説明

充電制御回路、充電制御方法及び携帯端末

【課題】本発明は、CPUなどの電池を電源として動作する負荷回路の動作条件に過大な制約を加えることなく低温時の電池温度を上昇させることができる充電制御回路を提供する。
【解決手段】ACアダプタ13から供給される電力を入力とし、電池セル19に対する充電電流I2と、電池セル19を電源として動作する負荷回路22に対する負荷電流I1とを制御して出力する充電制御回路11であって、充電電流I2と負荷電流I1とを制御するためのMOSFET14、15と、電池セル19の温度が所定の温度より低い場合にMOSFET14、15によって消費される電力を増加させるようにMOSFET14、15を制御する充電制御部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電制御を行うための充電制御回路、充電制御方法、及びそれを用いた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器などに用いられている充電制御回路には、電池温度検出機能や電池保護機能を搭載しているものがある。これらの機能は、充電動作による電池へのダメージを考慮したものであり、リチウム二次電池などの二次電池の安全性を高めるために設けられたものである。ここで、電池温度検出機能は、サーミスタなどの検知素子を用いて電池温度を検出する機能である。電池保護機能は、過電圧検出、過電流検出、電池温度検出等の検出結果に応じて、充電動作の停止、充電電流制限などの充電制御によって電池保護を行う機能である。
【0003】
電池保護機能の一部である電池温度保護に関しては、リチウム二次電池などの二次電池では一般に安全性などの見地から、放電が可能である電池温度の上限値と、充電が可能である電池温度の上限値及び下限値とが定められている。例えば特許文献1、特許文献2では、電池温度が高温となった場合に温度を低下させるための技術の検討が行われている。
【0004】
特許文献1には、電池パック内の温度が所定値以上となった場合に、電池パック内に設けられている過充電保護用のトランジスタのオン抵抗値を大きくすることで充電電流を低下させ、温度上昇時でも充電を継続するための技術が記載されている。また、特許文献2には、充電時の温度上昇速度や温度低下速度に応じて充電電流を変化させることで、電池温度が設定温度を超える時間を短縮するための技術が記載されている。
【0005】
一方、電池温度が低温となった場合に温度を上昇させたり、さらに低温とないように維持したりするための技術が、例えば特許文献3〜5において検討されている。
【0006】
特許文献3には、電池温度が低温の場合に、情報携帯端末のCPU(中央処理装置)で負荷が大きい演算処理を行わせることで、CPUの発熱量によって電池温度を上昇させる技術が記載されている。特許文献4には、電池パック内に電池セル加熱用の電流入力端子とヒーターとを設け、低温時にヒーターを加熱させることで内部温度を上昇させる技術が記載されている。また、特許文献5には、極低温状態に至る可能性を予測された場合に、電池を放電させ、内部発熱を促進させることで電池温度を上昇させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−131023号公報
【特許文献2】特開2010−172158号公報
【特許文献3】特開2005−110443号公報
【特許文献4】特開平10−284133号公報
【特許文献5】特開2008−16229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した電池温度保護の低温時の保護に係る技術において、例えば特許文献3に記載されている技術は、電池を電源として動作する負荷回路内のCPUを負荷として電力を消費させることで電池温度を上昇させようとするものである。そのため、負荷となるCPUの動作状態や処理内容に一定の制約が求められることになる。すなわち、例えば、低温時には発熱量が高い所定の画像処理を行うような設定をしていた場合、利用者が他の画像処理を伴う操作を行うことができなくなるといったことが考えられる。
【0009】
また、特許文献4に記載されている技術では、加熱用のヒーターを設ける必要があり、コスト増大や実装面積増大といった課題が生じる。
【0010】
また、特許文献5に記載されている技術は、電池を放電させることによる内部発熱を利用したものであり、放電による残存容量の低下が課題となる。
【0011】
なお、これまでは、電池温度が、充電が許される下限温度以下の低温時となった場合には充電停止とするのが一般的であり、下限温度以下の温度における充電制御回路の制御については深く議論されることは少なかった。
【0012】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、電池を電源として動作するCPUなどからなる負荷回路の動作条件に過大な制約を加えることなく、また、コストや実装面積を増大させることなく、さらに、残存容量の低下といった課題を生じることなく、低温時の電池温度を上昇させることができる充電制御回路、充電制御方法及び携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、所定の電源装置から供給される電力を入力とし、二次電池に対する充電電流と、前記二次電池を電源として動作する負荷回路に対する負荷電流とを制御して出力する充電制御回路であって、前記充電電流と前記負荷電流とを制御するためのトランジスタと、前記二次電池の温度が所定の温度より低い場合に前記トランジスタによって消費される電力を増加させるように前記トランジスタを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制御部によって、二次電池の温度が所定の温度より低い場合に、充電電流と負荷電流とを制御するトランジスタが消費する電力が増加するようにトランジスタが制御される。これによれば、少なくとも負荷回路で一定の電流が消費されていれば、負荷電流を供給されるためにトランジスタに流れる電流と、トランジスタによる電圧降下とによって一定の電力をトランジスタにおいて消費させることが可能となる。したがって、このトランジスタの消費電力増大による発熱を利用して二次電池の温度を上昇させることで、CPUなどの負荷回路の動作条件に大きな制約を加えることなく、また、コストや実装面積を増大させることなく、さらに、残存容量の低下といった課題を生じることなく、低温時の電池温度を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である充電制御回路11の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の充電制御回路11の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施形態である充電制御回路11aの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図3の充電制御回路11aの動作特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態としての充電制御回路11の構成の一例を示すブロック図である。図1に示した充電制御回路11は、入力制限部14、充電ドライバ部15、充電制御部16、及び電池温度モニタ部17を備えている。ただし、図1に示した充電制御回路11内には、入力電流Iin、入力電圧Vin、出力電流Iout、出力電圧Voutなどの電流及び電圧の検出回路などの図示していない他の回路も含まれている。
【0017】
本実施形態の充電制御回路11は、携帯電話機などの携帯端末30に搭載されているものとする。この携帯端末30には、充電制御回路11のほか、電池パック12と、電池パック12以外の回路である負荷回路22とが設けられている。
【0018】
電池パック12は、保護制御回路18、電池セル19及び温度検出部20を備えている。電池セル19は、リチウム二次電池などの二次電池である。保護制御回路18は、所定の条件が満たされた場合に電池セル19の充放電電流を遮断する制御を行う。保護制御回路18は、電池セル19の端子電圧や充放電電流を所定の基準値と比較する機能や、温度検出部20で検出された温度に応じた値と所定の基準値と比較をする機能を有している。そして、保護制御回路18は、各機能による比較の結果に基づいて、所定の過電圧、過電流、または高電池温度が検出された場合には電池セル19の充放電電流を遮断する。電池セル19の充放電流が流れる回路には、図示していないMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)スイッチが直列に挿入されている。保護制御回路18は、このMOSFETスイッチをオフすることで充放電電流を遮断する。また、温度検出部20は、サーミスタからなり、電池セル19の表面温度に応じて電気抵抗を変化させる。
【0019】
負荷回路12は、電池パック21(すなわち電池セル19)を電源として動作する負荷回路であって、携帯端末30内の電池パック21を除く他の電気負荷回路に対応するものである。この例では、負荷回路22がDC・DCコンバータ(直流電圧変換回路)23を備えている。そして、電池パック12との接続端子21がDC・DCコンバータ23の入力端子に接続され、端子21の電圧が所定の電圧に変換されて他の内部回路に供給されるようになっている。
【0020】
また、充電制御回路11には、ACアダプタ13が接続されている。ACアダプタ13は、商用交流電源を入力として、所定電圧の直流電力を出力する電源装置である。
【0021】
本実施形態において、充電制御回路11は、ACアダプタ13から供給される電力を入力とし、電池パック12内の電池セル19に対する充電電流I2と、電池セル19を電源として動作する負荷回路22に対する負荷電流I1とを制御して出力する回路である。
【0022】
入力制限部14は、MOSFET141を有し、充電制御部16からの指示に応じてこのMOSFET141を制御することで、充電ドライバ部15を介して出力される電圧Voutまたは電流Ioutの値を所望の値に制御する。MOSFET141の動作モードは、いわゆるリニアモードであってもよいし、スイッチングモード(スイッチモードとも呼ばれる)であってもよい。また、入力制限部14は、リニアモードと、スイッチングモードとを切り替え可能な構成であってもよい。ただし、スイッチングモードで動作させる場合には、入力制限部14内にMOSFET141の出力部に、チョークコイル、平滑キャパシタ、環流ダイオードなどの電子部品が設けられているものとする。
【0023】
入力制限部14は、リニアモードの場合、MOSFET141のドレイン・ソース間に所定の電圧降下を持たせることで、出力電圧Voutまたは出力電流Ioutを制御する。この場合、ドレイン・ソース間電圧と出力電流Ioutとを掛け合わせたものが、MOSFET141の主な消費電力(つまり電力損失)となる。他方、スイッチングモードの場合、入力制限部14は、MOSFET141を所定の周期でオン・オフ制御し、通流率を変化させることで、出力電圧Voutまたは出力電流Ioutを制御する。この場合、オン時のドレイン・ソース間電圧と入力電流Iinとを掛け合わせたものが、MOSFET141の主な消費電力となる。また、スイッチングモードの場合、入力制限部14は、MOSFET141のオン抵抗を変化させることで消費電力を制御することが可能である。
【0024】
充電ドライバ部15は、MOSFET151を有し、充電制御部16からの指示に応じてこのMOSFET151をオン又はオフ状態に制御することで、出力電流Ioutをオン又はオフ状態に制御する。また、充電ドライバ部15では、オン時のドレイン・ソース間電圧と出力電流Ioutとを掛け合わせたものが、MOSFET151の主な消費電力となる。充電電流部15は、MOSFET151のオン抵抗を変化させることで消費電力を制御することが可能となっている。
【0025】
充電制御部16は、通常の充電動作の出力制御に加え、本実施形態が特徴とする温度による出力制御を行う。通常の充電動作の出力制御では、既知のプリチャージ、急速充電、定電圧充電などの複数の動作モードによって出力電流Ioutや出力電圧Voutの制御が行われる。また、充電制御部16は、充電ドライバ部15のMOSFET151を用いて、過電圧保護、過電流保護、動作停止(すなわち出力遮断)などの制御も行う。他方、本実施形態が特徴とする温度による出力制御では、電池温度モニタ部17から出力される電池セル19の温度に応じた信号に基づいて、充電動作や充電停止の出力制御に加え、MOSFET141やMOSFET151のゲート・ソース間電圧を変化させることで、入力制限部14及び充電ドライバイ部15に対する消費電力の制御が行われる。
【0026】
充電制御部16は、例えば、内部にCPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)、発振回路などを備えて構成されていて、不揮発性メモリに格納されている所定のプログラムを実行することで上述したような出力制御を実行する。
【0027】
電池温度モニタ部17は、電池温度検出部12の出力を入力し、電池セル19の表面温度に応じた信号を出力する。
【0028】
次に、図2のフローチャートを参照して、図1に示した充電制御回路11の動作について説明する。図2に示す動作では、充電制御回路11が、電池温度モニタ部17により温度検出部20の信号を受けて電池温度を監視し、充電制御部16によって入力制限部14と充電ドライバ部15の出力制御を行う。この図2に示したフローは所定の周期で繰り返し実行される。また、充電制御回路11の出力動作が可能となる温度範囲の上限値がT2、下限値がT1であるとする。
【0029】
まず、充電制御部19が、電池温度モニタ部17によって温度検出部20の信号を受けて電池温度を検出する(ステップS1)。
【0030】
次に充電制御部19は、ステップS1で検出した電池温度と、動作温度上限値T2及び下限値T1との比較による判定処理を行う(ステップS2)。ステップS2の判定条件が満たされた場合(ステップS2の判定結果が「yes」の場合)、すなわち、電池温度が、動作温度上限値T2を超えていたか、または、動作温度下限値T1に達していなかった場合、充電制御部19は充電ドライバ部15のMOSFET151をオフすることで出力を停止する(ステップS3)。
【0031】
一方、ステップS2の判定条件が満たされなかった場合(ステップS2の判定結果が「no」の場合)、充電制御部19は、ステップS1で検出された電池温度と、所定温度との比較による判定処理を行う(ステップS3)。この所定温度は、入力制限部14や充電ドライバ部15の消費電力を増加させ、それによって電池温度を上昇させようとするか否かを決定する温度である。より具体的には、入力制限部14のMOSFET141によって消費される電力や充電ドライバ部15のMOSFET151によって消費される電力を増加させるようにMOSFET141やMOSFET151を制御するか否かを決定する温度である。この所定の温度は、充電制御回路11の動作特性(あるいは仕様)、電池パック12の特性などに応じて任意に設定することが可能である。
【0032】
ステップS4の判定において、電池温度が所定温度を超えていると判定された場合(ステップS4で「yes」の場合)、充電制御部16は、通常の充電制御を実行する(ステップS5)。ステップS5では、充電制御部16は、例えば通常の充電制御を行う場合の設定にしたがって入力制限部14及び充電ドライバ部15を制御する。上述したように、通常の充電動作の出力制御では、プリチャージ、急速充電、低電圧充電などの複数の動作モードによって出力電流Ioutや出力電圧Voutの制御が行われる。
【0033】
一方、ステップS4の判定において、電池温度が所定温度を超えていないと判定された場合(ステップS4で「no」の場合)、充電制御部16は、さらに、ステップS1で検出された電池温度が充電可能下限温度を以上であるか否かの判定処理を行う(ステップS6)。充電可能下限温度とは、それ未満の温度では電池パック12に対して充電電流を流すことが禁止される温度である。例えば電池セル19がリチウム二次電池である場合、充電可能下限温度は0℃程度であることが多い。
【0034】
ステップS6の判定において、電池温度が充電可能下限温度以上であると判定された場合(ステップS6で「yes」の場合)、充電制御部16は、入力制限部14や充電ドライバ部15のMOSFET141やMOSFET151の消費電力を増加させた上で通常と同様の充電制御を実行する(ステップS7)。すなわち、充電制御部16は、通常の充電動作の出力制御と同様に、プリチャージ、急速充電、低電圧充電などの複数の動作モードによって出力電流Ioutや出力電圧Voutの制御を行うのであるが、その際、入力制限部14や充電ドライバ部15の消費電力を増加させる制御が行われるのである。
【0035】
ステップS7では、入力制限部14がリニアモードで動作している場合、充電制御部16は、充電ドライバ部15のMOSFET151のゲート・ソース間電圧を変化させ、MOSFET151のオン抵抗を増加させる制御を行う。この場合、出力電流Ioutや出力電圧Voutの値は、入力制御部14によってステップS5での通常の制御と同様に制御される。したがって、充電動作の特性が低下することはない。しかしながら、充電ドライバ部15のMOSFET151における消費電力が増加し、よってMOSFET151の発熱量が通常の場合よりも増加することになる。
【0036】
他方、入力制限部14がスイッチングモードで動作している場合、ステップS7で充電制御部16は、次の2通りの手法で消費電力を増大させることができる。1つ目の手法は、リニアモードの場合と同様に、充電ドライバ部15のMOSFET151のゲート・ソース間電圧を変化させ、MOSFET151のオン抵抗を増加させる制御である。他方、2つめの手法は、入力制限部14のMOSFET141のオン時のゲート・ソース間電圧を増大させ、MOSFET141のオン抵抗を増加させる制御である。この場合、出力電流Ioutや出力電圧Voutの値は、入力制御部14によってステップS5での通常の制御と同様にして制御される。したがって、充電動作の特性が低下することはない。しかしながら、入力制限部14のMOSFET141における消費電力が増加し、したがってMOSFET141の発熱量が通常の場合よりも増加することになる。また、この2つ目の手法では、MOSFET141のオン抵抗を増加させる制御に、MOSFET151のオン抵抗を増加させる制御を組み合わせるようにしてもよい。
【0037】
一方、ステップS6の判定において、電池温度が充電可能下限温度以上ではないと判定された場合(ステップS6で「no」の場合)、充電制御部16は、電池パック12への充電電流を零にした上で負荷回路22に対して負荷電流(図1の電流I1)を供給するための制御を実行する。この実施形態では、充電制御部16が、まず、電池パック12の端子電圧である電池電圧Vbatを取得し(ステップS8)、次に、出力電圧Voutを電池電圧Vbatとほぼ等しくなるようにする制御を行う(ステップS9)。また、同時に、ステップS7の動作について説明したように、入力制限部14や充電ドライバ部15の消費電力を増加させる制御も行うようにする。ステップS9で出力電圧Voutを電池電圧Vbatがほぼ等しくなるよう制御された場合、図1において、電池セル19へ流れ込む電流(すなわち充電電流)I2はほぼ零となる。出力電圧Voutと電池電圧Vbatが等しい場合、負荷電流I1は、出力電流Ioutと電池セル12からの放電電流I2(ただし矢印の方向は図示の場合と逆)を足し合わせたものとなる。この場合に、充電制御回路11または電池パック12から電流を出力した場合の出力特性(主に出力インピーダンスの特性)に合わせて出力電圧Voutがわずかに電池電圧Vbatを上回るように制御することで、負荷電流I1=出力電流Ioutの関係とすることが可能である。このようにすることで、電池パック12へ充電電流を流し込まず、かつ、電池パック12から放電電流を出力させずに、充電制御回路11から負荷電流I1を供給しつつ、入力制限部141や充電ドライバ部151の消費電力による発熱によって、電池パック12の温度を上昇させることが可能となる。
【0038】
なお、ステップS8での電池電圧Vbatの取得は、例えば、充電ドライバ部15のMOSFET151を短時間オフし、その間に出力端子の電圧Voutを検出することで行うことができる。この場合、MOSFET151をオフすることで出力電流Ioutは零となるので、電圧Voutと電池電圧Vbatは一致することになる。また、ステップS8とステップS9とに代わる他の手法としては、負荷回路22の特性に基づいて負荷電流I1を推定し、出力電流Ioutが負荷電流I1と等しくなるように出力Voutの値を制御することが考えられる。この場合にも、I1=IoutすなわちI2=0とすることができる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、MOSFET141やMOSFET151の発熱を電池パック12あるいは電池セル19に対して伝導しやすくなるように、MOSFET141やMOSFET151を配置するようにすることが望ましい。例えば、電池セル19の真裏に充電制御回路11を配置するなどすると、低温時の大きな発熱量を効率的に電池セル19に伝達することが可能となる。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、充電制御部16(制御部)によって、電池セル19(二次電池)の温度が所定の温度より低い場合に(ステップS4で「no」の場合に)、充電電流I2と負荷電流I1とを制御するMOSFET141やMOSFET151(トランジスタ)が消費する電力が増加するようにMOSFET141やMOSFET151が制御される。これによれば、少なくとも負荷回路22で一定の電流が消費されていれば、負荷電流I1を供給されるためにMOSFET141やMOSFET151に流れる電流と、MOSFET141やMOSFET151による電圧降下とによって一定の電力をMOSFET141やMOSFET151において消費させることが可能となる。したがって、MOSFET141やMOSFET151の消費電力増大による発熱を利用して電池セル19の温度を上昇させることが可能となり、CPUなどの負荷回路の動作条件に大きな制約を加えることなく、また、コストや実装面積を増大させることなく、さらに、残存容量の低下といった課題を生じることなく、低温時の電池温度を上昇させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、電池セル19の温度を積極的に上昇させることが可能となり、電池低温度から常温付近まで電池温度を短時間で上昇させることで、放電温度特性の良好な温度範囲にて充電もしくは負荷回路22への電源供給が行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態によれば、携帯機器においてリチウム二次電池などの二次電池を低温状態にて充電する場合に、充電制御回路において積極的に回路を発熱させることで電池温度の上昇を図り、一般的には充電禁止とされていた低温度充電帯域の実質的な拡大、及びリチウム二次電池などの二次電池の放電温度特性の改善が可能となる。
【0043】
次に、図3及び図4を参照して、図1及び図2を参照して説明した上記の実施形態の変形例について説明する。なお、図3において図1と同一の構成には同一の符号を用い、説明を省略する。
【0044】
図3において、携帯機器30aが図1の携帯機器30に、充電制御回路11aが図1の充電制御回路11に、そして、充電制御部16aが図1の充電制御部16にそれぞれ対応している。また、図3の充電制御回路11aには、新たに充電電流制御部24が設けられている。充電電流制御部24は、充電ドライバ部15の出力と、電池パック12との間に設けられ、電池パック12への充電電流I2を制御する。なお、電池パック12からの放電電流は充電電流制御部24を介して負荷回路22へ供給されるようになっている。
【0045】
充電電流制御部24は、MOSFET241を有し、充電制御部16aからの指示に応じてこのMOSFET241を制御することで、電池パック12の充電電流I2を制御する。すなわち、図3の充電制御回路11aでは、電池パック12への充電電流I2と、負荷回路22へ供給される負荷電流I1とを独立して制御することが可能である。この構成によれば、例えば、充電ドライバ部15の出力電圧Voutが電池パック12の端子電圧よりも高い場合(すなわち出力電圧Voutをそのまま電池パック12に印加してしまうと充電電流I2が流れてしまうような場合)であっても、充電電流制御部24のMOSFET241をオフすることで充電電流I2を零にすることが可能となる。この構成によれば、充電電流I2を零にしなければならないような状態(例えば0℃以下の状態)でも、入力制限部14や充電ドライバ部15による消費電力を比較的自由に制御することが可能となる。なお、MOSFET241を、他のMOSFET141やMOSFET151と同様に発熱源となるように制御することも可能である。
【0046】
図4に、充電制御回路11aの発熱量と電池温度との関係の一例を模式的に表した。横軸が電池温度、縦軸が発熱量である。充電制御回路11aの出力動作が可能となる温度範囲の上限値をT2、下限値をT1としている。この例では、T1〜0℃の発熱量W1を一定量としている。また、発熱量W2は充電制御回路11aにおける最小の電力損失に対応している。なお、T1〜0℃の発熱量W1は、一定とせず、変化させてもよい。例えば、T1〜−10℃で発熱量を増やし、−10℃〜0℃では発熱量をやや減らすというようにすることなどが可能である。
【0047】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されず、例えば、所定温度以下の出力制御において、MOSFET141やMOSFET151の消費電力を一定とせず、電池温度に応じて徐々に変化させる変更などが適宜可能である。
【0048】
なお、本実施の形態に係る携帯端末は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0049】
また、各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、検出対象物の形状情報の推定値を算出する処理を行ってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0050】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
11、11a 充電制御回路
12 電池パック
13 ACアダプタ
14 入力制限部
15 充電ドライバ部
16 充電制御部
17 電池温度モニタ部
19 電池セル
20 温度検出部
22 負荷回路
24 充電制御回路
30、30a 携帯機器
141、151、242 MOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電源装置から供給される電力を入力とし、二次電池に対する充電電流と、前記二次電池を電源として動作する負荷回路に対する負荷電流とを制御して出力する充電制御回路であって、
前記充電電流と前記負荷電流とを制御するためのトランジスタと、
前記二次電池の温度が所定の温度より低い場合に前記トランジスタによって消費される電力を増加させるように前記トランジスタを制御する制御部と
を備えることを特徴とする充電制御回路。
【請求項2】
前記トランジスタの発熱を前記二次電池に対して伝導しやすくなるように前記トランジスタが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御回路。
【請求項3】
前記トランジスタによって消費される電力が、前記負荷電流を供給されるために前記トランジスタに流れる電流と、前記トランジスタによる電圧降下とによって発生するものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の充電制御回路。
【請求項4】
所定の電源装置から供給される電力を入力とし、二次電池に対する充電電流と、前記二次電池を電源として動作する負荷回路に対する負荷電流とを所定の回路によって出力させる充電制御方法であって、
前記二次電池の温度を監視し、
前記二次電池の温度が所定の温度より低い場合に、前記充電電流と前記負荷電流とを制御するためのトランジスタによって消費される電力を増加させるように前記トランジスタを制御する
ことを特徴とする充電制御方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電制御回路と、
前記負荷回路と
を備えることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−21752(P2013−21752A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150802(P2011−150802)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】