偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法
【課題】本発明は、市販のカラー複写機などでは偽造が極めて困難で、廉価で製造することが可能であり、かつ、従来のコレステリック液晶媒体では実現が難しい、視認角度を変化させてもカラーシフトが起こらないことで、真正品と偽造品を目視または簡単な装置を用いて明確に判別することができる真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法を提供することにある。
【解決手段】真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法である。
【解決手段】真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機などによる複製を防止する、例えば、クレジットカード、各種金券、身分証明書などの真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に紙などに印刷された文字や画像を複写することができるようになった。特に、最近のカラーデジタル複写機によれば、原稿か複写物か見分けが極めて困難な複写物でさえも容易に作成することができるようになった。
【0003】
一般的なカラーデジタル複写機の原理は、原稿に光を照射し、反射光をCCDラインセンサで検知する。CCDラインセンサでは、反射光の強度に応じたデジタル信号を生成し、複写機内のメモリに送信する。この読み取り過程をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色について行い、それぞれの場合のデジタル信号をメモリに格納する。次に格納されたデジタル信号に基づいて、レーザ光を感光体ドラムの表面に照射し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のトナーを感光体ドラムの上に順次静電吸着し、これらのトナーを順次紙などのシート上に転写して定着させる。これにより、カラーの画像が形成された精巧な複写物を得ることができる。
【0004】
係るカラー複写は便利である反面、株券、債券、約束手形、小切手などの有価証券や、入場券、搭乗券などの印刷物などが容易に偽造されるという問題が増加している。このため、容易に複写できないように印刷物に複製防止対策を施す提案が種々なされている。
【0005】
例えば、カラー複写による複写物の色が原稿の色と異なるようにする技術が提案されている。その例として原稿とされうる有価証券などに非常に淡い色で着色すると、複写物では淡い色の部分が正確に再現できないもの、また、原稿に大きさの異なる網点を形成しておくと複写しても小さい網点の再現性が悪化するもの、さらにカラー複写機のトナーにない色である緑、紫、橙、金、銀等を印刷することで複写物の色の再現性が悪化するもの、また、人間の視認度が低い領域例えば380nm〜450nmおよび650〜780nmあたりの波長域に特徴をもたせた2種類のインキを用いることで見た目には同色であるが、カラー複写機での複写物は異なる色に再現するものなどがある。
【0006】
しかし、カラー複写機では、3色に分解されてメモリに格納されたデジタルデータを変更することによって、出力する色を補正することが可能である。また、カラー複写機と同様の原理を利用してカラースキャナーで読み込んだデジタルデータをコンピュータで補正し、カラープリンタまたはカラー複写機で出力するようなデジタルプレスが普及しつつある。従って、現在多少の手間をかければ、原稿の色を精巧に再現することが可能であり、上記のような技術では偽造を完全に防止することは困難である。
【0007】
また、例えばカラー複写機では再現不可能な特殊部分を有価証券などに設けておく技術も提案されている。このうち、ホログラム箔などのOVD(Optical Variable Device)箔を有価証券などの表面上に設ける技術はすでに実用化されている。これによれば、ホログラムの銀面の光が鏡面反射するため、CCDラインセンサに反射光が入射せず、原稿で銀面だった部分が複写物では黒色に再現されるもの、あるいは、屈折率の異なるセラミックを適当な膜厚を持つ複数層に積層すると、見る角度によって色が変化する特殊な光学薄膜が形成され、かかる性質は、複写物では得ることができないの
で、容易に真偽判定が可能であるもの、さらにまた、この方法で形成された薄膜を細かく砕き、破片をインキに混入して印刷を行う方法も提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの技術では、ホログラム箔やセラミック膜を蒸着やスパッタリングのようなドライコーティングで形成する必要があり、工程が複雑化する上、製造コストが極めて高いという問題点がある。
【0009】
さらにまた、ホログラムと同様の見る角度によるカラーシフト(反射光の色変化)の効果を有するものとして、コレステリック液晶(特許文献1〜4参照)を用いたものが提案されている。
【0010】
上記の提案は、高分子コレステリック液晶の波長選択反射、円偏光選択反射、及び視角変化によるカラーシフト効果を利用することにより偽造防止効果を得ようとするものである。また、コレステリック液晶の一方の面にホログラム形成部を設け、反射光と同一の円偏光の光を反射光とは異なる方向に反射させるものや、液晶顔料と電離放射線硬化性樹脂を用いてインキ化する技術が開示されている。さらには高分子液晶と位相差子を組み合わせ反射光の回転方向を制御する技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、ディスプレイ用途において円偏光版の利用頻度が頻繁に行われるようになった昨今、コレステリック液晶が入手し易くなったこと、及びエンボス技術が発達したためレリーフ型の回折光を用いた反射層の形成が以前より低難易度化していることにより偽造防止効果が低下してきた。そこで、位相差子の表裏にコレステリック液晶を設置し、コレステリック液晶の螺旋方向は同一でありながら回転方向を制御する手法が提案されているが、位相差子自身が身近な材料、例えばセロファンテープ等で一見似た性能が出せるためやはり偽造防止効果の難易度は高く無い。
【0012】
下記に特許文献を記す。
【特許文献1】特開昭63−51193号公報
【特許文献2】WO00/13065号
【特許文献3】特開2002−114935号公報
【特許文献4】特開2002−255200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、市販のカラー複写機などでは偽造が極めて困難で、廉価で製造することが可能であり、かつ、従来のコレステリック液晶媒体では実現が難しい、視認角度を変化させてもカラーシフトが起こらないことで、真正品と偽造品を目視または簡単な装置を用いて明確に判別することができる真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を達成するために、
請求項1の発明は、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、
前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子もしくは右の球状コレステリック液晶粒子、及び旋回方向が左と右の球状コレス
テリック液晶粒子が重ならないように形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0016】
また、請求項3の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子の混合物からなる液晶パターン層であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0017】
また、請求項4の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子が一部もしくは全て重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記球状コレステリック液晶粒子は、その球状コレステリック液晶粒子の中心が光吸収着色顔料球状粒子からなり、その光吸収着色顔料球状粒子を芯としてコレステリック液晶が放射状に同一ピッチで配向して球状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体である。
【0019】
また、請求項6の発明は、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成して対象物の真偽を判定するための偽造防止媒体による真偽判定方法であって、
前記偽造防止媒体の基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されており、前記対象物に設けた偽造防止媒体を左円偏光の光だけを通す左円偏光フィルターと右円偏光の光だけを通す右円偏光フィルターを備える真偽判定用の偏光フィルターを通して目視にて前記液晶パターンを識別することにより対象物の真偽を判定することを特徴とする偽造防止媒体による真偽判定方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、従来の高分子コレステリック液晶は、液晶層の螺旋ピッチに対応した波長の円偏光を反射するが、目視角度を変えると反射波長が変化し、カラーシフトが発生するという問題点を解消できる。即ち、本発明における球状コレステリック液晶粒子は、液晶層の螺旋ピッチに対応した波長の円偏光を反射し、かつ目視角度を変えても同じ波長の円偏光を反射する。このことより、従来のコレステリック液晶では不可能であった非カラーシフト性を有することによって、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する、複写が困難な、球状コレステリック液晶粒子を用いた偽造防止媒体を提供することができる。
【0021】
また、上記の偽造防止媒体を真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に設けて、偽造防止媒体を左円偏光フィルターと右円偏光フィルターを備えた偏光フィルターを通して目視にて、容易に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターンを識別することにより、簡単な手段によって、真偽判定対象である情報記録体の一部に設けた偽造防止媒体による真偽を判定することができる。
【0022】
従って、本発明は、上記の偽造防止媒体を、例えば、クレジットカード、各種金券、身分証明書などの情報記録体の一部に視認可能に形成することにより、複写機等での複写を防止する偽造防止技術として優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、左螺旋の高分子コレステリック液晶と右螺旋の球状コレステリック液晶粒子を用いてトリアセチルセルロース(以下TAC)基材上に印刷した一実施の形態を示す平面概略図であり、図2は、図1の偽造防止媒体のX−X面の側断面概略図であり、図3は、図1の偽造防止媒体を傾けて見たときの見え方を示したものである。図4は、図1に示す偽造防止媒体12に
設置された球状コレステリック液晶粒子の液晶配向情態を示し、図5は、模式的に球状コレステリック液晶を、角度を変えて視認したときの目に入る反射光を表したものであり、図6は、図1に示す偽造防止媒体の11に相当するコレステリック液晶の配向情態と反射光の模式図である。図7は、図1の偽造防媒体上を右回りの真偽判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図であり、図8は、図1の偽造防止媒体を左回りの真偽判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面外略図である。図9は、左螺旋の高分子コレステリック液晶と、右及び左螺旋の球状コレステリック液晶粒子を混合したものを用いてトリアセチルセルロース(以下TAC)基材上に印刷した一実施の形態を示す平面概略図である。図10は、図9の偽造防止媒体を右回りの真贋判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図であり、図11は、図9の偽造防止媒体を左回りのフィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図である。
【0024】
まず、本発明の偽造防止媒体は、例えば図1に示すように、螺旋軸の回転方向が左の高分子コレステリック液晶層11、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶を含む層12が同時に目視可能な様に配置されている。この偽造防止印刷物10は、図3に示したように目視角度を変えると高分子コレステリック液晶層11は短波長側に色が変化して見えるが、球状コレステリック液晶層12は色が変化しない。図4は、球状コレステリック液晶粒子の模式図であり、球状コレステリック液晶粒子の中心は光吸収性顔料となっている。この顔料を芯としてコレステリック液晶が放射状に等ピッチで配向した構造をとり、全体として球状となっている。図5は、この球状コレステリック液晶粒子を自然光の基で、角度を変えて目視したときの模式図である。自然光は球状コレステリック液晶粒子の回転方向、及び回転ピッチと等しい光が反射され、その他の光は中心の光吸収顔料で吸収される。コレステリック液晶は、中心の光吸収顔料の周りに等間隔で、かつ、表面を覆う形で形成されているため、目視角度を変えても常に同じ回転方向とピッチ面が現れ、結果として反射光は一定の波長から得られる同じ反射色であり、回転方向もどの角度から見ても同じとなる。図6は、高分子コレステリック液晶が平面状に設置された場合の光の反射を表す模式図である。コレステリック液晶層に自然光が当たると、同方向、同ピッチの光が反射され、その他の光はコレステリック液晶層を透過し、下面の光吸収層に吸収される。観察者にはこの反射光が視認されるが、目視角度を変えると、平面状コレステリック液晶の見かけピッチが減少し反射波長は短波側にシフトする。このブルーシフトによって、高分子コレステリック液晶部は色変化が起こる。これらの効果によって、図1に示す偽造防止媒体は目視角度を変えると球状コレステリック液晶粒子部は色変化が起こらず、高分子コレステリック液晶層部は色変化が生じる事となる。
【0025】
また、図7は、図1に示した偽造防止媒体10を、右回転の真偽判定フィルター18を介して見た場合の見え方について示した図である。螺旋軸が左の高分子コレステリック液晶層部は左回転の光を反射しているため、フィルターと逆回転の光は透過しないため暗くなり、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶粒子層部は右回転の光を反射しているためフィルターを透過することから目視での色変化は生じない。このため、球状コレステリック液晶粒子層部のみ視認できる。
【0026】
また、図8は、図1に示した偽造防止媒体10を、左回転の真偽判定フィルター19を介して見た場合の見え方について示した図である。螺旋軸が左の高分子コレステリック液晶層部は左回転の光を反射しているため、フィルターと同回転の光であることから透過し、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶粒子層部は右回転の光を反射しているためフィルターと逆回転の光であるために透過せず暗くなる。このため、コレステリック液晶層部のみ視認できる。
【0027】
例として上げた構成以外に、球状コレステリック液晶粒子の旋回ピッチを変更し反射色を異なるようにしたものをパターン、混合及び積層といった構成で基材に設置しても良い
。勿論、旋回方向が右や左の球状コレステリック液晶粒子間で旋回ピッチを変更しても良く、その組み合わせは適宜選択して用いれば良い。また、球状コレステリック液晶粒子の中心を無色透明な材料で構成しても良い。さらには、目視する面とは反対の面に粘着剤や接着剤を塗布しても良いし、偽造防止媒体を保護する目的で所謂保護層を設置してもなんら問題は無い。
【0028】
以下に本発明の球状コレステリック液晶粒子等について詳しく説明する。ここで球状コレステリック液晶粒子は、キラル相を有する三次元架橋性液晶物質を液中で分散、配向し、三次元架橋し、所望の粒度に分級して得られた顔料である。この顔料によって反射した光は円偏光である。液晶物質の中でもコレステリック液晶はねじれ構造を有し、そのねじれ軸(螺旋軸)に沿って光の屈折率が周期的に変動するため、そのねじれ構造のピッチに等しい波長の光を選択的に反射する。従って、ねじれ構造のピッチを温度、及びまたはカイラル剤を用いて制御することで所望のコレステリック液晶による反射色を作り出すことが可能である。また、ねじれ構造を有する液晶は、各分子が層を成して配置されており、層中で均一に配列されることで初めてその光学的特性を形成する。この場合、分子は層毎にその優先方向を変えるのでねじれ構造が生じる。各分子の配向は公知の方法、例えば配向層または電解または磁界によって制御できる。また、その固定化の代表的な方法には、キラル相を有する三次元架橋性液晶と多官能性重合化合物を組合せ、紫外線を照射することで三次元架橋し、ねじれ構造を固定化できコレステリック高分子液晶ができる。
【0029】
コレステリック高分子液晶の出発物質としては、紫外線から赤外線の光の波長に対して等しいピッチのねじれ構造を有する全てのコレステリック液晶物質が利用できる。即ち、キラル相を有する液晶物質はネマチック、スメクチック構造をとる液晶にキラル物質を加えることで製造できる。キラル物質の種類及び分子量がねじれ構造の向きやピッチ、延いては反射光の波長を決定する。さらに構造中に不整炭素を持つ液晶であればキラル物質の添加無しにねじれ構造をとらせることも可能である。キラル物質の添加、無添加に関わらず、ねじれ構造のピッチ変更には温度の変更も有効である。ただし、ピッチは温度が低いと長く、温度が高いと短くなるため、温度が低すぎる場合には反射光は赤外線領域に、高いと分子による吸収を除けば紫外線領域に入り、さらには等方層となり液晶性を示さなくなる点があるため意匠性、偽造防止性等必要な反射光を得るために、どの波長を利用するかによって適正に管理する必要がある。
【0030】
さらに、出発物質は重合性基、重縮合性基または重付加に有効な基を有し、従来公知のエネルギー線硬化性化合物が使用されるが、特に分子中に2個ないしそれ以上のエネルギー線硬化性基を有する単量体、オリゴマーを含有することが好ましい。ラジカル系光重合性単量体として従来公知の、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能性単量体、ポリウレタンポリアクリレート、エポキシ樹脂系ポリアクリレート、アクリルポリオールポリアクリレート等の他官能性オリゴマー類が好ましい。一官能性の単量体としては、アルキル(C1〜C18)(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート等である。カチオン系光重合性単量体として従来公知の芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル系化合物が挙げられる。さらに好ましくは、3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0031】
本発明の偽造防止用インキのコレステリック液晶フレークの製造で使用するエネルギー
線硬化を起こすための重合開始剤等は、照射するエネルギー線により適切な特性の公知の重合開始剤が必要に応じて使用される。例えば、光重合開始剤としては従来公知のものが使用される。ラジカル系光重合開始剤として、α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系等のアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、α−アシルオキシムエステル系等公知のものが使用され、具体的にはα−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとの併用等が挙げられる。カチオン系光重合開始剤としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、さらに好ましくは、公知の増感剤や過酸化物と適宜併用することができる。例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドロキシアセトフェノン系、トリアリルスルホニウム塩系、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、メタロセン化合物−アントラセン併用系等である。
【0032】
球状コレステリック液晶粒子の製造方法は、例えば、まず3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンと光重合開始剤、及び界面活性剤の混合溶液を、攪拌している純水中に添加してエマルションを作成する。エマルション作成に於ける攪拌に起因するせん断力がコレステリック液晶の配向を促すことになる。エマルションの粒子径は1〜100μm、より好ましくは3〜20μmであり、1μmより小さいと、反射色が明瞭に現れず、100μmを超えるとコレステリック液晶の配向が不十分となるばかりでなく、次工程で行なう紫外線による架橋、硬化が十分に行なわれない。エマルション作成中の水温は、コレステリック液晶の反射色、粒子径に影響を及ぼし粒子径のコントロールには適宜攪拌速度を変更したり、用いる界面活性剤のHLBに基づいて選定すれば良い。反射色は必要とする波長に応じて適正に管理すれば良い。エマルション作成に使用される界面活性剤は、一般に用いられるものが適宜使用出来、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性のものから適宜選択されるが、好ましくは非イオン性のポリオキシエチレンアルキルエーテルやプルロニックの非イオン性界面活性剤が紫外線硬化や液の泡立ちの低さから使用し易い。反射色と粒子径の分布が定まった後、紫外線を照射してコレステリック液晶の硬化を行う。硬化を行なった後、より高い非カラーシフト性を得るため分級を行っても良く、分級には濾過方式や沈降速度差、遠心力の利用等、公知の方法が用いられ、粒径精度を表すCV値で20%以下、より好ましくは10%以下となるよう調整する。また、球状コレステリック液晶粒子のエマルション作成工程にて、着色性の顔料粒子をコレステリック液晶に混ぜた状態で純水中に添加しても良い。顔料性粒子は球である事が好ましく、例えば液晶ディスプレイに使用されるスペーサー粒子が使用可能であり材質はシリカやアクリル等公知のものが使用出来る。顔料粒子の粒子径は最終的に完成される球状コレステリック液晶粒子の粒子径より小さい必要があり、その大きさは0.1〜50μmである。また、粒子径の制御の観点から着色顔料の粒子径も均一である方が好ましくCV値で20%以下、より好ましくは5%以下が良い。 この着色顔料の周りにコレステリック液晶が吸着し、コレステリック液晶層で覆われた球状コレステリック液晶粒子が作成される。コレステリック液晶を透過した光は中心の着色顔料に吸収され、コレステリック液晶の反射色を明瞭にする働きを持つため通常のコレステリック液晶の反射色を明瞭にするための下地の光吸収層が必要無い。
【0033】
分級した球状コレステリック液晶粒子溶液は脱水乾燥を行った後、各種の結着剤、分散剤、助剤等から適宜選択して混練してなるグラビア印刷用、スクリーン印刷用等の各種印刷用のインキを適用することが出来る。これらの球状コレステリック液晶粒子インキは球状コレステリック液晶粒子を10〜50重量%含んだインキであることが好ましい。
【0034】
また、本発明の真偽判定方法に使用する右回転の真偽判定フィルター17及び左回転の偽判定フィルター20は、円偏光板であり、PVA延伸フィルムにヨードを吸収させたP
VA−ヨウ素型、二色性染料型、金属または金属化合物含有型、ポリエン型などの高分子多結晶型が考えられ、特にPVA−ヨウ素型、二色性染料型フィルムが用いられた偏光フィルムに1/4λ波長位相差フィルムを重ねたものであり、位相差を1/4λ分進めるか遅らすかで、右または左の回転方向が決まるものである。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。
【0036】
〈実施例1〉
螺旋軸が左の紫外線硬化性コレステリック液晶10gに平均粒子径5μmの黒色粒子を10g、及び界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.2g添加し均一となるよう混合した。これを500ml容量のガラス容器中で、攪拌機を用い攪拌している純水200g中に、コレステリック液晶を攪拌しながら全量加え、1500rpmで10分攪拌した。この時の溶液温度は40℃に保持した。
【0037】
その後攪拌を行いながら高圧水銀灯を用い、ガラス容器の中心にあたる紫外線の積算光量が3000mjとなるよう紫外線照射しコレステリック液晶を硬化した。作成した溶液は、10000rpmで1分遠心分離を行い上澄み液を回収し、残渣は除去した。さらにこの上澄み液を5μmのポアを持つ濾紙で濾過を行い濾紙上のコレステリック液晶を回収した。
【0038】
回収したコレステリック液晶の概観は略球状であり、平均粒子径は8μmであった。また、球状コレステリック液晶粒子は緑色を呈していた。球状コレステリック液晶粒子5gを10%のポリビニルアルコール溶液20g中に分散させ、塗液とした。
【0039】
一方、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に螺旋軸が右の紫外線硬化性コレステリック液晶を10μmとなるようダイコーターを用いて塗布し、50℃、酸素濃度0.1%以下の窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用い、積算光量500mjの照射条件で硬化させ、高分子コレステリック液晶フィルムを得た。
【0040】
このフィルムのコレステリック液晶面に星型の抜き模様でドライラミネート用接着剤を厚さ1μmとなるよう塗布し、高分子コレステリック液晶の転写フィルムとした。
【0041】
次に、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、グラビア印刷機を用い墨インキを厚さ2μmとなるよう塗布、乾燥させた。
【0042】
墨印刷面に、高分子コレステリック液晶上の接着剤面が向き合う用に重ね合わせ、ラミネートを行い、その後高分子コレステリック液晶の支持体を剥離した。
【0043】
高分子コレステリック液晶が星型に抜けた部分に、螺旋軸が右である球状コレステリック液晶粒子を含むインキをスクリーン印刷機にて厚さ10μmとなるよう印刷し、次いで90℃のオーブンで3分乾燥させ、実施例1のサンプルとした。
【0044】
上記で得られた偽造防止媒体10を正面から見ると、高分子コレステリック液晶部11は光沢のある青であり、球状コレステリック液晶粒子部12は光沢のある緑であった。さらに目視角度を変えることで、高分子コレステリック液晶部は紫に変化し、球状コレステリック液晶粒子部は緑のままであった。また、右回転の真偽判定フィルターを通して見ると高分子コレステリック液晶11は暗くなり、球状コレステリック液晶フレーク部12は光沢のある緑がそのまま確認できた。次に左回転の真偽判定フィルターを通してみると、高分子コレステリック液晶部は光沢のある青が見え、球状コレステリック液晶粒子部は暗
くなった。これらのことにより、コレステリック液晶を用いながら、カラーシフトを起こさず、さらにフィルターにて真偽判定ができることより、より一層偽造防止効果が高まるものであった。
【0045】
〈実施例2〉
赤い色の右回転球状コレステリック液晶粒子と、緑色の左回転球状コレステリック液晶粒子を重量比で1対1で配合した他は実施例1と同様にして、実施例2のサンプルを得た。
【0046】
上記で得られた偽造防止媒体20を正面から見ると、高分子コレステリック液晶部11は光沢のある青であり、球状コレステリック液晶粒子部22は光沢のある黄であった。さらに目視角度を変えることで、高分子コレステリック液晶部は紫に変化し、球状コレステリック液晶粒子部は黄のままであった。また、右回転の真偽判定フィルターを通して見ると高分子コレステリック液晶22は暗くなり、球状コレステリック液晶粒子部は緑色に見えた。次に左回転の真偽判定フィルターを通してみると、高分子コレステリック液晶部は光沢のある青色が見え、球状コレステリック液晶粒子部は赤色が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の偽造防止媒体の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した本発明の偽造防止媒体のX−X面の断面図である。
【図3】図1に示した本発明の偽造防止媒体を、角度を変えて見た場合の一形態を示す平面図である。
【図4】本発明における球状コレステリック液晶粒子の状態を示す模式断面図である。
【図5】本発明における球状コレステリック液晶粒子の反射光が、角度を変えても液晶からの反射光に変化が無いことを示す模式断面図である。
【図6】従来の高分子コレステリック液晶の反射光が目視角度によって色が変わることを示す模式断面図である。
【図7】図1に示す本発明の偽造防止媒体を真偽判定用左円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図8】図1に示す本発明の偽造防止媒体を真偽判定用右円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図9】本発明の偽造防止媒体の一実施形態を示す平面図である。
【図10】図9に示した本発明の偽造防止媒体を真偽判定用左円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図11】図9に示した本発明の偽造防止媒体を真偽判定用右円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
10、30・・・偽造防止媒体
11・・・螺旋軸の回転方向が右方向の高分子コレステリック液晶層
12・・・螺旋軸の回転方向が左方向の球状コレステリック液晶粒子層
13・・・透明支持基材
14・・・光吸収層
16・・・着色顔料粒子
17・・・コレステリック液晶
18・・・真偽判定用左円偏光フィルター
19・・・真偽判定用右円偏光フィルター
20・・・球状コレステリック液晶粒子
31・・・自然光
32・・・反射光
33・・・旋回方向が右でかつ反射色が赤の球状コレステリック液晶粒子と、旋回方向が左でかつ反射色が緑の球状コレステリック液晶粒子が1対1で配合された部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機などによる複製を防止する、例えば、クレジットカード、各種金券、身分証明書などの真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に紙などに印刷された文字や画像を複写することができるようになった。特に、最近のカラーデジタル複写機によれば、原稿か複写物か見分けが極めて困難な複写物でさえも容易に作成することができるようになった。
【0003】
一般的なカラーデジタル複写機の原理は、原稿に光を照射し、反射光をCCDラインセンサで検知する。CCDラインセンサでは、反射光の強度に応じたデジタル信号を生成し、複写機内のメモリに送信する。この読み取り過程をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色について行い、それぞれの場合のデジタル信号をメモリに格納する。次に格納されたデジタル信号に基づいて、レーザ光を感光体ドラムの表面に照射し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のトナーを感光体ドラムの上に順次静電吸着し、これらのトナーを順次紙などのシート上に転写して定着させる。これにより、カラーの画像が形成された精巧な複写物を得ることができる。
【0004】
係るカラー複写は便利である反面、株券、債券、約束手形、小切手などの有価証券や、入場券、搭乗券などの印刷物などが容易に偽造されるという問題が増加している。このため、容易に複写できないように印刷物に複製防止対策を施す提案が種々なされている。
【0005】
例えば、カラー複写による複写物の色が原稿の色と異なるようにする技術が提案されている。その例として原稿とされうる有価証券などに非常に淡い色で着色すると、複写物では淡い色の部分が正確に再現できないもの、また、原稿に大きさの異なる網点を形成しておくと複写しても小さい網点の再現性が悪化するもの、さらにカラー複写機のトナーにない色である緑、紫、橙、金、銀等を印刷することで複写物の色の再現性が悪化するもの、また、人間の視認度が低い領域例えば380nm〜450nmおよび650〜780nmあたりの波長域に特徴をもたせた2種類のインキを用いることで見た目には同色であるが、カラー複写機での複写物は異なる色に再現するものなどがある。
【0006】
しかし、カラー複写機では、3色に分解されてメモリに格納されたデジタルデータを変更することによって、出力する色を補正することが可能である。また、カラー複写機と同様の原理を利用してカラースキャナーで読み込んだデジタルデータをコンピュータで補正し、カラープリンタまたはカラー複写機で出力するようなデジタルプレスが普及しつつある。従って、現在多少の手間をかければ、原稿の色を精巧に再現することが可能であり、上記のような技術では偽造を完全に防止することは困難である。
【0007】
また、例えばカラー複写機では再現不可能な特殊部分を有価証券などに設けておく技術も提案されている。このうち、ホログラム箔などのOVD(Optical Variable Device)箔を有価証券などの表面上に設ける技術はすでに実用化されている。これによれば、ホログラムの銀面の光が鏡面反射するため、CCDラインセンサに反射光が入射せず、原稿で銀面だった部分が複写物では黒色に再現されるもの、あるいは、屈折率の異なるセラミックを適当な膜厚を持つ複数層に積層すると、見る角度によって色が変化する特殊な光学薄膜が形成され、かかる性質は、複写物では得ることができないの
で、容易に真偽判定が可能であるもの、さらにまた、この方法で形成された薄膜を細かく砕き、破片をインキに混入して印刷を行う方法も提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの技術では、ホログラム箔やセラミック膜を蒸着やスパッタリングのようなドライコーティングで形成する必要があり、工程が複雑化する上、製造コストが極めて高いという問題点がある。
【0009】
さらにまた、ホログラムと同様の見る角度によるカラーシフト(反射光の色変化)の効果を有するものとして、コレステリック液晶(特許文献1〜4参照)を用いたものが提案されている。
【0010】
上記の提案は、高分子コレステリック液晶の波長選択反射、円偏光選択反射、及び視角変化によるカラーシフト効果を利用することにより偽造防止効果を得ようとするものである。また、コレステリック液晶の一方の面にホログラム形成部を設け、反射光と同一の円偏光の光を反射光とは異なる方向に反射させるものや、液晶顔料と電離放射線硬化性樹脂を用いてインキ化する技術が開示されている。さらには高分子液晶と位相差子を組み合わせ反射光の回転方向を制御する技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、ディスプレイ用途において円偏光版の利用頻度が頻繁に行われるようになった昨今、コレステリック液晶が入手し易くなったこと、及びエンボス技術が発達したためレリーフ型の回折光を用いた反射層の形成が以前より低難易度化していることにより偽造防止効果が低下してきた。そこで、位相差子の表裏にコレステリック液晶を設置し、コレステリック液晶の螺旋方向は同一でありながら回転方向を制御する手法が提案されているが、位相差子自身が身近な材料、例えばセロファンテープ等で一見似た性能が出せるためやはり偽造防止効果の難易度は高く無い。
【0012】
下記に特許文献を記す。
【特許文献1】特開昭63−51193号公報
【特許文献2】WO00/13065号
【特許文献3】特開2002−114935号公報
【特許文献4】特開2002−255200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、市販のカラー複写機などでは偽造が極めて困難で、廉価で製造することが可能であり、かつ、従来のコレステリック液晶媒体では実現が難しい、視認角度を変化させてもカラーシフトが起こらないことで、真正品と偽造品を目視または簡単な装置を用いて明確に判別することができる真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体およびその偽造防止媒体による真偽判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を達成するために、
請求項1の発明は、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、
前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子もしくは右の球状コレステリック液晶粒子、及び旋回方向が左と右の球状コレス
テリック液晶粒子が重ならないように形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0016】
また、請求項3の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子の混合物からなる液晶パターン層であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0017】
また、請求項4の発明は、前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子が一部もしくは全て重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体である。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記球状コレステリック液晶粒子は、その球状コレステリック液晶粒子の中心が光吸収着色顔料球状粒子からなり、その光吸収着色顔料球状粒子を芯としてコレステリック液晶が放射状に同一ピッチで配向して球状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体である。
【0019】
また、請求項6の発明は、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成して対象物の真偽を判定するための偽造防止媒体による真偽判定方法であって、
前記偽造防止媒体の基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されており、前記対象物に設けた偽造防止媒体を左円偏光の光だけを通す左円偏光フィルターと右円偏光の光だけを通す右円偏光フィルターを備える真偽判定用の偏光フィルターを通して目視にて前記液晶パターンを識別することにより対象物の真偽を判定することを特徴とする偽造防止媒体による真偽判定方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、従来の高分子コレステリック液晶は、液晶層の螺旋ピッチに対応した波長の円偏光を反射するが、目視角度を変えると反射波長が変化し、カラーシフトが発生するという問題点を解消できる。即ち、本発明における球状コレステリック液晶粒子は、液晶層の螺旋ピッチに対応した波長の円偏光を反射し、かつ目視角度を変えても同じ波長の円偏光を反射する。このことより、従来のコレステリック液晶では不可能であった非カラーシフト性を有することによって、真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する、複写が困難な、球状コレステリック液晶粒子を用いた偽造防止媒体を提供することができる。
【0021】
また、上記の偽造防止媒体を真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に設けて、偽造防止媒体を左円偏光フィルターと右円偏光フィルターを備えた偏光フィルターを通して目視にて、容易に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターンを識別することにより、簡単な手段によって、真偽判定対象である情報記録体の一部に設けた偽造防止媒体による真偽を判定することができる。
【0022】
従って、本発明は、上記の偽造防止媒体を、例えば、クレジットカード、各種金券、身分証明書などの情報記録体の一部に視認可能に形成することにより、複写機等での複写を防止する偽造防止技術として優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、左螺旋の高分子コレステリック液晶と右螺旋の球状コレステリック液晶粒子を用いてトリアセチルセルロース(以下TAC)基材上に印刷した一実施の形態を示す平面概略図であり、図2は、図1の偽造防止媒体のX−X面の側断面概略図であり、図3は、図1の偽造防止媒体を傾けて見たときの見え方を示したものである。図4は、図1に示す偽造防止媒体12に
設置された球状コレステリック液晶粒子の液晶配向情態を示し、図5は、模式的に球状コレステリック液晶を、角度を変えて視認したときの目に入る反射光を表したものであり、図6は、図1に示す偽造防止媒体の11に相当するコレステリック液晶の配向情態と反射光の模式図である。図7は、図1の偽造防媒体上を右回りの真偽判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図であり、図8は、図1の偽造防止媒体を左回りの真偽判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面外略図である。図9は、左螺旋の高分子コレステリック液晶と、右及び左螺旋の球状コレステリック液晶粒子を混合したものを用いてトリアセチルセルロース(以下TAC)基材上に印刷した一実施の形態を示す平面概略図である。図10は、図9の偽造防止媒体を右回りの真贋判定フィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図であり、図11は、図9の偽造防止媒体を左回りのフィルターを介して見た場合の見え方の平面概略図である。
【0024】
まず、本発明の偽造防止媒体は、例えば図1に示すように、螺旋軸の回転方向が左の高分子コレステリック液晶層11、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶を含む層12が同時に目視可能な様に配置されている。この偽造防止印刷物10は、図3に示したように目視角度を変えると高分子コレステリック液晶層11は短波長側に色が変化して見えるが、球状コレステリック液晶層12は色が変化しない。図4は、球状コレステリック液晶粒子の模式図であり、球状コレステリック液晶粒子の中心は光吸収性顔料となっている。この顔料を芯としてコレステリック液晶が放射状に等ピッチで配向した構造をとり、全体として球状となっている。図5は、この球状コレステリック液晶粒子を自然光の基で、角度を変えて目視したときの模式図である。自然光は球状コレステリック液晶粒子の回転方向、及び回転ピッチと等しい光が反射され、その他の光は中心の光吸収顔料で吸収される。コレステリック液晶は、中心の光吸収顔料の周りに等間隔で、かつ、表面を覆う形で形成されているため、目視角度を変えても常に同じ回転方向とピッチ面が現れ、結果として反射光は一定の波長から得られる同じ反射色であり、回転方向もどの角度から見ても同じとなる。図6は、高分子コレステリック液晶が平面状に設置された場合の光の反射を表す模式図である。コレステリック液晶層に自然光が当たると、同方向、同ピッチの光が反射され、その他の光はコレステリック液晶層を透過し、下面の光吸収層に吸収される。観察者にはこの反射光が視認されるが、目視角度を変えると、平面状コレステリック液晶の見かけピッチが減少し反射波長は短波側にシフトする。このブルーシフトによって、高分子コレステリック液晶部は色変化が起こる。これらの効果によって、図1に示す偽造防止媒体は目視角度を変えると球状コレステリック液晶粒子部は色変化が起こらず、高分子コレステリック液晶層部は色変化が生じる事となる。
【0025】
また、図7は、図1に示した偽造防止媒体10を、右回転の真偽判定フィルター18を介して見た場合の見え方について示した図である。螺旋軸が左の高分子コレステリック液晶層部は左回転の光を反射しているため、フィルターと逆回転の光は透過しないため暗くなり、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶粒子層部は右回転の光を反射しているためフィルターを透過することから目視での色変化は生じない。このため、球状コレステリック液晶粒子層部のみ視認できる。
【0026】
また、図8は、図1に示した偽造防止媒体10を、左回転の真偽判定フィルター19を介して見た場合の見え方について示した図である。螺旋軸が左の高分子コレステリック液晶層部は左回転の光を反射しているため、フィルターと同回転の光であることから透過し、螺旋軸の回転方向が右の球状コレステリック液晶粒子層部は右回転の光を反射しているためフィルターと逆回転の光であるために透過せず暗くなる。このため、コレステリック液晶層部のみ視認できる。
【0027】
例として上げた構成以外に、球状コレステリック液晶粒子の旋回ピッチを変更し反射色を異なるようにしたものをパターン、混合及び積層といった構成で基材に設置しても良い
。勿論、旋回方向が右や左の球状コレステリック液晶粒子間で旋回ピッチを変更しても良く、その組み合わせは適宜選択して用いれば良い。また、球状コレステリック液晶粒子の中心を無色透明な材料で構成しても良い。さらには、目視する面とは反対の面に粘着剤や接着剤を塗布しても良いし、偽造防止媒体を保護する目的で所謂保護層を設置してもなんら問題は無い。
【0028】
以下に本発明の球状コレステリック液晶粒子等について詳しく説明する。ここで球状コレステリック液晶粒子は、キラル相を有する三次元架橋性液晶物質を液中で分散、配向し、三次元架橋し、所望の粒度に分級して得られた顔料である。この顔料によって反射した光は円偏光である。液晶物質の中でもコレステリック液晶はねじれ構造を有し、そのねじれ軸(螺旋軸)に沿って光の屈折率が周期的に変動するため、そのねじれ構造のピッチに等しい波長の光を選択的に反射する。従って、ねじれ構造のピッチを温度、及びまたはカイラル剤を用いて制御することで所望のコレステリック液晶による反射色を作り出すことが可能である。また、ねじれ構造を有する液晶は、各分子が層を成して配置されており、層中で均一に配列されることで初めてその光学的特性を形成する。この場合、分子は層毎にその優先方向を変えるのでねじれ構造が生じる。各分子の配向は公知の方法、例えば配向層または電解または磁界によって制御できる。また、その固定化の代表的な方法には、キラル相を有する三次元架橋性液晶と多官能性重合化合物を組合せ、紫外線を照射することで三次元架橋し、ねじれ構造を固定化できコレステリック高分子液晶ができる。
【0029】
コレステリック高分子液晶の出発物質としては、紫外線から赤外線の光の波長に対して等しいピッチのねじれ構造を有する全てのコレステリック液晶物質が利用できる。即ち、キラル相を有する液晶物質はネマチック、スメクチック構造をとる液晶にキラル物質を加えることで製造できる。キラル物質の種類及び分子量がねじれ構造の向きやピッチ、延いては反射光の波長を決定する。さらに構造中に不整炭素を持つ液晶であればキラル物質の添加無しにねじれ構造をとらせることも可能である。キラル物質の添加、無添加に関わらず、ねじれ構造のピッチ変更には温度の変更も有効である。ただし、ピッチは温度が低いと長く、温度が高いと短くなるため、温度が低すぎる場合には反射光は赤外線領域に、高いと分子による吸収を除けば紫外線領域に入り、さらには等方層となり液晶性を示さなくなる点があるため意匠性、偽造防止性等必要な反射光を得るために、どの波長を利用するかによって適正に管理する必要がある。
【0030】
さらに、出発物質は重合性基、重縮合性基または重付加に有効な基を有し、従来公知のエネルギー線硬化性化合物が使用されるが、特に分子中に2個ないしそれ以上のエネルギー線硬化性基を有する単量体、オリゴマーを含有することが好ましい。ラジカル系光重合性単量体として従来公知の、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能性単量体、ポリウレタンポリアクリレート、エポキシ樹脂系ポリアクリレート、アクリルポリオールポリアクリレート等の他官能性オリゴマー類が好ましい。一官能性の単量体としては、アルキル(C1〜C18)(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート等である。カチオン系光重合性単量体として従来公知の芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル系化合物が挙げられる。さらに好ましくは、3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0031】
本発明の偽造防止用インキのコレステリック液晶フレークの製造で使用するエネルギー
線硬化を起こすための重合開始剤等は、照射するエネルギー線により適切な特性の公知の重合開始剤が必要に応じて使用される。例えば、光重合開始剤としては従来公知のものが使用される。ラジカル系光重合開始剤として、α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系等のアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、α−アシルオキシムエステル系等公知のものが使用され、具体的にはα−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとの併用等が挙げられる。カチオン系光重合開始剤としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、さらに好ましくは、公知の増感剤や過酸化物と適宜併用することができる。例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドロキシアセトフェノン系、トリアリルスルホニウム塩系、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、メタロセン化合物−アントラセン併用系等である。
【0032】
球状コレステリック液晶粒子の製造方法は、例えば、まず3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンと光重合開始剤、及び界面活性剤の混合溶液を、攪拌している純水中に添加してエマルションを作成する。エマルション作成に於ける攪拌に起因するせん断力がコレステリック液晶の配向を促すことになる。エマルションの粒子径は1〜100μm、より好ましくは3〜20μmであり、1μmより小さいと、反射色が明瞭に現れず、100μmを超えるとコレステリック液晶の配向が不十分となるばかりでなく、次工程で行なう紫外線による架橋、硬化が十分に行なわれない。エマルション作成中の水温は、コレステリック液晶の反射色、粒子径に影響を及ぼし粒子径のコントロールには適宜攪拌速度を変更したり、用いる界面活性剤のHLBに基づいて選定すれば良い。反射色は必要とする波長に応じて適正に管理すれば良い。エマルション作成に使用される界面活性剤は、一般に用いられるものが適宜使用出来、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性のものから適宜選択されるが、好ましくは非イオン性のポリオキシエチレンアルキルエーテルやプルロニックの非イオン性界面活性剤が紫外線硬化や液の泡立ちの低さから使用し易い。反射色と粒子径の分布が定まった後、紫外線を照射してコレステリック液晶の硬化を行う。硬化を行なった後、より高い非カラーシフト性を得るため分級を行っても良く、分級には濾過方式や沈降速度差、遠心力の利用等、公知の方法が用いられ、粒径精度を表すCV値で20%以下、より好ましくは10%以下となるよう調整する。また、球状コレステリック液晶粒子のエマルション作成工程にて、着色性の顔料粒子をコレステリック液晶に混ぜた状態で純水中に添加しても良い。顔料性粒子は球である事が好ましく、例えば液晶ディスプレイに使用されるスペーサー粒子が使用可能であり材質はシリカやアクリル等公知のものが使用出来る。顔料粒子の粒子径は最終的に完成される球状コレステリック液晶粒子の粒子径より小さい必要があり、その大きさは0.1〜50μmである。また、粒子径の制御の観点から着色顔料の粒子径も均一である方が好ましくCV値で20%以下、より好ましくは5%以下が良い。 この着色顔料の周りにコレステリック液晶が吸着し、コレステリック液晶層で覆われた球状コレステリック液晶粒子が作成される。コレステリック液晶を透過した光は中心の着色顔料に吸収され、コレステリック液晶の反射色を明瞭にする働きを持つため通常のコレステリック液晶の反射色を明瞭にするための下地の光吸収層が必要無い。
【0033】
分級した球状コレステリック液晶粒子溶液は脱水乾燥を行った後、各種の結着剤、分散剤、助剤等から適宜選択して混練してなるグラビア印刷用、スクリーン印刷用等の各種印刷用のインキを適用することが出来る。これらの球状コレステリック液晶粒子インキは球状コレステリック液晶粒子を10〜50重量%含んだインキであることが好ましい。
【0034】
また、本発明の真偽判定方法に使用する右回転の真偽判定フィルター17及び左回転の偽判定フィルター20は、円偏光板であり、PVA延伸フィルムにヨードを吸収させたP
VA−ヨウ素型、二色性染料型、金属または金属化合物含有型、ポリエン型などの高分子多結晶型が考えられ、特にPVA−ヨウ素型、二色性染料型フィルムが用いられた偏光フィルムに1/4λ波長位相差フィルムを重ねたものであり、位相差を1/4λ分進めるか遅らすかで、右または左の回転方向が決まるものである。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。
【0036】
〈実施例1〉
螺旋軸が左の紫外線硬化性コレステリック液晶10gに平均粒子径5μmの黒色粒子を10g、及び界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.2g添加し均一となるよう混合した。これを500ml容量のガラス容器中で、攪拌機を用い攪拌している純水200g中に、コレステリック液晶を攪拌しながら全量加え、1500rpmで10分攪拌した。この時の溶液温度は40℃に保持した。
【0037】
その後攪拌を行いながら高圧水銀灯を用い、ガラス容器の中心にあたる紫外線の積算光量が3000mjとなるよう紫外線照射しコレステリック液晶を硬化した。作成した溶液は、10000rpmで1分遠心分離を行い上澄み液を回収し、残渣は除去した。さらにこの上澄み液を5μmのポアを持つ濾紙で濾過を行い濾紙上のコレステリック液晶を回収した。
【0038】
回収したコレステリック液晶の概観は略球状であり、平均粒子径は8μmであった。また、球状コレステリック液晶粒子は緑色を呈していた。球状コレステリック液晶粒子5gを10%のポリビニルアルコール溶液20g中に分散させ、塗液とした。
【0039】
一方、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に螺旋軸が右の紫外線硬化性コレステリック液晶を10μmとなるようダイコーターを用いて塗布し、50℃、酸素濃度0.1%以下の窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用い、積算光量500mjの照射条件で硬化させ、高分子コレステリック液晶フィルムを得た。
【0040】
このフィルムのコレステリック液晶面に星型の抜き模様でドライラミネート用接着剤を厚さ1μmとなるよう塗布し、高分子コレステリック液晶の転写フィルムとした。
【0041】
次に、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、グラビア印刷機を用い墨インキを厚さ2μmとなるよう塗布、乾燥させた。
【0042】
墨印刷面に、高分子コレステリック液晶上の接着剤面が向き合う用に重ね合わせ、ラミネートを行い、その後高分子コレステリック液晶の支持体を剥離した。
【0043】
高分子コレステリック液晶が星型に抜けた部分に、螺旋軸が右である球状コレステリック液晶粒子を含むインキをスクリーン印刷機にて厚さ10μmとなるよう印刷し、次いで90℃のオーブンで3分乾燥させ、実施例1のサンプルとした。
【0044】
上記で得られた偽造防止媒体10を正面から見ると、高分子コレステリック液晶部11は光沢のある青であり、球状コレステリック液晶粒子部12は光沢のある緑であった。さらに目視角度を変えることで、高分子コレステリック液晶部は紫に変化し、球状コレステリック液晶粒子部は緑のままであった。また、右回転の真偽判定フィルターを通して見ると高分子コレステリック液晶11は暗くなり、球状コレステリック液晶フレーク部12は光沢のある緑がそのまま確認できた。次に左回転の真偽判定フィルターを通してみると、高分子コレステリック液晶部は光沢のある青が見え、球状コレステリック液晶粒子部は暗
くなった。これらのことにより、コレステリック液晶を用いながら、カラーシフトを起こさず、さらにフィルターにて真偽判定ができることより、より一層偽造防止効果が高まるものであった。
【0045】
〈実施例2〉
赤い色の右回転球状コレステリック液晶粒子と、緑色の左回転球状コレステリック液晶粒子を重量比で1対1で配合した他は実施例1と同様にして、実施例2のサンプルを得た。
【0046】
上記で得られた偽造防止媒体20を正面から見ると、高分子コレステリック液晶部11は光沢のある青であり、球状コレステリック液晶粒子部22は光沢のある黄であった。さらに目視角度を変えることで、高分子コレステリック液晶部は紫に変化し、球状コレステリック液晶粒子部は黄のままであった。また、右回転の真偽判定フィルターを通して見ると高分子コレステリック液晶22は暗くなり、球状コレステリック液晶粒子部は緑色に見えた。次に左回転の真偽判定フィルターを通してみると、高分子コレステリック液晶部は光沢のある青色が見え、球状コレステリック液晶粒子部は赤色が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の偽造防止媒体の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した本発明の偽造防止媒体のX−X面の断面図である。
【図3】図1に示した本発明の偽造防止媒体を、角度を変えて見た場合の一形態を示す平面図である。
【図4】本発明における球状コレステリック液晶粒子の状態を示す模式断面図である。
【図5】本発明における球状コレステリック液晶粒子の反射光が、角度を変えても液晶からの反射光に変化が無いことを示す模式断面図である。
【図6】従来の高分子コレステリック液晶の反射光が目視角度によって色が変わることを示す模式断面図である。
【図7】図1に示す本発明の偽造防止媒体を真偽判定用左円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図8】図1に示す本発明の偽造防止媒体を真偽判定用右円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図9】本発明の偽造防止媒体の一実施形態を示す平面図である。
【図10】図9に示した本発明の偽造防止媒体を真偽判定用左円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【図11】図9に示した本発明の偽造防止媒体を真偽判定用右円偏光フィルターを介して見た場合の一形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
10、30・・・偽造防止媒体
11・・・螺旋軸の回転方向が右方向の高分子コレステリック液晶層
12・・・螺旋軸の回転方向が左方向の球状コレステリック液晶粒子層
13・・・透明支持基材
14・・・光吸収層
16・・・着色顔料粒子
17・・・コレステリック液晶
18・・・真偽判定用左円偏光フィルター
19・・・真偽判定用右円偏光フィルター
20・・・球状コレステリック液晶粒子
31・・・自然光
32・・・反射光
33・・・旋回方向が右でかつ反射色が赤の球状コレステリック液晶粒子と、旋回方向が左でかつ反射色が緑の球状コレステリック液晶粒子が1対1で配合された部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、
前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子もしくは右の球状コレステリック液晶粒子、及び旋回方向が左と右の球状コレステリック液晶粒子が重ならないように形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子の混合物からなる液晶パターン層であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子が一部もしくは全て重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記球状コレステリック液晶粒子は、その球状コレステリック液晶粒子の中心が光吸収着色顔料球状粒子からなり、その光吸収着色顔料球状粒子を芯としてコレステリック液晶が放射状に同一ピッチで配向して球状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成して対象物の真偽を判定するための偽造防止媒体による真偽判定方法であって、
前記偽造防止媒体の基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されており、前記対象物に設けた偽造防止媒体を左円偏光の光だけを通す左円偏光フィルターと右円偏光の光だけを通す右円偏光フィルターを備える真偽判定用の偏光フィルターを通して目視にて前記液晶パターンを識別することにより対象物の真偽を判定することを特徴とする偽造防止媒体による真偽判定方法。
【請求項1】
真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成する偽造防止媒体であって、
前記偽造防止媒体は、基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子もしくは右の球状コレステリック液晶粒子、及び旋回方向が左と右の球状コレステリック液晶粒子が重ならないように形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子の混合物からなる液晶パターン層であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記液晶パターン層が、旋回方向が左の球状コレステリック液晶粒子と旋回方向が右の球状コレステリック液晶粒子が一部もしくは全て重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記球状コレステリック液晶粒子は、その球状コレステリック液晶粒子の中心が光吸収着色顔料球状粒子からなり、その光吸収着色顔料球状粒子を芯としてコレステリック液晶が放射状に同一ピッチで配向して球状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
真偽判定対象である情報記録体の一部に視認可能に形成して対象物の真偽を判定するための偽造防止媒体による真偽判定方法であって、
前記偽造防止媒体の基材上に、球状コレステリック液晶粒子からなる液晶パターン層が形成されて配置されており、前記対象物に設けた偽造防止媒体を左円偏光の光だけを通す左円偏光フィルターと右円偏光の光だけを通す右円偏光フィルターを備える真偽判定用の偏光フィルターを通して目視にて前記液晶パターンを識別することにより対象物の真偽を判定することを特徴とする偽造防止媒体による真偽判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−141117(P2007−141117A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336674(P2005−336674)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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