傍熱型感温抵抗素子、及び傍熱型感温抵抗素子を用いた絶対湿度センサ
【課題】形状が均一で特性の揃った傍熱型感温抵抗素子を提供すること。また、前記傍熱型感温抵抗素子を用い、応答スピードが速く、高精度で機械的強度に優れた絶対湿度センサを提供すること。
【解決手段】
傍熱型感温抵抗素子は、基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている。絶対湿度センサは、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さている。
【解決手段】
傍熱型感温抵抗素子は、基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている。絶対湿度センサは、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどの調理器具や、空調機器や各種産業機器などの絶対湿度の計測を行うために使用される絶対湿度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジにおいては、マイクロ波加熱によって食品から発生する水蒸気に基づく加熱室内の湿度の変化を測定することによって、食品の加熱仕上がりを検出する。例えば、このような目的に使用する仕上がり検知センサのひとつとして、特開平9−325126号公報によって開示された絶対湿度センサがある。このセンサは、図11に示すように、上面が平坦な躯体中に二つの凹部1B,1Cを対称に形成し、一方の凹部1Bに上面に対して貫通した開口部1Dを設けた均熱ケース1Aに対して、カバー1Jを、それぞれの鍔部を接合して一体化するとともに、自己加熱型の二つの感温素子1E,1Fを、基板1Pを貫通して設けた二つの端子1Qの先端間に接続して支持し、一方の感温素子1Eを開口部を有する凹部1Bに基板を介して封止して感湿素子を形成し、他方の感温素子1Fを他方の凹部1Cに基板を介して封止して温度補償素子を形成して構成されている。この絶対湿度センサを構成する感温素子1E,1Fは、予め抵抗選別されて特性の揃ったサーミスタを用いることが開示されている(特開平9−325126号公報5頁[0041])。この絶対湿度センサは、感温素子1E,感温素子1Fをそれぞれ自己発熱させて、感温素子1Eが水蒸気量に応じた熱伝導の変化を検知し、他方で感温素子1Fが密閉された空間の熱伝導を補償して、二つの感温素子の電圧変化量の差分を絶対湿度に換算するものである。
【0003】
また、他方で本出願人が検討した図12に示した傍熱型の絶対湿度センサがある。この傍熱型の絶対湿度センサは、基板71aにサーミスタ膜72aを形成し、そのサーミスタ膜72aの周囲に白金測温抵抗体膜73aを形成し、ワイヤー74aによって金属フレーム75aとサーミスタ膜72a,白金測温抵抗体膜73aとを電気的に接続して中空に釣った状態でガラス管76aによって密封したものと、基板71bにサーミスタ膜72bを形成し、そのサーミスタ膜72bの周囲に白金測温抵抗体膜73bを形成し、ワイヤー74bによって金属フレーム75bとサーミスタ膜72b,白金測温抵抗体膜73bとを電気的に接続して中空に釣った状態で開口部77bが形成されたガラス管76bによって封入したものとで構成されている。本出願人が検討した傍熱型の絶対湿度センサは、それぞれの白金測温抵抗体膜73a、73bとを共に自己加熱させて、開口部77bが形成されたガラス管76b内の白金測温抵抗体膜73bからの熱伝導によって加熱されたサーミスタ膜72bが水蒸気量に応じた熱伝導の変化を検知し、他方の密封されたガラス管76a内の白金測温抵抗体膜73aの熱伝導によって加熱されたサーミスタ膜72aが空間の熱伝導を補償して、二つのサーミスタ膜72a、72bの電圧変化量の差分を絶対湿度に換算するものである。
【特許文献1】特開平9−325126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特開平9−325126号公報に開示された絶対湿度センサは、予め抵抗選別されて特性の揃った感温素子1E,1Fを用意する必要があり、工数がかかってしまう。更に、抵抗選別された感温素子1E,1Fでも、形状(体積、表面積)のばらつきによってそれぞれ熱放散定数にばらつきが生じ、出来上がった絶対湿度センサの検知精度のばらつきを生じる問題がある。また、図11から分かるとおり、感温素子1E,1Fは、二つの端子1Qの先端間に接続されて中空に支持されているため電機的接続の難しさや外部からの振動による機械的強度が問題となる。
【0005】
また、本出願人が検討した図12の傍熱型の絶対湿度センサも感温素子が中空に支持されているため電気的接続の難しさや外部からの振動による機械的強度が問題となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、形状が均一で特性の揃った傍熱型感温抵抗素子を提供することを目的とする。また、前記傍熱型感温抵抗素子を用い、応答スピードが速く高精度で機械的強度に優れた絶対湿度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係わる発明は、基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている傍熱型感温抵抗素子である。
【0008】
本発明の請求項2に係わる発明は、空洞部が形成された基板と、前記空洞部を覆う絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記絶縁膜上、もしくは前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている傍熱型感温抵抗素子である。
【0009】
本発明の請求項3に係わる発明は、前記感温抵抗膜が、薄膜サーミスタで形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0010】
本発明の請求項4に係わる発明は、前記加熱用抵抗膜が、薄膜サーミスタ、若しくは白金測温抵抗体で形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0011】
本発明の請求項5に係わる発明は、前記基板と前記電極パッドの間に下地電極層を形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0012】
本発明の請求項6に係わる発明は、前記絶縁膜と前記感温抵抗膜、及び前記加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極が形成された請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0013】
本発明の請求項7に係わる発明は、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜上に絶縁保護膜が形成され、該絶縁保護膜上にガラス保護膜が形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0014】
本発明の請求項8に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さている絶対湿度センサである。
【0015】
本発明の請求項9に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、一つの凹部を密封する蓋部とから構成さている絶対湿度センサである。
【0016】
本発明の請求項10に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、貫通孔が形成されたメタルCANと密閉されたメタルCANとが熱的に結合されたケースと、前記二つのメタルCANの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、から構成されている絶対湿度センサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、基板上の同一平面上に感温抵抗膜の周囲を取り囲むようにして加熱用抵抗膜を形成することで熱分布を均一化させ、応答スピードを向上させることが出来る。
【0018】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、基板上にスパッタ法で薄膜サーミスタを同時に多数形成するので、相互の薄膜サーミスタの抵抗値ばらつきを少なくすることができ、ペアリングの工数を削減し、コストダウンすることが出来る。
【0019】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、相互の感温抵抗素子の形状が均一なので熱放散定数を揃えることができ、検知精度が向上する。
【0020】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、加熱用抵抗膜に感温抵抗膜と同じ薄膜サーミスタを用いることにより、材料点数が少なくなり、工数削減が実現できる。
【0021】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、感温抵抗膜と加熱用抵抗膜が形成された基板の裏面を薄く形成することで熱容量を小さくし、検知感度を向上させることが出来る。
【0022】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、絶縁膜と感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極を形成することにより、抵抗調整が容易にできる。
【0023】
本発明の絶対湿度センサは、ケース内に感温素子を中空に配置すること無しに基板上に検知部を形成するので、機械的強度を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る傍熱型感温抵抗素子の第1実施態様を図1〜図6を参照して説明する。図1は本発明の傍熱型感温抵抗素子の第1の実施形態の外観を示す上面図である。図2〜図6は、図1に示した傍熱型感温抵抗素子の薄膜形成工程の一実施形態を示す図である。図2において、基板1は、1.0mm角で、厚さが50〜300μm程度のアルミナ基板からなる。次に、基板1の一表面上にスパッタ法、プラズマCVD法などを用いて二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)等からなる絶縁被膜層が、厚さ0.1〜0.5μmに成膜される。そしてフォトエッチング法を用いてパターニングし、基板1上に絶縁膜2が形成される。絶縁膜2は、熱処理時に後述する感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜と基板1との化学反応を防止して傍熱型感温抵抗素子としての安定な電気的特性を得るために必要なものである。
【0025】
次に、図3に示すように、外部へ電気的に導出するための電極パッドを形成するための金属下地膜形成の工程に進む。基板1上にスパッタリングまたは蒸着等の方法によって、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、Ni−Cr合金の少なくとも一種からなる金属薄膜層が形成される。続いて、フォトエッチング法によって、積層された前記金属薄膜層の不要部分を除去して、金属下地膜3a、3bが形成される。
【0026】
続いて、図4に示すように、電極パッド3a,3bと前記絶縁膜2上に感温抵抗膜となる薄膜サーミスタ、及び加熱用抵抗膜となる薄膜サーミスタと電気的に接続するための配線パターンを形成する工程に進む。まず、絶縁膜2と金属下地膜3a、3b上に、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)またはパラジウム合金等の少なくとも一種からなる金属薄膜層を成膜する。前記金属薄膜層を成膜後、フォトエッチング法によって、前記金属薄膜層の不要部分を除去して、金属下地膜3a、3b上に電極パッド3c、3dがそれぞれ形成され、電極パッド3cから延びる絶縁膜2上に対向する櫛型の電極4aが、電極パッド3dから延びる絶縁膜2上に対向する電極4bが形成される。
【0027】
続いて、図5に示すように、感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜を形成する工程へ進む。前工程で形成された絶縁膜2と櫛型の電極4aと電極4bとを覆うように、スパッタ法などによって、0.3〜2.0μmの厚さに薄膜サーミスタを成膜し、パターニング法を用いて絶縁膜2上に感温抵抗膜となる薄膜サーミスタ5、および加熱用抵抗膜となる薄膜サーミスタ6が形成される。加熱用抵抗膜6は、感温抵抗膜を取り囲むように成膜されている。その後、薄膜サーミスタ5,6は400〜1200℃の温度で1〜5時間の熱処理が行われる。成膜される薄膜サーミスタは、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄などからなる複合酸化物の焼結体をターゲットとして、スパッタリング法を用いる。
【0028】
続いて、図6に示すように、絶縁保護膜と後述するガラス保護膜を形成する工程に進む。まず、0.5〜2.0μmの二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)等からなる絶縁保護膜7を感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜上に形成する。絶縁保護膜7は、ガラス保護膜と薄膜サーミスタ5,6との反応を防止する目的で成膜させている。さらに、薄膜サーミスタ5,6に対する耐湿性を向上させるために絶縁保護膜7上にガラスペーストをスクリーン印刷等の手段で塗布した後、400〜800℃で熱処理してガラス保護膜8を形成する。
【0029】
なお、本発明の傍熱型感温抵抗素子の基板には、アルミナ基板を用いたが、シリコン基板でもよく、図7に示すように、感温抵抗膜5と加熱用抵抗膜6が形成された絶縁膜の裏面を公知のエッチング技術を用いて空洞部9を形成しても良い。基板1に空洞部9を形成した傍熱型感温抵抗素子は、感温抵抗膜5、及び加熱用抵抗膜6が成膜された基板部の熱容量が減少し、応答スピードが向上する。また、アルミナ基板でも切削などの方法で空洞部をつくり、感温抵抗膜5、及び加熱用抵抗膜6が成膜された基板部の熱容量を減少させ応答スピードを向上させても良い。またアルミナ基板以外には、窒化アルミニウム、ジルコニア、石英、ムライト、ステアタイト等のセラミック基板でもよい。また、加熱用抵抗膜6は、薄膜サーミスタを形成したが、白金測温抵抗体や、ニクロム抵抗体などの金属抵抗膜を形成して加熱用抵抗膜としてもよい。
【0030】
上記した傍熱型感温抵抗素子は、ひとつの傍熱型感温抵抗素子の構造を示したものである。実際は基板上に上記構造を有する傍熱型感温抵抗素子が多数配列された傍熱型感温抵抗素子集合基板が形成され、個々の傍熱型感温抵抗素子に切断分離するために、ダイシングテープ等に貼着してからレーザースクライブ装置またはダイシングソー等を用いて切断する。このようにして図1に示すような個々の傍熱型感温抵抗素子が完成する。分割されたそれぞれの傍熱型感温抵抗素子は、同一バッチで製造されるので抵抗値ばらつきが少なくでき、ペアリングの工数を削減し、量産化を可能とすることが出来る。
【0031】
次に絶対湿度センサを組み立てる。先ず、図8に示すメタルCANに前述した本発明の傍熱型感温抵抗素子を配置した絶対湿度センサの組み立て方法を説明する。図8(b)は、図8(a)のY−Yで切り取られる断面図である。図8(a),(b)において、貫通孔21aが形成されたメタルCAN21Aと密閉されたメタルCAN21Bとが熱的に結合されたケース20と、前記二つのメタルCAN21A、21Bの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子S1、S2と、から構成されている。組み立て手順は、先ずメタルCAN21A、21Bのそれぞれのステム22A、22Bに傍熱型感温抵抗素子S1、S2それぞれを樹脂系の接着剤で接着固定し、ワイヤボンディングにより感温抵抗膜を電気的に導出する電極パッド、及び加熱用抵抗膜を電気的に導出する電極パッドとステムのリード30とを電気的に接続する。次にキャップ23A、23Bとステム22A、22Bとをそれぞれ接着し、キャップ23Aとキャップ23Bとを接着剤などで熱的に結合させて、絶対湿度センサHS1が完成する。
【0032】
また、メタルCANを用いる代わりに、図9に示すようにセラミックパッケージに傍熱型感温抵抗素子を配置し絶対湿度センサHS2を組み立てても良い。図9(b)は、蓋部52を取り除いた際の上面図であり、図9(c)は、図9(a)のZ−Zで切り取られる絶対湿度センサの断面図である。図9(a),(b),(c)において、対称に作られた凹部51aが形成された筐体部品51と、貫通孔52aと2つの空間を形成するために仕切り部52bが形成された蓋部52と、傍熱型感温抵抗素子S1,S2とから構成されている。傍熱型感温抵抗素子S1,S2は、図に示すようにひとつの基板1の上に形成されている。組み立て手順は、先ず筐体部品51の凹部51aに傍熱型感温抵抗素子S1、S2の基板1を樹脂系の接着剤で接着固定し、ワイヤボンディングにより感温抵抗膜を電気的に導出する電極パッド3c、及び加熱用抵抗膜を電気的に導出する電極パッド3dと取り出し電極53とをそれぞれ電気的に接続する。次に蓋部52を筐体部品51に接着剤で接着固定し、絶対湿度センサHS2が完成する。なお、図9においては、傍熱型感温抵抗素子S1、S2がひとつの基板上に形成したが、基板を分離した傍熱型感温抵抗素子S1、S2であってもよい。その際には、蓋部52の仕切り部52bが、筐体部品51まで到達し、S2を密閉させる構造となる。
【0033】
次に、絶対湿度センサの出力特性を開示する。図10(a)に示すように回路を接続し、本発明の絶対湿度センサHS1と、従来の絶対湿度センサ(図11)の出力電圧を計測した。大気温度25℃で、相対湿度0%のときの絶対湿度センサの出力をオフセットし、絶対湿度20.75g/m^3の出力をプロットした結果が図10(b)である。図10(b)から分かるとおり、本発明の絶対湿度センサのほうが、約4倍の出力電圧が計測され、検出感度が向上することができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電子レンジなどの調理器具や、空調機器や各種産業機器などの絶対湿度の計測を行うために使用される絶対湿度センサに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子を説明する図である。
【図2】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図3】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図4】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図5】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図6】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図7】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の他の例を説明する図である。
【図8】本発明に係わる絶対湿度センサを説明する図である。
【図9】本発明に係わる絶対湿度センサの他の例を説明する図である。
【図10】絶対湿度センサの出力特性を測定した回路図、及び特性図である。
【図11】従来の絶対湿度センサを説明する図である。
【図12】従来の絶対湿度センサの他の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
S1,S2 傍熱型感温抵抗素子
1 基板
2 絶縁膜
3c,3d 電極パッド
4a,4b 櫛歯状電極
5 感温抵抗膜
6 加熱用抵抗膜
7 絶縁保護膜
8 ガラス保護膜
HS1、HS2 絶対湿度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどの調理器具や、空調機器や各種産業機器などの絶対湿度の計測を行うために使用される絶対湿度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジにおいては、マイクロ波加熱によって食品から発生する水蒸気に基づく加熱室内の湿度の変化を測定することによって、食品の加熱仕上がりを検出する。例えば、このような目的に使用する仕上がり検知センサのひとつとして、特開平9−325126号公報によって開示された絶対湿度センサがある。このセンサは、図11に示すように、上面が平坦な躯体中に二つの凹部1B,1Cを対称に形成し、一方の凹部1Bに上面に対して貫通した開口部1Dを設けた均熱ケース1Aに対して、カバー1Jを、それぞれの鍔部を接合して一体化するとともに、自己加熱型の二つの感温素子1E,1Fを、基板1Pを貫通して設けた二つの端子1Qの先端間に接続して支持し、一方の感温素子1Eを開口部を有する凹部1Bに基板を介して封止して感湿素子を形成し、他方の感温素子1Fを他方の凹部1Cに基板を介して封止して温度補償素子を形成して構成されている。この絶対湿度センサを構成する感温素子1E,1Fは、予め抵抗選別されて特性の揃ったサーミスタを用いることが開示されている(特開平9−325126号公報5頁[0041])。この絶対湿度センサは、感温素子1E,感温素子1Fをそれぞれ自己発熱させて、感温素子1Eが水蒸気量に応じた熱伝導の変化を検知し、他方で感温素子1Fが密閉された空間の熱伝導を補償して、二つの感温素子の電圧変化量の差分を絶対湿度に換算するものである。
【0003】
また、他方で本出願人が検討した図12に示した傍熱型の絶対湿度センサがある。この傍熱型の絶対湿度センサは、基板71aにサーミスタ膜72aを形成し、そのサーミスタ膜72aの周囲に白金測温抵抗体膜73aを形成し、ワイヤー74aによって金属フレーム75aとサーミスタ膜72a,白金測温抵抗体膜73aとを電気的に接続して中空に釣った状態でガラス管76aによって密封したものと、基板71bにサーミスタ膜72bを形成し、そのサーミスタ膜72bの周囲に白金測温抵抗体膜73bを形成し、ワイヤー74bによって金属フレーム75bとサーミスタ膜72b,白金測温抵抗体膜73bとを電気的に接続して中空に釣った状態で開口部77bが形成されたガラス管76bによって封入したものとで構成されている。本出願人が検討した傍熱型の絶対湿度センサは、それぞれの白金測温抵抗体膜73a、73bとを共に自己加熱させて、開口部77bが形成されたガラス管76b内の白金測温抵抗体膜73bからの熱伝導によって加熱されたサーミスタ膜72bが水蒸気量に応じた熱伝導の変化を検知し、他方の密封されたガラス管76a内の白金測温抵抗体膜73aの熱伝導によって加熱されたサーミスタ膜72aが空間の熱伝導を補償して、二つのサーミスタ膜72a、72bの電圧変化量の差分を絶対湿度に換算するものである。
【特許文献1】特開平9−325126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特開平9−325126号公報に開示された絶対湿度センサは、予め抵抗選別されて特性の揃った感温素子1E,1Fを用意する必要があり、工数がかかってしまう。更に、抵抗選別された感温素子1E,1Fでも、形状(体積、表面積)のばらつきによってそれぞれ熱放散定数にばらつきが生じ、出来上がった絶対湿度センサの検知精度のばらつきを生じる問題がある。また、図11から分かるとおり、感温素子1E,1Fは、二つの端子1Qの先端間に接続されて中空に支持されているため電機的接続の難しさや外部からの振動による機械的強度が問題となる。
【0005】
また、本出願人が検討した図12の傍熱型の絶対湿度センサも感温素子が中空に支持されているため電気的接続の難しさや外部からの振動による機械的強度が問題となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、形状が均一で特性の揃った傍熱型感温抵抗素子を提供することを目的とする。また、前記傍熱型感温抵抗素子を用い、応答スピードが速く高精度で機械的強度に優れた絶対湿度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係わる発明は、基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている傍熱型感温抵抗素子である。
【0008】
本発明の請求項2に係わる発明は、空洞部が形成された基板と、前記空洞部を覆う絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記絶縁膜上、もしくは前記基板上に形成された電極パッドとから構成されている傍熱型感温抵抗素子である。
【0009】
本発明の請求項3に係わる発明は、前記感温抵抗膜が、薄膜サーミスタで形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0010】
本発明の請求項4に係わる発明は、前記加熱用抵抗膜が、薄膜サーミスタ、若しくは白金測温抵抗体で形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0011】
本発明の請求項5に係わる発明は、前記基板と前記電極パッドの間に下地電極層を形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0012】
本発明の請求項6に係わる発明は、前記絶縁膜と前記感温抵抗膜、及び前記加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極が形成された請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0013】
本発明の請求項7に係わる発明は、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜上に絶縁保護膜が形成され、該絶縁保護膜上にガラス保護膜が形成されている請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子である。
【0014】
本発明の請求項8に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さている絶対湿度センサである。
【0015】
本発明の請求項9に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、一つの凹部を密封する蓋部とから構成さている絶対湿度センサである。
【0016】
本発明の請求項10に係わる発明は、請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、貫通孔が形成されたメタルCANと密閉されたメタルCANとが熱的に結合されたケースと、前記二つのメタルCANの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、から構成されている絶対湿度センサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、基板上の同一平面上に感温抵抗膜の周囲を取り囲むようにして加熱用抵抗膜を形成することで熱分布を均一化させ、応答スピードを向上させることが出来る。
【0018】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、基板上にスパッタ法で薄膜サーミスタを同時に多数形成するので、相互の薄膜サーミスタの抵抗値ばらつきを少なくすることができ、ペアリングの工数を削減し、コストダウンすることが出来る。
【0019】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、相互の感温抵抗素子の形状が均一なので熱放散定数を揃えることができ、検知精度が向上する。
【0020】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、加熱用抵抗膜に感温抵抗膜と同じ薄膜サーミスタを用いることにより、材料点数が少なくなり、工数削減が実現できる。
【0021】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、感温抵抗膜と加熱用抵抗膜が形成された基板の裏面を薄く形成することで熱容量を小さくし、検知感度を向上させることが出来る。
【0022】
本発明の傍熱型感温抵抗素子は、絶縁膜と感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極を形成することにより、抵抗調整が容易にできる。
【0023】
本発明の絶対湿度センサは、ケース内に感温素子を中空に配置すること無しに基板上に検知部を形成するので、機械的強度を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る傍熱型感温抵抗素子の第1実施態様を図1〜図6を参照して説明する。図1は本発明の傍熱型感温抵抗素子の第1の実施形態の外観を示す上面図である。図2〜図6は、図1に示した傍熱型感温抵抗素子の薄膜形成工程の一実施形態を示す図である。図2において、基板1は、1.0mm角で、厚さが50〜300μm程度のアルミナ基板からなる。次に、基板1の一表面上にスパッタ法、プラズマCVD法などを用いて二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)等からなる絶縁被膜層が、厚さ0.1〜0.5μmに成膜される。そしてフォトエッチング法を用いてパターニングし、基板1上に絶縁膜2が形成される。絶縁膜2は、熱処理時に後述する感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜と基板1との化学反応を防止して傍熱型感温抵抗素子としての安定な電気的特性を得るために必要なものである。
【0025】
次に、図3に示すように、外部へ電気的に導出するための電極パッドを形成するための金属下地膜形成の工程に進む。基板1上にスパッタリングまたは蒸着等の方法によって、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、Ni−Cr合金の少なくとも一種からなる金属薄膜層が形成される。続いて、フォトエッチング法によって、積層された前記金属薄膜層の不要部分を除去して、金属下地膜3a、3bが形成される。
【0026】
続いて、図4に示すように、電極パッド3a,3bと前記絶縁膜2上に感温抵抗膜となる薄膜サーミスタ、及び加熱用抵抗膜となる薄膜サーミスタと電気的に接続するための配線パターンを形成する工程に進む。まず、絶縁膜2と金属下地膜3a、3b上に、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)またはパラジウム合金等の少なくとも一種からなる金属薄膜層を成膜する。前記金属薄膜層を成膜後、フォトエッチング法によって、前記金属薄膜層の不要部分を除去して、金属下地膜3a、3b上に電極パッド3c、3dがそれぞれ形成され、電極パッド3cから延びる絶縁膜2上に対向する櫛型の電極4aが、電極パッド3dから延びる絶縁膜2上に対向する電極4bが形成される。
【0027】
続いて、図5に示すように、感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜を形成する工程へ進む。前工程で形成された絶縁膜2と櫛型の電極4aと電極4bとを覆うように、スパッタ法などによって、0.3〜2.0μmの厚さに薄膜サーミスタを成膜し、パターニング法を用いて絶縁膜2上に感温抵抗膜となる薄膜サーミスタ5、および加熱用抵抗膜となる薄膜サーミスタ6が形成される。加熱用抵抗膜6は、感温抵抗膜を取り囲むように成膜されている。その後、薄膜サーミスタ5,6は400〜1200℃の温度で1〜5時間の熱処理が行われる。成膜される薄膜サーミスタは、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄などからなる複合酸化物の焼結体をターゲットとして、スパッタリング法を用いる。
【0028】
続いて、図6に示すように、絶縁保護膜と後述するガラス保護膜を形成する工程に進む。まず、0.5〜2.0μmの二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)等からなる絶縁保護膜7を感温抵抗膜、及び加熱用抵抗膜上に形成する。絶縁保護膜7は、ガラス保護膜と薄膜サーミスタ5,6との反応を防止する目的で成膜させている。さらに、薄膜サーミスタ5,6に対する耐湿性を向上させるために絶縁保護膜7上にガラスペーストをスクリーン印刷等の手段で塗布した後、400〜800℃で熱処理してガラス保護膜8を形成する。
【0029】
なお、本発明の傍熱型感温抵抗素子の基板には、アルミナ基板を用いたが、シリコン基板でもよく、図7に示すように、感温抵抗膜5と加熱用抵抗膜6が形成された絶縁膜の裏面を公知のエッチング技術を用いて空洞部9を形成しても良い。基板1に空洞部9を形成した傍熱型感温抵抗素子は、感温抵抗膜5、及び加熱用抵抗膜6が成膜された基板部の熱容量が減少し、応答スピードが向上する。また、アルミナ基板でも切削などの方法で空洞部をつくり、感温抵抗膜5、及び加熱用抵抗膜6が成膜された基板部の熱容量を減少させ応答スピードを向上させても良い。またアルミナ基板以外には、窒化アルミニウム、ジルコニア、石英、ムライト、ステアタイト等のセラミック基板でもよい。また、加熱用抵抗膜6は、薄膜サーミスタを形成したが、白金測温抵抗体や、ニクロム抵抗体などの金属抵抗膜を形成して加熱用抵抗膜としてもよい。
【0030】
上記した傍熱型感温抵抗素子は、ひとつの傍熱型感温抵抗素子の構造を示したものである。実際は基板上に上記構造を有する傍熱型感温抵抗素子が多数配列された傍熱型感温抵抗素子集合基板が形成され、個々の傍熱型感温抵抗素子に切断分離するために、ダイシングテープ等に貼着してからレーザースクライブ装置またはダイシングソー等を用いて切断する。このようにして図1に示すような個々の傍熱型感温抵抗素子が完成する。分割されたそれぞれの傍熱型感温抵抗素子は、同一バッチで製造されるので抵抗値ばらつきが少なくでき、ペアリングの工数を削減し、量産化を可能とすることが出来る。
【0031】
次に絶対湿度センサを組み立てる。先ず、図8に示すメタルCANに前述した本発明の傍熱型感温抵抗素子を配置した絶対湿度センサの組み立て方法を説明する。図8(b)は、図8(a)のY−Yで切り取られる断面図である。図8(a),(b)において、貫通孔21aが形成されたメタルCAN21Aと密閉されたメタルCAN21Bとが熱的に結合されたケース20と、前記二つのメタルCAN21A、21Bの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子S1、S2と、から構成されている。組み立て手順は、先ずメタルCAN21A、21Bのそれぞれのステム22A、22Bに傍熱型感温抵抗素子S1、S2それぞれを樹脂系の接着剤で接着固定し、ワイヤボンディングにより感温抵抗膜を電気的に導出する電極パッド、及び加熱用抵抗膜を電気的に導出する電極パッドとステムのリード30とを電気的に接続する。次にキャップ23A、23Bとステム22A、22Bとをそれぞれ接着し、キャップ23Aとキャップ23Bとを接着剤などで熱的に結合させて、絶対湿度センサHS1が完成する。
【0032】
また、メタルCANを用いる代わりに、図9に示すようにセラミックパッケージに傍熱型感温抵抗素子を配置し絶対湿度センサHS2を組み立てても良い。図9(b)は、蓋部52を取り除いた際の上面図であり、図9(c)は、図9(a)のZ−Zで切り取られる絶対湿度センサの断面図である。図9(a),(b),(c)において、対称に作られた凹部51aが形成された筐体部品51と、貫通孔52aと2つの空間を形成するために仕切り部52bが形成された蓋部52と、傍熱型感温抵抗素子S1,S2とから構成されている。傍熱型感温抵抗素子S1,S2は、図に示すようにひとつの基板1の上に形成されている。組み立て手順は、先ず筐体部品51の凹部51aに傍熱型感温抵抗素子S1、S2の基板1を樹脂系の接着剤で接着固定し、ワイヤボンディングにより感温抵抗膜を電気的に導出する電極パッド3c、及び加熱用抵抗膜を電気的に導出する電極パッド3dと取り出し電極53とをそれぞれ電気的に接続する。次に蓋部52を筐体部品51に接着剤で接着固定し、絶対湿度センサHS2が完成する。なお、図9においては、傍熱型感温抵抗素子S1、S2がひとつの基板上に形成したが、基板を分離した傍熱型感温抵抗素子S1、S2であってもよい。その際には、蓋部52の仕切り部52bが、筐体部品51まで到達し、S2を密閉させる構造となる。
【0033】
次に、絶対湿度センサの出力特性を開示する。図10(a)に示すように回路を接続し、本発明の絶対湿度センサHS1と、従来の絶対湿度センサ(図11)の出力電圧を計測した。大気温度25℃で、相対湿度0%のときの絶対湿度センサの出力をオフセットし、絶対湿度20.75g/m^3の出力をプロットした結果が図10(b)である。図10(b)から分かるとおり、本発明の絶対湿度センサのほうが、約4倍の出力電圧が計測され、検出感度が向上することができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電子レンジなどの調理器具や、空調機器や各種産業機器などの絶対湿度の計測を行うために使用される絶対湿度センサに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子を説明する図である。
【図2】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図3】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図4】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図5】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図6】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の製造過程を説明する図である。
【図7】本発明に係わる傍熱型感温抵抗素子の他の例を説明する図である。
【図8】本発明に係わる絶対湿度センサを説明する図である。
【図9】本発明に係わる絶対湿度センサの他の例を説明する図である。
【図10】絶対湿度センサの出力特性を測定した回路図、及び特性図である。
【図11】従来の絶対湿度センサを説明する図である。
【図12】従来の絶対湿度センサの他の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
S1,S2 傍熱型感温抵抗素子
1 基板
2 絶縁膜
3c,3d 電極パッド
4a,4b 櫛歯状電極
5 感温抵抗膜
6 加熱用抵抗膜
7 絶縁保護膜
8 ガラス保護膜
HS1、HS2 絶対湿度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されていることを特徴とする傍熱型感温抵抗素子。
【請求項2】
空洞部が形成された基板と、前記空洞部を覆う絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記絶縁膜上、もしくは前記基板上に形成された電極パッドとから構成されていることを特徴とする傍熱型感温抵抗素子。
【請求項3】
前記感温抵抗膜が、薄膜サーミスタで形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項4】
前記加熱用抵抗膜が、薄膜サーミスタ、若しくは白金測温抵抗体で形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項5】
前記基板と前記電極パッドの間に下地電極層が形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項6】
前記絶縁膜と前記感温抵抗膜、及び前記加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極が形成されたことを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項7】
前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜上に絶縁保護膜が形成され、該絶縁保護膜上にガラス保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【請求項9】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、一つの凹部を密封する蓋部とから構成さていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【請求項10】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、貫通孔が形成されたメタルCANと密閉されたメタルCANとが熱的に結合されたケースと、前記二つのメタルCANの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子とから構成されていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【請求項1】
基板と、該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記基板上に形成された電極パッドとから構成されていることを特徴とする傍熱型感温抵抗素子。
【請求項2】
空洞部が形成された基板と、前記空洞部を覆う絶縁膜と、該絶縁膜上に形成された感温抵抗膜と、該感温抵抗膜の周囲を取り囲む前記絶縁膜上に形成された加熱用抵抗膜と、前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜とをそれぞれ外部に電気的に導出するために前記絶縁膜上、もしくは前記基板上に形成された電極パッドとから構成されていることを特徴とする傍熱型感温抵抗素子。
【請求項3】
前記感温抵抗膜が、薄膜サーミスタで形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項4】
前記加熱用抵抗膜が、薄膜サーミスタ、若しくは白金測温抵抗体で形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項5】
前記基板と前記電極パッドの間に下地電極層が形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項6】
前記絶縁膜と前記感温抵抗膜、及び前記加熱用抵抗膜との間に櫛歯状電極が形成されたことを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項7】
前記感温抵抗膜と前記加熱用抵抗膜上に絶縁保護膜が形成され、該絶縁保護膜上にガラス保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1,2に記載の傍熱型感温抵抗素子。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成され、一方の凹部に貫通孔が形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、前記傍熱型感温抵抗素子を前記ケースとで閉塞する蓋部とから構成さていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【請求項9】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、二つの凹部が対称に形成されたケースと、該ケースの凹部のそれぞれに配置された前記傍熱型感温抵抗素子と、一つの凹部を密封する蓋部とから構成さていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【請求項10】
請求項1乃至7に記載の傍熱型感温抵抗素子を用いて構成される絶対湿度センサにおいて、貫通孔が形成されたメタルCANと密閉されたメタルCANとが熱的に結合されたケースと、前記二つのメタルCANの内部にそれぞれ配置された前記傍熱型感温抵抗素子とから構成されていることを特徴とする絶対湿度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−168649(P2009−168649A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7655(P2008−7655)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390024729)石塚電子株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390024729)石塚電子株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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