ54が「半押し」され、制御部57は切替スイッチ54から第1信号を受信すると、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる。さらに、切替スイッチ54が「深押し」され、制御部57が切替スイッチ54から第2信号を受信すると、第1ロック機構56をロック状態からロック解除状態に切替える。なお、上記切替スイッチ54の操作方法は、一例であり任意の操作方法が適用可能である。
【0049】
上記実施の形態1において、制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、通常制御モードから位置制御モードに切り替わった後、第1ロック機構56をロック状態からロック解除状態に切替えてもよい。これにより、位置制御モードに切り替わり、ステップ台3が目標位置に停止することを確認した後、第1ロック機構56をロック解除状態にしてハンドル2を収縮させるため、より安全性が向上する。
【0050】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る倒立型移動体20は、搭乗者の両足が夫々乗り、搭乗者の重心移動に応じて左右方向へ相互に略平行に傾斜可能に設けられた一対の分割ステップ23と、各分割ステップ23を左右方向へ略平行に傾斜させるパラレルリンク機構(リンク機構)24と、パラレルリンク機構24の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態にする第2ロック機構(第2ロック手段)25と、を備えている(図8)。
【0051】
また、切替スイッチ54の操作に応じて、第2ロック機構25のロック状態及びロック解除状態の切替えと、制御部57のモード切替えと、を連動して実行される。例えば、搭乗者により切替スイッチ54が押下操作されると、切替スイッチ54から制御部57に対してオン信号が出力される。制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、各分割ステップ23が略水平状態で維持されるように第2ロック機構25をロック状態に切替えた後、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる。なお、本実施の形態2において、他の構成は上記実施の形態1と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0052】
図9は、本実施の形態2に係る倒立型移動体の制御処理フローを示すフローチャートである。
【0053】
制御部57が通常制御モードの状態において(ステップS201)、搭乗者が切替スイッチ54を押下操作すると、切替スイッチ54は、制御部57に対してオン信号を出力する(ステップS202)。
【0054】
制御部57は、切替スイッチ54から出力されるオン信号に応じて、第2ロック機構25に対して制御信号を送信し、第2ロック機構25をロック解除状態からロック状態に制御する(ステップS203)。これにより、パラレルリンク機構24の傾斜動作がロックされ、各分割ステップ23は略水平状態で維持される。
【0055】
次に、制御部57は、各分割ステップ23の現在位置を目標位置に設定し(ステップS204)、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる(ステップS205)。これにより、各分割ステップ23は、目標位置に停止する。そして、搭乗者は、各分割ステップ23上に乗った状態でその場所で安定的に作業等を行うことができる。
【0056】
搭乗者は、作業等が終了すると、再度、切替スイッチ54を押下操作し、切替スイッチ54は制御部57に対してオン信号を出力する(ステップS206)。
【0057】
制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、位置制御モードから通常制御モードに切り替わる(ステップS207)。さらに、制御部57は、第2ロック機構25をロック状態からロック解除状態に制御する(ステップS208)。これにより、パラレルリンク機構24の傾斜動作のロックが解除され、搭乗者の重心移動に応じて、パラレルリンク機構24は左右方向へ傾斜し、通常の走行を行うことができる。
【0058】
以上、本実施の形態2に係る倒立型移動体20において、搭乗者によるスイッチ操作に応じて、切替スイッチ54はオン信号を制御部57に対して出力する。制御部57は、切替スイッチ54からのオン信号に応じて、通常制御モードから位置制御モードに切り替わった後、第2ロック機構25をロック状態に制御する。これにより、各分割ステップ23をその場に停止させ、さらに、各分割ステップ23を略水平状態で安定させることができる。すなわち、倒立型移動体20の操作性を向上させることができる。
【0059】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る倒立型移動体30は、上記実施の形態1及び2を組み合わせた構成となっている。第1ロック機構56によりハンドル2の収縮動作をロック状態及びロック解除状態に切替え、第2ロック機構25によりパラレルリンク機構24の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態に切替え、これら第1及び第2ロック機構56、25の切替えと制御部57のモード切替えとを連動させる。
図10は、本実施の形態3に係る倒立型移動体の制御処理フローを示すフローチャートである。
【0060】
制御部57が通常制御モードの状態において(ステップS301)、搭乗者が切替スイッチ54を押下操作すると、切替スイッチ54は、制御部57に対してオン信号を出力する(ステップS302)。
【0061】
制御部57は、切替スイッチ54から出力されるオン信号に応じて、第2ロック機構25に対して制御信号を送信し、第2ロック機構25をロック解除状態からロック状態に制御し、パラレルリンク機構24の傾斜動作をロックする(ステップS303)。
【0062】
次に、制御部57は、各分割ステップ23の現在位置を目標位置に設定し(ステップS304)、通常制御モードから位置制御モードに切り替わる(ステップS305)。
【0063】
再度、搭乗者により切替スイッチ54が一定時間押下され、制御部57は、切替スイッチ54からそのオン信号を受信すると(ステップS306のYES)、通常制御モードから位置制御モードに切替ったことを確認後、第1ロック機構56をロック状態からロック解除状態に制御して、ハンドル2の伸縮動作のロックを解除する(ステップS307)。一方、搭乗者により切替スイッチ54が一定時間押下されず、制御部57は、切替スイッチ54からそのオン信号を受信しないとき(ステップS306のNO)、下記(ステップS310)処理に移行する。
【0064】
制御部57は、伸縮検出部53から出力されるオン信号に基づいて、ハンドル2が収縮状態にあるか否かを判断する(ステップS308)。制御部57は、伸縮検出部53からオン信号を受信し、ハンドル2が収縮状態にあると判断したとき(ステップS308のYES)、その後、搭乗者の作業等が終了し、伸縮検出部53からオフ信号を受信し、ハンドル2が伸張状態になると(ステップS309)、下記(ステップS310)処理に移行する。一方、制御部57は、伸縮検出部53からオフ信号を受信しハンドル2が伸張状態にあると判断したとき(ステップS308のNO)、下記(ステップS310)処理に移行する。
【0065】
搭乗者が切替スイッチ54を押下操作し、制御部57は、切替スイッチ54からオン信号を受信すると(ステップS310)、位置制御モードから通常制御モードに切り替わる(ステップS311)。
【0066】
次に、制御部57は、第2ロック機構25をロック状態からロック解除状態に切替え、パラレルリンク機構24の傾斜動作のロックを解除し(ステップS312)、本処理を終了する。
【0067】
以上、本実施の形態3に係る倒立型移動体30によれば、搭乗者はハンドル2を収縮させつつ、各分割ステップ23もその場所に停止させることができ、さらに、各分割ステップ23を略水平状態で安定させることができる。すなわち、倒立型移動体30の操作性をより向上させることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0069】
また、上記実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、制御部57の実行する処理を、CPU57aにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0070】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0071】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0072】
1 倒立型移動体
2 ハンドル
3 ステップ台
4 駆動車輪
21 把持部
22 伸縮部
23 分割ステップ
24 パラレルリンク機構
25 第2ロック機構
51 速度検出部
52 傾斜検出部
53 伸縮検出部
54 切替スイッチ
55 モータ
56 第1ロック機構
57 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体であって、
搭乗者が把持し上下方向へ伸縮可能なハンドルと、
前記ハンドルの伸縮動作をロック状態及びロック解除状態にする第1ロック手段と、
倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有する制御手段と、
前記第1ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる切替手段と、
を備えることを特徴とする倒立型移動体。
【請求項2】
請求項1記載の倒立型移動体であって、
前記切替手段は、前記第1ロック手段をロック状態からロック解除状態に切替えると共に、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替える、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項3】
請求項1記載の倒立型移動体であって、
前記切替手段は、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替えた後、前記第1ロック手段をロック状態からロック解除状態に切替える、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいれずれか1項記載の倒立型移動体であって、
搭乗者の両足が夫々乗り左右方向へ相互に略平行に傾斜可能に設けられた一対の分割ステップと、
前記各分割ステップを左右方向へ略平行に傾斜させるリンク機構と、
前記リンク機構の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態にする第2ロック手段と、
を更に備え、
前記切替手段は、前記第2ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項5】
請求項4記載の倒立型移動体であって、
前記切替手段は、第2ロック手段によって、前記各分割ステップが略水平状態で維持されるように前記リンク機構をロック状態にした後、前記制御手段を通常制御モードから位置制御モードに切替える、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の倒立型移動体であって、
前記ハンドルの伸縮状態を検出する伸縮検出手段を更に備え、
前記伸縮検出手段により前記ハンドルが収縮状態から伸張状態になったことが検出されたとき、前記制御手段は位置制御モードから通常制御モードに切替る、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項記載の倒立型移動体であって、
前記ハンドルの伸縮を検出する伸縮検出手段を更に備え、
前記伸縮検出手段により前記ハンドルが収縮状態にならず伸張状態に維持されていることが検出されたとき、前記制御手段は位置制御モードから通常制御モードに切替る、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項記載の倒立型移動体であって、
前記切替手段は、前記ハンドルに設けられ、搭乗者が操作可能なスイッチである、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項9】
搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体であって、
搭乗者の両足が夫々乗り左右方向へ相互に略平行に傾斜可能に設けられた一対の分割ステップと、
前記各分割ステップを左右方向へ略平行に傾斜させるリンク機構と、
前記リンク機構の傾斜動作をロック状態及びロック解除状態にする第2ロック手段と、
倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと、倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードと、を有する制御手段と、
前記第2ロック手段のロック状態及びロック解除状態の切替えと、前記制御手段のモード切替えと、を連動して実行させる切替手段と、
を備えることを特徴とする倒立型移動体。
【請求項10】
搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体の制御方法であって、
搭乗者が把持するハンドルの上下方向への伸縮動作をロック状態及びロック解除状態に切替えるロック切替えと、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードとのモード切替えと、を連動して実行させる
ことを特徴とする倒立型移動体の制御方法。
【請求項11】
搭乗者の重心移動に応じて倒立状態を維持して走行する倒立型移動体のプログラムであって、
搭乗者が把持するハンドルの上下方向への伸縮動作をロック状態及びロック解除状態に切替えるロック切替えと、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うように制御する通常制御モードと倒立状態を維持しつつ目標位置に停まるように制御する位置制御モードとのモード切替えと、を連動して実行させる処理をコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする倒立型移動体のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56601(P2013−56601A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195431(P2011−195431)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】