説明

充填材留具および充填材取付構造

【課題】建物の壁、天井、床等への充填材の設置を簡易に行うことを可能とした充填材留具とこの留具を利用した充填材取付構造を提案する。
【解決手段】建物を構成する下地材の前面の幅以上の幅からなる本体部11と、本体部11の両端から該本体部11の一面側に立設された一対の係合部12,12と、一対の係合部12,12にそれぞれ一体に形成されて充填材を掛止する羽根部13,13とからなり、一対の係合部12,12は、少なくとも一部分における互いの間隔が下地材の前面の幅よりも狭くなるように形成されていて、この係合部12のバネ力により下地材を両側面から挟むことで該下地材に係合される充填材留具と、この充填材留具を利用した充填材の取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材留具とこの充填材留具を利用した充填材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁、天井、床等には断熱性および防音性を向上させることで、居住の快適性の向上を目的としてグラスウール、ロックウール、樹脂発泡系断熱材等のマット状の充填材をこれらの壁、天井、床等に沿って敷設(充填)する場合がある。
【0003】
このような充填材の取り付けにおいて、例えば、壁に設置する場合には、壁を構成する縦横のフレーム状に組み立てられた下地材により囲まれる空間に充填材を配置して、このフレームの前後から面材により挟む場合や、粘着テープにより下地材(フレーム)に貼り付ける場合があった。
【0004】
ところが、マット状の充填材は、湿気を吸い込むことによりその自重で型崩れして下方に落下(たわんだり、倒れたり)するため、位置がずれて隙間が形成される場合があるという問題点を有していた。そして、粘着テープの粘着力は、時間の経過とともに低下するため、このような型崩れを抑制する効果を得ることはできなかった。
【0005】
そのため、従来、断熱材の位置ずれを防止することを目的として、建物の構造材に固定される断熱材留具を使用する場合があった。
例えば、特許文献1に記載の断熱材留具110は、図6に示すように、薄板状の材料からなり、断熱材の表面に接する第一部位111と、下地材120に接する第二部位112と、下地材120と断熱材130との間に挿入される第三部位113と断熱材130に挿入される第四部位114とにより構成されており、下地材120に接する第二部位112には、それぞれ鉤状に切り欠いて折り曲げられた爪115,115が形成されている。
【0006】
つまり、特許文献1に記載の従来の断熱材留具110は、第二部位112に形成された爪115を、下地材120に打ち込むことにより、第二部位112と第三部位113とが、それぞれ下地材120の前面および側面に当接した状態で固定される。そして、断熱材130を下地材120により囲まれる空間に配置することにより、第一部位111により断熱材130を前面から抑止するとともに、第四部位114により断熱材130を掛止している。
【特許文献1】特開2001−123560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の断熱材留具110は、下地材120に爪115を打ち込むことにより固定されるため、下地材120が木製の場合にのみ有効であって、下地材120が鋼製部材により構成されている場合は固定することができない。また、下地材120に爪115を打ち込む際には、ハンマー等を利用して、正面から打撃する必要があるため、その作業が可能なスペースを確保する必要があるとともに、手間が掛かるという問題点を有していた。
【0008】
また、下地材が鋼製部材により構成されている場合には、ビス等を介して断熱材留具を固定する場合があるが、このビスを螺合する作業に手間が掛かるという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決するものであり、建物の壁、天井、床等への充填材の設置を簡易に行うことを可能とした充填材留具とこの充填材留具を利用した充填材取付構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の充填材留具は、建物を構成する下地材の前面の幅以上の幅からなる本体部と、前記本体部の両端から該本体部の一面側に立設された一対の係合部と、前記一対の係合部のいずれか一方または両方に一体に形成されて充填材を掛止または抑止する羽根部と、からなり、前記一対の係合部は、少なくとも一部分における互いの間隔が前記下地材の前面の幅よりも狭くなるように形成されており、前記係合部のバネ力により下地材を両側面から挟むことで該下地材に係合されることを特徴としている。
【0011】
かかる充填材留具によれば、係合部により下地材を把持することで、係合部のバネ力により下地材に係合される構成のため、作業が簡易で容易に充填材の設置を行うことができる。そのため、作業時間を大幅に削減することが可能となり好適である。また、下地材を両係合部の間に滑り込ませるのみで作業が完了するため、下地材の手前に手を差し込むスペースがあれば、設置することが可能である。そのため、ユニットバスの周囲(背面)など、限られた空間内での作業も可能である。
【0012】
前記充填材留具を、一枚の鋼製板材に折り曲げ加工を施すことにより形成すれば、充填材留具の係合部に板バネと同様なバネ力を付与するとともに、充填材留具の製造に要する手間を省略することが可能となり、材料費を削減することが可能となり、好適である。
【0013】
また、前記充填材留具において、前記係合部に前記下地材の側面側に突出する凸部が形成されていてもよい。
かかる充填材留具によれば、側面に溝などの凹部が形成された下地材に充填材留具の凸部を挿入することで係合されて、充填材留具が抜け出すことがなく、確実に固定されるため、好適である。
【0014】
また、前記充填材留具において、前記羽根部の先端が鋭角に形成されていれば、羽根部をマット状の充填材に容易に挿入することができ、充填材を掛止することが可能となり、好適である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、所定の間隔により配設された下地材同士の間に配設された充填材を、充填材留具により固定する充填材取付構造であって、前記充填材留具は、前記下地材の前面の幅以上の幅からなる本体部と、前記本体部の両端に形成されて、前記下地材の両側面に配置されるように形成された一対の係合部と、前記一対の係合部のいずれか一方または両方に一体に形成されて充填材を掛止または抑止する羽根部と、からなり、前記一対の係合部は、少なくとも一部分における互いの間隔が前記下地材の前面の幅よりも狭くなるように形成されており、前記係合部のバネ力により前記下地材を両側面から挟むことで該下地材に係合されることを特徴としている。
【0016】
かかる充填材取付構造は、係合部のバネ力を利用して下地材に係合される充填材留具を利用するため、壁等の内面に簡易に充填材を設置することを可能としている。また、この充填材留具は、羽根部により充填材を掛止または抑止するため、充填材が自重により落下(たわみや倒れ等を含む)することがなく、消音機能および断熱機能を長期間にわたり維持することを可能としている。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、前記充填材取付構造において、前記係合部には、前記下地材側に突出する凸部が形成されており、前記下地材には、前記凸部に対応する凹部が形成されており、前記凸部が前記凹部に掛止られることで、前記充填材留具が前記下地材に係合されることを特徴としている。
【0018】
かかる充填材取付構造は、下地材に形成された凹部に係合部の凸部を掛け止めることで、より充填材留具の固定度が増し、好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の充填材留具とこの充填材留具を利用した充填材取付構造によれば、簡易な構造により構成された充填材留具を利用して、建物の壁、天井、床等への充填材の設置を簡易に行うことが可能となるため、施工期間の短縮化および施工に要する費用の省略化が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
ここで、図1は、第一の実施の形態に係る充填材留具を示す斜視図である。図2は、第一の実施の形態に係る充填材留具と間柱とを示す平面図である。図3(a)は、第一の実施の形態に係る充填材取付構造を示す斜視図であって、(b)は(a)の変形例を示している。また、図4は、図3(a)に示す充填材取付構造の分解斜視図である。さらに、図5は、第二の実施の形態に係る充填材取付構造を示す平面図である。
【0021】
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態では、建物の壁の内面であって、所定の間隔により配置された間柱(下地材)の間に、グラスウールからなるマット状(板状)の充填材を設置する場合について説明する。なお、本発明の充填材留具および充填材取付構造を利用した充填材の設置箇所は、壁に限定されるものではなく、天井、屋根裏、床等の他の面材または版材にも適用可能であることはいうまでもない。また、充填材を構成する材料はグラスウールに限定されないことはいうまでもなく、例えば、ロックウール、樹脂発泡体等、適宜公知の断熱材や消音材の中から選定して使用すればよい。
【0022】
第一の実施の形態に係る充填材留具10は、図1に示すように、一枚の薄肉鋼板に折り曲げ加工を施すことにより、本体部11と、係合部12と、羽根部13と、が一体に形成されてなる。
【0023】
本体部11の幅W2は、図2に示すように、ステンレス製の角形筒材からなる間柱20の前面21の幅W1よりも若干大きい程度の幅よりなる。なお、本体部11の幅W2は、間柱20の前面21の幅W1以上であれば限定されるものではない。ここで、本明細書における前面21とは、間柱20の充填材留具10の本体部11と当接する側の面(図2における下側)であって、側面22とは間柱20と充填材30との当接面(図2における左右側)をいう。
【0024】
係合部12は、図1および図2に示すように、本体部11の両端からこの本体部11の一面側(間柱20側)に薄肉鋼板の端部を折り曲げる(立設させる)ことにより形成されている。
【0025】
この係合部12には、他の係合部12側であって、間柱20の側面側22に突出する台形状の凸部12aが先端部分に形成されており、一対の係合部12,12の先端部分における互いの間隔W3が間柱20の前面の幅W1よりも狭くなるように形成されている。なお、凸部12aの形成箇所は、係合部12の先端部分に限定されるものではなく、例えば係合部12の中央部分に形成するなど、間柱20の側面22の形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
充填材留具10は、一対の係合部12,12の先端部分における間隔が間柱20の前面の幅よりも狭く形成されているため、この一対の係合部12,12のバネ力により間柱20を両側面22,22から挟んで間柱20に係合される。
【0027】
一対の係合部12,12の先端には、先端に行くに従い互いの間隔が広がるテーパー部12bがそれぞれ形成されている。このテーパー部12b,12bの先端であって、羽根部13,13の基部における間隔W4は、間柱20の前面21の間隔W1よりも広くなるように形成されている。このため、充填材留具10を間柱20に取り付ける際に、充填材留具10を間柱20の前面21から押し込むことで、間柱20の前面21に対して係合部12,12がテーパー部12b,12bの表面に沿って広がり、係合部12,12を間柱20の側面22,22に滑り込ませることが可能となる。
【0028】
羽根部13は、図1および図2に示すように、各係合部12,12の先端を間柱20と反対側に折り曲げることにより一体に形成されている。なお、第一の実施の形態では、羽根部13が、本体部11と平行となるように形成しているが、羽根部13の角度は限定されるものではない。また、羽根部13は、必ずしも両係合部12,12に形成される必要はなく、いずれか一方にのみ形成されていてもよい。
【0029】
羽根部13は、図1に示すように、その形状が略台形であって、先端が鋭角になるように形成されているため、充填材30の側面に差し込みやすく構成されている。間柱20に係合された充填材留具10の羽根部13を充填材30の側面に差し込むことにより、充填材30は、間柱20に掛止される。なお、羽根部13の形状が限定されないことはいうまでもない。
なお、壁の端部に配設される間柱20に固定される充填材留具10に関しては、羽根部13は、充填材30が配置される側の一方の係合部12にのみ形成されていればよい。
【0030】
羽根部13の形状は、充填材30の材質や形状等により適宜設定すればよく、例えば、充填材30が樹脂発泡系断熱材等からなり、重量が重い場合等には、長さを長く形成する。また、充填材30の固定方法が充填材30の前面から抑止する場合には、鋭角に形成されている必要はない(図3(b)参照)。また、羽根部13には、充填材30からの抜け出しを防止するための鉤が形成されていてもよい。
【0031】
第一の実施の形態に係る充填材取付構造1は、図3(a)に示すように、所定の間隔により立設された間柱20(図面では1本のみ表示している)と、間柱20同士の間隔を遮蔽するように配設された充填材30と、間柱20に係合されて充填材30を固定する充填材留具10とにより構成されている。なお、壁は、この充填材取付構造1の間柱20の前面21と背面(前面21と反対側の面)に壁部構造用面材40(図面では背面の壁部構造用面材40のみを示す)をビス等の固定部材(図示せず)を介して固定することで構築される。
【0032】
充填材留具10は、その係合部12のバネ力を利用して間柱20の両側面22,22から挟むことで間柱20に係合されるとともに、充填材留具10の羽根部13を充填材30に挿入することで、充填材30を掛止した状態で固定している。
なお、図示は省略するが、充填材留具10は、一本の間柱20に対して、複数個係合されている。充填材留具10の数量は限定されるものではないが、充填材30の材質や厚みや間柱20同士の間隔などにより定まる充填材30の重量に応じて設定すればよい。
【0033】
間柱20には、図2に示すように、間柱20の軸方向に沿って形成された溝である凹部23が各表面に2本ずつ形成されている。充填材留具10は、係合部12のバネ力により間柱20の側面22,22を把持するとともに、凸部12aを間柱20の凹部23に挿入することで係合されている(図3参照)。つまり、充填材留部10は、凸部12aが凹部23に係止されているため、抜け出しが防止されている。
【0034】
肉厚が壁厚に対して薄い充填材30を使用することで、壁の内面に空間を設ける場合には、図3(b)に示す充填材取付構造2のように、充填材留具10の羽根部13は、充填材30を前面から押え付ける(抑止する)ものとする。
この場合において、係合部12の長さは、壁厚と充填材30との厚みにより、適宜、設定される。また、羽根部13の形状は、先端が鋭角に形成されている必要はなく、矩形状に形成するものとする。
【0035】
充填材取付構造1の形成は、間柱20に充填材留具10を係合した後、充填材30を充填材留具10に掛止することにより行う(図3(a)および図4参照)。
【0036】
間柱20への充填材留具10の取り付けは、図4に示すように、間柱20の前面から充填材留具10を滑り込ませることにより行う。充填材留具10の係合部12の先端には、テーパー部12bが形成されているため、充填材留具10を、間柱20の前面21から押し込むことにより係合部12,12の間隔が一旦広がり、間柱20の側面22,22に滑り込ませることが可能となる。そして、係合部12,12に形成された凸部12a,12aが間柱20の側面に形成された凹部23,23に到達した時点で係合部12,12の間隔が狭まり、充填材留具10が間柱20を把持した状態で係合される。
【0037】
なお、充填材留具10の間柱20への取り付け方法は、前記の方法に限定されるものではなく、例えば、間柱20の上端から下方に滑り込ませることにより、所定の位置に取り付けてもよい。
【0038】
充填材30の充填材留具10への掛止は、充填材留具10の羽根部13を充填材30の側面に差し込むことにより行う(図3(a)参照)。
【0039】
なお、充填材取付構造1の形成方法は、前記の方法に限定されないことはいうまでもない。例えば、予め充填材30の側面に、充填材留具10の羽根部13を差し込んだ状態で、充填材留具10を間柱20へ係合することにより行ってもよい。
また、図3(b)に示す充填材取付構造2のように、充填材留具10が、充填材30をその前面から抑止する構成の場合は、充填材30を間柱20,20の間に配置してから、充填材留具10を間柱20に係合させてもよい。
【0040】
そして、充填材取付構造1,2が形成された後、間柱20の前面側および背面側から壁部構造用面材40(図3(a)、(b)では前面側の壁部構造用面材40の図示を省略している)を固定すれば、充填材30を備えた壁が形成される。
また、間柱20の背面に予め壁部構造用面材40を固定した状態で充填材取付構造1,2を形成してもよい。
【0041】
第一の実施の形態に係る充填材留具10および充填材取付構造1によれば、間柱20の前面21から充填材留具10を押し込むのみで間柱20への充填材10の係合(固定)が完了するため、作業が容易で施工性に優れている。
【0042】
また、充填材留具10は、薄肉鋼板により構成されており、人力による間柱20への係合が可能なため、別途ハンマー等の工具を用いる必要がないため、作業性に優れている。また、手で押し込むのみで係合することが可能なため、間柱20の前面21側に手を入れるだけの空間があれば、設置することが可能なため、省スペース化が可能となり、好適である。
【0043】
また、別途ビス、釘、接着剤等の固定部材を必要としないため、材料費の削減も可能となり、全体として、経済性に優れている。
【0044】
また、充填材留具10は、凸部12aと凹部23とが嵌合された状態で係合されているため、充填材30の重量や弾性力により抜け出すことがない。
【0045】
また、羽根部13により充填材30の掛止または抑止するため、充填材30の位置がずれることがないため、間柱20等の下地材と充填材30との間に隙間が形成されることがなく、消音機能および断熱機能が長期間維持される。
【0046】
第一の実施の形態に係る充填材取付構造1,2によれば、簡易に充填材30を備えた壁を形成することが可能となるため、建物の施工に要する期間の省略が可能となる。また、風呂場、台所、洗面所、トイレなどの水廻りを囲う壁に当該充填材取付構造1を採用すれば、消音効果により、居住の快適性が向上し、好適である。なお、当該充填材取付構造1,2の適用箇所は限定されないことはいうまでもなく、例えば、建物の該周囲の壁、床、天井、屋根裏等にも適用可能である。
【0047】
<第二の実施の形態>
次に、第二の実施の形態について、図5を参照して説明する。
【0048】
第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様に、建物の壁の内面であって、所定の間隔により配置された間柱(下地材)の間に、グラスウールからなるマット状(板状)の充填材を設置する場合について説明する。
【0049】
第二の実施の形態では、壁厚に対して肉厚が薄い充填材30を使用することで、壁の内面に空間を設ける場合であって、図5に示すように、空間を充填材30の背面側に設ける場合について説明する。
【0050】
第二の実施の形態に係る充填材留具10は、図5に示すように、一枚の薄肉鋼板に折り曲げ加工を施すことにより、本体部11と、係合部12と、羽根部13と、が一体に形成されてなる。
【0051】
係合部12は、図5に示すように、本体部11の両端からこの本体部11の一面側(間柱20側)に薄肉鋼板の端部を折り曲げる(立設させる)ことにより形成されている。この係合部12の長さは、充填材30の厚みと略同等に形成されている。
【0052】
この係合部12には、他の係合部12側であって、間柱20の側面側22に突出する台形状の凸部12aが長手方向(図5において上下方向)の中間付近に形成されており、一対の係合部12,12の先端部分における互いの間隔が間柱20の前面の幅よりも狭くなるように形成されている。
【0053】
充填材留具10は、一対の係合部12,12の先端部分における間隔が間柱20の前面の幅よりも狭く形成されているため、この一対の係合部12,12のバネ力により間柱20を両側面22,22から挟んで間柱20に係合される。
【0054】
羽根部13は、図5に示すように、充填材30を背面から押え付ける(抑止する)ものであって、各係合部12,12の先端を間柱20と反対側に折り曲げることにより一体に形成されている。なお、羽根部13は、図示は省略するが、その形状が略矩形に形成されている。
なお、壁の端部に配設される間柱20に固定される充填材留具10に関しては、羽根部13は、充填材30が配置される側の一方の係合部12にのみ形成されていればよい。
【0055】
この他の充填材留具10の構成に関する事項は、第一の実施の形態において説明した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0056】
第二の実施の形態に係る充填材取付構造1は、図5に示すように、所定の間隔により立設された間柱20(図面では1本のみ表示している)と、間柱20同士の間隔を遮蔽するように配設された充填材30と、間柱20に係合されて充填材30を固定する充填材留具10とにより構成されている。なお、壁は、この充填材取付構造1の間柱20の前面21と背面(前面21と反対側の面)に壁部構造用面材40,40をビス等の固定部材(図示せず)を介して固定することで構築される。
【0057】
充填材留具10は、その係合部12のバネ力を利用して間柱20の両側面22,22から挟むことで間柱20に係合されるとともに、充填材留具10の羽根部13が充填材30の背面を押え付けた状態で、充填材30を固定している。
【0058】
間柱20には、間柱20の軸方向に沿って形成された溝である凹部23が各表面に2本ずつ形成されている。充填材留具10は、係合部12のバネ力により間柱20の側面22,22を把持するとともに、凸部12aを間柱20の凹部23に挿入することで係合されている。つまり、充填材留部10は、凸部12aが凹部23に係止されているため、抜け出しが防止されている。
【0059】
第二の実施の形態に係る充填材取付構造3の形成は、間柱20に充填材留具10を係合した後、充填材30を充填材留具10に掛止することにより行う(図5参照)。そして、間柱20の前面21および背面に壁部構造用面材40,40を固定することにより、壁を形成する。これにより、充填材30は、充填材留具10の羽根部13により背面から前面の壁部構造用面材40に押さえつれられた状態となる。
【0060】
間柱20への充填材留具10の取り付けは、第一の実施の形態で示した方法と同様に、間柱20の前面21から充填材留具10を滑り込ませることにより行う。そして、係合部12,12に形成された凸部12a,12aが間柱20の側面に形成された凹部23,23に到達した時点で係合部12,12の間隔が狭まり、充填材留具10が間柱20を把持した状態で係合される。
【0061】
充填材30の充填材留具10の羽根部30への掛止は、前面側から、間柱20同士の間に充填材30を配置することにより行う。
【0062】
第二の実施の形態に係る充填材留具10および充填材取付構造3によれば、充填材30の背面側に空間を設けることが可能となり、施工条件に妨げられることなく、所望の位置に空間が形成された壁を構築することが可能となる。
【0063】
第二の実施の形態に係る充填材留具10および充填材取付構造3に関するこの他の作用効果は、第一の実施の形態において示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0064】
以上、本発明について、好適な実施の形態の一例を説明した。しかし、本発明は、前記各実施の形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
例えば、前記各実施の形態では、下地材として、凹部が形成された間柱を使用するものとしたが、充填材留具の係合が可能であれば、必ずしも凹部が形成されていなくてもよいことはいうまでもない。
【0065】
また、前記各実施の形態では、下地材として、ステンレス製の角形筒体と使用するものとしたが、下地材を構成する材料、材質は限定されるものではなく、例えば、溝型鋼やH型鋼などの型鋼や、鉄・アルミ製の部材や、集成材や無垢材などの木製部材等、適宜公知の下地材の中から選定して使用すればよい。
【0066】
また、前記各実施の形態では、充填材留具を薄肉鋼板に折り曲げ加工を施すことにより形成するものとしたが、充填材留具を構成する材料は薄肉鋼板に限定されるものではなく、係合部のバネ力により係合が可能であれば、適宜公知の材料が適用可能である。
また、充填材留具の製造は折り曲げ加工によるものに限定されるものではなく、例えば溶接により各部材を一体に接合することにより構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第一の実施の形態に係る充填材留具を示す斜視図である。
【図2】第一の実施の形態に係る充填材留具と間柱とを示す平面図である。
【図3】(a)は第一の実施の形態に係る充填材取付構造を示す斜視図であって、(b)は(a)の変形例を示している。
【図4】図3(a)に示す充填材取付構造の分解斜視図である。
【図5】第二の実施の形態に係る充填材取付構造を示す平面図である。
【図6】従来の充填材取付構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3 充填材取付構造
10 充填材留具
11 本体部
12 係合部
12a 凸部
13 羽根部
20 間柱(下地材)
21 前面
22 側面
23 凹部
30 充填材
W1 間柱の前面の幅(下地材の前面の幅)
W2 本体部の幅
W3 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成する下地材の前面の幅以上の幅からなる本体部と、
前記本体部の両端から該本体部の一面側に立設された一対の係合部と、
前記一対の係合部のいずれか一方または両方に一体に形成されて充填材を掛止または抑止する羽根部と、からなり、
前記一対の係合部は、少なくとも一部分における互いの間隔が前記下地材の前面の幅よりも狭くなるように形成されており、
前記係合部のバネ力により下地材を両側面から挟むことで該下地材に係合されることを特徴とする、充填材留具。
【請求項2】
一枚の鋼製板材に折り曲げ加工を施すことにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の充填材留具。
【請求項3】
前記係合部に前記下地材の側面側に突出する凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の充填材留具。
【請求項4】
前記羽根部の先端が鋭角に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の充填材留具。
【請求項5】
所定の間隔により配設された下地材同士の間に配設された充填材を、充填材留具により固定する充填材取付構造であって、
前記充填材留具は、前記下地材の前面の幅以上の幅からなる本体部と、
前記本体部の両端に形成されて、前記下地材の両側面に配置されるように形成された一対の係合部と、
前記一対の係合部のいずれか一方または両方に一体に形成されて充填材を掛止または抑止する羽根部と、からなり、
前記一対の係合部は、少なくとも一部分における互いの間隔が前記下地材の前面の幅よりも狭くなるように形成されており、
前記係合部のバネ力により前記下地材を両側面から挟むことで該下地材に係合されることを特徴とする、充填材取付構造。
【請求項6】
前記係合部には、前記下地材側に突出する凸部が形成されており、
前記下地材には、前記凸部に対応する凹部が形成されており、
前記凸部が前記凹部に掛止られることで、前記充填材留具が前記下地材に係合されることを特徴とする、請求項5に記載の充填材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50773(P2008−50773A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225559(P2006−225559)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(393016837)株式会社桐井製作所 (29)
【Fターム(参考)】