説明

偏光板、表示パネル、電子機器及び表示パネルの製造方法

【課題】表示パネルの製造に際してコストを増大させることなく、偏光板や保護部材と接着層との間に気泡を巻き込むことを抑制できる偏光板を提供する。
【解決手段】正面接着層付き偏光板12は、一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部5と、本体部5の一対の面のうちの一方の面54に設けられた第一接着層10と、本体部5の一対の面のうちの他方の面55に設けられた第二接着層11と、を備え、第一接着層10及び第二接着層11が最外面となるようにそれぞれ設けられ、本体部5の剛性が第一接着層10の剛性よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、表示パネル、電子機器及び表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルの観察面側に保護部材を取り付ける場合、表示パネルの観察面に接着層を設け、その接着層を介して保護部材を設けることにより保護部材を接合していた。かかる表示パネルとして、例えば特許文献1には、対向する2つのガラス基板の外側に偏光板を貼り付けて構成される液晶表示パネルに、透明接着剤を介して保護パネルを取り付けた液晶表示モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記表示パネルにあっては、偏光板と保護部材との間に設けられる接着層は偏光板や保護部材と別体であるため、表示パネルを製造する際に、接着層を設ける工程が必要となる。また、その際に偏光板や保護部材と接着層との間に気泡を巻き込むおそれがある。気泡を巻き込まないようにするためには真空装置等を用いる必要があり、製造コストの増大及び作業効率の低下を招いていた。
【0005】
そこで本発明の課題は、表示パネルの製造に際してコストを増大させることなく、偏光板や保護部材と接着層との間に気泡を巻き込むことを抑制できる偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、
前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、
前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、を備え、
前記第一接着層及び前記第二接着層が最外面となるようにそれぞれ設けられ、
前記本体部の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高いことを特徴とする偏光板が提供される。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、
前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、
前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、
前記第一接着層を介して前記本体部に接合された板状の保護部材と、を備え、
前記本体部又は前記保護部材の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高いことを特徴とする偏光板が提供される。
【0008】
上記偏光板において、好ましくは、前記保護部材の外形は、前記本体部の外形と同一である。
上記偏光板において、好ましくは、前記保護部材の一対の面のうち前記第一接着層に接合された面の反対側の面に、ハードコート処理が施されている。
上記偏光板において、好ましくは、前記保護部材がタッチパネルである。
上記偏光板において、好ましくは、前記本体部は、透光性を有する支持体と、前記支持体に積層された偏光子と、を有し、
前記第一接着層は、前記偏光子のうち前記支持体が配置される側の反対側の面に接触して設けられている。
上記偏光板において、好ましくは、前記本体部は、透光性を有する一対の支持体と、前記一対の支持体に挟まれるように配置された偏光子と、を有し、
前記第一接着層は、前記一対の支持体のうち一方の支持体の、前記偏光子が配置された側の反対側の面に設けられ、
前記第二接着層は、前記一対の支持体のうち他方の支持体の、前記偏光子が配置された側の反対側の面に設けられている。
上記偏光板において、好ましくは、前記支持体は位相差板である。
上記偏光板において、好ましくは、前記支持体の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高い。
【0009】
また、本発明の更に他の態様によれば、
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項1に記載の偏光板と、前記第一接着層を介して前記偏光板に接着された保護部材と、を備えることを特徴とする表示パネルが提供される。
【0010】
また、本発明の更に他の態様によれば、
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項2又は3に記載の偏光板と、を備えることを特徴とする表示パネルが提供される。
【0011】
上記表示パネルにおいて、好ましくは、前記表示素子は液晶表示素子、EL表示素子、PDP表示素子又はOLED表示素子である。
【0012】
また、本発明の更に他の態様によれば、
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項1に記載の偏光板と、前記偏光板よりも外形が大きく形成され前記第一接着層を介して前記偏光板に接着された保護部材と、を有する表示パネルと、
前記保護部材の周縁部に接合された筺体と、を備えることを特徴とする電子機器が提供される。
【0013】
また、本発明の更に他の態様によれば、
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項2又は3に記載の偏光板と、を有する表示パネルと、
前記透明基板の周縁部に接合された筺体と、を備えることを特徴とする電子機器が提供される。
【0014】
上記電子機器において、好ましくは、前記保護部材がタッチパネルである。
【0015】
また、本発明の更に他の態様によれば、
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、を備え、前記第一接着層及び前記第二接着層が最外面となるようにそれぞれ設けられ、前記本体部の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高い偏光板を準備する偏光板準備工程と、
前記偏光板を前記第二接着層を介して表示素子に貼り合わせる偏光板貼り合わせ工程と、
保護部材を準備する保護部材準備工程と、
前記保護部材を前記第一接着層を介して前記偏光板に貼り合わせる保護部材貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法が提供される。
【0016】
上記表示パネルの製造方法において、好ましくは、前記偏光板準備工程において、
複数の前記偏光板を形成可能な大きさを有する個片化前の偏光板の一方の面に、複数の前記第二接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第二接着層が形成された、背面接着層付きの個片化前の偏光板を準備し、次いで、
前記背面接着層付きの個片化前の偏光板のうち前記個片化前の第二接着層が形成された面の反対側の面に、複数の前記第一接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第一接着層をロールで接合して、正面接着層付きの個片化前の前記偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層付きの個片化前の偏光板を切断して、前記偏光板を形成する。
上記表示パネルの製造方法において、好ましくは、前記保護部材貼り合わせ工程において、
偏光板貼付装置を用いて、前記保護部材を前記偏光板に貼り合わせる。
【0017】
また、本発明の更に他の態様によれば、
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、前記第一接着層を介して前記本体部に接合された板状の保護部材と、を備え、前記保護部材の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高い偏光板を準備する偏光板準備工程と、
前記偏光板を前記第二接着層を介して表示素子に貼り合わせる偏光板貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法が提供される。
【0018】
上記表示パネルの製造方法において、好ましくは、前記偏光板準備工程において、
複数の前記偏光板を形成可能な大きさを有する個片化前の偏光板の一方の面に、複数の前記第二接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第二接着層が形成された、背面接着層付きの個片化前の偏光板を準備し、次いで、
前記背面接着層付きの個片化前の偏光板のうち前記個片化前の第二接着層が形成された面の反対側の面に、複数の前記第一接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第一接着層をロールで接合して、正面接着層付きの個片化前の偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層付きの個片化前の偏光板に、前記個片化前の第一接着層を介して、複数の前記保護部材を形成可能な大きさを有する個片化前の保護部材をロールで接合して、正面接着層及び保護部材付きの個片化前の偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層及び保護部材付きの個片化前の偏光板を切断して、前記偏光板を形成する。
上記表示パネルの製造方法において、好ましくは、前記偏光板貼り合わせ工程において、
偏光板貼付装置を用いて、前記偏光板を前記表示素子に貼り合わせる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表示パネルの製造に際してコストを増大させることなく、偏光板や保護部材と接着層との間に気泡を巻き込むことを抑制できる偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における電子機器の一部を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態における表示パネルを示す模式断面図である。
【図3】第1の実施形態における正面接着層付き偏光板を示す模式断面図である。
【図4】第1の実施形態における表示パネルの製造工程を示す概略図である。
【図5】図4に示す製造工程の説明図である。
【図6】第1の実施形態における正面接着層付き偏光板の変形例を示す模式断面図である。
【図7】第1の実施形態における表示パネルの変形例を示す模式断面図である。
【図8】第2の実施形態における電子機器の一部を示す断面図である。
【図9】第2の実施形態における表示パネルの製造工程を示す概略図である。
【図10】図9に示す製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0022】
<第1の実施の形態>
図1は、電子機器100の一部を示す断面図であり、図2は、表示パネル1を示す模式断面図である。電子機器100は、表示パネル1、光源装置2及び筺体3等を備える。表示パネル1は、表示素子15、正面接着層付き偏光板12、保護部材4、偏光板8及び輝度向上フィルム9等を備える。
【0023】
表示素子15は、アクティブマトリクス方式の液晶表示素子であり、第一透明基板6と第二透明基板7が液晶層(図示略)を介して対向配置されて構成されている。第一透明基板6と第二透明基板7の互いに向き合う内面には、第一と第二の透明電極(図示省略)が設けられている。第一と第二の透明電極は、電圧の印加により液晶層の液晶分子の配向状態を変化させて光の透過を制御する複数の画素をマトリクス状に形成している。従来の薄型の液晶表示素子では一対の透明基板がそれぞれ0.3mm程度の厚みを有していたが、本発明の薄型の液晶表示素子では第一透明基板6及び第二透明基板7の厚みが例えばそれぞれ0.5〜0.7mm程度となっており、従来の薄型の液晶表示素子よりも大きく形成されている。これにより表示素子15の強度が従来のものよりも高くなっている。また、第二透明基板7には、上記の透明電極間に駆動電圧を印加するための表示用駆動回路(図示略)が搭載されている。
【0024】
偏光板8は、表示素子15の背面に貼り付けられている。更に偏光板8の背面には輝度向上フィルム9が貼り付けられている。輝度向上フィルム9としては、例えばDBEF、APCF、APF(以上、住友スリーエム(株)製)等が用いられる。
【0025】
正面接着層付き偏光板12について図3を参照して説明する。図3は、正面接着層付き偏光板12を示す模式断面図である。正面接着層付き偏光板12は表示素子15の正面に貼り付けられ、本体部5と、第一接着層10と、第二接着層11と、を積層して構成されている。
【0026】
本体部5は、偏光子51及び一対の支持体52,53を積層して構成される板状部材である。支持体52は偏光子51の正面側に設けられるとともに、支持体53は偏光子51の背面側に設けられている。このように偏光子51が一対の支持体に挟まれていることにより、本体部5の強度及び剛性が高められている。また、偏光子51はPVA(polyvinyl alcohol)からなり、支持体52,53はTAC(triacetyl cellulose)からなる。かかる本体部5の厚みとしては、例えば0.17mm程度である。なお、液晶モードがVAモード又はIPSモードである場合には、支持体53は位相差板であってもよい。
【0027】
第一接着層10は、本体部5のうち正面側の面54(支持体52の正面)に設けられている。この第一接着層10を介して保護部材4が本体部5に接合され、保護部材4と本体部5とが一体化されている。第二接着層11は、本体部5のうち背面側の面55(支持体53の背面)に設けられている。第二接着層11を介して該本体部5が表示素子15の正面に接合されている。これら第一接着層10及び第二接着層11は、アクリル樹脂を主成分とする粘着剤である。本体部5は第一接着層10よりも剛性が高く形成されており、特に、支持体52,53の剛性は第一接着層10の剛性よりも高く形成されている。
【0028】
保護部材4は、第一接着層10を介して本体部5の正面に接合される板状の透明樹脂部材である。保護部材4の外形は、本体部5の外形よりも大きく形成されている。
また、保護部材4の正面にはハードコート処理が施され、表面保護機能を有する。保護部材4が有する表面保護機能は、鉛筆硬度3H以上、全光線透過率89%、軟化点100℃以上、各種耐薬品性であることが好ましい。このような保護部材4として、例えば、テクノロイ(住友化学(株)製)の両面に同組成のハードコート処理を施したスミエレック(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0029】
また、透明基板6,7を厚くすることで表示素子15の強度が従来よりも高く設定されているため、保護部材4は強度補填機能を有していなくてもよい。すなわち保護部材4の厚みを薄く設定することができ、その厚みとしては例えば0.2mm程度である。これにより表示パネル1全体の厚みを薄くすることができる。
なお、既存の偏光板貼付装置を用いて保護部材4を本体部5に貼り付ける場合には、保護部材4が反り1%以下の平坦性を有するとともに0.8mm以下の厚みであり、且つ第一接着層10の厚みが50μm以下であることが好ましい。
【0030】
光源装置2は、図1に示すように表示パネル1の背面に対向して配置され、表示パネル1に光を照射するものである。光源装置2は、導光板25の正面に3枚の光学シート22〜24が積層され、更にその正面側に正面視略ロ字状の遮光シート21が貼り付けられて構成されている。
【0031】
筺体3は、表示パネル1及び光源装置2等を収容する部材である。筺体3の正面側には開口部31が設けられ、該開口部31から表示パネル1の正面が露出している。また開口部31は、該開口部31よりも大きく形成された保護部材4によって塞がれており、筺体3と保護部材4の背面周縁部とが接合されている。これにより表示パネル1が筺体3に固定されている。
【0032】
ここで、保護部材の強度補填機能及び表面保護機能の観点から、本発明の薄型の表示パネル1と、従来の薄型の表示パネルとの相違点について述べる。
【0033】
近年、表示パネルの薄型化が望まれており、この要求に従って、表示パネルに含まれる透明基板も薄型化されてきている。しかしながら、透明基板が薄くなると表示パネルの強度が低下してしまうことは避けられない。そこで、従来よりも薄型化された表示パネルにおいてこの強度低下を補填するため、近年、表示パネルの外表面に透明基板である強度補填部材が設けられるようになった。この別途設けられる透明基板は、強度補填機能を備えるためにどうしても厚く形成する必要があった。このため、表示素子の正面に接着層を介して強度補填部材を貼り付ける際に、偏光板を貼り付けるための装置である偏光板貼付装置を用いることができなかった。
【0034】
一方、近年、薄型化された表示パネルを有する携帯電話やデジタルカメラといった電子機器においては、電子機器自体が薄型化・小型化してきたため、これらの電子機器を例えばポケットに入れて持ち歩くという使用状況が考え得るようになった。そこで、従来の薄型の表示パネルにおいては、電子機器の最外面となる部材のうち特に表示パネルの表示エリアに重なる最外面に傷が付かないように、例えば該最外面にハードコートを形成することにより表面保護機能が付与されていた。従来の薄型の表示パネルでは、表示エリアに重なる最外面に上述の強度補填部材が設けられていたため、強度補填部材の最外面に表面保護機能が付与されていた。
【0035】
本発明の薄型の表示パネル1は、この表面保護機能を備えた保護部材4として、従来の強度補填部材よりも厚さが薄く形成された透明基板が、表示パネル1の正面に設けられている。このとき、保護部材4を偏光板貼付装置を用いて表示素子15に貼り付けることができるように、所望の平坦性や厚さを有する保護部材4を用いるようにした。このように薄く形成された保護部材4は強度補填機能を備えない。このため、表示パネル1が有する第一透明基板6及び第二透明基板7の厚みを、従来の薄型の表示パネルよりも厚く形成して、表示素子自体の強度を十分なものとしておくことが好ましい。即ち、表示素子自体の強度が十分高ければ、保護部材は表面保護機能を備えるだけで良く、強度補填機能を備える必要がないので、保護部材の厚さを薄く形成することができる。
上述のような本発明の薄型の表示パネル1は、従来の薄型の液晶表示パネルと比べると、表示パネル1が有する第一透明基板6及び第二透明基板7の各厚さを厚くする一方で、保護部材4の厚さを薄くすることができるので、薄型の表示パネルにおいて、表示パネル1の厚みを全体として薄くすることができる。
【0036】
なお、上述の通り、近年の薄型の表示パネルは強度補填部材を備えているので、該強度補填部材のうち表示パネルの最外面となる面に表面保護機能を付与していた。しかし、薄型化される以前の表示パネルは、近年の薄型の表示パネルが有するような強度補填部材を、そもそも備えていない。このような強度補填部材を有しない薄型化以前の表示パネルにおいて、表示パネルの厚さを大幅に厚くすることなく表面を保護するために、表示パネルの表示エリアに重なる外表面にハードコートを形成していた。
従って、偏光板を備える表示パネルにおいて該偏光板の支持体が電子機器の最外面に配置される場合には、偏光板の支持体の表面にハードコートを形成する必要があった。しかしながら、支持体は表面硬度が低い材料から形成されているため、その表面硬度を所望の硬度まで高めるためには、ハードコートを厚く形成する必要が生じ、これに伴い、ハードコート自体にクラックが発生することがあった。このため、従来、保護部材を有しない表示パネルでは、表示品位が低下するというおそれがあった。
【0037】
一方、本発明の薄型の表示パネル1においては、保護部材4のうち表示パネル1の最外面に配置される表面にハードコートを形成している。正面接着層付き偏光板12の支持体52,53よりも表面硬度が高くなるような材料によって保護部材4を形成することにより、支持体52,53の表面にハードコートを形成する場合と比べ、ハードコートの厚さを薄く抑えることができる。これにより、本発明の薄型の表示パネル1においては、ハードコートにクラックが生じて表示品位が低下してしまうことがない。
【0038】
次に、第1の実施形態の表示パネル1の製造方法について図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態の表示パネル1の製造工程を示した概略図である。図5(a)〜(d)はその製造工程の説明図であって、図5(a)は偏光板準備工程、図5(b)は偏光板貼り合わせ工程、図5(c)は保護部材準備工程、図5(d)は保護部材貼り合わせ工程をそれぞれ示している。
個片化前の偏光板の一方の面に個片化前の第二接着層が形成された、個片化前の背面接着層付き偏光板を準備する。次に、背面接着層付き偏光板の他方の面に個片化前の第一接着層をロールで接合して、個片化前の正面接着層付き偏光板を形成する。次に、この正面接着層付き偏光板を切断して個片化して、第一接着層10及び第二接着層11がそれぞれ最外面となるように設けられた正面接着層付き偏光板12を得る(偏光板準備工程、図5(a)参照)。次に、図5(b)に示すように、偏光板貼付装置を用いて個片化した正面接着層付き偏光板12を第二接着層11を介して表示素子15に貼り合わせる(偏光板貼り合わせ工程)。また、個片化前の保護部材を切断して個片化して保護部材4を得る(保護部材準備工程、図5(c)参照)。次に、図5(d)に示すように、同じ偏光板貼付装置を用いて、保護部材4を第一接着層10を介して正面接着層付き偏光板12に貼り合わせる(保護部材貼り合わせ工程)。このようにして表示パネル1が製造される。
なお、上述の偏光板準備工程において、背面接着層付き偏光板の他方の面に個片化前の第一接着層をロールで接合する際に、第一接着層のうち背面接着層付き偏光板に接合された側とは反対側に、取り扱い上の利便性のため離形紙を接合しておいても良い。この場合、接合した離形紙は第一接着層10とともに個片化され、更に、偏光板貼り合わせ工程の前に第一接着層10から剥がして廃棄される。また、いずれかの工程において、偏光板8を表示素子15に適宜貼り合わせておく。また、偏光板準備工程は偏光板貼り合わせ工程よりも前に、保護部材準備工程は保護部材貼り合わせ工程よりも前に行う。偏光板準備工程は偏光板貼り合わせ工程よりも前に、保護部材準備工程は保護部材貼り合わせ工程よりも前に行えば良いので、保護部材準備工程を偏光板貼り合わせ工程よりも前に行っても良い。
【0039】
以上の本実施形態によれば、特に、本実施形態の表示パネル1においては、第一接着層10よりも剛性の高い本体部5に予め接着された状態で、第一接着層10が提供される。また、所望の平坦性や厚さを有する保護部材4を用いるようにしたので、偏光板貼付装置を用いて保護部材4を表示素子15に貼り付けることができる。これらにより、表示パネル1の製造時における部材の貼り合わせ工程において、真空装置を用いることなく、即ちコストを増大させることなく、本体部5又は保護部材4と第一接着層10との間に気泡を巻き込むことを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、表示パネル1を製造する際に接着層を設ける工程を省くことができる。これにより、表示パネル1の製造に際して、より一層生産性の向上を図り、製造コストを低減することができる。
また、本発明の薄型の表示パネル1が備える表示素子15を構成する第一透明基板6及び第二透明基板7の厚みを、従来の薄型の表示パネルよりも厚く設定しているため、表示素子15の強度が高く、保護部材4が強度補填機能を有していなくてもよい。これにより保護部材4の厚みを薄くすることができ、結果的に表示パネル1全体の厚みを薄くすることができる。更に、表示素子15の製造工程において、第一透明基板6及び第二透明基板7の厚みを薄くする処理を行う必要がないため、エッチング及び研磨工程を省くことができる。したがって、表示パネルの製造に際してより一層生産性の向上を図り、製造コスト低減に寄与することができる。
【0040】
図6を参照して、正面接着層付き偏光板12の変形例について説明する。図6は、正面接着層付き偏光板12aを示した模式断面図である。
正面接着層付き偏光板12aを構成する本体部5aは、偏光子51と、偏光子51の背面に設けられた支持体53と、を備え、偏光子51の正面に支持体が設けられていない。したがって第一接着層10は偏光子51の正面に直接設けられ、この第一接着層10を介して保護部材4が接合される。第一接着層10を介して保護部材4と本体部5aとが一体化されるため、保護部材4が本体部5aの正面側の支持体を兼ね、本体部5aが所定の強度を保つことができる。なお、液晶モードがVAモード又はIPSモードである場合には、支持体53は位相差板であってもよい。
【0041】
図7を参照して、表示パネル1の変形例について説明する。図7は、表示パネル1bを示した模式断面図である。
保護部材4の背面周縁部には印刷枠13が形成されている。この印刷枠13の形成方法としては、印刷法、転写法又はフォトリソグラフィー等を用いることができ、色や透過率によって適宜選択可能である。印刷枠13は、簡便な方法により形成されたり、色味調整のために多層塗りされたりすることによって厚みが大きく形成される。かかる場合印刷枠13と保護部材4との間に生じる段差を解消するため、印刷枠13の内側には平坦化膜14が設けられている。これにより印刷枠13が設けられていても保護部材4と正面接着層付き偏光板12との間に隙間が生じない。
なお、印刷枠13の厚みが第一接着層10の厚みに対して十分に薄い場合(例えば第一接着層10の10%以下程度)には、平坦化膜14は設けられていなくてもよい。
【0042】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態について図8〜図10を参照して説明する。第1の実施の形態に対応する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図8は、第2の実施の形態における電子機器100Cの一部を示す断面図である。
第2の実施の形態においては、保護部材4cの外形は、正面接着層付き偏光板12の外形と略同一に形成されている。これにより、観察側から見たときに保護部材4cの周縁部において正面接着層付き偏光板12の輪郭が見えない。したがって保護部材4cの背面に印刷枠を形成する工程を省くことができ、コストを増大させることなく生産性の向上を図れる。また、表示素子15の第一透明基板6の正面周縁部が筺体3cの開口部31c近傍の内壁に接合されることで、表示パネル1cが筺体3cに固定されている。
【0044】
第2の実施の形態に係る表示パネル1cの製造方法について図9及び図10を参照して説明する。図9は、本実施形態における表示パネル1cの製造工程を示す概略図である。図10(a),(b)はその製造工程の説明図であって、図10(a)は偏光板準備工程、図10(b)は偏光板貼り合わせ工程をそれぞれ示している。
保護部材4cの外形は正面接着層付き偏光板12の外形と同一に形成されているため、いわゆるマルチ加工プロセスにより正面接着層及び保護部材付き偏光板16を製造することができる。具体的には、まず、個片化前の正面接着層付き偏光板を準備する。個片化前の正面接着層付き偏光板を準備する方法は、上述の第1の実施形態と同様である。次に、個片化前の正面接着層付き偏光板に、個片化前の第一接着層を介して、個片化前の保護部材をロールで接合して正面接着層及び保護部材付き偏光板を得る。次にこの個片化前の正面接着層及び保護部材付き偏光板を切断して個片化し、正面接着層及び保護部材付き偏光板16を得る(偏光板準備工程、図10(a)参照)。次に図10(b)に示すように、この正面接着層及び保護部材付き偏光板16を、第二接着層11を介して表示素子15の正面に対向するように、偏光板貼付装置を用いて貼り合わせる(偏光板貼り合わせ工程)。このようにして表示パネル1cが製造される。
なお、上述の偏光板準備工程において、個片化前の正面接着層及び保護部材付き偏光板を切断して個片化する際に、正面接着層付き偏光板と保護部材とを同時に切断して個片化することにより、保護部材4cの外形を正面接着層付き偏光板12の外形と略同一に形成することができる。また、いずれかの工程において、偏光板8を表示素子15に適宜貼り合わせておく。
【0045】
本実施形態によれば上述の第1の実施の形態と同様の効果を奏する。これに加えて、第一接着層10を介して保護部材4cと正面接着層付き偏光板12とが予め接合されているので、表示パネル1cの製造時における部材の貼り合わせ工程において、真空装置を用いることなく、即ちコストを増大させることなく、保護部材4cと第一接着層10との間に気泡を巻き込むことを効果的に抑制することができる。更に、正面接着層及び保護部材付き偏光板16をマルチ加工プロセスによって、安価且つ容易に多数製造できる。これにより、表示パネル1cの製造に際して、より一層生産性の向上を図り、製造コストを低減することができる。
【0046】
なお、上記各実施形態においては表示パネル1及び表示素子15をそれぞれ液晶表示パネル及び液晶表示素子として説明したが、表示パネル1及び表示素子15は液晶表示パネル及び液晶表示素子にそれぞれ限られるものではなく、EL(Electro Luminescence)表示パネル及びEL表示素子、PDP(Plasma Display Panel)表示パネル及びPDP表示素子又はOLED(Organic light-Emitting Diode)表示パネル及びOLED表示素子といったフラットパネルディスプレイであってもよい。特に、EL表示パネル及びEL表示素子である場合には、表面反射防止の目的で円偏光板が用いられるので本発明を好適に用いることができる。
また、保護部材4は上記した例に限られるものではなく、ガラス基板、プラスチック基板又は静電容量方式を含む諸方式によるタッチパネルであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,1c 表示パネル
3,3c 筺体
4,4c 保護部材
5,5a 本体部
6 第一透明基板
7 第二透明基板
10 第一接着層
11 第二接着層
12,12a 正面接着層付き偏光板
15 表示素子
16 正面接着層及び保護部材付き偏光板
51 偏光子
52 支持体(一方の支持体)
53 支持体(他方の支持体)
54 面(一方の面)
55 面(他方の面)
100,100C 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、
前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、
前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、を備え、
前記第一接着層及び前記第二接着層が最外面となるようにそれぞれ設けられ、
前記本体部の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高いことを特徴とする偏光板。
【請求項2】
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、
前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、
前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、
前記第一接着層を介して前記本体部に接合された板状の保護部材と、を備え、
前記本体部又は前記保護部材の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高いことを特徴とする偏光板。
【請求項3】
前記保護部材の外形は、前記本体部の外形と同一であることを特徴とする請求項2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記保護部材の一対の面のうち前記第一接着層に接合された面の反対側の面に、ハードコート処理が施されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記保護部材がタッチパネルであることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記本体部は、透光性を有する支持体と、前記支持体に積層された偏光子と、を有し、
前記第一接着層は、前記偏光子のうち前記支持体が配置される側の反対側の面に接触して設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記本体部は、透光性を有する一対の支持体と、前記一対の支持体に挟まれるように配置された偏光子と、を有し、
前記第一接着層は、前記一対の支持体のうち一方の支持体の、前記偏光子が配置された側の反対側の面に設けられ、
前記第二接着層は、前記一対の支持体のうち他方の支持体の、前記偏光子が配置された側の反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記支持体は位相差板であることを特徴とする請求項6又は7に記載の偏光板。
【請求項9】
前記支持体の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高いことを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項10】
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項1に記載の偏光板と、前記第一接着層を介して前記偏光板に接着された保護部材と、を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項11】
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項2又は3に記載の偏光板と、を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項12】
前記表示素子は液晶表示素子、EL表示素子、PDP表示素子又はOLED表示素子であることを特徴とする請求項10又は11に記載の表示パネル。
【請求項13】
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項1に記載の偏光板と、前記偏光板よりも外形が大きく形成され前記第一接着層を介して前記偏光板に接着された保護部材と、を有する表示パネルと、
前記保護部材の周縁部に接合された筺体と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
透明基板を有する表示素子と、該表示素子の該透明基板の外面に貼り付けられた請求項2又は3に記載の偏光板と、を有する表示パネルと、
前記透明基板の周縁部に接合された筺体と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項15】
前記保護部材がタッチパネルであることを特徴とする請求項13又は14に記載の電子機器。
【請求項16】
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、を備え、前記第一接着層及び前記第二接着層が最外面となるようにそれぞれ設けられ、前記本体部の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高い偏光板を準備する偏光板準備工程と、
前記偏光板を前記第二接着層を介して表示素子に貼り合わせる偏光板貼り合わせ工程と、
保護部材を準備する保護部材準備工程と、
前記保護部材を前記第一接着層を介して前記偏光板に貼り合わせる保護部材貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記偏光板準備工程において、
複数の前記偏光板を形成可能な大きさを有する個片化前の偏光板の一方の面に、複数の前記第二接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第二接着層が形成された、背面接着層付きの個片化前の偏光板を準備し、次いで、
前記背面接着層付きの個片化前の偏光板のうち前記個片化前の第二接着層が形成された面の反対側の面に、複数の前記第一接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第一接着層をロールで接合して、正面接着層付きの個片化前の前記偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層付きの個片化前の偏光板を切断して、前記偏光板を形成することを特徴とする請求項16に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記保護部材貼り合わせ工程において、
偏光板貼付装置を用いて、前記保護部材を前記偏光板に貼り合わせることを特徴とする請求項16又は17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項19】
一対の面の間に所定の厚みを有する板状の本体部と、前記本体部の前記一対の面のうちの一方の面に設けられた第一接着層と、前記本体部の前記一対の面のうちの他方の面に設けられた第二接着層と、前記第一接着層を介して前記本体部に接合された板状の保護部材と、を備え、前記保護部材の剛性が前記第一接着層の剛性よりも高い偏光板を準備する偏光板準備工程と、
前記偏光板を前記第二接着層を介して表示素子に貼り合わせる偏光板貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記偏光板準備工程において、
複数の前記偏光板を形成可能な大きさを有する個片化前の偏光板の一方の面に、複数の前記第二接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第二接着層が形成された、背面接着層付きの個片化前の偏光板を準備し、次いで、
前記背面接着層付きの個片化前の偏光板のうち前記個片化前の第二接着層が形成された面の反対側の面に、複数の前記第一接着層を形成可能な大きさを有する個片化前の第一接着層をロールで接合して、正面接着層付きの個片化前の偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層付きの個片化前の偏光板に、前記個片化前の第一接着層を介して、複数の前記保護部材を形成可能な大きさを有する個片化前の保護部材をロールで接合して、正面接着層及び保護部材付きの個片化前の偏光板を形成し、次いで、
前記正面接着層及び保護部材付きの個片化前の偏光板を切断して、前記偏光板を形成することを特徴とする請求項19に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項21】
前記偏光板貼り合わせ工程において、
偏光板貼付装置を用いて、前記偏光板を前記表示素子に貼り合わせることを特徴とする請求項16から20の何れか一項に記載の表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8422(P2012−8422A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145767(P2010−145767)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】