説明

倒立用の定量噴射型エアゾールバルブ、それを用いたエアゾール製品および倒立用エアゾール製品の噴射器

【課題】圧縮ガスと内容物とからなるエアゾール組成物をエアゾール容器に充填したエアゾール製品を倒立の状態で使用し、かつ、内容物を定量噴射するためのエアゾールバルブを提供する。
【解決手段】耐圧容器11と、その耐圧容器の開口部に取り付けられた定量噴射型エアゾールバルブ12と、耐圧容器に充填されるエアゾール組成物Aからなる倒立の状態で使用する定量噴射型エアゾール製品10。バルブ12は、ハウジング16と、変形自在なタンク17と、ガイドブッシュ18と、ステム19と、スプリング20と、ステムラバー21と、ハウジング16、タンク17、ガイドブッシュ18を固定するバルブ用キャップ22とからなる。バルブ12は、タンク17とガイドブッシュ18によって形成される空間からなる定量室23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立用の定量噴射型エアゾールバルブ、それを用いたエアゾール製品および倒立用エアゾール製品の噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3339900号公報
【特許文献2】実用新案登録第2606515号公報
【0003】
一回の噴射操作で一定量の内容物を噴射する定量噴射型のエアゾール容器が知られている。このようなエアゾール容器は、医薬、化粧品などその使用量が決められている内容物に用いられる。
【0004】
特許文献1には、このような定量噴射型のエアゾール容器であって、噴射剤として圧縮ガスを用い、可撓性の定量室をエアゾールバルブのハウジング内に設けた定量噴射型エアゾールバルブが開示されている。この定量噴射型エアゾールバルブは、ハウジングと、そのハウジング内に配置される可撓性のタンクと、そのタンク内に配置されるガイドブッシュと、そのガイドブッシュ内に上下移動自在に配置されるステムとを備えている。そして、ガイドブッシュとタンクとの間の空間が定量室となっている。また、ハウジングの側部には、容器内の圧力(圧縮ガス)を導入するための連通ホールが形成されており、ガイドブッシュの側部には、内容物を通すホールが形成されている。さらに、このエアゾールバルブは、ハウジングの下端にディップチューブが設けられている。
【0005】
この特許文献1のエアゾールバルブは、正立状態で使用するものであり、ステムが上昇している状態では、内容物がディップチューブを介してハウジング内に導入される。そして、ステムを下降させることにより、ステム孔を開放すると同時に、ステムの下端がタンクをシールする。このとき、タンクの内部は大気と通じるので、タンクの内圧とエアゾール容器の内圧とに差が生じる。これにより、タンクは、連通ホールを通じて圧縮ガスによって押圧されて変形する。そして、定量室の変形した容積分の内容物がホールを介して、ステムに装着される噴射部材の噴出孔より噴射されるものである。
【0006】
特許文献2には、エアゾールバルブのハウジングの外部に定量室が設けられた定量噴射型のエアゾール容器が開示されている。このものは、エアゾールバルブの外部に、可撓性のゴム弁体によって囲まれる定量室を備えている。また、静置状態においては、定量室と内袋内とは連通している。この状態で、ステムを下降させることにより、ステムが定量室と内袋とを遮断する。これによって、バルブおよび定量室の内圧と、内袋の内圧との間に差が生じ、ゴム弁体が内容物に押圧されて変形し、定量室の変形量だけ内容物が噴射されるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のエアゾールバルブは、倒立にした状態では、使用ができない。一方、特許文献2のエアゾールバルブは、倒立状態での使用は可能であるが、内容物が内袋に気密に充填された二重エアゾール容器に用いるものであり、コストが高くなる。
【0008】
本発明は、圧縮ガスと内容物(原液)とからなるエアゾール組成物をエアゾール容器に充填した倒立用の定量噴射型エアゾール製品および、それに使用する定量噴射型エアゾールバルブを提供することを目的としている。また、本発明は、倒立状態で使用するエアゾール製品のための噴射器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の倒立用の定量噴射型エアゾールバルブは、耐圧容器の開口部に挿入して固定される、下底を有する筒状のハウジングと、そのハウジング内に挿入して固定される、変形自在で、下底を有する筒状のタンクと、そのタンク内に挿入して固定される、下底を有する筒状のガイドブッシュと、そのガイドブッシュの中心に上下動自在に挿入される、ステム孔を有するステムと、そのステムを上方に付勢するスプリングと、前記ステム孔とハウジング内との連通を遮断するリング状のステムラバーとを備え、前記タンクとガイドブッシュとの間に形成される空間が定量室となる定量噴射型エアゾールバルブであって、前記ハウジングが、側面に形成された導入孔と、前記タンクを支持するように底部中心に形成された内部筒と、前記内部筒の上端の一部に形成された切り欠き部とを有し、前記タンクが、タンク内外を連通しつつ、ステム下端を嵌入してタンク内をシールするように底部中心に形成されたシール孔と、前記ガイドブッシュを支持しつつ、前記定量室をシールするように前記シール孔の周縁に形成されたシール筒部とを有し、前記ガイドブッシュが、ステムを上下移動自在に通すように底部中心に形成されたステム移動孔と、ガイドブッシュ内と定量部とを連通する連通孔とを有することを特徴としている。
【0010】
このようなエアゾールバルブであって、前記ハウジングが、内面上部に形成された第1段部と、その第1段部の上に形成された第2段部とを有し、前記タンクが、第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、前記ガイドブッシュが、前記タンクのフランジ部を介して第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、前記ステムラバーが、第2段部と係合すると共に、ガイドブッシュのフランジ部を押圧するように構成されており、前記ステムラバーを第2段部に対して押さえつけるようにして、かつ、ハウジングを覆うようにして、耐圧容器に取り付けられるバルブ用のキャップを備えているものが好ましい。
また、前記ステム下端がタンクのシール孔に嵌入したとき、シール孔の周縁がハウジングの切り欠き部をシールするものが好ましい。
【0011】
本発明の倒立用の定量噴射型エアゾール製品は、耐圧容器と、その耐圧容器の開口部に取り付けられる本発明の定量噴射型エアゾールバルブと、耐圧容器に充填される原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物とからなり、前記噴射剤が圧縮ガスであることを特徴としている。
【0012】
本発明の倒立用のエアゾール製品の噴射器は、ステムを有するエアゾールバルブを備え、倒立させて使用するエアゾール製品に用いられる噴射器であって、エアゾール製品を軸方向に摺動自在に、かつ、下端開口にエアゾール製品の下部を露出させるように、収容する噴射器本体と、その噴射器本体に固定される噴射ノズルとからなり、前記噴射器本体が、筒部と、上底と、筒部の上部から半径方向に延びる噴射口部と、上底と噴射口部とを連続する緩やかに湾曲した湾曲面とを備えており、前記噴射口部は、筒状の噴射口部本体と、その先端から上方に延びるつば部とを備え、前記噴射口部本体と、つば部と、湾曲面とによって、上部に凹部を形成していることを特徴としている。
このような噴射器であって、前記噴射器本体の下端に着脱自在に取り付けられるキャップを備えたものが好ましい。また、前記凹部が、筒部の中心軸とつば部との間に設けられているものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の倒立用の定量噴射型エアゾールバルブは、前記タンクをハウジング内に挿入して固定し、前記ハウジングが、側面に形成された導入孔と、前記タンクを支持するように底部中心に形成された内部筒と、前記内部筒の上端の一部に形成された切り欠き部とを有しているため、倒立状態でハウジングとタンクの間からタンク内に内容物を導入することができる。
また、タンクが、タンク内外を連通しつつ、ステム下端を嵌入してタンク内をシールするように底部中心に形成されたシール孔と、前記ガイドブッシュを支持しつつ、定量室をシールするように前記シール孔の周縁に形成されたシール筒部とを有しているため、ステムを下降させることによりシール孔が閉じ、定量室を含むタンク内がハウジングおよびタンクの間の空間(押圧空間)に対してシールされる。このとき、タンク内は大気と連通しており、押圧空間は容器内と連通しているため、内圧差が生じ、可撓性であるタンクは、押圧空間の内容物に押圧されて圧縮変形する。これにより定量室内の内容物が噴射され、その後、噴射が止まる。
さらに、前記ガイドブッシュが、ステムを上下移動自在に通すように底部中心に形成されたステム移動孔と、ガイドブッシュ内と定量室とを連通する連通孔とを有しているため、定量室内の内容物がガイドブッシュを介してステムから噴出する。
【0014】
このようなエアゾールバルブは、前記ハウジングが、内面上部に形成された第1段部と、その第1段部の上に形成された第2段部とを有し、前記タンクが、第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、前記ガイドブッシュが、前記タンクのフランジ部を介して第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、前記ステムラバーが、第2段部と係合すると共に、ガイドブッシュのフランジ部を押圧するように構成されており、前記ステムラバーを第2段部に対して押さえつけるようにして、かつ、ハウジングを覆うようにして、耐圧容器に取り付けられるバルブ用のキャップを備えている場合、タンク、ガイドブッシュがハウジングにしっかり固定され、タンクが安定して変形する。そのため、安定して同じ容量の内容物を噴射することができる。
【0015】
また、ステム下端がタンクのシール孔に嵌入したとき、シール孔の周縁がハウジングの切り欠き部をシールする場合、定量室内への通路を二重にシールすることができ、定量性が高い。
【0016】
本発明の倒立用の定量噴射型エアゾール製品は、耐圧容器と、その耐圧容器の開口部に取り付けられる本発明の定量噴射型エアゾールバルブと、耐圧容器に充填される原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物とからなり、前記噴射剤が圧縮ガスであるため、倒立状態で使用することにより、圧縮ガスを残して原液だけを噴射することができる。
【0017】
本発明の噴射器は、ステムを有するエアゾールバルブを備え、倒立させて使用するエアゾール製品に用いられる噴射器であって、エアゾール製品を軸方向に摺動自在に収容する噴射器本体と、その噴射器本体に固定される噴射ノズルとからなり、前記噴射器本体が、筒部と、上底と、筒部の上部から半径方向に延びる噴射口部と、上底と噴射口部とを連続する緩やかに湾曲した湾曲面とを備えており、前記噴射口部は、筒状の噴射口部本体と、その先端から上方に延びるつば部とを備え、前記噴射口部本体と、つば部と、湾曲面とによって、上部に凹部を形成しているため、凹部に指掛けて使用することにより、この噴射器を備えたエアゾール製品を倒立して使用しやすい。また、噴射ノズルが噴射器本体に固定されているので、エアゾール製品の交換が容易である。
【0018】
このような噴射器であって、前記噴射器本体の下端に取り付けられるキャップを備えている場合、不使用あるいは静置状態において、エアゾール製品を誤作動しないように保護することができる。特に、キャップの底面にスポンジなどの弾性部材を設けることにより、エアゾール製品毎にステムの高さが異なってもその効果は高い。
また、前記凹部が、筒部の中心軸とつば部との間に設けられている場合、親指で凹部を把持し、中指で筒部を側面から支えながら人差し指で容器の底部を押すことができ、エアゾール製品を倒立状態で自然な姿勢で使用者自身に対して噴射操作することができる。さらに、つば部の向きを指で認識できるため、目で見えない患部であっても正確に噴射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に図面を用いて本発明を説明する。図1は、本発明の倒立用の定量噴射型エアゾール製品の一実施形態を示す縦断面図、図2a、b、cは、図1のエアゾール製品のハウジング、タンク、ガイドブッシュを示す縦断面図、図3は、図1のエアゾール製品のステムを下降させたときの作動状態図、図4は、本発明の噴射器の一実施形態を示す縦断面図、図5は、図4の噴射器の使用法を示す作動状態図である。
【0020】
図1のエアゾール製品10は、耐圧容器11と、その耐圧容器の開口部に取り付けられた定量噴射型エアゾールバルブ(以下、バルブ)12と、耐圧容器に充填されるエアゾール組成物Aとからなる。耐圧容器11は、従来公知のものであり、底部、胴部、肩部、首部からなり、首部に環状の係合凹部11aを備えており、アルミニウムなどの金属板から成形されたものである。しかし、合成樹脂や耐圧ガラスから成形してもよい。また、エアゾール組成物Aは、原液A1と、圧縮ガスからなる噴射剤A2とからなる。そして、エアゾール製品10は、図1の状態から倒立させて使用するものである。
【0021】
バルブ12は、耐圧容器11の開口部に挿入して係止されるハウジング16と、そのハウジング内で係止される、可撓性を有する変形自在なタンク17と、そのタンク内で係止されるガイドブッシュ18と、そのガイドブッシュ内に上下動自在に挿入されるステム19と、そのステムを上方に付勢するスプリング20と、ハウジングの上端に係止されるステムラバー21と、ステムラバーを押さえつけるようにしてハウジングを覆い、ハウジング16、タンク17、ガイドブッシュ18を固定するバルブ用キャップ22とからなる。このバルブ12は、タンク17とガイドブッシュ18によって形成される空間からなる定量室23を有する。
【0022】
ハウジング16は、図2aに示すように、下端が下底25で閉じられ、上端に環状のフランジ部26を有する筒状のものであり、側面に導入孔27が形成されている。この導入孔27は、耐圧容器11内の圧縮ガスA2の圧力を原液A1を介してタンク17に伝えると共に、原液を定量室に導入するものである。この導入孔27は、側面のなるべく上の方に設けるのがよい。一方、ハウジング16の底部25の内面中心にタンク17を支持する内部筒28が形成されており、側面の上部にタンクおよびガイドブッシュを係止する第1段部29およびステムラバーを係止する第2段部30が形成されている。さらに、内部筒28の上端の一部には、切り欠き部31が形成されている。内部筒28の下底は、ステム19の下端を受け入れるため、下底25より下側に突出する突出部32を備えている。
【0023】
ハウジング16は、フランジ部26がガスケット33を介して耐圧容器11の開口部と係合して、耐圧容器11に係止される(図1参照)。このハウジング16は、バルブの構成部品を所定の形態に維持すると共に、倒立状態のときに、内容物をタンク内に導く作用を奏する。
【0024】
タンク17は、図2bに示すように、下端に下底35を有し、上端に環状のフランジ部36を有する筒状のものであり、下底35の中心に、タンク内外を連通し、ステム下端を嵌入させることによりタンク内をシールするシール孔37が形成されている。また、下底35内面の中心には、ガイドブッシュ18を支持しつつ、定量室23をシールするシール筒部38が形成されている。
【0025】
このタンク17は、フランジ部36がハウジングの第1段部29と係合して支持され、底部35がハウジングの内部筒28と係合して、ハウジング16に係止される。そして、このタンク17の圧縮変形時と復帰時の容積の差によって一回の噴出量が決まる。
【0026】
ガイドブッシュ18は、図2cに示すように、下底40を有し、上端に環状のフランジ部41を有する筒状のものである。また、ガイドブッシュ18は、下底40の中心にステム19を上下動自在に通すステム移動孔42を備えており、側面にガイドブッシュ18内と定量室23とを連通する連通孔43を備えている。さらに、フランジ部の上面には、ステムラバーと係合する係合突起44が形成されている。そして、ガイドブッシュ18の内面には、スプリング20を支持するスプリング支持部45が設けられている。
【0027】
ガイドブッシュ18は、フランジ部41がタンクのフランジ部36と係合し、下底40がタンクのシール筒部38と係合し、タンク17に係止される。そして、スプリング20を支持し、ステム19をガイドすると共に、タンク17が圧縮されたとき、その内面側を支持して変形量を一定にする作用を奏する。
【0028】
図1に戻って、ステム19は、棒状のものであり、上端に形成された噴出孔51と、上部側面に形成されたステム孔52と、噴出孔51とステム孔52とを連通するステム内通路53とを有する。また、ステム19の下端54は、タンクのシール孔37と嵌合しやすいように、縮径している。さらに、ステムの中部外周には、スプリングと係合する段部55が形成されている。
スプリング20は、従来公知のコイルスプリングが用いられている。このスプリング20は、ガイドブッシュのスプリング支持部45とステムの段部55との間に保持され、ステム19を常に上方に付勢する。
【0029】
ステムラバー21は、その内径面でステムの外周面をシールするように、ステム19が挿入されるリング状のものである。
ステムラバー21は、その外周縁がハウジングの第2段部30と係合すると共に、下面がガイドブッシュの係合突起44と係合することによって係止される。このステムラバー21は、ステムの上部を内挿して支持すると共に、ステムの外周面をシールする作用を奏する。
【0030】
バルブ用キャップ22は、中心にステム19を通す中心孔56を有する上底57を備えた筒状のものである。
このバルブ用キャップ22は、内面でステムラバー21を押さえつけるように、側面でハウジング16および耐圧容器11の開口部を覆うようにして取り付けられ、側面の下端58を耐圧容器の係合凹部11aにカシメつけることにより、耐圧容器11に固定される。
【0031】
エアゾール組成物Aの噴射剤A2としては、窒素、圧縮空気、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等の圧縮ガスが用いられる。また、原液A1に含まれる有効成分としては、点鼻薬、洗鼻薬、点耳薬、洗眼薬などの粘膜に使用するものや、清涼剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤などの皮膚に使用するもの等が用いられる。
【0032】
このエアゾール製品10の製造方法は、原液A1を充填した耐圧容器11にバルブ用キャップ22を装着したバルブ12を被せ、バルブ用キャップの下端58を耐圧容器の係合凹部11aにカシメる。次に、ステムを半作動させてステムの下端54がタンクのシール孔37と嵌合していない状態にし、ステムの外周とバルブ用キャップの中心孔56との隙間から圧縮ガスを充填する。このように充填されるエアゾール製品10は、充填直後には、ハウジング内に原液が無く、噴射剤(気体)で充満している。
ここでエアゾール製品10は、充填後、エアゾール製品を約50℃の湯の中につけて、噴射剤の漏洩の有無を確認する(温水検査)。しかし、バルブ内がガスで充満されているため、シリコーンゴムや合成ゴムなどの弾性材料により成型されるバルブのタンク17が、温水検査による熱によって劣化しにくい。
【0033】
このエアゾール製品10の使用方法は、図3に示すように、倒立させて使用する。つまり、倒立させることにより原液A1が、噴射剤A2によって押圧されて、導入孔27、切り欠き部31、シール孔37、ガイドブッシュのステム移動孔47、ガイドブッシュの連通孔43を介して定量室23に至り、バルブ12の全体に導入される。
【0034】
このようにエアゾール製品10を倒立させたまま、図3に示すように、ステム19を耐圧容器11に対して下降(図3では、上昇)させると、ステム孔52がガイドブッシュ内と連通すると同時に、タンクのシール孔37がステム下端54によってシールされる。つまり、タンク17の内圧が外気と同じになり、耐圧容器11の内圧との間に差ができる。
そのため、ステムを下降させると同時に、タンク17は、タンク17とハウジング16との間の原液A1によって、ガイドブッシュ18の方向に押圧変形する。
【0035】
この変形によって定量室23が潰れ、その定量室の量だけ原液が噴出される。このとき、ガイドブッシュ18は、タンク17の変形を支持する。そのため、ステム19を元に戻したとき、タンク17は、元の形状に戻り、同じ大きさの定量室23が再度形成される。
【0036】
このようにエアゾール製品10は、正立した状態では、連続使用ができず、倒立させた状態で、原液を定量噴射することができるものである。
【0037】
図4に示す倒立用のエアゾール製品を収容する噴射器60は、筒状の噴射器本体61と、その中に設けられた噴射ノズル62と、噴射器本体のキャップ63とからなる。図4では、図1のエアゾール製品10を収容している。
【0038】
噴射器本体61は、筒部66と、上底67と、筒部66の上部から半径方向に延びる噴射口部68とからなる。筒部66の内面には、エアゾール製品10を支持するリブ71が形成されている。上底67の内面には、噴射ノズル62と係合する段部72が形成されている。噴射口部68は、筒状の噴射口部本体73と、その先端から上方に延びるつば部74とからなる。また、噴射口部68と、上底67とは、上底67から噴射口部68に向かって緩やかに湾曲する湾曲面75によって連続している。また、筒部下端の内面には、キャップと係合する内面係合部69が形成されている。
この噴射口部本体73と、つば部74と、湾曲面75によって凹部が形成され、この凹部が指掛部76となる。
【0039】
このような噴射器本体は、筒部の外径が5〜50mm、特に、10〜40mmであるものが好ましい。筒部の外径が5〜50mmの場合、指掛部に指を掛けて使用することによりエアゾール組成物の噴霧方向の特定が行いやすい。外径が50mmより大きい場合、耐圧容器の底部を押しにくくなる。一方、外径が5mmより小さい場合、指掛部に指をかけても、その使用が困難となる。
さらに、本実施形態では、筒部の長さが、筒部の下端開口からエアゾール製品の下端が突出するように構成されている。これにより、エアゾール製品の下端を噴射器本体に対して押すことにより、噴射させることができる。しかし、筒部の下端開口からエアゾール製品の下端が突出していなくてもよい。この場合、指を筒部の下端開口から挿入して、エアゾール製品の底部を押すことにより、噴射させることができる。
【0040】
噴射ノズル62は、ノズル本体77と、そのノズル本体に取り付けられるノズルチップ78とからなる。ノズル本体77は、ステム係合部79と、ノズルチップが取り付けられる取付部80と、ステム係合部79と取付部80とを連通する通路81とを備えている。ノズルチップ78は、噴射孔82が形成されており、ノズルチップ78をノズル本体に取り付けることによってメカニカルブレークアップ機構の作用が得られ、原液をミスト状に噴射する。
【0041】
キャップ63は、下底86を有する筒状のものであり、下底内面にスポンジなどの弾性部材87が設けられている。また、上端には、噴射器本体61の内面係合部69と係合する外面段部88が形成されている。
【0042】
このような噴射器60は、噴射ノズルのステム係合部79にエアゾール製品のステム19の先端を取り付け、キャップ63を噴射器本体61に取り付けることにより、エアゾール製品10を収容する。そして、キャップ63を取り外して、倒立させて使用する(図5参照)。
図5に、噴射器60の一使用方法を示す。つまり、倒立させて使用する場合、指掛部76に親指を掛けることによって、噴射口部68の向きを調整することができ、原液の噴射方向を特定しやすい。また、指掛部は筒部(ステム)の中心軸とつば部との間にあり、指掛部を親指で支えながら、中指で筒部の側面を保持することができるため、耐圧容器の底部を押しても噴射方向が変化しにくく噴射方向が安定する。さらに、噴射ノズル62が固定されているため、エアゾール製品の取替えが可能であり、再使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の倒立用の定量噴射型エアゾール製品の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図2a、b、cは、図1のエアゾール製品のハウジング、タンク、ガイドブッシュを示す側面断面図である。
【図3】図1のエアゾール製品のステムを下降させたときの状態図である。
【図4】本発明の噴射器の一実施形態を示す一部側面断面図である。
【図5】図4の噴射器の使用法を示す状態図である。
【符号の説明】
【0044】
A エアゾール組成物
A1 原液
A2 噴射剤
10 エアゾール製品
11 耐圧容器
11a 係合凹部
12 バルブ
16 ハウジング
17 タンク
18 ガイドブッシュ
19 ステム
20 スプリング
21 ステムラバー
22 バルブ用キャップ
23 定量室
25 ハウジングの下底
26 ハウジングのフランジ部
27 導入孔
28 内部筒
29 第1段部
30 第2段部
31 切り欠き部
32 突出部
33 ガスケット
35 タンクの下底
36 タンクのフランジ部
37 シール孔
38 シール筒部
40 ガイドブッシュの下底
41 ガイドブッシュのフランジ部
42 ステム移動孔
43 連通孔
44 係合突起
45 スプリング支持部
51 噴出孔
52 ステム孔
53 ステム内通路
54 ステムの下端
55 段部
56 中心孔
57 バルブ用キャップの上底
58 バルブ用キャップの下端
60 噴射器
61 噴射器本体
62 噴射ノズル
63 キャップ
66 筒部
67 上底
68 噴射口部
69 内面係合部
71 リブ
72 段部
73 噴射口部本体
74 つば部
75 湾曲面
76 指掛部
77 ノズル本体
78 ノズルチップ
79 ステム係合部
80 取付部
81 通路
82 噴射孔
86 下底
87 弾性部材
88 外面段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器の開口部に挿入して固定される、下底を有する筒状のハウジングと、
そのハウジング内に挿入して固定される、変形自在で、下底を有する筒状のタンクと、
そのタンク内に挿入して固定される、下底を有する筒状のガイドブッシュと、
そのガイドブッシュの中心に上下動自在に挿入される、ステム孔を有するステムと、そのステムを上方に付勢するスプリングと、
前記ステム孔とハウジング内との連通を遮断するリング状のステムラバーとを備え、
前記タンクとガイドブッシュとの間に形成される空間が定量室となる定量噴射型エアゾールバルブであって、
前記ハウジングが、側面に形成された導入孔と、前記タンクを支持するように底部中心に形成された内部筒と、前記内部筒の上端の一部に形成された切り欠き部とを有し、
前記タンクが、タンク内外を連通しつつ、ステム下端を嵌入してタンク内をシールするように底部中心に形成されたシール孔と、前記ガイドブッシュを支持しつつ、前記定量室をシールするように前記シール孔の周縁に形成されたシール筒部とを有し、
前記ガイドブッシュが、ステムを上下移動自在に通すように底部中心に形成されたステム移動孔と、ガイドブッシュ内と定量室とを連通する連通孔とを有する、倒立用の定量噴射型エアゾールバルブ。
【請求項2】
前記ハウジングが、内面上部に形成された第1段部と、その第1段部の上に形成された第2段部とを有し、
前記タンクが、第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、
前記ガイドブッシュが、前記タンクのフランジ部を介して第1段部と係合するように上端に形成されたフランジ部を有し、
前記ステムラバーが、第2段部と係合すると共に、ガイドブッシュのフランジ部を押圧するように構成されており、
前記ステムラバーを第2段部に対して押さえつけるようにして、かつ、ハウジングを覆うようにして、耐圧容器に取り付けられるバルブ用のキャップを備えた請求項1記載の倒立用の定量噴射型エアゾールバルブ。
【請求項3】
前記ステム下端がタンクのシール孔に嵌入したとき、シール孔の周縁がハウジングの切り欠き部をシールする、請求項1記載の倒立用の定量噴射型エアゾールバルブ。
【請求項4】
耐圧容器と、その耐圧容器の開口部に取り付けられる請求項1〜3記載の定量噴射型エアゾールバルブと、耐圧容器に充填される原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物とからなり、前記噴射剤が圧縮ガスである、倒立用の定量噴射型エアゾール製品。
【請求項5】
ステムを有するエアゾールバルブを備え、倒立させて使用するエアゾール製品に用いられる噴射器であって、
エアゾール製品を軸方向に摺動自在に、かつ、下端開口にエアゾール製品の下部を露出させるように、収容する噴射器本体と、その噴射器本体に固定される噴射ノズルとからなり、
前記噴射器本体が、筒部と、上底と、筒部の上部から半径方向に延びる噴射口部と、上底と噴射口部とを連続する緩やかに湾曲した湾曲面とを備えており、
前記噴射口部は、筒状の噴射口部本体と、その先端から上方に延びるつば部とを備え、
前記噴射口部本体と、つば部と、湾曲面とによって、上部に凹部を形成している、倒立用エアゾール製品の噴射器。
【請求項6】
前記噴射器本体の下端に着脱自在に取り付けられるキャップを備えた請求項5記載の噴射器。
【請求項7】
前記凹部が、筒部の中心軸とつば部との間に設けられている、請求項6記載の噴射器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−254751(P2008−254751A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96895(P2007−96895)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】