説明

偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置

【課題】分光吸収性能に優れ、着色がなく透明性に優れ、また、ブリードアウトが少ない偏光板保護フィルム及びそれを用いて、長期耐光性及び耐久性に優れ、さらには高いコントラストが維持された偏光板と液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【化1】


(式中、R1及びR2は置換基を、R3は水素原子またはアルキル基を、R4及びR5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を、R6及びR7は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を、R8及びR9は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を、R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンの薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶偏光板用の保護フィルムもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなってきている。偏光板保護フィルムには、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されている。
【0003】
上述の技術分野で用いられている偏光板保護フィルムは、紫外線を含む光に晒されると分解が促進され強度低下を引き起こすと同時に、変色により透明度が低下するという問題を抱えていた。このため、高い透明性の求められる偏光板保護フィルムでは、予めベンゾトリアゾール系化合物あるいはベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸系化合物の紫外線吸収剤を混入させることで紫外線による劣化を防止していた。しかしながら、これらの紫外線吸収剤の多くは溶解性が低いために、ブリードアウトが生じやすい、フィルム上で析出しやすい、ヘイズが上昇し透明性が低下する、さらには、加熱加工時の蒸散により添加量が減少し紫外線吸収能が低下するとともに、製造工程が汚染されてしまう等、さまざまな問題を有していた。
【0004】
紫外線吸収剤に重合性基を導入し、単独重合もしくは共重合を行って、紫外線吸収性ポリマーとすることで、それらの欠点を解消しようとする試みが、特許文献1〜4に記載されている。また、偏光板保護フィルムに紫外線吸収性ポリマーを含有させた例が、特許文献5に記載されている。
【0005】
それらに記載された紫外線吸収性ポリマーは、確かにブリードアウト及び析出防止、蒸散防止等にはある程度効果があったが、紫外線吸収能力が十分ではなく、所望の紫外線吸収性能を得るためには多量の添加量が必要であり、それら紫外線吸収性ポリマーを多量に添加した場合、樹脂との相溶性が十分ではなく、十分な透明度が得られない、あるいはフィルム自身が黄色く着色してしまう、あるいは長期間保存した場合、紫外線吸収能力が低下する等の問題を抱えており、偏光板保護フィルムとして実用化するのは困難であった。
【0006】
偏光板保護フィルムに求められる特性としては、380nm以下の紫外光を十分に遮断すると同時に、400nmより長波の光を十分に透過することが求められており、さまざまな紫外線吸収剤が提案されている。
【0007】
例えば、2′−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤にアミド基、カルバモイル基、エステル基、アシルオキシ基が置換した紫外線吸収剤は、例えば、特許文献6に記載されており、これら特定の置換基を有するモノマーから誘導されるポリマーを用いることによりブリードアウトの抑制、蒸散による工程汚染の低減等の効果を有したと記載があるが、効果は依然として不十分であり、さらなる改良が望まれている。
【0008】
一方、これらのセルロースエステルフィルムは、これまで、専ら溶液流延法によって製造されてきた。溶液流延法とは、セルロースエステルを溶媒に溶解した溶液を流延してフィルム形状を得た後、溶媒を蒸発・乾燥させてフィルムを得るといった製膜方法である。溶液流延法で製膜したフィルムは平面性が高いため、これを用いてムラのない高画質な液晶ディスプレイを得ることができる。
【0009】
しかし、溶液流延法は多量の有機溶媒を必要とし、環境負荷が大きいことも課題となっていた。セルロースエステルフィルムは、その溶解特性から、環境負荷の大きいハロゲン系溶媒を用いて製膜されているため、特に溶剤使用量の削減が求められており、溶液流延製膜によってセルロースエステルフィルムを増産することは困難となってきている。
【0010】
また、フィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ライン、乾燥エネルギー、及び蒸発した溶媒の回収及び再生装置等、製造ラインへの設備投資及び製造コストが膨大になっており、これらを削減することも重要な課題となっている。
【特許文献1】特開昭60−38411号公報
【特許文献2】特開昭62−181360号公報
【特許文献3】特開平3−281685号公報
【特許文献4】特開平7−90184号公報
【特許文献5】特開平6−148430号公報
【特許文献6】特開2003−113317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は分光吸収性能に優れ、着色がなく透明性に優れ、また、ブリードアウトが少ない偏光板保護フィルム及びそれを用いて、長期耐光性及び耐久性に優れ、さらには高いコントラストが維持された偏光板と液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.下記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1及びR2は置換基を表し、R3は水素原子またはアルキル基を表し、R4及びR5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R6及びR7は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。R8及びR9は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表すが同時に水素原子を表すことはなく、R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。pは0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、rは1または2を表す。)
2.前記偏光板保護フィルムは、前記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有するセルロースエステルフィルムを用いることを特徴とする前記1に記載の偏光板保護フィルム。
【0016】
3.前記セルロースエステルフィルムが下記一般式(3)で表されるラクトン系化合物を含有することを特徴とする前記2に記載の偏光板保護フィルム。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R12〜R15はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R16は水素原子または置換基を表し、nは1または2を表す。nが1であるとき、R11は置換基を表し、nが2であるとき、R11は2価の連結基を表す。)
4.前記2または3に記載の偏光板保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムを溶融流延法により製造することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
【0019】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムまたは前記4に記載の偏光板保護フィルムの製造方法により得られた偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【0020】
6.前記5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、分光吸収性能に優れ、着色がなく透明性に優れ、また、ブリードアウトの少ない偏光板保護フィルム及びそれを用いて、長期耐光性及び耐久性に優れ、さらには高いコントラストが維持された偏光板と液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決することができる紫外線吸収剤を含む偏光板保護フィルムについて鋭意検討した結果、その詳しい理由は解明されていないが、特定の結合を有する紫外線吸収剤を用いることにより、分光吸収性能に優れ、着色がなく透明性に優れ、また、ブリードアウトの少ない偏光板保護フィルムが得られることを見出した。また、得られた偏光板保護フィルムを使用すると、長期耐光性及び耐久性に優れ、さらには高いコントラストが維持された偏光板と液晶表示装置が得られることを見出した。
【0023】
詳しくは、本発明者らは、鋭意検討の結果、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に特定の2つのアミド結合、あるいは特定のアミド結合と特定のエステル結合を有する紫外線吸収剤を使用した場合に、良好な特性、例えば、ブリードアウトの抑制、蒸散による工程汚染の低減等の効果または液晶表示装置としてのコントラスト向上等を有することを見出し、本発明に至った次第である。
【0024】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0025】
(一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収剤)
一般式(1)及び(2)において、R1及びR2は置換基を表す。R1及びR2で表される置換基としては特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0026】
一般式(1)及び(2)において、R1で表される置換基として、アルキル基が好ましく、t−ブチル基、t−アミル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、クミル基等の3級アルキル基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)及び(2)において、R2で表される置換基として、アルキル基、塩素原子、アルコキシ基が好ましい。
【0028】
一般式(1)及び(2)において、R3は水素原子またはアルキル基を表す。R3で表されるアルキル基として、例えば、一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基の例として挙げたアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0029】
一般式(1)及び(2)において、R3は水素原子が好ましい。
【0030】
一般式(1)において、R4及びR5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。R4及びR5で表されるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基として、例えば、一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基の例として挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0031】
一般式(1)において、R4及びR5は水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基としては、メチル基、イソプロピル基がさらに好ましい。また、R4とR5の一方が水素原子で、他方がアルキル基の時、R4及びR5が結合する炭素が不斉炭素になり、樹脂との相溶性が向上するので特に好ましい。
【0032】
一般式(1)において、R6及びR7は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。R6及びR7で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基として、例えば、一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基の例として挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基と同様の基を挙げることができる。
【0033】
一般式(1)において、R6及びR7は水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、R6とR7の内、少なくとも一方がアルキル基またはアリール基であることがさらに好ましい。
【0034】
一般式(2)において、R8及びR9は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表すが同時に水素原子を表すことはない。R8及びR9で表されるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基として、例えば、一般式(1)及び(2)において、R1及びR2が表す置換基の例として挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0035】
一般式(2)において、R8及びR9は水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基としては、メチル基、イソプロピル基がさらに好ましい。また、R8とR9の一方が水素原子で、他方がアルキル基の時、R8及びR9が結合する炭素が不斉炭素になり、樹脂との相溶性が向上するので特に好ましい。
【0036】
一般式(2)において、R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。R10で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基として、例えば、一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基の例として挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基と同様の基を挙げることができる。
【0037】
一般式(2)において、R10はアルキル基が好ましい。
【0038】
一般式(1)及び(2)において、pは0〜4の整数を表し、pが2以上のとき、複数のR1は同じであっても異なっていてもよいが、pは1または2が好ましい。
【0039】
一般式(1)及び(2)において、qは0〜3の整数を表し、qが2以上のとき、複数のR2は同じであっても異なっていてもよいが、qは0が好ましい。
【0040】
一般式(1)及び(2)において、rは1または2の整数を表し、rが2のとき、複数のR4とR5、あるいは複数のR8とR9は同じであっても異なっていてもよいが、rは1が好ましい。
【0041】
以下に、本発明に係る前記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
本発明に係る一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収剤は、他の透明ポリマーに混合する際に、必要に応じて低分子化合物もしくは高分子化合物、無機化合物等を一緒に用いることもできる。例えば、本発明の一般式(1)及び(2)で表される化合物(紫外線吸収剤)と他の紫外線吸収剤または紫外線吸収性ポリマーとを同時に他の透明ポリマーに混合することも好ましい態様の一つである。同様に、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤等の添加剤を同時に混合することも好ましい態様の一つである。
【0048】
偏光板保護フィルムへの本発明に係る紫外線吸収剤の添加方法は、基材となる樹脂フィルム中に含有させてもよいし、樹脂フィルム上に塗布してもよい。樹脂フィルム中に含有させる場合、直接添加してもよい。
【0049】
本発明に係る一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収剤の使用量は、化合物の種類、使用条件等により一様ではないが、樹脂フィルム1m2当たり0.2〜3.0gが好ましく、0.4〜2.0がさらに好ましく、0.5〜1.5が特に好ましい。さらに、液晶劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線吸収性能に優れ、かつ、良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光吸収が少ないものが好ましい。本発明においては、特に、波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下がさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0050】
また、本発明においては、従来公知の紫外線吸収剤も併せて用いることもできる。従来公知の紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤(フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等)あるいはベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ドデシル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール等)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(2′−エチルへキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等)、トリアジン系紫外線吸収剤、あるいは特開昭58−185677号、同59−149350号記載の化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0051】
本発明に係る紫外線吸収剤と共に用いられる従来公知の紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、分光吸収スペクトルがより適切なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0052】
本発明に係る紫外線吸収剤と共に特に好ましく用いられる従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、ビス化したものであってもよく、例えば、6,6′−メチレンビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4,− トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)、6,6′−メチレンビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール)等が挙げられる。
【0053】
また、本発明においては、従来公知の紫外線吸収性ポリマーと組み合わせて用いることもできる。従来公知の紫外線吸収性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、RUVA−93(大塚化学製)を単独重合させたポリマー及びRUVA−93と他のモノマーとを共重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、RUVA−93とメチルメタクリレートを3:7の比(質量比)で共重合させたPUVA−30M、5:5の比(質量比)で共重合させたPUVA−50M等が挙げられる。さらには、特開2003−113317号公報に記載のポリマー等が挙げられる。
【0054】
以上のように、本発明に係る紫外線吸収剤と共に用いることができる従来公知の紫外線吸収剤について説明したが、本発明に係る紫外線吸収剤を用いずに従来公知の紫外線吸収剤のみを用いた場合は、本発明が解決しようとする課題を解決することはできない。
【0055】
(樹脂フィルム)
本発明の偏光板保護フィルムの基材となる樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂等)等を挙げることができる。この中で、セルロースエステル、ポリカーボネート、単環の環状オレフィン系樹脂が好ましく、セルロースエステルが最も好ましい。
【0056】
本発明の偏光板保護フィルムは、基材として前記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有するセルロースエステルフィルムを用いることが好ましく、さらに前記一般式(3)で表されるラクトン系化合物を含有するセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0057】
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
次いで、本発明の最も好ましい態様であるセルロースエステルを用いたセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0058】
セルロースエステルフィルムの製造に用いられる製膜工程としては、セルロースエステルを溶剤に溶解させた後、各種添加剤と少量のセルロースエステルとを溶解した溶液とがインラインで添加、混合、撹拌されて、次いで、混合液が塗布、製膜される溶液流延法と、溶媒を用いずセルロースエステルを流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを流延する溶融流延がある。
【0059】
本発明の偏光板保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは、溶融流延法により製造することが好ましい。
【0060】
加熱溶融する成形法はさらに詳細には溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。ここでフィルム構成材料を加熱し、その流動性を発現させた後、ドラムまたはエンドレスベルト上に押出し製膜する。好ましい製膜工程としては、加熱溶融する成形法である。
【0061】
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0062】
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、また特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステル等がセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
【0063】
上記セルロースエステルの中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく用いられる。
【0064】
次に、本発明に用いられるセルロースエステルのアシル基の置換度について説明する。
【0065】
セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、総置換度とは、平均して1グルコース単位にいくつのアシル基が結合しているかを示す数値である。従って、最大の置換度は3.0である。これらアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
【0066】
混合脂肪酸エステルの置換度として、さらに好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。なお、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0067】
式(I) 2.4≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.4
式(III) 0.5≦Y≦2.9
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.2≦X≦2.1であり、0.6≦Y≦1.4であることが好ましい。アシル基の置換度の異なるセルロースエステルをブレンドして、セルロースエステルフィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0068】
本発明に用いられるセルロースエステルは、50,000〜150,000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55,000〜120,000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、60,000〜100,000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
【0069】
さらに、本発明に用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは1.7〜3.5であり、さらに好ましくは2.0〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0070】
なお、Mn及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した。
【0071】
測定条件は以下の通りである。
【0072】
溶媒 :テトヒドロフラン
装置 :HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料温度 :0.1質量%
注入量 :10μl
流量 :0.6ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=2,560,000〜580までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0073】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
【0074】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0075】
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号あるいは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0076】
本発明に用いられるセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。50ppmを超えるとリップ付着汚れが増加あるいは熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断しやすくなる。1ppm未満でも破断しやすくなるがその理由はよく分かっていない。1ppm未満にするには洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるためその点でも好ましくない。さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
【0077】
本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロースエステルの洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
【0078】
本発明に用いられるセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。500ppmを超えるとダイリップ部の付着物が増加し、また破断しやすくなる。洗浄で1ppm未満にすることは困難である。さらに1〜100ppmの範囲であることが好ましく、さらに破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
【0079】
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、さらに十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることができ、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するRt値、Ro値が良好なフィルムを得ることができる。Roとは面内リタデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rtとは厚み方向リタデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、あるいは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。さらに、セルロースエステルの洗浄は、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
【0080】
また、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。
【0081】
さらに、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマーあるいは低分子化合物を添加してもよい。
【0082】
本発明では、セルロースエステル樹脂のほか、セルロースエーテル系樹脂、ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等も含む)、環状オレフイン樹脂、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、もしくはそれらを含む共重合体)、アクリル系樹脂(共重合体も含む)等を含有させることができる。セルロースエステル以外の樹脂の含有量としては0.1〜30質量%が好ましい。
【0083】
(可塑剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムには、可塑剤を添加することができる。一般的に、可塑剤として知られる化合物を添加することは機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。また、溶融流延法においては、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステルよりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下できる目的を含んでいる。ここで、本発明において、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において材料が加熱された温度を意味する。
【0084】
セルロースエステル単独では、ガラス転移温度よりも低いとフィルム化するための流動性は発現されない。しかしながら、セルロースエステルは、ガラス転移温度以上において熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。フィルム構成材料を溶融させるためには、添加する可塑剤がセルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが上記目的を満たすために好ましい。さらに多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く、より好ましい。
【0085】
本発明において好ましく用いられるエステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、グレセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエチスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等を挙げることができる。特に、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0086】
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤としては、具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0087】
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤としては、具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0088】
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0089】
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらに多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0090】
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落31記載例示化合物16が挙げられる。
【0091】
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0092】
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部である。
【0093】
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0094】
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、アルキルジカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペートが挙げられる。
【0095】
本発明に用いられるその他の可塑剤としては、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
【0096】
燐酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0097】
また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等の燐酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0098】
さらに燐酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、燐酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0099】
次に、炭水化物エステル系可塑剤について説明する。炭水化物とは、糖類がピラノースまたはフラノース(6員環または5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類または三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノース等が挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、あるいは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。
【0100】
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテートがより好ましい。
【0101】
ポリマー可塑剤としては、具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜200,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、500,000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
【0102】
その他の可塑剤の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部である。
【0103】
(添加剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいては、上記可塑剤の他にも可塑剤と同様の作用を示す添加剤を含有させることができる。これらの添加剤としては、例えば、セルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様の効果を得ることができる。これらの成分は可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
【0104】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために、例えば、青色染料等を添加剤として用いてもよい。好ましい染料として、アンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されてもよいアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。これらの染料のフィルムへの添加量は、フィルムの透明性を維持するため0.1〜1000μg/m2、好ましくは10〜100μg/m2である。
【0105】
本発明に係るセルロースエステルフィルムでは、フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、ラクトン系安定剤の中から選ばれた少なくとも1種、あるいは2種以上の安定剤を追加して添加してもよい。
【0106】
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン)即ち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))、トリエチレングリコール−ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。
【0107】
また好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0108】
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のホスファイト系化合物、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト等のホスホナイト系化合物等を挙げることができる。
【0109】
さらに好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0110】
これらの化合物の一例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
IRGANOX 1010:チバスペシャルティケミカルズ社製
IRGAFOS P−EPQ:チバスペシャルティケミカルズ社製
TINUVIN 770:チバスペシャルティケミカルズ社製
TINUVIN 144:チバスペシャルティケミカルズ社製
ADK STABLA LA−52:旭電化工業(株)製
Sumilezer GP:住友化学工業社製
PEP−24G:旭電化工業(株)製
Sumilezer TP−D:住友化学工業社製
GSY−P101:エーピーアイコーポレーション社製
(一般式(3)で表されるラクトン系化合物)
本発明に係るセルロースエステルフィルムでは、前記一般式(3)で表されるラクトン系化合物を含有することが特に好ましい。
【0112】
一般式(3)において、R12〜R15はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R12〜R15で表される置換基は、前記一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基と同様な基を挙げることができる。
【0113】
一般式(3)において、R12〜R15は水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0114】
一般式(3)において、R16は水素原子または置換基を表し、R16で表される置換基は、前記一般式(1)及び(2)において、R1及びR2で表される置換基と同様な基を挙げることができる。
【0115】
一般式(3)において、R16は水素原子が好ましい。
【0116】
一般式(3)において、nは1または2を表す。
【0117】
一般式(3)において、nが1であるとき、R11は置換基を表し、nが2であるとき、R11は2価の連結基を表す。R11が置換基を表すとき、置換基としては、前記一般式(1)及び(2)において、R1及びR2が表す置換基と同様な基を挙げることができる。R11は2価の連結基を表すとき、2価の連結基として例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、あるいはこれらの連結基の組み合わせを挙げることができる。
【0118】
一般式(3)において、nは1が好ましく、その時のR11は置換または無置換のフェニル基が好ましい。
【0119】
以下に、本発明における前記一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
【化8】

【0121】
【化9】

【0122】
【化10】

【0123】
これらの安定剤は、それぞれ1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.001〜10.0質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部、さらに好ましくは、0.1〜3.0質量部である。
【0124】
加熱溶融によりセルロースエステルフィルムを製造する場合、セルロースエステルの水分含有量は3.0質量%以下が好ましい。水分含有量3.0質量%以下のセルロースエステルは、加熱溶融する前に1種以上の添加剤を内包していることが好ましい。
【0125】
本発明において、添加剤を内包しているとは、添加剤がセルロースエステル内部に包まれている状態のみならず、内部及び表面に同時に存在することも含むものである。
【0126】
添加剤を内包させる方法としては、セルロースエステルを溶媒に溶解した後、これに添加剤を溶解または微分散させ、溶媒を除去する方法が挙げられる。溶媒を除去する方法は公知の方法が適用でき、例えば、液中乾燥法、気中乾燥法、溶媒共沈法、凍結乾燥法、溶液流延法等が挙げられ、溶媒除去後のセルロースエステル及び添加剤の混合物は、粉体、顆粒、ペレット、フィルム等の形状に調製することができる。添加剤の内包は前述のようにセルロースエステル固体を溶解して行うが、セルロースエステルの合成工程において析出固化と同時に行ってもよい。
【0127】
液中乾燥法は、例えば、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液にラウリル硫酸ナトリウム等の活性剤水溶液を加え、乳化分散する。次いで、常圧または減圧蒸留して溶媒を除去し、添加剤を内包したセルロースエステルの分散物を得ることができる。さらに、活性剤除去のため、遠心分離やデカンテーションを行うことが好ましい。乳化法としては、各種の方法を用いることができ、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0128】
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は比較的少量の作製に適し、連続式は大量の作製に適する。連続式では、例えば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は実際上は10000秒未満である。また、10000秒以上必要であると工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択等により乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは10〜2000秒である。
【0129】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ウルトラミキサー等が使用でき、これらの型式は乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。
【0130】
高圧による乳化分散ではLAB2000(エスエムテー社製)等が使用できるが、その乳化・分散能力は試料にかけられる圧力に依存する。圧力は104〜5×105kPaの範囲が好ましい。
【0131】
活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子分散剤等を用いることができ、溶媒や目的とする乳化物の粒径に応じて決めることができる。
【0132】
気中乾燥法は、例えば、GS310(ヤマト科学社製)のようなスプレードライヤーを用いて、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液を噴霧し乾燥するものである。
【0133】
溶媒共沈法は、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液をセルロースエステル及び添加剤に対して貧溶媒であるものに添加し、析出させるものである。貧溶媒はセルロースエステルを溶解する前記溶媒と任意に混合することができる。貧溶媒は混合溶媒でも構わない。また、セルロースエステル及び添加剤の溶液中に、貧溶媒を加えても構わない。
【0134】
析出したセルロースエステル及び添加剤の混合物は、ろ過、乾燥し分離することができる。
【0135】
セルロースエステルと添加剤の混合物において、混合物中の添加剤の粒径は1μm以下であり、好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下である。添加剤の粒径が小さいほど、溶融成形物の機械特性、光学特性の分布が均一になり好ましい。
【0136】
上記セルロースエステルと添加剤の混合物、及び加熱溶融時に添加する添加剤は、加熱溶融前または加熱溶融時に乾燥されることが望ましい。ここで乾燥とは、溶融材料のいずれかが吸湿した水分に加え、セルロースエステルと添加剤の混合物の調製時に用いた水または溶媒、添加剤の合成時に混入している溶媒のいずれかの除去を指す。
【0137】
この除去する方法は公知の乾燥方法が適用でき、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことができ、空気中または不活性ガスとして窒素を選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。
【0138】
例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または溶媒は、各々フィルム構成材料の全体の質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下にすることである。このときの乾燥温度は、100℃以上乾燥する材料のTg以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、乾燥温度はより好ましくは100℃以上(Tg−5)℃以下、さらに好ましくは110℃以上(Tg−20)℃以下である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、さらに好ましくは1.5〜12時間である。これらの範囲よりも低いと乾燥度が低いか、または乾燥時間がかかり過ぎることがある。また乾燥する材料にTgが存在するときには、Tgよりも高い乾燥温度に加熱すると材料が融着して取り扱いが困難になることがある。
【0139】
乾燥工程は2段階以上の分離してもよく、例えば、予備乾燥工程による材料の保管と、溶融製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥工程を介して溶融製膜してもよい。
【0140】
また、本発明に係るセルロースエステルフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては無機化合物として、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0141】
二酸化珪素微粒子の一次粒子平均径としては、5〜16nmが好ましく、5〜12nmがより好ましい。一次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。また、見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0142】
マット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gがさらに好ましく、0.10〜0.18gが特に好ましい。
【0143】
二酸化珪素微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600等が挙げられ、この中でも、AEROSIL200V、R972Vが一次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、セルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0144】
また、酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。また、ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0145】
これら微粒子は、通常平均粒径が0.01〜1.0μmの二次粒子を形成させることが好ましく、0.1〜0.8μmがさらに好ましく、0.2〜0.5μmが最も好ましい。これらの微粒子はフィルム中では、一次粒子の凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させる。これらの微粒子の含有量は、セルロースエステルフィルムに対して0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%が好ましく、0.1〜0.2質量%が最も好ましい。
【0146】
本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、セルロースエステルフィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与して、液晶表示品質の向上のためにこのような偏光板加工を行ってもよい。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
【0147】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、寸度安定性が23℃、55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃、90%RHにおける寸法の変動値が±1.0%未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.5%未満であり、特に好ましくは0.1%未満である。
【0148】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは偏光板の保護フィルムとして用いるために、セルロースエステルフィルム自身に上記の範囲以上の変動を有すると、偏光板としてのリターデーションの絶対値と配向角が当初の設定とずれるために、表示品質の向上能の減少あるいは表示品質の劣化を引き起こすことがある。
【0149】
フィルム構成材料中の添加剤の存在は、該セルロースエステル、可塑剤、酸化防止剤、その他必要に応じて添加する紫外線吸収剤やマット剤、リターデーション制御剤等、フィルムを構成する材料の少なくとも1種以上に対して、変質や分解による揮発成分の発生を抑制または防止する観点で優れている。また添加剤自身もフィルム構成材料の溶融温度領域において、揮発成分を発生しないことが求められる。
【0150】
フィルム構成材料が溶融されるときの揮発成分の含有量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下のものであることが望ましい。本発明においては、示差熱質量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量とする。
【0151】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、延伸操作により屈折率制御を行うことができる。延伸操作としては、セルロースエステルの1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで好ましい範囲の屈折率に制御することができる。
【0152】
例えば、フィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0153】
例えば、溶融して流延した方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、フィルムの厚み方向の屈折率が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことでフィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することでボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。
【0154】
さらに、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
【0155】
セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
【0156】
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、幅方向に延伸することで、セルロースエステルフィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、セルロースエステルフィルムの遅相軸が、幅方向にある方が好ましく、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。
【0157】
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法等が挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0158】
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0159】
本発明に係るセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、さらに35μm以上が好ましい。また、150μm以下、さらに120μm以下が好ましい。特に好ましくは25〜90μmが好ましい。上記領域よりもセルロースエステルフィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いとリターデーションの発現が困難となること、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0160】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1〜+1°であることが好ましく、−0.5〜+0.5°であることがより好ましい。このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。
【0161】
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
【0162】
本発明に係るセルロースエステルフィルムはセルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この場合は、上述のその他添加剤として含むことができる。
【0163】
本発明に係るセルロースエステル及び添加剤の混合物を熱風乾燥または真空乾燥した後、溶融押出し、T型ダイよりフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
【0164】
溶融押出しは一軸押出し機、二軸押出し機、さらに二軸押出し機の下流に一軸押出し機を連結して用いてもよいが、得られるフィルムの機械特性、光学特性の点から、一軸押出し機を用いることが好ましい。さらに原料タンク、原料の投入部、押出し機内といった原料の供給、溶融工程を、窒素ガス等の不活性ガスで置換、あるいは減圧することが好ましい。
【0165】
前記溶融押出し時の温度は、通常150〜300℃の範囲、好ましくは180〜270℃、さらに好ましくは200〜250℃の範囲である。
【0166】
本発明に係るセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板を作製した場合、該セルロースエステルフィルムは、幅手方向もしくは製膜方向に延伸製膜されたフィルムであることが特に好ましい。
【0167】
前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介してセルロースエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段または多段縦延伸することが好ましい。次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたセルロースエステルフィルムを、Tg〜Tg−20℃の温度範囲内で横延伸し、次いで熱固定することが好ましい。
【0168】
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると、幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。さらに横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布がさらに低減でき好ましい。
【0169】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0170】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0171】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0172】
本発明に係るセルロースエステルフィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易滑性層、易接着層、防眩層、バリアー層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。特に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0173】
また、本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいて、セルロースエステルの種類、あるいは添加剤の種類は含有量の異なる層を共押出しして、積層構造を有するセルロースエステルフィルムとしてもよい。
【0174】
例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることができる。例えば、マット剤等の微粒子は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。また、スキン層には、けん化が容易なジアセチルセルロースによる溶融押出し層を形成してもよい。ジアセチルセルロースの溶融押出しは、公知の方法に従って達成することができる。また、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度を低くしてもよい。また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよいが、薄い方の層(通常スキン層)の粘度が高いほうが、均一な膜厚の積層体を得ることができる。
【0175】
〔偏光板、液晶表示装置〕
液晶表示装置に本発明に係るセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板を形成し用いる場合、少なくとも一方の面の偏光板が本発明の偏光板であることが好ましく、両面が本発明の偏光板であることがより好ましい。
【0176】
なお、従来の偏光板保護フィルムとしては、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC12UR、KC8UXW−H、KC8UYW−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いられる。
【0177】
本発明の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた偏光板保護フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼り合わせることができる。この方法は、少なくとも片面に本発明の偏光板保護フィルムを偏光子に直接貼合できる点で好ましい。
【0178】
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
【0179】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、輸送時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは粘着層をカバーする目的で用いられる。
【0180】
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明に係るセルロースエステルフィルムを適用した偏光子保護フィルムは寸法安定性が高いため、どの部位に配置しても優れた表示性が得られる。液晶表示装置の表示側最表面の偏光子保護フィルムには、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられた偏光子保護フィルムをこの部分に用いることが好ましい。また光学補償層を設けた偏光子保護フィルムや、延伸操作等によりそれ自身に適切な光学補償能を付与した偏光子保護フィルムの場合には、液晶セルと接する部位に配置することで、優れた表示性が得られる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮することができる。
【0181】
マルチドメイン化とは、1画素を構成する液晶セルをさらに複数に分割する方式であり、視野角依存性の改善、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
【0182】
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することができる。ドメインの分割は、公知の方法を採用することができ、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定できる。
【0183】
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることができる。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており(T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995))、本発明の偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することもできる。本発明の偏光板を用いることによって本発明の効果が発現できれば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
【0184】
該液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても高性能であるため、本発明に係るセルロースエステルフィルムを用いた液晶表示装置、特に大型の液晶表示装置の表示品質は、眼が疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【0185】
〔合成例〕
以下、本発明に係る紫外線吸収剤の合成法を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0186】
合成例1
(例示化合物1の合成)
反応容器に8.78gの2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)−5−カルボキシル−2H−ベンゾトリアゾールと86mlのトルエンを入れ、そこへ、4.32mlの塩化チオニルと0.10mlのN,N−ジメチルホルムアミドを加え、約60℃に加熱し、そのまま約1時間反応させた。反応終了後、トルエンと過剰の塩化チオニルを減圧留去し、再び85mlの酢酸エチルを加えて50℃に加温した。
【0187】
別の反応容器に、10.1gの化合物AMと8mlの酢酸エチル、及び7.78gの炭酸カリウムと16mlの水を加えた。この反応溶液を室温にて撹拌しながら、先に調製しておいた化合物CLの酢酸エチル溶液を手早く滴下した。その後約1時間反応させ、反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで抽出し、希塩酸水と重曹水でこの順に有機相を洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮後、エタノールを用いて再結晶を行うことで、例示化合物1が16.1g得られた。得られた結晶を1H−NMR及びMASSスペクトルで分析結果することにより、例示化合物1であることが確認された。
【0188】
【化11】

【0189】
合成例2
(例示化合物2の合成)
反応容器に8.78gの2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)−5−カルボキシル−2H−ベンゾトリアゾールと86mlのトルエンを入れ、そこへ、4.32mlの塩化チオニルと0.10mlのN,N−ジメチルホルムアミドを加え、約60℃に加熱し、そのまま約1時間反応させた。反応終了後、トルエンと過剰の塩化チオニルを減圧留去し、再び85mlの酢酸エチルを加えて50℃に加温した。
【0190】
別の反応容器に、9.30gの化合物ESと8mlの酢酸エチル、及び7.78gの炭酸カリウムと16mlの水を加えた。この反応溶液を室温にて撹拌しながら、先に調製しておいた化合物CLの酢酸エチル溶液を手早く滴下した。その後約1時間反応させ、反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで抽出し、希塩酸水と重曹水でこの順に有機相を洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮後、エタノールを用いて再結晶を行うことで、例示化合物2が15.2g得られた。得られた結晶を1H−NMR及びMASSスペクトルで分析結果することにより、例示化合物2であることが確認された。
【0191】
【化12】

【0192】
例示した他の化合物も同様にして合成できる。
【実施例】
【0193】
以下、実施例により本発明の態様を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」は「質量部」を表す。
【0194】
実施例1
〔偏光板保護フィルム用のセルロースエステルフィルム1の作製〕
後述するセルロースエステルC−1を、空気中、常圧下で130℃、2時間乾燥し、室温まで放冷した。このセルロースエステルに下記の添加剤を添加し、この混合物を250℃の溶融温度に加熱溶融した後、T型ダイより溶融押出成形し、さらに160℃において1.2×1.2の延伸比で延伸し、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム1を得た。なお、下記の部数はセルロースエステル100部に対する質量部を表す。
【0195】
比較化合物A 1.5部
IRGANOX 1010 0.5部
テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト 0.25部
例示化合物103(ラクトン系化合物) 0.3部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 8.0部
〔セルロースエステルフィルム2〜21の作製〕
セルロースエステルフィルム1の作製において、セルロースエステルの種類、紫外線吸収剤を表1のように変更した以外は同様にして、セルロースエステルフィルム2〜20(いずれも膜厚80μm)を作製した。なお、使用した紫外線吸収剤の添加量は、比較化合物Aと同じ質量部とした。また、セルロースエステルフィルム7から、例示化合物103のみを削除した以外はセルロースエステルフィルム7と同様にしてセルロースエステルフィルム21を作製した。
【0196】
C−1:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.3、分子量Mn=86,000、Mw/Mn=2.5)
C−2:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.3、プロピオニル基置換度1.2、分子量Mn=66,000、Mw/Mn=3.0)
C−3:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.7、プロピオニル基置換度1.0、分子量Mn=73,000、Mw/Mn=2.9)
C−4:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度2.0、プロピオニル基置換度0.7、分子量Mn=91,000、Mw/Mn=2.4)
【0197】
【化13】

【0198】
〔セルロースエステルフィルムの評価〕
以上のように作製したセルロースエステルフィルムについて、以下のような評価を行なった。
【0199】
(UV吸収性能)
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用い、セルロースエステルフィルムの分光吸収スペクトルを測定し、400nmと380nmにおける透過率を求め、以下のようにランク分けを行った。各ランクにおいて、400nmの透過率は高い程優れており、380nmの透過率は低い程優れている。
【0200】
〈400nm透過率〉
A:透過率80%以上
B:透過率70%以上80%未満
C:透過率60%以上70%未満
D:透過率60%未満
〈380nm透過率〉
A:透過率5%未満
B:透過率5%以上8%未満
C:透過率8%以上10%未満
D:透過率10%以上
(ブリードアウト)
セルロースエステルフィルムを、80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下で1000時間放置後、セルロースエステルフィルム表面のブリードアウト(結晶析出)の有無を目視観察を行い、下記基準に従って評価を行った。
【0201】
◎:表面にブリードアウトの発生が全く認められない
○:表面で、部分的なブリードアウトが僅かに認められる
△:表面で、全面に亘りブリードアウトが僅かに認められる
×:表面で、全面に亘り明確なブリードアウトが認められる
(ヘイズ)
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した結果から、試料の厚さが80μmの場合のヘイズの値に換算し、下記基準に従って評価を行った。
【0202】
◎:ヘイズが0.5%未満
○:ヘイズが0.5〜1.0%未満表
△:ヘイズが1.0〜1.5%未満
×:ヘイズが1.5%以上
〔偏光板の作製〕
以下に記載の方法に従い、作製したセルロースエステルフィルム1〜21のアルカリケン化処理を行った後、それぞれ偏光板1〜21を作製した。
【0203】
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程:2モル/L NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
中和工程 :10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
上記条件で各試料を、ケン化、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
【0204】
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作製した。この偏光膜の両面に、上記アルカリケン化処理を行った試料を、完全ケン化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板を作製した。
【0205】
〔偏光板の評価〕
次に、以下のようにして偏光板の耐光性及び耐久性を評価した。
【0206】
(耐光性)
強制劣化未処理試料の平行透過率(H0)と直行透過率(H90)を測定し、下式に従って偏光度を算出した。その後、各々の偏光板をサンシャインウェザーメーター500時間、UVカットフィルター無しの条件で強制劣化処理を施した後、再度、強制劣化処理後の平行透過率(H0′)と直行透過率(H90′)を測定し、下式に従って偏光度P0、P500を算出し、偏光度変化量を下記式により求めた。
【0207】
〈偏光度P0、P500の算出〉
偏光度P0=〔(H0−H90)/(H0+H90)〕1/2×100
偏光度P500=〔(H0′−H90′)/(H0′+H90′)〕1/2×100
偏光度変化量=P0−P500
P0:強制劣化処理前の偏光度
P500:強制劣化処理500時間後の偏光度
以上のようにして求めた偏光度変化量を、以下の基準に則り判定し、耐光性の評価を行った。
【0208】
◎:偏光度変化量が10%未満
○:偏光度変化量が10%以上25%未満
×:偏光度変化量が25%以上
(耐久性)
上記の要領で得られた500mm×500mmの偏光板試料2枚を熱処理(条件:90℃で100時間放置する)し、直交状態にしたときの縦または横の中心線部分のどちらか大きい方の縁の白抜け部分の長さを測定して、辺の長さ(500mm)に対する比率を算出し、その比率に応じて下記のように判定した。縁の白抜けとは直交状態で光を通さない偏光板の縁の部分が光を通す状態になることで、目視で判定できる。偏光板の状態では縁の部分の表示が見えなくなる故障となる。
【0209】
◎:縁の白抜けが5%未満(偏光板として問題ないレベル)
○:縁の白抜けが5%以上10%未満(偏光板として問題ないレベル)
△:縁の白抜けが10%以上20%未満(偏光板として何とか使えるレベル)
×:縁の白抜けが20%以上(偏光板として問題のあるレベル)
以上により得られた結果を表1に示す。
【0210】
【表1】

【0211】
表1より明らかなように、本発明に係る紫外線吸収剤を含有したセルロースエステルフィルムは、比較例に対し、UV吸収性能、ブリードアウト、ヘイズ特性で優れており、また本発明に係るセルロースエステルフィルムを用いて作製した偏光板は、比較例に対し、耐久性及び耐光性のいずれにおいても優れていることが分かる。
【0212】
さらに、本実施例は、従来の溶液流延による方法と比べて環境負荷の格段に小さい溶融流延法によりセルロースエステルフィルムを製造しているが、250℃とかなり高温な製造工程を経るにもかかわらず、優れた性能を有するセルロースエステルフィルム及びそれを用いた偏光板が得られることが分かる。
【0213】
実施例2
〔液晶表示装置の作製と評価〕
32型TFT型カラー液晶ディスプレイベガ(ソニー社製)の偏光板を剥がし、実施例1で作製した偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、偏光板2枚を偏光板の偏光軸が元と変わらないように互いに直交するように貼り付け、32型TFT型カラー液晶表示装置を作製した。本発明の偏光板7〜10、17〜21を用いた液晶表示装置はコントラストも高く、優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【化1】

(式中、R1及びR2は置換基を表し、R3は水素原子またはアルキル基を表し、R4及びR5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、R6及びR7は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。R8及びR9は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表すが同時に水素原子を表すことはなく、R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基を表す。pは0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、rは1または2を表す。)
【請求項2】
前記偏光板保護フィルムは、前記一般式(1)または(2)で表される紫外線吸収剤を含有するセルロースエステルフィルムを用いることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
【請求項3】
前記セルロースエステルフィルムが下記一般式(3)で表されるラクトン系化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の偏光板保護フィルム。
【化2】

(式中、R12〜R15はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R16は水素原子または置換基を表し、nは1または2を表す。nが1であるとき、R11は置換基を表し、nが2であるとき、R11は2価の連結基を表す。)
【請求項4】
請求項2または3に記載の偏光板保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムを溶融流延法により製造することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムまたは請求項4に記載の偏光板保護フィルムの製造方法により得られた偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−20692(P2008−20692A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192642(P2006−192642)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】