説明

偽造防止機能付シート及びその製造方法、物品、認証カード、バーコードラベル、及び認証システム

【課題】コレステリック液晶の特性を利用して認証情報を記録する場合に偽造困難性の高い偽造防止機能付シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも可視光領域に選択反射波長帯域を有するコレステリック液晶層110を有し、このコレステリック液晶層110が厚みの略等しい単一層であって、少なくとも1ヶ所に選択反射波長帯域が異なる認証領域112が設けられている。好ましくは、コレステリック液晶層100の一方側に接着剤層130を設ける。好ましくは、コレステリック液晶層110と接着剤層130の間に基材120を設ける。好ましくは、コレステリック液晶層110の接着剤層130側に光吸収層140を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪意を持って偽造や書き換えなどの行為をなす第三者や偽造製品を販売する第三者に対し、その偽造困難性を有する認証情報を記録した偽造防止機能付シート及びその製造方法、物品、認証カード、バーコードラベル、及び認証システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードやIDカードには認証情報が記録されており、その真贋について、カードの背面に設けられた磁気記録部や前面に貼り合わせたホログラム等により行われてきた。例えば、ホログラム画像による認証は、下記特許文献1,2にあげる米国特許に開示されている。
【0003】
また、下記特許文献3に開示されるパスポートでは、高分子液晶材料から形成される層に偏光板を介さない目視では視認不能な潜像を形成して、その下面に反射層を形成する。そして、偏光を照射して反射光を偏光板を介して観察することによって、潜像として形成されたパターンの認証を行う方法を開示している。
【0004】
また、位相差フィルムに潜像を形成する手段としては、下記特許文献4に開示されるように、位相差フィルムにガラス転移点以上の熱を部分的に付与して、その部分の位相差(分子の配向度)を低下させる方法や、位相差フィルムを溶解又は膨潤させうる薬液を塗布することにより、その部分の位相差を低下させる方法がある。
【0005】
さらに、下記特許文献5に開示される光学素子は、位相差層の光学軸の方位角を変えて潜像を形成し、偏光板を介した観察で認証を行う方法がある。
【0006】
また、コレステリック液晶を認証手段に用いるものとしては、下記特許文献6,7がある。特許文献6では、コレステリック液晶の有する選択的円偏光反射特性やその視角変化時のブルーシフトといった特性を用いるものであり、このコレステリック液晶を単独で使用するかあるいはホログラムと組み合わせて使用する方法が提案されている。また、特許文献7では、特許文献6に開示されるコレステリック液晶層と特許文献1に開示されるホログラム画像とを組み合わせた技術を提案している。
【特許文献1】米国特許第5574790号
【特許文献2】米国特許第5393099号
【特許文献3】特開2001−232978号公報
【特許文献4】特開平8−334618号公報
【特許文献5】特表2001−525080号公報
【特許文献6】特開平11−42875号公報
【特許文献7】特開平11−151877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に開示されるクレジットカード等の認証の場合、ホログラム部分の偽造が問題になってきている。ホログラムパターンの場合、μmオーダーの凹凸にアルミニウム等の高反射率の金属薄膜を形成して製造する。また、ホログラムパターンは目視可能であり、切削装置があれば、模造が可能となる場合がある。
【0008】
前記特許文献3の場合、潜像の形成は、サーモトロピックな高分子液晶層への熱過程などを用いて作製することが開示されている。この方式の場合、高分子液晶の配向手段が圧力等の外力によるので、充分な配向性を得るためには高い圧力での加圧や十分なずり応力が必要である。従って、加熱パターンに応じた位相差の変調された潜像を得るためには、液晶の配向は面内に複屈折を持つようにする必要があり、そのためには遅相軸が面内の特定方向を持つように液晶状態で液晶に十分なずり応力をかける必要がある。そのため、加熱下で基材や液晶層自体に圧力がかかるため、基材の変形や液晶層へのダメージの発生などの問題があり、例えば、押し当てた刻印が凹凸のパターンとなって偏光板を用いなくても潜像が可視化され見えてしまうという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献4に開示される方法でも潜像を作ることはできるが、位相差フィルムの位相差の解消を行なおうとすると、位相差フィルムの温度をガラス転移点以上に加熱して、さらに所定時間以上保持する必要がある。位相差フィルムのガラス転移点以上の加熱により、前述したように位相差フィルムの分子配向の緩和が生じ、表面形状への凹凸の発生によって、潜像が可視化されて見えてしまうという問題があった。これは、非接触状態での加熱を行った場合も同様であり、無圧力の下でも分子緩和によってフィルムの恒久的な変形が生じる。
【0010】
さらに薬液を塗布する場合も同様で、位相差フィルムの分子配向緩和が生じるということは、位相差フィルムを形成する高分子に対し高度な自由度を与える必要があり、結果として緩和に伴って表面形状の変形が生じることとなっていた。薬液塗布の場合、薬液自体の滲入でこれを制御できるものの、表面からの滲入であるため、形状緩和を伴わない程度の場合、位相差を十分に小さくすることができない。すなわち、潜像のコントラストを大きくできないという問題があった。さらに、薬液膨潤の場合、位相差フィルムの厚さ方向への滲入と同時に幅方向への広がりも生じるので、位相差の変化した部分と変化していない部分で形成される潜像の解像度が得られないという問題があった。
【0011】
特許文献5に開示される方法の場合、光配向膜を形成し、所定の方向を向いた偏光紫外線をマスクを介してあるいは走査して照射した後、さらに他の方向を向いた偏光紫外線を照射して、重合性液晶もしくは液晶高分子薄膜を形成し、これを配向・固定させる工程が必要であって、非常に複雑な工程を有する。このとき、液晶の配向方向を決定する光配向膜は高価であり、さらに重合性液晶や液晶高分子も比較的高価である。さらに、異なる方向の偏光方向を持つ一様な強い偏光紫外線光源を2つ用意する必要があるが、効率が低く装置自体も高価である。液晶層は、一般的に塗工工程によって作製されるが、液晶自体の複屈折の大きさが大きいため、一定の位相差を得ようとすると薄膜の厚み制御が困難であった。
【0012】
また特許文献6のようなコレステリック液晶を塗布する方法では、それ自身の存在と、その円偏光の選択波長反射帯域の設定、及び、特許文献7のようにホログラム画像との組み合わせなど他の偽造防止機能との組み合わせにより、偽造防止性を向上させている。しかし、コレステリック液晶の反射特性は、材料の屈折率特性の選択と材料の配合、すなわち、ネマチック液晶とカイラル剤の調合比率を決定すれば、後はそれを塗布するだけでよく、比較的容易に再現することができるという問題があった。また、コレステリック層とホログラム層の組み合わせに関しても、単にこれらを複合化すればよいので、一旦夫々の偽造が容易になれば組み合わせるのも容易となる。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、コレステリック液晶の特性を利用して認証情報を記録する場合に偽造困難性の高い偽造防止機能付シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
<偽造防止機能付シートの構成>
上記課題を解決するため本発明に係る偽造防止機能付シートは、
少なくとも可視光領域に選択反射波長帯域を有するコレステリック液晶層を有し、このコレステリック液晶層が厚みの略等しい単一層であって、少なくとも1ヶ所に選択反射波長帯域が他の領域とは異なる認証領域が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この偽造防止機能付シートの作用・効果を説明する。コレステリック液晶は、それが形成された平面に対して垂直なねじれの軸に対して、液晶の向きが回転する構造を有している。従って、コレステリック液晶の分子の向きは、平面と平行かつねじれ軸と垂直な方向を向く。また、液晶自体の特性により、ねじれ軸に垂直な平面のコレステリック分子の方向は、一定の配向ドメイン内では一定の方向を向く構造を有する。コレステリック液晶の方向が一回転する間に要するねじれ軸方向の距離がコレステリックピッチPである。コレステリック液晶の選択反射波長λrは、屈折率nとPより
λr=n・P・・・(1)
従って、円偏光の選択反射波長帯域λrは、用いられる液晶の屈折率異方性の大きさ、すなわち、液晶分子の常光屈折率noと、異常光屈折率neと、Pより、
no・P≦λr≦ne・P・・・(2)
で求めることができる。
【0016】
また、反射帯域幅Δλrは、noとneの差ΔnとPより、
Δλr=Δn・P・・・(3)
で与えられる。
【0017】
一般的にコレステリック液晶は、ネマチック液晶とそれを回転させるカイラル剤の混合物である。ネマチック液晶の成分と比べて、カイラル剤の量は微量であるから、式(2)は、コレステリック液晶のネマチック液晶成分の常光屈折率noと異常光屈折率neでほぼ代用することができる。これらnoとneは物質に固有の値であり、これにより決定される。また、ネマチック液晶は2種類以上の混合によって、その光学特性や液晶特性を変化させることができるので所定の特性に制御可能である。
【0018】
通常コレステリック性を示すネマチック液晶ではneがnoよりも大きい正の液晶である。式(2)で与えられる波長帯域を容易に制御する方法は、コレステリック液晶のピッチを変えることである。前述のように、コレステリック液晶の回転は、ネマチック液晶に添加されるカイラル剤に依存する。従って、ネマチック液晶に対するカイラル剤の濃度を変えることで、コレステリック液晶のピッチを容易に変化させることができる。
【0019】
すなわち、式(1)でコレステリックピッチPがP1からP2の範囲の値を有するとき、選択反射波長帯域λrpは、
n・P1≦λrp≦n・P2・・・式(4)
で求めることができる。
【0020】
さらに、液晶分子の屈折率異方性から、
no・P1≦λrp≦ne・P2・・・式(5)
このように、コレステリックピッチPの変化によって選択反射の中心波長と反射帯域を変化させることができるので、これを場所によって変えれば、反射色の異なる領域を形成することができる。そこで、コレステリック液晶層の中に、少なくとも1ヶ所に選択反射波長帯域が異なる領域(パターン)を設け、これを認証を行うための認証領域とすることができる。
【0021】
この反射色の異なる領域をパターン化して固定化することで、パターン化コレステリック層を形成することができ、単にコレステリック液晶層を形成するよりも、はるかに高い耐偽造性を付与することができる。認証領域として形成される認証情報としては、例えば、文字、数字、記号、形状やこれらの任意の組み合わせ、またその他の適宜のパターンや意匠形状、これらと文字等との任意の組み合わせにすることができ、特定の形態に限定されるものではない。本発明に係るコレステリック液晶層の場合、通常光下において、認証領域に形成された情報を観察することができ、隠蔽性は有していないが、製造するのが困難であるという特性を有しており、高い偽造防止機能を有するものである。以上の通り、コレステリック液晶の特性を利用して認証情報を記録する場合に偽造困難性の高い偽造防止機能付シートを提供することができる。
【0022】
本発明に係る偽造防止機能付シートは、他の原理に基づく認証手段、例えば、ホログラム層を形成したフィルムや位相差の異なる領域を形成した位相差フィルムなどと組み合わせるこちにより、さらに偽造困難性を高めることができる。
【0023】
本発明において、コレステリック液晶層の一方側に接着剤層を設けていることが好ましい。接着剤層(例えば、粘着剤層)を設けることで、偽造防止機能付シートを任意の物品に容易に貼り付けることができる。
【0024】
本発明において、コレステリック液晶層と前記接着剤層の間に基材を設けていることが好ましい。基材は裏打ちとして機能させることができ、シートに対して所望の強度を付与することができる。
【0025】
本発明において、コレステリック液晶層の前記接着剤層側に光吸収層を設けていることが好ましい。光吸収層としては、例えば、黒い紙があげられる。光吸収層を設けることで、認証領域と非認証領域とのコントラストをあげることができ、情報の読み取りあるいは確認を行い易くなる。
【0026】
本発明において、コレステリック液晶層の表面側に透明なホログラム層を設けていることが好ましい。偽造困難性の高いコレステリック液晶層に加えて、ホログラム層を有していることにより、更に耐偽造性を高めることができる。
【0027】
<偽造防止機能付シートの製造方法>
本発明に係る偽造防止機能付シートの製造方法は、
透明な基材に、少なくともネマチック液晶とカイラル剤と紫外線反応開始剤からなるコレステリック液晶性を示す重合性液晶を塗布する工程と、
記録すべき認証情報に基づきパターン化した紫外線を塗布面の一方側から照射する工程と、
この照射工程の後、塗布面の他方側から紫外線を照射する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0028】
前述のように、コレステリック液晶はその屈折率とコレステリックピッチにより円偏光の選択反射波長が決定される。また、複屈折性により、選択反射波長帯域が決まる。すなわち、液晶材料の選択と、カイラル剤の濃度を変えることにより、選択反射波長や波長帯域をコントロールできる。
【0029】
更に言えば、厚み方向にコレステリックピッチの変化を形成できれば、選択反射波長帯域は広がり、その反射光はより白色性を示すようになる。このとき、特に長波長側へのピッチ拡大が顕著になり、中心波長はより長波長側にシフトする。
【0030】
このようなコレステリック液晶の作製と固定は、一般にサーモトロピック液晶の場合、液晶性分子あるいは液晶高分子溶液の塗布、場合によっては、溶液のキュア、液晶の適切な温度への加熱と保持・冷却による配向、架橋の各工程を経て行われる。リオトロピック液晶の場合は、液晶性分子あるいは液晶高分子溶液の塗布、溶液のキュアと配向、架橋の各工程を経て行われる。液晶分子の固定は主に重合性液晶モノマーの重合もしくは架橋性液晶分子の架橋によって行われ、これによって温度上昇による液晶構造の変化や溶媒への不溶化を行うことにより、目的を達する。
【0031】
本発明の場合、この液晶の固定時に、液晶モノマーもしくは架橋性液晶分子、あるいは、カイラル成分のいずれかが早く重合反応が進むことによって反応の偏りがある場合、かつ、塗布した液晶層の基材側あるいは空気側(表面側)のいずれかの側から重合が徐々に進行することによって、あるいはまた、このような液晶分子の重合あるいは架橋反応の場合、液晶性分子あるいはカイラル成分の反応速度の遅いほうの未反応分子濃度が高くなる。そのため、厚み方向における濃度差に基づく未反応分子の濃度平衡化によって、未反応分子の移動が生じることになる。従って、最終的に重合もしくは架橋反応が終了した際に厚み方向に液晶性分子とカイラル成分の濃度比の変化が形成され、結果として、厚み方向にコレステリックピッチの変化した領域を形成することができる。これにより、初期の状態からより広い選択反射波長帯域を持つコレステリック液晶層を形成することができる。
【0032】
すなわち、重合が開始された側より液晶性分子が速く重合する場合、他方の側はカイラル成分がリッチになり、均一な反応が行われた場合と比較して、重合が開始された側はコレステリックピッチが広くなり、他方の側が狭くなることから、徐々にコレステリックピッチが狭くなるような構造が形成される。また、重合が開始された側よりカイラル成分が速く重合する場合、ピッチ変化は先ほどと反対の構造となる。
【0033】
液晶性分子とカイラル成分の混合物を反応させる際、前述のように一方の表面側から反応させるためには、反応が開始する場所を限定してやる必要がある。
【0034】
ここではその1例をあげて説明するが、これに限定されるものではない。予め、選択的円偏光反射波長の中心値が適切な波長となる比率に設定した液晶性分子とカイラル成分に適切な量の紫外線重合開始材を加えて、溶媒に溶解・混合した後に基材フィルムに塗布して溶媒を乾燥・除去し、弱い強度の紫外線を液晶層の一方の側から露光することによって達成される。弱い強度の紫外線の露光において、露光表面側にある紫外線重合開始剤ほど多くの紫外線を吸収することは自明であり、こちら側から早く反応が進行することになる。また、反応の進行と共に露光表面側の紫外線重合開始剤が消費されて紫外線の透過性が上がり、より深く紫外線が届くようになる。更にこの場合、酸素雰囲気中で反応を行ったとき、酸素阻害が発生し、ある程度以上のラジカルがないと、反応がごくまれにしか発生しなくなる。すなわち、より露光側表面近傍のみの重合の進行に限定できるわけである。これは紫外線に限定されるものではなく、吸収等による厚み方向の強度変化が生じやすいものであれば、特に限定されるものではない。
【0035】
ところで、熱による重合では温度差を発生させることが難しいので、開始剤の開裂の場所をコントロールすることは事実上不可能である。また、深くまで到達しやすい波長領域の紫外線やこのような波長で反応しやすい開始剤を選択した場合も、開始剤の反応分布が生じがたく、厚み方向の反応分布も形成されにくい。
【0036】
温度差に基づく未反応成分の移動は、分子の自由度が高いほど促進され、従って、コレステリックピッチ変化も得られやすくなる。従って、重合もしくは架橋反応の際、加熱することによって分子運動を活発にして、未反応成分の移動を促進してもよい。
【0037】
前述のように、紫外線露光による場合、パターンニングは比較的容易である。予め、所定の紫外線透過量となるようにパターン(認証情報を表わす)を形成したマスクを準備し、これを介して露光すればよいからである。このようなマスクは蒸着・エッチング法や印刷などで容易に作製・入手することが可能である。
【0038】
マスクを介した露光は、露光光学系中にマスクを挿入し、その像を露光する方法や、マスクを被露光物に実質上密着させて露光する方法があげられる。前者の場合、マスクの投影パターンと被露光物の位置関係がずれないようにすれば2次元のパターン形成が可能である。被露光物とマスクパターンの相対位置を一方方向に動かす場合、ストライプ状の露光パターンとなる。また、後者の場合、マスクと被露光物が実質上密着して露光されるので、マスクパターンがほぼそのまま露光パターンとなる。前記のように、このような露光の際に加熱してもよい。
【0039】
以上のような方法で露光した被露光物では、露光部分でコレステリックピッチの拡大が生じ、当初の選択反射波長帯域から変化し、広がった波長帯域を有する領域が形成されることになるが、それ以外の領域は固定されていない。そこで、未反応の領域に強い紫外線を露光することによって、このようなピッチ変化が生じる間もなく反応させることによって、当初のコレステリックピッチを固定させることができる。これにより、パターン化された選択反射波長帯域を有するフィルム(シート)が完成する。
【0040】
また、未反応成分の露光の際は、加熱を行わない。窒素雰囲気中で露光するなどの方法によって、厚み方向でほぼ均一なコレステリックピッチに固定することができる。
【0041】
この場合、当然のことながら、まず強い紫外線をパターンを介して露光して一定のコレステリックピッチを有する領域を形成し、しかる後、弱い紫外線を露光して広帯域の選択反射波長帯域を有する領域を形成してもよい。しかしながら、この場合、最初に強い光を当てるために、パターン周囲での漏れ光の影響でパターンの切れが悪くなり易く、微細なパターンの形成には向かない可能性がある。また、後で弱い光を露光した領域の未反応物を反応させるために、再度強い紫外線を露光してもよいが、この場合、ピッチを形成する反応は既に終了しているために、でき上がったものに対する光学的な影響はほとんどない。
【0042】
紫外線露光の際に非常に簡単に、このような弱い光/強い光を実現することができる。すなわち、液晶性分子とカイラル成分を塗布した基材フィルムに適宜の紫外線吸収性を持たせればよい。すなわち、基材側からの紫外線露光では基材の吸収により弱い露光となり、その反対側からの露光では基材がないので強い露光となる。このような基材は、例えば、紫外域に吸収特性を有するフィルムであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタテート(PET)フィルム等があげられる。また、紫外線に対し透明なフィルムに適切な量の紫外線吸収剤を混合してもよい。前者の場合、紫外線の透過量は、フィルムの厚みを変えることによって、後者の場合、紫外線吸収剤の添加量を変えることでコントロールすることができる。
【0043】
このような基材を用いた露光では、パターン化したマスクを密着して露光する場合、非常に都合がよい。基材側にマスクを密着させて露光することによって、弱い紫外光でのパターン露光を精密に行うことができるとともに、基材側に密着させるので反対側にマスクを密着させる場合と比べて、マスクの汚染が少なくて、その交換頻度を少なくすることができ、コストの点でも好ましい。あるいは、基材の液晶性分子塗布側と反対の面に予め紫外線吸収性の印刷パターンを形成してマスクとすることもできる。
【0044】
本発明に係る偽造防止機能付シートは、種々の物品に対して取り付けることができ、特定の物品に限定されるものではない。例えば、認証カードに貼り付けることができる。認証カードとしては、プリペイドカード、クレジットカード、IDカードなどがある。その他、運転免許証、パスポート、社員証などにも取り付けることができる。
【0045】
またバーコードラベルとして用いることができる。認証領域に1次元もしくは2次元のバーコード情報を形成することができる。バーコードラベルは通常、印刷工程などで作製されるため、容易に目視認識できるだけでなく、バーコード暗号の位置の特定や情報の読み取りが容易で、たやすく複製することができる。このような従来の印刷により光の吸収/非吸収のパターンの組み合わせにより作製するラベルに比べると、本発明に係る偽造防止機能付シートをバーコードラベルとして使用すると、耐偽造性を高めることができる。
【0046】
本発明に係る偽造防止機能付シートを用いた認証システムは、
認証領域と非認証領域のいずれか一方の領域で反射され、他方の領域では反射されない波長を有する光を照射するための光源と、
前記いずれか一方の領域からの反射光を読み取り真贋判定を行う判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0047】
かかる認証システムにより、偽造防止機能付シートに形成される認証情報を自動的に読み取ることができる。すなわち、特定波長を有する光線をシートに対して照射し、その反射光を読み取ることで、認証領域に形成されている認証情報を読み取り、その真贋を判定することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、1層の液晶層でコレステリック液晶層による円偏光の選択反射とそれをパターン化できるため、極めて偽造が困難な偽造防止手段を提供できる。
【0049】
<別実施形態>
選択反射波長帯域が異なる領域は、少なくとも1ヶ所あればよく、1ヶ所でもよいし、2ヶ所以上であってもよい。例えば、第1認証領域と第2認証領域と、非認証領域の3つの領域により構成し、第1・第2認証領域の選択反射波長帯域は、非認証領域のそれとは異ならせる。また、第1認証領域と第2認証領域の選択反射波長帯域が互いに異なっていてもよい。更に、4つ以上の領域に区分けされていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
<偽造防止機能付シートの構成>
本発明に係る偽造防止機能付シートの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、偽造防止機能付シート100の正面図である。112がコレステリック液晶層110における円偏光の選択反射における帯域拡大領域、111が通常領域にあたる。図1において、通常領域111と帯域拡大領域112の平面内での組み合わせでパターンを形成することができる。ここでは例として文字を認証情報の例としてあげているが、例えば、シンボルマークなどであってもよいし、バーコード等であっても良い。
【0051】
本発明としては、帯域拡大領域112と通常領域111のいずれか一方を認証領域とし、他法を非認証領域とすることができる。
【0052】
図2(a)(b)は本発明の偽造防止機能付シート100の断面図である。図2において、110はコレステリック液晶層、111が通常領域、112が帯域拡大領域である。また、本発明の偽造防止機能付シート100は、必要に応じてコレステリック液晶層110を保持する基材120を有していてもよい。更に、本発明の偽造防止機能付シート100は、接着剤層130を有するが、その最表面には離型シート131を設けてもよい。また、必要に応じて光吸収層140が設けられることがある。また、光吸収層140は、着色基材を用いることで基材120を兼ねてもよい。図2(a)は、コレステリック液晶層110が基材120を挟んで接着剤層130と反対の側にある場合を示し、図2(b)はコレステリック液晶層110が接着剤層130と同じ側にある場合を示す。他の光学手段を用いてコレステリック液晶層110の円偏光の選択反射性を確認する場合、図2(b)のような構成では、基材120の複屈折は可及的に小さいほうがよい。
【0053】
帯域拡大領域112では通常領域111と比べて反射光の輝度が高く、はっきりとしたコントラストでパターンが観察される。また、帯域拡大領域112では選択反射波長帯域が広いために、斜めから反射光を観察したときのブラッグ回折に基づくブルーシフトが小さくほとんど変化しないのに対し、通常領域111ではブルーシフトの発生により反射光の中心波長が短波長側に移り、色変化が観察される。
【0054】
更に、これらのコレステリック液晶層からの反射光は円偏光であるので、極性の異なる円偏光板を用いれば、円偏光が反射しているかどうかを容易に確認可能である。例えば、印刷を用いて見た目が類似のものを作製しても、偏光特性がないためにどちらの極性の円偏光板を用いても光は透過するが、円偏光板にて約半分に減衰されて観察される。これに対し本発明の場合、一方の極性の円偏光板をほとんど減衰されることなく透過し、もう一方の極性の円偏光板では光が吸収されてほとんど透過しないため、高い偽造防止性を有する。
【0055】
コレステリック液晶層を透過した円偏光は、その下側に設けられた光吸収層140に到達し、吸収されることによって反射光のみを観察できるようになる。但し、この光吸収層の設置は任意であり、特に本発明の偽造防止機能付シートが使用される被着体自体に色がついている場合は、特に必要とされない。
【0056】
コレステリック液晶層の通常領域111の反射帯域の中心波長は、自由に設定することができる。通常は人間の目で観察することから、またブルーシフトの識別性から可視光領域に設定される。しかしながら、可視光領域での高いコントラストを得るためには、紫外線領域に設定することもできるし、機械での読み取りを行う認証システムとして本発明の偽造防止機能付シートを用いる場合、例えば、赤外光領域にあってもよい。
【0057】
また、本発明では1層のコレステリック液晶層でパターン化を行うが、1層だけであるため、非常に薄いという特徴がある。円偏光のパターニングに関しては、帯域の異なる円偏光の選択反射波長帯域を有するコレステリック液晶層を一部の領域のみ重ね合わせて接着することで、本発明同様の視角特性を獲得しようとした場合、コレステリック液晶層の境界に段差が生じてしまう。また、本来透過しない極性の円偏光板を用いた観察で、重ね合わせた液晶層の影響で反射した偏光が一部透過して見えるため、本発明との差異は明確である。
【0058】
本発明の偽造防止機能付シートは以上に示したように、他の方法では大変偽造が困難であることがわかる。パターンが特定のシンボルや文字であり、その真贋が観察者によって容易に判定可能であるので、本発明の偽造防止機能付シートは非常に有効な認証手段として用いることができる。
【0059】
また、本発明の偽造防止機能付シートは、単独でも高い偽造防止性を有するが、他の偽造防止方法と組み合わせて、より偽造防止性を高めることができる。例えば、特開平11−151877号公報(特許文献7)のように米国特許5574790号(特許文献1)のようなホログラム画像との組み合わせがあげられる。また、位相差の異なる領域を有する透明な複屈折層や、遅相軸の方位角の異なる領域を有する透明な複屈折層などをコレステリック液晶層の上に設けてもよい。
【0060】
本発明に係る偽造防止機能付シート100は、接着剤層130を介して偽造を防止したい製品や書類などに貼り合わせて使用される。偽造を防止したい製品は特に限定されるものではない。これらの製品に直接的に、あるいは間接的に貼り合わされて偽造防止の役割を果たす。このとき接着剤層130は、接着剤であってもよいし粘着剤であってもよい。本発明に係る偽造防止機能付シートは、プリペイドカード、クレジットカード、IDカード等に貼り合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の偽造防止機能付シート100は、機械での読み取りを行う認証システムとして用いる場合、前記のように、通常領域111の反射帯域を認証のための光の反射が生じない波長帯域に、反射帯域の拡大領域112を反射が発生する帯域に設定することで、認証領域として形成した特定のパターンやバーコード等を装置を介して読み取ることができる。
【0062】
<偽造防止機能付シートの製造工程>
次に、図1,2に示した偽造防止機能付シート100の製造工程の一例を図3に示す。製造工程については、既に詳しく説明したので、ここでは簡単に説明する。所定幅の配向用PET1を巻回したロール2から、配向用PET1を順次引き出し、塗工装置3によりコレステリック液晶を塗工する。コレステリック液晶が塗工された後、乾燥装置4により液晶層が乾燥される。引き続き、第1のUV露光装置5により、パターン(認証情報)が形成される。パターンを形成するためのマスク送り装置6が設けられ、コレステリック液晶層の一方側からマスクを介して光源7により紫外線を露光する。パターンが露光されたコレステリック液晶層は、引き続き第2のUV露光装置8に送り込まれ、光源9により紫外線を露光する。この紫外線は、コレステリック液晶層の他方側から層全面に照射され、パターンが固定される。これにより、配向用PET1とコレステリック液晶層が積層された状態でロール10に一旦巻き取られる。
【0063】
次に、一旦巻き取られたコレステリック液晶層に接着剤塗付装置11により接着剤を塗付する。ついで、接着剤層の表面に基材12を積層させた後、乾燥・硬化装置13により接着剤を乾燥させる。また、配向用PET1はコレステリック液晶層から剥離されて、ロール12に巻き取られる。配向用PET1が剥離された後、本発明に係る偽造防止機能付シート100が完成し、ロール13の形に巻き取られる。
【0064】
<認証システムの構成>
次に、本発明に係る偽造防止機能付シートを用いた場合の認証システムの構成を図4の模式図に示す。偽造防止機能付シート100には、認証領域と非認証領域とが形成され、選択反射波長帯域が異なっている。光源20は、認証領域からの反射光を反射し、非認証領域からの反射光が反射されないような波長の光を照射する。照射光は、所定の角度で偽造防止機能付シート100に照射され、偽造防止機能付シート100からの反射光は、結像レンズ21を介して受光部22(CCDセンサー等)により受光される。判定手段23は、受光部22により受光された認証情報を解析し、真贋を判定する。判定された結果はモニター24に表示される。
【0065】
なお、光源20の波長は、非認証領域でのみ反射し、認証領域では反射しないような波長としてもよい。光源20のタイプは、特に限定されるものではない。また、光学系についても、図示の構成に限定されるものではない。
【0066】
<実施例及び比較例>
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
[コレステリック液晶シート(1)の作製]
市販の光重合性ネマチック液晶モノマーとカイラル剤をそれぞれ2.85g、0.15g秤量し、溶媒(シクロペンタノン)7gを完全に溶解させた後、光開始剤イルガキュア907を0.15g溶解させ、塗工液を調製した。
【0068】
この塗工液を市販のPETフィルムにワイヤーバーを用いて、乾燥後の厚みが4μmとなるように塗付し、溶媒を乾燥させた後、一度この液晶モノマーを100℃で2分間加熱した。
【0069】
その後、PET側に密着させて石英ガラスにクロム蒸着層による5mm幅の遮光部分とクロムをエッチングにより除去した5mm幅の透過部分を等間隔に有するストライプパターンを形成したマスクを配置し、100℃まで加熱しながらマスクを介してPET側より紫外線を露光した。このときの紫外線照度は50mW/cm2、露光時間は2秒間であった。しかる後、マスクを剥離し、液晶側から照度50mW/cm2、露光時間2秒間の紫外線を露光して、コレステリック液晶シート(1)を作製した。
【0070】
得られたコレステリック液晶シート(1)の反射色は、最初にマスクを介して紫外線に暴露された部分がほぼ白色の反射を、マスクの陰になった部分は緑色の正面反射を示し、これがマスクと同じ5mm間隔で形成されていた。また、マスクの遮光部分に相当する部分の反射光の色は、斜めからの観察ではその観察角度が大きくなるにつれて、緑色→青緑色→青色に変化した。これに対し、マスクの透過部分はほとんど変化しなかった。
【0071】
[コレステリック液晶シート(2)の作製]
PET側に密着して配置したマスクの遮光部を「NITTO」のパターンを形成した石英ガラスとした以外は、コレステリック液晶シート(1)と全く同様にしてコレステリック液晶シート(2)を作製した。
【0072】
得られたコレステリック液晶シート(2)は「NITTO」の文字部分が緑色の正面反射を示し、その他の部分はほぼ白色の反射色を示した。また、文字部分の反射光の色は斜めからの観察では、その観察角度が大きくなるにつれて、緑色→青緑色→青色に変化した。これに対し、それ以外の部分はほとんど変化しなかった。
【0073】
[コレステリック液晶シート(3)の作製]
コレステリック液晶シート(1)と全く同様にして塗工液を調製し、コレステリック液晶シート(1)と全く同様にしてPETフィルム上に塗付し乾燥させた後、液晶モノマーを100℃2分間まで加熱した。
【0074】
その後、マスクを配置せずに、100℃まで加熱しながら液晶側から照度50mW/cm2、露光時間2秒間で紫外線を露光してコレステリック液晶シート(3)を作製した。
【0075】
得られたコレステリック液晶シート(3)の選択波長は、全面が緑色の正面反射色を示し、パターンは形成されなかった。また、斜めからの反射光の観察でその色は観察角度が大きくなるにつれて、緑色→青緑色→青色に変化した。
【0076】
[コレステリック液晶シート(4)の作製]
コレステリック液晶シート(1)と全く同様にして塗工液を調製し、コレステリック液晶シート(1)と全く同様にしてPETフィルム上に塗付し、乾燥させた後、液晶モノマーを100℃2分間まで加熱した。
【0077】
その後、マスクを配置せずに、100℃まで加熱しながらPET側から照度50mW/cm2、露光時間2秒間で紫外線を露光してコレステリック液晶シート(4)を作製した。
【0078】
得られたコレステリック液晶シート(4)の選択波長は、全面が淡黄色から白色の正面反射色を示し、パターンは形成されなかった。斜めからの反射光の観察において、反射色はほとんど変化がなかった。
【0079】
[コレステリック液晶シート(5)の作製]
市販の光重合性ネマチック液晶モノマーとカイラル剤を夫々2.85g、0.15g秤量し、溶媒(シクロペンタノン)7gに完全に溶解させた後、光開始剤イルガキュア907を0.15g溶解させた塗工液を用いた以外は、コレステリック液晶シート(3)と全く同様にしてシートAを作製した。得られたシートAの選択反射波長は、全面が緑色の正面反射色を示し、パターンは形成されなかった。また、斜めからの反射光の観察でその色は観察角度が大きくなるにつれて、緑色→青緑色→青色に変化した。
【0080】
次に、市販の光重合性ネマチック液晶モノマーとカイラル剤を夫々2.875g、0.125g秤量し、溶媒(シクロペンタノン)7gに完全に溶解させた後、光開始剤イルガキュア907を0.15g溶解させた塗工液を用いた以外は、コレステリック液晶シート(3)と全く同様にしてシートBを作製した。得られたシートBの選択反射波長は、全面が赤色の正面反射光を示し、パターンは形成されなかった。また、斜めからの反射光の観察でその色は観察角度が大きくなるにつれて、赤色→黄色→緑色に変化した。
【0081】
市販の光重合性ネマチック液晶モノマーとカイラル剤を夫々2.825g、0.175gを秤量し、溶媒(シクロペンタノン)7gに完全に溶解させた後、光開始剤イルガキュア907を0.15g溶解させた塗工液を用いた以外は、コレステリック液晶シート(3)と全く同様にしてシートCを作製した。得られたシートCの選択反射波長は、全面が青色の正面反射光を示し、パターンは形成されなかった。また、斜めからの反射光の観察でその色は観察角度が大きくなるにつれて、青色→藍色→紫色に変化した。
【0082】
シートAの液晶側全面に粘着剤を塗付してPETフィルムに貼り合わせ、シートAのPET基材を剥離し、コレステリック液晶層を転写した。次に、シートBの液晶面側に5mm幅でストライプ状に基材レスの粘着シートを貼り合わせ、シートAの液晶面を転写した面に貼り合わせ、粘着層を介した部分のみシートBの液晶層を剥離した。更に同様にシートCの液晶面側に5mm幅でストライプ状に基材レスの粘着シートを貼り合わせ、シートA及びBの液晶面を転写した面に、シートBの液晶面とシートCの液晶面にストライプ状に形成した粘着層が一致するように慎重に貼り合わせ、粘着層を介した部分のみシートCの液晶層を剥離してコレステリック液晶シート(5)を作製した。
【0083】
得られたコレステリック液晶シート(5)の選択波長は、約5mmのストライプ状に緑色の正面反射色を示すシートAから転写した液晶層のみからなる部分と、白色の正面反射光を示すシートA,B,Cから転写した液晶層からなる部分が交互に形成されたストライプ状のパターンが形成された。斜めからの反射光の観察において、シートAから転写した液晶層のみからなる部分の反射色は、緑色→青緑色→青色と変化したのに対し、シートA,B,Cから転写した液晶層からなる部分は、多少青っぽくなる程度でほとんど変化がなかった。
【0084】
[実施例2]
コレステリック液晶シート(1)のPETフィルムの液晶面と反対側に黒色の塗料を塗付し、さらに粘着剤層を形成して実施例1の偽造防止機能付シートとした。
【0085】
[実施例3]
コレステリック液晶シート(2)のPETフィルムの液晶面と反対側に黒色の塗料を塗付し、さらに粘着剤層を形成して実施例2の偽造防止機能付シートとした。
【0086】
[比較例1]
コレステリック液晶シート(3)のPETフィルムの液晶面と反対側に黒色の塗料を塗付し、さらに粘着剤層を形成して比較例1の偽造防止機能付シートとした。
【0087】
[比較例2]
コレステリック液晶シート(4)のPETフィルムの液晶面と反対側に黒色の塗料を塗付し、さらに粘着剤層を形成して比較例2の偽造防止機能付シートとした。
【0088】
[比較例3]
コレステリック液晶シート(5)のPETフィルムの液晶転写面と反対側に黒色の塗料を塗付し、さらに粘着剤層を形成して比較例3の偽造防止機能付シートとした。
【0089】
[比較例4]
PETフィルムに真空蒸着でアルミニウムからなる反射層を形成し、その表面に5mm間隔のストライプ状に幅5mmのマスキングテープを設けた後、クリアグリーンのラッカー系塗料を塗装し、乾燥後マスキングテープを剥離した。しかる後、塗装面と反対側に粘着剤層を形成し、比較例4の偽造防止機能付シートとした。
【0090】
[実施例4]
実施例1の偽造防止機能付シートの液晶面側に市販のホログラムシートを粘着剤を介して貼り合わせ、実施例3の偽造防止機能付シートとした。
【0091】
[実施例5]
実施例2の偽造防止機能付シートの液晶面側に市販のホログラムシートを粘着剤を介して貼り合わせ、実施例4の偽造防止機能付シートとした。
【0092】
[比較例5]
市販のホログラムシートに粘着剤層を介して銀反射板を貼り合わせ、ついで銀反射板側に粘着剤層を形成して比較例5の偽造防止機能付シートとした。
【0093】
[比較例6]
比較例1の偽造防止機能付シートの液晶面側に市販のホログラムシートを粘着剤を介して貼り合わせ、比較例6の偽造防止機能付シートとした。
【0094】
[比較例7]
比較例2の偽造防止機能付シートの液晶面側に市販のホログラムシートを粘着剤を介して貼り合わせ、比較例7の偽造防止機能付シートとした。
【0095】
[比較例8]
比較例3の偽造防止機能付シートの液晶面側に市販のホログラムシートを粘着剤を介して貼り合わせ、比較例8の偽造防止機能付シートとした。
【0096】
[比較試験]
実施例1,2及び比較例1〜4の偽造防止機能付シートを観察したところ、実施例1および比較例3,4では前述のように緑色と白色のストライプ状のパターンが、実施例2では白地に緑色で「NITTO」の文字が確認されたのに対し、比較例1,2では何のパターンも観察されなかった。しかしながら、実施例では緑色の反射色を示す部分は斜めからの観察で、徐々に青色を呈して行くのに対し、比較例4では全く変化せず、緑色のままであった。
【0097】
しかしながら、実施例では液晶層は完全にフラットな面であるであるのに対して、比較例3では、パターン部分に明らかな段差が観察された。
【0098】
また、実施例3,4ではホログラムを介して、夫々下側の液晶層のストライプ状のパターンと「NITTO」の文字が観察されたのに対し、比較例5,6,7では、全く確認できなかった。また、比較例8ではホログラム層と液晶層の貼り合わせで浮きが生じ、非常に見にくかった。
【0099】
また、円偏光板を用いた観察で、左回り円偏光板を用いた場合、比較例4,5を除く実施例、比較例では反射光が明るく観察された。これに対し、比較例4,5では透過光量が大きく減少した。また、右回り円偏光板を用いた観察では、比較例4,5を除く実施例、比較例では反射光がカットされ、透過してこなかった。これに対し、比較例4,5では左回り円偏光板を用いたのと同程度の反射光が観察された。すなわち、比較例4,5を除く実施例、比較例では反射光が左円偏光であったのに対し、比較例4,5では円偏光性を有していなかった。
【0100】
本発明の光学機能を他の1層で形成することは非常に困難であり、また本発明の方法以外にこのような構造・特性を実現することは非常に困難である。また、本発明の偽造防止機能付シートを用いることで、高い偽造防止性を実現することが可能である。更に、他の方法による偽造防止手段と組み合わせることで、偽造をより困難にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】偽造防止機能付シートの正面図
【図2】偽造防止機能付シートの断面図
【図3】偽造防止機能付シートの製造工程を示す図
【図4】認証システムの構成を示す模式図
【符号の説明】
【0102】
100 偽造防止機能付シート
110 コレステリック液晶
111 通常領域
112 帯域拡大領域
120 基材
130 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可視光領域に選択反射波長帯域を有するコレステリック液晶層を有し、このコレステリック液晶層が厚みの略等しい単一層であって、少なくとも1ヶ所に選択反射波長帯域が他の領域とは異なる認証領域が設けられていることを特徴とする偽造防止機能付シート。
【請求項2】
コレステリック液晶層の一方側に接着剤層を設けていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止機能付シート。
【請求項3】
コレステリック液晶層と前記接着剤層の間に基材を設けていることを特徴とする請求項2に記載の偽造防止機能付シート。
【請求項4】
コレステリック液晶層の前記接着剤層側に光吸収層を設けていることを特徴とする請求項2又は3に記載の偽造防止機能付シート。
【請求項5】
コレステリック液晶層の表面側に透明なホログラム層を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法であって、
透明な基材に、少なくともネマチック液晶とカイラル剤と紫外線反応開始剤からなるコレステリック液晶性を示す重合性液晶を塗布する工程と、
記録すべき認証情報に基づきパターン化した紫外線を塗布面の一方側から照射する工程と、
この照射工程の後、塗布面の他方側から紫外線を照射する工程とを含むことを特徴とする偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートが設けられた物品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートが設けられた認証カード。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートを有するバーコードラベル。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートを用いた認証システムであって、
認証領域と非認証領域のいずれか一方の領域で反射され、他方の領域では反射されない波長を有する光を照射するための光源と、
前記いずれか一方の領域からの反射光を読み取り、真贋判定を行う判定手段とを備えたことを特徴とする認証システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可視光領域に選択反射波長帯域を有するコレステリック液晶層を有し、このコレステリック液晶層が厚みの略等しい単一層であって、少なくとも1ヶ所に選択反射波長帯域が他の領域とは異なる認証領域が設けられている偽造防止機能付シートの製造方法であって、
透明な基材に、少なくともネマチック液晶とカイラル剤と紫外線反応開始剤からなるコレステリック液晶性を示す重合性液晶を塗布する工程と、
記録すべき認証情報に基づきパターン化した紫外線を塗布面の一方側から照射する工程と、
この照射工程の後、塗布面の他方側から紫外線を照射する工程とを含むことを特徴とする偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項2】
コレステリック液晶層の一方側に接着剤層を設けていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項3】
コレステリック液晶層と前記接着剤層の間に基材を設けていることを特徴とする請求項2に記載の偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項4】
コレステリック液晶層の前記接着剤層側に光吸収層を設けていることを特徴とする請求項2又は3に記載の偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項5】
コレステリック液晶層の表面側に透明なホログラム層を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法により製造された偽造防止機能付シートが設けられた物品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法により製造された偽造防止機能付シートが設けられた認証カード。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法により製造された偽造防止機能付シートを有するバーコードラベル。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止機能付シートの製造方法により製造された偽造防止機能付シートを用いた認証システムであって、
認証領域と非認証領域のいずれか一方の領域で反射され、他方の領域では反射されない波長を有する光を照射するための光源と、
前記いずれか一方の領域からの反射光を読み取り、真贋判定を行う判定手段とを備えたことを特徴とする認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142699(P2006−142699A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337473(P2004−337473)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】