説明

偏波多重光受信機

【課題】簡易な構成で偏波成分を安定して分離させる。
【解決手段】偏波多重光受信機は、偏波制御手段、偏波分離手段、第一光受信手段、第二光受信手段、相関算出手段、制御手段を備える。偏波制御手段は、偏波多重信号の偏波状態を制御する。偏波分離手段は、二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する。第一光受信手段は、二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する。第二光受信手段は、二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する。相関算出手段は、第一光受信手段によって受信された信号と第二光受信手段によって受信された信号との間の相関値を算出し、制御手段は、この相関値を最小にさせるための制御信号を生成し、偏波制御手段は、この制御信号に基づいて偏波状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏波多重を用いた伝送に有用な偏波多重光送信機、偏波多重光受信機、偏波多重光送受信システムおよび偏波多重光送受信システムの制御方法に関し、特に、偏波成分を安定して分離させることができる偏波多重光送信機、偏波多重光受信機、偏波多重光送受信システムおよび偏波多重光送受信システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
40Gbit/s以上の超高速光伝送システムを実現するために、偏波多重技術の採用が注目されている。この偏波多重技術は、同一の波長に、互いに直交する二つの偏波状態があることに着目したものであり、これら二つの偏波状態を利用して二つの独立した信号情報を伝送する方式である。この技術を採用することで変調速度を半分にすることができる。このような偏波多重技術を用いた伝送システムに関する技術は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−024731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、偏波多重信号の偏波状態は伝送路ファイバの曲げや、複屈折、振動等の影響を受けるため、信号が受信機に到達したときには不確定な要素や時間変動を伴うことになる。そのため、受信側で偏波成分を安定して分離させるためには、特別な適応制御が必要となる。上述した特許文献1に記載の伝送システムでは、偏波分離が最適な状態であることを検出するために、二つの偏波チャネルに送出されるビットシーケンスに対して入力データとは関係のない制御用のビット列を追加混入している。しかしながら、この場合には、送信側に複雑な信号処理を行う機能を追加する必要があり、送信機の構成が複雑になってしまう。また、制御用のビット列を追加することで、各偏波チャネルのマーク率が1/2から変動してしまうため、受信機のBER特性の最適化が困難になるとともに、入力データのビットレートよりも高いビットレートで伝送を行う必要があるため、受信機の構成が複雑になってしまう。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、簡易な構成で偏波成分を安定して分離させることができる偏波多重光送信機、偏波多重光受信機、偏波多重光送受信システムおよび偏波多重光送受信システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る偏波多重光送信機は、第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信手段と、第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信手段と、第一の光送信手段によって出力された光と第二の光送信手段によって出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を外部に送信する偏波多重手段と、所定のパイロット信号を発生させる信号発生手段と、を備え、上記第一の光送信手段と上記第二の光送信手段のうちの少なくとも一方は、信号発生手段によって発生されたパイロット信号を用いて、上記搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る偏波多重光受信機は、外部から受信した偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、偏波制御手段によって偏波状態が制御された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、第一の光受信手段によって受信された偏波成分と第二の光受信手段によって受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出手段と、抽出手段によって出力された強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、上記偏波制御手段は、制御手段によって生成された制御信号に基づいて偏波多重信号の偏波状態を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る偏波多重光送受信システムは、偏波多重光送信機と偏波多重光受信機とを有する偏波多重光送受信システムであって、上記偏波多重光送信機は、第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信手段と、第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信手段と、第一の光送信手段によって出力された光と第二の光送信手段によって出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を偏波多重光受信機に送信する偏波多重手段と、所定のパイロット信号を発生させる信号発生手段と、を備え、上記第一の光送信手段と上記第二の光送信手段のうちの少なくとも一方は、信号発生手段によって発生されたパイロット信号を用いて、上記搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調し、上記偏波多重光受信機は、偏波多重光送信機から送信された偏波多重信号を受信して当該偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、偏波制御手段によって偏波状態が制御された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、第一の光受信手段によって受信された偏波成分と第二の光受信手段によって受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出手段と、抽出手段によって出力された強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、上記偏波制御手段は、制御手段によって生成された制御信号に基づいて偏波多重信号の偏波状態を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る偏波多重光送受信システムの制御方法は、偏波多重光送信機と偏波多重光受信機とを有する偏波多重光送受信システムの制御方法であって、上記偏波多重光送信機が、第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信工程と、第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信工程と、第一の光送信工程において出力された光と第二の光送信工程において出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を偏波多重光受信機に送信する偏波多重工程と、所定のパイロット信号を発生させる信号発生工程と、を含み、上記第一の光送信工程と上記第二の光送信工程のうちの少なくとも一方は、信号発生工程において発生されたパイロット信号を用いて、上記搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調し、上記偏波多重光受信機が、偏波多重光送信機から送信された偏波多重信号を受信して当該偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御工程と、偏波制御工程において偏波状態が制御された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離工程と、偏波分離工程において分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信工程と、偏波分離工程において分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信工程と、第一の光受信工程において受信された偏波成分と第二の光受信工程において受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出工程と、抽出工程において出力された強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御工程と、を含み、上記偏波制御工程は、制御工程において生成された制御信号に基づいて偏波多重信号の偏波状態を制御することを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、偏波多重光送信機では、偏波多重光送信機と偏波多重光受信機との間で認識可能な所定のパイロット信号を用いて、搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調させることができ、偏波多重光受信機では、分離された偏波成分から所定のパイロット信号の成分を抽出させ、この成分の強度が最大または最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、上記パイロット信号の占有する周波数帯域の上限は、第一の入力信号および第二の入力信号の変調速度の100分の1以下の値となる周波数であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、上記偏波多重光送信機は、搬送波となる光を出力する光源と、光源によって出力された光を分岐する光分岐手段と、をさらに備え、第一の光送信手段および第二の光送信手段は、光分岐手段によって分岐された光を搬送波として用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、上記抽出手段は、パイロット信号の占有する周波数帯域の少なくとも一部を通過させる帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る偏波多重光受信機は、外部から受信した偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、偏波制御手段によって偏波状態が制御された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、第一の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号と第二の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号との間の相関値を算出する相関算出手段と、相関算出手段によって算出される相関値を最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、上記偏波制御手段は、制御手段によって生成された制御信号に基づいて偏波多重信号の偏波状態を制御することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、外部にある偏波多重光送信機によって送信された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離し、この分離したそれぞれの偏波成分に対応する信号間の相関値が最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏波多重光送信機では、偏波多重光送信機と偏波多重光受信機との間で認識可能な所定のパイロット信号を用いて、搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調させることができ、偏波多重光受信機では、分離された偏波成分から所定のパイロット信号の成分を抽出させ、この成分の強度が最大または最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、外部にある偏波多重光送信機によって送信された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離し、この分離したそれぞれの偏波成分に対応する信号間の相関値が最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。
【0018】
すなわち、本発明によれば、簡易な構成で偏波成分を安定して分離させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における偏波多重光送受信システムの構成図である。
【図2】実施例1における光送信部の構成図である。
【図3】実施例1における光受信部の構成図である。
【図4】NRZやRZ等の強度変調方式を採用したときの光/電変換部の構成図である。
【図5】DPSKを採用したときの光/電変換部の構成図である。
【図6】DQPSKを採用したときの光/電変換部の構成図である。
【図7】コヒーレント受信機を採用したときの光/電変換部の構成図である。
【図8】変形例における光送信部の構成図である。
【図9】実施例2における偏波多重光送受信システムの構成図である。
【図10】固定波形信号のパターンを示す図である。
【図11】実施例3における偏波多重光送受信システムの構成図である。
【図12】実施例3における光受信部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る偏波多重光送信機、偏波多重光受信機、偏波多重光送受信システムおよび偏波多重光送受信システムの制御方法の好適な実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、本実施例における偏波多重光送受信システムの構成について説明する。図1は、実施例1における偏波多重光送受信システムの構成図である。同図に示すように、偏波多重光送受信システム1は、偏波多重光送信機2と偏波多重光受信機3とを有する。偏波多重光送信機2と偏波多重光受信機3は、波長分割多重方式(WDM)の伝送路で接続されている。
【0022】
偏波多重光送信機2は、低周波発生器20a,20bと、光送信部21a,21bと、偏波多重器(PBC)22とを有する。光送信部21a,21bと偏波多重器22は、それぞれ偏波維持ファイバ(PMF)で接続されている。
【0023】
低周波発生器20a,20bは、偏波多重光送信機2と偏波多重光受信機3との間で認識可能な所定のパターンを含む低周波信号F1,F2を生成して光送信部21a,21bに送信する。低周波信号F1,F2は、周期的なパイロット信号であり、入力データ信号ID1,ID2の周波数よりも小さな周波数であることが望ましい。より望ましくは、例えば、入力データ信号ID1,ID2の変調速度の1/100以下の値となる周波数がよい。また、低周波発生器20aから出力される低周波信号F1の周波数と低周波発生器20bから出力される低周波信号F2の周波数はそれぞれ異なる周波数に設定される。さらに、低周波信号F1,F2は、必ずしも継続的に出力される必要はなく、低周波信号F1,F2の出力が認識可能な程度の継続性があれば間欠的に出力されることとしてもよい。
【0024】
光送信部21a,21bは、入力データ信号ID1,ID2に応じて、搬送波である光の位相、強度(振幅)、周波数のいずれかを変調して出力する。変調する際の変調方式としては、光の位相を変化させる位相変調、光の強度を変化させる強度変調、光の周波数を変化させる周波数変調のいずれの変調方式を採用してもよい。具体的な変調方式としては、例えば、DPSKやDQPSK等の差動位相変調方式、NRZやRZ等の強度変調方式が挙げられる。また、受信方式としては、直接検波方式やコヒーレント受信方式による変調方式等が該当する。また、入力データ信号ID1,ID2は、一のデータ信号を二つに分離した信号であってもよいし、全く関連のない別個のデータ信号であってもよい。さらに、入力データ信号ID1,ID2のビットレートは同一であってもよいし、相違していてもよい。光送信部21a,21bから出力されるそれぞれの光の波長はほぼ同一の波長であることを想定しているが、光変調スペクトラムの帯域が互いに重なり合う範囲で相違していてもよい。
【0025】
偏波多重器22は、光送信部21aによって変調された出力光と光送信部21bによって変調された出力光とを互いに直交する偏波状態で合成し、偏波多重信号を生成する。偏波多重器22は、生成した偏波多重信号を偏波多重光受信機3に送信する。
【0026】
図2を参照して、光送信部21の詳細構成について説明する。図2は、実施例1における光送信部の構成図である。同図に示すように、光送信部21は、周波数調整部211と、遅延調整部212と、出力強度調整部213と、レーザ光源214と、光変調器215と、増幅/減衰器216と、可変遅延器217と、駆動増幅器218とを有する。
【0027】
低周波発生器20から出力される低周波信号Fは、光送信部21の周波数調整部211、遅延調整部212および出力強度調整部213のうちの少なくともいずれか一つに入力される。低周波信号Fの入力先は、諸条件を考慮して設計時に適宜決めることができる。以下において、低周波信号Fが、周波数調整部211に入力される場合と、遅延調整部212に入力される場合と、出力強度調整部213に入力される場合とについて順に説明することにする。
【0028】
最初に、低周波信号Fが、周波数調整部211に入力される場合について説明する。周波数調整部211は、搬送波となる波長λ1のレーザ光を出射しているレーザ光源214を制御する。具体的に、周波数調整部211は、レーザ光源214から出射されているレーザ光の波長λ1を低周波信号Fで微小に揺らして変動させるようにレーザ光源214を制御する。例えば、低周波信号Fの周波数が1kHzである場合には、レーザ光の波長を、1msの周期で長い波長と短い波長に微小に揺らして変動させる。また、波長の振れ幅は、多重送信する隣のチャネルまでの距離に応じて決定する必要がある。例えば、隣のチャネルまでの距離が0.4〜0.8nm程度である場合には、波長の振れ幅を0.01nm程度に収まる範囲内で変動させることが望ましい。
【0029】
続いて、低周波信号Fが、遅延調整部212に入力される場合について説明する。遅延調整部212は、入力データ信号IDが光変調器215に入力されるまでの経路上に設けられている可変遅延器217を制御する。具体的に、遅延調整部212は、光変調器215で変調されるデータの伝送タイミングを低周波信号Fで微小に揺らして変動させるように可変遅延器217を制御する。ここで、変調をかけるデータの伝送タイミングが揺れることをジッタという。可変遅延器217でジッタを発生させる場合に、このジッタの量は、変調しているデータの1符号時間の1/5以下に抑えることが望ましい。ジッタの量が大きすぎると、受信側でエラーレートが増えてしまい、受信信号の品質劣化を招来するおそれがあるためである。
【0030】
続いて、低周波信号Fが、出力強度調整部213に入力される場合について説明する。出力強度調整部213は、光変調器215から出力された信号を増幅/減衰させる増幅/減衰器216を制御する。具体的に、出力強度調整部213は、増幅/減衰器216で増幅/減衰される信号の強度(振幅)を低周波信号で微小に揺らして変動させるように増幅/減衰器216を制御する。ここで、強度を変動させる範囲としては、例えば、低周波信号Fが入力されないときの強度を100%とした場合に、振れ幅が±数%程度に収まる範囲内で強度を変動させることが望ましい。振れ幅が大きすぎると、特に負側に大きく振れたときには雑音が増大してしまい伝送信号の品質劣化を招来するおそれがあるためである。なお、レーザ光源214が光出力強度の調整機能を備えている場合には、出力強度調整部213を別途設けることなく、その機能をレーザ光源214で実現することも可能である。さらに、光変調器215が光出力強度の調整機能を備えている場合には、出力強度調整部213を別途設けることなく、その機能を光変調器215で代用することも可能である。
【0031】
図1に示す偏波多重光受信機3は、偏波制御部31と、偏波分離器(PBS)32と、光受信部33a,33bと、バンドパスフィルタ34a,34bと、制御回路35とを有する。
【0032】
偏波制御部31は、偏波多重光送信機2から伝送路を介して送信されてきた偏波多重信号の偏波状態が、偏波分離器32の偏波軸に合うように制御する。偏波制御部31は、後述する制御回路35から送信されたフィードバック制御信号を用いて偏波多重信号の偏波状態を制御する。偏波分離器32は、偏波制御部31によって偏波状態が制御された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する。
【0033】
光受信部33aは、光送信部21aから送信された信号を受信してバンドパスフィルタ34aに出力するとともに、出力データ信号OD1を外部に出力する。光受信部33bは、光送信部21bから送信された信号を受信してバンドパスフィルタ34bに出力するとともに、出力データ信号OD2を外部に出力する。
【0034】
バンドパスフィルタ34aは、光受信部33aの出力信号から通過帯域を透過する成分を抽出し、この成分の強度を出力信号として制御回路35に出力する。このバンドパスフィルタ34aでは、通過帯域が、低周波信号F1の周波数を含むように設定されている。バンドパスフィルタ34bは、光受信部33bの出力信号から通過帯域を透過する成分を抽出し、この成分の強度を出力信号として制御回路35に出力する。このバンドパスフィルタ34bでは、通過帯域が、低周波信号F2の周波数を含むように設定されている。
【0035】
制御回路35は、バンドパスフィルタ34aからの出力信号を受信した場合には、出力信号が変化する周期と、低周波信号F1の周期と、低周波信号F2の周期とに基づいて、バンドパスフィルタ34aからの出力信号全体の成分に含まれる低周波信号F1の成分と低周波信号F2の成分との比率を算出する。そして、制御回路35は、低周波信号F1の成分の比率を最大にさせるためのフィードバック制御信号を生成して偏波制御部31に送信する。一方、制御回路35は、バンドパスフィルタ34bからの出力信号を受信した場合には、出力信号が変化する周期と、低周波信号F1の周期と、低周波信号F2の周期とに基づいて、バンドパスフィルタ34bからの出力信号全体の成分に含まれる低周波信号F1の成分と低周波信号F2の成分との比率を算出する。そして、制御回路35は、低周波信号F2の成分の比率を最大にさせるためのフィードバック制御信号を生成して偏波制御部31に送信する。
【0036】
なお、制御回路35は、偏波制御部31にフィードバック制御信号を送信する際に、二つあるバンドパスフィルタ34a,34bのうち、いずれか一方のバンドパスフィルタから出力される信号に基づいてフィードバック制御信号を生成して送信することとしてもよい。この場合には、いずれか一方のバンドパスフィルタのみを備えることとしてもよい。いずれか一方のバンドパスフィルタのみを備える場合には、バンドパスフィルタとしてローパスフィルタを用いることができる。また、二つのバンドパスフィルタ34a,34bを備える場合であっても、低周波信号F1,F2のうち、周波数が低い方の低周波信号に対応するバンドパスフィルタについてはローパスフィルタを用いることができる。
【0037】
図3を参照して、光受信部33の詳細構成について説明する。図3は、実施例1における光受信部の構成図である。同図に示すように、光受信部33は、光分岐器331と、光/電変換部332と、バンドパスフィルタ333と、低速フォトダイオード334,339と、位相比較器335と、ローパスフィルタ336と、電圧制御発振器(VCO)337と、識別回路338とを有する。
【0038】
光分岐器331は、偏波分離器32によって分離された二つの成分のうちのいずれか一方の成分を光/電変換部332と、バンドパスフィルタ333と、低速フォトダイオード334とに分岐させる。
【0039】
光/電変換部332は、入力された光信号を電気信号に変換し、この電気信号を増幅して出力する。光/電変換部332の構成は、採用される変調方式によって異なる。図4〜図7を参照して、各変調方式における光/電変換部332の構成について説明する。
【0040】
図4は、NRZやRZ等の強度変調方式を採用したときの光/電変換部の構成図である。同図に示すように、光/電変換部332は、フォトダイオードDと、トランスインピーダンスアンプTとを有する。トランスインピーダンスアンプTは、電流を電圧に変換する回路である。図5は、DPSKを採用したときの光/電変換部の構成図である。同図に示すように、光/電変換部332は、遅延干渉計Iと、フォトダイオードDa,Dbと、トランスインピーダンスアンプTとを有する。遅延干渉計Iは、光の位相の情報を光の強度の情報に変換する回路である。図6は、DQPSKを採用したときの光/電変換部の構成図である。同図に示すように、光/電変換部332は、光分岐器Bと、遅延干渉計Ia,Ibと、フォトダイオードDa,Db,Dc,Ddと、トランスインピーダンスアンプTa,Tbとを有する。図7は、コヒーレント受信機を採用したときの光/電変換部の構成図である。同図に示すように、光/電変換部332は、局発光源Sと、位相ハイブリッドHと、フォトダイオードDa,Db,Dc,Ddと、トランスインピーダンスアンプTa,Tbとを有する。位相ハイブリッドHは、二つの入力光を合成する回路である。
【0041】
図3に示す位相比較器335と、ローパスフィルタ336と、電圧制御発振器337とで、クロック再生回路を構成する。クロック再生回路は、受信した信号に同期するクロックを再生する回路である。
【0042】
識別回路338は、受信した信号の内容を識別する。具体的には、例えば、受信信号の各ビットが1なのか0なのかを識別する。
【0043】
バンドパスフィルタ333は、通過帯域の狭いバンドパスフィルタである。このようなバンドパスフィルタ333としては、例えば、ファブリーペロー共振器を用いることができる。ここで、ファブリーペロー共振器の特性は、周波数を横軸にとり透過率を縦軸にとった場合に、透過する周波数と透過しない周波数が所定の周期で繰り返し現れる。つまり、所定の周期ごとに透過率のピークが現れる。そして、この周期は調整することができる。したがって、この周期を、波長多重のシステムのチャネル間隔またはこのチャネル間隔の整数分の1に調整することで、波長多重のシステムがどのような波長で送受信する場合であっても容易に対応させることができる。
【0044】
低速フォトダイオード334,339は、例えば、1kHz位の遅いフォトダイオードであり、入力された光信号を電気信号に変換して出力する。
【0045】
このように構成される光受信部33の特徴は、偏波多重光送信機2の光送信部21a,21bから出力された低周波信号F1,F2の成分を含んだ信号を、偏波多重光受信機3のバンドパスフィルタ34に対して出力し、このバンドパスフィルタ34で低周波信号F1,F2の成分を抽出させることにある。そして、バンドパスフィルタ34に対して出力する信号は、上述した偏波多重光送信機2の光送信部21において設定された低周波信号Fの入力先ごとに異なる。以下において、低周波信号Fが、光送信部21の周波数調整部211に入力された場合と、光送信部21の遅延調整部212に入力された場合と、光送信部21の出力強度調整部213に入力された場合とについて順に説明することにする。
【0046】
最初に、低周波信号Fが、光送信部21の周波数調整部211に入力された場合について説明する。この場合には、光受信部33のバンドパスフィルタ333を通過して低速フォトダイオード339から出力される信号を、バンドパスフィルタ34に対して出力する。これは以下の特性を利用したものである。偏波多重光送信機2から送信された信号は、搬送波である光の波長が低周波信号Fで微小に揺らされているため、あるときは長い波長で、またあるときは短い波長で揺れるという特性がある。これに対して、通過帯域の狭いバンドパスフィルタ333は、入力信号の波長が少しでも変わると透過率が大きく変わるという特性がある。したがってこれらの特性を利用して、偏波多重光送信機2から送信された信号をバンドパスフィルタ333に入力すると、この入力信号の揺れに応じてバンドパスフィルタ333から出力される光りの強度を変化させることができる。つまり、低周波信号Fの周期を強度の変わる周期として出力させることができる。したがって、このバンドパスフィルタ333から出力された光信号を低速フォトダイオード339で電流信号に変換してからバンドパスフィルタ34に入力することで、バンドパスフィルタ34で低周波信号Fの成分を抽出させることが可能となる。
【0047】
続いて、低周波信号Fが、光送信部21の遅延調整部212に入力された場合について説明する。この場合には、光受信部33の位相比較器335から出力される信号を、バンドパスフィルタ34に対して出力する。これは以下の特性を利用したものである。偏波多重光送信機2から送信された信号は、光の伝送タイミングが低周波信号Fで微小に揺らされているという特性がある。これに対して、クロック再生回路は、クロックの周波数を受信信号の周波数と同期させようとする特性がある。したがってこれらの特性を利用して、偏波多重光送信機2から送信された信号を光/電変換してクロック再生回路に入力すると、この入力信号の伝送タイミングのずれに応じて位相比較器335から出力される電圧信号を変動させることができる。つまり、低周波信号Fの成分をこの電圧信号の変動として出力させることができる。したがって、この位相比較器335から出力された電圧信号をバンドパスフィルタ34に入力することで、バンドパスフィルタ34で低周波信号Fの成分を抽出させることが可能となる。
【0048】
続いて、低周波信号Fが、光送信部21の出力強度調整部213に入力された場合について説明する。この場合には、光受信部33の低速フォトダイオード334から出力される信号を、バンドパスフィルタ34に対して出力する。これは以下の特性を利用したものである。偏波多重光送信機2から送信された信号には、搬送波である光の強度が低周波信号Fで微小に揺らされているという特性がある。これに対して、低速フォトダイオード334には、低周波成分のみを透過させるというローパスフィルタの特性がある。したがってこれらの特性を利用して、偏波多重光送信機2から送信された信号を低速フォトダイオード334に入力すると、この入力信号の低周波成分である低周波信号Fの成分を出力させることができる。したがって、この低速フォトダイオード334から出力された低周波成分の信号をバンドパスフィルタ34に入力することで、バンドパスフィルタ34で低周波信号Fの成分を抽出させることが可能となる。
【0049】
上述してきたように、本実施例1の偏波多重光送信機2では、偏波多重光送信機2と偏波多重光受信機3との間で認識可能な低周波信号F1,F2を用いて、搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調させることができ、偏波多重光受信機3では、分離された偏波成分から低周波信号F1,F2の成分を抽出させ、この成分の強度が最大になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。したがって、簡易な構成で偏波成分を安定して分離させることができる。
【0050】
なお、上述した実施例1では、偏波多重光送信機2の各光送信部21a,21bにレーザ光源214を設けているが、レーザ光源214を、各光送信部21a,21bで共用することとしてもよい。図8を参照して本変形例について説明する。図8は、変形例における光送信部の構成図である。実施例1と同様の構成要素には同一の符合を付しその説明を省略する。同図に示すように、レーザ光源214および光分岐器23は、光送信部21sの外部に設けられている。光分岐器23は、レーザ光源214から出射されたレーザ光を、二つの光送信部21sに分岐する。ここで、レーザ光源214を共用する場合には、上述した実施例1で述べた低周波信号Fを周波数調整部211に入力する態様が除外される。したがって、光送信部21sは周波数調整部211を不要とする。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施例2について説明する。図9は、実施例2における偏波多重光送受信システムの構成図である。上述した実施例1では、偏波多重光送信機2において、低周波信号F1と低周波信号F2をそれぞれ光送信部21aと光送信部21bに入力しているが、本実施例2では、一方の光送信部21aにのみ低周波信号である固定波形信号F3を入力する点に特徴がある。なお、実施例1と同様の構成要素には同一の符合を付しその説明を省略する。
【0052】
実施例2における偏波多重光送信機2sは、実施例1の偏波多重光送信機2で用いられている低周波発生器20a,20bの代わりに、固定波形発生器24を用いる点で実施例1における偏波多重光送信機2の構成と異なる。
【0053】
固定波形発生器24は、固定波形信号F3を光送信部21aに送信する。図10は、固定波形信号のパターンを示す図である。同図に示すように、固定波形発生器24から出力される固定波形信号F3は、所定の周期Xを有するパイロット信号が連続して出力されている。
【0054】
このような固定波形信号F3を受信した光送信部21aは、上述した実施例1における光送信部21と同様に、光送信部21の周波数調整部211、遅延調整部212および出力強度調整部213のうちの少なくともいずれか一つに入力される。これにより、搬送波である光の波長、伝送タイミング、強度のうちのいずれかが固定波形信号F3で微小に揺らされて変動することになる。
【0055】
一方、光送信部21bには、固定波形信号F3が入力されない。したがって、光送信部21bは、入力データ信号ID2に応じて、搬送波である光の位相、強度、周波数のいずれかを変調して出力することになる。
【0056】
図9に示すように、本実施例2における偏波多重光受信機3sは、実施例1の偏波多重光受信機3で用いられているバンドパスフィルタ34a,34bの代わりに、乗算器36a,36bと固定波形発生器24とを用いる点で実施例1における偏波多重光受信機3の構成と異なる。
【0057】
乗算器36aは、光受信部33aから出力される信号と、固定波形発生器24から出力される固定波形信号F3とを乗算する。乗算器36bは、光受信部33bから出力される信号と、固定波形発生器24から出力される固定波形信号F3を乗算する。
【0058】
ここで、二つの信号を乗算することで、二つの信号の相関関係を判定することができる。つまり、二つの信号に含まれる成分が同一であれば、乗算値が最大となり相関関係が最も高いと判定できる。一方、二つの信号に同じ成分が全く含まれていなければ、乗算値が最小となり相関関係が最も低いと判定できる。
【0059】
本実施例2では、二つの信号に含まれる固定波形信号F3の成分を用いて相関関係を判定する。つまり、光受信部33a,33bから出力される信号に固定波形信号F3の成分が多く含まれているほど、乗算器36a,36bから出力される信号の値が大きくなり、相関関係が高いと判定する。一方、光受信部33a,33bから出力される信号に固定波形信号F3の成分が含まれていないほど、乗算器36a,36bから出力される信号の値が小さくなり、相関関係が低いと判定する。
【0060】
本実施例2における光受信部33aには、固定波形信号F3が入力されている光送信部21aから送信された全ての信号が入力されることが望ましい。したがって、乗算器36aから出力される信号の値が最大となるように制御することが望ましい。一方、本実施例2における光受信部33bには、固定波形信号F3が入力されていない光送信部21bから送信された全ての信号が入力されることが望ましい。したがって、乗算器36bから出力される信号の値が最小となるように制御することが望ましい。
【0061】
本実施例2における制御回路35sは、乗算器36aから出力される信号の値を最大にさせるためのフィードバック制御信号を生成して偏波制御部31に送信する。また、制御回路35sは、乗算器36bから出力される信号の値を最小にさせるためのフィードバック制御信号を生成して偏波制御部31に送信する。これにより、偏波多重信号を安定して分離させることができる。
【0062】
上述してきたように、本実施例2の偏波多重光送信機2sでは、偏波多重光送信機2sと偏波多重光受信機3sとの間で認識可能な固定波形信号F3を用いて、搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調させることができ、偏波多重光受信機3sでは、分離された偏波成分から固定波形信号F3の成分を抽出させ、この成分の強度が最大または最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。したがって、簡易な構成で偏波成分を安定して分離させることができる。
【実施例3】
【0063】
本発明の実施例3について説明する。図11は、実施例3における偏波多重光送受信システムの構成図である。上述した実施例1では、偏波多重光送信機2において、低周波信号F1と低周波信号F2をそれぞれ光送信部21aと光送信部21bに入力しているが、本実施例3では、低周波信号を入力しない点に特徴がある。なお、実施例1と同様の構成要素には同一の符合を付しその説明を省略する。
【0064】
実施例3における偏波多重光送信機2tは、実施例1の偏波多重光送信機2で用いられている低周波発生器20a,20bを有していない点で実施例1における偏波多重光送信機2の構成と異なる。これにより、光送信部21a,21bは、入力データ信号ID1,ID2に応じて、搬送波である光の位相、強度、周波数のいずれかを変調して出力することになる。
【0065】
本実施例3における偏波多重光受信機3tは、実施例1の偏波多重光受信機3で用いられているバンドパスフィルタ34a,34bの代わりに乗算器37とローパスフィルタ38を用いる点で実施例1における偏波多重光受信機3の構成と異なる。
【0066】
乗算器37およびローパスフィルタ38は、二つの光受信部33ta,33tbからそれぞれ出力される信号を用いて、それぞれの信号間の相関値を算出する。
【0067】
ここで、光受信部33taから出力される信号は、光送信部21aから送信された信号であり、光受信部33tbから出力される信号は、光送信部21bから送信された信号であることが望ましい。また、光送信部21aから送信された信号と、光送信部21bから送信された信号は、全く別個のデータを含む信号である。したがって、光受信部33taから出力される信号と、光受信部33tbから出力される信号とを乗算して平均して求められる相関値が最小になることが望ましい。なお、本実施例3では、相関期待値が大きくなるほど、二つの信号に共通の成分がより多く含まれることになるため、偏波多重信号の分離がより不安定になる。
【0068】
本実施例3における制御回路35tは、ローパスフィルタ38から出力される信号の値を最小にさせるためのフィードバック制御信号を生成して偏波制御部31に送信する。これにより、偏波多重信号を安定して分離させることができる。
【0069】
図12は、実施例3における光受信部の構成図である。同図に示すように、光受信部33tは、光/電変換部332と、位相比較器335と、ローパスフィルタ336と、電圧制御発振器337と、識別回路338と、ローパスフィルタ33Fとを有する。なお、ローパスフィルタ33F以外の各構成要素は、実施例1におけるそれぞれの構成要素と同様であるため、その説明は省略する。
【0070】
ローパスフィルタ33Fは、光/電変換部332から出力された信号に含まれる成分のうち、低周波の成分だけを抽出して出力する。ローパスフィルタ33Fを通してから出力することによって、光/電変換部332から出力された信号に含まれる成分の一部のみを用いてこれ以降の処理を実行させることができる。これにより、回路構成を簡易にすることができ、コストを削減させることができる。一方、このローパスフィルタ33Fを省略することもできる。この場合には、光/電変換部332から出力された信号に含まれる全ての成分を用いてこれ以降の処理を実行させることができるため、処理精度を向上させることができる。
【0071】
上述してきたように、本実施例3の偏波多重光送信機3tでは、偏波多重光送信機2tによって送信された偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離し、この分離したそれぞれの偏波成分に対応する信号間の相関値が最小になるように偏波状態を制御させながら偏波多重信号を分離させることが可能となる。したがって、簡易な構成で偏波成分を安定して分離させることができる。
【0072】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0073】
(付記1)第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信手段と、
前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信手段と、
前記第一の光送信手段によって出力された光と前記第二の光送信手段によって出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を外部に送信する偏波多重手段と、
所定のパイロット信号を発生させる信号発生手段と、を備え、
前記第一の光送信手段と前記第二の光送信手段のうちの少なくとも一方は、前記信号発生手段によって発生された前記パイロット信号を用いて、搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調する
ことを特徴とする偏波多重光送信機。
【0074】
(付記2)前記パイロット信号の占有する周波数帯域の上限は、前記第一の入力信号および前記第二の入力信号の変調速度の100分の1以下の値となる周波数であることを特徴とする付記1に記載の偏波多重光送信機。
【0075】
(付記3)前記搬送波となる光を出力する光源と、
前記光源によって出力された光を分岐する光分岐手段と、をさらに備え、
前記第一の光送信手段および第二の光送信手段は、前記光分岐手段によって分岐された光を搬送波として用いることを特徴とする付記1または2に記載の偏波多重光送信機。
【0076】
(付記4)外部から受信した偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、
前記偏波制御手段によって偏波状態が制御された前記偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、
前記第一の光受信手段によって受信された偏波成分と前記第二の光受信手段によって受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出手段と、
前記抽出手段によって出力された前記強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、
前記偏波制御手段は、前記制御手段によって生成された前記制御信号に基づいて前記偏波多重信号の偏波状態を制御する
ことを特徴とする偏波多重光受信機。
【0077】
(付記5)前記パイロット信号の占有する周波数帯域の上限は、前記第一の入力信号および前記第二の入力信号の変調速度の100分の1以下の値となる周波数であることを特徴とする付記4に記載の偏波多重光受信機。
【0078】
(付記6)前記抽出手段は、前記パイロット信号の占有する周波数帯域が通過するように設計された帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタであることを特徴とする付記4または5に記載の偏波多重光受信機。
【0079】
(付記7)外部から受信した偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、
前記偏波制御手段によって偏波状態が制御された前記偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、
前記第一の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号と前記第二の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号との間の相関値を算出する相関算出手段と、
前記相関算出手段によって算出される前記相関値を最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、
前記偏波制御手段は、前記制御手段によって生成された前記制御信号に基づいて前記偏波多重信号の偏波状態を制御する
ことを特徴とする偏波多重光受信機。
【0080】
(付記8)偏波多重光送信機と偏波多重光受信機とを有する偏波多重光送受信システムであって、
前記偏波多重光送信機は、
第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信手段と、
前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信手段と、
前記第一の光送信手段によって出力された光と前記第二の光送信手段によって出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を前記偏波多重光受信機に送信する偏波多重手段と、
所定のパイロット信号を発生させる信号発生手段と、を備え、
前記第一の光送信手段と前記第二の光送信手段のうちの少なくとも一方は、前記信号発生手段によって発生された前記パイロット信号を用いて、前記搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調し、
前記偏波多重光受信機は、
前記偏波多重光送信機から送信された前記偏波多重信号を受信して当該偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、
前記偏波制御手段によって偏波状態が制御された前記偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、
前記第一の光受信手段によって受信された偏波成分と前記第二の光受信手段によって受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出手段と、
前記抽出手段によって出力された前記強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、
前記偏波制御手段は、前記制御手段によって生成された前記制御信号に基づいて前記偏波多重信号の偏波状態を制御する
ことを特徴とする偏波多重光送受信システム。
【0081】
(付記9)前記パイロット信号の占有する周波数帯域の上限は、前記第一の入力信号および前記第二の入力信号の変調速度の100分の1以下の値となる周波数であることを特徴とする付記8に記載の偏波多重光送受信システム。
【0082】
(付記10)前記偏波多重光送信機は、
前記搬送波となる光を出力する光源と、
前記光源によって出力された光を分岐する光分岐手段と、をさらに備え、
前記第一の光送信手段および第二の光送信手段は、前記光分岐手段によって分岐された光を搬送波として用いることを特徴とする付記8または9に記載の偏波多重光送受信システム。
【0083】
(付記11)前記抽出手段は、前記パイロット信号の占有する周波数帯域が通過するように設計設定された帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタであることを特徴とする付記8〜10のいずれか1つに記載の偏波多重光送受信システム。
【0084】
(付記12)偏波多重光送信機と偏波多重光受信機とを有する偏波多重光送受信システムの制御方法であって、
前記偏波多重光送信機が、
第一の入力信号に基づいて変調した光を出力する第一の光送信工程と、
前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号に基づいて変調した光を出力する第二の光送信工程と、
前記第一の光送信工程において出力された光と前記第二の光送信工程において出力された光とを互いに直交する偏波状態で合成して偏波多重信号を生成し、当該偏波多重信号を前記偏波多重光受信機に送信する偏波多重工程と、
所定のパイロット信号を発生させる信号発生工程と、を含み、
前記第一の光送信工程と前記第二の光送信工程のうちの少なくとも一方は、前記信号発生工程において発生された前記パイロット信号を用いて、前記搬送波となる光の波長、伝送タイミングおよび強度のうちの少なくともいずれか一つを変調し、
前記偏波多重光受信機が、
前記偏波多重光送信機から送信された前記偏波多重信号を受信して当該偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御工程と、
前記偏波制御工程において偏波状態が制御された前記偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離工程と、
前記偏波分離工程において分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信工程と、
前記偏波分離工程において分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信工程と、
前記第一の光受信工程において受信された偏波成分と前記第二の光受信工程において受信された偏波成分のうちの少なくとも一方の偏波成分に対応する信号から所定のパイロット信号の成分を抽出し、当該パイロット信号の成分の強度を出力する抽出工程と、
前記抽出工程において出力された前記強度を最大または最小にさせるための制御信号を生成する制御工程と、を含み、
前記偏波制御工程は、前記制御工程において生成された前記制御信号に基づいて前記偏波多重信号の偏波状態を制御する
ことを特徴とする偏波多重光送受信システムの制御方法。
【0085】
(付記13)前記パイロット信号の占有する周波数帯域の上限は、前記第一の入力信号および前記第二の入力信号の変調速度の100分の1以下の値となる周波数であることを特徴とする付記12に記載の偏波多重光送受信システムの制御方法。
【0086】
(付記14)前記偏波多重光送信機が、
前記搬送波となる光を出力する光源によって出力された光を分岐する光分岐工程をさらに含み、
前記第一の光送信工程および第二の光送信工程は、前記光分岐工程において分岐された光を搬送波として用いることを特徴とする付記12または13に記載の偏波多重光送受信システムの制御方法。
【0087】
(付記15)前記抽出工程は、前記パイロット信号の占有する周波数帯域が通過するように設計された帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタであることを特徴とする付記12〜14のいずれか1つに記載の偏波多重光送受信システムの制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明にかかる偏波多重光送信機、偏波多重光受信機、偏波多重光送受信システムおよび偏波多重光送受信システムの制御方法は、偏波多重を用いた伝送に有用であり、特に、偏波成分を安定して分離させることに適している。
【符号の説明】
【0089】
1 偏波多重光送受信システム
2 偏波多重光送信機
3 偏波多重光受信機
20 低周波発生器
21 光送信部
22 偏波多重器
23 光分岐器
24 固定波形発生器
31 偏波制御部
32 偏波分離器
33 光受信部
34 バンドパスフィルタ
35 制御回路
36 乗算器
37 乗算器
38 ローパスフィルタ
211 周波数調整部
212 遅延調整部
213 出力強度調整部
214 レーザ光源
215 光変調器
216 増幅/減衰器
217 可変遅延器
218 駆動増幅器
331 光分岐器
332 光/電変換部
333 バンドパスフィルタ
334,339 低速フォトダイオード
335 位相比較器
336 ローパスフィルタ
337 電圧制御発振器
338 識別回路
33F ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受信した偏波多重信号の偏波状態を制御する偏波制御手段と、
前記偏波制御手段によって偏波状態が制御された前記偏波多重信号から、直交する二つの偏波成分をそれぞれ抽出して分離する偏波分離手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの一方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて第一の入力信号を再生して外部に送信する第一の光受信手段と、
前記偏波分離手段によって分離された二つの偏波成分のうちの他方の偏波成分を受信し、当該偏波成分に基づいて前記第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を再生して外部に送信する第二の光受信手段と、
前記第一の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号と前記第二の光受信手段によって受信された偏波成分に対応する信号との間の相関値を算出する相関算出手段と、
前記相関算出手段によって算出される前記相関値を最小にさせるための制御信号を生成する制御手段と、を備え、
前記偏波制御手段は、前記制御手段によって生成された前記制御信号に基づいて前記偏波多重信号の偏波状態を制御する
ことを特徴とする偏波多重光受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−110024(P2012−110024A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9172(P2012−9172)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2008−45200(P2008−45200)の分割
【原出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人情報通信研究機構、「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】