説明

偏波面回転ミラー

【課題】温度依存性が零で、波長依存性を小さく保ちながら、小型化と、構成部品同士の調芯作業の簡略化、及び部品点数の削減による低コスト化が図られた偏波面回転ミラーを実現する。
【解決手段】偏波面回転ミラーを、光ファイバ、複屈折結晶、λ/4波長板、レンズ、及びミラーで構成する。光ファイバはシングルモード型とし、複屈折結晶に互いに平行な2つの面を形成し、更に光ファイバの光入出射端面を複屈折結晶の一方の面に対向させ、λ/4波長板の結晶軸と、複屈折結晶の光学面での結晶軸とのなす角度を45度に設定する。
又、複屈折結晶の他方の面とλ/4波長板の一方の面とを面対向させ、λ/4波長板の他方の面には、レンズとミラーを配置する。レンズは、λ/4波長板の他方の面とミラーの間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路で接続された送信部および受信部との間で量子暗号を伝送するための量子暗号装置や、光スイッチ、光源、アンプ、干渉計、アドドロップに使用される偏波面回転ミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的普及、電子商取引の実用化を迎え、通信の秘密保持・改竄防止や個人の認証など暗号技術の社会的な必要性が高まっている。現在、DES(Data Encryption Standard)暗号のような共通鍵方式やRSA(Rivest Shamir Adleman)暗号をはじめとする公開鍵方式が広く用いられている。しかし、これらは「計算量的安全性」にその基盤を置いている。つまり、このような従来の暗号方式は計算機ハードウェアと暗号解読アルゴリズムの進歩に常に脅かされている。特に銀行間のトランザクションや軍事・外交にかかわる情報などの極めて高い安全性が要求される分野では、原理的に安全な暗号方式の実用化が望まれている。
【0003】
情報理論で無条件安全性が証明されている暗号方式にワンタイムパッド法がある。ワンタイムパッド法は通信文と同じ長さの暗号鍵を用い、暗号鍵を1回で使い捨てることが特徴である。非特許文献1では、ワンタイムパッド法に使用する暗号鍵を安全に配送する具体的なプロトコルが提案された。これを契機に量子暗号の研究が盛んになっている。量子暗号は物理法則が暗号の安全性を保証するため、計算機の能力の限界に依存しない究極の安全性保証が可能になる。現在検討されている量子暗号は1ビットの情報を単一光子の状態として伝送する。このため、伝送路である光ファイバにより光子の状態が変化すると量子暗号の安全性は大きく損なわれる。
【0004】
【非特許文献1】Bennett and Brassard, IEEE Int. Conf. on Computers, Systems, and Signal Processing, Bangalore, India, p. 175 (1984)
【0005】
従来の量子暗号装置では特許文献1に記載されているように、送信側で光子パルスを光路差のある干渉系を用いて時間的に2分割し、互いの位相差を変調することにより暗号鍵となる乱数ビットを表現し、受信側で2分割された光子パルスを再び干渉させることにより伝送された乱数ビットを再生している。このため、送信側と受信側で用いる干渉系の光路差は完全に等しくなければならない。又、伝送路で偏波状態が変動すると干渉の明瞭度が低下し、受信誤り率の増大につながる。量子暗号では受信誤り率の増大を盗聴者検出の手段としているため、伝送路での偏波状態の変化による受信誤り率増大は盗聴者の発見確率を減少させ、結果として量子暗号の安全性を低下させる。
【0006】
【特許文献1】特許2951408号
【0007】
上述のような問題を解決するため、特許文献2またはこれを簡略にした非特許文献2に記載されているように、ファラデーミラーを用いて偏波方向の変動を補償する量子暗号装置が発明されている。この従来の量子暗号装置では、時間的に分割され偏波方向が直交した光信号を受信器から送信器に送り、送信器はファラデーミラーを用いて送られてきた光の進行方向を反転させ、同時に偏波方向を90度回転させた後、分割された光信号の間に位相変調器により位相差を与えて受信側に送り返すという構成をとっている。このような折り返し構成により、光信号を時間的に分割する干渉系と時間的に再び結合させる干渉系は同一のものになるため、干渉系の光路差が光信号の往復時間より長い時間だけ一定に保たれれば明瞭度の高い干渉が得られる。
【0008】
途中の伝送路でいかなる偏波状態の擾乱を受けても、初めの状態が直線偏波状態であればファラデーミラーで反射されて戻った光信号の偏波方向は初めの状態に直交するため、伝送路での偏波状態の擾乱に対しても干渉信号の明瞭度は損なわれることはなく、量子暗号の安全性は保障される。
【0009】
【特許文献2】特表2000−517499号公報
【非特許文献2】Ribordy, Gautier, Gisin, Guinnard and Zbinden, Electronics Letters, Vol. 34 No.22, p.2116, 29th October 1998
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示された量子暗号装置でも、次のような問題があった。このシステムでは、折り返しにファラデーミラーを用いることにより、伝送路での偏波状態の擾乱に依存しないシステムが実現可能である。しかしながら、この方法は折り返し型であるため、往路における大きな強度を持つ光パルスが復路にある単一光子レベルの微弱光パルスと交差する場合に、光ファイバ中の後方散乱による迷光が発生し、システムのパフォーマンスを低下させるという問題がある。バーストパルス列を間欠的に伝送することにより、迷光の影響を避けることが可能であるが、その代償として鍵の生成レートが低下し、システムのパフォーマンスは改善しない。このような後方散乱による迷光は、量子暗号鍵伝送距離を制約する深刻な問題として知られている。
【0011】
そこで、折り返し型のファラデーミラーに代わるミラーとして、光ファイバをループ状にした偏波面回転ミラー(以下、このような偏波面回転ミラーを、光ファイバループミラーと記す)が、特許文献3に開示されている。
【0012】
【特許文献3】特開2006−41907号公報(第8頁、第4図)
【0013】
前記光ファイバループミラーの一種が組み込まれた、量子暗号装置用の位相変調器を、図11に示す。図11に示すように位相変調器102は、幹線伝送路100から入射された光信号を枝線伝送路に分岐にし、その枝線伝送路106からの光信号を前記幹線伝送路100に戻す光サーキュレータ101と、前記枝線伝送路106を終端する光ファイバループミラーとから構成されている。前記光ファイバループミラーは、偏光ビームスプリッタ103と回転角90度のファラデー回転子104が、偏波面保存光ファイバ105により結合されることで構成される。
【0014】
位相変調器102は、図示しない光源により出力された光信号に対して、図示しない干渉系の遅延時間よりも短い時間の間だけ時間選択的に位相変調を与える装置である。位相変調器102で与える位相変調に対応する電気信号の大きさを一定にするため、位相変調器102の偏波面無依存化が行われる。この位相変調器102の動作を説明する。
【0015】
幹線伝送路100から入射した光信号は、光サーキュレータ101によって枝線伝送路106に導かれる。枝線伝送路106に導かれた光信号は、偏光ビームスプリッタ103と偏波面保存光ファイバ105からなる光ファイバループミラーで終端された枝光路を一往復し、その過程で位相変調部102を2回通過して、光サーキュレータ101から幹線伝送路100に戻る。位相変調部102と光ファイバループミラー間のラウンドトリップタイムだけ時間的に離れた等振幅の2連電気パルスを位相変調部102に与えることにより、入力光の偏波面に依存しない位相変調を与えることが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の光ファイバループミラーに使用されている偏波面保存光ファイバ105は、曲げ損失を考慮して許容曲げ半径が30mm以上に設定されている光ファイバであった。このため、偏波面保存光ファイバ105から成るループ部分の曲げ半径を30mm未満にすることが不可能であったため、ループ部分で多くの占有空間を取ってしまい、このことが光ファイバループミラーの小型化を困難にしていた。
【0017】
更に、図12に示すように、従来の光ファイバループミラーでは、偏光ビームスプリッタ103と各光ファイバ(枝線伝送路106及び偏波面保存光ファイバ105)とを光学的に結合するために、偏光ビームスプリッタ103に対向している光ファイバの本数だけレンズ107が必要であった。従って、従来の光ファイバループミラーでは、レンズ107が最低3個必要であった。このように複数のレンズ107を使用するため、偏光ビームスプリッタ103と各光ファイバ間の調芯作業が煩雑化すると共に、部品点数の増加による光ファイバループミラーのコスト高も招いていた。
【0018】
本発明は上記各課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度依存性が零で、波長依存性を小さく保ちながら、小型化と、構成部品同士の調芯作業の簡略化、及び部品点数の削減による低コスト化が図られた偏波面回転ミラーを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1記載の偏波面回転ミラーが、
光ファイバと、複屈折結晶と、λ/4波長板(λ:前記偏波面回転ミラーに入射される光信号の波長)と、レンズと、ミラーを備え、
前記光ファイバはシングルモード型であり、
前記複屈折結晶は互いに平行な2つの面を有し、
前記光ファイバの光入出射端面は、前記複屈折結晶の一方の面に対向して配置され、
前記λ/4波長板の結晶軸と、前記複屈折結晶の光学面での結晶軸とのなす角度が45度に設定されると共に、
前記複屈折結晶の他方の面と前記λ/4波長板の一方の面とが面対向して前記λ/4波長板が配置され、
前記λ/4波長板の他方の面には前記レンズと前記ミラーとが配置されると共に、
前記レンズは、前記λ/4波長板の他方の面と前記ミラーの間に配置され、
更に、
前記光ファイバは無偏波な光信号を出射し、
前記光信号は前記複屈折結晶で、直線偏波の常光線と異常光線に分離され、
前記複屈折結晶から出射された前記常光線と前記異常光線は、前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる円偏波に変換され、
2つの前記円偏波は、前記レンズによって集光されて、前記ミラーの表面上の一点で点対称に反射され、
反射された2つの前記円偏波が、再度、前記λ/4波長板を通過することにより、2つの前記円偏波は、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換され、
2つの前記直線偏波が、再度、前記複屈折結晶に入射されることで1つの光信号に再合成され、
再合成された光信号が前記光ファイバに入射されることを特徴とする偏波面回転ミラーである。
【0020】
又、本発明の請求項2記載の偏波面回転ミラーが、
光ファイバと、第1の複屈折結晶と、第2の複屈折結晶と、λ/4波長板(λ:前記偏波面回転ミラーに入射される光信号の波長)と、レンズと、ミラーを備え、
前記光ファイバはシングルモード型であり、
前記第1の複屈折結晶と前記第2の複屈折結晶は、それぞれ互いに平行な2つの面を有し、
前記光ファイバの光入出射端面は、前記第1の複屈折結晶の一方の面に対向して配置され、
前記第1の複屈折結晶の他方の面と、前記第2の複屈折結晶の一方の面とが面対向して前記第2の複屈折結晶が配置され、
前記第2の複屈折結晶の光学面での結晶軸方向は、前記第1の複屈折結晶の光学面での結晶軸方向に対して、90度異なるように設定されると共に、
前記λ/4波長板の結晶軸と、前記第1の複屈折結晶及び前記第2の複屈折結晶の各々の光学面での結晶軸とのなす角度が45度に設定され、
更に、
前記第2の複屈折結晶の他方の面と前記λ/4波長板の一方の面とが面対向して前記λ/4波長板が配置され、
前記λ/4波長板の他方の面には前記レンズと前記ミラーとが配置されると共に、
前記レンズは、前記λ/4波長板の他方の面と前記ミラーの間に配置され、
更に、
前記光ファイバは無偏波な光信号を出射し、
前記光信号は前記第1の複屈折結晶で、直線偏波の常光線と異常光線の2つの光信号に分離され、
次に、前記第1の複屈折結晶から出射された前記常光線と前記異常光線が、前記第2の複屈折結晶を透過するときに、前記第1の複屈折結晶を常光線で透過した光信号は異常光線で透過されると共に、前記第1の複屈折結晶を異常光線で透過した光信号は常光線で透過され、
前記第1の複屈折結晶を透過時の前記異常光線と、前記第2の複屈折結晶を透過時の前記異常光線の、各シフト量が同一に設定され、
次に、前記2つの光信号が前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる円偏波に変換され、
更に、2つの前記円偏波は前記レンズに入射され、前記レンズに入射された、2つの前記円偏波の各中心位置と前記レンズの光軸間の距離が等距離に設定されると共に、2つの前記円偏波が前記レンズによって集光されて、前記ミラーの表面上の一点で点対称に反射され、
反射された2つの前記円偏波が、再度、前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換され、
次に、前記λ/4波長板から出射された2つの前記直線偏波が前記第2の複屈折結晶を透過するときに、一方の前記直線偏波のみがシフトされ、
更に、前記第2の複屈折結晶から出射された2つの前記直線偏波が、前記第1の複屈折結晶を透過するときに、前記第2の複屈折結晶を常光線で透過した光信号は異常光線で透過されると共に、前記第2の複屈折結晶を異常光線で透過した光信号は常光線で透過され、
2つの前記直線偏波が、再度、前記第1の複屈折結晶に入射されることで1つの光信号に再合成され、
再合成された光信号が前記光ファイバに入射されることを特徴とする偏波面回転ミラーである。
【0021】
更に、本発明の請求項3記載の偏波面回転ミラーは、前記光ファイバの前記光入出射端面が、斜めに形成されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の偏波面回転ミラーである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1及び請求項2に記載の偏波面回転ミラーに依れば、偏波面保存光ファイバを使用することなく、偏波面回転ミラーを構成するので、偏波面保存光ファイバのループ部分の最小曲げ半径の寸法制約を受けることが無い。従って、偏波面保存光ファイバから成るループ部分の占有空間を皆無とすることができ、偏波面保存ミラーの小型化が可能となる。
【0023】
更に、請求項1及び請求項2に記載の偏波面回転ミラーは、その光学系を、レンズが1つで成立するように構成しているので、従来の偏波面回転ミラーと比べてレンズの個数が減少されるため、偏波面回転ミラーの構成部品同士の調芯作業が簡略化される。又、レンズ個数の削減に伴い、偏波面回転ミラーの低コスト化も実現可能となる。
【0024】
更に、偏波面回転ミラーを、ファラデー回転子を使用することなく構成することにより、温度依存性が零で、波長依存性を小さく保つことが可能となる。
【0025】
更に、本発明の請求項2に記載の偏波面回転ミラーに依れば、上記各効果に加えて、第1の複屈折結晶で分離された2つの光信号の偏波依存損失(PDL:Polarization Dependent Loss)を解消することが可能となる。
【0026】
更に、本発明の請求項3に記載の偏波面回転ミラーに依れば、光ファイバの光入出射端面を斜めに形成しているので、光ファイバから出射した光の一部が、複屈折結晶(又は第1の複屈折結晶)の表面で反射しても、反射した光信号がコアへ結合することが抑止される。従って、光ファイバへの戻り光が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る偏波面回転ミラーを図1〜図6に基づいて詳細に説明する。各図のx軸、y軸、z軸はそれぞれ一対一に対応している。図1において、偏波面回転ミラー1は、光ファイバ2と、互いに平行な2つの面3a及び3bを有する複屈折結晶3、λ/4波長板4、1個のレンズ5、及びミラー6を備えて構成されている。
【0028】
光ファイバ2の光入出射端面2aは、研磨加工により斜めに形成されていると共に、前記複屈折結晶4の一方の面4aに対向されて配置されている。光入出射端面2aの斜め形成の角度φ(即ち、コア2bの軸方向に垂直な方向に対する角度)は、約6〜8度程度に設定される。光ファイバ2は、コア2b、及びコア2bの屈折率より低い屈折率を有するクラッド2cが、前記コア2bの周囲を囲むことで構成され、等方的な屈折率分布を有するシングルモード型の光ファイバであり、例えば石英系光ファイバや、プラスチック光ファイバを用いることが出来る。
【0029】
複屈折結晶3は一軸性複屈折結晶体であり、結晶軸X31が面3aに対して角度αで傾斜するように調整されると共に、光学面(面3a)での結晶軸X32がy軸と平行に配置される。複屈折結晶3としては、例えば、ルチル(TiO2)、方解石(CaCO3)、YVO4、BBO等を用いることができる。ここで、BBOとは、BaとBとOを含んだ結晶をいう。上記の結晶の中でも、特に硬くて傷が付きにくく、また潮解性のないルチルを用いることが好ましい。複屈折結晶3にルチルを使用する場合、面法線と結晶軸との角度α(図1の結晶軸X31方向に該当)は47.8度に設定する。又、複屈折後の常光線及び異常光線を平行に出射するために、2つの面3a及び3bは平行に設定する。なお、複屈折結晶3の表面には、各種のコーティング、例えば耐空気ARコートを施しても良い。
【0030】
そして、わずかな隙間を介して光ファイバ2と複屈折結晶3の間を、レンズを介さずに直接、光信号が伝搬する。
【0031】
λ/4波長板4は、複屈折結晶3を透過して入射してくる光信号の各偏波成分(常光線と異常光線)の偏波面を円偏波に変換するものである。前記λは、偏波面回転ミラー1に入射される光信号の波長を表す。λ/4波長板4としては、石英やλ/4波長フィルム、0次単プレート、0次2枚構成の水晶板、又は、λ/4の位相差を生じるゼロオーダーの光学ガラス位相板などが適当である。高次の波長板を使用すると、波長特性と温度特性が悪くなる。図2に示すように、λ/4波長板4の結晶軸X4方向が、複屈折結晶3の光学面での結晶軸X32に対してθ1=45度の角度をなして傾くように設定して、λ/4波長板4を配置する。配置の際は、複屈折結晶3の他方の面3bと、λ/4波長板4の一方の面4aとを面対向させて、複屈折結晶3とλ/4波長板4を配置する。
【0032】
一方、λ/4波長板4の他方の面4bには、レンズ5とミラー6とが順に配置される。レンズ5は、λ/4波長板4とミラー6の間に配置され、入射する光信号のコリメーション又は集光を行う。レンズ5としては、非球面レンズ、ボールレンズ、平凸レンズ、或いは、屈折率分布レンズ等を用いることが好ましい。又、レンズ5の材料としては、例えば、ガラスやプラスチックを用いる。
【0033】
ミラー6は、レンズ5で集光された光信号を反射する部品で、本実施の形態では、一例として、基板の表面にSiO2/TiO2をコーティングした全反射ミラーを用いた。
【0034】
次に、偏波面回転ミラー1の動作について図3〜図6を参照して説明を行う。前記のように、光ファイバ2は等方的な屈折率分布を有しているため、コア2b内部では無偏波で、波長がλの光信号が伝搬される。更に、光入出射端面2aから、その光信号が一定の広がり角で出射されて、複屈折結晶3に入射される。説明の便宜上、光ファイバ2から入射された直後の光信号の偏波状態を、図3に示すように、電気ベクトルの先端の回転方向が反時計回りの楕円偏波とする。前記の通り、光入出射端面2aに角度φを設けているので、複屈折結晶3の表面で光信号の一部が反射しても、コア2bに反射した光信号は結合しないので、光ファイバ2への戻り光が防止される。
【0035】
複屈折結晶3に入射した光信号は、y軸方向に沿って配置されている結晶軸X32方向に沿って分波され、図4(A)に示すように、互いに偏波方向が直交する直線偏波の常光線と異常光線に分離される。ここで、常光線の伝搬方向における複屈折結晶3の厚み(結晶長)Dは、
【0036】
【数1】

【0037】
で表される。但し、n0:複屈折結晶3中における常光線の屈折率、ne:複屈折結晶3中における異常光線の屈折率、θ:複屈折結晶3の結晶軸X31と、常光線の伝搬方向に垂直な面とのなす角度、dc:常光線と異常光線の分離幅、をそれぞれ示している。
【0038】
複屈折結晶3が正結晶(ルチル等)の場合には、結晶軸X31は常光線及び異常光線の伝搬方向と同一平面上にあり、異常光線の入射方向に近づくように配向し、図1の右下がりの直線となる。一方、負結晶(方解石等)の場合、結晶軸X31は常光線及び異常光線の伝搬方向と同一平面上にあって、常光線の入射方向に近づくように配向する。
【0039】
上述のように厚みDを規定した場合、結晶毎にn0、neが変動しても、それに応じて最適な厚みを設定し、面3bから分離光を出射させることが可能となる。また、結晶軸X31の方向を調整すれば、厚みDを小さくすることが可能となる。なお、n0、neやdcが一定で複屈折結晶3がルチルの場合、理論上はαが47.8度のとき、厚みDを最小に抑えつつ、常光線と異常光線の分離幅を最大にすることが可能となるので、αは47.8度が最も好ましい。
【0040】
分波された常光線と異常光線は、複屈折結晶3の他方の面3bから出射され、λ/4波長板4に入射して透過される。前記の通り、λ/4波長板4の結晶軸X4は、複屈折結晶3の結晶軸X32に対して45度傾くように設定されている。従って、複屈折結晶3から出射された前記異常光線の電気ベクトルの振動方向に対して、結晶軸X4方向は、z軸方向に見て反時計回りに45度傾く。よって、λ/4波長板4を通過した前記異常光線は、図4(B)の引き出し番号7bで示すような、反時計回りの円偏波となる。一方、複屈折結晶3から出射された前記常光線の電気ベクトルの振動方向に対して、結晶軸X4方向は、z軸方向に見て時計回りに45度傾く。よって、λ/4波長板4を通過した前記常光線は、図4(B)の引き出し番号7aで示すような、時計回りの円偏波となる。即ち、λ/4波長板4を通過した前記常光線と異常光線は、図4(B)に示すような、電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる、2つの円偏波7a、7bに変換される。
【0041】
λ/4波長板4から出射した2つの円偏波7a、7bは、レンズ5で所定角度屈折して集光されるが、偏波状態は変化しない。このときの屈折角は、レンズ5の光軸X5から光信号の中心位置と、レンズ5の焦点距離により決まる。
【0042】
レンズ5で集光された2つの円偏波7a、7bは、入射角と反対側に、ミラー6の表面上の一点Rで、ミラー6によって点対称に反射され、図5(B)に示すように上下位置で円偏波7a、7bが入れ替わる。図1から分かるように、偏波面回転ミラー1では、ミラー6における反射点(前記、一点R)と、レンズ5の光軸X5とが、光信号の伝搬方向(z軸方向)において同一直線上に来るように、ミラー6とレンズ5とを位置決めして配置している。
【0043】
反射された光信号は、再度レンズ5を透過して、レンズ5の光軸X5に関して対称の位置に出射される。このとき、レンズ5の前後で円偏波7a、7bの偏波状態は変化しない。
【0044】
2つの円偏波7a、7bは、再度、λ/4波長板4を通過することにより、図5(A)に示すように、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換される。円偏波7aが変換されると、偏波方向が結晶軸X32方向に対して直交する直線偏波となり、一方の円偏波7bが変換されると、偏波方向が結晶軸X32方向に対して平行な直線偏波となる。従って、円偏波7aから変換された直線偏波は、複屈折結晶3内部では異常光線となり、円偏波7bから変換された直線偏波は、複屈折結晶3内部では常光線となる。
【0045】
λ/4波長板4から出射された2つの直線偏波は、一定の広がり角で広がりながら伝搬し、再度、面3bから複屈折結晶3に入射される。前記の通り、2つの直線偏波は、複屈折結晶3内部ではそれぞれ常光線と異常光線になり、異常光線のみシフトされて、1つの光信号に再合成される。再合成により形成された無偏波の光信号は、複屈折結晶3の一方の面3aから出射され、光ファイバ2のコア2bに入射される。
【0046】
光ファイバ2に入射される直前の光信号は、図6に示すように、電気ベクトルの先端の回転方向が、図3の光信号とは逆方向に変換された楕円偏波の光信号である。コア2bに入射された光信号は、コア2b内部では光ファイバ2の等方的な屈折率分布により、無偏波の状態で伝搬される。
【0047】
図4(B)及び図5(B)に示すように、2つの円偏波7a、7bの偏波方向は、一点Rでの点対称反射によって、ミラー6への反射前及び反射後では、それぞれ逆方向に変換される。従って、その合成光の電気ベクトルの先端の回転方向も、図3と図6を比較すれば分かるように、光ファイバ2からの出射後と、光ファイバ2への入射前で逆方向に変換される。
【0048】
以上のように、本実施形態の偏波面回転ミラー1では、偏波面保存光ファイバを使用することなく、偏波面回転ミラー1を構成している。これにより、偏波面回転ミラー1は、従来の偏波面回転ミラー(即ち、光ファイバループミラー)のように、偏波面保存光ファイバのループ部分の最小曲げ半径の寸法制約を受けることが無い。従って、偏波面保存光ファイバから成るループ部分の占有空間を皆無とすることができ、偏波面保存ミラー1の小型化が可能となる。
【0049】
更に、偏波面回転ミラー1の光学系を、レンズが1つで成立するように構成している(従来の偏波面回転ミラーは3つのレンズが必要であったのに対し、偏波面回転ミラー1ではレンズは1つのみである)。従って、従来の偏波面回転ミラーと比べてレンズの個数が減少できるので、偏波面回転ミラー1の構成部品同士の調芯作業が簡略化される。又、レンズ個数の削減に伴い、偏波面回転ミラー1の低コスト化も実現可能となる。
【0050】
更に、偏波面回転ミラー1の光学系を、ファラデー回転子を使用することなく構成しているので、温度依存性が零で、波長依存性を小さく保つ事が出来る。
【0051】
<第2の実施の形態>
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態に係る偏波面回転ミラーを図7〜図10及び図3、図6に基づいて詳細に説明する。各図のx軸、y軸、z軸はそれぞれ一対一に対応している。なお、第一の実施形態と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略もしくは簡略化して記述する。
【0053】
図7において、本発明の第2の実施形態に係る偏波面回転ミラー8が前記偏波面回転ミラーと異なる点は、複屈折結晶3とλ/4波長板4の光路の間に、第2の複屈折結晶9が備えられる点である。第2の複屈折結晶9も互いに平行な2つの面9a及び9bを有する。
以下、説明の便宜上、複屈折結晶3を第1の複屈折結晶3と記載する。
【0054】
第2の複屈折結晶9も第1の複屈折結晶3と同様に、一軸性複屈折結晶体であり、結晶軸X91がz軸方向に対して角度αで傾斜するように調整されると共に、光学面(面9a)での結晶軸X92がx軸と平行に配置される。従って、光ファイバ2から見たときの第2の複屈折結晶9の結晶軸X92方向は、第1の複屈折結晶3の結晶軸X32方向に対して90度異なるように設定される。第2の複屈折結晶9を第1の複屈折結晶3に対して配置する際は、第1の複屈折結晶3の他方の面3bと、第2の複屈折結晶の一方の面9aとを面対向させる。
【0055】
第2の複屈折結晶9にも、ルチル(TiO2)、方解石(CaCO3)、YVO4、BBO等を用いることができる。上記の結晶の中でも、特に硬くて傷が付きにくく、また潮解性のないルチルを用いることが好ましい。第2の複屈折結晶9にルチルを使用する場合、面法線と結晶軸との角度α(図8の結晶軸X91方向に該当)は47.8度に設定する。又、複屈折後の常光線及び異常光線を平行に出射するために、2つの面9a及び9bは平行に設定する。なお、第2の複屈折結晶9の表面にも、各種のコーティング、例えば耐空気ARコートを施して良い。
【0056】
λ/4波長板4のλは、偏波面回転ミラー8に入射される光信号の波長を表す。図8に示すように、λ/4波長板4の結晶軸X4方向は、第1の複屈折結晶3の光学面での結晶軸X32に対してθ1=45度の角度をなして傾くように設定する。前記のように、第2の複屈折結晶9の光学面での結晶軸X92方向は、前記結晶軸X32方向に対して90度異なるように設定されている。従って、前記結晶軸X4方向は、前記結晶軸X92に対しても45度の角度をなして傾くように設定される事になる。λ/4波長板4を配置する際は、第2の複屈折結晶9の他方の面9bと、λ/4波長板4の一方の面4aとを面対向させる。
【0057】
次に、偏波面回転ミラー8の動作について図9、図10、及び図3、図6を参照して説明を行う。まず光ファイバ2の光入出射端面2aから、光信号が一定の広がり角で出射されて、第1の複屈折結晶3に入射される。光ファイバ2から入射された直後の光信号の偏波状態は、図3に示すように、電気ベクトルの先端の回転方向が反時計回りの楕円偏波と仮定する。
【0058】
第1の複屈折結晶3に入射した光信号は、y軸方向に沿って配置されている結晶軸X32方向に沿って分波され、図9(A)に示すように、互いに偏波方向が直交する直線偏波の常光線と異常光線の2つの光信号に分離される。
【0059】
分波された常光線と異常光線は、第1の複屈折結晶3の他方の面3bから出射され、その後、第2の複屈折結晶9に入射される。前述の通り結晶軸X92方向は、結晶軸X32方向に対して90度異なるように設定されている。従って、第1の複屈折結晶3で常光線だった光信号の偏波面は、結晶軸X32方向と平行になる。よって、第1の複屈折結晶3を常光線で透過した光信号が、第2の複屈折結晶9では異常光線となるので、その光信号は図9(B)に示すように水平方向にシフトされて透過される。一方、第1の複屈折結晶3を異常光線で透過した光信号の偏波面は、結晶軸X92に対し垂直となるのでシフトされず、第2の複屈折結晶9を常光線として、直進して透過する。
【0060】
以上のように、分離される2つの光信号が、第1の複屈折結晶3と第2の複屈折結晶9とを透過するときに、必ず常光線と異常光線の両方の偏波状態をとるように、結晶軸X32方向と結晶軸X92方向、及び第1の複屈折結晶3の厚みDと、第2の複屈折結晶9の厚みDとを設定する。
【0061】
ここで、常光線の伝搬方向における第2の複屈折結晶9の厚み(結晶長)Dは、第1の複屈折結晶の厚みDと同様に、
【0062】
【数2】

【0063】
に設定される。第1の複屈折結晶3を透過する時の異常光線と、第2の複屈折結晶9を
透過する時の異常光線の、それぞれのシフト量が同一となるように、偏波面回転ミラー8
の光学系を組む。従って、前記のように2つの複屈折結晶3、9の厚みを同一値:Dに設
定すると共に、2つの複屈折結晶3、9を同一の材料で構成することが望ましい。
【0064】
次に、2つの光信号はλ/4波長板4に入射して透過される。前記の通り、λ/4波長板4の結晶軸X4は、第2の複屈折結晶9の結晶軸X92に対して45度傾くように設定されている。従って、第2の複屈折結晶9を常光線として透過した光信号の電気ベクトルの振動方向に対して、結晶軸X4方向は、z軸方向に見て反時計回りに45度傾く。よって、λ/4波長板4を通過した前記常光線は、図9(C)の引き出し番号10bで示すような、反時計回りの円偏波となる。一方、第2の複屈折結晶9を異常光線として透過した光信号の電気ベクトルの振動方向に対して、結晶軸X4方向は、z軸方向に見て時計回りに45度傾く。よって、λ/4波長板4を通過した前記異常光線は、図9(C)の引き出し番号10aで示すような時計回りの円偏波となる。即ち、λ/4波長板4を通過した前記常光線と異常光線は、図9(C)に示すような電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる、2つの円偏波10a、10bに変換される。
【0065】
λ/4波長板4から出射した2つの円偏波10a、10bは、レンズ5で所定角度屈折して集光されるが、偏波状態は変化しない。このときの屈折角は、レンズ5の光軸X5から光信号の中心位置と、レンズ5の焦点距離により決まる。レンズ5の位置決めは、2つの円偏波10a、10bの各中心位置C10a, C10bを、レンズ5の光軸X5から等距離(中心C10aと光軸X5間の距離と、中心C10bと光軸X5間の距離とが等しい状態)となるように行う。
【0066】
レンズ5で集光された2つの円偏波10a、10bは、入射角と反対側に、ミラー6の表面上の一点Rで、ミラー6によって点対称に反射され、図10(C)に示すように円偏波10a、10bの光路が入れ替わる。
【0067】
前記のように、中心C10aと光軸X5間の距離と、中心C10bと光軸X5間の距離とは等距離に設定されているので、レンズ5から出射した円偏波10aと一点Rとの光路長と、同じく、レンズ5から出射した円偏波10bと一点Rとの光路長は等しくなる。又、レンズ5に入射する前に、2つの円偏波10a、10bは2つの複屈折結晶3、9によって同一距離だけシフトされている。従って、第1の複屈折結晶3の分離の際に発生する2つの光信号の光路長差が、2つの円偏波10a、10bがミラー6で反射する前に解消される。
【0068】
反射された光信号は、再度レンズ5を透過して、レンズ5の光軸X5に関して対称の位置に出射される。従って、反射後、レンズ5に入射した円偏波10aと一点Rとの光路長と、同じくレンズ5に入射した円偏波10bと一点Rとの光路長は等しくなる。又、レンズ5の前後で円偏波10a、10bの偏波状態は変化しない。
【0069】
レンズ5から出射された2つの円偏波10a、10bは、再度、λ/4波長板4を通過することにより、図10(B)に示すように、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換される。円偏波10aが変換されると、偏波方向が結晶軸X92方向に対して直交する直線偏波となり、一方の円偏波10bが変換されると、偏波方向が結晶軸X92方向に対して平行な直線偏波となる。従って、円偏波10bから変換された直線偏波が、第2の複屈折結晶9内部では異常光線となり、円偏波10aから変換された直線偏波が、第2の複屈折結晶9内部では常光線となる。
【0070】
λ/4波長板4から出射された2つの直線偏波は、一定の広がり角で広がりながら伝搬し、面9bから第2の複屈折結晶9に入射する。第2の複屈折結晶9内部では、円偏波10bから変換された直線偏波が異常光線となり、図10(A)、(B)に示すように水平方向にシフトされる。一方、円偏波10aから変換された直線偏波はシフトされず、常光線として直進する。
【0071】
次に2つの直線偏波は、再度、面3bから第1の複屈折結晶3に入射される。第2の複屈折結晶9で常光線だった光信号の偏波面は、結晶軸X32方向と平行になる。よって、第2の複屈折結晶9を常光線で透過した光信号が、第1の複屈折結晶3では異常光線となるので、その光信号はy軸方向にシフトされる。一方、第2の複屈折結晶9を異常光線で透過した光信号の偏波面は、結晶軸X92に対し垂直となるのでシフトされず、第1の複屈折結晶3を常光線として直進して透過する。このようにして、2つの直線偏波は、1つの光信号に再合成される。再合成により形成された無偏波の光信号は、第1の複屈折結晶3の一方の面3aから出射され、光ファイバ2のコア2bに入射される。
【0072】
光ファイバ2に入射される直前の光信号は、図6に示すように、電気ベクトルの先端の回転方向が、図3の光信号とは逆方向に変換された楕円偏波の光信号となる。コア2bに入射された光信号は、コア2b内部では光ファイバ2の等方的な屈折率分布により、無偏波の状態で伝搬される。
【0073】
図9(C)及び図10(C)に示すように、2つの円偏波10a、10bの偏波方向は、一点Rでの点対称反射によって、ミラー6への反射前及び反射後では、それぞれ逆方向に変換される。従って、その合成光の電気ベクトルの先端の回転方向も、図3と図6を比較すれば分かるように、光ファイバ2からの出射後と、光ファイバ2への入射前で逆方向に変換される。
【0074】
前記のように、偏波面回転ミラー8では、レンズ5に入射した円偏波10aと一点Rとの光路長と、同じくレンズ5に入射した円偏波10bと一点Rとの光路長が等しく設定される。又、ミラー6で反射後、光ファイバ2に入射する前に、2つの光信号は2つの複屈折結晶3、9によって同一距離だけシフトされる。従って、前記再合成された無偏波の光信号が光ファイバ2に入射する前に、ミラー6で反射した2つの光信号の光路長差が解消される。
前記のように、第1の複屈折結晶3の分離の際に発生する2つの光信号の光路長差も、2つの円偏波10a、10bがミラー6で反射する前に解消される。以上により、偏波面回転ミラー8では、第1の複屈折結晶3で分離された2つの光信号の偏波依存損失(PDL:Polarization Dependent Loss)を解消することが可能となる。
【0075】
勿論、偏波面回転ミラー8も、前記偏波面回転ミラー1が有する効果を有する。
【0076】
なお、本発明の偏波面回転ミラー1又は8は、その技術的思想に基づいて種々変更可能であり、例えば、光ファイバ2にTECファイバを使用しても良い。光ファイバ2をTECファイバとした場合、出射光が更に広がるので、光ファイバ2とレンズ5の間の距離を狭めることができ、偏波面回転ミラー1の長さを短小化することが可能となる。
【0077】
又、結晶軸X32及びX92の方向も実施形態に限定されず、任意に設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の偏波面回転ミラーは、量子暗号装置や光スイッチ、光源、アンプ、干渉計、アドドロップに用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る偏波面回転ミラーの構成図。
【図2】図1の偏波面回転ミラーの複屈折結晶とλ/4波長板の配置を示す斜視図。
【図3】本発明の偏波面回転ミラーを構成する光ファイバから出射された直後の光信 号の偏波状態を表す模式図。
【図4】(A) 図1の面(A)で見た、ミラーで反射する前の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (B) 図1の面(B)で見た、ミラーで反射する前の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。
【図5】(A) 図1の面(A)で見た、ミラーで反射した後の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (B) 図1の面(B)で見た、ミラーで反射した後の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。
【図6】本発明の偏波面回転ミラーを構成する光ファイバに入射される直前の光信号 の偏波状態を表す模式図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る偏波面回転ミラーの構成図。
【図8】図7の偏波面回転ミラーの、第1の複屈折結晶と第2の複屈折結晶、及びλ /4波長板の配置を示す斜視図。
【図9】(A) 図7の面(A)で見た、ミラーで反射する前の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (B) 図7の面(B)で見た、ミラーで反射する前の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (C) 図7の面(C)で見た、ミラーで反射する前の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。
【図10】(A) 図7の面(A)で見た、ミラーで反射した後の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (B) 図7の面(B)で見た、ミラーで反射した後の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。 (C) 図7の面(C)で見た、ミラーで反射した後の二つの光信号の偏波状態を表す模式図。
【図11】従来の光ファイバループミラーを用いた位相変調器の構成例を示す模式図。
【図12】図11の詳細な構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0080】
1、8 偏波面回転ミラー
2 光ファイバ
3 複屈折結晶、第1の複屈折結晶
4 λ/4波長板
5 レンズ
6 ミラー
7a,7b, 10a,10b 円偏波
9 第2の複屈折結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波面回転ミラーが、
光ファイバと、複屈折結晶と、λ/4波長板(λ:前記偏波面回転ミラーに入射される光信号の波長)と、レンズと、ミラーを備え、
前記光ファイバはシングルモード型であり、
前記複屈折結晶は互いに平行な2つの面を有し、
前記光ファイバの光入出射端面は、前記複屈折結晶の一方の面に対向して配置され、
前記λ/4波長板の結晶軸と、前記複屈折結晶の光学面での結晶軸とのなす角度が45度に設定されると共に、
前記複屈折結晶の他方の面と前記λ/4波長板の一方の面とが面対向して前記λ/4波長板が配置され、
前記λ/4波長板の他方の面には前記レンズと前記ミラーとが配置されると共に、
前記レンズは、前記λ/4波長板の他方の面と前記ミラーの間に配置され、
更に、
前記光ファイバは無偏波な光信号を出射し、
前記光信号は前記複屈折結晶で、直線偏波の常光線と異常光線に分離され、
前記複屈折結晶から出射された前記常光線と前記異常光線は、前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる円偏波に変換され、
2つの前記円偏波は、前記レンズによって集光されて、前記ミラーの表面上の一点で点対称に反射され、
反射された2つの前記円偏波が、再度、前記λ/4波長板を通過することにより、2つの前記円偏波は、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換され、
2つの前記直線偏波が、再度、前記複屈折結晶に入射されることで1つの光信号に再合成され、
再合成された光信号が前記光ファイバに入射されることを特徴とする偏波面回転ミラー。
【請求項2】
偏波面回転ミラーが、
光ファイバと、第1の複屈折結晶と、第2の複屈折結晶と、λ/4波長板(λ:前記偏波面回転ミラーに入射される光信号の波長)と、レンズと、ミラーを備え、
前記光ファイバはシングルモード型であり、
前記第1の複屈折結晶と前記第2の複屈折結晶は、それぞれ互いに平行な2つの面を有し、
前記光ファイバの光入出射端面は、前記第1の複屈折結晶の一方の面に対向して配置され、
前記第1の複屈折結晶の他方の面と、前記第2の複屈折結晶の一方の面とが面対向して前記第2の複屈折結晶が配置され、
前記第2の複屈折結晶の光学面での結晶軸方向は、前記第1の複屈折結晶の光学面での結晶軸方向に対して、90度異なるように設定されると共に、
前記λ/4波長板の結晶軸と、前記第1の複屈折結晶及び前記第2の複屈折結晶の各々の光学面での結晶軸とのなす角度が45度に設定され、
更に、
前記第2の複屈折結晶の他方の面と前記λ/4波長板の一方の面とが面対向して前記λ/4波長板が配置され、
前記λ/4波長板の他方の面には前記レンズと前記ミラーとが配置されると共に、
前記レンズは、前記λ/4波長板の他方の面と前記ミラーの間に配置され、
更に、
前記光ファイバは無偏波な光信号を出射し、
前記光信号は前記第1の複屈折結晶で、直線偏波の常光線と異常光線の2つの光信号に分離され、
次に、前記第1の複屈折結晶から出射された前記常光線と前記異常光線が、前記第2の複屈折結晶を透過するときに、前記第1の複屈折結晶を常光線で透過した光信号は異常光線で透過されると共に、前記第1の複屈折結晶を異常光線で透過した光信号は常光線で透過され、
前記第1の複屈折結晶を透過時の前記異常光線と、前記第2の複屈折結晶を透過時の前記異常光線の、各シフト量が同一に設定され、
次に、前記2つの光信号が前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの先端の回転方向が互いに異なる円偏波に変換され、
更に、2つの前記円偏波は前記レンズに入射され、前記レンズに入射された、2つの前記円偏波の各中心位置と前記レンズの光軸間の距離が等距離に設定されると共に、2つの前記円偏波が前記レンズによって集光されて、前記ミラーの表面上の一点で点対称に反射され、
反射された2つの前記円偏波が、再度、前記λ/4波長板を通過することにより、電気ベクトルの振動方向が90度異なる2つの直線偏波に変換され、
次に、前記λ/4波長板から出射された2つの前記直線偏波が前記第2の複屈折結晶を透過するときに、一方の前記直線偏波のみがシフトされ、
更に、前記第2の複屈折結晶から出射された2つの前記直線偏波が、前記第1の複屈折結晶を透過するときに、前記第2の複屈折結晶を常光線で透過した光信号は異常光線で透過されると共に、前記第2の複屈折結晶を異常光線で透過した光信号は常光線で透過され、
2つの前記直線偏波が、再度、前記第1の複屈折結晶に入射されることで1つの光信号に再合成され、
再合成された光信号が前記光ファイバに入射されることを特徴とする偏波面回転ミラー。
【請求項3】
前記光ファイバの前記光入出射端面が、斜めに形成されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の偏波面回転ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−65111(P2008−65111A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243794(P2006−243794)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】