説明

像加熱装置

【課題】定着ベルトの非通紙部昇温を抑制しつつ、縁なし印刷において出力画像の縁領域の光沢度の低下を1枚も発生しないで済む像加熱装置を提供する。
【解決手段】磁性体コア7aは、定着ベルト1の回転軸線方向に配列してそれぞれが定着ベルト1に対して接離方向へ移動可能である。制御部102は、連続通紙に先立たせて定着ベルト1の通紙部領域の温度を定着可能温度に昇温させる際に、通紙部領域に少なくとも一部が重なる磁性体コア7aに加えて、当該範囲の両外側に位置する1個ずつの磁性体コア7aを定着ベルト1に近接した第一位置へ配置し、その外側の非通紙部領域の磁性体コア7aは定着ベルト1から離れた第二位置へ配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像加熱部材の回転軸線方向に配列した複数の磁性体コアがそれぞれ像加熱部材に対して移動可能な像加熱装置、詳しくは出力画像の縁に光沢ムラを生じることなく非通紙部昇温を抑制する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体に形成したトナー像を記録材に転写し、トナー像が転写された記録材を像加熱装置の加熱ニップで加熱加圧して記録材に画像を定着させる画像形成装置が広く用いられている。像加熱装置は、未定着のトナー像を記録材に定着させる定着装置の他に、記録材上の画像を加熱して光沢処理等する画像表面処理装置を含む。
【0003】
定着装置は、記録材の画像面に接触する像加熱部材(ローラ部材又はベルト部材)に加圧部材(ローラ部材又はベルト部材)を圧接して記録材の加熱ニップを形成する。通紙待ち受け時の室温状態の像加熱部材を、通紙可能な180℃〜200℃まで加熱するために必要な時間を短縮するために、薄肉の像加熱部材に誘導加熱装置を組み合わせた像加熱装置が実用化されている(特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には薄肉の定着ローラに加圧ローラを圧接して記録材の加熱ニップを形成した定着装置が示される。ここでは、定着ローラの内側に誘導加熱装置が配置され、誘導加熱装置は、コイル部材で発生させた磁束を磁性体コアに案内させて定着ローラに入射させる。
【0005】
特許文献2には、薄肉の定着ベルトに加圧ローラを圧接して記録材の加熱ニップを形成しており、誘導加熱装置は、定着ベルトの外側に配置されている。
【0006】
このような誘導加熱装置では、通紙中に、定着ベルトが記録材に冷却される通紙部に比較して、記録材に接しない非通紙部の温度が上昇する非通紙部昇温が問題となっている。
【0007】
そのため、特許文献2の定着装置では、定着ベルトの外側に回転軸線方向に沿って複数個の磁性体コアを配列して、それぞれを定着ベルトに対して接離方向へ移動可能にしている。そして、連続通紙に先立たせて、定着ベルトの回転軸線方向における記録材に接する範囲よりも外側のすべての磁性体コアを定着ベルトから遠ざけて位置決めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−194940号公報
【特許文献2】特開2011−53597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の像加熱装置では、定着ベルトから遠ざけて位置決めた磁性体コアと定着ベルトに近付けて位置決めた磁性体コアとの境目に、回転軸線方向の温度傾斜が発生する。そのため、磁性体コアの退避のさせ方によっては、温度傾斜に重なる範囲の記録材の部分(幅方向の縁領域)では定着温度の不足に起因する光沢度の低下が発生してしまう。
【0010】
本発明は、記録材の幅方向における端部の磁性体コアを退避させても、幅方向における記録材の端部の加熱不良を低減できる像加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の像加熱装置は、磁束を生ずるコイルと、前記コイルから生じた磁束により発熱し、記録材の画像を加熱する回転可能な像加熱部材と、前記像加熱部材に対向して配置された複数の磁性体コアと、前記複数の磁性体コアを移動させて、第一位置と前記第一位置よりも前記像加熱部材から離れた第二位置とに配置可能な移動手段とを有するものである。そして、記録材のサイズを検知する検知手段と、前記検知手段に基づいて得られる前記像加熱部材の回転軸線方向における通紙部領域の端部位置から前記回転軸線方向の外側に向かって予め設定した間隔よりも内側にある非通紙部領域の磁性体コアを前記第一位置に配置することを決定する決定手段とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の像加熱装置では、記録材の幅方向における端部の磁性体コアを退避させても、幅方向における記録材の端部の加熱不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】定着装置の要部の構成の説明図である。
【図3】定着装置を二次転写部側から見た縦断面図である。
【図4】定着ベルト1の層構成の説明図である。
【図5】磁性体コアの移動の説明図である。
【図6】磁性体コアの移動機構の説明図である。
【図7】定着装置の斜視図である。
【図8】磁性体コアの配置の説明図である。
【図9】非通紙部の磁性体コアの位置決めの説明図である。
【図10】プリント開始時の定着ベルトの温度分布の説明図である。
【図11】実施例1の非通紙部加熱制御のフローチャートである。
【図12】プリント開始後の非通紙部昇温の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、通紙領域の外側に位置する両外側の磁性体コアが通紙領域の内側に位置する磁性体コアと等しく位置決めされる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0015】
従って、像加熱装置は、トナー像を転写された記録材を加熱処理して記録材にトナー像を定着させる定着装置のみならず、半定着又は定着済みトナー像を加熱処理して画像に所望の表面性を付与する画像加熱装置を含む。画像形成装置に搭載されるのみならず、記録材に定着された画像を再加熱して画像の光沢度を向上させる単独の画像加熱装置も含む。像加熱部材と加圧部材は、ベルト部材とローラ部材のいずれの組み合わせでもよい。
【0016】
画像形成装置は、モノクロ/フルカラー、枚葉型/記録材搬送型/中間転写型、トナー像形成方式、転写方式の区別無く本発明の像加熱装置を搭載できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0017】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置Eは、中間転写ベルト26に沿ってイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像形成部PY、PC、PM、PKを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0018】
画像形成部PYでは、感光ドラム21(Y)にイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト26に転写される。画像形成部PCでは、感光ドラム21(C)にシアントナー像が形成されて中間転写ベルト26に転写される。画像形成部PM、PKでは、感光ドラム21(M)、21(K)にそれぞれマゼンタトナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト26に転写される。
【0019】
中間転写ベルト26は、駆動ローラ27、二次転写対向ローラ28、テンションローラ29に張架されて、駆動ローラ27によって駆動される。記録材Pは、記録材カセット31から給紙ローラ32により1枚ずつ取り出されてレジストローラ33で待機する。記録材Pは、レジストローラ33によって二次転写部T2へ給送されて、二次転写部T2にてトナー像に重ねて挟持搬送される過程で、中間転写ベルト26からトナー像を転写される。四色のトナー像を転写された記録材Pは、定着装置Aへ搬送され、定着装置Aで加熱加圧を受けて、表面にトナー像を定着された後に、排出搬送路36を通じて外部トレイ37へ排出される。
【0020】
画像形成部PY、PC、PM、PKは、現像装置23(Y)、23(C)、23(M)、23(K)で用いるトナーの色がイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、画像形成部PYについて説明し、画像形成部PC、PM、PKに関する重複した説明を省略する。
【0021】
画像形成部PYは、感光ドラム21の周囲に、帯電ローラ22、露光装置25、現像装置23、転写ローラ30、及びドラムクリーニング装置24を配置している。帯電ローラ22は、感光ドラム21の表面を一様な電位に帯電させる。露光装置25は、レーザービームを走査して感光ドラム21に画像の静電像を書き込む。現像装置23は、静電像を現像して感光ドラム21にトナー像を形成する。転写ローラ30は、直流電圧を印加されて感光ドラム21のトナー像を中間転写ベルト26へ転写させる。
【0022】
<定着装置>
図2は定着装置の要部の構成の説明図である。図3は定着装置を二次転写部側から見た縦断面図である。図4は定着ベルト1の層構成の説明図である。
【0023】
以下の説明において、定着装置の正面とは、定着装置を記録材入口側からみた面、背面とはその反対側の記録材出口側から見た面である。定着装置の左右とは、定着装置を正面から見て左または右である。上流側は記録材の搬送方向の上流側、下流側は記録材の搬送方向の下流側である。
【0024】
図2に示すように、定着ベルト1は、制御部102で制御されるモータM1によって加圧ローラ2が回転駆動されることで、画像形成時には、図1の二次転写部T2から搬送されてくる記録材Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転駆動される。定着装置Aでは、定着ベルト1の表面回転速度が300mm/secであって、A4サイズ横送りのフルカラー画像であれば1分間に80枚、同じくA4サイズ縦送りであれば1分間に58枚を連続的に定着可能である。
【0025】
未定着トナー画像Tを有する記録材Pは、そのトナー画像担持面側を定着ベルト1側に向けて、ガイド部材7で案内されて、定着ベルト1と加圧ローラ2とで加圧形成される加熱ニップNに導入される。記録材Pは、加熱ニップNにおいて、定着ベルト1の外周面に密着し、定着ベルト1と一緒に加熱ニップNを挟持搬送されていく。
【0026】
定着ベルト1の熱が付与されつつ加熱ニップNの加圧力を受けて、未定着トナー像Tは、記録材Pの表面に定着される。加熱ニップNを通った記録材Pは、定着ベルト1の表面が加熱ニップNの出口部分で変形するため、定着ベルト1の外周面から記録材Pが自己分離して定着装置A外へ搬送される。
【0027】
定着ベルト1は、金属層と樹脂層とを有する無端ベルトである。定着ベルト1は、内径が30mmの無端ベルトであって、誘導加熱装置70によって誘導加熱されて、記録材に接して回転する。加圧ローラ2は、定着ベルト1に圧接されて記録材の加熱ニップNを形成する。
【0028】
加圧ローラ2は、長手方向中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金2aに、厚さがほぼ5mmのシリコンゴムの弾性層2bを設けてある。弾性層2bの表面は、30μmの厚みでフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)の離型層2cが設けられている。加圧ローラ2の長手方向中央部における硬度は、ASK−C70°である。芯金2aにテーパー形状をつけているのは、加圧した時に圧力付与部材3が撓んでも、定着ベルト1と加圧ローラ2で挟まれる加熱ニップN内の圧力が長手方向にわたって均一に確保できるからである。
【0029】
芯金2aにテーパー形状をつけて中央部と両端部とで弾性層2bの厚さが異なるため、定着ベルト1と加圧ローラ2の加熱ニップNの搬送方向長さは、定着ニップ圧が600Nにおいては、長手方向両端部で約9mm、中央部では約8.5mmである。これにより、記録材Pの両端部での搬送速度が中央部と比べて速くなるので、紙しわが発生しにくくなるという利点がある。
【0030】
圧力付与部材3は、その内側面を金属製のステー4に保持されて、その外側面で定着ベルト1の内側面を支持する。圧力付与部材3は、定着ベルト1を介して加圧ローラ2に押圧力を作用させて、定着ベルト1と加圧ローラ2の間に加熱ニップNを形成する。圧力付与部材3は、耐熱性樹脂で形成してある。ステー4の励磁コイル6側には、誘導加熱によるステー4の温度上昇を防止するための磁束遮蔽部材としての磁束遮蔽コア5が設けられている。
【0031】
図3に示すように、ステー4は、定着ベルト1と加圧ローラ2の圧接部に圧力を加えるために剛性が必要であるため、鉄製である。ステー4は、特に両端部で励磁コイル6と接近しており、ステー4の発熱を防止するために、励磁コイル6で生じる磁界を遮蔽するために、ステー4の上面に長手方向にわたって磁束遮蔽コア5を配置してある。
【0032】
一対のガイド部材の一例である定着フランジ10は、無端ベルトの両端部に非回転に配置され、無端ベルトの内周面を支持する外周部と無端ベルトの端部に突き当たるフランジ部とを有する。定着フランジ10は、定着ベルト1の長手方向移動および周方向の形状を規制する左右の規制部材である。定着フランジ10内に挿通して配設したステー4の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材9aとの間にステー加圧バネ9bを縮設することで、ステー4に押し下げ力を作用させている。これにより、圧力付与部材3の下面と加圧ローラ2の上面とが定着ベルト1を挟んで圧設して、記録材の画像の加熱ニップNが形成される。
【0033】
定着ベルト1は、基層が金属で構成されているので、回転状態にあっても回転軸線方向への寄りを規制するための手段としては、定着ベルト1の端部を単純に受け止めるだけの定着フランジ10を設ければ十分である。これにより、定着装置Aの構成を簡略化できるという利点がある。
【0034】
図4に示すように、定着ベルト1は、電気鋳造法によって製造した厚み40μmのニッケルの基層(金属層)1aを有している。基層1aには、ニッケルのほかに、鉄合金や銅、銀などを適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。金属層1aの厚みは、後で説明する励磁コイルに流す高周波電流の周波数と金属層の透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
【0035】
基層1aの外周には、耐熱性シリコンゴム層の弾性層1bが設けられている。弾性層1bの厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。ここでは、定着ベルト1の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、弾性層1bの厚さは300μmである。弾性層1bのシリコンゴムは、JIS−A20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。弾性層1bの外周には、フッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)の離型層1cが30μmの厚みで設けられている。基層1aの内面側には、定着ベルト内面と中央サーミスタ(TH1:図2)との摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層による滑性層1dを10〜50μm設けている。滑性層1dは、ポリイミドを20μm設けた。
【0036】
<誘導加熱装置>
図2に示すように、誘導加熱装置70は、定着ベルト1を誘導加熱する加熱源である。誘導加熱装置70は、定着ベルト1の外周面の上面側において、定着ベルト1に所定のギャップ(隙間)を存して対面させて配設してある。回転可能な像加熱部材の一例である定着ベルト1は、コイルの一例である励磁コイル6から生じた磁束により発熱して記録材の画像を加熱する。
【0037】
励磁コイル6は、電線として例えばリッツ線を用い、これを横長・船底状にして定着ベルト1の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。励磁コイル6の長手方向の内径は352mm、外径は392mmである。定着ベルト1の回転状態において、励磁コイル6には、電源装置(励磁回路)101から20〜50kHzの高周波電流が印加されて、励磁コイル6によって発生した磁界により定着ベルト1の金属層(導電層)が誘導発熱する。
【0038】
磁性体コア7aは、励磁コイル6によって発生した磁界が定着ベルト1の金属層(導電層)以外に実質漏れないように、励磁コイル6を覆わせている。磁性体コア7aは、励磁コイル6より発生した交流磁束を、効率よく定着ベルト1に導く役割をする。磁性体コア7aは、交流磁束の磁気回路の効率を上げるためと、周囲へ磁束を漏らして周辺部材を誘導加熱することを回避する磁束遮蔽のために用いている。磁性体コア7aの材質として、フェライト等の高透磁率かつ残留磁束密度の低いものを用いると良い。
【0039】
モールド部材7cは、励磁コイル6と磁性体コア7aとを電気絶縁性の樹脂によって支持する。定着ベルト1と励磁コイル6は、0.5mmのモールドにより電気絶縁の状態を保つ。定着ベルト1と励磁コイル6の間隔は1.5mm(モールド表面と定着ベルト表面の距離は1.0mm)で一定である。
【0040】
中央サーミスタTH1は、温度センサ(温度検出素子)であり、定着ベルト1の回転軸線方向中央部の位置に当接させて配設してある。中央サーミスタTH1は、圧力付与部材3に対して弾性支持部材を介して取り付けられているので、定着ベルト1の当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても、これに追従して良好な接触状態が維持される。中央サーミスタTH1は、記録材の搬送紙域のほぼ中央で、定着ベルト1の内側面の温度を検知し、その検知温度情報が制御部102にフィードバックされる。
【0041】
出力制御部の一例である電源装置101は、定着ベルト1の通紙部温度を所定温度に保つように励磁コイル6に対する投入電力を制御する。制御部102は、中央サーミスタTH1から入力する検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように、電源装置101から励磁コイル6に入力する電力を制御している。制御部102は、定着ベルト1の検出温度が所定温度に昇温した場合、励磁コイル6への通電を遮断する。
【0042】
制御部102は、定着ベルト1の検出温度が、定着ベルト1の目標温度である180℃で一定になるように、中央サーミスタTH1の検出値に基づいて、高周波電流の周波数を変化させることにより、励磁コイル6に入力する電力を制御して温度調節を行っている。電源装置101に接続された誘導加熱装置70の励磁コイル6は、制御部102で制御され、定着ベルト1は、所定の定着温度に加熱される。制御部102は、定着ベルト1の目標温度である180℃で一定になるように、中央サーミスタTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて、励磁コイル6に入力する電力を制御する。
【0043】
励磁コイル6を含む誘導加熱装置70が、高温になる定着ベルト1の内部ではなく外部に配置されているので、励磁コイル6の温度が高温になりにくい。また、電気抵抗も上昇せず高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減することが可能となる。また、励磁コイル6を外部に配置したことで、定着ベルト1の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、しいては省エネルギー性にも優れていると言える。
【0044】
定着装置Aのウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成であるため、例えば励磁コイル6に1200W入力すると、約15秒で目標温度である165℃に到達できる。スタンバイ中の加熱動作が不要であるため、電力消費量を非常に低く抑えることが可能である。
【0045】
ところで、定着装置の起動時の高速昇温を可能にするため、従来から、定着ローラを薄肉小径化したもの、定着ベルトの内側からヒーター加熱するもの、薄肉金属の定着ベルトを誘導加熱するもの等が提案されている。材料コストやエネルギー効率の点からも、薄肉の像加熱部材を採用して熱容量を小さくし、加熱効率の良い誘導加熱装置で加熱することは望ましい傾向である。
【0046】
しかし、薄肉の像加熱部材を使用する場合、回転軸線方向に垂直な断面の断面積がきわめて小さくなるために、回転軸線方向の熱移動が良好でない。この傾向は像加熱部材が薄肉なほど顕著であり、熱伝導率の低い樹脂材料ではさらに低くなる。これは、熱伝導率をλ、2点間の温度差をθ1−θ2、長さをLとしたとき、単位時間に伝わる熱量Qは、次式で表されるというフーリエの法則からも明らかである。
Q=λ・f(θ1−θ2)/L
【0047】
このことは、像加熱部材の回転軸線方向の長さ一杯の記録材、すなわち最大通紙幅の記録材を連続通紙して定着させる場合には、問題とならない。しかし、回転軸線方向の長さが小さい小形サイズの記録材を連続通紙する場合には、像加熱部材の回転軸線方向の両端部に温度ムラが生じるいわゆる非通紙部昇温が発生する。像加熱部材の回転軸線方向の熱移動が良好でない状態で、小さいサイズの記録材を連続で通紙させると、像加熱部材の非通紙部の温度が通紙部よりも上昇して、像加熱部材の非通紙部の温度が温調温度よりも上昇して非通紙部昇温が発生する。
【0048】
非通紙部昇温を放置すると、通紙部と非通紙部の温度差が大きくなって、小形サイズの記録材を連続で通紙させた直後に、大形サイズの記録材を通紙したときに、加熱ニップNの部分的な温度ムラによる紙シワが発生する可能性がある。記録材の加熱ムラによる定着ムラが発生する可能性がある。非通紙部の周囲の樹脂材料からなる部材の耐久寿命が低下する可能性がある。
【0049】
通紙部と非通紙部の温度差は、搬送される記録材の熱容量が大きく、スループット(単位時間あたりの画像形成枚数)を高くするほど拡大する。このため、薄肉で低熱容量の定着ベルトを採用した定着装置は、スループットの高い複写機へ搭載することが困難であった。生産性の高い複写機では、多くの場合、ハロゲンランプヒータや抵抗発熱体を分割して記録材サイズに応じた領域を加熱することで、非通紙部昇温を回避していた。
【0050】
誘導コイルを加熱源とした定着装置においても、同様に加熱源を分割して選択的に通電することが可能である。しかし、薄肉で低熱容量の定着ベルトを採用した定着装置は、誘導加熱装置を分割して複数設けた場合、制御回路も複雑でコストが高くなる。薄肉で低熱容量の定着ベルトの場合、分割された加熱領域の境目付近で温度分布が不連続になって、定着ベルトが必要な温度均一性を満たせなくなる。
【0051】
そこで、定着装置Aでは、定着ベルト1と励磁コイル6との間に、励磁コイル6から定着ベルト1へ導く磁束を10mmごとの領域で可変に設定できる磁性体コア7aを配置している。記録材の各種サイズに対応するため、磁性体コア7aが定着ベルト1の回転軸線方向で複数に分割されている。
【0052】
図3に示すように、磁性体コア7aは、定着ベルト1の長手方向に分割され、1個の長手方向の幅は10mm、それぞれ1.0mmの間隔を開けて配置されている。そして、磁性体コア7aを記録材の搬送幅方向サイズに応じた個数だけ下方へ移動させることで、加熱の必要な領域以外は誘導加熱装置70から届く磁束が少なくなって、定着ベルト1の発熱自体が抑えられる。これにより、加熱領域の制御が行われ、昇温される定着ベルト1の温度分布を精密にコントロールすることが可能となっている。非通紙部領域における定着ベルトの回転軸線方向の中心から近い位置でも、磁性体コア7aと励磁コイル6の距離を十分に確保して、非通紙部昇温を回避できる。
【0053】
<磁性体コアの移動機構>
図5は磁性体コアの移動の説明図である。図6は磁性体コアの移動機構の説明図である。図7は定着装置の斜視図である。図8は磁性体コアの配置の説明図である。
【0054】
図5の(a)に示すように、通紙部においては、励磁コイル6と磁性体コア7aの隙間を狭くすることで、定着ベルト1を通過する磁束密度を高めて、定着ベルト1の発熱量を高くする。通紙部においては、励磁コイル6と磁性体コア7aの間隔は0.5mmである。
【0055】
図5の(b)に示すように、非通紙部においては、励磁コイル6と磁性体コア7aの隙間を広げることで、定着ベルト1を通過する磁束密度を低下させて定着ベルト1の発熱量を低くする。非通紙部においては、励磁コイル6と磁性体コア7aの間隔は10mmまで離間する。
【0056】
図6に示すように、コア移動機構71は、磁性体コア7aの上下方向の移動距離を記録材のサイズによって異ならせる。移動手段の一例であるコア移動機構71は、定着ベルト1に対向して配置された複数の磁性体コア7aを移動させて、定着ベルト1に近接した第一位置と定着ベルト1から離れた第二位置とに配置可能である。
【0057】
磁性体コア7aは、磁性体コアホルダ77に保持されてハウジング76内に収まっている。磁性体コアホルダ77は、磁性体コア7aと励磁コイル6との間隙を変化させる方向に移動可能になっている。リンク部材75は、回転軸78周りに回転可動に組み立てられ、端部の長穴部が磁性体コアホルダ77と連結されている。リンク部材75が回転軸78周りにQ1方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア7aがP1方向へ移動する。リンク部材75がQ2方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア7aがP2方向へ移動する。リンク部材75は、励磁コイルばね74によってQ1方向へ回転する方向へ付勢されているが、規制部材73によって、リンク部材75のQ1方向への回転が規制されている。
【0058】
規制部材73によってリンク部材75が押し込まれている状態では、リンク部材75は、励磁コイルばね74に逆らってQ2方向へ回動している。このとき、磁性体コアホルダ77が矢印P2方向へ移動して磁性体コア7aが励磁コイル6に近付いている。
【0059】
規制部材73による押し込みが解除されると、リンク部材75は、励磁コイルばね74に付勢されてQ1方向へ回動してフレーム79に突き当たって停止する。これにより、磁性体コアホルダ77が矢印P1方向へ移動して磁性体コア7aが励磁コイル6から遠ざかる。
【0060】
図7に示すように、規制部材73は、中央のピニオンギア80と連結され、ピニオンギア80の回転運動により、記録材の搬送方向に直角な幅方向(Y1、Y2方向)へ移動可能となっている。規制部材73がY1方向へ移動すると、端部側のリンク部材75から順番に規制部材73による押し込みが解除され、端部側から中央側へ向かって順番に磁性体コア7aが励磁コイル6から遠ざかる。図7では、端部側から4個の磁性体コアホルダ77について規制部材73による押し込みが解除されて、磁性体コア7aと励磁コイル6との間隙が広がっている。
【0061】
図6に示すように、制御部102は、コア移動機構71を制御して、磁性体コアホルダ77のうちで記録材の搬送幅方向に応じて定めた個数のものについて規制部材73による押し込みを解除する。これにより、記録材の外側に位置する磁性体コア7aと励磁コイル6との間隙を拡大させて、非通紙部昇温を防止している。ハガキサイズ、A5、B4、A3、A3ノビサイズ等、各種の記録材サイズに対応するため、規制部材73の位置を記録材のサイズによって異ならせて、各記録材のサイズに応じた加熱領域を設定して非通紙部昇温を抑制している。
【0062】
近年、記録材のサイズの種類が増大し、各々のサイズに対してもスループットダウンすることなく、すなわち非通紙部昇温を回避することが求められるようになった。しかし、図8に示すように、多数の磁性体コア7aを用いる場合でも、記録材のサイズによっては記録材の縁に光沢ムラが発生することがある。以下の実施例では、熱容量の低い定着ベルトを用いた定着装置で、記録材のサイズが多種類であっても、非通紙部昇温を充分に回避しつつ、記録材の縁まで定着品質を確保できるようにしている。
【0063】
<実施例1>
図9は非通紙部の磁性体コアの位置決めの説明図である。図10はプリント開始時の定着ベルトの温度分布の説明図である。図11は実施例1の非通紙部加熱制御のフローチャートである。図12はプリント開始後の非通紙部昇温の説明図である。
【0064】
図2に示すように、実施例1では、スリープ状態や温度低下した待機状態でプリントジョブを受信した際に、前回転時の定着ベルト1の発熱制御を実行して定着装置を起動する。磁性体コア7aを用いた発熱幅の設定を行って前回転を開始させる。決定手段の一例である制御部102は、記録材のサイズを検知する検知手段の一例である操作部103を通じた設定内容に基づいて定着ベルト1の回転軸線方向における通紙部領域の端部位置を得る。制御部102は、通紙部領域の端部位置から外側に向かって予め設定した間隔よりも内側にある非通紙部領域の磁性体コア7aを第一位置に配置することを決定する。制御部102は、第一位置に配置することを決定した磁性体コア7aよりも回転軸線方向の外側にある磁性体コア7aを第二位置に配置することを決定する。
【0065】
図9に示すように、定着ベルト1の回転軸線方向における通紙部の中央位置を原点として、以下のように定義する。
n :各々の磁性体コア7aを識別するための番号である。原点を挟んで磁性体コア7aが配置されている場合、外側に向って1、2、3・・・と付していく。原点に磁性体コア7aが配置されていれば、0を付し、そこから外側へ向かって1、2、3・・・と付していく。
Dn:原点からn個目のコアまでの距離である。回転軸線方向における通紙部領域の中央に位置する磁性体コア7aから数えてn番目の磁性体コアの外縁までの距離をDnとしている。
X :定着ベルト1の回転軸線方向における記録材長さである。回転軸線方向における記録材の長さをXとする。原点から縁までの距離はX/2である。
Y :定着可能な温度幅を保証するために、定着ベルト1の回転軸線方向の記録材長さよりも外側に磁性体コア7aを必要とする距離である。通紙部領域に少なくとも一部が重なる磁性体コア7aのみを第一位置に配置して定着ベルト1を励磁コイル6により加熱した際に通紙可能温度の下限値となる位置から記録材の縁までの距離をYとする。
【0066】
図10に示すように、磁性体コア7aによって、定着ベルト1に磁束が多く入射する発熱範囲を制限しても、定着ベルト1が温調目標温度付近まで昇温する範囲は、磁性体コア7aの幅よりも狭くなってしまう。これは、主に、定着ベルト1の磁束が多く入射する領域とあまり入射しない領域とに発生した温度差によって(1)式のフーリエの法則に従った熱伝導が定着ベルト1の回転軸線方向に発生するためである。
Q=λ・f(θ1−θ2)/L ・・・(1)
【0067】
ゆえに、記録材上のトナーを不具合無く定着すべく、定着下限温度以上を保つためには、磁性体コア7aを励磁コイル6に近付ける範囲を、定着ベルト1の回転軸線方向における記録材長さ記録材の長さXよりも広くしなければならない。このようにして外側に広げる距離をYと定義している。Yの値については、定着ベルト1の熱伝導度λだけでなく、定着ベルト1に当接する部材のλや、発熱範囲と非発熱範囲の温度差等、複数の条件から決まるので、理論的に求めるのは難しい。しかし、励磁コイル6に近接する磁性体コア7aの幅と定着ベルト1の発熱分布を測定すればYの値を実験的に求めることは比較的容易である。
【0068】
制御部102は、次式の関係を満たす磁性体コア7aを第一位置に配置することを決定する。
Dn − X/2 < Y ・・・(2)
【0069】
定着装置Aの例をあげると、前回転時に、定着ベルト1がほぼ室温の状態から、励磁コイル6に1200Wを印加して温調温度である165℃まで加熱されている。このとき、定着下限温度を160℃と決めると、定着ベルト1が160℃以上に発熱する回転軸線方向の長さ範囲を300mmにするためには、磁性体コア7aを励磁コイル6に近接させる範囲の長さ316mmであった。ゆえに、実施例1では、Yを8mmと定めた。
Y=(316mm−300mm)/2
【0070】
同様の実験を繰り返して、各種サイズの記録材について、磁性体コア7aを励磁コイル6に近接させる範囲の長さを求めた。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示すように、A4サイズの297mmの範囲を加熱したい場合は、中央から16個の(両方向を合わせた計32個の幅は約320mm)磁性体コア7aが励磁コイル6に近接し、それ以外の磁性体コア7aは、励磁コイル6から離間させる。
【0073】
表1に示すように、A3サイズの297mmに最適化した磁性体コア7aの紙端部からのはみ出し量は11.5mmだが、A5やA4Rサイズ紙の210mmでは、15.0mmまではみ出し量が増えてしまう。はみ出し量が増えると、非通紙部昇温に対しては厳しくなるが、逆に前回転終了時点での通紙部の両端部の温度低下(図10)は少なくなるので、縁なしプリントでの端部の光沢ムラに関しては都合が良い。
【0074】
表1に例示した以外の任意の紙幅に対しても(2)式の関係によって磁性体コア7aの位置決めが可能である。
Dn − X/2 < Y ・・・(2)
【0075】
なお、磁性体コア7aの幅は、10mmでなくてもよい。また、それぞれの磁性体コア7aが定着ベルト1の回転軸線方向において均一な長さでなくとも、(2)式の関係によって励磁コイル6に近接するか否かを判定することが可能である。
【0076】
図2を参照して図11に示すように、制御部102がプリント開始命令を受けると(S11)、操作部103から記録材の幅情報を取得する(S12)。制御部102は、取得したXと予めテーブル化されたY(表1)とに基づいて、Dn番の磁性体コア7aの位置を計算する(S13)。制御部102は、(2)式に基づいて、Dn番の磁性体コア7aを現在の位置から移動するか否かを判断する(S14)。
Dn − X/2 < Y ・・・(2)
【0077】
移動する場合(S14のYes)、制御部102は、上式の関係を満たす磁性体コア7aは、励磁コイル6にから0.5mmの近接する位置に移動し、それ以外の磁性体コア7aを、励磁コイル6から10mmの離間する位置に移動する(S15)。記録材サイズに適した加熱領域を得るために、非通紙部においては励磁コイル6と磁性体コア7aの間隔を広げ、発熱効率が低下するように磁性体コア7aを移動している。実施例1において、移動量は10mmとしている。
【0078】
磁性体コア7aの位置決めの終了後、励磁コイル6への電力供給が開始される(S16)。定着ベルト1が温調温度より低い間(S16のNo)、加圧ローラ2が回転駆動されて(S17)、励磁コイル6への電力供給が継続されて定着ベルト1が温度上昇する(S18)。その後、検出温度TH1が温調温度に達すると(S16のYes)、プリント動作を開始する(S19)。
【0079】
図12に示すように、実施例1による磁性体コア7aの配値の場合と、比較例として、全ての磁性体コア7aを励磁コイル6に近接させて定着ベルト1の発熱幅を最大にした場合とで、非通紙部昇温の発生状態を比較した。条件は、気温15℃、湿度15%の環境において坪量105g/mのA3サイズの普通紙を1ジョブで500枚連続通紙した直後である。
【0080】
実施例1の非通紙部加熱制御によれば、磁性体コア7aの配置を最適化して、発熱幅を通紙幅より磁性体コア7aの1個分ずつ大きくすることで、非通紙部昇温する範囲を最小限に止めて、比較例に比べて最高温度が20℃程度抑える効果を確認した。
【0081】
実施例1の非通紙部加熱制御によれば、磁性体コア7aを定着ベルト1の回転軸線方向で複数に分割し、各々の磁性体コア7aが励磁コイル6との間隙を変化させる方向に単独で移動可能としている。そして、定着ベルト1の回転軸線方向における記録材の長さよりも磁性体コア7aの1個分ずつ拡大した範囲を加熱するので、非通紙部昇温が発生しなくても、記録材の全域でフラットな温度条件の定着が可能である。これにより、プリント開始時から数枚のプリントにおいても縁なしプリントの縁部分の定着性を確保できる。記録材の端部に光沢ムラや定着不良を発生しないで済む。記録材のサイズに応じて移動させる磁性体コアの個数を制御することで、記録材のサイズが多種類であっても、記録材サイズと同等範囲のみを加熱することができる。通紙域の温度を定着可能な温度に保ちながらも非通紙部昇温を緩和することができる。
【0082】
実施例1の非通紙部加熱制御によれば、連続通紙の開始後の非通紙部昇温に頼ることなく、連続通紙の最初から、記録材の縁領域にも画像の加熱処理に必要な温度を確保している。したがって、定着ベルトの非通紙部昇温を抑制しつつ、縁なし印刷において出力画像の縁領域の光沢度の低下を1枚も発生しないで済む。
【0083】
<実施例2>
図7を参照して図8に示すように、実施例2では、記録材の内側に画像形成範囲が設定される。これに対応して、コア移動機構71は、定着ベルト1の回転軸線方向における画像形成範囲に位置する磁性体コア7aに加えて、画像形成範囲の両外側に位置する少なくとも1個ずつの磁性体コア7aを定着ベルト1へ近付けて位置決める。
【0084】
図2に示すように、算出手段の一例である制御部102は、記録材に形成可能な画像領域の端部位置を算出する。制御部102は、算出した画像領域の端部位置から外側に向かって予め設定した間隔よりも内側にある非通紙部領域の磁性体コア7aを第一位置に配置することを決定する。制御部102は、第一位置に配置することを決定した磁性体コア7aよりも回転軸線方向の外側にある磁性体コア7aを第二位置に配置することを決定する。
【0085】
制御部102は、操作部103を通じて記録材に余白設定がされると、余白の内側を画像形成範囲とする。画像形成範囲が設定された記録材に対して、発熱幅制御を更に高精度で行うために、制御部102は、磁性体コア7aの判定を(3)式の関係によって実行する。
Dn − X/2 < Y + α ・・・(3)
【0086】
ここで、αは、定着ベルト1の回転軸線方向における記録材の位置のバラツキや、記録材の周りの余白設定によって設定される数値である。画像形成装置Aを例にあげると、定着ベルト1の回転軸線方向における記録材の位置のバラツキが+3mmである。したがって、定着ベルト1の回転軸線方向における記録材の余白を3mmに設定するとαは両者を差し引いて次式のように計算される。
α=+3−3=0
Dn − X/2 < Y + 0
【0087】
定着ベルト1の回転軸線方向における記録材の余白を10mmに設定すると、αは次式のように計算される。
α=+3−10=−7
Dn − X/2 < Y − 7
【0088】
すなわち、余白が大きい場合には、磁性体コア7aが励磁コイル6に近接する範囲を狭くして、非通紙部昇温をさらに抑制することができる。
【0089】
なお、記録材端部の画像不良判断を中央より若干甘くするなど、画像形成装置による仕様の違い等を考慮してαを設定してもよい。
【0090】
<実施例3>
図7を参照して図8に示すように、実施例3では、コア移動機構71は、連続通紙が開始された後に、定着ベルト1へ近付けて位置決められた磁性体コア7aのうち、定着ベルト1の回転軸線方向の両外側に位置する少なくとも1個ずつを定着ベルト1から遠ざける。
【0091】
制御部102は、複数の磁性体コア7aを第一位置と第二位置とに位置させて励磁コイル6により定着ベルト1を昇温させて連続通紙を開始する。制御部102は、連続通紙を開始後、非通紙部昇温に伴って、第一位置に配置されていた磁性体コア7aのうち、回転軸線方向の両端に位置する1個ずつを第二位置へ配置することを決定する。
【0092】
図2に示すように、制御部102は、前回転が終了して連続通紙が開始されると、その連続通紙の途中(20枚目の通紙が終了した時点)で、励磁コイル6に近接している磁性体コア7aの中で一番外側のコアを離間させる。これにより、進行する非通紙部昇温を利用して記録材の両方の縁部分の定着性を確保しつつ、磁性体コア7aによる加熱範囲の記録材の外側へのはみ出し量が増えることによる非通紙部昇温を抑える調整が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 定着ベルト、2 加圧ローラ、3 圧力付与部材、4 ステー
5 磁気遮蔽コア、6 励磁コイル、7a 磁性体コア
8 モールド部材、9a バネ受け部材、9b ステー加圧バネ
10 定着フランジ、11 磁性体コア、12 支持側板
21 感光ドラム、23 現像装置、26 中間転写ベルト
31 記録材カセット、33 レジストローラ
70 誘導加熱装置、71 コア移動機構、101 電源装置
102 制御部、103 操作部、105 光学式センサ
PY、PM、PC、PK 画像形成部、TH1 中央サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を生ずるコイルと、
前記コイルから生じた磁束により発熱し、記録材の画像を加熱する回転可能な像加熱部材と、
前記像加熱部材に対向して配置された複数の磁性体コアと、
前記複数の磁性体コアを移動させて、第一位置と前記第一位置よりも前記像加熱部材から離れた第二位置とに配置可能な移動手段と、を有する像加熱装置において、
記録材のサイズを検知する検知手段と、
前記検知手段に基づいて得られる前記像加熱部材の回転軸線方向における通紙部領域の端部位置から前記回転軸線方向の外側に向かって予め設定した間隔よりも内側にある非通紙部領域の磁性体コアを前記第一位置に配置することを決定する決定手段と、を有することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
磁束を生ずるコイルと、
前記コイルから生じた磁束により発熱し、記録材の画像を加熱する回転可能な像加熱部材と、
前記像加熱部材に対向して配置された複数の磁性体コアと、
前記複数の磁性体コアを移動させて、第一位置と前記第一位置よりも前記像加熱部材から離れた第二位置とに配置可能な移動手段と、を有する像加熱装置において、
記録材に形成可能な画像領域の端部位置を算出する算出手段と、
前記算出手段に基づいて得られる前記像加熱部材の回転軸線方向における前記画像領域の端部位置から前記回転軸線方向の外側に向かって予め設定した間隔よりも内側にある非通紙部領域の磁性体コアを前記第一位置に配置することを決定する決定手段と、を有することを特徴とする像加熱装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記第一位置に配置することを決定した磁性体コアよりも前記回転軸線方向の外側にある磁性体コアを前記第二位置に配置することを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記回転軸線方向における通紙部領域の中央に位置する磁性体コアから数えてn番目の磁性体コアの外縁までの距離をDnとし、前記回転軸線方向における記録材の長さをXとし、前記通紙部領域に少なくとも一部が重なる磁性体コアのみを前記第一位置に配置して前記像加熱部材を前記コイルにより加熱した際に通紙可能温度の下限値となる位置から記録材の縁までの距離をYとするとき、前記決定手段は、
Dn − X/2 < Y
の関係を満たす磁性体コアを前記第一位置に配置することを決定することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記複数の磁性体コアを前記第一位置と前記第二位置とに位置させて前記コイルにより前記加熱部材を昇温させて連続通紙を開始した後に、前記第一位置に配置されていた磁性体コアのうち、前記回転軸線方向の両端に位置する1個ずつを前記第二位置へ配置することを決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記像加熱部材は、金属層と樹脂層とを有する無端ベルトであって、
前記無端ベルトの内周面を支持する外周部と前記無端ベルトの端部に突き当たるフランジ部とを有して前記無端ベルトの両端部に非回転に配置された一対のガイド部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の像加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−37052(P2013−37052A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170799(P2011−170799)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】