説明

充填材及びそれを用いた基板

【課題】充填材と基板との間での密着不良およびクラックが発生せず、且つドリル加工しやすい充填材を提供すること。
【解決手段】基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填する充填材であって、少なくとも硬化剤と無機フィラーと有機フィラーと液状の樹脂を含有し、かつ前記充填材が液状であることを特徴とする充填材を調整する。この充填材によると、基板と硬化した充填材との線熱膨張係数差が低く、且つ、ドリル加工性の良好な弾性率とすることができる。そのため、線熱膨張係数差により生じる基板と充填材の間での密着不良および弾性率によるクラックの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填される充填材及び充填材を充填、硬化し、その硬化された充填材の充填部に加工孔を設けた基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットに代表される情報通信技術の発達や、情報処理装置の処理速度の飛躍的向上などに伴って、画像等の大容量データを送受信するニーズが高まりつつある。かかる大容量データを情報通信設備を通じて自由にやり取りするためには10Gbps以上の情報伝達速度が望ましく、そのような高速通信環境を実現しうる技術として光通信技術に大きな期待が寄せられている。一方、機器内の配線基板間での接続、配線基板内の半導体チップ間での接続、半導体チップ内での接続など、比較的短い距離における信号伝達経路に関しても、高速で信号を伝送することが近年望まれている。このため、従来一般的であった金属ケーブルや金属配線から、光ファイバや光導波路を用いた光伝送へと移行すること
が理想的であると考えられている。
【0003】
光学素子が搭載されるとともに、その光学素子と光ファイバや光導波路との間で光通信を行う配線基板が従来提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−236228号公報
【0005】
【特許文献2】特開2003−107283号公報
【0006】
特許文献1には、光学素子を実装した外部基板を配線基板上にはんだバンプにて接続してリフローする際のセルフアライメント作用により、外部基板と配線基板とを所定の位置に配置できる、という技術が開示されている。ところが、上記特許文献1の技術では、光学素子を実装した外部基板と配線基板との位置合わせ(光軸合わせ)をはんだリフローにより行なっているにすぎない。そのため、位置合わせ精度が十分ではなく、光学素子と光導波路との間で光軸ズレが生じやすく、ひいては光の伝送ロスが生じやすい。従って、この手法では今後予想される高速度化・高密度化等に十分に対応できないものと考えられる。
【0007】
また、光学素子搭載基板の構造において、光コネクタのように精密穴を基準にガイドピンによるアライメント方式により、光学素子、ファイバ、導波路などの光軸合わせを行なう技術が提案されている。ところが、上記技術において、セラミック基板といった無機材料基板では、精密穴加工が技術的、コスト的に困難である。また、樹脂基板を用いた場合では、発光素子および動作回路の放熱性が悪くなる結果、発光波長にズレが発生するおそれがある。そこで、特許文献2のように、複数の筒状部を有するセラミックなどから形成された基板で、筒状部が樹脂から形成された構造が提案されている。
【0008】
上記特許文献2では、無機材料基板と筒状部に充填された充填材の線熱膨張係数差および充填材の硬化時の収縮により生じる充填材と無機材料基板間での密着不良および、充填材や無機材料基板にクラックが発生しないために、充填材に無機フィラーを含有させ、線熱膨張係数差の低下を行なっている。ところが、無機フィラーのみによる線熱膨張係数差の低下は、無機フィラーによって、ドリル加工の際に磨耗を早めるという問題、硬化した充填材の弾性率の上昇によって、クラックが発生する問題、さらに硬化する前の充填材の粘度も高くなるため、充填作業性が悪化するという問題が発生する。また、固体である封止剤のような高温で金型に充填するものは、金型や装置コストがかかるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光軸ズレがなく確実な位置合わせをするための光学素子搭載基板といった位置決めを必要とする基板に形成された、貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填される充填材において、充填材と基板との間での密着不良およびクラックが発生せず、且つドリル加工しやすい充填材を提供することを目的としている。また、上記の充填材が上記の基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填、硬化されており、充填材には、孔が設けられている基板を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段としては、基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填する充填材であって、少なくとも硬化剤と無機フィラーと有機フィラーと液状の樹脂を含有し、かつ前記充填材が液状であることを特徴とする充填材がある。
【0011】
従って、この手段によると、充填材に無機フィラーだけでなく、応力を緩和する有機フィラーを含有させることで、基板と硬化した充填材との線熱膨張係数差が低く、且つ、良好な弾性率とすることができる。そのため、線熱膨張係数差により生じる基板と充填材の間での密着不良および弾性率の上昇によるクラックの発生を抑制することができる。また、有機フィラーの添加により、できるだけ少ない無機フィラーの添加量で、樹脂の硬化収縮を抑制可能となる。そのため、充填材の粘度をあげることなく良好な作業性が得られる。さらに、固体の充填材を使用する封止剤では、高温で金型に充填するため、金型や装置コストがかかるが、本発明の液状の充填材では、金型も必要がなく装置コストもかからない。また、液状の充填材であるため、さらに良好な作業性が得られる。
【0012】
本発明の充填材は、無機フィラーとして、セラミックフィラー、金属フィラーを用いると好ましい。セラミックフィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。金属フィラーとしては、銅、銀、銅と銀の合金等が挙げられる。これらの中でも、特にセラミックフィラーを用いるのが好ましい。金属フィラーよりセラミックフィラーのほうが低熱膨張化に対応でき、その制御もし易い。また金属フィラーに比べて安定した形状のフィラーを得易いからである。
【0013】
さらには、セラミックフィラーの中でも、シリカフィラーが好ましい。その理由は、シリカフィラーを用いると、硬化した充填材の線熱膨張係数と基板の線熱膨張係数の差が特に低いため、線熱膨張係数差により生じる密着不良が、抑制されるためである。なお、充填材に有機フィラーを用いずに、無機フィラーのみを用いた時の基板と硬化した充填材との密着が良好となる充填材の弾性率は8.1GPaである。
【0014】
充填材の上記無機フィラーはシリカフィラー単独で用いてもよく、他の無機フィラーを併用して用いてもよい。
【0015】
本発明の充填材は有機フィラーとして、シリコーンを用いると好ましい。シリコーンにはゴムとレジンがあるが、特にゴムのシリコーンを含んでいることがより好ましい。ゴムのシリコーンを用いることで、充填材の弾性率が低下し、充填材の硬化時の収縮を緩和するため、基板と充填材の間でのクラック発生を抑制できる。また、基板の貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填材を充填し、充填材を硬化し、その充填材の充填部にドリル等により加工孔を設ける時に、精密な加工が行いやすい。
【0016】
さらには、レジンのシリコーンでゴムのシリコーンの表面を被覆した有機フィラーを用いるとより好ましい。ゴムのシリコーンの表面をレジンのシリコーンで被覆することで、ゴムのシリコーンの上記の効果に加え、レジンの耐熱性の効果が加わる。
【0017】
有機フィラーは弾性率を低下させる効果を有するが、通常、添加により線熱膨張係数が大きくなる。しかし、シリカフィラーと有機フィラーを併用して用いると、有機フィラーの添加による線熱膨張係数の増加が抑制されたり、逆に線熱膨張係数が低下したりする。この傾向は有機フィラーの種類により異なる。有機フィラーにシリコーンを用いた場合、シリカフィラーの割合が、充填材の全体積100vol%に対して、30〜70vol%(特に40〜60vol%)の場合、シリカフィラー一定量でシリコーンを添加していくと、充填材の線熱膨張係数が、減少していく。
【0018】
従って、上記の範囲のシリカフィラー量で、シリコーンを用いることで、基板と充填材との線熱膨張係数差は低く、かつ弾性率も低くすることができる。そのため、線熱膨張係数差により生じる密着不良、また高い弾性率によるクラックの発生の抑制及び、無機フィラーによるドリル加工の際の磨耗を早める問題を解消できる。
【0019】
また、充填材の全体積100vol%に対して、シリカフィラーを30〜70vol%(特に40〜60vol%)、シリコーン樹脂を3〜15vol%(特に5〜10vol%)で用いた場合、基板と充填材との線熱膨張係数の差が30ppm/K以下、硬化した充填材の弾性率が1GPa以上8GPa以下となり、特に、基板と充填材の密着性が良好で、クラックが発生せず、さらにドリル加工性も良好となる。また、シリカフィラー及びシリコーン樹脂の体積割合を変え、線熱膨張係数を上記範囲より大きくすると、密着不良が生じてしまう。さらに、シリカフィラー及びシリコーン樹脂の体積割合を変え、弾性率を上記範囲より小さくすると、充填材に設ける精度の良い孔の形成が難しくなり、弾性率を上記範囲より大きくすると、クラックが発生してしまう。
【0020】
本発明の充填材の樹脂成分は、液状の樹脂を用いると好ましい。特に、少なくとも温度20〜30℃における状態で液状である、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及びグリシジルエステル型エポキシ樹脂等を用いると好ましい。これらの中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0021】
上記充填材の樹脂成分は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を単独で用いてもよく、上記記載のエポキシ樹脂などを併用して用いてもよい。
【0022】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性、流動性などを考慮すると最も好ましく、さらには、粘性が低いため、充填材として用いた場合、充填性が優れているからである。
【0023】
本発明の充填材は硬化剤も含んでいる。硬化剤としては、ジシアンジアミド系を用いると好ましい。硬化剤としてジシアンジアミドを用いた充填材が硬化すると、耐熱性、耐薬品性及び酸化剤や塩基などに対する耐食性が優れたものとなり、更には安定して使用できる寿命が長くなる。
【0024】
一般に樹脂に硬化剤を混合すると保存期間中にも硬化が進むので、安定して使用できる寿命が短期間となる。しかし、本発明のジシアンジアミドを含有した硬化剤によれば、エポキシ樹脂と硬化剤を混合した後の経時変化が少なく、寿命が長くなる。さらには、エポキシ樹脂の硬化収縮を抑制するため、無機及び有機フィラーの添加量を減少でき、充填材の粘度が高くならない。よって、本発明において、ジシアンジアミドを含有した硬化剤を使用することで、作業性が良好となる。
【0025】
また、本発明の充填材は、硬化触媒、消泡剤などを添加してもよい。
【0026】
また、本発明の一つに、基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に、本発明の充填材が充填、硬化され、その後充填材に孔が設けられている基板がある。
【0027】
上記の基板によれば、液状で粘性の低い充填材を貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填しているので、基板の貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に空気が混入することなく充填材を充填できる。また、弾性率が1GPa以上8GPa以下の充填材を充填して硬化させ、ドリル加工やパンチ加工またはレーザー加工で加工孔を設けているため、精度の良い孔を形成することができる。充填材に設けた孔は貫通孔でもよく、めくら孔(凹部)でもどちらでもよい。
【0028】
基板としては、例えば、樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板または金属基板等が使用可能であるが、特にセラミック基板が好ましい。樹脂基板と比較して熱伝導性の高いセラミック基板を用いた場合には、光学素子及びその動作回路より発生した熱が効率よく放散される。そのため、放熱性の悪化に起因する発光波長のズレが回避され、動作安定性・信頼性に優れた光学素子搭載基板を実現することができる。
【0029】
かかるセラミック基板の好適例を挙げると、アルミナ、窒化アルミナ、窒化珪素、窒化ほう素、ベリリア、ムライト、低温焼成ガラスセラミック、ガラスセラミック等からなる基板がある。これらの中でも、とくにアルミナや窒化アルミナを用いた基板が好ましい。
【0030】
また、樹脂基板の好適例としては、例えば、EP樹脂(エポキシ樹脂)、PI樹脂(ポリイミド樹脂)、BT樹脂(ビスマレイド―トリジアン樹脂)、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)等からなる基板を挙げることができる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリイミド繊維等の有機繊維との複合材料からなる基板を使用してもよい。
【0031】
金属基板の好適例としては、例えば、銅基板、銅合金からなる基板、銅以外の金属単体からなる基板、銅以外の合金からなる基板を挙げることができる。
【0032】
また、本発明の別態様の基板には、充填材に設けられ孔に外部端子が取り付けられた基板がある。
【0033】
上記の基板によれば、弾性率が1GPa以上8GPa以下の充填材を用いているので、たとえ、外部端子の径が充填材に形成された孔の径より大きい場合でも、取り付けが可能で、かつ充填材に形成された孔に強固に保持される。その結果、外部端子を精度良く取り付けることができるため、外部端子を基準にして光学素子を基板に搭載することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。実施例、比較例で使用した化合物は以下のとおりである。
【0035】
充填材の樹脂成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名;エピコート828)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名;エピコート807)、アミノフェノール(ジャパンエポキシレジン製、商品名;エピコート630)を用いた。
【0036】
硬化剤としては、ジシアンジアミド系硬化剤(ジャパンエポキシレジン製、商品名;DICY7)、イミダゾール系硬化剤(ジャパンエポキシレジン製、商品名;2P4MHZ)を用いた。
【0037】
無機フィラーとしては、シリカフィラーである平均粒径粒径5μm、最大粒径24μmの球状のSiO2粉末(龍森製)を用いた。
【0038】
有機フィラーとしては、シリコーン樹脂であるシリコーン複合パウダー(信越シリコーン製、商品名;KMP−600)を用いた。
【0039】
まず、表1に表した調合割合になるように各原料を秤量し、容器にいれて攪拌した後、3本ロールで混練後、真空脱泡をして充填材を調整した。本発明の実施例として、実施例1〜実施例4の調合組成を有する充填材を作成するとともに、本発明の実施例と比較するために比較例1〜5の調合組成を有する充填材を作成した。尚、表1において、各原料の添加量は、全体量を100とした重量部(以下、wt%)で示した。また、シリカフィラー量と、シリコーン複合パウダー量は別途、フィラー全体の体積を100とした体積率(以下、vol%)で示した。
【0040】
実施例1は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を21wt%、アミノフェノールを12wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを61wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを3wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は45vol%で、シリコーン複合パウダーの体積率は5vol%である。
【0041】
実施例2は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を20wt%、アミノフェノールを10wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを62wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを6wt%、硬化剤としてジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は45vol%、シリコーン複合パウダーの体積率は10vol%である。
【0042】
実施例3は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を16wt%、アミノフェノールを9wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを70wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを3wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は55vol%で、シリコーン複合パウダーの体積率は5vol%である。
【0043】
実施例4は、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を21wt%、アミノフェノールを12wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを61wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを3wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は45vol%で、シリコーン複合パウダーの体積率は5vol%である。
【0044】
比較例1は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を23wt%、アミノフェノールを13wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを61wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した有機フィラーを添加していない充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は45vol%である。
【0045】
比較例2は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を16wt%、アミノフェノールを10wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを70wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した有機フィラーを添加してない充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は55vol%である。
【0046】
比較例3は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を13wt%、アミノフェノールを7wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを78wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を1wt%、等を添加した有機フィラーを添加していない充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は65vol%である。
【0047】
実施例4は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を34wt%、アミノフェノールを19wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを42wt%、硬化剤として、ジシアンジアミド系硬化剤を2wt%、等を添加した無機フィラーを添加してない充填材剤である。また、シリコーン複合パウダーの体積率は45vol%である。
【0048】
実施例5は、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を17wt%、アミノフェノールを9wt%、無機フィラーとしてシリカフィラーを60wt%、有機フィラーとしてシリコーン複合パウダーを12wt%、硬化剤として、イミダゾール系硬化剤を1wt%、等を添加した充填材剤である。また、シリカフィラーの体積率は45vol%で、シリコーン複合パウダーの体積率は20vol%である。
【0049】
次いで、以下の手順で試験サンプルを作製した。内径1.2mmの透孔を有するセラミックグリーンシート5枚を透孔の位置を合わせて重ね合わせ、積層圧着工程を行ない、その後、焼成工程を行なった。その結果、内径1.0mmの充填用孔を有する厚さ1.2mmのアルミナ基板を得た。
【0050】
次いで、アルミナ基板に充填剤を充填して硬化した。その後、アルミナ基板の表面を研磨し、アルミナ基板表面を平坦にして、樹脂が充填された試験サンプルを得た。
【0051】
上記試験サンプルを用いて、基板と充填剤との密着性試験、充填剤を充填する際の作業性の試験、および信頼性試験を行なった。また、充填剤の物性であるガラス転移温度(Tg)、線熱膨張係数(CTE)、弾性率(E’)も測定した。
試験結果及び充填剤の物性の測定結果は表1、表2に表した。また、上記試験方法及び、充填剤の物性の測定方法は以下のとおりである。
【0052】
基板との密着性試験は、試験サンプルの片面に赤色溶液をつけ、反対側面から吸引し、その赤色溶液が反対側面に漏れ出すか否かを検査した。赤色溶液が漏れ出すものは充填剤とアルミナ基板間の密着不良と判断した。
【0053】
作業性の試験は、アルミナ基板に印刷による充填剤を充填した際、充填剤の充填具合を確認した。すなわち、充填材の粘度が高く、滑らかに伸びないものは×とした。
【0054】
信頼性試験は、試験サンプルをプレッシャークッカー試験装置に入れ、121℃、100%RHで168時間試験を行なった。高精度測定装置にて試験前後での2点間の孔ピッチを比較した。なお、試験後の孔ピッチを確認し(2孔ずつを1ペアとして全8ペア)±3μm以上のズレをカウントした。
【0055】
線熱膨張係数の測定は、試験サンプルをフィルム状にキャストし、150℃×5時間の条件下で熱硬化させ、厚さ100μmのフィルム状硬化体とする。これから、幅5mmの試験片を切り出し、これをTMA測定する。ここにいう「TMA」とは、熱機械的分析をいい、例えばJPCA−BU01に規定されるものをいう。測定条件はスパン15mmにて、試験片の長手方向に5g引張加重を加えた状態で−55℃まで冷却し、10℃/分の昇温速度で270℃まで加熱し、伸び率ε(以下の数式1を参照)を測定し、線熱膨張係数αを計算する(以下の数式2を参照)。また、アルミナ基板の線熱膨張係数を測定したところ、9(ppm/k)であった。
【0056】
【数1】

【0057】
【数2】

【0058】
弾性率の測定は、試験サンプルをフィルム状にキャストし熱硬化させ、厚さ100μmのフィルム状硬化体とする。これから幅4mmの試験片を切り出し、これをDMA測定する。ここにいう「DMA」とは、動的粘弾性分析をいい、例えばJIS
C 6481に規定されるものをいう。測定条件は、スパン40mmにて試験片の長手方向に10gの引張加重を加えた状態から,振幅16μm、周波数11Hzで長手方向に正弦波をかけ、25℃における貯蔵弾性率を求め、その値を弾性率とする。
【0059】
ガラス転移温度の測定は、DMA測定により損失正接(tanδ)を測定する。その損失正接のピーク温度をガラス転移温度とする。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、実施例1〜実施例4の充填材は、常温で液状であり、ペースト性、つまり作業性が良好であった。また、実施例1〜実施例4の充填材の硬化後においても、アルミナ基板との線熱膨張係数の差によるクラックも発生せず、良好なドリル加工性も得られ、信頼性試験においても、問題はなかった。
【0062】
なお、実施例1〜実施例4において、線熱膨張係数が20〜27と高いにもかかわらず、基板と充填材との間でクラックが発生していなかった。これは、有機フィラーであるシリコーン複合パウダーが含有しているため、充填材が硬化する際の収縮において、生じる応力がその弾性により緩和され、収縮が抑えられているからである。
【0063】
【表2】

【0064】
表2に示すように、有機フィラーが含まれていない充填材である比較例1は、ペースト性つまり作業性が良好であり、また良好なドリル加工性でもあり、信頼性試験においても問題はなかった。しかし、充填材の線熱膨張係数が高いために、硬化した充填材と基板との間に隙間が確認され、密着不良が確認された。
【0065】
比較例1の充填材に対して、ビスフェノール型エポキシ樹脂の割合を減らし、無機フィラーであるシリカフィラ―の割合を増やした充填材が比較例2の充填材である。表2に示すように、シリカフィラー割合の増加により線熱膨張係数が低下しているが、まだ硬化した充填材と基板との間に隙間が確認され、密着不良が確認された。さらに信頼性試験においても、不良が確認された。
【0066】
比較例2の充填材に対して、ビスフェノール型エポキシ樹脂の割合を減らし、無機フィラーであるシリカフィラ―の割合を増やした充填材が比較例3の充填材である。表2に示すように、シリカフィラー割合の増加により粘度が高いペーストとなり、充填しにくいという面から作業性に難がある一方、線熱膨張係数が低下したことで硬化した充填材と基板と間に密着不良は確認されなかった。しかし信頼性試験において不良が確認された。
【0067】
無機フィラーが含まれていない充填材である比較例4は、表2に示すように、粘度が高いペーストのために充填しにくく、また信頼性試験においても不良が確認された。なお、線熱膨張係数が76ppm/Kと非常に高い値ではあるが、硬化した充填材と基板との間に密着不良が確認されなかった。これは、実施例でも記載したように、有機フィラーであるシリコーン複合パウダーが、硬化時の収縮を緩和しているためである。
【0068】
比較例5は、硬化剤にジシアンジアミド系硬化剤を使用せずに、イミダゾール系硬化剤を使用した充填剤である。表2に示すように、比較例5の充填材は、粘度が高いペーストのために充填しにくいが、密着不良は確認されなかった。しかし、信頼性試験において、不良が確認された。
【0069】
本発明の充填材が、基板に形成された貫通孔または及び凹部のうち少なくとも一方に充填、硬化されており、充填材を硬化させた後、充填材には、孔が設けられていることを特徴とする基板としては、図1に示すような基板がある。図1は、基板1を上面から見た図であり、基板上面の4隅に基板上下面を貫通した貫通孔が設けられ、その貫通孔に本発明の充填材2が充填、硬化されており、充填材2に基板上面から基板底面に貫通した貫通孔3が設けられている基板である。図2は本発明の別の実施形態の基板であり、図2は基板11を上面から見た図であり、基板上面から基板底面に切り欠き部13、言い換えればノッチが設けられている基板11である。なお、切り欠き部13は、図2に示すように半円状でもよく多角形形状でもよい。なお、切り欠き部は、多数個取り基板に貫通孔として形成した後に、切断により個片に分割して、切り欠き部として形成するのがよい。多数個取り基板として製造すれば、量産性に優れるからである。また、切り欠き部は、基板の上下面を貫通しないで特定の層厚分だけに形成されていてもよい。
【0070】
本発明の、充填材に形成された孔に、外部端子が取り付けられていることを特徴とする基板としては、図3に示すような基板がある。図3は図1の貫通孔3に、外部端子24を取り付けた基板21を、図1のa−a線で基板上下面を切断した切断面である。図4は図3の外部端子24と別形状の外部端子34を図1の貫通孔3に取り付けた基板31を、図1のa−a線で基板上下面を切断した切断面である。外部端子としては、図3に示すようなMTピン、図4に示すようなリベットでもよく、また螺子のような外部端子でもよい。
【0071】
以上説明したように、本発明の充填材は無機フィラーだけでなく有機フィラーを含有しているため、充填材と基板との間での密着不良およびクラックが発生せず、且つドリル加工しやすい充填材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の充填材を充填、硬化し充填材に孔が設けられた基板の概略上面図である。
【図2】本発明の充填材を充填、硬化し充填材に孔が設けられた基板の、図1と別態様の概略上面図である。
【図3】本発明の、充填材に設けられた孔に外部端子を取り付けた基板の概略断面図である。
【図4】本発明の、充填材に設けられた孔に外部端子を取り付けた基板の、図3と別態様の概略断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、11…充填材を充填、硬化し、充填材に孔を設けた基板
2、12、22、32…充填材
3、13…貫通孔
21、31…充填材の孔に外部端子を取り付けた基板
24、34…外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填される充填材であって、少なくとも硬化剤と無機フィラーと有機フィラーと液状の樹脂を含有し、かつ該充填材が液状であることを特徴とする充填材。
【請求項2】
前記有機フィラーは、少なくともシリコーンを含有する、請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
前記液状の樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有し、前記硬化剤はジシアンジアミド系硬化剤を含有する、請求項1又は請求項2に記載の充填材。
【請求項4】
前記無機フィラーは、少なくともシリカフィラーを含有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項5】
硬化された前記充填材は、前記基板との線熱膨張係数の差が30ppm/K以下、弾性率が1GPa以上8GPa以下であることを特徴とする請求項4に記載の充填材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の前記充填材が前記基板に形成された貫通孔及び凹部のうち少なくとも一方に充填、硬化されており、該充填材には、孔が設けられていることを特徴とする基板。
【請求項7】
請求項6に記載の基板において、前記充填材に形成された孔に、外部端子が取り付けられていることを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−250966(P2007−250966A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74342(P2006−74342)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】