説明

側面ポンプモノリシック固体レーザー及びその用途

側面ポンプモノリシック固体レーザー(1)であって、長手軸線(L)を有するレーザー利得媒体(2)を含むレーザー共振器構造体(3)であって、直線状光路の共振キャビティを間に形成する端面(4)を備え、端面(4)の少なくとも一方が、特に端面上に溶着された少なくとも部分反射のレーザーミラー(4a、4b)を備え、レーザー利得媒体(2)が、ポンプ源(5)のポンプ光(5a)を受け取る側面(2a)を備え、ポンプ光(5a)がダイオードレーザー(5)によって発生せしめられる、レーザー共振器構造体(3)と、レーザー利得媒体(2)と接触する接触面(6c)を備える伝導冷却体(6)と、長手軸線(L)に対して側面(2a)の反対側に配置された反射器(7)とを備え、レーザー利得媒体(2)が低利得材料である、側面ポンプモノリシック固体レーザー(1)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の特徴を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーに関する。本発明は、さらに、請求項22に記載の特徴を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーの作動方法に関する。本発明は、さらに請求項32、51及び52に記載の治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオードポンプレーザーは、特に工業、医療及び軍事の用途においてその有用性を増してきた。ダイオードポンプは、パワー効率がよく、全て固体状であり、且つ寿命が長いので、ダイオードポンプレーザーは、特に、有用である。その結果、同様のフラッシュランプポンプ固体レーザーに比べてより軽量で、より効率よく、且つ典型的には水冷却されないレーザーシステムがもたらされる。
【0003】
概して、端面ポンプ又は側面ポンプの固体レーザーの形態はすでに知られている。Qスイッチレーザー又はモノリシックレーザーは、米国特許第5394413号、第5381431号、第5495494号、第561023号及び第6373864号明細書に記載されるような形態である。この種の設計の不利な点は、特に、最大パルスエネルギーに関する限界である。さらに、Qスイッチレーザーは、非常に短い持続時間のパルスしか生成できない。
【0004】
米国特許第6219361号及び第6377593号明細書は、側面ポンプの設計を開示する。この設計では、ビーム経路が内部ジグザグ経路なので、パルス持続時間が長くなり、製造上の困難及びコストが増大する。
【0005】
ダイオード側面ポンプ形状において、利得媒体は、典型的には、ロッドかスラブである。伝導冷却レーザーシステムにおいては、これまで一般にスラブ形状が使用され、スラブの片面がサーマルヒートシンクに取り付けられ、反対の面はポンプ光の導入に使用されてきた。側面ポンプスラブは、米国特許第2007/0060917号明細書、図2bにおいて開示されるようないわゆる「ジグザグ」光路を利用するなど、様々な技法を利用できる。しかし、ジグザグスラブは、光学的許容差が厳しいため製作が難しく、従って、直線状のスラブの実施形態よりも大量に生産するのが困難であり、生産がコスト高になる。
【0006】
国際公開第2004/034523号は、側面ポンプモノリシック受動Qスイッチ固定レーザーであって、水冷却されない固体レーザーを開示し、このレーザーは、レーザー共振器構造体と、受動Qスイッチに接着された出力面を有するレーザー利得媒体とを含む。利得媒体は、ポンプ光を受け取る側面を有する。ポンプ光は、ダイオードレーザーアレイによって発せられる。この固体レーザーの不利な点の1つは、平均パワーが制限されることである。この固体レーザーの別の不利な点は、作動時に熱的効果が生じることである。さらに、Qスイッチレーザーは、非常に短い持続時間のパルスしか生成できない。
【0007】
米国特許出願公開第2007/0060917号明細書は、図1b及び2aにおいて、MIR(中赤外)ダイオード側面ポンプ固体レーザーを開示し、このレーザーは利得スイッチパルスを放射できるレーザー共振器構造体(図5c)を含む。この固体レーザーの不利点の1つは、発生したレーザー光のパワーが制限されて低いことである。
【0008】
米国特許第6366596号明細書は、ダイオード側面ポンプOPOレーザーを開示し、このレーザーは、特に、MIR(中赤外)放射を発生させる。波長がMIR波長領域において広範囲に調整されうるが、この種のレーザーの不利点は、高パワー密度(強度)を有する1桁及び2桁のナノ秒領域の短いパルス持続時間であり、又は、レーザーパルス長がマイクロ秒領域の場合、レーザーパルス強度が非常に低いことである。さらに、この種のレーザーは複雑であり、様々な光学コーティングを備えた光学素子を必要とするので、非常に高価である。この種のレーザーの別の不利な点は、衝撃及び振動に対して強くないことと、重要な素子が多数あるので、装置の故障の可能性が増すこととである。
【0009】
米国特許第5642370号、第5643252号、第5868731号、第5908416号、第5947957号、第6251102号及び6395000号明細書は、中赤外波長領域において作用する側面ポンプ固体レーザーを開示する。概して、この種の固体レーザーは生物組織の切除に使用される。上記のレーザーのいくつかは電池式いわゆる自給式であり、単一のレーザーパルスの供給後に高電圧電源におけるコンデンサの充電時間が数秒間続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、高パワーレーザー光パルスを発生させる側面ポンプ固体レーザー装置を提供することである。安価で、丈夫で信頼できるレーザー装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。高性能で作動するレーザー装置を提供すること、特に、高パルスエネルギー及び/又は高パワーを有し、特に広い使用範囲において高いパルス繰返し率を可能にするレーザー光を提供することが、本発明のさらなる目的である。医療の分野で使用するのに適する、特に1700nm〜3200nmの中赤外(MIR)領域の波長を持つレーザー装置、及び/又は特に生物組織の治療、切断若しくは切除に適するレーザー装置を提供することが本発明のさらなる目的である。使用者が高パワーレーザーパルス治療を実施できるようにする治療装置を提供することが、本発明のさらなる目的であり、治療装置は取り扱いが容易で、特に保守が簡単な実施形態が実現されるべきである。さらに、専門的な治療施設から離れて高パワーレーザーパルス治療を行えるようにする治療装置を手に入れることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題は、請求項1の特徴を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーによって解決される。従属請求項2〜27は任意の特徴を開示する。問題は、さらに、請求項28の特徴を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーを作動する方法によって解決され、従属請求項29〜31は任意の特徴を開示する。
【0012】
問題は、特に、長手軸線Lを有するレーザー利得媒体を含むレーザー共振器構造体を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーによって解決される。このレーザーにおいて、レーザー共振器構造体は、直線状光路の共振キャビティを間に形成する端面を備え、端面の少なくとも一方は、その面に溶着された少なくとも部分反射のコーティングを備え、レーザー利得媒体は、ポンプ源のポンプ光を受け取る側面を備える。ポンプ光はダイオードレーザーによって発生せしめられる。また、固体レーザーは、レーザー利得媒体と接触する接触面を備える伝導冷却体を備える。固体レーザーは、長手軸線Lに対して側面の反対側に配置された反射器を備える。
【0013】
問題は、特に、長手軸線Lを有するレーザー利得媒体を含むレーザー共振器構造体を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーによってさらに解決される。このレーザーにおいて、レーザー共振器構造体は、直線状光路の共振キャビティを間に形成する端面を備え、端面の少なくとも一方は、特にその面に溶着された少なくとも部分反射のレーザーミラーを備え、レーザー利得媒体は、ポンプ源のポンプ光を受け取る側面を備える。ポンプ光はダイオードレーザーによって発生せしめられる。また、固体レーザーは、レーザー利得媒体と接触する接触面を備える伝導冷却体を備える。固体レーザーは、長手軸線Lに対して側面の反対側に配置された反射器を備える。レーザー利得媒体は特に低利得材料である。
【0014】
問題は、特に、長手軸線Lを有するレーザー利得媒体を含むレーザー共振器構造体を備える側面ポンプモノリシック固体レーザーを作動する方法によって、さらに解決される。この方法において、ポンプ光は側面を通過してレーザー利得媒体内へ供給され、ポンプ光の一部は出射ポンプ光として反対側の側面においてレーザー利得媒体から出射し、出射ポンプ光は反射し、反射したポンプ光は、前記の反対側の側面においてレーザー利得媒体へ再び入射する。
【0015】
米国特許第2007/0060917号明細書において開示されたダイオード側面ポンプ固体レーザーは、低強度あるいは低品質のレーザー光を発生させる。一方、非常に効率的に生物組織を切除するにはレーザー光はある程度のレベルの強度を必要とすることが判明している。さらに、ダイオード側面ポンプ固体レーザーは、フラッシュランプポンプ固体レーザーよりも小さいパルスエネルギーを放射することが、知られている。本発明に係る側面ポンプモノリシック固体レーザーは、レーザー光の強度・ビームの質をそれぞれ改良するいくつかの技術的特徴を使用する。まず、7.5mm2未満の断面積を有するレーザー利得媒体が使用される。断面積は、レーザー伝達方向に対して直角の、また平面レーザーミラーに関してはこれに平行のレーザー利得媒体内部の表面積である。レーザー利得媒体が、円形又は楕円形の断面を持つロッドの形状を持つ場合、ロッドが、3mm以下、好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下の直径を持つことを意味する。このように小さい直径又は小さい断面積を有するロッドの利点は、レーザー発振を開始するために必要とされる一定のパワー密度をレーザー利得媒体内で得るために必要なポンプパワーが小さいことである。さらに、このように小さい断面積を持つレーザーロッドは、レーザーキャビティ内部の開口のように作用して、より高い横断レーザーモードの損失を誘発し、あるいはレーザー光の質を改良する。小さい断面積のロッドを使用するだけで、レーザー利得媒体内部で充分なパワー密度を生成でき、それによってポンプ光が半導体レーザーによって発生せしめられる。レーザーロッドの直径が4mmであると仮定すると、断面積は約12.5mm2に増大し、3mmロッドの断面積の約2倍となる。4mmロッドは、同じパワー密度を得るためには3mmロッドの約2倍のポンプパワーが必要である。従って、レーザー利得媒体の断面積を7.5mm2に制限することは非常に重要な利点である。好ましい実施形態において、レーザー利得媒体内でのダイオードレーザーのポンプパワーは、20から500W/mm3の間である。好ましい実施形態において、キャビティ内(レーザー活性媒体内)のレーザー強度は、5kW/cm2から10MW/cm2の間であり、より好ましくは10から100kW/cm2の間である。
【0016】
レーザーの効率を向上させるさらに有利な措置は、レーザーの外部結合のパーセンテージを最適化することである。レーザー利得媒体の誘導放出断面積あるいは利得が小さければそれだけ、レーザーを効果的に作動させるためにはレーザーの外部結合のパーセンテージを小さくなければならない。これは、レーザーキャビティ内部に高い強度を持つことと同じであり、レーザー発振を開始するのに有利である。従って、レーザーキャビティ内部で高い強度を持つ低誘導放出断面のレーザー利得媒体を持つレーザーを作動することが有利である。
【0017】
レーザー利得媒体内の強度を増大するさらに有利な措置は、反射率が92.5%から99%の範囲の出力カプラを使用することである。レーザー利得媒体内の強度を増大するさらに有利な措置は、キャビティ損失を減少させることである。離散的レーザーキャビティを使用する米国特許第2007/0060917号明細書に開示されるような固体レーザーの不利点は、反射によるレーザー利得媒体から空気へ及び空気からレーザーミラーへの媒体遷移及びこの遷移におけるレーザー光の吸収損失のために光学的損失が生じることである。使用されるレーザー媒体は低利得レーザー材料なので、このような付加的損失は、既知のレーザーシステムの効率のよい作動を妨げる。特に1700nmから3200nmの中赤外(MIR)波長領域において作動するレーザーキャビティの別の不利点は、レーザー利得媒体とレーザーミラーとの間のダスト又は湿った空気が、レーザーシステムの効率を著しく低下させ、又は放射されたレーザー光の強力な水吸収によってレーザーキャビティのレーザー光の放射をほとんど停止することである。これにより、さらに損失が生じて、レーザー利得媒体内の強度がさらに減少する。
【0018】
レーザー性能を改良するさらに有利な措置は、レーザー利得媒体の温度を制御することである。小さい直径のレーザーロッドは、より良い表面積対体積比を示すので、より効率よく冷却又は加熱でき、それによって、レーザービームの質の熱誘起歪みを減少する。熱性能が改良されることによるさらなる利点は、出力パワーの増大及び光−光効率(optical to optical efficiency)の向上である。
【0019】
レーザー出力ビームの質を最適化するさらに有利な措置は、レーザー活性利得媒体を対称に冷却することである。国際公開第2004/034523号のレーザー利得媒体は対称に冷却されないため、ビームプロファイルが均質ではなく、そのため、ビームパラメータの積M2が不適当であり、集束の能力が低くなる。従って、本発明に係るレーザー活性利得媒体の対称冷却は、ビームプロファイルを均質にし、熱レンズを活性媒体の長手軸線に対して対称に且つ同一線上にする。これによって、レーザーは常にこの軸線に沿って振動する。これは、ポンプパワー、繰返し率及びデューティサイクルなどの幅広い範囲のパラメータについて安定した作動を保証するために必要な特徴である。
【0020】
本発明に係る固体レーザーのさらなる利点は製造コストが低く且つほとんど保守が必要ないことである。このことは、市場での受入れを強力に改善する。この利点は、必要な光学素子の数及び/又は調整可能な光学素子又はレーザーキャビティの数を減らすことによって得られる。特に、手持ち又は可動式のレーザー式医療装置及び非医療装置において、調整可能な光学素子又はレーザーキャビティは市場の失敗及び経費の掛かる製品回収又は少なくとも高い保守コストの原因になってきた。本発明に係る固体レーザーは、衝撃及び振動に非常に強く、且つ、温度、湿度など環境条件の急激な変化の後でも安定しており、レーザー式医療装置に関して法律及び規則が求める非常に安定し一貫したレーザー出力パワーを保証する。従来の方法によって生産されたレーザーの設計は、荒い扱いに損傷しやすく、通常、自動的に調整から外れる。さらに、温度、機械的応力(衝撃、振動)、レンズ上のダストなどによりレーザー出力パワーの低下が生じる可能性がある。この種の装置は、定期的に修理し、レンズを磨き、レーザーキャビティを整列し直さなければならず、高い保守コストを生じる。
【0021】
本発明に係る固体レーザーのさらなる利点は、非常に効率がよく且つ短いレーザーキャビティのおかげで、設計を非常に小型化できることである。これによって、過去には高パワーの固体レーザーを組み込めなかった装置部品に固体レーザーを実装できる。1つの例は、米国特許第7118563号明細書において開示されるようないわゆる自給式又は手持ち無線装置における例えば最高5Wの中赤外固体レーザーの実装である。今日、この種の装置には、近赤外(780〜1400nm)のダイオードレーザーしか使用できない。本発明の1つの利点は、電池式の自給式装置が中赤外固体レーザーを備えることができることである。さらに、この種の装置は、例えば1kg未満などに軽量化されうる。より小さく且つ電力消費がより少ないレーザーを備える別の新しい装置を組み立てることができる。(1)電源、冷却ユニット及び最終的には制御ユニットを収容する卓上部分と、(2)固体レーザー、ビーム成形光学素子、ビーム偏向手段及び(おそらく)制御ユニットを収容する手持ちユニットとから成る装置を想定することさえできる。手持ちユニットは、保守のために取外し可能にされ、小さな軽量パッケージにして装置のメーカーへ送ることができる。メーカーへ装置を送る前に、装置の所有者はメーカーに連絡して、整備のために通常郵便で自身の手持ちユニットを送り返す前に仮の手持ちユニットの提供を受けることができる。正確な手順は、以下の通りとなる。a)整備のために、ベースステーションは、整備時期が近いこと、及び手持ちユニット又はハンドピースを一時的に交換するには使用者が装置のメーカーに連絡する必要があることを使用者に通知できる。b)装置の所有者又は使用者は、装置の販売店又はメーカーに口頭又は文書でメッセージを送る。c)装置の販売店又はメーカーは一時的な交換用の手持ちユニット又はハンドピースを小包で送る。d)装置の所有者又は使用者は、簡易なプラグコネクタなので非常に短時間で手持ちユニットを交換するだけであり、装置の停止時間はない。e)小包配送業者は、手持ちユニット又はハンドピースを整備のために整備センター又は装置のメーカーへ持って行き、ここで、装置は修理されて整備される。f)整備手順が完了した後、手持ちユニット又はハンドピースは装置の所有者又は使用者へ送り返される。g)装置の所有者又は使用者は再び手持ちユニット又はハンドピースを交換して、仮の手持ちユニット又はハンドピースを送り返す。これ以上費用の掛かる整備員の出張の必要はなく、また、壊れやすいレンズを含む重い装置のこれ以上費用の掛かる発送の必要はない。経費がかさむ地方の整備センターはもはや必要ない。使用者は、整備員のための部屋を確保したり、装置が修理されるまで待ったりする必要はない。これに加えて、他の機能(パルスエネルギー、波長、付加的測定)を持つ手持ち装置又は治療最適化手持ち装置をベースステーションに取り付けることができる。これら全ての利点によって、製品は、非常に経済的になり、顧客を満足させる。また、上記の全ての利点は自給式装置にとっても有効であり、卓上ユニット/ベースステーションが必要とされない。
【0022】
別の有利な実施形態において、ポンプ光は、レーザー利得媒体2においてポンプ光がほぼ均質に分布するように案内される。最も有利なのは、これがレーザー利得媒体の長手軸線に対して側面の反対側に配置されたポンプ光反射器によって得られることである。この配列は、側面からレーザー利得媒体へ入射するポンプ光が、レーザー利得媒体を横切り、レーザー利得媒体から出射し、ポンプ光反射器によって反射し、反射した光が再びレーザー利得媒体に入射できるようにする。この実施形態は、レーザー利得媒体内において均質な配光を生成する。このような均質な配光の利点は、その結果、従来のシステムに比べてずっと優れたレーザーモードが得られることである。このレーザーモードは、非常に集束性の高いレーザービームの鍵となる1から25の範囲のビームパラメータの積M2を持つことができる。
【0023】
小さい断面積のレーザー利得媒体の別の利点は、レーザービームを小さい直径に集束できることである。レーザー利得媒体の断面積がもっと大きい既知のフラッシュランプポンプレーザー又はダイオードポンプレーザーはレーザービームを300〜500μmに集束できる。本発明に係る固体レーザーに使用されるレーザー利得媒体は、レーザービームを約100〜250μmに集束できる。これによって、焦点におけるレーザービームの強度を増大できる。
【0024】
本発明に係る固体レーザーのさらなる利点は、このように小さい断面積のレーザービームが、薄い従って安価な光ファイバーを通して非常に効率よく伝送されうることである。本発明のさらなる利点は、レーザービームの質が良ければそれだけ効率よくファイバー内へ内部結合して、損失が小さくなるので、ファイバーへのレーザービームの伝送の効率がより良いことである。
【0025】
本発明に係る固体レーザーのさらなる利点は、例えばレーザーミラー又はフラッシュランプなど調整可能な光学素子を含まないことである。従って、本発明に係る固体レーザーは、衝撃によって生じる調整外れ、振動又は熱効果によって時間の経過に伴って生じる調整外れに対して強い。さらなる利点は、固体レーザーが、フラッシュランプについて典型的な時間の経過に伴うパワー損失を克服することである。
【0026】
本発明に係る固体レーザーのさらなる利点は、保守費用が低いことである。レーザー式医療装置に関する法律及び規則があるので、光出力パワーの変化は小さい範囲でしか許容されない。従って、既知の固体レーザーは、前記の法律及び規則を遵守するために、定期的に費用の掛かる保守を必要とするかまた複雑な制御機構を必要とする。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明は、医療分野において使用されるレーザー光を発生させるのに適する、特に硬組織を含む生物組織を治療、切断又は切除するのに適するレーザー装置を提供する。レーザー装置及び生物組織の治療又は切除に関する背景情報は、国際公開第2006/111526号、第2006/111200号、第2006/111199号、第2006/111429号及び第2008/049903号において開示され、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態において、本発明に係るレーザー装置は、硬組織を含む生物組織の治療、切断又は切除に使用される。最も有利な生物組織の切除は、1μsから15μsの間のパルス長及び103W/mm2から108W/mm2の間の強度を有するレーザーパルスを使って得られることが判明している。このようなレーザーパルスは、非常に効率の良い生物組織の切除を可能にし、例えば隣接する生物組織の変性、凝固、炭化などの熱損傷を減少させるなど、破壊を減少させる。効率よく生物組織を切除するにはある程度のレベルの強度が必要であることと、ある程度のレベルの強度は高いパルスエネルギー以上に重要であることとが判明している。また、長い持続時間のパルスによって得られる高いパルスエネルギーのパルスは、たとえば軟組織の場合で103〜106W/mm2、硬組織の場合で105〜108W/mm2の特定の強度を有するパルスよりもずっと効率が低いことが判明している。従って、103から108W/mm2の間の強度を有するレーザー光を発生させることが、生物組織の切除又は切断にとって最も好ましく、レーザー光のパルス長は1μsから15μsの間が最も好ましく、15μsから200μsの範囲はこれよりも好ましくない。1μsよりも短いパルス、例えばQスイッチレーザー又はOPOレーザーによって生成されるパルスは、衝撃波によって機械的に組織を破壊して、細胞をその自然の結合から引き裂く。生物組織など標的上で103から108W/mm2の間の強度のレーザー光を得るために、標的に衝突するレーザー光のサイズを、ビームシェイピングを用いて特にレンズを用いることによって成形できる。
【0028】
本発明の1つの態様によれば、生物組織を切断又は切除するのに適する固体レーザーと、固体レーザーを備える器具とが開示される。固体レーザーは、光学キャビティと、光学キャビティ内に配置される利得媒体と、利得媒体を光ポンプしてレーザー光を発生させるように光学的に整列された半導体レーザーとを備え、発生したレーザー光は、生物組織を切断して切除するのに適する波長及び強度を有する。
【0029】
本発明の1つの態様によれば、利得媒体、半導体レーザー及び光学キャビティを用意するステップと、半導体レーザーを光学的に整列させて利得媒体をポンプするように利得媒体及び半導体レーザーを光学キャビティ内に配置するステップと、半導体レーザーを作動させて、光学的に利得媒体をポンプしてレーザー光を発生させるステップと、レーザー光を軟組織、中硬組織又は硬組織などの生物組織へ向けて、生物組織を切断又は切除するステップとを含む、硬組織を含む生物組織を切断又は切除する方法が開示される。
【0030】
1つの実施形態において、レーザービームのパルス幅、パルス波形、繰返し率、パルス強度及びパルスエネルギーのうちの少なくとも1つを調整でき、それによって、生物組織に作られる個々の切断又は孔の特徴及びパルス当たりの生物組織の切除深さを調整できるようにする。
【0031】
生物組織を治療又は切除するレーザーは1700nmから3200nmの間の波長を有する。最も好ましくは、約2950nmの波長が使用される。なぜならば、この波長がMIR(中赤外)領域の水吸収スペクトルにおいて主要な極大だからである。
【0032】
本発明に係る固体レーザーは、好ましくは0.5mmから2.5mmの間の直径、より好ましくは0.5mmから1mmの間の直径を有するレーザービームを発生させる。
【0033】
このような固体レーザーは、1μsから500μsの間、特に1μsから200μsの間、最も好ましくは1μsから15μsの間のパルス時間幅を有することが好ましい。
【0034】
このような固体レーザーは、0.1mJから100Jの間、特に1mJから5Jの間のレーザーパルスエネルギーを有する。
【0035】
このような固体レーザーは、スポットに焦点を合わせることができ、1W/mm2から108W/mm2の間、特に103W/mm2から107W/mm2の間のレーザー放射強度を有する。
【0036】
結晶の重要な設計パラメータは、ポンプパワー及び結晶直径であり、重要なレーザー材料パラメータは、誘導放出断面積、寿命及び光子エネルギーである。
【0037】
レーザー作用にとって、レーザー活性材料にどのようにエネルギーが供給されるかは重要ではない。すなわち、ポンプ光が側面から入るのか、同一直線上にあるのか、又はポンプがレーザーダイオードかフラッシュランプかなどは重要ではない。本発明の出発点は、レーザー活性材料がエネルギーで満たされ、より明確に言うとすでにレーザーダイオードによってポンプされているということである。Er:YAGの場合、このことは、約980nmのポンプ光がすでに結晶に入射しており、合計供給エネルギーがE_ポンプであることを意味し、これがレーザー活性イオンへ伝達される。このプロセスにおいて、エネルギーは失われ、レーザー作用のために下記の量だけが利用できる。E_蓄積=E_ポンプ×(波長_ポンプ/波長_レーザー)=(例えばEr:YAGの場合)E_ポンプ×980/2940=0.33×E_ポンプ。
【0038】
レーザーの重要な断面Aは、レーザー軸線に対して直角であり(この場合にはレーザー結晶端面)、直径dに正比例する。
【0039】
材料の観点から言うと、誘導放出断面積、光子エネルギー及びレーザー遷移の寿命が重要である。寿命は、結晶のポンピングにとって重要である。なぜならば、レーザー閾値に達するために結晶内へエネルギーを取り込まなければならないからである。レーザー作用が開始されるとき、レーザー活性イオンの寿命は、外部結合及びその他のキャビティパラメータによって決まり、もはや上位レーザーレベルの寿命だけで決まらない。焦点が状況に置かれるので、エネルギーがすでに結晶内部にある場合、寿命を無視できる。この状況は、レーザー結晶がポンプされた後に増幅パルスが送られるレーザー増幅器と非常に似ている。
【0040】
従って、レーザー遷移の光子エネルギー及び誘導放出断面積のみが材料パラメータとして残る。光子エネルギーは、上位レーザーレベルと下位レーザーレベルとの間の差であり、誘導放出断面積は、1つの光子が別のレーザー光子の放射を誘導するために通過しなければならない1つのレーザー活性イオンの周りの面積である。
【0041】
レーザー増幅器において、飽和フルエンスが主要な設計パラメータである。このパラメータは、レーザー光子を供給する準備ができた活性レーザーイオンを結晶面積A全体に充満させるために結晶内へポンピングされるべきエネルギーを定義する。言い換えると、結晶内へ入る各光子は、別の光子の放射を誘導する可能性が高い。
【0042】
【数1】

この方程式は、材料パラメータである光子エネルギー及び誘導放出断面積をポンプエネルギー及び結晶直径に結び付ける(比例係数x−小さい方がより好ましい)。より良く理解するために、x=1とすると、
【数2】

【0043】
光子エネルギーはレーザー波長によって決定され、誘導放出断面積が小さければ、それだけ式全体は大きくなる。右側を最大にするには、より大きいエネルギーを結晶内へポンピングする必要があるか、若しくは結晶の直径dを小さくすることによって面積Aを小さくするか又は同時に両方を行う必要がある。
【0044】
全体的に、低放出断面を持つレーザー材料は、小さい直径のレーザー結晶を非常に強くポンプすることによってしか作動されない。
【0045】
側面を通過してレーザー利得媒体にポンプ光が供給され、ポンプ光の30〜70%好ましくは30%〜50%が出射レーザー光として反対側の側面においてレーザー利得媒体から出射し、出射ポンプ光が反射器によって反射されて、反射ポンプ光が前記の反対側側面においてレーザー利得媒体へ再び入射するという実施形態は有利である。利得材料の吸収ピークの波長とは異なる特定の波長を用いると、入射ポンプ光がレーザー利得媒体によって部分的にしか吸収されず、従って、入射ポンプ光の30%〜70%好ましくは30%〜50%の量がレーザー利得媒体から出射し、反射してレーザー利得媒体に戻され、レーザー利得媒体において、さらに合計で50〜91%好ましくは75%〜91%吸収されるという利点を有する。従って、レーザー利得媒体内で均等の配光が得られ、その結果、放射されたレーザービーム内に均等なガウス分布状のエネルギー分布が得られる。反射器は、ほとんど入射光全部を反射する高反射係数を持つものとして実現されうる。さらに、部分的に反射させ又は散乱させて、レーザー利得材料の均等な照度を強化できる。
【0046】
吸収極大に対するポンプ源の波長/波長領域シフトは、結晶材料の結晶直径及びドーパント濃度によって決まり、結晶直径が吸収長に等しくなるような態様において選択される。吸収長は、レーザー材料に入射するポンプ放射の63.2%が吸収された後のレーザー材料の長さとして定義される。この尺度から、最適化されたポンプ光分布/結晶内における最適化されたより均質の照度が得られる。ポンプ光波長/波長領域が吸収極大において選択されると、ポンプ光は、例えば2mmを有する結晶において、例えば1mm吸収され、残りの結晶は照射されず、レーザービームの質を著しく低下させる。単純化された式は下記の通りである。
【0047】
結晶の直径:X
吸収係数:α
条件:X×α=1
【0048】
吸収の法則
結晶内における吸収=exp(−X×α)=exp(−1)=0.632。各レーザー材料は固有の吸収係数αを有し、αは波長によって決まるので、この式はこのポンプ形状の全てのレーザー材料に有効である。
【0049】
長手軸線に平行に配置されたレーザーダイオードアレイとして実現されるポンプ源は、レーザー利得媒体にその長さに沿って分布するポンプ光を提供できるという利点を有する。ポンプ源の長さは、レーザー利得媒体の長さの少なくとも30%であることが好ましい。この実施形態は、レーザー利得材料の均等な照度を与え、充分なポンプ光エネルギーを与えて、低利得材料のレーザー作用を開始することを目的とする。
【0050】
低利得材料は、Er:YAGの誘導放出断面積すなわち3.0×10-20cm2以下の誘導放出断面積を持つレーザー利得媒体であることを特徴とする。このレーザー利得媒体は、高い光学的効率及び電気的効率を得るために誘導放出断面積28×10-20cm2のNd:YAGなどの高利得レーザー材料が使用される高能率のレーザーシステムから本発明に係る固体レーザーを区別する。高利得材料の場合、組織治療のためにかなり多量の光が光共振器から外部結合する可能性がある。
【0051】
固体レーザーの丈夫な実施形態のおかげで、特に伝導冷却体によってレーザー利得媒体が取り囲まれて保持される配列のおかげで、レーザーは、少なくとも100Gという大きな力に耐えることができる。これによって、レーザーは、特別な発送手順を必要とすることなく発送できる。特に、レーザーを保守センターへ発送できるので、現場で保守作用を行う必要がない。
【0052】
レーザービームの質が非常に優れているので、直列に(直線状に交互に且つレーザービーム伝播軸線と同一線上に)、又はミラー、ステアミラー、レンズ及び技術上既知のその他の結合ユニットを介して複数のレーザーユニットを接続することも容易である。複数のレーザーの接続によって、最大出力パワー及び/又は平均出力パワーを増大できるが、単一レーザーユニットの要因による繰返し率も増大する。高出力パワーは、水又はヒドロキシル(OHボンド)の含有量が非常に少ない物質を処置でき、又は非常に高い衝撃波及び大きなキャビテーションバブルを生成し、又はプラズマ発生さえも可能にする。理想的には、レーザーは、ビームがコヒーレントに結合できるように位相がロックされる。
【0053】
レーザーのモノリシック設計は、レーザー高反射反射器が直接利得媒体上に溶着され、出力カプラが利得媒体の反対側の端に直接溶着されることを特徴とする。導入されるレーザー材料が低利得なので、レーザー材料の端面に対してオフセットするレーザーミラーの配列はかなり困難である。なぜならば、レーザー材料から自由大気へその後ミラー材料へ及び逆向きへ媒体変化があるときに損失が生じるので、ほとんどレーザー発振が生じないからである。
【0054】
本発明の1つの目的は、本発明に係る固体レーザーを備える治療装置によって解決される。固体レーザーはハウジングに配置され、固体レーザーの放射レーザービームは、可撓ホース内の導光素子によって手持ち装置へ向けられる。手持ち装置は、レーザービームを標的面へ向けるために、導光素子の終端部について出口ポートを備える。可撓ホースは、導光素子を備え、従って、レーザー光源と治療装置(すなわち、手持ちユニット)の分散配列を可能にし、高エネルギー出力レーザー装置は導光素子を介してその出力パワーを治療装置へ送達する。
【0055】
固体レーザーのポンプ光は、充分なエネルギー密度を持つポンプ光を生成するために大量の電気エネルギーを必要とするので、電源は、非常に短い時間に大量の電気エネルギーを提供できなければならない。このために、非常に強力な電源、又は1つの実施形態によれば、高電流容量バッファ(high current capacity buffer)を持つ電源が必要である。この実施形態の場合、充分に長い時間にわたって連続的にバッファを充電でき且つ非常に短い時間でバッファを放電できるので、高電流電力をポンプ光源へ提供できる。
【0056】
例えば医療分野で治療装置を使用する際、手持ち装置で利用できる加圧ガスがあると有益である。従って、1つの実施形態によれば、治療装置のハウジングは加圧ガス特に周囲圧力に対して正及び/又は負の圧力の加圧ガスを発生させる装置を備える。本明細書において使用される場合、加圧ガスは、特に空気及び例えば治療領域から酸素を取り除くことによって切除を改良し且つ/又は悪影響のない切除を保証するために使用できるプロセスガスの全ての混合物を含む。
【0057】
同様の実施形態において、ハウジングは加圧液を発生させる装置を備える。レーザービームが熱切除法によって物質を切除するので、標的領域を浄化及び/又は冷却することは有益であり、このため、手持ち装置において利用可能な液体を有することは有利である。
【0058】
従って、可撓ホースは、ハウジング内の装置から手持ち装置へ加圧液を送達するダクト又は手持ち装置へ加圧ガスを供給するダクトを備える。相対正圧の加圧ガスを用いれば、例えば、特に標的面におけるレーザービームの作動領域の周りから酸素環境を排除するために治療点の周りに不活性ガスキャップ(inert gas cap)を与えることができる。相対負圧のガスを用いれば、標的面上のレーザービームの作動領域から物質を吸引できる。レーザービームは標的面から物質を切除するので、レーザーを適切に作動するには切除された物質を標的領域から取り除かなければならない。実施形態によれば、この物質は吸い取られて可撓ホース内のダクトを介して処分装置又はハウジング内の使い捨てユニットへ運ばれて、標的領域がきれいにされる。
【0059】
ハウジングが取外し可能なコネクタ手段を備える実施形態は、治療装置の使用ごとに特に手持ち装置の使用ごとに新しい手持ち装置及び可撓ホースを使えるという利点を有する。有害な物質を伴う用途の場合、手持ち装置及び可撓ホースは汚染されて、交換する必要がある場合がある。このような実施形態は、安価な導光素子例えばシリコン酸化物を主原料とする導光素子に適し、この場合、徹底的な浄化を行うよりも手持ち装置と一緒にホース内の導光素子を処分した方が、経費が掛からない。そうでなければ、可撓ホースと一緒に手持ち装置全体を浄化又は滅菌できる。
【0060】
例えばサファイア、酸化ゲルマニウム、フッ化ジルコニウム、セラミックファイバー、セラミックグラスファイバー、セレン若しくはテルル含有ファイバー、又は概してフッ化物又はセラミックスを主原料とするファイバー若しくは結晶材料を主原料とするファイバーから作られた非常に高価な導光素子がホースの中に配置される場合、導光素子を保存して手持ち装置のみを交換又は浄化することが重要である。1つの実施形態によれば、手持ち装置は取外し可能なコネクタ手段を備えて各使用後に手持ち装置を処分できるようにする。別の実施形態によれば、取外し可能なコネクタ手段はハウジングに配置され、このため、ホースと一緒に手持ち装置をハウジングから分離することが可能となる。別の実施形態においては、ホースは両端に取外し可能なコネクタを備えることができ、このため、手持ち装置及び可撓ホースが個々に分離されることが可能となる。これは、例えば、手持ち装置をオートクレーブ内で滅菌し、可撓ホースを消毒液の中に浸漬するなど異なる浄化作業を実施するのに適する。
【0061】
本発明によれば、手持ち装置は、レーザービームを標的面へ向けるために、導光素子の終端部について出口ポートを備える。1つの実施形態によれば、手持ち装置はビーム形成ユニット及び/又はビーム偏向ユニットを備え、このため、例えば特定のエネルギー密度分布を与えるべく、標的領域内の特定の点にレーザービームを偏向すべく、又は標的領域内において特定の移動パターンを与えるべく、導光素子によって提供されたレーザービームを形成することが可能となる。導光素子の終端部へ放射されたレーザービームは、ビーム形成ユニット及び/又は偏向ユニットへ入り、ここで処理されて、出口ポートを介して手持ち装置を離れる。
【0062】
治療の可能性を与えるために、手持ち装置は、さらに、音響変換器特に超音波変換器を備える。レーザーは、主に標的領域内において高温パルスを発生させることによって主に作用し、これによって物質を切除する。音響変換器(発生せしめられた音響を、案内手段を介して例えば出口ポートの先端へ向ける)を手持ち装置において利用できると、レーザーによって行われる熱切除と共に機械的エネルギーが物質の切除のために提供される。レーザー部分は周囲組織に損傷を与えてはならない重要な領域に利用し、超音波部分は、重要性の低い領域の高速除去に使用できる。
【0063】
いくつかの用途においては、標的領域で複数のビームを利用できると有益である。従って、1つの実施形態によれば、手持ち装置は導光素子分割ユニットを備える。分割ユニットは、導光素子を介して固体レーザーによって与えられたレーザービームを複数のレーザービームにして供給する。これは、例えば、導光素子のスプライシング、回折レンズ、マイクロレンズ、ステアミラー、合成二次曲面集光器又は逆転使用マルチファイバーコンセントレータ(inversed used multi-fiber concentrator)によって実施されうる。この実施形態の別の利点は、レーザーが標的領域へ入る媒体変化境界面において光エネルギー量が大きいため、キャビテーションバブルが生じて、標的領域において利用できるパワー密度が減少する可能性があることである。レーザービームを複数のレーザービームに分割することによって、レーザービーム当たりのパワー密度は小さくなるので、このようなキャビテーションバブルの発生の可能性を減少する。その結果、望ましくないキャビテーションにエネルギーが浪費されず、より多くのエネルギーが標的領域へ向けられる。
【0064】
治療対象の標的領域は、通常かなり小さく、操作者による治療プロセスの視覚的評価はかなり困難なので、別の実施形態によれば、手持ち装置は、光学的画像化手段を備える。この光学的画像化手段は、例えば、出口ポート又はその周りに配置されて標的領域へ向けられたCCDカメラのような画像化センサである。さらに、標的領域へ向けられて、画像を画像捕捉手段へ送る1つの導光素子を含むことができる。画像捕捉手段は手持ち装置又はハウジング内に配置され、後者の場合、可撓ホースは、取得した画像を手持ち装置からハウジングへ搬送する別の導光素子を備える。別の実施形態において、手持ち装置内に2つの光学的画像化手段が配置され、標的領域を立体的に捕捉できるようにして、治療装置の操作者に標的領域の三次元画像を提供できる。別の実施形態では、手持ち装置、特に出口ポートは、標的領域を照らす照明手段を備えることができる。
【0065】
別の実施形態によれば、手持ち装置は、好ましくは50kHzから5MHzの範囲の無線周波数を放射する無線周波数伝送器を備える。この実施形態では、所望の深さまで標的物質に侵入するように無線周波数を選択でき、さらなる治療が可能である。好ましくは、無線周波数伝送器は、最適化された用途固有の無線周波数を標的領域へ伝送できるように、調節可能である。さらに、無線周波数伝送器は、無線周波数を治療対象あるいは切除対象の組織へ向けるアンテナ手段を備える。レーザー部分は、周囲組織を損傷させてはならない重要な領域に使用し、無線周波数部分は、これよりも重要性の低い組織領域の高速除去に使用できる。
【0066】
手持ち装置内に様々な装置を供給するために、可撓ホースは、ハウジング内の電源から手持ち装置へ電気エネルギーを提供する電源ケーブルを備える。
【0067】
標的領域へのレーザービームの放射を制御するために、可撓ホースが少なくとも1つのデータ伝送回線を備えると有利である。データ伝送回線は、例えば制御ユニット及び手持ち装置を制御ユニット及びハウジングと接続する。手持ち装置内の制御ユニットは、使用者との対話処理のために組み込まれ、特に、レーザーの作動を制御する制御機能を使用者に与える。ハウジング内の制御ユニットは、手持ち装置内の制御ユニットから指令を受信して、これに従ってレーザーを作動する。データ伝送回線は、個別の多数の制御回線を必要とすることなく多数の指令を伝送できるという利点を有する。
【0068】
導光素子は単一のファイバー導光素子として実現されうる。単一のファイバー導光素子は、レーザービームの光エネルギー全体が1本のファイバー内で搬送されるので、レーザービームをファイバー内へ結合し、ファイバーからレーザービームを受け取って、標的面へビームを向けるのが容易であるという利点を有する。
【0069】
別の実施形態によれば、導光素子は複数のファイバー導光素子として実現されうる。複数のファイバー導光素子は、各単一ファイバー内のエネルギー密度が減少するので、ファイバー材料に対する光学的な応力が減少し、過度な光エネルギーによるファイバーの損傷の可能性が減少するという利点を有する。さらに、各ファイバーから標的領域へ放射される光エネルギーが小さくなるので、キャビテーションバブルを発生させるリスクが減少する。各ファイバーは、固体レーザーから手持ち装置へレーザービームを搬送するという同じ機能を持つように、又は個々のファイバーが異なるタスクを実施するように構成されうる。例えば、複数のファイバー導光素子の1本のファイバーを照明目的に使用し、別のファイバーを問題の感知又は分析に使用できる。このファイバーは、標的領域の画像をハウジング内の分析モジュールへ送る。各ファイバーを同じ材料で作ることができるが、1つの実施形態においては、個々のファイバーに異なる材料を使用できる。これは、個々の波長に最適な光搬送を与えるようにファイバー材料が選択される場合、異なる波長を使用できるという利点を有する。従って、異なる波長のレーザービームを放射するように調節可能な1つの固体レーザーを持つことができる。又は各々固有の波長を放射する複数の固体レーザー、半導体レーザー又は発光ダイオードなどの光源をハウジング内に配置して、そのレーザービームを多数の個々のファイバー内に結合できる。治療対象の物質に応じて波長を調節する必要があるので、異なる波長を使用することは、より多くの物質を治療できるという利点を有する。
【0070】
本明細書において使用される場合、ファイバーとの用語は、入射端から出射端へ1つ又は複数の波長の光を案内できる任意の種類の光導波路を意味し、導路は必ずしも直線ではない。例として、光ファイバー、中空光ファイバー、関節式連結ミラーアーム(articulated mirror arm)がある。特に、ファイバーは、可撓ホース内に配置されうるので、何かがレーザービーム内に入ったり損傷を受けたりする危険(これは、レーザービームの自由大気での伝送において生じる可能性がある)なしに、光、特に長距離の高パワーレーザー光の搬送を可能にする。
【0071】
出口ポートの第一の目的は、導光素子から離れるレーザービームを標的面に向けられるようにし、それによって手持ち装置から離れられるようにすることである。前の実施形態によれば、可撓ホースは、1つの導光素子だけでなくそれ以上の供給ラインを備えることができるので、別の実施形態において、出口ポートはダクトに接続された出口開口を備える。従って、可撓ホース内に配置された様々な供給ラインは、手持ち装置の出口ポートに直接出口を備えるので、標的領域に近接する。
【0072】
治療用には、導光素子の終端部が、少なくとも部分的に出口開口の周りに配置されると有利である。例えば、出口開口が相対負圧の加圧ガスを提供するダクトに接続される場合、放射されたレーザービームが、標的面から物質を切除した後、物質は出口開口内へ吸引されて、ダクトを介してハウジング内の廃物コンパートメントへ搬送される。一方、ダクトが、レーザービームによって切除された物質を洗い流す液体を供給すると有用であるかもしれない。
【0073】
出口開口が少なくとも部分的に導光素子の周りに配置される実施形態は、例えば、レーザービームの周りに制御された空気及び環境を確立でき、それによって標的領域から遊離酸素を取り除くことができるという利点を有する。高エネルギー光パルスが出口ポートから自由大気へ放射されると、イオン化効果が生じて、標的領域内に望ましくない反応生成物が発生する可能性がある。これは、標的領域を不活性ガスで覆うことによって回避できる。
【0074】
本発明の1つの目的は、さらに、本発明に係る固体レーザーを持つ手持ち装置と、手持ち装置、特に固体レーザーに電力エネルギーを供給する電源を備える卓上ユニットと、手持ち装置を卓上ユニットと接続する可撓ホースとを備える治療装置によってさらに解決される。低利得レーザー材料の独創的な使用によって、固体レーザーは、レーザービームを生成するときに大量の過剰熱を発生させる。レーザーを損傷しないようにするために、この熱を固体レーザーから取り除かなければならない。従って、固体レーザーは、本発明においてはキャビティとして実現される冷却ユニットを備える。冷却キャビティは、可撓ホース内に配置された2つの冷却液搬送管を介して、卓上ユニット内の冷却液循環システムに接続される。この実施形態によって、高エネルギーレーザービーム出力を持つ個体レーザーを手持ち装置に配置し、手持ち装置から過剰な熱を取り除いて、この熱を卓上ユニットへ搬送し、卓上ユニットに効率の高い冷却システムを配置することができる。さらに、固体レーザーは、固体レーザーを電気駆動する制御ユニットを備え、制御ユニットは、本発明によれば、レーザー放射を誘導するのに充分な電流をポンプ源へ与える1つの高電流容量バッファを備える。この電流バッファ及び熱循環システムは、高強度レーザービームを与えることができるレーザー式治療装置に、長い期間にわたって高い稼動サイクルを与える。コンタクト窓は標的面へレーザービームを送達する。通常、標的面に対してコンタクト窓の直接接触又は接近配置が可能である。治療作業を行った後、特に生物標本に関する作業を行った後、治療装置及び特にコンタクト窓を徹底的に浄化しなければならず、特に殺菌を行わなければならない。従って、コンタクト窓はこの種の化学的処置に耐えなければならず、従って、例えばMFA、PFA又はFEPなどの蛍光ポリマーとして実現される。
【0075】
さらに、本発明の目的は、手持ち装置のみを備える治療装置の別の実施形態によって解決される。手持ち装置は、エネルギー蓄積手段を備え、冷却ユニットは固体冷却装置として実現される。手持ち装置の場合、通常、高い作動デューティサイクルは要求されず、長期の連続的作動も要求されない。従って、受動的冷却ユニットが個体レーザーに取り付けられれば充分であり、この冷却ユニットは、過剰な熱を引き取って、これをレーザー装置から取り除いて、レーザー装置を正常な作動パラメータの範囲内に維持する。治療作動の繰返し率は卓上ユニット式システムよりも小さいので、エネルギー蓄積はリチウムイオン二次電池などの充電式電池で可能である。
【0076】
光路は、固体レーザーからコンタクト窓・標的面それぞれへレーザービームを案内する素子によって画成される。光路内に障害があると放射されたレーザービームの質に直接影響するので、この光路は治療装置の適切な作動にとって重要な部分である。従って、この光路が周囲環境に対してシールされること、特にダスト及び湿気に対してシールされることが重要である。レーザービームの波長が水イオンの吸収ピークに調整されることが好ましいので、光路内に湿気があると、レーザービームは、この湿気に反応して、光路の温度を上げて、放射されたレーザー光の強度を減少させる。光路にカプセル化コンパートメント(encapsulated compartment)を使用し且つシール装置としてOリングを使用することによって、光路におけるギャップを減少又は排除できる。固体レーザーの素子は、部品間のクリアランスが2μm未満になるように製造される。光路全体は、少なくとも0.5バールの相対圧力に耐えるようにしっかりとシールされる。
【0077】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの高電流容量バッファ及び1つの切替えユニットが手持ち装置内に配置される。作動時に、電流バッファは、所定の時間をかけて電気エネルギーが充電され、非常に短時間で放電されて、ポンプ光を発生させるポンプ源に供給する。2つの高電流バッファを手持ち装置に配置することによって、一方の電流バッファを充電し、その間他方のバッファをポンプ光の発生に使用できる。切替えユニットは、高電流バッファをポンプ源又は充電電源に接続する役割を果たす。この実施形態は、治療装置のより高い稼働率を可能にする。
【0078】
治療装置の構成及び作動をより容易にするために、手持ち装置がユーザーインターフェイスを備えるとさらに有利である。ユーザーインターフェイスは、ディスプレイユニット及び入力装置を備える。したがって、手持ち装置の使用者は、手持ち装置において直接個別の構成及び作動を制御する可能性を与えられ、手持ち装置において全てのプロセス情報及び制御機能を利用できるので、治療を中断することなく治療を制御することができる。
【0079】
治療領域は通常かなり狭く、従って直接に見ることができない場合が多いので、手持ち装置が画像収集ユニット及び画像分析ユニットを備えると有利である。これによって、画像を収集し且つ処理して、例えばディスプレイ手段によって使用者に提供できる。使用者は、標的領域あるいはレーザービームが標的面に衝突するところをよりよく見ることができる。別の実施形態において、立体画像を収集して、使用者に3D画像を提供できる。
【0080】
卓上ユニットから取外し可能な手持ち装置は、例えば、異なる波長で作動する固体レーザーを持つ個別の手持ち装置を卓上ユニットに接続して、治療装置を構成できるという利点を有する。この実施形態は、さらに、手持ち装置を卓上ユニット・可撓ホースそれぞれから取り外し、且つ新しい又は他の手持ち装置を卓上ユニット・可撓ホースそれぞれに取り付けることができるので、固体レーザー又は手持ち装置内のその他の素子の交換又は保守がずっと単純化されるという利点を有する。通常の使用時に、固体レーザー、レーザー利得媒体又はレーザーダイオードが損傷したり、作動パラメータが低下したりする可能性がある。固体レーザーの構造は丈夫なので、固体レーザーが標準的な出荷手続きにおける粗い取り扱いに耐えるかどうか特に注意を払うことなく、卓上ユニット・可撓ホースそれぞれから固体レーザーと共に手持ち装置を取り外して、これを整備又は保守センターへ送ることができる。使用者は、治療現場で2つの手持ち装置を入手して、一方を使用し、他方は、第一装置を保守センターへ送らなければならない場合の交換用とすることができる。これ以前のレーザーシステムの場合、保守のためには使用を中断して、保守作用を行う技術者が現場にいなければならなかったので、保守はかなり難しい仕事であった。
【0081】
別の有利な実施形態によれば、透明のカバーが手持ち装置から取り外し可能であり、このため、治療対象である物質に直接接触する部品を装置から取り外して、例えば廃棄し又は徹底的に浄化することが可能となる。物質を切除するとき、切除された物質でカバーが汚染され、次の使用前に徹底的に浄化されなければならない可能性がある。人間の組織を治療する場合には、物質の広がりを回避しなければならないので、このことが特に重要である。従って、取外し可能なカバーは、手持ち装置全体を集中的に浄化する必要を少なくし、特に使い捨てカバーを使用できる。
【0082】
固体冷却ユニットによって固体レーザーからの過剰な熱を放散するとき、自由流れの空気冷却は利用可能な時間の範囲内で過剰な熱を取り除くことができないので、これは適切ではない。従って、パラフィン、フッ化物、炭酸塩、塩化物、水酸化物、硝酸エステル、硝酸塩、糖アルコール、脂肪酸、包摂化合物、金属(例えば、ガリウム)、合金、上記の材料の組合せなどのような位相状態変化材料が、熱伝導増大材料(例えば、グラファイト、ポリマー、金属、半導体、セラミックス、結晶材料、ダイアモンド−銅、炭化ケイ素、黒鉛状炭素)と一緒に使用される。なぜならば、固体から液体へ又は液体から気体への材料の状態の変化は、大量の熱エネルギーを吸収して、蓄積したエネルギーを長い時間をかけて環境に放散できるからである。最も好ましいのは、複数回の使用を可能にするので、可逆的位相状態変化を持つ材料である。
【0083】
添付図面を参照することによって、当業者は、本発明をよりよく理解でき、その利点が分かる。図面は、特定の実施形態の特定の細部を示すが、本出願において開示される発明は、図解される実施形態のみに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】側面ポンプモノリシック固体レーザーの図である。
【図1a】レーザー利得媒体の端面の実施形態を示す。
【図1b】レーザー利得媒体の端面の実施形態を示す。
【図1c】レーザー利得媒体の端面の実施形態を示す。
【図1d】Qスイッチを含むレーザーキャビティの実施形態を示す。
【図1e】Qスイッチを含むレーザーキャビティの実施形態を示す。
【図2】ポンプ光が直接的に内部結合する、対称に冷却される固体レーザーを示す。
【図2a】ポンプ光が直接的に内部結合する、対称に冷却される別の固体レーザーを示す。
【図3】ポンプ光が間接的に内部結合する、対称に冷却される固体レーザーを示す。
【図4】半径方向に対称な液体冷却されるレーザーを示す。
【図5】2つのポンプ光を備えるポンプ光が直接的に内部結合する、対称に冷却される固体レーザーを示す。
【図6】ヒートシンクにおけるレーザーロッドの配列の一例の断面図である。
【図7】ヒートシンクにおけるレーザーロッドの配列の別の例の断面図である。
【図8】図2又は7に従った配列のレーザービームの経路を図式的に示す。
【図9】図2又は7に従った配列のレーザービームの全体経路を図式的に示す。
【図10】放射レーザービームのエネルギー密度を示す。
【図11a】ダイオードレーザー又は半導体レーザーを通過する電流の関数として平均光出力パワーを示す。
【図11b】繰返し率の関数として平均光出力パワーを示す。
【図12】放射レーザービームのエネルギー密度を示し、レーザーロッドは液体冷却されている。
【図13】別の放射レーザービームのエネルギー密度を示す。
【図14】図15の線B−Bに沿って見たヒートシンク付き側面ポンプ固体レーザーの断面図である。
【図15】線A−Aに沿って見た図14のレーザーの断面図である。
【図16】側面ポンプセミモノリシック固体レーザーの図である。
【図17】ポンピング半導体レーザーを駆動する電流及び放射レーザー光のタイムチャートである。
【図18】ポンピング半導体レーザーを駆動する電流及び放射レーザー光の別のタイムチャートである。
【図19】レーザーをCWモードで作動するための、ポンピング半導体レーザーを駆動する電流及び放射レーザー光の別のタイムチャートである。
【図20】波長の関数としてEr:YAG材料の吸収係数を示す。
【図21】モノリシック固体レーザーとその後のレンズを示す。
【図22】モノリシック固体レーザーとその後のファイバーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
次に、本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。その例を添付図面に図解する。可能な限り、図面及び説明において、同じ又は同様の部品には同じ又は同様の参照番号を使用する。図面は単純化されており、正確な縮尺ではないことが分かるはずである。本明細書の開示において、便宜上、説明を明白にする目的のみのために、上部、底部、左、右、上、下、上方、下方、後及び前など方向を表す用語が、添付図面に関連して使用される。上記の方向を表す用語は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【0086】
本明細書において使用される場合、伝導冷却体又は冷却体と言う用語は、熱エネルギー搬送媒体(例えば、液体、気体、固体材料)、ヒートスプレッダ(例えば、銅、金、アルミニウムなどの金属、又はその合金、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどのセラミックス、ダイアモンド、サファイア、炭化ケイ素などの結晶質材料)又は熱エネルギー蓄積バッファ素子(heat energy storing buffer element)を含むが、これらに限定されない。液体熱エネルギー搬送媒体は、特に、ポンプ光のために少なくとも部分的に透明な循環液体、移動液体、又は流れない液体である。液体熱エネルギー搬送媒体は、例えば、水、水−グリコール混合物、エタノール又はその他の伝熱流体例えばSolvay Solexis社のGALDEN(登録商標)HT200である。GALDENは、Solvay Solexis社の商標である。別のタイプの伝導冷却体としては、液体金属及び液体金属合金のような熱伝導液体、例えばガリウム、液体金属、若しくは混合物、又は例えばGalinstan(登録商標)と呼ばれる液体金属合金があり、Galinstanは、ドイツのGerathermから購入でき、純粋なガリウムよりも腐食性が低い。さらに別のタイプの伝導冷却体としては、グラファイト、インジウム又はその他の金属で作られた熱伝導箔がある。これを使って、結晶を冷却体にはんだ付けすることさえできる。
【0087】
本明細書において使用される場合、反射器と言う用語は、完全に又は部分的に光を拡散、反射又は後方散乱する面を含むが、これに限定されない。完全反射面は、例えば、金、銀、アルミニウム、プラチナ又は誘電体コーティングで被覆された研磨金属面である。別の完全反射面は、光学的レーザーミラーなど誘電体コーティングで被覆された結晶材料から作ることができる。部分反射反射器又は部分拡散反射器を、例えば光を直接後方に反射するよりも多くの光を後方に散乱するサンドブラスト加工された金被覆の金属面など、光を拡散して反射できる粗面又はポンプ光部分透過材料とすることができる。別のタイプの反射器としては、光を部分的に吸収するが、光のほとんどを反射的よりは散乱的に反射するセラミックス材が考えられる。別のタイプの反射器は、Spectralon(登録商標)と呼ばれる種類のプラスチック材で作られることができる。別のタイプの反射器としては、例えばガリウムなどの液体金属及び液体金属合金、又は純粋のガリウムよりも腐食性の低いドイツのGerathermから購入できるGalinstanと呼ばれる液体金属合金など、熱伝導性液体が考えられる。さらに、別のタイプの反射器として、インジウム又はその他の金属で作られた反射箔が考えられ、これを用いて、結晶を冷却体にはんだ付けすることさえできる。
【0088】
本明細書において使用される場合、ミラー又はレーザーミラーと言う用語は、完全に又は部分的に光を反射する面又は基質を含むが、これに限定されない。この種の基質としては、金属又は結晶材料(例えば、YAG、サファイア、溶融石英)の研磨材があり、少なくとも部分的に反射する表面は、金属コーティング(例えば、金、銀、アルミニウム、プラチナ)又は誘電体コーティングによって得られる。少なくとも部分的に反射する表面を持つ別のレーザーミラーは、誘電体コーティングで被覆された結晶材料の基質で作られることができる。基質は、その後、レーザー結晶に拡散接合できる。これは、原子レベルの通常分離不能な成分結合又は接合技術の一種である。
【0089】
通常、高反射ミラーは光を100%反射することができないので、レーザーのこの面においても常にレーザー出力がある。反射率が小さければそれだけ、高反射面でのレーザーパワーは大きい。レーザーと部分反射器及び高反射反射器との特殊な組合せによって、両面でほぼ同じ出力パワーを持つレーザーシステムが得られる。
【0090】
また、レーザーミラーは、レーザー活性材料上に直接金属コーティング又は誘電体コーティングを施すことによっても作ることができる。このレーザーミラーは少なくとも部分的にレーザー活性材料の所望の放射波長を反射する。レーザーミラーは、反射率が約99%以上であれば高反射反射器(HR)と呼ばれる。反射率99%未満であればすなわち1%よりも大きなレーザー光がキャビティを離れる場合、レーザーミラーは出力カプラ(OC)と呼ばれる。光学コーティング特に誘電体コーティングは、PVD(物理蒸着)又はCVD(化学蒸着)法によって複数層にして蒸着される。特に、PVDは光学コーティング層に広く使用されており、EBS(電子ビームスパッタリング)又はEBC(電子ビームコーティング)、マグネトロンスパッタリング、IBS(イオンビームスパッタリング)、IAP(イオンアシストメッキ)、IP又はRLVIP(イオンメッキ又は反応性低電圧イオンメッキ)、MBE(分子線エピタキシー)、MOCVD(有機金属化学蒸着)、MOVPE(有機金属気相エピタキシー)、及びその他との間には技術の違いがある。コーティングは、1700nmから3200nmの間の波長を持つレーザー光をよく吸収する物質(たとえば、OH結合)を含んではならない。ミラーを損傷するもう1つの原因は、ミラーの層におけるレーザー光の吸収である。従って、TiO2、Ta22、HfO2、Nb25、Al23、SiO2など、所望の波長範囲の光の低吸収の層材料を使用すると有利である。特定の用途の場合、例えば、SiとSiO2、フッ化トリウム及びセレン化亜鉛又は1つのコーティングにおけるいくつかの異なる材料の組合せなど、金属及び/又は金属酸化物の組合せからなるコーティングを使用すると有利である。例えば、非常に低吸収の材料の組合せをミラーの部品に使用して、最高の光パワーを得ることができるが、時には、これらの材料は層の数あるいは反射率の点で限界がある。反射率を増大するには、多数の層に成長されうるが吸収はわずかな材料の組合せを、光パワーが低下した上面に追加できる。このような材料の組合せによって、例えば損傷閾値が非常に高く且つ反射率が非常に高いミラーを生産できる。好ましくは、このような層の材料は、層当たり2%未満、特に層当たり0.5%未満、最も好ましくは層当たり0.1%未満の吸収率を有する。従って、1700から3200nmの間の波長を有するレーザー光をよく吸収する材料でコーティングをしてはならない。コーティング工程の間の主要な相違は、溶着エネルギーである。溶着された材料が低いエネルギーを持つ場合、少なくとも1つのコーティング層は微小空隙又は微小孔を含む可能性がある。空隙は、充填密度(層全体の体積に対する層における固体の体積の比率)を低くし、その結果、層の密度を小さくする。密度の低い層について典型的な層の充填密度は0.75から0.9未満の範囲である。密度の低い層は環境的に安定性が低く、層が湿気に曝されると、微小空隙は最終的に水で満たされる。中赤外のレーザー波長は、水に非常に吸収されるので、微小空隙の中の水は蒸発して、層あるいはレーザーミラーを損傷する可能性がある。従って、MIR(中赤外)のレーザーシステムには0.90よりも大きな又は更には0.99よりも大きな充填密度を持つ層から成るレーザーミラーしか使用すべきではない。このように高い密度の層は、コーティング層を溶着させるIBS(イオンビームスパッタリング)、IAP(イオンアシストメッキ)法を用いて得られる。最も好ましい実施形態において、溶着材料は、1.05又は1.10を超える充填密度を得られる非常に高いエネルギーを有する。過密度層と呼ばれるこのように非常に高い密度の層は、コーティング層を溶着させるIP(イオンメッキ)、RLVIP(反応性低電圧イオンメッキ)又はMBE(分子ビームエピタキシー)法を用いて得られる。
【0091】
本明細書において使用される場合、高密度層は、0.9、好ましくは0.95、より好ましくは0.99よりも大きな充填密度を持つ層を意味する。最も好ましくは、高密度層は1.05又は1.1よりも大きな充填密度を有する。
【0092】
本明細書において使用される場合、半導体レーザー、ダイオードレーザー、又はレーザーダイオードは、レーザーダイオード、レーザーダイオードアレイ、VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)、VECSEL(垂直外部共振器面発光レーザー)、鉛塩レーザー、量子ドットレーザー、量子井戸レーザー、量子カスケードレーザー、半導体リングレーザー、ハイブリッドシリコンレーザーを含むが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書において使用される場合、「低利得材料」又は「低利得レーザー活性材料」と言う用語は、Er:YAGの誘導放出断面積すなわち3.0×10-20cm2以下の誘導放出断面積を持つ利得材料、レーザー活性材料、レーザー活性媒体、レーザー利得媒体を意味する。例として下記のものがあるが、これらに限定されない。
Er:YAG(エルビウムドープYAGレーザー結晶ホスト) 2.6〜3.0×10-20cm2
Er:YSGG(エルビウムドープYSGGレーザー結晶ホスト) 6.5×10-21cm2
Er:YLF(エルビウムドープYLFGレーザー結晶ホスト) 12.5×10-21cm2
Cr,Er:YSGG(クロム−エルビウムドープYSGG) 5.2×10-21cm2
Ho:YAG(ホルミウムドープYAGレーザー結晶ホスト) 1.2×10-20cm2
Ho:YLF(ホルミウムドープYLFレーザー結晶ホスト) 1.47×10-20cm2
CTH:YAG又はCr:Tm:Ho:YAG(クロム・ツリウム・ホルミウムドープYAGレーザー結晶ホスト) 7×10-21cm2
Ho:Tm:Er:YLF:(ホルミウム・ツリウム・エルビウムドープYLFレーザー結晶ホスト) 1.8×10-21cm2
Tm:YAG(ツリウムドープYAGレーザー結晶ホスト) 1.5〜2.5×10-21cm2
Tm:YAP(ツリウムドープYAPレーザー結晶ホスト) 5.0〜6.0×10-21cm2
Ho:Tm:YAG(ホルミウム・ツリウムドープYAGレーザー結晶ホスト) 9×10-21cm2
Tm:Ho:YLF(ツリウム・ホルミウムドープYLFレーザー結晶ホスト) 5×10-21cm2
関連するレーザー結晶ホスト材料は、例えば下記のものである。
YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)
YSAG(イットリウムスカンジウムアルミニウムガーネット)
YSGG(イットリウムスカンジウムガリウムガーネット)
YGG(イットリウムガリウムガーネット)
GdVO(ガドリニウムバナジウム)
GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)
GSAG(ガドリニウムスカンジウムアルミニウムガーネット)
GSGG(ガドリニウムスカンジウムガリウムガーネット)
LLGG(ランタンルテチウムガリウムガーネット)
YAP(イットリウムアルミニウムペロブスカイト)
YLF(フッ化イットリウムリチウム)
BYF(フッ化バリウムイットリウム)
YAG、Lu23、Sc23及びY23のようなセラミックスホスト結晶
【0094】
図1は、本発明の実施形態に使用される側面ポンプモノリシック固体レーザー1を示す。基本的なレーザー構造は意図的に単純化されている。レーザー1は、レーザー利得媒体2、好ましくはEr:YAGを含む。レーザー共振器3がモノリシックブロック構造体の端面4によって形成され、高反射反射器(HR)レーザーミラー4aが利得媒体2上に直接溶着され、出力カプラ(OC)レーザーミラー4bが利得媒体2の反対側の端面に直接溶着される。出力カプラ4bは、92.5%から99%の範囲の反射率を持つことが最も好ましい。これは、レーザー光の約1%〜7.5%が出力カプラ4bを通過して利得媒体2から離れることを意味する。利得媒体2は、ポンプ源5によってポンピング面2aで側面ポンプを受ける。ポンプ源5は、少なくとも1つの半導体レーザー、好ましくは光線5aを放射するダイオードレーザーアレイを備える。レーザー共振器3は、3mm以下の直径を有し、従って約7.5mm2未満の断面積を有する。
【0095】
図1に開示される側面ポンプ固体レーザー1は、平面−平面共振器(フラット−フラット共振器とも呼ばれる)、すなわち、端面が光軸Lに対して直交し、光軸Lに90度に対して角度偏差が0.05度以下である共振器であり、高反射レーザーミラー4a及び外部結合部分透過レーザーミラー4bを備える。外部結合レーザーミラー4bは、1%〜7.5%の透過率を有する。特定の用途の場合、Qスイッチ用の電気光学セル又は音響光学セル又は波長同調用のエタロンなどの共振器内素子11を、レーザーロッドとレーザーミラーとの間に導入できる。可飽和吸収体又は飽和性吸収体又はSESAMもQスイッチに適するかもしれない。可飽和吸収体は透過性素子又は反射性素子として作用することができる。可飽和吸収体は、本明細書において述べるホスト材料の1つで作られることができ、例えば希土類元素がドープされうる。また、可飽和吸収体はレーザー活性利得材料に直接拡散接合できる。レーザー1は、例えば、CW、ポンプダイオードレーザーの擬似CW作動によって得られる利得スイッチング又はパルスモード(すなわち、ポンプ変調)のうちの1つの作動モードでエネルギーを放射できる。図1は、平らな反射性レーザーミラー4a及び外部結合レーザーミラー4bによって被覆された平らな端面4を持つ利得媒体2を開示する。別の有利な実施形態において、少なくとも一方の端面4は、わずかな非対称レンズ問題及び熱レンズ問題を補正するために、凸面、凹面、非球面凸面若しくは非球面凹面、又は光軸L(レーザー出力軸)に対して89.7°〜90.3°の角度を持つ平らな面(いわゆる、ウェッジ)を持つことができるので、端面4に直接溶着される反射性レーザーミラー4a及び外部結合レーザーミラー4bはそれぞれの端面4の形状を採用する。このようなレーザー共振器3の両端のレーザーミラー4a、4bはビーム成形又は熱レンズの調節を可能にする。レーザーキャビティは非常に短いので、凸面又は凹面の端面を使用するためには、レーザー利得材料の製造において高度な精度が要求される。このような曲面端面に関して重要な特性の1つは、光軸Lに対して3分以下の角度の中心性が必要であることである。レーザー利得媒体2は、低利得レーザー活性材料から成ることが最も好ましい。
【0096】
図1に開示される固体レーザー1は、キャビティの外部に配置されたQスイッチも備えることができる。Qスイッチは、出力カプラ上に配置され、付加的反射面として作用して、Qスイッチがブリーチング(bleaching)(例えば可飽和吸収体又はSESAM)のために切り替わるまで、又は制御手段を介して能動的に活動化/非活動化されて反射率がレーザーへ戻される外部結合光の完全反射から外部結合光の完全透過になるまで、キャビティ内のレーザーパワーを増大できる。
【0097】
また、図1に開示される固体レーザー1は冷却手段(詳細は図示せず)を備える。冷却配列の例は例えば図2〜7に開示される。
【0098】
図1に開示される実施形態は、円形のレーザー利得媒体が3mm以下の小さい直径すなわち約7.5mm2未満の断面積を持つので、レーザー利得媒体2内においてポンプ源5のポンプ光5aがほぼ均質の高い強度を持つことができ、レーザー利得媒体2内で均質の高強度のレーザー光が発生するという利点を有する。さらに、出力カプラ4aの反射率が92.5%から99%までの範囲と比較的高いので、高強度の出力レーザービームBを効率よく発生できる。さらに、両端面4に反射性コーティング4a、4bを備えることにより、端面4におけるレーザー光の損失が減少し、これも、高強度のレーザービームBに貢献する。これらの措置が全て組み合わされて、約1W/mm2〜108W/mm2の範囲の強度に集束されうる高品質のレーザービームを放射できるダイオード側面ポンプ固体レーザーの構成を可能にする。従って、本発明に係る固体レーザーは、高い効率を示すので、ポンプ源5の中程度のポンプパワーで、所望のパワー及び質を持つレーザービームBを充分に生成できる。図1において、レーザー利得媒体2の断面は円形である。レーザー利得媒体2の断面は、長方形、三角形、多角形又は正方形など他の形状を有してもよい。
【0099】
図1aは、レーザー利得媒体2を詳細に示し、図示される右側の端面4は、端面4に接着された研磨金属ブロック又は表面4cによって被覆されて、高反射(HR)レーザーミラー4aを形成する。左側の端面4は、金属層又は半導体層など基質4dで被覆されて、出力カプラ(OC)レーザーミラー4bを形成する。
【0100】
図1bは、レーザーミラー4a及び4bを備えるレーザー利得媒体2の別の実施形態を詳細に示す。レーザーミラー4a及び4bは、金属層又は半導体層など基質4dによって被覆された結晶構造体4eを備える。結晶構造体4eは端面4に接着される。結晶構造体4eは、応力減少素子として作用して、レーザー作用の安定性を改良し、熱レンズ効果を減少して、広い作動範囲に亘って高いレーザー安定性に貢献する。また、結晶構造体4eは、結晶上に直接溶着されて熱の過負荷によって損傷することが多い光学コーティングよりも安定した光学コーティングにも貢献できる。
【0101】
図1cは、端面4にコーティングされた金属層又は半導体層などの基質4dから成るレーザーミラー4a及び4bを持つレーザー利得媒体2の別の実施形態を詳細に示す。このレーザーミラー4a及び4bは、レーザー利得媒体2の端面4に取り付けられて、少なくとも部分的にレーザー光Bを反射すべく高反射レーザーミラー4b及びレーザーミラー4aをそれぞれ形成する。
【0102】
図1dは、Qスイッチ又は可飽和吸収体11を含む実施形態を示す。図1eは、Qスイッチ又は可飽和吸収体11を含む別の実施形態を示す。図1d及び1eに係る実施形態において、Qスイッチ11はレーザー活性媒体2と出力カプラ(OC)との間に配置されることも可能である。図1〜1eに開示される実施形態の組み合わせも当然可能である。
【0103】
図2は、側面ポンプモノリシック固体レーザー1の有利な実施形態を示し、側面ポンプモノリシック固体レーザー1は、伝導冷却体6と熱伝導的に接続されたレーザー結晶又は利得媒体2を備える。また、伝導冷却体6は利得媒体2を保持している。ポンプ源5は利得媒体2の側面に配置される。反射器7はポンプ源5の反対側に配置される。反射器7に加えて、伝導冷却体の面6cは、例えば適切なコーティングによって、反射特性を持つことができるので、冷却体の面6cを反射器としても使用できる。ポンプ源5のポンプ光5aは、側面2aにおいて利得媒体2へ入射し、反対側の面2bにおいてこれから離れる。利得媒体2におけるレーザービーム5aの吸収に応じて、出射ビーム5bすなわち利得媒体2内で吸収されないレーザービーム5aの部分は利得媒体2から出射する。それによって、吸収されなかった残留ポンプ光5bは、反射器7bに衝突し、少なくとも部分的に反射されて、反射レーザービーム5cを生じ、反射レーザービーム5cは利得媒体2へ入射する。利得媒体2及びポンプ源5(ダイオードレーザー)の光学的特性に応じて、レーザービーム5fは利得媒体2を平行方向に又は別の方向に横切る。図2は、レーザー結晶2内へのレーザービーム5aの直接ポンプ光内部結合を開示する。ダイオードレーザー5によって放射されたポンプ光はスリット6eを通過して結晶2へ導かれる。スリット6eには、例えばYAG(イットリウムアルミニウムガーネット)又はサファイアなどのポンプ光透過材料を充填して、より均質で対称な熱搬送を容易にして、最終的に固体レーザーをさらに安定させることができる。さらに、透過材料をポンプ光の導波路として設計して、さらにレーザー結晶内部でのポンプ光分布を改良できる。この実施形態は、レーザー結晶2が冷却体6内に対称に配置されて保持される、対称に冷却される固体レーザー利得媒体2を開示する。最も好ましい実施形態において、側面ポンプモノリシック固体レーザー1は、長手軸線Lを有するレーザー利得媒体2を含むレーザー共振器複合構造体3を備え、レーザーは、レーザー利得媒体2と接触する接触面6cを備える伝導冷却体6を備え、接触面6cはレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置されることが最も好ましい。この最も好ましい実施形態において、長手軸線Lに対して対称に冷却されるようにレーザー利得媒体2を冷却できる。伝導冷却体6の1つの目的は、レーザー利得媒体2からヒートシンク(図示せず)へ熱を搬送することである。ヒートシンクを、例えば、伝導冷却体6の外面にすることができる。また、伝導冷却体6を熱電冷却体及び/若しくは強制空冷ヒートシンク、又は熱電冷却体及び/若しくは水冷システム(図2には図示せず)などの付加的な冷却体に接続できる。伝導冷却体6は、熱を搬送するのに適する材料から成り、最も好ましくは、銅などの金属、セラミックス、結晶材料、又は本明細書において反射器に適するものとして言及されるその他の材料で作られる。図2に開示されるように、伝導冷却体6は、レーザー利得媒体2と並んで配置され且つ側面2aと反対側に配置された冷却体キャビティ6dを備える。ポンプ光5aは側面2aを通過してレーザー利得媒体2へ入射する。反射器7は、冷却体キャビティ6d内に配置されるので、反射器7は冷却体キャビティ6dの少なくとも1つの側壁の反射面であることを意味する。側壁も反射性コーティングで被覆されうる。熱ヒートシンクペースト、ガリウムなどの液体金属、又は1つ以上の固体金属の粒子を含む液体金属の混合物などのサーマルコンパウンドを利得媒体2と伝導冷却体6との間に充当することによって、利得媒体2から伝導冷却体6への熱伝達を改良するさらなる措置を講じることができる。
【0104】
広範囲のポンプ光5aパワーに亘って作用するモノリシックレーザー共振器構造体3にとって対称な熱伝達は不可欠である。接触面6cがスペース6dに置き換えられたレーザー結晶2は、ポンプ光5aが高パワーのときに不安定になり、レーザー共振器構造体3はレーザー放射を停止する。図2に図解する実施形態の対称な熱伝達は、対称な熱レンズを生じるので、レーザー共振器構造体3を不安定化にすることなく、広範囲なポンプ光5aパワーに亘ってレーザー放射が発生される。また、傾斜端面4によって非対称な熱伝達又は非対称な熱レンズを補償することが可能であるが、これは、レーザー共振器構造体の効率的な作動をたった1つの特定のポンプ光5aパワーのみに限定する。
【0105】
図2aは、伝導冷却体6と熱伝導的に接続されたレーザー結晶すなわち利得媒体2を備える側面ポンプモノリシック固体レーザー1の別の有利な実施形態を示す。レーザー1は、長手軸線Lに対して側面2aと反対側に配置された反射器7を備え、反射器7はレーザー利得媒体2のすぐ横に配置される。または、反射器7はレーザー利得媒体2のすぐ上に配置される。
【0106】
図3は、伝導冷却体6と熱伝導的に接続されたレーザー結晶すなわち利得媒体2を備える側面ポンプモノリシック固体レーザー1の別の実施形態を示す。ポンプ源5は、利得媒体2の横に配置される。図2の実施形態と異なり、図3の実施形態はレーザー結晶2内へのレーザービーム5aの間接的ポンプ光内部結合を開示する。図3に示されるように、レーザービーム5aの少なくとも一部は、利得媒体2に入射する前に冷却体6の内面6iで反射される。内面6iは、ダイオードレーザー5からレーザー利得媒体2へ至る冷却体6のギャップの表面である。ポンプ光5の光路が長くなることの利点は、ポンプ光5がよりよく混合/散乱し、利得媒体すなわち結晶2のポンピングがより均質になることである。この光路は、また、異なる放射角度を有する異なるダイオードレーザー5を利用するのに有利である。すなわち、高輝度又は低輝度のダイオードレーザーを使用できる。図3に示される代表的な実施形態は平面Cに対して対称である。冷却体6の内部ギャップ6mの幅は、図3に開示されるように変動するか、又は図2に開示されるように同じ幅を持つことができる。
【0107】
伝導冷却体6の熱管理及び熱制御は、空冷によって行われることが最も有利であるが、熱電冷却も可能であり、また水冷が適切な場合もある。
【0108】
図4は、冷却体6と熱伝導的に接続されたレーザー結晶すなわち利得媒体2を備える側面ポンプモノリシック固体レーザー1の別の実施形態を示す。利得媒体2は、長手方向Lにおいて、流体、特に水又は冷却流体を含む水によって取り囲まれ、流体は、結晶の外面2cと冷却体6の管状部材6bとの間を流れる。管状部材6bは、長手軸線Lと同軸に配置される。開示される例において、3つのポンプ源5は利得媒体2の長手軸線Lに対して120°の角度で離間され且つ利得媒体2の側面に沿って配置される。各々それぞれのポンプ源5の反対側に配置された3つの対応する反射器7は、ポンプ源5のポンプ光5aが利得媒体2へ入射して、吸収されず残って出射するポンプ光5b(側面2aの反対側で利得媒体2を離れるポンプ光5aの部分)が、利得媒体2を出射し、反射器7に衝突して、少なくとも部分的に反射器7によって反射されて、反射出射ポンプ光5cを形成し、反射出射ポンプ光5cの少なくとも一部は再び利得媒体2へ入射するように配置される。図4はレーザー活性媒体2へのポンプ光5aの直接ポンプ光内部結合を示す。この実施形態は、レーザー結晶2が冷却体6内に対称に配置されて保持される、対称に冷却される利得媒体2を開示する。冷却体は、レーザー活性媒体2に対して同心に配置された管状部材6bを備える。外側管状部材6b及びレーザー結晶2の表面2cは、流体冷却媒体が流れる容積を定める。冷却体6は、利得媒体2を取り囲み好ましくは利得媒体2と直接接触する固形中空管状部材として構成できる。このような固形冷却体6は、例えば、銅などの金属で構成されうる。開示する実施形態は長手軸線Lに対して対称であり、反射器7及びポンプ源5はそれぞれ120度の角度で配置されるが、他の対称角度分布の配列が有用である場合もある。
【0109】
図5は、図2の実施形態の設計と同様であるが、長手軸線Lに対して90度の間隔で配置された2つのダイオードレーザー5を備えるレーザー1を示す。レーザー1は、レーザー利得媒体2に接触する接触面6cを備える伝導冷却体6を備え、接触面6cはレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置される。接触面6cは冷却体キャビティ6dの壁7、7a特に側壁7aと同様に反射器としても使用できる。
【0110】
図6は図2の実施形態と同様の設計の別のレーザー1を示す。レーザー1は、レーザー利得媒体2と接触する接触面6cを備える伝導冷却体6を備え、接触面6cはレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置される。伝導冷却体6は上部6h及び2つの下部6gを備え、レーザー利得媒体2は上部6hと2つの下部6gとの間に締め付けられる。伝導冷却体6は、ダイオードレーザー5の光がレーザー利得媒体2に入射できるようにするスリット6eを備える。スリット6eの反対側に、伝導冷却体6は、接触面6cがレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置されるように、冷却体キャビティ6dを備える。冷却体キャビティ6dは、レーザー利得媒体2から出射する光を反射する反射器7を備える。また、冷却体キャビティ6dの側壁7aも反射器として使用できる。
【0111】
図7は図2の実施形態と同様の設計の別のレーザー1を示す。レーザー1は、熱伝導冷却体6、例えば、金属冷却体6と、レーザー利得媒体2を冷却体6に熱的に接続する熱伝導基質6kとを備え、ダイオードレーザー5の光がレーザー利得媒体2内へ放射されてレーザー利得媒体2を加熱すると、レーザー利得媒体2と冷却体6との間に熱の流れ6fが生じる。利得媒体2と熱伝導基質6kとの接触面6cはレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置される。
【0112】
図10は、図7に開示されるレーザー1のレーザー利得媒体2によって放射されたレーザービームBのエネルギー分布又はx方向及びy方向の信号強度を図式的に示す。対称な熱の流れ6fは楕円形のエネルギー密度を生じる。本発明に係る実施形態の1つの利点は、最も好ましくはレーザー利得媒体2において図10に示すエネルギー分布と同様の対称な温度分布があることである。最も好ましくは、温度分布は、ダイオードレーザー5によってレーザー利得媒体2へ入力される広範囲のパワーにおいて対称又はほぼ対称である。この効果は、長手軸線Lに対して対称にレーザー利得媒体2を冷却することによって得られる。この配列はレーザーの作動時の熱収差を減じることができる。本発明に係る対称な冷却形状は、通常、レンズ効果、応力誘発の複屈折、及びその他の光学収差を引き起こす未補償の温度勾配を回避する。本発明に係るレーザー1は対称な冷却形状のおかげでこの効果を示さない。最も有利には、ミリジュールからジュールのパルスエネルギー領域において高いピークパワーのパルスを発生させるために、レーザー利得媒体2の側面ポンプのために高パワーの擬似CWダイオードアレイ5が使用される。レーザー利得媒体2は典型的にはロッド又はスラブである。本発明に係るレーザー1は、作動時にほとんど熱収差無しに、広いエネルギー範囲において作動できる。従って、熱収差を補償するための措置を必要とすることなく、高パワーレーザー光を提供できる安価且つ信頼性の高いレーザー装置がもたらされる。
【0113】
高性能で作動するレーザー装置1を提供するさらなる措置、特に高強度、高パルスエネルギー及び高パルス繰返し率を得るためのさらなる措置を、図7〜9に示す以下の代表的な実施形態において開示する。図7は冷却体1内に配置されたレーザーロッド2を備えるレーザー装置1の断面図である。利得媒体2と熱伝導基質6kとの接触面6cはレーザー利得媒体2の長手軸線Lに対して対称に配置される。レーザー1は、図1に示されるようなレーザー共振器構造体3を備えるモノリシック固体レーザー1であり、レーザーロッド2の一方の端面に高反射反射器4aを持ち、レーザーロッド2の他方の端面に出力カプラ4bを持つ。レーザーロッド2の材料は例えばEr:YAGを含む。レーザーロッド2は、例えば、直径1mm、1.4mm、又は2mmである。ダイオードレーザーアレイ5は、760nm〜815nm又は955nm〜985nmの範囲の波長を有する。図20は、波長の関数としてEr:YAGの吸収係数を示す。ダイオードレーザーアレイ5の波長がレーザー活性材料2の最大吸収に対応するようにダイオードレーザーアレイ5の波長を選択することが知られている。本発明の1つの付加的態様は、このような波長の選択によって、ダイオードレーザーアレイ5のポンプ光がレーザーロッド2によって非常に吸収されるという不利点を持つことを発見したことである。その結果、ポンプ光がレーザーロッド2の側面2aの領域においてすでに吸収されていて、ほとんどの電子が活性化されるはずのレーザーロッド2の中心へ少量のポンプ光しか入射できないことになる。レーザーロッド2における吸収を減少させるようにダイオードレーザー5の主波長を選択することによってこの効果の問題が克服されることが判明した。図20に基づいて、レーザー利得媒体2のピーク吸収に対してダイオードレーザー5の主波長をシフトするように主波長を選択することによってこれが可能になる。ダイオードレーザー5の主波長は、レーザー利得媒体2の低吸収係数又は最小吸収係数において選択されることさえできる。使用される低利得レーザー活性材料に応じて、ポンプ光吸収ピークに対する選択されたポンプ光波長からの偏差が変動可能である。例えば、ダイオードレーザー5の波長を、レーザー利得媒体2のピーク吸収線に対して最高15nmまで、好ましくは10nmまでシフトできる。ピーク吸収線は、例えばEr:YAGを使用する場合約964nmであり、高吸収領域の平均中心である。さらに、ダイオードレーザー5のポンプ光が、図7〜9に示されるように導かれて、好ましくはダイオードレーザー5の光でレーザー利得媒体2を均等に照射できることは有利である。
【0114】
図7及び8にレーザーポンプ光5の経路を図式的に示す。ダイオードレーザー5はポンプ光5aを放射し、ポンプ光5aはレーザー利得媒体2へ入射して、部分的にレーザー利得媒体2を横切って、出射ポンプ光5bとしてレーザー利得媒体2を離れる。ポンピング半導体レーザーの波長は、例えば760nm〜985nmの範囲である。出射ポンプ光5bは、冷却体キャビティ6dの反射器で反射されて、反射ポンプ光5cとして散乱して戻り、再びレーザー利得媒体2へ入射して、反射ポンプ光は部分的にレーザー利得媒体2を横切って、反射出射ポンプ光5dとしてレーザー利得媒体2を離れることができる。
【0115】
例えば、ダイオードレーザー5の全放射エネルギーの100%がレーザー利得媒体2に入射でき、全放射エネルギーの64%がレーザー利得媒体2において吸収されて、全放射エネルギーの36%が出射ポンプ光5bとしてレーザー利得媒体2を離れる。出射ポンプ光5bは、反射器7で反射して、全放射エネルギーの約36%が反射ポンプ光5cとしてレーザー利得媒体2へ入射し、全放射エネルギーの約10%が反射出射ポンプ光5dとしてレーザー利得媒体2を離れる。
【0116】
図8に示されるように、ダイオードレーザー5及び反射器7は、長手軸線Lとダイオードレーザー5及び反射器7の各々との間の距離D1、D2が長手軸線Lに対して等しくなるように配置されることが最も好ましい。言い換えると、好ましい実施形態において、ポンプ源5と長手軸線Lとの間の光路の長さは、長手軸線Lと反射器7との間の光路の長さと同じ又はほぼ同じである。図9は、ダイオードレーザー5の光の経路をより明白に示し、反射ポンプ光5cの経路は、図解のために反射器7の右側に示され、レーザー利得媒体2へ入射し、出射ポンプ光5dとしてレーザー利得媒体2を離れる。ダイオードレーザー5によって放射されたポンプ光5aは、レーザー利得媒体2へ入射し、ポンプ光5aの一部は出射ポンプ光5bとしてレーザー利得媒体2から出射する。出射ポンプ光5bは反射器7で反射されるので、反射ポンプ光5cは再びレーザー利得媒体2へ入射し、反射ポンプ光5cの一部は反射出射ポンプ光5dとしてレーザー利得媒体2から出射する。図8及び9に示されるポンプ光のビーム経路の1つの利点は、レーザー利得媒体2が均質に又はほぼ均質に照射されることである。レーザー利得媒体2がこのように照射されることの1つの利点は、これによって、高パワー密度が得られ、ガウス強度分布に非常に類似した適切なビームプロファイルも得られることである。
【0117】
最も好ましい実施形態において、ポンプ源5すなわちダイオードレーザー5の波長は、レーザ利得媒体2の特性に応じて、ポンプ光5aの30%〜70%、より好ましくは50〜65%がレーザー利得媒体2によって吸収され、残りが出射ポンプ光5bとしてレーザー利得媒体2から出て行くように選択される。このような波長は、利得媒体2が均質に照射されることを保証する。最も好ましくは、ポンプ源5の波長は955nm〜985nmの範囲で選択される。ポンピング光5の波長が使用されるドーピング材料によって決まるので、所望の波長を放射するダイオードレーザー5を製造できる。利得媒体2がホルミウム又はツリウムを含む場合、最も好ましくは、ポンプ源5の波長は760〜815nmの範囲で選択される。
【0118】
最も有利には、接触領域6c、ひいてはレーザー利得媒体2から冷却体6への熱の流れ6fが図7に示されるように長手軸線Lに対して対称であり、図7〜9に示されるように、光路5a、5b、5c、5dによって、レーザー利得媒体2が長手軸線Lに沿って中心において最も熱くなる効果が導かれる。この実施形態は、高パルスエネルギー及び高パワーを与えることができ且つレーザー利得媒体2の温度上昇による温度効果が最小限であるという利点を有する。この実施形態は、さらに、レーザー利得媒体2の温度上昇による温度効果が小さく且つレーザー利得媒体2が効果的に冷却されるので、高い繰返し率を可能にするという利点を有する。
【0119】
図11aは、様々なパルス繰返し周波数及び様々なパルス長について、ダイオードレーザー5を通過する電流の関数として、平均光出力パワーであるレーザーパワーを示す。同じ構成の2つの固体レーザー1が、パルス長100μs、500Hzで作動される。同じ構成の2つの固体レーザー1が、パルス長200μs、250Hzで作動される。同じ構成の2つの固体レーザー1が、パルス長200μs、500Hzで作動される。また、図11aは、同じ構成の2つの固体レーザーがわずかな変動のみを有すること、すなわち同じ構成を有する本発明に係る固体レーザーの変動が小さいことを示す。
【0120】
本発明に係る固体レーザー1は、図11bに示されるように、広い繰返し率に亘って比較的高いレーザーパワーを生成し、このレーザーパワーは平均光出力パワーである。固体レーザー1は、図11bに示されるように、100Hzから1000Hzまで又はそれ以上で作動できる。
【0121】
上述の独創的な措置の効果は、x方向及びy方向の平面上におけるレーザービームBのエネルギー密度を示す図12及び13に示されるレーザーモードプロファイルから分かる。図12は、放射されたレーザービームBのエネルギー密度を示し、レーザーロッドは水冷される。図13は、放射されたレーザービームBのエネルギー密度を示し、レーザーロッドは図2による配列によって冷却される。効率の良い冷却の効果は、好ましくは、低繰返し率及び低熱負荷並びに高繰返し率及び高熱負荷がレーザービームBの質を歪めないことである。レーザー利得媒体2は最も好ましくは円筒形又は楕円円筒形である。楕円円筒形は、例えば図2、2a、3又は5〜7に示される冷却体6などの伝導冷却体6によって生じたレーザービームの歪みを均等化することができるので、図12に示されるようなエネルギー密度を有するレーザービームBを得ることができるという利点を有する。
【0122】
図7〜9の実施形態は、例えば、Er:YAGレーザーロッドを備えるレーザー結晶2を持つものとして前に説明した。図1〜16に開示する実施形態は、全て、他の適切な材料のレーザーロッドを備えて、図7〜9に関して説明されるのと同じ又は同様の効果を得ることができる。最も好ましくは、レーザー利得媒体2は、Er:YAG、Er:YSGG、Ho:YAG又はHo:Tm:YAGなどの低利得材料である。
【0123】
図14は、側面ポンプ固体レーザー1の断面図である。レーザー1は、冷却体6の下部6gと上部6hとの間に固定されたレーザー利得媒体2を備える。また、レーザー1はベースプレート6lを備える。ダイオードレーザーアレイ5は、レーザー利得媒体2をポンプするためにレーザー利得媒体2に沿って配置される。半導体レーザーのアレイ5はプリント回路基板などのプレート6n上に固定される。図14に示されるように、レーザー利得媒体2は、冷却体6内に配置されない自由端2dを持つことが最も好ましく、長手軸線Lの方向の自由端2dの長さは約1mmであることが好ましい。自由端2dは、応力減少素子として作用して、レーザー発振の安定性を改良し且つ熱レンズ効果を減少して、それにより広い作動範囲でレーザー安定性を高める。最も好ましくは、図2、2a、3、5、6及び7に開示される実施形態は、全て図14に示すような自由端2dを備え、自由端は約1mmの長さを持つことが好ましい。図15は、レーザー利得媒体2を示す図14の実施形態のA−Aに沿って見た別の断面図であり、利得媒体はロッドの形状を有し且つ冷却体6の下部6gと上部6hとの間に固定される。ポンプ源5すなわちダイオードレーザーアレイは、レーザー利得媒体2と並んで配置される。
【0124】
図16は、レーザー利得媒体2と、ポンプ源5と、出力カプラ4bと、離間された高反射反射器4aとを備えるレーザー共振器構造体3を示す。図1aに示す完全反射レーザーミラー(利得媒体2の端面の一方に配置される)がキャビティ内の高パワーのせいで熱くなりすぎる場合、このような実施形態が必要であるかも知れず、端面の一方に配置された反射レーザーミラー4aの代わりに、離間された反射レーザーミラー4aが使用される。
【0125】
図17は、ポンプ光5(上の曲線)及び放射レーザービームB(下の曲線)対時間を示す。ポンプ光5は、レーザー利得媒体2がレーザービームBを放射するまで、レーザー利得媒体2をポンプする。開示される例において、ポンプ光5は、レーザー利得媒体2がレーザービームBを放射すると直ちに停止する。これは、1〜5μsのパルス長の非常に短いレーザーパルスをもたらす。レーザー利得媒体2をより長い時間ポンプするようにポンプ光5を長くしてもっと長いパルスを得ることができ、これによって、レーザービームBのパルスが長くなる。図18は、より長い時間にわたるパルス光5(下の曲線)及び放射レーザービーム(上の曲線)対時間を示す。例えば、レーザービームBが定期的に放射されるように、ポンプ光5を、図18に示されるように周期的に放射できる。図19は、CWモード(連続波モード)でレーザーを作動する際のポンピングダイオード5を駆動する電流又はポンプ光5(下の曲線)及び放射レーザー光対時間の図である。
【0126】
図21はモノリシック固体レーザー1の側面図であり、レーザービームBは、レーザービームBの焦点を標的10に合わせるように、レンズ8a、8bによって拡散されて集束される。図22はモノリシック固体レーザー1の側面図であり、レーザービームBは、レーザービームBの焦点を光ファイバー9内へ合わせるように、レンズ8a、8bによって拡散されて集束される。好ましい実施形態において、光ファイバー9の直径は、100μm〜250μmの範囲であり、最も好ましくは200μm以下である。光ファイバー9内へ入るレーザービームBの直径は、好ましい実施形態において100μm以下である。光ファイバー9の出口に又は出口端の後に追加のレンズを配置できる。7.5mm2未満の断面積を有する本発明に係るレーザー利得媒体2は、出射レーザービームBを100μm以下の直径に集束できるという利点を有する。既知のレーザー利得媒体2は、3.5mm又はそれ以上の直径を有し、レーザー利得媒体2のレーザービームBを約400μmの直径にしか集束できず、高強度のレーザービームを生成できないという問題を生じる。さらに、300μm〜500μmの範囲の直径を有する光ファイバー9が必要とされた。従って、本発明に係る固体レーザー1は、高強度のレーザービームBを放射でき且つビームの直径が小さいので、例えば200μm以下の直径を有する小さい光ファイバー9を使用できる。従って、比較的高い強度のレーザービームBが光ファイバー9を通過できる。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明に係るレーザー1は特に1700nm〜3200nmの範囲の波長を有する。最も好ましくは、約2950nmの波長が使用される。なぜならば、この波長は、MIR(中赤外)領域の水吸収スペクトルにおいて主要な極大であるからである。紫外線領域においては別の水吸収ピークがあるが、この波長は、生物組織を治療又は切除するのに安全ではない。最も好ましくは、利得媒体2は、2.73から2.95μmの範囲のレーザー光を発するエルビウムドープの結晶レーザーロッドから成る。レーザー光は、TEM00モードで発生せしめられ、熱効果を克服すべく強力に集束される。時間的なパルス幅の制御によって、均等な時間パルスパターンを得ることができる。ポンプ光5を放射するダイオード又は半導体レーザーは、ダイオードアレイを備えることができ、ダイオードアレイは、利得媒体を側面ポンプするために光学的に整列されうる。ダイオードで側面ポンプされるエルビウムドープの結晶利得媒体2は2.73から2.95μmの波長を放射できる。ポンピングは、例えば、955から985nmで放射するバー又はアレイとして構成されたInGaAsダイオードレーザーによって実現されることができ、40Wのピークパワーで開始しうるパワーレベルでCW(連続波)又はQCW(擬似連続波)作動モードにおいて供給されうる。最適化された出力結合を用いると、光−光効率は、少なくとも10%であり、最大35%程度にまで達することができる。本発明の実施形態の1つでは、これら効率の大きさは、熱効果及びキャビティ内損失を最小にし且つポンプ光のビーム経路を最適化してレーザーの高エネルギーパルス又はCW作動を可能にしようとする独創的な設計のおかげで、これまで得られたものよりも高い。
【0128】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係るレーザー1は特に1675nmから2100nmまでの波長を有し、利得媒体2は1.67から2.1μmの範囲のレーザー光を発生させるホルミウムドープ及び/又はツリウムドープの結晶レーザーロッドから成る。レーザー光は、熱効果を克服するTEM00モードで発生せしめられうる。時間的なパルス幅の制御を用いて、均等な時間パルスパターンを得ることができる。ダイオードで側面ポンプされるホルミウムドープ及び/又はツリウムドープの結晶質レーザー利得媒体2は1.67から2.1μmの波長で放射できる。ポンピングは、例えば760から815nmの範囲で放射するバー又はアレイとして構成されるAlGaAsダイオードレーザー、又は1600から2050nmの範囲で放射するGaSbレーザーダイオードによって実施されることができ、20Wピークパワーで開始しうるパワーレベルでCW(連続波)又はQCW(擬似連続波)作動モードで供給されうる。最適化された出力結合を用いると、光−光効率は、少なくとも10%であり、最大85%程度にまで達することができる。
【0129】
適切な光学利得材料2は下記の結晶を含む。
Er3+413/2415/2遷移において1.73μmで放射するEr:LiYF4(Er:YLF)
Er3+411/2413/2遷移において2.80μmで放射するEr:LiYF4
Er3+411/2413/2遷移において2.79μmで放射するEr:Y3Sc2GasO12(Er:YSGG)
Er3+411/2413/2遷移において2.8μmで放射するEr:Gd3Sc2GasO12(Er:GSGG)
Er3+411/2413/2遷移において2.82μmで放射するEr:Gd3GasO12(Er:GGG)
Er3+411/2413/2遷移において2.69μmで放射するEr,Tm:Y3Al512(TE:YAG)
Er3+411/2413/2遷移において2.81μmで放射するEr:KYF4
Ho3+5657遷移において2.84μmで放射するHo,Yb:KYF4
Er3+411/2413/2遷移において2.94μmで放射するEr:Y3Al512(Er:YAG)
Er3+411/2413/2遷移において2.71μmで放射するEr:Y3AlO3(Er:YALO)
Er3+411/2413/2遷移において2.8μmで放射するEr:KGd(WO4s(Er:KGW)
Er:KY(WO4s(Er:KYW)
Er3+411/2413/2遷移において放射するEr:Al33
Er3+411/2413/2遷移において2.7μmで放射するEr:Lu33
Er3+411/2413/2遷移において2.75〜2.85μmで放射するEr:CaF2
Er3+411/2413/2遷移において2.7μmで放射するCr,Tm,Er:Y3Al512(CTE:YAG)
Er3+411/2413/2遷移において2.8μmで放射するEr:BaLu28
Er3+411/2413/2遷移において2.7μmで放射するEr:BaY28(Er:BYF)及び
2〜3μmで放射するCr:ZnSe
2080nm、2097nm及び2130nmで放射するCTH:YAG又はCr:Tm:Ho:YAG
2097nmで放射するHo:YAG
1850から2075nmで放射するHo:YLF
2091から2097nmで放射するHo:Tm:YAG
2013nmで放射するTm:YAG
2017nmで放射するTm:Cr:YAG
1675から2050nmで放射するTm:YLF
1965から2020nmで放射するTm:YAP
2020nmで放射するTm:Lu:YAG
【0130】
側面ポンプエルビウムレーザー及びTm,Ho,Yb:KYF4レーザーの別の実施形態において、パルスで作動されるとき、パルスフォーマットが時間及び強度において非常に反復的である。この性能は例えば正確且つ予測可能な切断を容易にして切断効率を改良できる。この特徴は、歯科及び医療の用途において、組織の熱変性を小さくすることと両立して、より早い治癒を可能にする。
【0131】
本発明は、エルビウムドープ、ホルミウムドープ又はツリウムドープの低利得レーザー活性材料に限定されず、Nd:YVO4、Nd:YAG、Er:Glass及びその他多くの材料などの高利得レーザー活性材料も使用できる。高利得レーザー活性材料を使用する場合、本発明の利点は、衝撃によって生じる調整外れ、振動及び熱効果によって時間の経過に伴って生じる調整外れに対して非常に強いことである。
【0132】
生物組織と水との間の効率の良い相互作用のおかげで、本発明に係るレーザーは、例えば、組織手術、組織切断、組織切除、歯科手術、整形外科手術、骨切断及び軟組織表面処理の分野の手術器具として有用である。
【0133】
図23は、手持ち装置20が卓上ユニットに取付け可能な、本発明に係る治療装置を示す。手持ち装置20は、本発明に係る固体レーザー1を備え、固体レーザー1はレーザービーム21を放射する。レーザービームは光路22に沿って標的面23へ向けられる。光路22は、固体レーザー1、例えば拡散レンズとして実現されるレーザー出力カプラ、ビーム形成・偏向ユニット24を含む。ビーム形成・偏向ユニットは、2つの部分すなわちビーム形成部分及びビーム偏向部分に分離されうる。光路22はコンタクト窓25で終了する。コンタクト窓において、形成されたレーザービーム26は手持ち装置20から出て標的面23へ侵入する。コンタクト窓は、特定の波長を持つレーザービームがエネルギー損失又はビームの強度分散を生じることなくコンタクト窓を通過できるように非常に透明な窓でシールされることが好ましい。コンタクト窓25はさらに標的面23上に固有領域を画成し、この領域において、形成されたレーザービーム26は標的面23に侵入でき、このため、標的面上に治療領域が画成される。この治療装置20は、医療用に使用されることができ、従って生組織に接触する可能性があるので、治療ごとにコンタクト窓の浄化及び/又は滅菌が必要である。従って、コンタクト窓25のカバー27は、強い洗浄剤に耐えなければならず、さらに手持ち装置20から取外し可能で別個に浄化され、又は廃棄されて治療ごとに新しいカバー27が取り付けられうる。カバー27をスナップ状装置(snap-on like device)にすることによって、使用者がカバー27に触れる必要なくカバーを取り付け且つ取外しできるようになり、このため、高い無菌性が提供されうる。
【0134】
ビーム形成・偏向ユニット24は、出力開口25内にレーザービームを形成し且つ標的面23上の標的領域内にレーザービームを集束させるべく、固体レーザー21によって放射されたコヒーレントなレーザービーム21を広げる。従って、光路22内に選択的に可動なミラー28が配置されて、レーザービームの偏向が可能となる。ビーム形成・偏向ユニットの好ましい実施形態例は国際公開第2009/150210号において開示される。
【0135】
固体レーザー1の作動時に、廃熱が発生する。廃熱を固体レーザー1から取り除いて、レーザーの作動性を維持しなければならない。従って、冷却ユニット29が固体レーザー1に配置される。冷却ユニット29はキャビティ30を備え、この中で冷却液が循環する。冷却ユニット29は、冷却液輸送管31を介して卓上ユニットの冷却液循環システムに接続される。従って、固体レーザー1から大量の熱エネルギーを取り除いて、高デューティサイクルの長い作動時間でも、レーザーを安全な作動パラメータ内に維持できる。
【0136】
固体レーザー1及びビーム形成・偏向ユニット24を制御するために、制御ユニット32が手持ち装置20内に配置される。制御ユニット32は、例えばタンタルコンデンサ又はニオブコンデンサとして実現される少なくとも1つの高電流容量バッファ33を備える。制御ユニット32及び高電流容量バッファ33は給電線34を介してそれぞれ卓上ユニットの電源と接続される。電源は、電流容量バッファ33を充電するための電気エネルギーを与える。
【0137】
制御ユニット32は、手持ち装置20の使用者が固体レーザーの基本作動例えばレーザービームの放射を制御できるようにする操作制御スイッチユニット35と接続されうる。
【0138】
従来技術のレーザー式治療システムの主要な不利点の1つは、レーザーの保守が非常に困難な仕事であることである。通常、サービス技術者が現場に赴かなければならない。なぜなら、これまでのレーザーシステムは、構成されて使用状態になると、発送によってレーザーシステムが深刻な損傷を受ける可能性があるため、保守センターへ発送できるように作られていない。本発明に係る固体レーザーは頑丈なので、レーザーは特に慎重な取り扱いを必要とせず、従って、レーザーを損傷する危険無しに交換特に保守センターへの出荷を容易に行える。従って、治療装置の有利な実施形態は、手持ち装置20が取外し可能なコネクタ36を備えることである。取外し可能なコネクタを用いて、手持ち装置20を、可撓ホース37を介して卓上ユニットに接続できる。コネクタ36は、スクリュー式又は差込みピン式のコネクタ手段とすることができ、明確に言うと、手持ち装置20内の管ライン31及び供給ライン34を可撓ホース37内のそれぞれの管及びラインに接続するように配置され且つ整列されたコネクタ手段38を有する。この実施形態の別の利点は、特定の波長で放射する固体レーザー1を持つ個々の手持ち装置を卓上ユニットに接続できることである。従って、複数の治療装置を必要とすることなく、単に再使用することによって、あるいは作動電力及び作動媒体を提供する卓上ユニットを個別の設計の手持ち装置から選択されたものに接続することによって、特に選択された波長を用いて治療を行える。
【0139】
図24は、治療装置特にスタンドアロン型手持ち装置39の別の実施形態を開示する。基本的機能要素は図23について説明したのと同様であり、特に本発明に係る固体レーザー1が組み込まれる。装置39はスタンドアロン型なので、固体レーザー1の冷却は液冷システムによって実施されず、完全に手持ち装置39内で行われなければならない。従って、冷却ユニット29は固体冷却ユニットとして実現される。冷却ユニットは、例えば自由空気冷却手段を備えることができる。例えばエネルギー供給、レーザーユニット1の繰返し率、ひいては固体レーザーによって発生する熱量を理由として、可搬式手持ち装置39を使って行える治療の数は限定されるので、自由空気冷却は、固体レーザーを正常な作動パラメータ内に維持するのに十分でありうる。1つの実施形態によれば、冷却ユニット29は、レーザーの作動温度範囲内で可逆的な位相状態変化を有する物質40を備えることができる。既知のように、物質の位相状態変化は、1つの位相状態内における加熱よりもずっと大きい熱エネルギーを必要とする。例えば、パラフィンは、通常約42°で位相状態変化を生じ、固体レーザー1の過剰な熱を引き取るのに適する。作動の休止中に、加熱されたパラフィンは、蓄積した熱を環境へ放射して、液体から固体へ位相状態変化を行い、それによって次の使用に備える。
【0140】
レーザー及び制御ユニット32を作動するためのエネルギーは、電気エネルギー蓄積手段41によって与えられる。電気エネルギー蓄積手段は、例えば、リチウムイオン二次電池又はリチウムポリマー二次電池として実現される。ある程度の回数の治療が実施された後、手持ち装置39は接続ポート42を介して電源システムに接続されて次の作動サイクルのために電気蓄積手段41を充電する。
【0141】
行われる治療の要件に合わせてスタンドアロン型手持ち装置39を構成するために、手持ち装置は、さらに、好ましくはディスプレイ及び入力装置を持つユーザーインターフェイス43を備える。ユーザーインターフェイス43は、制御ユニットに接続されて、手持ち装置39を外部制御ユニットに接続する必要なく、レーザー作動パラメータの個々の構成を可能とする。
【0142】
図25は、ハウジング44内に配置された本発明に係る固体レーザー1を備える治療装置を示す。固体レーザー1は、レーザービーム21を放射し、レーザービーム21は、光結合装置46によって導光素子45内へ向けられる。光結合装置46は、非結像光学素子又は結像光学素子、ファイバー多重化装置又はテーパー状ファイバーの効果に基づくことができる。導光素子45は、例えば、単一のファイバー素子又は複数のファイバー素子であり、光結合装置46の目的はファイバー直径の約60%の直径のレーザービーム21を導光素子45内へ向けることである。単一のファイバー素子の場合、導光素子は約150〜550μmの直径を有し、複数のファイバー導光素子45の場合、75〜200μmの倍数の直径を有する。
【0143】
ハウジング44は、さらに、加圧ガスを発生させる装置及び/又は加圧液を発生させる装置を備えることができる。周囲に対して、加圧ガスは正又は負の圧力を持つことができ、正圧を持つ気体は、標的領域において切除された物質を吹き飛ばすために使用されることができ、相対負圧を持つ加圧ガスは、標的領域に存在する液体を含む切除された物質を標的領域から吸い出すために使用されうる。図25には、負の加圧ガスを発生させる装置47が示されている。この装置は、廃棄コンパートメント48へのガイドを含み、このため、レーザーが標的面に侵入する標的領域から切除物質が吸い出されて安全な除去のために廃棄容器48に収集されることを可能とする。
【0144】
少なくとも導光素子45は可撓ホース49を介して手持ち装置50に接続される。可撓ホースとしてファイバー強化可撓管が考えられ、この中に少なくとも導光素子45が配置される。単純化のために、内部に様々なラインが配置された可撓ホースは、図25では1本の線として描かれる。可撓ホースの目的は、内部に配置されたラインを保護して、ハウジング44から離れて配置された手持ち装置を自由に移動できるようにすることである。別の実施形態において、可撓ホースは光学導光素子自体で構成されうる。この場合、導光素子は、可撓性を有する保護カバーを備える。これによって、可撓ホースは非常に小さな直径及び高度の可撓性を備える。手持ち装置50は、例えば、歯科穿孔装置と同様の固形ハンドピースである。手持ち装置50内部には、導光素子45と、図25の例のように加圧液及び/又は加圧ガスを供給するダクト51とが手持ち装置50の作用端52に配置される。作用端52には、出口ポート53が配置され、出口ポートは導光素子45に接続され、別の出口ポートはダクト51に接続され、図示される実施形態において、ダクトに接続された出口ポートは、導光素子45に接続された出口ポートの周りに配置されて、切除された物質を作用領域(ここからレーザービームは標的面に侵入する)の周りから吸い取る作用先端を与える。
【0145】
滅菌のために、作用キャップ54を作用先端52の上に設置して、出口ポートを延長して、作用先端特に導光素子45の端部が標的面又は切除された物質と触れないようにできる。これは、1人の患者から別の患者への生物物質の伝達を回避しなければならない臨床において、非常に重要である。保護キャップ54は、使い捨てであり又は再利用可能であるが、徹底的に浄化可能であり、このため、手持ち装置50を無菌に維持するための浄化の手間が低減される。
【0146】
手持ち装置50は、さらに、可撓ホースを介してハウジング44内の制御ユニット56に接続された操作スイッチ55を備えることができる。操作スイッチ55を、例えば、固体レーザー1と、加圧液及び/又は加圧ガスを発生させる装置との作動を制御する単純なON/OFFスイッチとすることができる。治療を行うために使用者が様々な装置の作動をどのように制御するかについて、より高度な可能性を与える他の制御スイッチも可能である。
【0147】
本発明の実施形態によれば、手持ち装置50は、固体レーザー1から取外し可能である。従って、手持ち装置50及び/又はハウジング44は、手持ち装置50を可撓ホース49から分離し又は可撓ホース49をハウジング44から分離できるようにするコネクタ手段57を備えることができる。コネクタ手段57が1つだけ可撓ホースに取り付けられて、一体型手持ち装置及び可撓ホースをハウジングから取り外す別の実施形態も可能である。治療装置の1つの作用分野は臨床なので、生物物質に触れた各要素を徹底的に浄化及び滅菌しなければならない。導光素子45が非常に精巧で非常に高価な材料(サファイヤなど)の場合、保護キャップ54を使用することは、手持ち装置50及び可撓ホース内のダクトを浄化する必要を減らすので、非常に適切である。さらに、手持ち装置50を使い捨て装置とすることができ、可撓ホースから分離して、廃棄して、次の使用のために新しい手持ち装置と交換することができる。他方、導光素子45を、導光素子として非常に安価な材料であるSiO2製にすることができる。これは、可撓ホース49と一緒に手持ち装置50を廃棄して、治療ごとに新しい要素を使用するのに適した解決法である。可撓ホース49から手持ち装置50を、又はハウジング44から可撓ホースを個別に分離することは、個別に滅菌手順を実施する可能性を与え、例えば、手持ち装置をオートクレーブ装置において滅菌し、可撓ホースを消毒液に浸漬することができる。
【0148】
コネクタ手段57は、液密及び/又は気密の接続が確立されるように、ダクト及び導光素子を適切に整列する個別の接続部品を備える。さらに、レーザービームが可撓ホース49から手持ち装置50へ渡されるときに接続損失がない。同じことが、可撓ホースとハウジング44のコネクタ手段にも当てはまる。
【0149】
図26aは、作用先端の単純化された図である。ダクトは加圧液を先端に供給し、加圧液は、相対負圧の加圧ガスを供給するダクトによって切除された物質と一緒に吸い取られる。図示される実施形態において、導光素子45は、複数の単一導光ファイバー61から成る複数のファイバー導光素子として実現される。ダクト58は加圧液を作用先端59へ送り、別のダクト60は相対負圧を持つ加圧ガスを供給して、その出口開口は同じく作用先端59にある。導光素子45の単一ファイバー61は、加圧ガスを供給するダクトの周りに配置される。加圧液を供給するダクト58はファイバーを取り囲む。従って、加圧液は、加圧ガスを供給するダクトの外周と加圧液を供給するダクトの外周との間を搬送されて、単一導光ファイバー61を取り囲む。レーザーが作動されるとき、単一ファイバーの各々は標的面へレーザービームを放射する。ダクト58によって供給された液体も、標的領域へ向けられて、切除された物質を洗い流す。切除された物質を標的領域から取り除くために、供給された液体は、切除された物質と一緒に、相対負圧の加圧ガスを供給するダクト60内へ吸い込まれるので標的領域をきれいに維持し、レーザービームの散乱又は過剰な熱の挿入による潜在的な組織損傷を回避する。
【0150】
図26bは作用先端59の別の実施形態の前面図である。単一ファイバー導光素子45が作用先端59の中央に配置されて加圧液用の出口ポート62及び相対負圧の加圧ガス用の出口ポート63によって取り囲まれる。これは、図26aの実施形態と同様の機能を持ち、液体は、標的領域を浄化するために使用されて、切除された物質と一緒に負の加圧ガスによってダクト63に吸い取られる。
【0151】
図26cは作用先端59の別の実施形態の前面図であり、導光素子の数個のファイバー端部61がダクトの周りに配置される。ダクトの1つは加圧液を供給するダクト62であり、1つは負圧の加圧ガスを供給するダクト62である。さらに、先端に照明手段64を配置することができ、発光素子は発光ダイオードとして実現されうる。また、好ましくは、照明手段64は、別個の導光素子として実現され、又はレーザービームを供給する導光素子の1本のファイバーである。さらに、別の導光素子又はレーザービームを供給する導光素子の1本のファイバーを画像収集手段65として使用し、ハウジング内の画像分析手段及び画像処理手段へ画像を送って、標的領域を肉眼だけで監視することでは不可能な標的領域の鮮明な映像を操作者へ提供できる。
【0152】
作用先端59はさらに音響変換器を備え、音響変換器の作用先端又は無線周波数送信機の電極は、両方ともそれぞれ、標的領域において物質を切除するためのさらなる用途の可能性を与える。
【0153】
図26dは、作用先端59の側面図であり、導光素子45は、作用先端の上面から突出する。導光素子は、さらに、傾斜部66のような成形端部を有する。傾斜面が誘電層又は層配列で被覆され又は内部全反射に基づいて作動するので、導光素子45によって搬送されたレーザービームは、導光素子の平行軸線とは異なる角度において、例えば平行軸線に対して直角に素子から離れることができる。この実施形態は、作用方向とは異なる物質の切除を可能にし、特に作用先端の作用方向の横の領域の物質を切除できる。
【0154】
完全を期すために、別の好ましい実施形態を以下に示す。
I)
医療用レーザー装置であって、
本出願において説明されるレーザーを備え、
少なくとも1つの導光素子(例えば、光ファイバー、中空光ファイバー、関節式連結ミラーアーム)内へのレーザー光の最適な結合を可能にする結合ユニットを備え、
交換可能に且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計された少なくとも1つの導光素子に結合され、
導光素子を体内の病原性集塊(pathogenic clump)へ近づけて、高パルスエネルギー又は高エネルギーパルスを用いて集塊内の水の爆発的蒸発により又は集塊のすぐ前又はその周りの水又は水を含む組織の爆発性蒸発によって生じた衝撃波により集塊を破壊して、体内の病原性集塊(胆石、動脈石灰化、腎結石、膀胱結石など)を治療する、医療用レーザー装置。
このレーザーを使用する利点は、パルスエネルギー、パルス持続時間及びパルス強度(パルスエネルギー/単位時間)並びに繰返し率を広範囲に調節して、患者の治療に個別に合わせることができることである。上記のレーザーのさらなる利点は、市販のフラッシュ光ポンプレーザーシステム又は不完全に向けられた超音波エネルギーによって生じる熱破壊が減少することである。
【0155】
II)
医療用レーザー装置であって、
本出願において説明されるレーザーを備え、
少なくとも1つの導光素子(例えば、光ファイバー、中空光ファイバー、関節式連結ミラーアーム)内へのレーザー光の最適な結合を可能にする結合ユニットを備え、
交換可能に且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計された少なくとも1つの導光素子に結合され、
導光素子(の少なくとも1つ)が手持ち装置に接続され、手持ち装置が交換可能且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計され、
手持ち装置が、できれば別の結合ユニットを備え、この結合ユニットが導光素子の少なくとも1つの中へレーザー光を最適に結合し、その後治療対象の点へ又は導光素子内へ結合し、導光素子が交換可能且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計され、
これら少なくとも1つの導光素子に加えて、できれば、装置から汲み出され且つ/又は吸い込まれる流体及び/又は気体用の付随の管、及び/又は電気リード線(例えば切換接点信号(switching contact signal)、指示信号等)、及び/又は治療されるべき点からデータを伝送し又は光(照明、レーザー光、ターゲットレーザー等)を治療されるべき点へ伝達する光学ラインを備え、
(動物又は人間の)眼の病気の治療、例えば緑内障及び白内障(付随する治療は、水晶体超音波乳化吸引術(水晶体の破壊)及びその後の人工水晶体の挿入による白内障手術)、通常緑内障を引き起こす眼圧の上昇(付随する治療は線維柱帯切開術又は虹彩切除術)、「飛蚊症」又は硝子体の混濁による硝子体治療(付随する治療は硝子体切除術)のための医療用レーザー装置。また、このレーザーを用いて水晶体矯正を行えることも重要である。
このレーザーを使用する利点は、パルスエネルギー、パルス持続時間及びパルス強度(パルスエネルギー/単位時間)並びに繰返し率を広範囲に調節して、治療部位に個別に治療を合わせることができることである。例えば、水晶体超音波乳化吸引術中に、レーザーを用いれば、加えられる熱エネルギーが小さく且つより良く調節されるので、市販の超音波破砕機又はフラッシュ光ポンプ固体レーザーよりもずっと穏やかに水晶体を破壊することができる。健康な組織付近ではない、すなわち破壊対象の水晶体の内部で水晶体組織を破壊する限り、作業を高パルスエネルギー及び高繰返し率で実行できる。水晶体の縁の領域すなわち健康な組織の付近に近づいたら、レーザーエネルギー及び繰返し率を下げて、より精密に作業することができる。繰返し率を低くすることによって、組織における熱エネルギーの蓄積、ひいては組織の破壊を防止する。超音波の場合と同様、水晶体は、レーザーにおいてキャビテーションバブルによって生じる衝撃波によって破壊される。組織を取り除くために1本又は2、3本のファイバーしか使われないと、キャビテーションバブルは、数本のファイバーが使用される場合よりも大きく且つ/又は長く続く。これは、健康な組織内へ衝撃波を放散しすぎるというリスクがある。水晶体を完全に穏やかに取り除くことが保証されなくなる。従って、除去物質用の吸引チャネル又は洗浄液チャネルの周りに配置された数本のファイバーは、特定の状況において、特定の切断面を持つファイバー端部を通過して適切な方向へ発する光が与えられるので、有利である。上記の可能性は全て、硝子体を取り除く(硝子体切除)際にも非常に有利である。場合によって、硝子体切除時に例えば網膜を直接損傷しないように、横方向に(例えば導光素子内での光に対して90度)レーザー光を発すると有意義である。さらに、線維柱帯切開術において、眼内に画成された正確な小さい開口を生成し、眼房水の流出を制御するように内部から適切なチャネルを作ることができる。最後に、上記のレーザーは、非常に優れた調節の可能性を持つので、中赤外レーザーに関しては今まで知られていない正確な水晶体の矯正を行うことができ、エキシマーレーザー又はフェムト秒レーザーに比べて購入コスト及び保守コストが大幅に減少するという利点をもたらす。理想的には、医療用レーザー装置は、いくつかのハンドピースユニット又はハンドピースを備えたファイバーユニットを受け入れて、眼の手術及び眼の矯正治療並びに眼に関連する手術及び眼に関連する矯正治療の広い範囲又は全範囲でさえもカバーできる。
【0156】
III )
医療用レーザー装置であって、
本出願において説明されるレーザーを備え、
少なくとも1つの導光素子(例えば、光ファイバー、中空光ファイバー、関節式連結ミラーアーム)の中へのレーザー光の最適の結合を可能にする結合ユニットを備え、
交換可能に且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計された少なくとも1つの導光素子に結合され、
導光素子(の少なくとも1つ)が手持ち装置に接続され、手持ち装置が交換可能且つできれば滅菌可能か又は使い捨て部品として設計され、
手持ち装置が、できればさらに結合ユニットを備え、この結合ユニットが導光素子の少なくとも1つの中へレーザー光を最適に結合し、その後治療対象の点へ又は導光素子の中へ結合し、導光素子が交換可能且つできれば滅菌可能か又は使い捨て部品として設計され、
前記導光素子の少なくとも1つの他に、できれば、装置から汲み出され且つ/又は吸い込まれる流体及び/又は気体用の付随の管、及び/又は電気リード線(例えば開閉接点信号、指示信号)及び/又は治療点からデータを伝送する又は光(照明、レーザー光、ターゲットレーザー)を治療点へ伝達する光学ラインを備え、
(動物又は人間の)脳又はその他の器官の病気を治療するため、精密に且つ確定された方法で組織部分を取り除くための医療用レーザー装置。一例は、例えば癲癇を引き起こす脳の中心部の治療である。これにより、疾患があると考えられる部位を的確に取り除くことができる。別の可能性は、血管内又は血管への沈着物(例えば、動脈硬化)の除去である。一例は、約50歳以上の年齢層に非常に多く見られる頚動脈の石灰化である。沈着物は、通常、血管の被膜内ではあるが血液を運ぶ管の外部において見られる。この場合にも、パルスエネルギー及び繰返し率の両方の点でレーザーを微細に調整しなければならない。頭蓋及び血管の両方の手術において、周囲組織の熱破壊を小さくするために短いパルス持続時間が必要であるが、衝撃波を生じないように短すぎてはならない。衝撃波は周囲組織へ機械的エネルギーを放つことによって、組織を破壊する。最適なパルスは、約1〜50usであり(1981年Jeseph T.Wash著「組織のパルスレーザー切除:除去プロセス及び組織治癒の分析」、(この書類は本出願書に組み込まれる)も参照されたい)、設定されたパルスエネルギー及び治療部位へ通じる光伝導素子の数によっても左右される。
【0157】
IV)
医療用レーザー装置であって、
本出願において説明されるレーザーを備え、
少なくとも1つの導光素子(例えば、光ファイバー、中空光ファイバー、関節式連結ミラーアーム)内へのレーザー光の最適な結合を可能にする結合ユニットを備え、
交換可能に且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計された少なくとも1つの導光素子に結合され、
導光素子(の少なくとも1つ)が手持ち装置に接続され、手持ち装置が交換可能且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計され、
手持ち装置が、できれば別の結合ユニットを備え、この結合ユニットが導光素子の少なくとも1つの中へレーザー光を最適に結合し、その後治療対象の点へ又は導光素子内へ結合し、導光素子が交換可能且つできれば滅菌可能に又は使い捨て部品として設計され、
これら少なくとも1つの導光素子に加えて、できれば、装置から汲み出され且つ/又は吸い込まれる流体及び/又は気体用の付随の管、及び/又は電気リード線(例えば切換接触信号、指示信号)、及び/又は治療点からデータを伝送し又は光(照明、レーザー光、ターゲットレーザー)を治療点へ伝達する光学ラインを備え、
(動物又は人間の)骨の病気の治療のための医療用レーザー装置。このレーザーを用いた治療は、融合耳小骨(fused auditory ossicle)(相互分離又は組織増殖からの分離、ステイプトプラスティック(stapetoplastic))並びに手の骨の手術及び頭蓋―顎顔面手術に適する。この手術においては、正確さが欠ける方法による顔面神経への損傷を避けなければならない。本出願において説明されるレーザーのさらなる主要な利点は、骨組織における熱破壊を、フラッシュ光ポンプレーザー又は機械的手術器具よりもかなり小さくできることである。従って、治癒プロセスが最適化され且つ何倍も早くなる。凝固及び/又は炭化がほとんど生じないので、骨細胞はより容易に癒合でき、従って骨細胞は再び直接結合でき、接合部を取り囲む増殖はかなり少なくなる。骨の治療のほかに、軟骨及び椎間板組織の治療が、整形外科の一部を形成する。接合部の増殖が精密且つ画成された方法で平滑化できるので、それによって、痛みを減少し且つ除去することさえもできる。用途の別の分野は、骨折の場合に、スクリュー及びその他インプラント用の穴を穿孔するなど、一時的又は永久的に接続要素を取り付けるための骨の準備である。すでに癒着した又は接合が不正確な又は不適切な骨折の場合、骨折が最適に癒合できるように、破損点を正確に準備できる。別の用途分野は巨細胞腫又はその他の良性腫瘍又は悪性腫瘍などの骨の癌細胞の正確な除去である。
【0158】
皮膚科学では、一方では、非常に短いパルスを使って非常に低い又は無視できる周囲組織への熱入力で切除を引き起こし、他方では、もっと深い皮膚の層において、エネルギーが孔又は切除区域の周りの組織にも熱を放つように、長いパルス及び高繰返し率によって、生じる熱積層を通してコラーゲン収縮の熱活性化又は原線維成長の誘導を生じるような態様において、レーザーパラメータが変動されうる。
【0159】
上述の実施形態の場合、レーザー自体又は導光素子を、位置決め装置に取り付けることができる。位置決め装置は、予めプログラムされた経路に亘ってX方向、Y方向及び/又はZ方向において少なくとも1つの軸線に沿って自動的に、又は空間内を手動で移動せしめられる。さらに、標的を、手動で又は予めプログラムされた方法で、レーザーの下で、最高で3つの次元軸の方向に移動できる。ビーム偏向器を、レーザー又は光伝導素子のすぐ後に取り付けることができる。偏向器は、レーザービームを手動で又は予めプログラムされた方法で少なくとも1つの軸線方向に偏向する。正確な操作は、オンラインX線モニターなど操作支援によって又はOCT(光コヒーレンス断層撮影法)(これによって、治療を行う医師は、オンラインでその時点でどの部分を切除しているかを正確に見ることができる)などの他のプロセスによって容易になる。組織における差(骨と神経細胞、血管の石灰化例えば動脈硬化など)を認識でき、切除すべき又はすでに切除した物質の寸法の程度を監視して留意することができる。
【0160】
レーザーパラメータは、ドライバ又は「半導体レーザー」、すなわちレーザーダイオードドライバを介して制御される。レーザーダイオードドライバは、連続波、擬似連続波(パルス)、利得スイッチなど様々な作動モードを制御する。パルス繰返し率、パルスエネルギー(「半導体レーザー」の電流による)、パルスの形(鋸歯、湾曲、矩形、台形など)、立上り時間及び立下り時間を制御できる。通常、レーザー結晶における不必要な熱負荷を防ぐために、短い立上り及び立下り時間の矩形パルスが選択される。レーザーダイオードドライバとレーザーとの間の供給ラインが長ければ長いほど、表皮効果によるリードインダクタンス及び/又は抵抗のために、立上り時間及び時には立下り時間が長くなり、多くのエネルギーが使用されず、又はレーザー結晶に効率悪く送られる。レーザーダイオードドライバがレーザーの近くに取り付けられることが特に有利である。レーザーダイオードドライバの電流、繰返し率、パルス持続時間などの最も重要なパラメータは、ほぼ直接、発生レーザーパルスに対応するので、使用者によって設定されうる。
【0161】
導光素子としては、関節式連結ミラーアーム、中空ファイバー、光コンダクタ及びサファイア、ゲルマニウム酸化物、シリコン酸化物又はフッ化物を主原料とするその他の単一又は複数のガラスファイバー、又は例えば現在開発中の透明アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウムなどを主原料とするセラミックスなど、現在開発されているセラミックスファイバーが考えられる。
【0162】
導光素子、特に複数の導光素子の結合方法は、当業者に知られている。しかし、コスト効率が良いことが不可欠である。空間的理由から、1つのベースステーションにおいて複数の光伝導素子を結合することが合理的である。中赤外領域において光伝導素子は非常に高価なので、結合は、手持ち装置に通じる1本だけのファイバーで手持ち装置において行われる傾向があり、1本のファイバーは数個の光伝導素子に分割されて手持ち装置の先端に達する。
【符号の説明】
【0163】
1 固体レーザー
2 レーザー利得媒体
3 共振器構造体
4 端面
5 ポンプ源
6 伝導冷却体
7 反射器


10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20 手持ち装置
21 レーザービーム
22 光路
23 標的面
24 ビーム形成・偏向ユニット
25 コンタクト窓
26 レーザービーム
27 カバー
28 ミラー
29 冷却ユニット
30 キャビティ
31 管
32 制御ユニット
33 電流バッファ
34 供給ライン
35 制御スイッチユニット
36 コネクタ
37 可撓ホース
38 コネクタ手段
39 スタンドアロン型手持ち装置
40 位相状態変化材料
41 電気エネルギー蓄積手段
42 接続ポート
43 ユーザーインターフェイス
44 ハウジング
45 導光素子
46 光結合装置
47 加圧ガス発生装置
48 廃棄コンパートメント
49 可撓ホース
50 手持ちユニット、手持ち装置
51 ダクト
52 作用端、作用先端
53 出口ポート
54 作用キャップ、保護キャップ
55 操作スイッチ
56 制御ユニット
57 コネクタ手段
58 ダクト
59 作用先端
60 ダクト
61 ファイバー
62 加圧液用出口ポート
63 加圧ガス用出口ポート
64 照明手段
65 画像収集手段
66 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面ポンプモノリシック固体レーザー(1)であって、
長手軸線(L)を有するレーザー利得媒体(2)を含むレーザー共振器構造体(3)であって、直線状光路の共振キャビティを間に形成する端面(4)を備え、該端面(4)の少なくとも一方が、特に該端面上に溶着された少なくとも部分反射のレーザーミラー(4a、4b)を備え、前記レーザー利得媒体(2)が、ポンプ源(5)のポンプ光(5a)を受け取る側面(2a)を備え、前記ポンプ光(5a)がダイオードレーザー(5)によって発生せしめられる、レーザー共振器構造体(3)と、
前記レーザー利得媒体(2)と接触する接触面(6c)を備える伝導冷却体(6)と、
前記長手軸線(L)に対して前記側面(2a)の反対側に配置された反射器(7)と
を備え、
前記レーザー利得媒体(2)が低利得材料である、側面ポンプモノリシック固体レーザー(1)。
【請求項2】
前記レーザー利得媒体(2)が7.5mm2未満の断面積を有する、請求項1に記載の固体レーザー(1)。
【請求項3】
前記接触面(6c)が前記レーザー利得媒体(2)の長手軸線(L)に対して対称に配列される、請求項2に記載の固体レーザー(1)。
【請求項4】
前記伝導冷却体(6)が、前記レーザー利得媒体(2)と並んで配置され且つ前記側面(2a)の反対側に配置された冷却体キャビティ(6d)を備え、前記ポンプ光反射器(7)が前記冷却体キャビティ(6d)内に配置される、請求項3に記載の固体レーザー(1)。
【請求項5】
前記ダイオードレーザー(5)及び前記反射器(7)が、前記ポンプ源(5)と前記長手軸線(L)との間の光路の長さが前記長手軸線(L)と前記反射器(7)との間の光路の長さと同じ又はほぼ同じになるように、前記長手軸線(L)に対して該長手軸線(L)と前記ダイオードレーザー(5)及び前記反射器(7)の各々との間の距離(D1、D2)が等しくなるような態様で配置される、請求項4に記載の固体レーザー(1)。
【請求項6】
両方の端面(4)がレーザーミラー(4a、4b)を備え、該レーザーミラーの一方が、高反射レーザーミラー(4a)、特に99%〜100%の反射率を有する高反射レーザーミラー(4a)であり、他方のレーザーミラー(4b)が出力カプラである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項7】
前記レーザー共振器構造体(3)が1700nm〜3200nmの範囲内の波長を放射する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項8】
前記出力カプラ(4b)が92.5%から99%の範囲の反射率を有する、請求項7に記載の固体レーザー(1)。
【請求項9】
前記レーザー利得媒体(2)が、前記冷却体(6)内に配置されない自由端(2d)を有し、該自由端(2d)の長さが、前記長手軸線(L)の方向において、好ましくは約2mm、最も好ましくは約1mmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項10】
前記レーザー利得媒体(2)が、ネオジム、イッテルビウム、エルビウム、ツリウム、クロム及び/又はホルミウムドープを有する希土類ドープのYAG、YSGG又はYLF結晶ホストを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項11】
前記ダイオードレーザー(5)の波長が、該ダイオードレーザー(5)の主波長が前記レーザー利得媒体(2)の吸収ピーク領域に対してシフトするように選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項12】
前記ポンプ光(5a)の波長が前記レーザー利得媒体(2)の低吸収係数において選択される、請求項11に記載の固体レーザー(1)。
【請求項13】
前記伝導冷却体(6)が、前記レーザー利得媒体(2)に接触して該レーザー利得媒体(2)を保持する接触面(6c)を備え、且つ、金属、セラミックス又は結晶材料から成る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項14】
2つの接触面(6)を備え、該2つの接触面(6c)が前記レーザー利得媒体(2)の長手軸線(L)に対して対称に相互に対向して配置される、請求項13に記載の固体レーザー(1)。
【請求項15】
前記伝導冷却体(6)が、前記長手軸線(L)に対して同心に配置された外側管状部材(6b)を備え、前記レーザー利得媒体(2)の外面(2c)及び前記外側管状部材(6b)が冷却流体のための内部空間(6a)を画成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項16】
前記長手軸線(L)に対して円周方向に離間された少なくとも2つのポンプ源(5)を備え、さらに、前記長手軸線(L)に対して前記側面(2a)の反対側に配置された対応するポンプ光反射器(7)を備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項17】
レンズ(8a、8b)と、100μmから250μmの間の直径を有する光ファイバー(9)とを備え、前記レンズ(8a、8b)が当該固体レーザー(1)のレーザービーム(B)を前記光ファイバー(9)内へ集束させるように配置される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項18】
前記レーザー利得媒体(2)が円筒形又は楕円円筒形である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項19】
前記少なくとも部分反射のレーザーミラー(4a、4b)が前記レーザー利得媒体(3)の端面(4)上に溶着され、該端面(4)上に溶着された層が、0.9、好ましくは0.95、最も好ましくは0.99よりも大きな充填密度を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項20】
前記ポンプ源(5)が955〜985nmの間の波長を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項21】
前記ポンプ源(5)が760〜815nmの間の波長を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項22】
前記ポンプ源(5)が1600〜2050nmの間の波長を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項23】
前記ポンプ光(5a)が側面(2a)を通して前記レーザー利得媒体(2)内へ供給され、前記ポンプ光(5a)の約30〜70%好ましくは30%〜50%が出射ポンプ光(2b)として反対側の側面(2b)において前記レーザー利得媒体(2)から出射し、前記出射ポンプ光(5b)は、反射ポンプ光(5c)が前記反対側の側面(2b)において前記レーザー利得媒体(2)へ再び入射するように前記反射器(7)によって反射される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項24】
前記ポンプ源(5)が、前記長手軸線(L)に平行に配置されたレーザーダイオードアレイとして実現される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項25】
前記低利得材料が、Er:YAGの誘導放出断面積すなわち3.0×10-20cm2以下の誘導放出断面積を持つレーザー利得媒体である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項26】
少なくとも100Gの力に耐える、請求項1〜25のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項27】
当該レーザーのモノリシックな設計によって、レーザー高反射反射器(4a)が前記利得媒体(2)上に直接溶着され、出力カプラ(4b)が前記利得媒体(2)の反対側の端部上に直接溶着される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)。
【請求項28】
長手軸線(L)を有するレーザー利得媒体(2)を含むレーザー共振器構造体(3)を備える側面ポンプモノリシック固体レーザー(1)を作動する方法であって、
ポンプ光(5a)が側面(2a)を通して前記レーザー利得媒体(2)内へ供給され、前記ポンプ光(5a)の一部が出射ポンプ光(5b)として反対側の側面(2b)において前記レーザー利得媒体(2)から出射し、前記出射ポンプ光(5b)は、反射ポンプ光(5c)が前記反対側の側面(2b)において前記レーザー利得媒体(2)へ再び入射するように反射される、方法。
【請求項29】
前記レーザー利得媒体(2)が、該レーザー利得媒体(2)の長手軸線(L)に対して対称に冷却され、このため前記レーザー利得媒体(2)において前記長手軸線(L)に対して対称な熱分布を受ける、請求項22に記載の固体レーザー(1)を作動する方法。
【請求項30】
前記ポンプ光(5a)の主波長が前記レーザー利得媒体(2)の吸収ピーク領域に対してシフトされる、請求項22又は23に記載の固体レーザー(1)を作動する方法。
【請求項31】
生物組織を治療し又は切除するための請求項1〜21のいずれか一項に記載の固体レーザー(1)の使用。
【請求項32】
治療装置であって、
ハウジング(44)内に配置されてレーザービーム(21)を放射する固体レーザー(1)と、
入射レーザービームを導光素子(45)内に向ける光結合装置(46)と、
前記固体レーザー(1)を手持ち装置(50)に接続し且つ前記導光素子(45)を備える可撓ホース(49)と、
前記レーザービームを標的面へ向けるために前記導光素子(45)の終端部について出口ポート(53)を備える手持ち装置(50)と、
を備え、
前記固体レーザー(1)が請求項1〜31のいずれか一項に従って実現される、治療装置。
【請求項33】
前記ハウジング(44)が、高電流容量バッファを持つ電源を備える、請求項32に記載の治療装置。
【請求項34】
前記ハウジング(44)が、加圧ガス、特に正及び/または負の相対圧力を持つ加圧ガスを発生させる装置(47)を備える、請求項32又は33に記載の治療装置。
【請求項35】
前記ハウジング(44)が加圧液を発生させる装置を備える、請求項32〜34のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項36】
前記可撓ホース(49)が、液体媒体又は気体媒体を前記手持ち装置(50)へ搬送し及び/又は該手持ち装置(5)から搬送する少なくとも1つのダクト(51)を備える、請求項34又は35に記載の治療装置。
【請求項37】
前記ハウジング(44)が取外し可能なコネクタ手段(57)を備える、請求項32〜36のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項38】
前記手持ち装置(50)が取外し可能なコネクタ手段(57)を備える、請求項32〜37のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項39】
前記手持ち装置(50)がビーム形成ユニット及び/又はビーム偏向ユニットを備える、請求項32〜38のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項40】
前記手持ち装置(50)が、音響変換器、特に超音波変換器を備える、請求項32〜39のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項41】
前記手持ち装置(50)が導光素子分割ユニットを備える、請求項32〜40のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項42】
前記手持ち装置(50)が光学的画像化手段(65)を備える、請求項32〜41のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項43】
前記手持ち装置(50)が無線周波数伝送器を備える、請求項32〜42のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項44】
前記可撓ホース(49)が電源ケーブルを備える、請求項32〜43のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項45】
前記可撓ホース(50)が少なくとも1つのデータ伝送回線を備える、請求項32〜44のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項46】
前記導光素子(45)が単一のファイバー導光素子として実現される、請求項32〜45のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項47】
前記導光素子(45)が複数のファイバー導光素子として実現される、請求項32〜46のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項48】
前記出口ポート(53)が、前記ダクト(51)に接続される出口開口(62、63)を備える、請求項32〜47のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項49】
前記導光素子(45)の終端部が少なくとも部分的に前記出口開口(53)の周りに配置される、請求項32〜48のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項50】
前記出口開口(53)が少なくとも部分的に前記導光素子の終端部の周りに配置される、請求項30〜47のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項51】
レーザービーム(21)を放射する固体レーザー(1)であって、さらに冷却ユニット(29)を備える固体レーザー(1)と、
前記固体レーザー(1)を電気的に駆動する制御ユニット(32)と、
レーザービーム形成・偏向ユニット(24)と、
前記形成されたレーザービーム(26)を手持ち装置(20)から標的面(23)へ放射するコンタクト窓(25)であって、透明カバー(27)を備えるコンタクト窓(25)と、
前記固体レーザー(1)、前記ビーム形成・偏向ユニット(24)及び前記コンタクト窓(25)を含む光路(22)と
を持つ手持ち装置(20)と、
電源を備える卓上ユニットと、
前記卓上ユニットを前記手持ち装置に接続する可撓ホース(37)であって、さらに電源接続体を備える可撓ホース(37)と
を備える治療装置であって、
前記固体レーザー(1)が請求項1〜31のいずれか一項に従って実現され、前記冷却ユニット(29)がキャビティ(30)を備え、前記可撓ホース(37)が、前記冷却キャビティ(30)を前記卓上ユニットの冷却液循環システムに接続する少なくとも2本の冷却液搬送管(31)を備え、前記制御ユニット(32)が1つの高電流容量バッファ(33)を備える、治療装置。
【請求項52】
レーザービーム(1)を放射する固体レーザー(1)であって、さらに冷却ユニット(29)を備える固体レーザー(1)と、
前記固体レーザー(1)を電気的に駆動する制御ユニット(32)と、
レーザービーム形成・偏向ユニット(24)と、
前記形成されたレーザービーム(26)を手持ち装置(39)から標的面(23)へ放射するコンタクト窓(25)であって、透明カバー(27)を備えるコンタクト窓(25)と、
前記固体レーザー(1)、前記ビーム形成・偏向ユニット(1)及び前記コンタクト窓(25)を含む光路(22)と
を持つ手持ち装置(39)を備える治療装置であって、
前記固体レーザー(1)が請求項1〜31のいずれか一項に従って実現され、前記冷却ユニット(29)が固体冷却装置(40)として実現され、前記制御ユニット(32)が1つの高電流容量バッファ(33)を備え、前記手持ち装置(39)が電気エネルギー蓄積手段(41)を備える、治療装置。
【請求項53】
前記光路(22)が、シール要素及び/又は相互に嵌合する平滑な面を用いて周囲環境に対してシールされる、請求項51又は52に記載の治療装置。
【請求項54】
前記手持ち装置(20、39)が、少なくとも2つの高電流容量バッファ(33)と、該高電流容量バッファ(33)の1つを前記制御ユニット(32)に個別に接続する切り替えユニットとを備える、請求項51〜53のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項55】
前記手持ち装置(20、39)が、ディスプレイユニット及び入力装置を備えるユーザーインターフェイス(35、43)を備える、請求項51〜54のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項56】
前記手持ち装置(20、39)が画像収集ユニット及び画像分析ユニットを備える、請求項51〜55のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項57】
前記手持ち装置(20、39)が前記卓上ユニットから取外し可能である、請求項51〜56のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項58】
前記透明カバー(27)が前記手持ち装置(20、39)から取外し可能である、請求項51〜57のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項59】
前記固体冷却装置(40)が位相変化材料である、請求項52〜58のいずれか一項に記載の治療装置。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26a】
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【図26b】
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【図26c】
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【図26d】
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【公表番号】特表2012−530364(P2012−530364A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515388(P2012−515388)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003586
【国際公開番号】WO2010/145802
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507344874)パンテック バイオソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC BIOSOLUTIONS AG
【Fターム(参考)】