説明

偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】生産収率性を向上できる偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】150℃30分間の条件で熱処理したのちのフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%であり、フィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下であることを特徴とする偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示用途等の部材において、光学特性に優れた偏光板に好適に用いられる偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルム、およびその製造方法に関するものである。詳しくは、150℃30分間の条件で熱処理したのちのフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%であり、フィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下である偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のディスプレイであるCRTに比べ薄型軽量化、低消費電力、高画質化の利点を有する液晶ディスプレイ(LCD)の需要が急速に伸びつつあり、特に19インチ以上の大画面モニターや32インチといった大画面TV用途のLCDが急速に伸びている。LCDの大画面化に伴って、バックライトの輝度を上げることや、輝度を向上させる機能性フィルムを組み込むことなどにより、大画面でも輝度を十分確保したLCDとする場合が多い。このような高輝度タイプのLCDでは、輝度が高いゆえにディスプレイ中に存在する小さな欠点が問題となる場合が多く、偏光板、位相差板といった構成部材においては、これまでのLCDでは問題にならなかったようなサイズの異物が問題となってきている。そのため、各部材の製造工程における異物の混入を防ぐ一方で、異物が混入したとしても欠点として確実に認知できるような検査性の向上も重要となってきている。
偏光板の欠点検査はクロスニコル法による目視検査が一般的であるが、32インチといった大画面TV用に使用する偏光板では、クロスニコル法を利用した自動異物検査器による検査も実施されつつある。
【0003】
このクロスニコル法は2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて暗視野をつくり、その間に測定対象品を挟んで透過光で観察する方法である。偏光板中に異物や欠点があれば輝点として現れるので、欠点検査ができるというものである。ここで、偏光板には粘着剤層を介して二軸配向ポリエステルフィルムを離型フィルムとして貼り合わせているので、この離型フィルムの光学的異方性が加わることで偏光板から光漏れが生じ、クロスニコル法の検査の障害となり、異物の混入や欠点を見逃しやすくなるという不具合が生じている。そこで、偏光板離型フィルムの光学特性を検討し、光漏れを防ぐために配向角を特定値以下とすることが好ましいという提案が特許文献1にて例示されており、製造されるフィルム幅の中央部20%程度のみを用いるのが好ましいとされている。通常の二軸延伸法、すなわち縦延伸につづいてテンターによる横延伸を行う方法においては、製品フィルムの幅方向の物性を均一にすることは極めて困難であり、テンター内で横延伸した後に行う熱処理工程において生じるボーイング現象が原因となっている。このボーイング現象はフィルム長手方向におけるポアソン比に基づく収縮率および熱収縮力などに起因して発生するものと考えられており、このボーイング現象がフィルムの幅方向の物性、特に配向角分布などの光学特性、機械的特性、温度膨張率、熱膨張率あるいは熱収縮率を不均一にする原因となっている。ここで配向角とは、フィルム幅方向に対する配向主軸の傾きである。
【0004】
このボーイング現象を抑制するためのいくつかの提案がなされている。たとえば、特許文献2には、長手方向の延伸が完了する前に幅方向の延伸の70%の完了させる方法、特許文献3には熱固定領域中に冷却領域と加熱領域とを隣接させる方法、特許文献4にはテンターにて横延伸すると同時に長手方向の弛緩処理させる方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−237451号公報
【特許文献2】特開2001−328159号公報
【特許文献3】特開2004−18588号公報
【特許文献4】特開2004−358742号公報しかしながら、これらの製造方法をもってしても配向角が5度以下であることが強く望まれる偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、製造されるフィルム幅の中央部のみを出荷するという生産収率性の低下を招く不具合を生じていた。
【0005】
特許文献1では製造されるフィルム幅の中央部20%程度のみを用いており、生産収率を低下させて製造していた。特許文献2の製造方法では、テンター内部を0.1秒程度で通過してしまう冷却工程であるため、フィルム温度が目的とするガラス転移温度以下に到達せず、ボーイング現象を十分に抑制する効果が得られない。また、得られたフィルム幅も950mmと狭いため、偏光板に好適に用いられる偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを少なくとも5m幅にわたって配向角を5度以下にして、製造するには適していない。特許文献3および特許文献4の製造方法でも、テンター内で冷却工程を設けており、フィルム温度を目的とするガラス転移温度以下に十分に冷却しているか示されていない。そのためボーイング現象を十分に抑制する効果が得られず、やはり目的とする配向角を得るには不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記した背景技術の課題を解消し、生産収率性を向上できる偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生産収率性を向上するため主として次の特性を有することで上記課題が解決できることを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は150℃30分間の条件で熱処理したのちのフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%であり、フィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下である偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、ボーイング現象を抑制するため熱処理する前にフィルム温度を十分に冷却する構成によって実現できることを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は未延伸フィルムを縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸し、冷却工程を経て熱処理して偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、冷却工程にてフィルム温度を25〜45℃に冷却したのち、熱処理する偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムが有するフィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下という特性を有していることにより、偏光板の欠点検査に好適に用いることができ、生産収率性を向上することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明において好適に用いることのできるポリエステルは、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば特に限定しないが、主としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを含むことが好ましい。特に好ましくは価格的にも優位なポリエチレンテレフタレートである。ポリエチレンテレフタレートを用いる場合、エチレンテレフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが目的とするフィルム物性を阻害しない範囲で使用できる。かかるポリエステルは、例えば以下に示す方法で製造することができる。たとえば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様にして重縮合させることによって製造する方法等がある。この際、必要に応じて、反応触媒として例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物を用いることもできる。上記ポリエステルは、固有粘度が0.4〜0.9、好ましくは0.5〜0.7,さらに好ましくは0.55〜0.65である。
【0011】
本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下であるため、生産収率性を向上して製造することができる。ここでいう配向角は、全方位にわたってフィルムに超音波パルスを透過させ、その伝播速度を測定することによって配向性を評価し、配向主軸の傾き(配向角)を測定する。配向角が5度を超える場合には、偏光板を検査するクロスニコル法において偏光板から光漏れが生じ、検査の障害となる場合がある。
さらに、150℃30分間の条件で熱処理したのちのフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%であることが好ましい。好ましくはそれぞれ5.5〜6.5%、7.5〜8.5%であり、熱収縮率がそれぞれ上記下限範囲を超える場合には、配向角が5度を超える場合がある。
【0012】
本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム長手方向の厚みむらが0.5〜1.5μmであることが肝要である。好ましくは0.5〜1.2μmであり、厚みむらが1.5μmを超える場合には、偏光板を検査するクロスニコル法において偏光板から漏れる光の強度のむらが強くなり、検査の障害となる場合がある。一方で、厚みむらが0.5μm以下のフィルムを製造することは難しい。
【0013】
本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムのヘイズ値が7〜13%であることが好ましい。好ましくは8〜12%、さらに好ましくは9〜11%である。ヘイズ値が7%未満の場合には偏光板を検査する際に反射光が強すぎ、13%を超える場合には反射光が弱く、検査の障害となる場合がある。
【0014】
また、本発明のフィルムの厚みは25〜70μm、好ましくは30〜50μm、さらに好ましくは35〜45μmである。フィルムの厚みがこの範囲内にあると、フィルムのヘイズ値を上記範囲内で調整しやすく、好ましい。
【0015】
さらに、本発明のフィルムの表面粗さSRaは20〜30nmが好ましく、22〜28nmがさらに好ましい。
【0016】
本発明のフィルムは単層であっても、2層以上からなる複合フィルムであってもよいが、フィルムのヘイズ値およびフィルムの表面粗さSRaを上記範囲にするには、3層複合フィルムからなる場合とくに好適である。この場合、両側の積層部の粒子種あるいは粒子含有量が異なる、A/B/Cの構成でもよいが、同一の組成とするA/B/Aの構成が設備的に簡易であり、生産性の面からも好ましい。さらに、両層の積層厚さを実質的に同一にした場合、品質の設計が容易である。
【0017】
片面における積層厚さは、0.5〜2.5μmが好ましく、とくに1.0〜2.0μmが好ましい。
【0018】
さらに、積層面に不活性粒子を含有することで、表面粗さSRaを適正化でき、併せて、基層部に含有する粒子を適正化することでヘイズ値を所望の範囲とすることができる。
【0019】
粒子の種類としては、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、またその他有機系高分子粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。これらの1種もしくは2種以上を選択して用いることもできる。
【0020】
これらの不活性粒子は、ポリエステル重合工程の段階で添加することにより、不活性粒子含有ポリマーを準備することができる。例えば、ポリエステルのグリコール成分であるエチレングリコールのスラリーとし、重縮合前のエステル交換後、あるいはエステル化後のオリゴマーの段階で不活性粒子含有スラリーを添加し、引き続き、重縮合反応を行うことで、不活性粒子含有ポリマーを得ることができる。
【0021】
また、添加前の不活性粒子のスラリーは必要に応じ、サンドグラインダー等による分散処理、遠心沈降処理による粗大粒子の分離あるいは、高精度濾過を行うことが、粒径分布を均一化でき、粗大粒子を除去することができ、フィルムの粗大突起の減少に効果的に採用できる。
【0022】
本発明のフィルムの表面粗さSRaおよびヘイズ値とするためには、平均粒子径0.5〜1.5μm、好ましく0.8〜1.3μmの不活性粒子を0.2〜1.0重量%、さらに好ましくは、0.3〜0.8重量%含有させることが好適である。併せて、基層部に同種の不活性粒子を0.01〜0.1%含有させる、基層部の粒子含有量を調整することにより、表面粗さSRaを上記範囲に保ったまま、ヘイズ値を所望の値に適正化することができる。
【0023】
また、本発明のフィルム表面に存在する高さ0.8μm以上の粗大突起は、0.1〜5個/100cmであることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜3個/100cm以下である。粗大突起数が上記密度を超えると、離型剤を塗布乾燥する工程や離型フィルム上に粘着剤を塗布乾燥する工程において、ピンホール状の塗布抜けや塗布層の平面性を損なう場合がある。
【0024】
本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば未延伸フィルムを縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸し、冷却工程を経て熱処理して偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、ボーイング現象を抑制するため冷却工程にてフィルム温度を25〜45℃に冷却したのち、熱処理することを特徴とする偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0025】
次に本発明の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムにおける製造方法に関してさらに詳しく説明する。上述したポリエステルを必要に応じて乾燥し、押出機に供給して、ポリマーをフィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム欠陥となるため、このフィルターには例えば5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムとする。
【0026】
この未延伸フィルムを90〜130℃の延伸温度で長手方向に1段階的に、もしくは多段階的に分けて2.5〜5倍に延伸し、テンターへ導く。ボーイング現象およびフィルム長手方向の厚みムラを抑える観点から、延伸温度は100〜120℃、延伸倍率は3〜4倍が好ましく、延伸むらおよびキズを防止する観点から延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましい。次いで、90〜130℃の延伸温度で幅方向に3〜6倍に延伸し、得られた二軸配向フィルムを冷却工程および熱処理工程へ導く。延伸温度が90℃よりも低く延伸倍率が6倍よりも大きくなるとフィルムが破断しやすくなるため、延伸温度は100〜120℃、延伸倍率は4〜5倍が好ましい。
【0027】
ここで、本発明においては冷却工程を設けてこの二軸配向フィルムのフィルム温度を25〜45℃に冷却し、熱処理工程へ導く。この際の冷却の方法は、熱処理を行うテンターで各ゾーンを独立に温度制御する空冷方法、熱処理領域の上下にアルミ板などの遮蔽板で熱風を遮断する空冷方法、ロール冷却方法等が挙げられる。熱処理を行うテンターによる空冷方法では各ゾーンが長手方向に全てつながっているため、随伴気流など高温空気の自由な流れによりフィルム上下や幅方向に温度差が発生し、フィルム温度を十分冷却できない場合がある。その場合は、圧縮空気などを送り込んで積極的に冷却することで対応することもできる。また、ロール冷却方法では、使用するロール本数や設定温度は限られるものではないが、複数本通すことで冷却することが好ましい。冷却温度はフィルム温度を確実に25〜45℃にするため20〜45℃が好ましく、さらに好ましくは30〜40℃である。次いで熱処理することで、150℃30分間の条件で熱処理したのちのフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%の二軸配向ポリエステルフィルムを得る。熱処理の雰囲気温度はフィルム物性を安定させるため、フィルム上下の温度差が1〜20℃、好ましくは1〜10℃、さらに好ましくは1〜5℃である。フィルム上下での温度差が20℃よりも大きいと、フィルムの幅方向の物性、特に機械的特性あるいは熱収縮率を不均一にする場合がある。上記熱処理においては、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。この際、横方向・長手方向いずれの方向でも良いが、横方向・長手方向を同時に行ったり、これらを組み合わせておこなっても良い。弛緩率はフィルムの全幅に対して好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜10%が熱寸法安定性の優れたフィルムを得るのに有効である。
【実施例】
【0028】
実施例および比較例における特性値の測定方法は次の通りである。
【0029】
(1)熱収縮率
フィルム表面に、幅10mm、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
フィルムの長手方法および幅方向についてそれぞれ3カ所の測定を行い、平均値を求めた。
【0030】
(2)配向主軸の傾き(配向角)、収率
野村商事製SONIC SHEET TESTER(SST−250)を用いて測定をする。試料となるフィルムの幅に対して最も配向主軸が傾く両端部からA4サイズに切り出したサンプルの中点(105mm)を測定し、その最大値を配向角とした。なお、配向主軸がフィルム幅方向と平行である時を配向角0度であり、フィルム幅方向に対して時計回りの傾きを+、反時計回りを−とし、その絶対値を測定結果とした。
両端部で配向主軸の傾き(配向角)が5度を超える場合には、フィルム幅の中央部に向かって幅方向の位置を変えて測定し、下式により収率を求めた。
【0031】
収率(%)=
配向主軸の傾き(配向角)が5度以下を満足する幅長さ/全幅長さ×100。
【0032】
(3)フィルム長手方向の厚みむら
安立電気製フィルム厚み連続測定器を用いて、長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、最大厚みと最小厚みの差を厚みむら(μm)として測定した。測定条件は下記の通り。
構成:K−306C広範囲電子マイクロメータ、K−310Cレコーダー、フィルム送り装置
検出器:3Rルビー端子、測定力:15g±5g
フィルム幅:45mm、測定長:15m、フィルム送り速度:3m/分。
【0033】
(4)フィルムのヘイズ値
JIS K7105(1981)に準じ、フィルム長手方向4cm×フィルム幅方向3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、ヘイズメータ(スガ試験機製HGM−2DP(C光用))を用いて測定する。フィルム幅方向に対して均等に3点測定し、その平均値を測定結果とした。
【0034】
(5)フィルム厚み
JIS C2151(1990)に準じ、マイクロメーター(ミツトヨOMM−25)を用いてフィルム幅方向に対して均等に30点測定し、その平均値を測定結果とした。
【0035】
(6)粗大突起数
粗大突起数は10cm四方の大きさのフィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印加電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを決定する。干渉縞が1重環で0.27μmであり、3重環0.81μm以上の粗大突起個数を測定した。光源としては、ハロゲンランプに564nmのバンドパスフィルターをかけたものを用いた。任意にサンプリングした、10サンプルについて測定し、その平均値を測定結果とした。
【0036】
(7)フィルム温度
ハンディ形放射温度計(株式会社チノー製IR−TA)を用いて、フィルム温度を測定した。フィルム幅方向に対して均等に3点測定し、その平均値を測定結果とした。
【0037】
(8)粒子の平均粒径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率は粒径により、およそ5000〜20000倍から適宜選択する。観察箇所をかえて粒子数5000個以上で粒径とその体積分率から、次式で体積平均径dを得る。粒径の異なる2種類以上の粒子を含有している場合には、それぞれの粒子について同様の測定を行い、粒径を求めた。
d=Σ(di・Nvi)
ここで、diは粒径、Nviはその体積分率である。
粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、粒径により、3000〜20000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所をかえて500視野以上測定し、上記式から体積平均径dを求める。
【0038】
(9)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶
解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0039】
(10)フィルム積層厚み
表面からエッチングしながらXPS(X線光電子光法)、IR(赤外分光法)あるいはコンフォーカル顕微鏡などで、その粒子濃度のデプスプロファイルを測定する。片面に積層したフィルムにおける表層では、表面という空気−樹脂の界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の片面に積層したフィルムの場合は、深さ[I]で一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[II](ここで、II>I)を積層厚さとした。さらに、無機粒子などが含有されている場合には、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フィルム中の粒子のうち最も高濃度の粒子の起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、層(A)の表面からの深さ(厚さ)方向の分析を行う。そして上記同様の手法から積層厚さを得る。
【0040】
(11)フィルム表面粗さSRa
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET−350K)を用いて測定し、得られたる表面のプロファイル曲線より、JIS・B0601に準じ、算術平均粗さSRa値を求めた。測定条件は下記のとおり。
X方向測定長さ:0.5mm、X方向送り速度:0.1mm/秒。
Y方向送りピッ:5μm、Y方向ライン数:40本。
カットオフ:0.25mm。
触針圧:0.02mN。
高さ(Z方向)拡大倍率:5万倍。
【0041】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
【0042】
実施例1
ジメチルテレフタレートに1.9モルのエチレングリコールおよび酢酸マグネシウム・4水塩を0.05%、リン酸を0.015%加え加熱エステル交換を行い、引き続き三酸化アンチモン0.025%を加え、加熱昇温し真空化で重縮合反応を行い、粒子を実質的に含有しない、固有粘度0.63のホモポリエステルペレットを得た。
【0043】
さらに、平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウムを準備し、10%のエチレングリコールスラリーとした。このスラリーをジェットアジターで一時間分散処理を行い、5μm以上の捕集効率95%のフィルターで高精度濾過した。このスラリーをエステル交換後に添加し、引き続き、上記と同じように重縮合反応を行い、平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウムを1%含む、固有粘度0.63の炭酸カルシウム含有マスターペレットを得た。
【0044】
次に、炭酸カルシウム含有マスターペレットおよび、粒子を含有しないホモポリエステルペレットを混合し、炭酸カルシウムを0.5%含有するポリエステルA、炭酸カルシウムを0.05%含有するポリエステルBを得た。
【0045】
これらのポリエステルA、Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して、5μm以上の捕集効率95%の高精度フィルターで濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングロール上に冷却固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、まず103℃に加熱したロールとラジエーションヒーターによって長手方向に3.4倍延伸した。続いてテンターにて幅方向に105℃で4.4倍に延伸し、冷却温度を40℃に設定してフィルム温度を42℃に冷却した。この冷却工程ではロール方式を採用し、次いで190℃で熱処理を行って、全フィルム厚み38μm、両層の積層厚さ1.5μm、フィルム幅5.1mの3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。なお、両層の積層厚さは同一とした。得られた結果を表1に示した。
【0046】
実施例2〜4、比較例1〜3
添加する不活性粒子の平均粒子径、含有量、延伸条件、冷却条件、熱処理温度などの製膜条件を変えるほかは実施例1と同様に実施し、3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1に示した。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃30分間の条件で熱処理した後のフィルム長手方向およびフィルム幅方向の熱収縮率がそれぞれ5〜7%、7〜9%であり、
フィルム幅方向に対する配向主軸の傾き(配向角)が少なくとも5m幅にわたって5度以下で、
フィルム長手方向の厚みむらが0.5〜1.5μmである
偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルムのヘイズ値が7〜13%である請求項1記載の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
3層複合フィルムからなる請求項1または2記載の偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
未延伸フィルムを縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸し、冷却工程を経て熱処理して偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、冷却工程にてフィルム温度を25〜45℃に冷却したのち、熱処理する偏光板離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−246685(P2008−246685A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87181(P2007−87181)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】