説明

偽造品検出方法、偽造品検出に用いられる識別タグ、偽造品検出装置、識別タグを備えるインクカートリッジ、および偽造品検出装置を用いる印刷装置

【課題】低コストで実施でき、かつ識別タグの偽造が困難である偽造品検出方法と、この偽造品検出に用いられる識別タグと、この偽造品検出に用いられる偽造品検出装置を提供する。
【解決手段】偽造品検出装置100の発光手段110が励起光Lを照射すると、識別タグ200の液晶性化合物202が偏光蛍光Pを放射する。偏光蛍光Pは、液晶性化合物202の分子の長軸方向の偏光成分のみを有する。偏光蛍光Pは、透過軸の方向が互いに異なる複数の偏光板121および122に入射する。偏光板121を透過した透過光T1は比較的強い光であるが、偏光板122を透過した透過光T2は比較的弱い光となる。複数の光検出手段がこれらを検出し、制御手段140はそれぞれの光の強度に応じて識別タグ200の真贋を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偽造品検出方法、偽造品検出に用いられる識別タグ、偽造品検出装置、識別タグを備えるインクカートリッジ、および偽造品検出装置を用いる印刷装置に関し、とくに偏光蛍光を利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の偽造品を検出する方法のひとつとして、識別タグを利用する方法が知られている。識別タグとしては、ICチップや特殊な印刷を有するタグ等が用いられ、物品に取り付けられた識別タグを検査してその物品が真正品であるか偽造品であるかを判定する。
ICチップを用いる場合、ICチップに外部の偽造品検出装置との通信機能を持たせておき、ICチップが特定のデータを偽造品検出装置に対して送信し、偽造品検出装置がこれに応じて真贋判定を行う。
特殊な図形や画像等を印刷したタグを用いる場合、偽造品検出装置が特殊な印刷を読み取って真贋判定を行うか、または肉眼で特殊な印刷を検査して真贋判定を行う。
【0003】
また、特定の偏光成分のみを含む偏光蛍光を放射する物質として、液晶性化合物の例が知られている。このような液晶性化合物の製造方法および利用例は、たとえば特許文献1に開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−324314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の偽造品検出方法では、実施に高コストを要したり、または識別タグの偽造が容易であったりという問題点があった。
たとえば、ICチップを用いた識別タグでは、ICチップに含まれる電子回路の製造のために高コストが要求され、また、製造過程で発生する廃棄物等のため環境保護も困難である。また、特殊な印刷を用いる識別タグでは、印刷技術を模倣することによって容易に識別タグの偽造が可能である。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、低コストで実施でき、かつ識別タグの偽造が困難である偽造品検出方法と、この偽造品検出に用いられる識別タグと、この偽造品検出に用いられる偽造品検出装置と、この識別タグを備えるインクカートリッジと、この偽造品検出装置を用いる印刷装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、この発明に係る偽造品検出方法は、偏光蛍光を放射する材料に励起光を照射して偏光蛍光を放射させるステップと、偏光蛍光を、透過軸の方向が互いに異なる複数の偏光板に入射させるステップとを含む。
偏光蛍光を放射する材料は、液晶性化合物であってもよい。
液晶性化合物が下記一般式(1e')で表される長い直線的共役部分を持つ分子構造を持つ化合物であってもよい。
【化1】

また、この発明に係る識別タグは、偽造品検出に用いられる識別タグであって、励起光の照射を受けて偏光蛍光を放射する材料を含む。
さらに、この発明に係る偽造品検出装置は、外部の識別タグに励起光を照射する発光手段と、透過軸の方向が互いに異なる複数の偏光板であって、励起光の照射に応じて識別タグから放射される偏光蛍光を受ける、複数の偏光板とを備える。
【0008】
識別タグは、第1の方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する第1の蛍光領域と、第2の方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する第2の蛍光領域とを備えてもよい。
識別タグは格子状に配列された複数の領域を備え、複数の領域の一部は第1の蛍光領域であり、複数の領域の他の一部は第2の蛍光領域であってもよい。
偽造品検出装置は、複数の偏光板のそれぞれを透過した透過光を検出する、複数の光検出手段と、複数の光検出手段による検出結果を所定のデータと比較し、比較結果に応じて、偽造品を検出したか否かを判定する制御手段とを備えてもよい。
偽造品検出装置において、光検出手段による検出結果および所定のデータは、それぞれ光の強度を表す情報を含むか、それぞれ光の波長を表す情報を含むか、またはそれぞれ光のパターンを表す情報を含んでもよい。
【0009】
また、この発明に係るインクカートリッジは、印刷装置にインクを供給するためのインクカートリッジであって、上述の識別タグを備える。
さらに、この発明に係る印刷装置は、インクの供給のためにインクカートリッジを用いる印刷装置であって、上述の偽造品検出装置を用いてインクカートリッジの偽造品を検出する。
また、本発明に係る印刷装置は、少なくとも前記識別タグと、該識別タグで偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部位を有するインクカートリッジを備え、前記識別タグで用いた光源を用いて前記透明部位に光を照射し、インクカートリッジ内を透過した透過光を検出することにより、インクカートリッジのインク残量を検出する。
また、本発明に係る印刷装置は、少なくとも上述の識別タグと、該識別タグで偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部位を有するインクカートリッジを備え、前記識別タグで用いた光源を用いて前記透明部位に光を照射し、透明部位からの反射光を検出することにより、インクカートリッジのインク残量を検出する。
【発明の効果】
【0010】
この発明の偽造品検出方法、識別タグ、偽造品検出装置、インクカートリッジ、および印刷装置によれば、偏光蛍光を放射する材料によって真贋判定を行うため、識別タグに高価な電子回路を要しない。また、特に偏光蛍光を放射するという特殊な性質を備える液晶性化合物を利用できるため、識別タグの偽造が困難である。このように、この発明の偽造品検出方法、識別タグ、および偽造品検出装置は、低コストで実施でき、かつ識別タグの偽造を困難とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る偽造品検出方法の概要を示す。本方法は、偽造品検出装置100を用いて識別タグ200を検査し、これによって識別タグ200が付された物品が真正品であるか偽造品であるかを判定するものである。偽造品検出装置100はたとえばインクカートリッジを用いる印刷装置に備えられ、識別タグ200はたとえばこの印刷装置にインクを供給するためのインクカートリッジに取り付けられる。すなわち、この印刷装置は、偽造品検出装置100を用いてインクカートリッジの偽造品を検出するものである。なお、インクカートリッジとは、たとえば、印刷装置による印刷に使用される塗料を収容する容器または装置を意味する。
【0012】
識別タグ200には基板201が取り付けられ、基板201には蛍光領域210が形成される。蛍光領域210には、偏光蛍光を放射する材料、例えば液晶性化合物202が結晶化したものが固定されている。この液晶性化合物202は、長い直線的共役部分を持つ分子構造、たとえば次の一般式(1a)〜(1g)に示す分子構造を有するものであることが特に好ましい。
【0013】
【化2】

前記一般式(1a)〜(1g)中のR1又はR2の前記アルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく用いられる。アルキル基の具体例としては、例えば、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。特に、アルキル基が一般式CH3−(CH2x−CH(CH3)−(CH2y−CH2−(式中、xは0〜7の整数、yは0〜7の整数を示す)で表される分岐状のアルキル基の場合は、各種溶媒への溶解性を向上させることができるので好ましい。
前記一般式(1a)〜(1g)中のR1又はR2の前記アルコキシ基としては、一般式Cn2n+1O−で表される式中のnが3〜20の整数であることが好ましい。特に、アルコキシ基が一般式CH3−(CH2x−CH(CH3)−(CH2y−CH2−O−(式中、xは0〜7の整数、yは0〜7の整数を示す)で表される分岐状のアルコキシ基の場合は、各種溶媒への溶解性を向上させることができるので好ましい。
また、R1とR2の基の組合せがアルキル基とアルコキシ基の場合において特に各種溶媒への溶解性を更に向上させることができる。
また、前記一般式(1a)〜(1g)中のAとしては、下記式(3a)〜(3e)の基が挙げられる。
【化3】

また、前記例示の液晶性化合物は、シス体、トランス体あるいはその混合物であってもよく、不飽和基を有するものは高分子化されていてもよい。
また、前記液晶性化合物の他、用いることができる偏光蛍光を放射する材料としては、例えば、共役ポリマーまたはその誘導体が挙げられる。共役ポリマー及びその誘導体としては、例えばポリ(フェニレンビニレン)(「PPV」)、ポリ(2−メトキシ−5(2'−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン)(「MEH−PPV」)、PPV誘導体(例えばジ−アルコキシまたはジ−アルキル誘導体)、ポリフルオレン、或いはポリフルオレンセグレント、PPV、MEH−PPV又はPPV誘導体のコポリマーを含むもの等が挙げられる。前記ポリフルオレンセグメントを含む高分子化合物としては、例えばフルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−フェノチアジン共重合体が挙げられる。
本発明において、これら偏光蛍光を放射する材料の中、特に下記一般式(1e')で表さる長い直線的共役部分を持つ分子構造を持つ化合物が耐久性の観点から特に好ましい。
【化4】

これらの化合物は1種又は2種以上で用いられ、該化合物の製造方法の一例を後述するが、これはどのような方法で製造されてもよい。
【0014】
以下、偏光蛍光を放射する材料として液晶性化合物を用いた実施形態について説明する。
液晶性化合物202は、特定の波長を有する光の照射を受けると、これに応じて分子の長軸方向の偏光成分のみを有する偏光蛍光を放射する性質を有する。蛍光領域210にはこの液晶性化合物202が互いに平行に配列されている。たとえば図1は液晶性化合物202の分子がそれぞれの長軸を垂直方向に向けて配列された状態を示す。なお、説明の便宜上、分子を模式的に図示しているが、これは必ずしも実際の分子の構造およびサイズを表すものではない。以下の図についても同様である。
なお、この蛍光領域210の製造方法については後述する。
【0015】
偽造品検出装置100は、識別タグ200に励起光Lを放射するための発光手段110を含む。また、偽造品検出装置100は、液晶性化合物202から放射される偏光蛍光Pを受ける複数の偏光板、すなわち第1の偏光板121および第2の偏光板122を含む。第1の偏光板121および第2の偏光板122は、それぞれの透過軸の方向が互いに異なる方向となるように配置される。たとえば図1では、第1の偏光板121の透過軸は液晶性化合物202の分子の長軸に平行に、すなわち垂直方向に向けられる。また、第2の偏光板122の透過軸は液晶性化合物202の分子の長軸と直交するように、すなわち水平方向に向けられる。このように、第1の偏光板121および第2の偏光板122の透過軸は互いに直交する。
【0016】
さらに、偽造品検出装置100は、複数の光検出手段、すなわち第1の光検出手段131および第2の光検出手段132を含む。第1の光検出手段131は第1の偏光板121を透過した第1の透過光T1の強度を検出し、第2の光検出手段132は第2の偏光板122を透過した第2の透過光T2の強度を検出する。第1の光検出手段131および第2の光検出手段132は、たとえばフォトダイオードであり、それぞれ第1の透過光T1および第2の透過光T2の強度に応じた電流を発生させる。
【0017】
発光手段110、第1の光検出手段131、および第2の光検出手段132は、偽造品検出装置100の動作を制御する制御手段140に接続されている。この制御手段140は、たとえば印刷装置を制御する制御手段であるが、これは印刷装置を制御する制御手段とは別に設けられるものであってもよい。制御手段140は、発光手段110の発光を制御するとともに、第1の光検出手段131および第2の光検出手段132による検出結果を受信する。
【0018】
また、制御手段140は、検出された第1の透過光T1の強度および第2の透過光T2の強度をそれぞれ評価するための、第1の閾値および第2の閾値を記憶する。第1の閾値は、識別タグ200を真正品であると判定するための第1の透過光T1の強度の下限を表し、第2の閾値は、識別タグ200を真正品であると判定するための第2の透過光T2の強度の上限を表す。これらの閾値は、実験等によって適宜決定されるものであるが、一例として、識別タグから放射される蛍光が偏光ではない場合の検出結果を基準値として決定され、第1の閾値は基準値の70%であり、第2の閾値は基準値の30%である。
【0019】
制御手段140は、第1の透過光T1の強度が第1の閾値以上であり、かつ第2の透過光T2の強度が第2の閾値以下である場合には、識別タグおよびその識別タグが取り付けられたインクカートリッジは真正品であると判定する機能を有する。逆に、第1の透過光T1の強度が第1の閾値未満であるか、または第2の透過光T2の強度が第2の閾値を超える場合には、識別タグおよびその識別タグが取り付けられたインクカートリッジは偽造品であると判定する機能を有する。
【0020】
以上のように構成される偽造品検出装置100を用いた偽造品検出方法を、偽造品検出装置100の動作とともに以下に説明する。
最初に、印刷装置の使用者が、印刷装置にインクカートリッジを取り付ける。ここで、印刷装置に備えられる偽造品検出装置100の形状、インクカートリッジの形状、およびこれらの位置関係は、励起光Lが識別タグ200の蛍光領域210に向けて照射されるように、かつ、第1の偏光板121および第2の偏光板122がそれぞれ偏光蛍光Pを受けるように、設計されているものとする。また、印刷装置の内部は外部から遮蔽されており、識別タグ200、第1の光検出手段131、第2の光検出手段132の周囲に外部からの光は侵入しない。
【0021】
(ケース1A)インクカートリッジが真正品である場合
インクカートリッジが真正品である場合について説明する。真正品のインクカートリッジには識別タグ200が取り付けられている。
印刷装置の制御手段は、インクカートリッジが取り付けられたことを検出すると、偽造品検出装置100の制御手段140としての動作を開始する。
【0022】
まず、制御手段140が発光手段110を発光させることにより、識別タグ200の蛍光領域210に向けて励起光Lを照射する。これに応じて、蛍光領域210に含まれる液晶性化合物202が偏光蛍光Pを放射する。ここで、液晶性化合物202の分子の長軸は垂直方向に向いているので、偏光蛍光Pは垂直方向の偏光成分のみを有する。
【0023】
偏光蛍光Pの一部は第1の偏光板121に入射する。第1の偏光板121の透過軸は垂直方向であり、偏光蛍光Pの偏光方向と一致するので、入射した偏光蛍光Pの大部分は第1の偏光板121を透過する。このように第1の透過光T1は比較的強い光となり、その強度は第1の閾値以上(基準値の70%以上)となる。
偏光蛍光Pの他の一部は第2の偏光板122に入射する。第2の偏光板122の透過軸は水平方向であり、偏光蛍光Pの偏光方向と直交するので、偏光蛍光Pは第2の偏光板122をまったく透過しないか、またはほとんど透過しない。このように第2の透過光T2は存在しないか、または比較的弱い光となり、その強度は第2の閾値以下(基準値の30%以下)となる。
【0024】
第1の光検出手段131および第2の光検出手段132は、それぞれ第1の透過光T1および第2の透過光T2の強度を検出し、検出結果を制御手段140に出力する。ここで、第1の透過光T1の強度は第1の閾値以上であり、第2の透過光T2の強度は第2の閾値以下であるので、制御手段140は識別タグ200および識別タグ200が取り付けられたインクカートリッジを真正品であると判定する。
印刷装置は、この判定に基づいて、通常の印刷処理を開始する。また、印刷装置は、インクカートリッジが真正品であると判定されたことを使用者に対して表示してもよい。
【0025】
(ケース1B)インクカートリッジが偽造品である場合
インクカートリッジが真正品ではない、すなわち偽造品である場合について説明する。偽造品のインクカートリッジには、偏光ではない蛍光を発する偽造識別タグが取り付けられているものとする。
印刷装置の制御手段は、インクカートリッジが取り付けられたことを検出すると、偽造品検出装置100の制御手段140としての動作を開始する。
【0026】
まず、制御手段140が発光手段110を発光させることにより、偽造識別タグに向けて励起光Lを照射する。これに応じて偽造識別タグが蛍光を放射する。この蛍光は非偏光であるので、その大部分は第1の偏光板121および第2の偏光板122を透過する。このように、第1の透過光T1および第2の透過光T2はほぼ等しい強度を有する比較的強い光となり、その強度は第1の閾値以上(基準値の70%以上)となる。
【0027】
第1の光検出手段131および第2の光検出手段132は、それぞれ第1の透過光T1および第2の透過光T2の強度を検出し、検出結果を制御手段140に出力する。ここで、第2の透過光T2の強度が第2の閾値を超えている(基準値の30%を超えている)ので、制御手段140はこの偽造識別タグおよびインクカートリッジを偽造品であると判定する。
印刷装置は、この判定に基づいて、インクカートリッジが偽造品であると判定されたことを使用者に対して表示するとともに、印刷処理を停止する。
【0028】
以上のケースに説明されるようにして、偽造品検出装置100は、インクカートリッジの偽造品を検出することができる。なお、ここでは非偏光の蛍光を放射する偽造識別タグの例で説明したが、蛍光を放射せず単に励起光Lを反射するだけの偽造識別タグや、励起光Lを反射しない偽造識別タグであっても、第1の透過光T1および第2の透過光T2の強度はほぼ等しくなるので、「第1の透過光T1の強度が第1の閾値以上であり、かつ第2の透過光T2の強度が第2の閾値以下である」という条件を満たすことはない。このように、様々な偽造品を確実に検出することができる。
【0029】
実施の形態1に係る偽造品検出方法、識別タグ200、識別タグ200を備えるインクカートリッジ、偽造品検出装置100、および偽造品検出装置100を用いる印刷装置によれば、液晶性化合物202によって真贋判定を行うため、識別タグ200が電子回路等の高価な構成を備える必要がなく、またこのため環境にも優しい。また、偏光蛍光を放射するという特殊な性質を備える液晶性化合物202を利用するため、識別タグ200の偽造が困難である。このように、実施の形態1に係る偽造品検出方法、識別タグ200、および偽造品検出装置100は、低コストで実施でき、環境に優しく、かつ識別タグの偽造を困難とする。
【0030】
〈実施の形態1における液晶性化合物の製造方法〉
例えば、本発明で好ましい化合物として用いられる下記一般式(4)の
【化5】

(ただし,式中、n=10とn=15である。)液晶性化合物202は、次の化学式に示す反応を利用して、以下に説明する方法で製造される。
【0031】
【化6】

温度計、コンデンサーを備えた750cc四つ口フラスコを用意した。このフラスコにテトラエチルp−キシリレンジホスホネート(化合物B,40.3mmol)、ベンズアルデヒド(化合物A,19.9mmol)を入れ、THF200ccに溶解させた。次いで、カリウムtert−ブトキシド(24.4mmol)を1時間置きに3回に分けて添加した。次に20時間攪拌熟成し、スラリーを得た後、得られたスラリーをろ過して沈殿物を除去した。次に、ろ液を濃縮し、得られた濃縮物にトルエン200cc、1%塩酸100gを加え、分液洗浄し、有機層を濃縮して、粗生成物を得た。次いで、得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製して目的とするモノホスホネート(化合物C)を得た。
【0032】
温度計、コンデンサーを備えた750cc四つ口フラスコを用意した。このフラスコに前記モノホスホネート(化合物C,10.6mmol)、4−シアノベンズアルデヒド(化合物D,11.6mmol)をいれ、THF300ccに溶解させた。次いで、カリウムtert−ブトキシド(12.7mmol)を30分置きに3回に分けて添加した。次に14時間攪拌熟成し、スラリーを得た後、スラリーをそのまま濃縮し、濃縮物にMDC300cc、次に1%塩酸を加え、分液洗浄し、有機層を濃縮して、粗生成物を得た。次いで、得られた粗生成物をトルエンに溶解し、更にメタノールを添加して再結晶を行ってスチリル誘導体(化合物E)を得た。このスチリル誘導体(化合物E)が液晶性化合物202として使用される。
【0033】
なお、実施の形態1ではRはノルマルのアルコキシ基C2n+1O(ただしn=10またはn=15)であるが、nの値が異なる分子(たとえばn=7の分子やn=12の分子)も出発物質を適宜変更した方法で製造することができる。また、Rはアルキル基であってもよく、たとえばC2n+1(ただしn=7,10,12,15のいずれか)であっても出発物質を適宜変更した方法で製造することができる。
【0034】
〈液晶性化合物の蛍光作用に関する実験例〉
図2〜図5に、液晶性化合物202として用いられ得る分子の蛍光スペクトルの測定結果を示す。
図2および図3は、次の分子式:
【0035】
【化7】

を持つ液晶性化合物の蛍光作用を表すグラフである。図2は液晶性化合物に照射した励起光のスペクトルを表し、図3はこれに応じて放射される蛍光のスペクトルを表す。いずれも、横軸が光の波長を表し、縦軸が光の強度を表す。この例では、波長372.8nmにおいて強度の最大値346.3を有する励起光に応じて、波長451.4nmにおいて強度の最大値341.5を有する蛍光が放射されている。
図4および図5は、次の分子式:
【0036】
【化8】

を持つ液晶性化合物の蛍光作用を表すグラフである。図4は液晶性化合物に照射した励起光のスペクトルを表し、図5はこれに応じて放射される蛍光のスペクトルを表す。いずれも、横軸が光の波長を表し、縦軸が光の強度を表す。この例では、波長378.0nmにおいて強度の最大値522.6を有する励起光に応じて、波長470.4nmにおいて強度の最大値521.6を有する蛍光が放射されている。
【0037】
〈実施の形態1における蛍光領域の製造方法〉
蛍光領域210には、上述の液晶性化合物202が互いに平行に配列されている。この蛍光領域210は、ラビング配向、ノンラビング配向等の公知のどのような技術を用いて製造されてもよいが、具体例を挙げれば以下の(i)〜(iiii)のいずれかの方法を用いて製造することができる。
(製造方法i)配向膜による製造方法
ラビング等で分子配向方向を決めたポリイミド、ポリビニルアルコール等の液晶配向膜上に液晶性化合物202を塗り、次に流動性の高い液晶状態となる温度以上に昇温し液晶性化合物202の液晶分子配列を形成させ、蛍光領域210を形成する。
(製造方法ii)斜方真空蒸着による製造方法
図6は、斜方真空蒸着による蛍光領域210の製造方法を示す。真空中に液晶性化合物202のプールを準備し(202a)、その上方に基板201を傾けて配置する。液晶性化合物202を蒸発させると、その長軸を垂直方向にして真空中を上方に移動し(202b)、基板201に付着して固定化され蛍光領域210を形成する。
【0038】
(製造方法iii)磁場配行による製造方法
液晶性化合物202の分子は、一端にアルコキシ基を有し他端にシアノ基を有するので両端の電子吸引力が異なり、分子全体として磁化率異方性を示す。この方法では磁化率異方性を利用する。
図7は、磁場配行による蛍光領域210の製造方法を示す。基板201上に液晶性化合物202を塗布し、これを加熱するとともに一方向に磁場を発生させる。ここで、加熱は液晶性化合物202が液晶状態となる温度、たとえば200〜250℃になされる。磁場は図7の矢印Aの向きとする。液晶性化合物202の分子は上述のように磁化率異方性を有するので、液晶状態となった分子はその長軸が磁場の向きAと平行になるよう整列する。
【0039】
その後基板201を室温まで冷却して液晶性化合物202を結晶化させ、これによって固定化して蛍光領域210を形成する。
ここで、上述のように液晶性化合物202はアルコキシ基の長さが異なる複数種類の分子を含むので、単一種類の分子を用いる場合と比較して、より低温域まで液晶状態を維持する。すなわち、分子の配列を乱す要素となる分子運動がより小さくなる状態まで液晶状態を維持する。たとえば実施の形態1ではn=10である分子とn=15である分子とを含むが、この場合は120℃付近まで液晶状態である。このため、液晶性化合物を単一の分子から構成する場合と比較して、長軸を磁場の向きAと平行にして結晶化する分子の割合が高まり、分子がより整列しやすい。すなわち、図1の偏光蛍光Pを、より理想的な偏光とすることができる。
【0040】
また、上述のように液晶性化合物202はアルコキシ基が比較的長い分子からなり、たとえば実施の形態1ではn=10およびn=15である。このため、アルコキシ基どうしの間に働く分子間力が大きいので、アルコキシ基が短い分子よりも整列しやすい。すなわち、図1の偏光蛍光Pを、より理想的な偏光とすることができる。
【0041】
(製造方法iiii)電場配行による製造方法
液晶性化合物202の分子は、上述のように両端の電子吸引力が異なり、分子全体として電気的異方性を示す。この方法では電気的異方性を利用する。
上記(iii)の磁場配行による製造方法(図7)と同様にして、基板201上に液晶性化合物202を塗布し、これを200〜250℃に加熱するとともに矢印Aの向きに電場を発生させる。液晶性化合物202の分子は上述のように電気的異方性を有するので、液晶状態となった分子はその長軸が電場の向きAと平行になるよう整列する。
【0042】
その後基板201を室温まで冷却して液晶性化合物202を固定化し、蛍光領域210を形成する。ここで、上記(iii)と同様に、液晶性化合物202はアルコキシ基の長さが異なる複数種類の分子を含み、またアルコキシ基が比較的長い分子からなるので、分子がより一様に整列し、図1の偏光蛍光Pをより理想的な偏光とすることができる。
【0043】
以上の(i)〜(iiii)のような製造方法によって蛍光領域210および識別タグ200を製造することができる。
ここで、従来の偽造品検出方法には、ICチップを含む識別タグを使用するものや、特定のマーク等が印刷された識別タグを使用するもの等がある。しかしながら、ICチップは多数の半導体素子を含むので製造が困難かつ高コストとなり、マーク等の印刷によるものは偽造が比較的簡単である。本発明の実施の形態1に係る識別タグ200は、上述の(i)〜(iiii)に説明するように比較的低コストで製造でき、かつ特殊な材料を要するので偽造が困難である。
なお、偏光蛍光を放射する材料として高分子系のものを用いる場合には、熱処理を行いながら延伸処理するか、或いは流動性のある状態で該化合物を一定方向に塗ったり、或いは擦る等の処理を行うことにより、発光構造部分の長軸方向を並べ偏光蛍光を発光させることができる。
【0044】
〈実施の形態1に対する変形例〉
上述の実施の形態1では、第1の偏光板121の透過軸は垂直方向に向けられ、第2の偏光板122の透過軸は水平方向に向けられる。変形例として、透過軸が互いに直交する方向であれば垂直および水平以外の方向に向けられてもよい。また、透過軸は互いに直交せずともよく、第1の光検出手段131および第2の光検出手段132が強度の差を検出し得る角度であればどのような角度をなしてもよい。
【0045】
実施の形態1では、液晶性化合物202におけるnの値は10および15であるが、偏光蛍光を放射するものであれば、nはいかなる値をとってもよい。たとえばn≧7である任意の値であってもよい。また、nの値の組合せは10および15に限らず、たとえばn=7の分子とn=12の分子とを含むものであってもよい。
また、液晶性化合物202は次の分子式のような構造を有する分子を含んでもよい。
【0046】
【化9】

ただし両端のC2n+1Oはノルマルのアルコキシ基である。
【0047】
実施の形態1では、第1の光検出手段131および第2の光検出手段132は、光起電力型の光センサであるフォトダイオードであるが、これは光を他の信号に変換し得るものであれば他の装置であってもよい。たとえば他の光起電力型光センサであるフォトトランジスタ等であってもよい。また、フォトレジスタ等の光導電型光センサであってもよく、光電管や光電子倍増管等の光電子放出型光センサであってもよい。さらに、これらを組み合わせ又は集積した回路であってもよい。
【0048】
実施の形態1では、光検出手段は光の波長を検出するものであってもよく、たとえば特定の波長の光を検出するものであってもよい。この場合、制御手段140は、波長を基準として第1の透過光T1および第2の透過光T2を評価してもよい。たとえば、第1の透過光T1および第2の透過光T2に、液晶性化合物202が放射する蛍光の波長が含まれるか否かを基準として、インクカートリッジが真正品であるか否かを判定してもよい。
さらに、光検出手段は分光器であってもよく、制御手段140は、透過光のスペクトルにおいて、励起光Lの波長、液晶性化合物202が放射する蛍光の波長、およびその他の波長の分布を測定し、この測定結果に基づいて判定してもよい。
【0049】
実施の形態1では、偽造品検出装置100はインクカートリッジの偽造品を検出するものであるが、これは他の物品の偽造品を検出するものであってもよい。たとえば、識別タグ200または蛍光領域210をクレジットカード等のカードに設け、偽造品検出装置100を用いてカードの偽造品を検出してもよい。また、蛍光領域210を紙幣に設け、偽造品検出装置100を用いて偽造紙幣を検出してもよい。
これらの場合において、偽造品検出装置100は第1の光検出手段131および第2の光検出手段132を含まないものであってもよい。その場合は、第1の透過光T1および第2の透過光T2を肉眼によって確認することを想定して偽造品検出装置100が設計されてもよい。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では、液晶性化合物202は識別タグ200上に単一の方向に沿って配列される。実施の形態2は、斜方真空蒸着を複数回行って、液晶性化合物202の配列の方向を複数とするものである。以下、実施の形態1との相違点を説明する。
図8は、実施の形態2に係る偽造品検出方法の概要を示す。図8において、図1と同一の参照符号は実施の形態1と同一の構成要素を示す。本方法は、印刷装置である偽造品検出装置300を用いて、インクカートリッジに取り付けられた識別タグ400を検査し、インクカートリッジの偽造品を検出するものである。
【0051】
識別タグ400には基板401が取り付けられ、基板401上には第1の蛍光領域410および第2の蛍光領域420が形成されている。第1の蛍光領域410および第2の蛍光領域420には、液晶性化合物202の分子が平行に配列されて結晶化され、固定されている。ここで、第1の蛍光領域410と第2の蛍光領域420とでは、液晶性化合物202の分子の配列方向が異なる。たとえば図8では、第1の蛍光領域410では分子の長軸が垂直方向に沿っており、第2の蛍光領域420では分子の長軸が水平方向に沿っている。なお、図8および後述の図9〜12において、分子の長軸の方向をそれぞれの領域内に表された平行線によって表すものとする。
このような構成により、第1の蛍光領域410は第1の方向成分すなわち垂直方向の成分を含む偏光蛍光を放射し、第2の蛍光領域420は第2の方向成分すなわち水平方向の成分を含む偏光蛍光を放射する。また、第1の蛍光領域410と第2の蛍光領域420に発光蛍光の極大波長の異なる材料をそれぞれ使用することで、発光蛍光波長の違いによる識別の機能を更に加えることができる。
【0052】
図9は、基板401に第1の蛍光領域410および第2の蛍光領域420を形成する方法を示す。
まず図9(a)に示すように、基板401に1回目の斜方真空蒸着を行う。この際、開口部451aを有する遮蔽部材451を基板401に取り付けた状態で処理を行い、基板401上で開口部451aに対応する領域にのみ液晶性化合物202が蒸着されるようにする。このようにして、開口部451aと同一のパターンを持つ第1の蛍光領域410が形成される。
【0053】
ここで、基板401を、基板401がなす平面内で90°回転させる。その後、図9(b)に示すように、基板401に2回目の斜方真空蒸着を行う。この際、開口部452aを有する遮蔽部材452を基板401に取り付けた状態で処理を行い、基板401上で開口部452aに対応する領域にのみ液晶性化合物202が蒸着されるようにする。このようにして、開口部452aと同一のパターンを持つ第2の蛍光領域420が形成される。
なお、説明の便宜上、図9(a)(b)では基板と遮蔽部材とを離隔して示しているが、これらは実際には重ねて配置される。
【0054】
図8において、第1の偏光板121および第2の偏光板122は図1に示すものと同一である。識別タグ400から放射される偏光蛍光P’の一部は第1の偏光板121に入射し、第1の偏光板121から第1の透過光T3が透過する。また、偏光蛍光P’の他の一部は第2の偏光板122に入射し、第2の偏光板122から第2の透過光T4が透過する。
【0055】
偽造品検出装置300は、第1の光検出手段331および第2の光検出手段332を含む。第1の光検出手段331は第1の透過光T3のパターンを検出し、第2の光検出手段332は第2の透過光T2のパターンを検出する。ここで、透過光のパターンとは、透過光が形成する像またはその形状を意味する。第1の光検出手段331および第2の光検出手段332は、たとえばCCDカメラであり、それぞれ第1の透過光T3および第2の透過光T4が形成する画像すなわちパターンを表す信号を出力する。
【0056】
制御手段340は、検出された第1の透過光T3のパターンおよび第2の透過光T4のパターンを受信する機能と、受信した画像のパターンを評価する機能とを有する。パターンの評価はたとえばパターンマッチング処理によって行われ、このパターンマッチング処理は、受信したパターンの各画素の輝度と、評価基準となるテンプレートにおいて対応する各画素の輝度との比較に基づいて行われ、これによって、受信したパターンとテンプレートとが一致するか否かが判定される。また、制御手段340は、第1の透過光T3のパターンを評価するための第1のテンプレートと、第2の透過光T4のパターンを評価するための第2のテンプレートとを記憶する。これらのテンプレートは蛍光領域を形成する際の遮蔽部材の形状に対応して決定されるものであり、第1のテンプレートは図9(a)の開口部451aを表し、第2のテンプレートは図9(b)の開口部452aを表す。また、これらのテンプレートは、実験等によって当業者が適宜決定するものであってもよい。
【0057】
制御手段340は、第1の透過光T3のパターンが第1のテンプレートと一致し、かつ第2の透過光T4のパターンが第2のテンプレートと一致する場合には、識別タグおよびその識別タグが取り付けられたインクカートリッジは真正品であると判定する。逆に、いずれか一方でも一致しない場合には、識別タグおよびその識別タグが取り付けられたインクカートリッジは偽造品であると判定する。
【0058】
以上のように構成される偽造品検出装置300を用いた偽造品検出方法を、偽造品検出装置300の動作とともに以下に説明する。最初に、印刷装置の使用者が、実施の形態1と同様にして印刷装置にインクカートリッジを取り付ける。
【0059】
(ケース2A)インクカートリッジが真正品である場合
インクカートリッジが真正品である場合について説明する。真正品のインクカートリッジには識別タグ400が取り付けられている。
インクカートリッジが印刷装置に取り付けられると、実施の形態1と同様にして発光手段110から励起光Lが照射され、基板401に固定された液晶性化合物202が偏光蛍光P’を放射する。ここで、液晶性化合物202は分子の長軸方向の偏光成分のみを有する偏光蛍光を放射するので、偏光蛍光P’は第1の蛍光領域410と同一のパターンを持つ垂直方向の偏光成分と、第2の蛍光領域420と同一のパターンを持つ水平方向の偏光成分とを含む。
【0060】
偏光蛍光P’のうち、第1の蛍光領域410と同一のパターンを持つ垂直方向の偏光成分のみが第1の偏光板121を透過し、第1の透過光T3となる。同様に、第2の蛍光領域420と同一のパターンを持つ水平方向の偏光成分のみが第2の偏光板122を透過し、第1の透過光T4となる。
これらのパターンはそれぞれ第1の光検出手段331および第2の光検出手段332によって検出され、制御手段340に出力される。ここで、第1の透過光T3のパターンは第1のテンプレートと一致し、かつ第2の透過光T4のパターンは第2のテンプレートと一致するので、制御手段340は識別タグ400および識別タグ400が取り付けられたインクカートリッジを真正品であると判定する。
【0061】
(ケース2B)インクカートリッジが偽造品である場合
インクカートリッジが偽造品である場合について説明する。偽造品のインクカートリッジには、偏光ではない蛍光を発する蛍光領域が、図8の第1の蛍光領域410および第2の蛍光領域420を合わせた形状に形成されているものとする。
【0062】
励起光Lが照射され、偽造識別タグが蛍光を放射する。この蛍光は非偏光であるので第1の偏光板321および第2の偏光板322を同様に透過し、第1の透過光T3および第2の透過光T4はほぼ等しいパターンを有する。
第1の光検出手段331および第2の光検出手段332は、それぞれ第1の透過光T3および第2の透過光T4のパターンを検出し、検出結果を制御手段340に出力する。いずれのパターンも対応するテンプレートと一致しないので、制御手段340はこの偽造識別タグおよびインクカートリッジを偽造品であると判定する。
以上のケースに説明されるようにして、偽造品検出装置300は、インクカートリッジの偽造品を検出することができる。
【0063】
実施の形態2に係る偽造品検出方法、識別タグ400、識別タグ400を備えるインクカートリッジ、偽造品検出装置300、および偽造品検出装置300を用いる印刷装置によれば、実施の形態1と同様に、液晶性化合物202によって真贋判定を行うため、識別タグ400が電子回路等の高価な構成を備える必要がなく、またこのため環境にも優しい。また、偏光蛍光を放射するという特殊な性質を備える液晶性化合物202を利用するため、識別タグ400の偽造が困難である。さらに、識別タグ400は互いに異なる方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する複数の領域を備えるので、識別タグ400の偽造がより困難となる。このように、実施の形態2に係る偽造品検出方法、識別タグ400、および偽造品検出装置300は、低コストで実施でき、環境に優しく、かつ識別タグの偽造を困難とする。
【0064】
〈実施の形態2に対する変形例〉
実施の形態2において、基板401は分子の長軸方向が異なる2つの蛍光領域のみを有するが、これは3つ以上の蛍光領域を有するものであってもよい。また、これに対応して3つ以上の偏光板および光検出手段が設けられてもよい。
図10は、このような変形例に係る基板401’の構成を示す。基板401’は、図8の基板401と同様に、液晶性化合物202の分子が垂直方向(0度の方向とする)に配列される第1の蛍光領域410と、分子が水平方向(すなわち90度の方向)に配列される第2の蛍光領域420とを有する。基板401’は、さらに、分子が45度の方向に配列される第3の蛍光領域430と、分子が135度の方向に配列される第4の蛍光領域440とを有する。
図10のような基板401’に対応して、4枚の偏光板が、それぞれの透過軸を4つの蛍光領域410〜440の配列方向に一致させて配置される。また、4つの光検出手段が、4枚の偏光板から透過する光のパターンをそれぞれ検出し、制御手段は4つの検出されたパターンを評価して偽造品を検出する。
蛍光領域の数は、パターンの評価の精度等に応じて適宜決定されればよく、たとえば60度おきの角度に対応して3つの蛍光領域が設けられてもよいし、30度おきの角度に対応して6つの蛍光領域が設けられてもよい。
【0065】
実施の形態2において、光検出手段は画像のパターンを検出できる装置であればCCDカメラ以外の装置を用いてもよく、CMOSカメラを用いてもよい。
制御手段340によるパターンの評価方法は、上述のものに限らず、パターンの特徴的部分を抽出する方法や、フーリエ変換を用いる方法等、一般的な画像処理技術を用いることができる。また、制御手段340が記憶するテンプレートは外部からの操作に応じて変更可能であってもよい。また、制御手段340は、パターンの評価に加えて、実施の形態1のように、透過光の強度やスペクトルを基準とする評価を行ってもよい。
【0066】
実施の形態2において、実施の形態1と同様の変形が施されてもよい。また、偽造品検出装置300を用いてカードの偽造品や偽造紙幣を検出してもよい。
【0067】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態2と同様に、液晶性化合物202の配列の方向を複数とするものである。ただし、実施の形態2とは異なり、実施の形態3では磁場配行によって識別タグの蛍光領域を形成する。偽造品検出装置の構成および動作は実施の形態2と同一であり、基板上の蛍光領域の構成および形成方法のみが異なるので、実施の形態3については基板上の蛍光領域の構成および形成方法のみ以下に説明する。
【0068】
図11は、実施の形態3に係る基板501の構成を示す。基板501上には、液晶性化合物202が固定された領域として、第1の蛍光領域510および第2の蛍光領域520が形成されている。第2の蛍光領域520は基板501の所定の位置にスポット状に形成されており、基板501のその他の部分には第1の蛍光領域510が形成されている。第1の蛍光領域510では分子の長軸が水平方向に沿っており、第2の蛍光領域520では分子の長軸が垂直方向に沿っている。
【0069】
この基板501は次のようにして製造される。
まず、実施の形態1の(製造方法i〜iiii)と同様にして、基板501上に第1の蛍光領域510を形成する。この時点では、基板501の全面が第1の蛍光領域510となっている。
次に、基板501を磁場の方向に対して90度だけ回転させる。液晶性化合物202はすでに冷却され固定されているので、分子の方向は変化しない。
次に、第2の蛍光領域520を形成すべき位置を選択的に加熱する。この加熱はたとえばレーザの照射によって行われ、液晶性化合物202が液晶状態となる温度、たとえば200〜250℃にまでなされる。上述のように液晶性化合物202の分子は磁化率異方性を有するので、加熱された位置で液晶状態となった分子は磁場に応じて流動し、その長軸は磁場の方向と平行となる。その後加熱を停止すると冷却され分子が固定される。ここで、磁場の方向は第1の蛍光領域510における分子の長軸の方向とは直交する方向となっているので、第1の蛍光領域510と第2の蛍光領域520とでは分子の長軸の方向が直交することになる。
このようにして基板501上に第1の蛍光領域510および第2の蛍光領域520が形成される。
【0070】
実施の形態3に係る偽造品検出方法、識別タグ、識別タグを備えるインクカートリッジ、偽造品検出装置、および偽造品検出装置を用いる印刷装置によれば、実施の形態1と同様に、液晶性化合物202によって真贋判定を行うため、識別タグが電子回路等の高価な構成を備える必要がなく、またこのため環境にも優しい。また、偏光蛍光を放射するという特殊な性質を備える液晶性化合物を利用するため、識別タグの偽造が困難である。さらに、識別タグは互いに異なる方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する複数の領域を備えるので、識別タグの偽造がより困難となる。このように、実施の形態3に係る偽造品検出方法、識別タグ、および偽造品検出装置は、低コストで実施でき、環境に優しく、かつ識別タグの偽造を困難とする。
【0071】
また、実施の形態3によれば、レーザ加熱を行う位置を選択的に決定できるので、第2の蛍光領域520のスポットを多数並べることによって複雑な形状を形成することが容易である。たとえば、第2の蛍光領域520によって画像を形成することも容易である。さらに、第1の蛍光領域510および第2の蛍光領域520が互いに重ならないので、実施の形態2よりも蛍光領域が鮮明に認識でき、真贋判定がより容易となる。
【0072】
また、第1の蛍光領域510および第2の蛍光領域520が形成され実際に使用された後であっても、磁場中で加熱することによって液晶性化合物202を再び液晶状態にして再形成を行うことができるので、同じ方法で異なるパターンを形成することができ、基板501の再利用または蛍光領域のパターンの変更が容易である。
なお、第2の蛍光領域520すなわちレーザ加熱を行う部分はスポット状である必要はなく、線状等の任意の形状とすることができる。また、実施の形態3には、上述の実施の形態2と同様の変形を施すことができる。
【0073】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態2および3と同様に、液晶性化合物202の配列の方向を複数とするものである。ただし、実施の形態2および3とは異なり、実施の形態4では電場配行によって識別タグの蛍光領域を形成する。偽造品検出装置の構成および動作は実施の形態2と同一であり、基板上の蛍光領域の構成および形成方法のみが異なるので、実施の形態4については基板上の蛍光領域の構成および形成方法のみ以下に説明する。
【0074】
図12は、実施の形態4に係る基板601の構成を示す。基板601上には、液晶性化合物202が固定された正方形の領域が格子状に配列されている。これらの領域は、第1の蛍光領域610および第2の蛍光領域620を含む。第1の蛍光領域610では分子の長軸が水平方向に沿っており、第2の蛍光領域620では分子の長軸が垂直方向に沿っている。
【0075】
この基板601は次のようにして製造される。
まず、基板601上に液晶状態の液晶性化合物202を塗布し、複数の蛍光領域を形成する。蛍光領域は図12のようにそれぞれ正方形であり、格子状に配列される。この時点では液晶性化合物202の分子は整列していない。
次に、塗布された液晶性化合物202を保温または加熱して液晶状態に維持しつつ、それぞれの蛍光領域に異なる方向の電場を発生させる。これは、蛍光領域のそれぞれに対応して電極を一組ずつ配置することで行われる。
【0076】
たとえば、第1の蛍光領域610に対しては、垂直方向に延びる対向する辺の組、すなわち辺610aおよび辺610bに沿って電極を配置する。辺610aに沿って延びる陽極と、辺610bに沿って延びる陰極との間に電場を発生させることによって、液晶性化合物202の分子の長軸を水平方向に向けて整列させる。このようにして第1の蛍光領域610が形成される。
また、第2の蛍光領域620に対しては、水平方向に延びる対向する辺の組、すなわち辺620aおよび辺620bに沿って電極を配置する。辺620aに沿って延びる陽極と、辺620bに沿って延びる陰極との間に電場を発生させることによって、液晶性化合物202の分子の長軸を垂直方向に向けて整列させる。このようにして第2の蛍光領域620が形成される。
なお、電極間に印加する電圧は、分子を十分に整列させることができる程度であり、この値は当業者が実験等によって適宜決定することが容易である。
【0077】
実施の形態4に係る偽造品検出方法、識別タグ、識別タグを備えるインクカートリッジ、偽造品検出装置、および偽造品検出装置を用いる印刷装置によれば、実施の形態1と同様に、液晶性化合物202によって真贋判定を行うため、識別タグが電子回路等の高価な構成を備える必要がなく、またこのため環境にも優しい。また、偏光蛍光を放射するという特殊な性質を備える液晶性化合物を利用するため、識別タグの偽造が困難である。さらに、識別タグは互いに異なる方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する複数の領域を備えるので、識別タグの偽造がより困難となる。このように、実施の形態4に係る偽造品検出方法、識別タグ、および偽造品検出装置は、低コストで実施でき、環境に優しく、かつ識別タグの偽造を困難とする。
【0078】
また、実施の形態4によれば、格子状に配列された複数の蛍光領域のそれぞれについて偏光方向を任意に決定することができるので、複雑な形状を形成することが容易である。たとえば、第1の蛍光領域610および第2の蛍光領域620によって画像を形成することも容易である。さらに、第1の蛍光領域610および第2の蛍光領域620が互いに重ならず、また互いに分離されて配置されるので、実施の形態2よりも蛍光領域が鮮明に認識でき、真贋判定がより容易となる。
【0079】
実施の形態4には、上述の実施の形態2と同様の変形を施すことができる。
また、第1の蛍光領域610および第2の蛍光領域620が形成され実際に使用された後であっても、電場中で加熱することによって液晶性化合物202を再び液晶状態にして再形成を行うことができるので、同様の方法で異なるパターンを形成することができ、基板601の再利用または蛍光領域のパターンの変更が容易である。
なお、第1の蛍光領域610および第2の蛍光領域620の配列は、必ずしも格子状である必要なく、形成すべき画像に応じて適宜配列されてもよい。また、1つの蛍光領域の形状は、必ずしも正方形である必要はなく、長方形または円形等、形成が容易な形状または用途に応じて決定される形状であってもよい。
【0080】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5にかかる印刷装置は、少なくとも前記偽造品検出に使用する識別タグと、該識別タグに偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部分を有するインクカートリッジを備え、該透明部分を透過する光を検出することにより、インクの残量の情報を検出する手段を備える。
従って、本発明の実施の形態5によれば、インクカートリッジの偽造防止の検出手段に加え、インクの残量の情報を検出する手段を備える。
実施の形態5ではインク液を保持体を用いずにそのままインクカートリッジに格納するタイプのものに対して好適に利用できる。
図13は、本発明の実施の形態5の印刷装置を示す概略図である。
本発明の実施の形態5では、少なくとも発光手段110と、インクカートリッジ700に取り付けられた識別タグ200、光の検出手段540を備え、更にインクカートリッジ700は識別タグ200に照射される光を透過できる対向する1対の透明部分(K1、K2)を有する。発光手段110から放射される光は、偽造品検出ために備えられた識別タグ200と透明部分K1に照射される。透明部分K1に入射した光Lは、インクカートリッジ700内を通過して透明部分K2から放出され、光の検出手段540に到達し検出される。
インクカートリッジ700内の透明部分K1と透明部分K2間にインク701が十分に満されている場合には、入射した光Lはインク701内を透過し透明部分K2に到達するまでに減衰し、減衰した光L5が光の検出手段540で無到達又は到達して検出される。従って、透過光L5の強度を検出し、予め設定された閾値以下であれば少なくともインク701の残量がある状態を示す。一方、透過光L5の強度が閾値以上であればインク701の残量が少ない状態を示す。前記光の検出手段540としては、たとえばフォトダイオードであり、透過光L5の強度に応じた電流を発生させる。
光の検出手段540は印刷装置の動作を制御する制御手段150に接続されている。この制御手段150は、印刷装置を制御する制御とは別に設けられるものであってもよい。また、前記偽造品検出装置の制御手段140と連携したものであってもよい。制御手段150は光の検出手段540による検出結果を受信する。
【0081】
また、予め、インク701が透明部分K1とK2間からインク残量がなくなるまでのインクの量を求め、インク701が透明部分K1とK2間へ到達以降の使用量とインクの残量の関係から随時、インクの残量の目安となる標識を制御手段150を介して、印刷装置に表示させてもよい。
なお、実施の形態5の印刷装置において偽造防止システムは既に前述したとおりである。
【0082】
(実施の形態5に対する変形例)
図14は、本発明の実施の形態5に対する変形例を示す概略図である。
本発明の実施の形態5に対する変形例では、インクカートリッジ内にインクが十分満たされている状態(以下、「ケース1」)、インクカートリッジを交換するまでもないが、インク残量が少なくなってきている状態(以下、「ケース2」)、インク残量がほとんどなくインクカートリッジの交換の時期である状態(以下、「ケース3」を、少なくとも検出することができる。
【0083】
本発明の実施の形態5に対する変形例では、少なくとも発光手段110と、インクカートリッジ700に取り付けられた識別タグ200、光の検出手段540を備え、更にインクカートリッジ700はインクカートリッジ700に照射される光を透過できる対向する1対の透明部分(K1(a)、K2(a))を備えた第1の透明領域F1と、その下方に第1の透明領域F1と同様にインクカートリッジ700に照射される光を透過でき、第1の透明領域F1と基本的には平行に配置した、対向する1対の透明部分(K1(b)、K2(b))を備えた第2の透明領域F2を有する。発光手段110から照射される光Lは、偽造品検出ために備えられた識別タグ200と透明部分K1(a)及びK1(b)に照射される。なお、前記発光手段110は、偽造品検出のための識別タグ200への光照射と、前記第1と第2の透明領域への光の照射を行う。
【0084】
透明部分K1(a)に入射した光Lはインクカートリッジ700内を通過して透明部分K2(a)から放出され、光の検出手段540に到達し光L5(a)として検出される。前記と同様に透明部分K1(b)に入射した光Lはインクカートリッジ700内を通過して透明部分K2(b)から放出され、光の検出手段540に到達し光L5(b)として検出される。
【0085】
ケース1;インクカートリッジ700内の透過部分K1(a)と透明部分K2(a)間にインク701が十分に満たされている場合には、入射した光Lはインク701内を透過し透明部分K2(a)及びK2(b)に到達するまで減衰し、減衰した光L5(a)及び光L5(b)が光の検出手段540で無到着又は到着して検出される。従って、この状態では少なくとも透過光L5(a)及び透過光L5(b)の強度を検出し、予め設定された閾値以下であれば少なくともインク701の残量がある状態を示す。即ち、インクカートリッジ内にインクが十分満たされている状態であると判定する。
【0086】
ケース2;インク701の液面が透明部分K1(a)と透明部分K1(b)の間にあるときは、入射した光LはK1(a)とK2(a)間では、透過光L5(a)はインクによる干渉がなくなる。一方、透明部分K1(b)と透明部分K2(b)間では、入射した光Lはインク701の干渉を受けK2(b)に到達するまでに減衰する。減衰した光L5(b)は光の検出手段540で無到着又は到着して検出される。この状態では、光の検出手段540では、少なくとも前記のケース1に比べ光の強度は増加し、後述するケース3に比べ光の強度は少ない。従って、光の検出手段540で検出されるL5(a)とL5(b)の光の強度をケース1に比べ大きく、ケース3に比べ小さい範囲で、閾値の範囲を設定することにより、例えば、インク残量が少ないこと、即ち、インクカートリッジを交換するまでもないが、インク残量が少なくなってきている状態であると判定する。
【0087】
ケース3;インク701が透明部分K1(b)と透明部分K2(b)の間も満たさないときは、入射した光Lは、透明部分K1(a)と透明部分K2(a)間の光L5(a)と、透明部分K1(b)と透明部分K2(b)間の光L5(b)は、いずれもインクによる干渉がなくなる。この状態では、光の検出手段540では、前記ケース2に比べ、光の強度は大きくなる。従って、ケース2に比べ大きい範囲で、予め設定された閾値以上であれば、インク残量がほとんどなくインクカートリッジの交換の時期である状態であると判定する。
【0088】
例えば、透明部分K1(a)とK1(b)、K2(a)とK2(b)とがそれぞれ同じ形状で同じ大きさ(面積)を持つものを使用した場合には、光の検出手段540で検出される光の強度範囲をケース1ではT以下と閾値を設定する。ケース2はTより大きく2Tより小さいと設定する。そして、ケース3は2T以上と閾値の範囲を設定すればよい。
前記光の検出手段540としては、たとえばフォトダイオードであり、透過光L5(a)とL5(b)の強度に応じた電流を発生させる。
光の検出手段540は印刷装置の動作を制御する制御手段150に接続されている。この制御手段150は、印刷装置を制御する制御とは別に設けられるものであってもよい。また、前記偽造品検出装置の制御手段140と連携したものであってもよい。制御手段150は光の検出手段540による検出結果を受信する。
また、予め、インク701が透明部分K1(a)とK1(b)間から透明部分K2(a)とK2(b)間に到達するインクの量を求め、インク701が透明部分K1(a)とK1(b)間へ到達以降の使用量とインクの残量の関係から随時、インクの残量の目安となる標識を制御手段150を介して、印刷装置に表示させてもよい。
なお、実施の形態5の印刷装置において偽造防止システムは既に前述したとおりである。
【0089】
実施の形態6.
本発明の実施の形態6にかかる印刷装置は、少なくとも前記偽造品検出に使用する識別タグと、該識別タグに偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部分を有するインクカートリッジを備え、該透明部分から反射する反射光を検出することにより、インクの残量の情報を検出する手段を備える。
従って、本発明の実施の形態6によれば、インクカートリッジの偽造防止の検出手段に加え、インクの残量の情報を検出する手段を備える。
実施の形態6ではインク液をスポンジ或いは他の保持体に吸収させてインク液を保持するタイプのインクカートリッジやインク液を保持体を用いずにそのままインクカートリッジに格納するタイプのものに対しても好適に利用できる。
【0090】
図15は、本発明の実施の形態6の印刷装置を示す概略図である。
本発明の実施の形態6では、少なくとも発光手段110と、インクカートリッジ800に取り付けられた識別タグ200、光の検出手段640を備え、更にインクカートリッジ800は識別タグ200に照射される光を透過できる透明部分K3を有する。発光手段110から放射される光は、偽造品検出ために備えられた識別タグ200と透明部分K3に照射される。透明部分K3に入射した光Lは、インクカートリッジ800内のインク801により反射された反射光L6を光の検出手段640で検出する。
例えば、インク液をスポンジ或いは他の保持体に吸収させてインク液を保持するタイプのインクカートリッジ800の場合は、予めインク液が十分に保持されている場合の反射光の強度と、インク液の減少(使用による減少や、経時的な減少を含む)に応じた反射光の強度等の変化率の関係を求めておいて、例えば設定された閾値以下になったらインク残量が少ないと判定する。
【0091】
例えば、インク液を保持体を用いずにそのままインクカートリッジ800に格納するタイプのものはインクカートリッジ800内の透明部分K3の上端までインクが十分に満されている場合には、反射光の強度に変化はない。一方、透明部分K3の上端までインクが満たなくなった場合は、反射光が減衰或いは未到達状態で光の検出手段640で検出される。
従って、反射光の強度を検出し、予め設定された閾値以上であれば少なくともインクの残量があると判定する。一方、反射光L6の強度が閾値以下であればインク残量が少ないと判定する。前記光の検出手段640としては、たとえばフォトダイオードであり、反射光L6の強度に応じた電流を発生させる。
【0092】
光の検出手段640は印刷装置の動作を制御する制御手段160に接続されている。この制御手段160は、印刷装置を制御する制御とは別に設けられるものであってもよい。また、前記偽造品検出装置の制御手段140と連携したものであってもよい。制御手段160は光の検出手段640による検出結果を受信する。
また、予め、インクの残量が少ないと判定された以降インクがなくなるまでのインクの量を求め、インク701が前記閾値以下になった以降の使用量とインクの残量の関係から随時、インクの残量の目安となる標識を制御手段150を介して、印刷装置に表示させてもよい。
なお、実施の形態6の印刷装置において偽造防止システムは既に前述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1に係る偽造品検出方法、識別タグ、および偽造品識別装置の概要を示す図である。
【図2】図1の液晶性化合物202の一例の蛍光スペクトルの実験結果の一部を示すグラフである。
【図3】図1の液晶性化合物202の一例の蛍光スペクトルの実験結果の一部を示すグラフである。
【図4】図1の液晶性化合物202の一例の蛍光スペクトルの実験結果の一部を示すグラフである。
【図5】図1の液晶性化合物202の一例の蛍光スペクトルの実験結果の一部を示すグラフである。
【図6】図1の蛍光領域の、斜方真空蒸着による製造方法を示す図である。
【図7】図1の蛍光領域の、磁場配行または電場配行による製造方法を示す図である。
【図8】実施の形態2に係る偽造品検出方法、識別タグ、および偽造品識別装置の概要を示す図である。
【図9】図8の基板に第1の蛍光領域および第2の蛍光領域を形成する方法を示す図である。
【図10】実施の形態2の変形例に係る基板の構成を示す図である。
【図11】実施の形態3に係る基板の構成を示す図である。
【図12】実施の形態4に係る基板の構成を示す図である。
【図13】実施の形態5に係る印刷装置で、インク残量の検出の概要を示す図である。
【図14】実施の形態5の変形例に係る印刷装置で、インク残量の検出の概要を示す図である。
【図15】実施の形態6に係る印刷装置で、インク残量の検出の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
100,300 偽造品検出装置、110 発光手段、121 第1の偏光板、122 第2の偏光板、131,331 第1の光検出手段、132,332 第2の光検出手段、140,150,160,340 制御手段、
200,400 識別タグ、201,401,501,601 基板、202 液晶性化合物、210 蛍光領域、410,510,610 第1の蛍光領域、420,520,620 第2の蛍光領域、430 第3の蛍光領域、440 第4の蛍光領域、
540,640 光の検出手段、700,800 インクカートリッジ、K1,K2,K3、K1(a)、K2(a)、K1(b)、K2(b) 透明部分(透明部位)、L 励起光、L5、L5(a)、L5(b) 透過光、L6 反射光、P 偏光蛍光、T1,T3 第1の透過光、T2,T4 第2の透過光、F1 第1の透明領域、F2 第2の透明領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光蛍光を放射する材料に励起光を照射して偏光蛍光を放射させるステップと、
前記偏光蛍光を、透過軸の方向が互いに異なる複数の偏光板に入射させるステップと
を含む、偽造品検出方法。
【請求項2】
前記偏光蛍光を放射する材料が液晶性化合物である、請求項1に記載の偽造品検出方法。
【請求項3】
前記液晶性化合物が下記一般式(1e')で表される長い直線的共役部分を持つ分子構造を持つ化合物である、請求項2に記載の偽造品検出方法。
【化1】

【請求項4】
偽造品検出に用いられる識別タグであって、励起光の照射を受けて偏光蛍光を放射する材料を含む、識別タグ。
【請求項5】
前記偏光蛍光を放射する材料が液晶性化合物である、請求項4に記載の識別タグ。
【請求項6】
前記液晶性化合物が下記一般式(1e')で表される長い直線的共役部分を持つ分子構造を持つ化合物である、請求項5に記載の識別タグ。
【化2】

【請求項7】
外部の識別タグに励起光を照射する発光手段と、
透過軸の方向が互いに異なる複数の偏光板であって、前記励起光の照射に応じて前記識別タグから放射される偏光蛍光を受ける、複数の偏光板と
を備える、偽造品検出装置。
【請求項8】
第1の方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する第1の蛍光領域と、
第2の方向成分の偏光を含む偏光蛍光を放射する第2の蛍光領域と
を備える、請求項4に記載の識別タグ。
【請求項9】
格子状に配列された複数の領域を備え、
前記複数の領域の一部は前記第1の蛍光領域であり、
前記複数の領域の他の一部は前記第2の蛍光領域である
請求項8に記載の識別タグ。
【請求項10】
前記複数の偏光板のそれぞれを透過した透過光を検出する、複数の光検出手段と、
前記複数の光検出手段による検出結果を所定のデータと比較し、比較結果に応じて、偽造品を検出したか否かを判定する制御手段と
を備える、請求項7に記載の偽造品検出装置。
【請求項11】
前記光検出手段による検出結果および前記所定のデータは、
それぞれ光の強度を表す情報を含むか、
それぞれ光の波長を表す情報を含むか、または
それぞれ光のパターンを表す情報を含む
請求項10に記載の偽造品検出装置。
【請求項12】
印刷装置にインクを供給するためのインクカートリッジであって、請求項4に記載の識別タグを備えるインクカートリッジ。
【請求項13】
インクの供給のためにインクカートリッジを用いる印刷装置であって、
請求項10に記載の偽造品検出装置を用いて前記インクカートリッジの偽造品を検出する、印刷装置。
【請求項14】
インクの供給のためにインクカートリッジを用いる印刷装置であって、少なくとも請求項4に記載の識別タグと、該識別タグで偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部位を有するインクカートリッジを備え、前記識別タグで用いた光源を用いて前記透明部位に光を照射し、インクカートリッジ内を透過した透過光を検出することにより、インクカートリッジのインク残量を検出する、印刷装置。
【請求項15】
インクの供給のためにインクカートリッジを用いる印刷装置であって、少なくとも請求項4に記載の識別タグと、該識別タグで偽造品検出のために用いた照射光が透過可能な透明部位を有するインクカートリッジを備え、前記識別タグで用いた光源を用いて前記透明部位に光を照射し、透明部位からの反射光を検出することにより、インクカートリッジのインク残量を検出する、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−250817(P2009−250817A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100071(P2008−100071)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【出願人】(503401614)ジット株式会社 (15)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】