説明

傷補修型ウェットクロス

【課題】 自動車に付着した汚れを拭き上げて除去することのできる機能と共に、塗装面に付いている細かい傷を拭き上げ作業によって補修することのできる機能を備えた洗車用の傷補修型ウェットクロスを提供する。
【解決手段】 不織布に、撥水成分と、研磨材と、増粘剤と、を含む含浸液を含浸させてなり、不織布が、太さの異なるマイクロファイバー繊維と通常繊維との混繊維の層を有している。混繊維では、マイクロファイバー繊維の重量比率が通常繊維の重量比率の半分以上になっている。上記含浸液に、撥水成分を含むシリコーン樹脂エマルジョンが含まれ、シリコーン樹脂エマルジョンは、ジメチルポリシロキサン又はその変性体に、トリメチルシロキシケイ酸を溶かした撥水成分を界面活性剤でエマルジョン化してなる。上記含浸液に、ワックスのエマルジョン又はディスパージョンを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷補修型ウェットクロスに関する。詳しくは、自動車に付着した汚れを拭き上げて除去することのできる機能と共に、塗装面に付いている細かい傷を拭き上げ作業によって補修することのできる機能を備えた洗車用の傷補修型ウェットクロスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の塗装面についた細かい傷(洗車によって生じる傷のほか、粉塵などの衝突によって生じる傷を含む)を補修して消す手段として、一般的には次の2通りの方法が行われている。そのうちの1つの方法は、研磨材などの作用で塗膜やコーティング被膜の表面(以下「下地面」という)を薄く削ってフラットな状態にするという方法、他の1つの方法は、ワックスやオイル、樹脂などの被膜で傷の付いている箇所を覆ってしまって傷を外観上わからなくする方法である。
【0003】
上記のような2つの傷補修方法を不織布などを液体で湿らせたウェットクロスを用いて行う場合、作業性や補修効果などを勘案すると、適用しやすいのは後者の方法、すなわち、樹脂やオイルなどで傷の付いている箇所を表面から覆う方法であることが判っている。このタイプのウェットクロスは、オイル成分や樹脂成分などをウェットクロスに保持させたものであって、塗膜表面のコーティング被膜の艶出しを行う作用をも発揮させやすい。このタイプのウェットクロスを使用して自動車の下地面を拭き上げると、傷の付いている箇所の表面に上記したような有効成分の被膜が形成されてかなりの傷消し効果が得られる。しかしながら、その反面で、艶などにむらが発生しやすいという問題がある。また、傷の付いている箇所が上記したような有効成分で一時的に覆われているだけであるために、雨などで有効成分が流れて傷が再び目立ってきやすいという問題がある。
【0004】
一方、前者による傷補修方法を不織布などを液体で湿らせたウェットクロスを用いて行う場合には、研磨剤を含んだ含浸液を不織布に含浸させておくという手段が採用される。このタイプのウェットクロスによると、添加する研磨剤の種類によってはかなりの研摩効果が得られて傷を消失させることができるけれども、このものでは、下地面を拭き上げるときの作業性に問題があると云われている。すなわち、拭き上げによって十分な研摩効果を得るためには一定量の研磨剤を添加する必要があるけれども、満足のいく研磨作用を発揮させ得るのに十分な量の研磨剤を添加した含浸液を不織布に含ませることによって形成したウェットクロスを用いて下地面を拭き上げると、それの表面に研磨剤が残ってしまって一回拭きによっては表面を綺麗に仕上げることができないという作業性についての問題がある。この問題点は、通常のコンパウンドを用いるときにも同様に生じ、傷を消すために同じ箇所を何度も磨く必要があり、サッと拭き上げて仕上げるということができない。また、研磨効率が高くなるために拭き上げ時の摩擦抵抗が大きくなる。そのため、作業者にとっては拭き上げが重く感じられるようになり、作業性の点でそれほど好ましいものではない。
【0005】
一方、撥水性成分を乳化させて水に分散させた撥水性の乳化液を不織布に含浸させてなるウェットクロスが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1によって提案されているウェットクロスにおいて、乳化された撥水性成分は、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス及びワックス状物の中から選択されている。そのため、このウェットクロスで自動車の下地面を拭き上げると、上記した後者の傷補修方法が行われるものと考えられる。
【特許文献1】特開2000−256969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明者は、上記したような状況、すなわち、従来より行われている方法が持っている作業性についての問題や傷消し効果の持続性の問題を改善するために鋭意検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、洗車作業に際して、研磨による傷消しを行いつつ研磨によっては消えなかった傷の付いている箇所にワックスやオイルなどを被せて目立ちにくくする、というハイブリット方式を実行することのできる傷補修型ウェットクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る傷補修型ウェットクロスは、不織布に、撥水成分と、研磨材と、増粘剤と、を含む含浸液を含浸させてなり、上記不織布が、太さの異なるマイクロファイバー繊維と通常繊維との混繊維の層を有している。
【0009】
下地面に乗っている汚れを拭き上げて取り去るための不織布には、一般的に掻き取り性の良いマイクロファイバー繊維だけで構成したものを用いるのが普通である。しかし、そのような不織布は、汚れを取る性能に優れる反面で、次に説明するような欠点も併せ持っている。
【0010】
欠点の1つ目は、掻き取り性が良いと滑り性が悪くなるということである。そのため、拭き上げ作業性が悪くなりやすく、しかも、摩擦抵抗が高いために上記のように下地面を傷めやすい。欠点の2つ目は、マイクロファイバー繊維だけで構成した不織布は繊維密度が高くなり、繊維層の内部空間が小さくなり汚れを保有する量が少なくなるということである。繊維層の内部空間がある程度大きいと、その空間の内部に汚れを取り込みやすくなって、汚れが直接に下地面に当たることも少なくなる。同様の理由により、繊維層に一定の空間が確保されていると、研磨材を保持しやすくなると作用も発揮される。
【0011】
そこで、本発明では、上記のように、不織布の全体をマイクロファイバー繊維(マイクロファイバー繊維100%)だけで形成するのではなく、マイクロファイバー繊維よりも太い通常の太さの繊維(通常繊維)を何割か混ぜて使用している。さらに具体的には、マイクロファイバー繊維と通常繊維との重量比率(マイクロファイバー繊維:通常繊維)を9:1ないし5:5程度に定めておくことが望ましい。マイクロファイバー繊維の重量比率が半分より少なくなると、太い通常繊維の量が半分を越えるために、汚れの掻取り性が低下するだけでなく、拭き上げた際に筋状の傷が下地面に多く残りやすくなる。マイクロファイバー繊維とは太さが0.9dtex以下好ましくは0.1〜0.9dtexのものをいい、通常繊維とは太さが1.0〜6dtex、好ましくは1.5〜4dtexのものをいう。
【0012】
不織布には、親水性繊維でなる中心層を、疎水性繊維でなる混繊維の外層で挟んだ3層構造を採用することが有益である。親水性繊維とは公定水分率が5以上のものをいい、具体的にはレーヨン繊維、パルプ繊維、綿繊維、絹繊維、麻繊維、ウール繊維など挙げることができるけれども、これに限定されるものではない。また、疎水性繊維とは公定水分率が5未満のものをいい、具体的にはポリエチレン樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維、ビニリデン樹脂繊維など挙げることができるけれども、これに限定されるものではない。また、本発明では、上記マイクロファイバー繊維を、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を成分とするマイクロファイバー繊維で構成しておくことが望ましい。これは、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を成分とするマイクロファイバーは、他の繊維(たとえば、不織布に汎用されているポリエステル樹脂のマイクロファイバー)よりも下地面を拭き上げるときの滑り性に優れ、汚れが乗った下地面を拭き上げるときにおいても摩擦が低いため、下地面をより傷めずに済むことによる。
【0013】
不織布に含ませる含浸液の重量は、不織布重量の1.8〜3.5倍程度が適量であり、好ましくは、2.0〜3.0倍が適量である。含浸液重量が1.8倍より少ないと、拭き上げによっても傷消しに必要な成分が下地面の上に十分に乗りにくく、満足のいく傷消し効果を得にくい。含浸液重量が3.5倍を超えると、拭き上げ作業をした際に過剰な液が下地面の上に残りやすく、乾燥後にむらや粉残りが生じやすくなる。また、不織布の吸収性能が飽和に近づくので汚れの除去性も悪くなる。特に、含浸液重量を2.2〜2.6倍に定めておくと、下地面に付着する成分が少なくなりすぎるという事態や、気温の高い夏場にすぐに乾いてしまうといった不都合が生じず、また、液が過剰に下地面に付着してむらになるという事態の起こるおそれもなくなる。
【0014】
本発明に係る傷補修型ウェットクロスでは、拭き上げによって傷を消失させるための有効成分として研磨材を用いている。そして、この研磨材の作用によって、下地面が研磨され、下地面の平滑性が再現されて光沢が回復する。研磨材には、アルミナ、シリカ、カオリン、炭化ケイ素、ケイ酸金属塩、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどの種々の研磨材を挙げることができるけれども、これに限定されるものではない。
【0015】
研磨材としては、平均粒径0.3〜10μmの研磨材を用いることが好ましく、その中でも平均粒径0.7〜3μm程度のものを用いることが特に好ましい。平均粒径が0.3μmを下回ると十分な研磨能力を期待できず、傷消し作用が発揮されない可能性がある。また、平均粒径が10μmを超えると研削性には優れるけれども、大きな傷が残ってしまう可能性があり、下地面が綺麗に仕上がらないおそれがある。また、この場合研磨材はその硬度が15段階評価のモース硬度において7以上であることが好ましく、上記の研磨材の中ではアルミナがもっとも好ましい。モース硬度が7未満の研磨材であると、研磨材が柔らかいので平均粒径10μmを超えても使用できる場合があるが、研磨効率が低いので使用しづらく、さらにモース硬度1や2の研磨材では柔らかすぎるので下地面を研磨することはできない。また、研磨材の好ましい添加量は、含浸液中に0.1〜3.0wt%、特に好ましくは0.5〜1.5wt%である。添加量が0.1wt%を下回ると十分な傷消し作用を期待することができなくなり、3.0wt%を超えると傷消し作用は十分に発揮されるけれども、作業者が拭き上げ作業を重く感じるようになるほか、下地面に研磨材が残ってしまうおそれがある。
【0016】
本発明において、上記含浸液に、撥水成分が含まれていることが必要である。撥水成分は汚れた下地面を拭き上げることによって綺麗な面を形成させるのに必須の成分である。その理由は、下地面が十分な撥水面になっていないと、不織布に含まれている水分が下地面に大きな水滴となって残るためである。大きな水滴が残ると研磨成分もその水滴に含まれてそのまま残ることになり、拭き上げ後の乾燥による水分の蒸発によって研磨成分が粉体となって下地面に残るので好ましくない。下地面が十分な撥水状態になっていると、水滴は細かくなり、下地面に液が過剰に残りにくくなって、研磨成分が残らない均一で綺麗な面を形成しやすくなる、また、上記の撥水性分は被膜成分としても働き、傷の付いている箇所に残ることによってキズを目立ちにくくすることにも役立つ。上記撥水成分の添加量は、含浸液中に0.1〜1.0wt%(有効分として)であることが好ましい。添加量が0.1wt%未満だと下地に十分な撥水性を付与することができなくなり、汚れた下地面を綺麗に拭き上げることができなくなるおそれがある。添加量が1.0wt%を超えると、下地面に過剰に撥水成分が付着して濃淡むらを生じる原因になったり、その撥水成分が定着剤として作用して含浸液中に含まれる研磨材が下地面に付着してしまうおそれがある。
【0017】
本発明に係る傷補修型ウェットクロスでは、上記撥水成分は、撥水成分を界面活性剤で乳化することによって得られているシリコーン樹脂エマルジョンとして、上記含浸液に含まれている。即ち、上記含浸液に、撥水成分を含むシリコーン樹脂エマルジョンが含まれており、このシリコーン樹脂エマルジョンは、ジメチルポリシロキサン又はその変性体に、トリメチルシロキシケイ酸を溶かした撥水成分を界面活性剤で乳化することによってエマルジョン化してなるものである。また、このシリコーン樹脂エマルジョンは、環状シリコーンにトリメチルシロキシケイ酸を溶かして得られた撥水成分を界面活性剤で乳化することによってエマルジョン化したものでもよい。
【0018】
本発明に係る傷補修型ウェットクロスでは、不織布に含浸している含浸液にワックスのエマルジョンやディスパージョンを含ませることができる。ワックス成分の具体例として、としては天然又は合成の各種ワックス又はワックス状物を挙げることができる。天然ワックス成分には、脂肪酸及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス、シュガーワックス、ライスワックス、木ロウ、硬化ヒマシ油などの植物系天然ワックス、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン及びその誘導体などの動物系天然ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの石油系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンなどの鉱物系天然ワックスがある。合成ワックス成分の具体例として、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びそれらの誘導体などの合成系ワックスなどがある。
【0019】
上記撥水成分を含むシリコーン樹脂エマルジョンが含まれている含浸液に、上記で挙げたワックス成分のエマルジョンやディスパージョンを組み合わせて用いると、拭き上げによって形成される被膜が厚くなり、その被膜が下地面の傷の上に被さって傷が目立ちにくくなる。また、当然ながら、下地面に付与されていた初期の艶とその艶の持続性が向上する。特に、洗浄時における艶の耐久性(すなわち傷消し性の維持)が相当程度に向上する。
【0020】
ワックスのエマルジョンやディスパージョンの添加量は、含浸液中に有効分として0.01〜0.5wt%の範囲であることが適切である。添加量が0.01wt%未満であると、十分な傷消し作用や傷消しの持続性が得られにくくなり、0.5wt%を超えると十分な傷消し作用を得られるものの、下地面に過剰に成分が付着して濃淡むらが生じやすくなったり、過剰の固形分によって綺麗に当該成分を延ばすことができなくなる。
【0021】
増粘剤は研磨材の沈降を防ぐ役割を果たす。増粘剤としては、イオン架橋型有機酸類、ガム類、鉱物類、あるいは、セルロース類が挙げられ、その他に寒天、ゼラチン、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
【0022】
イオン架橋型有機酸類は、ポリアクリル酸やアルギン酸などの有機酸などであって、塩の添加によってイオン架橋し、分子鎖が伸びることによって、増粘性を発現するものである。添加する塩としては、ポリアクリル酸の場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジー(2−エチルヘキシル)アミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの有機アミン類などのアルカリが挙げられ、また、アルギン酸の場合には、塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの2価の金属塩などが挙げられる。これらの塩は、有機酸のカルボン酸に対して、例えば、中和当量で用いられる。
【0023】
ガム類としては、例えば、アラビアガム、グアーガムおよびその誘導体、ビーガム、キサンタンガム、ウェランガム、ランタンガム、ジュランガムなどが挙げられる。鉱物類としては、例えば、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。また、セルロース類としては、例えば、カルボシキメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。増粘剤を配合することにより、成分の沈降防止と溶液の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、自動車に付着した汚れを拭き上げて除去することのできる機能と共に、塗装面に付いている細かい傷を拭き上げ作業によって補修することのできる機能を備えた傷補修型ウェットクロスを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、実施例を比較例と共に説明する。
【0026】
使用した原料は次の通りのものである。
(1)シリコーン樹脂エマルジョンA
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサンに溶かし、それをエマルジョン化したもの(有効濃度40wt% 使用したジメチルポリシロキサン粘度350mm/s、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルポリシロキサンの混合比率30:70)。
(2)シリコーン樹脂エマルジョンB
トリメチルシロキシケイ酸を環状シリコーンに溶かし、それをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt% トリメチルシロキシケイ酸と環状シリコーンの混合比率50:50)。
(3)ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA
粘度10mm/sのジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(4)ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB
粘度500mm/sのジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(5)アルミナA
平均粒径1μm。
(6)アルミナB
平均粒径4μm。
(7)酸化セリウム
累積高さ50%点の粒子径2.88μm。
(8)ワックスエマルジョンA
パラフィンワックスのエマルジョン(有効成分30wt%)。
(9)ワックスエマルジョンB
カルナバワックスのエマルジョン(有効成分30wt%)。
(10)イオン架橋型ポリアクリル酸
(11)キサンタンガム
【0027】
実施例1
シリコーン樹脂エマルジョンA 2.00wt%
アルミナB 1.00wt%
キサンタンガム 0.10wt%
イオン交換水 96.90wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンA、アルミナBを均一に分散させた後、キサンタンガムを添加した後、攪拌を続け、均一増粘させて含浸液を調整した。30×30cmにカットしたポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された不織布(目付け量:70g/m )に、不織布の重量に対して2.3重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。尚、上記各成分について、それらの成分の配合量(wt%)は有効分の割合(wt%)を示すものではない。有効分の割合は、上記の各原料に示した各成分の有効濃度・有効成分に基づいて(表示のないものは有効濃度・有効成分約100%)、実施例中の各成分の割合から算出される割合である。以下、実施例及び比較例についても同様である。
【0028】
実施例2
シリコーン樹脂エマルジョンB 1.10wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 0.30wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB 1.50wt%
アルミナA 0.80wt%
キサンタンガム 0.10wt%
イオン交換水 96.20wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンB、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB及びアルミナAを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、キタンサンガムを添加し、均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して1.8重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0029】
実施例3
シリコーン樹脂エマルジョンB 0.80wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 0.60wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB 1.00wt%
酸化セリウム 1.00wt%
キサンタンガム 0.10wt%
イオン交換水 96.50wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンB、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB及び酸化セリウムを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、キタンサンガムを添加し、均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して3.2重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0030】
実施例4
シリコーン樹脂エマルジョンA 0.80wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
酸化セリウム 1.00wt%
イオン架橋型ポリアクリル酸 0.05wt%
アンモニア水(28%水溶液) 0.02wt%
イオン交換水 97.13wt%
100.00wt%
イオン交換水にイオン架橋型ポリアクリル酸を溶解させた後、シリコーン樹脂エマルジョンA、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA、ワックスエマルジョンA及び酸化セリウムを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、アンモニア水を添加し均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、及び2dtexのポリエステル繊維の混紡(混紡率8:2)中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.3重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0031】
実施例5
シリコーン樹脂エマルジョンA 1.00wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB 1.10wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
アルミナA 1.00wt%
イオン架橋型ポリアクリル酸 0.05wt%
アンモニア水(28%水溶液) 0.02wt%
イオン交換水 96.33wt%
100.00wt%
イオン交換水にイオン架橋型ポリアクリル酸を溶解させた後、シリコーン樹脂エマルジョンA、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB、ワックスエマルジョンA及びアルミナAを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、アンモニア水を添加し均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、及び2dtexのポリエステル繊維の混紡(混紡率8:2)中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.6重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0032】
実施例6
シリコーン樹脂エマルジョンA 0.20wt%
シリコーン樹脂エマルジョンB 0.50wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 0.20wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB 1.00wt%
ワックスエマルジョンB 0.20wt%
アルミナA 1.00wt%
イオン架橋型ポリアクリル酸 0.05wt%
アンモニア水(28%水溶液) 0.02wt%
イオン交換水 96.83wt%
100.00wt%
イオン交換水にイオン架橋型ポリアクリル酸を溶解させた後、シリコーン樹脂エマルジョンA、シリコーン樹脂エマルジョンB、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA、ジメチルシリコーンオイルエマルジョンB、ワックスエマルジョンA及びアルミナAを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、アンモニア水を添加し均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、及び2dtexのポリエステル繊維の混紡(混紡率8:2)中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.3重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0033】
比較例1
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 2.50wt%
イオン交換水 97.50wt%
100.00wt%
上記の成分をイオン交換水に均一分散させて、含浸液を調整した。30×30cmにカットしたポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0034】
比較例2
ワックスエマルジョンA 3.00wt%
ジメチルシリコーンオイルエマルジョンA 2.50wt%
イオン交換水 94.50wt%
100.00wt%
上記の成分をイオン交換水に均一分散させて、含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、及び2dtexのポリエステル繊維の混紡(混紡率8:2)中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0035】
比較例3
アルミナ 2.00wt%
イオン架橋型ポリアクリル酸 0.05wt%
アンモニア水(28%水溶液) 0.02wt%
イオン交換水 97.93wt%
100.00wt%
イオン交換水にイオン架橋型ポリアクリル酸を溶解させた後、アルミナを攪拌しながら順次添加して均一に分散させた後、アンモニア水を添加し均一に増粘させることによって含浸液を調整した。30×30cmにカットした外層ポリプロピレン/ポリエチレンのマイクロファイバー、及び2dtexのポリエステル繊維の混紡(混紡率8:2)中層レーヨンで構成された3層構造不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0036】
評価方法・消化基準について
【0037】
・傷消し性および汚れ洗浄性の評価
〔評価方法〕
試験板としてクラウンコンフォート(トヨタ自動車株式会社製、以下同じ)の黒色タイプのボンネット板を用意した。平均粒径3μmのアルミナを水に分散させ、それを綿布に浸したものでボンネット表面を軽く均一に研磨して傷をつけた。その後1ヶ月間屋外に放置し、塗装面に汚れが堆積したものを用意した。試験板は、一部分をブランクとし、実施例、比較例の各組成物を含ませたウェットシートで洗浄し、洗浄後の状態を目視にて評価した。尚、ブランク部分は洗車スポンジを用いて水洗いを行い、その後綿タオルで水滴を拭き上げた。
【0038】
また、その後、洗浄面を脱脂し、艶成分を除去した後の傷消し性を評価した。
【0039】
〔傷消し性の評価基準〕
◎ 表面についたキズが取れ、キレイな光沢面になっている。
○ 表面についたキズは取れているが光沢が少し悪い。
△ 表面についたキズが少し残っており、光沢も悪い。
× 表面についたキズが残っており、光沢もほとんど出ていない。
【0040】
〔洗浄性(研磨材の残存も含む)の評価基準〕
◎ 汚れが綺麗に拭き上げられ、汚れの再付着が無く、研磨材の残存もない。
○ 汚れが拭き上げられるが、少し汚れの再付着がある。また研磨材の残存も少しある。
△ 汚れが拭き上げにくく、汚れの再付着があり、研磨材の残存がある。
× 汚れがきれいに拭き上げられず、研磨材がかなり残存する。
【0041】
〔艶成分を除去した後のキズ消し性〕
◎ 表面についたキズが取れ、光沢が回復し、ブランク部分との差がはっきりとしている。
○ 表面についたキズがわずかに残っているものの、ブランク部分との差がはっきりとしている。
△ 表面についたキズが残っており、ブランク部分との差がわかりにくい。
× 表面についたキズが残っており、ブランク部分との差がない。
【0042】
上掲の実施例及び比較例の評価を表1に示した。
【0043】
<表1>
┌───────┬────────┬────────┬─────────┐
│ │ 傷消し性 │ 洗浄性 │艶成分を除去した後│
│ │ │ │の傷消し性 │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例1 │ ○ │ ○ │ △ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例2 │ ○ │ ○ │ ○ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例3 │ ◎ │ ○ │ ◎ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例4 │ ◎ │ ◎ │ ◎ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例5 │ ◎ │ ◎ │ ◎ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 実施例6 │ ◎ │ ◎ │ ◎ │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 比較例1 │ × │ × │ × │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 比較例2 │ △ │ × │ × │
├───────┼────────┼────────┼─────────┤
│ 比較例3 │ × │ × │ △ │
└───────┴────────┴────────┴─────────┘
【0044】
表1により、本発明の実施例に係るウェットクロスは、傷消し性及び洗浄性において共に良好で、下地面を拭き上げるだけで、下地面に付いた傷を補修する機能と下地面を洗浄する機能とを併せ持っていることが判る。また、艶成分を除去した後の傷消し性についても良好な結果が得られていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布に、撥水成分と、研磨材と、増粘剤と、を含む含浸液を含浸させてなり、
上記不織布が、太さの異なるマイクロファイバー繊維と通常繊維との混繊維の層を有していることを特徴とする傷補修型ウェットクロス。
【請求項2】
上記混繊維の層において、マイクロファイバー繊維の重量比率が通常繊維の重量比率の半分以上である請求項1に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項3】
上記不織布が、親水性繊維でなる中心層を、疎水性繊維でなる上記混繊維の外層で挟んだ3層構造を形成している請求項1又は請求項2に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項4】
上記マイクロファイバー繊維が、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を成分とするマイクロファイバー繊維でなる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項5】
含浸液の重量が不織布の重量の1.8〜3.5倍である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項6】
含浸液の重量が不織布の重量の2.0〜3.0倍である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項7】
含浸液中の上記研磨材の添加量が0.1〜3.0wt%である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項8】
上記研磨材はその平均粒径が0.3〜10μmである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項9】
上記研磨材はその平均粒径が0.7〜3μmである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項10】
上記研磨材はその硬度が15段階評価のモース硬度において7以上である請求項8または請求項9に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項11】
上記含浸液に、撥水成分を含むシリコーン樹脂エマルジョンが含まれ、そのシリコーン樹脂エマルジョンは、ジメチルポリシロキサン又はその変性体に、トリメチルシロキシケイ酸を溶かした撥水成分を界面活性剤でエマルジョン化してなる請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項12】
上記含浸液に、ワックスのエマルジョン又はディスパージョンを含んでいる請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項13】
含浸液中の撥水成分の含有量が有効分として0.1〜1.0wt%である請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載した傷補修型ウェットクロス。
【請求項14】
上記含浸液に含まれるワックスのエマルジョン又はディスパージョンの添加量が、含浸液中に有効分として0.01〜0.5wt%の範囲である請求項13に記載した傷補修型ウェットクロス。

【公開番号】特開2009−138298(P2009−138298A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315864(P2007−315864)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】