説明

充填物振動装置

【課題】充填物として樹脂を使用した場合であっても、その充填物を迅速かつ高精度に収容部に充填することができる充填物振動装置を提供すること。
【解決手段】樹脂製の鋳物の製造に際して樹脂からなる充填物400を振動させる充填物振動装置1であって、前記充填物400が充填される収容部200を支持する基台10と、前記基台10に設けられて、前記収容部200に充填された充填物400を、前記基台10を介して振動させるモータ20,30,40と、前記モータ20,30,40の駆動を制御する制御部60と、前記充填物400の重量を検出する検出部60,80とを備え、前記制御部60は、前記充填物400の重量と振動との関係を示す予め入力された振動情報と、前記検出部60,80の検出結果とに基づいて、前記モータ20,30,40の駆動を制御して前記基台10を介して前記充填物400を振動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物の鋳造に際して、鋳型を含む収容部内の充填物を振動させる充填物振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳型又は模型を収容する収容部に充填物を充填していくときに、収容部を介して充填物を振動させる種々の充填物振動装置が利用されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。充填物を振動させるのは、以下の理由によるものである。すなわち、収容部に上方から充填物を充填する場合において、収容部内の鋳型又は模型に側方に向けられた凹部が形成されていると、その凹部の奥にまで充填物を送り込むことができない場合がある。そこで、凹部の奥にまでしっかりと充填物が充填されるように、充填物を振動させることにより当該充填物が側方に向かって移動し易くなるようにしている。
ここで、充填物として砂や樹脂が利用される場合があるが、砂は比重が大きく、収容部に充填されていくにしたがって、底にある砂が詰まってしまい動き難くなってしまうため、収容部を介してなるべく大きく砂を振動させる必要がある。それに対して、樹脂は砂に対して比重が小さく流動性が高いので、わずかな振動を加えるだけで流動し易い。
【特許文献1】特開平8−71700号公報
【特許文献2】特開平9−225586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、砂の場合は収容部から取り出したものが鋳型として利用されることが一般的であるため、鋳型のキャビティ周辺以外では、多少の傷等が許容される余地があるのに対して、樹脂の場合には、収容部から取り出したものが製品自体になることが多く、収容部に充填した結果が最終製品の品質として直接的に外観に現れ易いため、凹部の奥までしっかりと樹脂を充填していく必要がある。そのため、充填物として樹脂を使用する場合、収容部内の鋳型の形状に応じて、高度な振動制御が必要となるが、これら振動制御については、従来では、製造者の技術、経験や勘などに頼らざるを得ず、充填物を精度よく充填することは困難であるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、充填物として樹脂を使用した場合であっても、その充填物を容易かつ高精度に収容部に充填することができる充填物振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、樹脂製の鋳物の製造に際して、鋳型を含む収容部に収容された樹脂からなる充填物を振動させる充填物振動装置であって、前記収容部を支持する基台と、前記基台に設けられて、前記収容部に収容された充填物を、前記基台を介して振動させるモータと、前記モータの駆動を制御する制御部と、前記充填物の重量を検出する検出部とを備え、前記制御部は、前記充填物の重量と振動との関係を示す予め入力された振動情報と、前記検出部の検出結果とに基づいて、前記モータの駆動を制御して前記基台を介して前記充填物を振動させることを特徴とする。
【0006】
この発明においては、制御部が、振動情報と検出部の検出結果とに基づいて、モータの駆動を制御する。そのため、基台に支持された収容部内の充填物の振動が制御部によって高精度に制御される。
以上より、充填物として樹脂を使用した場合であっても、製造者の熟練度などに依存することなく、充填物を迅速かつ高精度に収容部に充填することができる。
【0007】
また、本発明は、前記モータが、水平面上において互いに平行に配置された軸心を有する二つの基準モータと、前記二つの基準モータの間において前記二つの基準モータの軸心に平行に配置され、かつ前記二つの基準モータの軸心を結ぶ線から偏位した位置に配置された軸心を有する一つの偏位配置モータとからなっていることを特徴とする。
【0008】
この発明においては、三つのモータが選択的に駆動されることにより、基台を介して充填物が上下方向に振動するだけでなく、左右方向にも振動する。すなわち、上下方向の振動だけでなく、左右方向の成分を含む振動がラジアル方向に発生する。
これにより、楕円振動などよりも、負荷に対する影響を小さくすることができ、効果的な振動を容易に発生させることができる。また、振動がラジアル方向であるため、回転軸を回転可能に支持する軸受に過大な負担を与えることを防止することができる。
【0009】
また、本発明は、前記制御部が、前記二つの基準モータを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を上下方向に震動させる上下振動モードと、前記二つの基準モータの一方のモータと前記偏位配置モータとを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を一の傾斜方向に振動させる第一の傾斜振動モードと、前記二つの基準モータの他方のモータと前記偏位配置モータとを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を他の傾斜方向に振動させる第二の傾斜振動モードとを、前記振動情報と前記検出結果とに基づいて切り替えることを特徴とする。
【0010】
この発明においては、制御部が、上下振動モードに切り替えることにより、充填物が上下方向に振動し、第一の傾斜振動モードに切り替えることにより、充填物が一の傾斜方向に振動し、さらに、第二の傾斜振動モードに切り替えることにより、充填物が他の傾斜方向に振動する。
これにより、上下及び左右成分の振動を確実に発生させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記制御部が、前記上下振動モード、前記第一の傾斜振動モード、及び前記第二の傾斜振動モードにおいて、互いのモータを反対方向に回転駆動することを特徴とする
【0012】
この発明においては、互いのモータが反対方向に回転駆動されることにより、上下振動及び傾斜振動が直線的に生じる。
これにより、効果的な振動を容易に発生させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記第一の傾斜振動モードにおいて生じる一の傾斜方向の水平線に対する傾斜角度と、前記第二の傾斜振動モードにおいて生じる他の傾斜方向の水平線に対する傾斜角度とが45度超から90度未満になるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、第一の傾斜振動モード及び第2の傾斜振動モードにおいて、一の傾斜方向の傾斜角度と、他の傾斜方向の傾斜角度とが45度超から90度未満になる。すなわち、傾斜角度が45°を超えることから、左右方向の振動成分よりも上下方向の振動成分の方が大きくなり、充填物の左右方向の移動が抑えられる。
したがって、左右方向に向けられた凹部などの奥に充填物が充填された場合に、その充填物が凹部の奥から外方に戻されてしまうことを抑制することができ、充填物を高精度に充填することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充填物の重量に応じて、収容部内の充填物を自動的に振動させることができることから、充填物として樹脂を使用した場合であっても、その充填物を迅速かつ高精度に収容部に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態における充填物振動装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としての充填物振動装置を示したものである。
充填物振動装置1は、樹脂製の鋳物の製造に際して樹脂からなる充填物を振動させるための装置である。
最初に、本発明に係る充填物振動装置1において利用される枠体(収容部)200について説明する。
枠体200は、矩形箱型に形成された金型201からなるものである。
金型201は、中空状に形成されている。
また、金型201の内側面には、水平方向に向けられた凹凸が形成されている。
なお、符号201a,201bは、凹凸のうちの凹部を示している。
この金型201に、樹脂からなる充填物400が充填され、さらに充填物が固められた後、離型により、凹凸に応じた鋳物が形成されるようになっている。
【0017】
次に、本発明に係る充填物振動装置1について説明する。
充填物振動装置1は、枠体200を支持する基台10と、三つのモータ20,30,40と、これら三つのモータ20,30,40を基台10に取り付けるための取付部50a,50b,50cとを備えている。また、充填物振動装置1は、モータ20,30,40を制御する演算制御部60と、演算制御部60に接続された操作部70及びロードセル(検出部)80とを備えている。
【0018】
基台10は、矩形板状の基板部11と、この基板部11の裏面側に設けられた複数の脚部12とを備えている。
基板部11の表面側には、枠体200が載置されて固定されるようになっている。
また、基板部11と脚部12とは、不図示の弾性部材を介して連結されており、弾性部材が弾性変形することにより、脚部12に対して基板部11の振動が許容されるようになっている。
【0019】
基板部11の裏面には、取付部50a,50b,50cを介して、三つのモータ20,30,40が取り付けられている。
これら三つのモータ20,30,40は、互いに水平方向に配置された二つのモータ30,40(基準モータ)と、これらモータ30,40の間の中心であって、モータ30,40よりも下方に配置されたモータ20(偏位配置モータ)とからなるものである。
すなわち、三つのモータ20,30,40は、図2に示すように、充填物振動装置1を正面視して、仮想的な三角形Tの各頂点部Ta,Tb,Tc(モータ20,30,40の軸心に相当する。)に配置されている。換言すれば、モータ20の軸心Taは、モータ30,40の軸心Tb,Tcを結ぶ線T1に対して偏位した位置に配置されている。
三角形Tは、三辺のうち、水平方向に延びる一辺T1を有するものである。また、頂点部Ta,Tbを通る辺と、水平線とのなす角θ1は、20度に設定されており、同様に、頂点部Ta,Tcを通る辺と、水平線とのなす角θ2も20度に設定されている。そして、なす角θ1,θ2が20度に設定されていることから、後述するように、傾斜振動時の傾斜角度が70度(図4及び図5に示すθ3,θ4)になるように設定されている。
なお、三角形Tは、一辺T1を底辺とする二等辺三角形であり、頂角が140度に設定されている。
【0020】
各モータ20,30,40は、不図示の軸受により回転可能に支持された回転軸21,31,41と、これら回転軸21,31,41に設けられた偏心錘22,32,42とを備えている。
回転軸21,31,41は、互いに平行に配されている。さらに、回転軸21,31,41は、モータ30,40の配列方向A(一辺T1の延びる方向)に水平面上において直交する方向に向けられている。すなわち、配列方向Aは、図2に対して左右方向であり、回転軸21,31,41は、図2に対して垂直方向に延ばされている。
このような構成のもと、回転軸21,31,41を回転させると、偏心錘22,32,42が回転軸21,31,41を中心として回転することによって振動が生じ、その振動が基板部11に加えられるようになっている。
【0021】
また、図1に示す操作部70は、操作者からの操作を受け付け、操作信号を出力する。
ロードセル80は、基板部11と脚部12との間に設けられている。そして、ロードセル80は、基板部11及び枠体200などの重量を検出し、検出結果を演算制御部60に出力する。
演算制御部60は、種々の情報を記憶する記憶部61を備えている。そして、演算制御部60は、操作者による操作部6の操作により入力された、枠体200に充填される充填物400の総重量、枠体200の重量、及び、基板部11の重量などを記憶部61にあらかじめ記憶する。また、演算制御部60は、図6に示すように、充填物400の重量と振動モードとが対応付けられた対応テーブルを記憶部61に記憶する。そして、演算制御部60は、操作部70から出力された操作信号が入力されると、ロードセル80の検出結果を周期的に読み出し、当該検出結果に対応する振動モードを対応テーブルから取得し、各モータ20,30,40を選択的に回転駆動するようになっている。すなわち、演算制御部60は、モータ30,40のみを選択的に回転駆動する上下振動モードと、モータ20,30のみを選択的に回転駆動する左傾斜振動モード(第一の傾斜振動モード)と、モータ20,40のみを選択的に回転駆動する右傾斜振動モード(第二の傾斜振動モード)とを切り替えるようになっている。
【0022】
なお、対応テーブルには、図6に示すように、枠体200の高さ方向の各部位に応じた充填物400の各重量と各振動モードとが対応付けられて記憶されている。例えば、この枠体200においては、充填物400が下側の凹部201a,201bのポイントP1(図1に示す)に到達してからこれら下側の凹部201a,201bを塞ぐ高さ(ポイントP2)まで、充填物は100〜150g充填され、上側の凹部201a,201bのポイントP3に到達してからこれら上側の凹部201a,201bを塞ぐ高さ(ポイントP4)まで、充填物は250〜300g充填される。したがって、この対応テーブルには、充填物400の重量と、100〜150g及び250〜300gの場合に、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードとなるように対応付けられている。
【0023】
次いで、このように構成された本実施形態における充填物振動装置1の作用について説明する。
まず、枠体200を基板部11の表面に載置して固定する。
そして、操作部6を操作して、充填物振動装置1をオンするとともに、排出口500(図3に示す。)を介して、枠体200の中に充填物400を充填していく。
演算制御部60は、操作部6からの操作信号(オン信号)が入力されると、ロードセル80の検出結果を周期的に読み出す。
なお、ロードセル80は、枠体200、充填物400及び基板部11の合計重量を検出して、所定の間隔で周期的に検出結果を演算制御部60に出力している。
【0024】
演算制御部60は、ロードセル80の検出結果から、あらかじめ記憶された枠体200や基板部11の重量を減算して、枠体200に充填された充填物400の重量を算出する。
なお、ロードセル80は、枠体200に充填された充填物400の重量を検出する検出部として機能するものである。また、演算制御部60は、制御部と検出部とを兼用するものである。
【0025】
演算制御部60は、算出した充填物400の重量に基づいて、対応テーブルから対応する振動モード情報を取得する。すなわち、充填物400の投入当初は、充填物の重量が100g以下であるから、図6に示す対応テーブルから上下振動モード情報を取得する。そして、演算制御部60は、図3に示すように、モータ30,40のみに駆動信号を出力し、モータ30,40のみを回転駆動する。
すると、モータ20が停止した状態で、モータ30,40のみが、回転駆動され、回転軸31,41のみが互いに異なる回転方向に回転する。これにより、基板部11には、上下方向UDの振動が加えられ、充填物400が上下に直線的に振動する。
そのため、充填物400の全体が上下にならされて、充填物400が、枠体200内で上下に均等に充填されていく。
【0026】
さらに、充填物400が下側の凹部201a,201bのポイントP1に到達すると、充填物400の重量が100gを超え、演算制御部60は、対応テーブルから左傾斜振動モード情報及び右傾斜振動モード情報を取得する。すると、演算制御部60は、上下振動モードから、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードの交互振動に切り替える。すなわち、演算制御部60は、図4に示すように、まずモータ20,30のみに駆動信号を出力し、モータ20,30のみを回転駆動する。
すると、モータ40が停止した状態で、モータ20,30のみが回転駆動され、回転軸21,31のみが互いに異なる回転方向に回転する。これにより、基板部11には、左斜め方向LD(左斜め上とその反体下の方向)の振動が加えられ、充填物400が左斜めに直線的に振動する。すなわち、この振動により、鉛直方向の上下(縦)成分だけでなく、水平方向の左右(横)成分が加えられる。
そのため、充填物400の全体が、上下及び左方向にならされて、充填物400が、凹部201aの奥にまで送り込まれていく。
【0027】
さらに、演算制御部60は、左傾斜振動モードに切り替えてから一定時間経過すると、右傾斜振動モードに切り替える。すなわち、演算制御部60は、図5に示すように、モータ20,40のみに駆動信号を出力し、モータ20,40のみを回転駆動する。
すると、モータ30が停止した状態で、モータ20,40のみが回転駆動され、回転軸21,41のみが互いに異なる回転方向に回転する。これにより、基板部11には、右斜め方向RD(右斜め上とその反体下の方向)の振動が加えられ、充填物400が右斜めに直線的に振動する。この振動により、鉛直方向の上下(縦)成分だけでなく、水平方向の左右(横)成分が加えられる。
そのため、充填物400の全体が、上下及び右方向にならされて、充填物400が、凹部201bの奥にまで送り込まれていく。
【0028】
また、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードのとき、なす角θ1,θ2が20度に設定されていることから、左斜め方向LDに向けられた直線と水平線とのなす角(鋭角)θ3(図4に示す。)と、右斜め方向RDに向けられた直線と水平線とのなす角(鋭角)θ4(図5に示す。)は、それぞれ70度(90度−θ1,θ2)になる。
そのため、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードにおいて、左右方向成分よりも上下方向成分の振動が大きくなるため、凹部201a,201bの奥にまで送られた充填物400が外方側に戻されてしまうことを防止することができる。
なお、演算制御部60は、これら左傾斜振動モードと右傾斜振動モードとを交互に切り替えていく。
【0029】
さらに、充填物400が下側の凹部201a,201bを塞ぐ高さ(ポイントP2)まで到達すると、充填物400の重量が150gを超え、演算制御部60は、上下振動モードに切り替える。そして、演算制御部60は、充填物400がポイントP3からP4にあるときは、左傾斜振動モードと右傾斜振動モードとの交互振動とし、充填物400がポイントP4の高さを超えると、上下振動モードに切り替える。
このようにして、充填物400が、上下の凹部201a,201bの高さにあるときには、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードにより、充填物400が振動し、それ以外のときには、上下振動モードにより充填物400が振動する。
【0030】
以上より、本実施形態における充填物振動装置1によれば、凹部201a,201bがあっても、振動モードを自動的に切り替えることができ、充填物400を凹部201a,201bの奥にまで確実に送り込むことができる。そのため、充填物を迅速かつ高精度に収容部に充填することができ、鋳物の品質を向上させることができる。
また、演算制御部60は、充填物400の重量が300gを超えた場合であって、総重量500gに到達するまでに、所定の時間、充填物400の重量が変化しないと判定したときには、左傾斜振動モードと右傾斜振動モードとを交互に切り替える。
すなわち、充填物400が総重量500gに到達するまでに、所定の時間、充填物400の重量が変化しないということは、充填物400が、500gに到達しない状態で、枠体200の高さまで一杯になっているということになる。
ここで、枠体200には、充填物400が500g充填されることがあらかじめ分かっているのであるから、充填物400が500gに到達しない状態で、高さ一杯になってしまうということは、凹部201a,201bの奥にまで、充填物400が送り込まれていないということが考えられる。
そこで、このような場合に、左傾斜振動モードと右傾斜振動モードとを交互に切り替えて、左右方向の振動を発生させることにより、凹部201a,201bの奥まで、充填物400を送り込むことができ、鋳物の品質を向上させることができる。
【0031】
また、三つのモータ20,30,40が配置されていることから、これら三つのモータ20,30,40を選択的に回転駆動することにより、上下方向UDの振動だけでなく、左右方向の振動を基板部11に加えることができる。
さらに、モータの回転方向を互いに異なるようにしていることから、直線振動を発生させることができ、楕円振動などに対して、負荷に対する影響が小さくなる。
そのため、基台2に支持される枠体200の形状、重量などが変わることにより負荷が変わることになっても、すべての負荷に対して迅速かつ容易に効果的な振動を発生させることができる。
【0032】
また、充填物振動装置1で発生する振動は、モータ20,30,40のラジアル方向に直線振動するため、モータ20,30,40の回転軸受に過大な負担を与えることがなく、充填物振動装置1の耐久性を向上させることができる。
また、傾斜振動時の傾斜角度が70度に設定されていることから、左右方向の振動成分よりも上下方向の振動成分の方が大きくなり、充填物400の左右方向の移動が抑えられる。したがって、凹部300a,300bなどの奥に充填物が充填された場合に、その充填物が凹部300a,300bの奥から外方に戻されてしまうことを抑制することができ、充填物400を高精度に充填することができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、モータ20が、モータ30,40よりも下方に配置されるとしたが、これに限ることはなく、図7に示すように、モータ20を、モータ30,40よりも上方に配置してもよい。この場合、上下振動モードの場合、モータ30,40を回転駆動し、左傾斜振動モードの場合、モータ20,40を回転駆動し、右傾斜振動モードの場合、モータ20,30を回転駆動することはいうまでもない。
また、なす角θ1,θ2を20度とし、なす角θ3,θ4を70度としたが、これに限ることはなく、それら傾斜角度は適宜変更可能である。例えば、なす角θ1,θ2を0度超から45度未満の範囲に設定することにより、なす角θ3,θ4を45度超から90度未満の範囲に設定することができる。特に、なす角θ1,θ2を30度に設定することもできる。このとき、なす角θ3,θ4は、60度になる。
【0034】
また、枠体200に充填された充填物400の重量を検出するとしたが、これに限ることはなく、枠体200に充填される充填物400の残量を検出するようにしてもよい。この場合も、充填物400の残量と振動モードとを対応付けた対応テーブルなどを記憶することができ、残量がゼロになれば、適正に充填されたことを判定することができることはいうまでもない。
また、充填物400の重量に応じて、モータ20,30,40の回転数(周波数)を変更してもよい。例えば、演算制御部60が、重量が軽い場合には回転数を下げ、重量が重くなると、回転数を上げるようにしてもよい。これにより、充填物400を重量に応じて確実に振動させることができる。また、演算制御部60が、上下振動モードの場合に回転数を高くし、左傾斜振動モード及び右傾斜振動モードの場合に、回転数を低くするように切替制御を行ってもよい。
また、枠体200に充填された充填物400の重量に応じて、投入制御部が充填物400の投入量を制御するようにしてもよい。この場合も、充填物400の重量と投入量とを対応付けた対応テーブルなどを記憶することにより、投入量を高精度に制御することができる。
また、制御部は、モータ20,30,40を互いに反対方向に回転させるとしたが、これに限ることはなく、互いに同方向に回転させてもよい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る充填物振動装置の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のモータの配置の様子を模式的に示す説明図である。
【図3】上下振動モードによりモータを駆動した様子を示す説明図である。
【図4】左傾斜振動モードによりモータを駆動した様子を示す説明図である。
【図5】右傾斜振動モードによりモータを駆動した様子を示す説明図である。
【図6】図1の演算制御部が記憶する対応テーブルを示す説明図である。
【図7】モータ配置の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 充填物振動装置
10 基台
20 モータ(基準モータ)
30 モータ(偏位配置モータ)
21,31,41 回転軸
40 モータ(水平用モータ)
60 演算制御部(演算制御部、検出部)
80 ロードセル(検出部)
200 枠体(収容部)
400 充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の鋳物の製造に際して、鋳型を含む収容部に収容された樹脂からなる充填物を振動させる充填物振動装置であって、
前記収容部を支持する基台と、
前記基台に設けられて、前記収容部に収容された充填物を、前記基台を介して振動させるモータと、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記充填物の重量を検出する検出部と
を備え、
前記制御部は、
前記充填物の重量と振動との関係を示す予め入力された振動情報と、前記検出部の検出結果とに基づいて、前記モータの駆動を制御して前記基台を介して前記充填物を振動させることを特徴とする充填物振動装置。
【請求項2】
前記モータは、
水平面上において互いに平行に配置された軸心を有する二つの基準モータと、
前記二つの基準モータの間において前記二つの基準モータの軸心に平行に配置され、かつ前記二つの基準モータの軸心を結ぶ線から偏位した位置に配置された軸心を有する一つの偏位配置モータとからなっていることを特徴とする請求項1に記載の充填物振動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記二つの基準モータを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を上下方向に震動させる上下振動モードと、
前記二つの基準モータの一方のモータと前記偏位配置モータとを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を一の傾斜方向に振動させる第一の傾斜振動モードと、
前記二つの基準モータの他方のモータと前記偏位配置モータとを回転駆動して、前記基台を介して前記充填物を他の傾斜方向に振動させる第二の傾斜振動モードとを、前記振動情報と前記検出結果とに基づいて切り替えることを特徴とする請求項2に記載の充填物振動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記上下振動モード、前記第一の傾斜振動モード、及び前記第二の傾斜振動モードにおいて、互いのモータを反対方向に回転駆動することを特徴とする請求項3に記載の充填物振動装置。
【請求項5】
前記第一の傾斜振動モードにおいて生じる一の傾斜方向の水平線に対する傾斜角度と、前記第二の傾斜振動モードにおいて生じる他の傾斜方向の水平線に対する傾斜角度とが45度超から90度未満になるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の充填物振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36558(P2010−36558A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205722(P2008−205722)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】