説明

光−電気装置における導電性ポリマー組成物

本発明は、固体ポリマー電解質中の導電性ポリマーから構成される導電性ポリマー組成物を提供する。特に、前記導電性ポリマーは導電性ポリマーイオンを含み、前記導電性ポリマー組成物はさらに対イオンを含むことが好ましい。このような導電性ポリマー組成物を光-電気装置に適用することによって、従来の装置に替わる良好な装置特性、寿命及び製造の容易性を有する提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー組成物及び導電性ポリマー組成物を含む光−電気装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
光−電気装置の1つの種類は、発光又は検出のための有機材料を使用するものである。これら装置の基本構造は、負電荷輸送体(電子)を有機層へ注入するカソードと正電荷(正孔)を有機層へ注入するアノードに挟まれた発光有機層、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)又はポリフルオレンの薄膜である。電子及び正孔は有機層で結合して光子を生成する。WO90/13148においては、有機発光材料はポリマーである。米国特許4,539,507号明細書においては、有機発光材料は、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)のような低分子材料として知られる種類のものである。実用装置においては、電極の1つは透明であり、光子が装置から放出するのを許容する。
【0003】
典型的な有機発光装置(OLED)は、インジウム錫酸化物(ITO)のような透明なアノードで被覆されたガラス又はプラスチック基板上に形成される。少なくとも1つの電子発光有機材料の薄膜層は第1の電極を覆う。最後に、電子発光有機材料層をカソードが覆う。カソードは、アルミニウムのような単一層、カルシウム及びアルミニウムのような複数の層を含むことができる。
【0004】
駆動に際しては、正孔はアノードを通じて装置に注入され、電子はカソードを通じて装置に注入される。正孔と電子は有機電子発光層で結合して励起子を形成し、次いで放射性崩壊して光を放出する。
【0005】
これらの装置はディスプレイに大きなポテンシャルを有する。しかしながら、重要な問題が存在する。一つは装置を効率化することであり、特に、外部電力効率及びその外部量子効率で測定される効率化である。もう一つは、ピーク効率が得られる電圧を最適化(例えば、低減化)することである。他は、装置の電圧特性の時間の経過に対する安定化である。さらに、他は、装置の寿命の増加である。
【0006】
この目的のため、これらの問題の1又は2以上を解決するために上記の基本的な装置構造の多くの改良がなされてきた。
【0007】
1つの改良は、発光層と電極の1つの間の導電性ポリマー層の供給である。導電性ポリマー層が、立ち上がり電圧、低電圧での輝度、効率、装置の寿命と安定性を改良できることが発見された。これらの利点を達成するために、これら導電性ポリマー層は10オーム/□未満のシート抵抗を有し、導電率はポリマー層のドープによって制御される。いくつかの装置構成において、あまり高い導電性を有しないことが優位であり得る。例えば、装置に複数の電極が提供され全ての電極の上を1つの連続した導電性ポリマーが覆うとき、非常に高い導電率が側面方向の導電性と電極間の短絡をもたらす。
【0008】
導電性ポリマー層は、正孔又は電子の注入及び/又は正孔又は電子の遮断を促進するために、適切な仕事関数を有するように選択される。このように、2つの重要な電気的特徴がある。すなわち、ポリマー組成物の全体的な導電性及びポリマー組成物の仕事関数である。この組成物の安定性及び装置の他の成分との反応性も、実用的な装置の許容される寿命を提供する際に重要である。この組成物のプロセス性は製造の容易化のために重要である。
【0009】
アノードと発光有機層の間の正孔注入層として使用するための適切な導電性ポリマーの1つの例は、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)である(EP0,686,662参照)。この組成物は、中間イオンポテンシャル(アノードのイオンポテンシャルと発光体のイオンポテンシャルの中間)値として4.8eVよりわずかに大きい値を提供し、これは、光−電気装置の隣接層の有機発光材料又は正孔輸送材料のような材料のHOMOレベルにアノードから注入された正孔が到達するのを助ける。PEDT−PSSは、より堅い層を提供するために架橋を生成するためにエポキシ−シランを含むことができる。典型的には、装置のPEDOT/PSS層の厚さは約50nmである。この層の導電性は層の厚さに依存する。
【0010】
PEDOT及びPSSの化学構造は、下記の式1ないし4に示される。
【化1】

【0011】
PEDOT−PSS組成物において、PEDOT酸化物は正孔輸送体として働くポリマーのラジカルカチオンを製造する。PSSは、PEDOT上の電荷を安定化するための対イオンとして働くポリマーアニオンを生成するためにイオン化する。以前は、PEDOT上の電荷を安定化するために小さな対イオンが使用されてきた。しかしながら、エレクトロマグネティック場にさらされるとき、小さなイオンはシステムを貫通して移動し、性能の劣化をもたらす装置の局地的領域/境界面における電荷分離及び電荷生成を引き起こすことが発見された。対イオンの移動は、また、隣接する層の材料との有害な反応をもたらす。大きな対イオン、例えば、PSSのようなポリマー対イオンは、装置のスイッチが入ったとき光−電気装置を貫通して拡散しないので、有利であることが分かった。
【0012】
PEDOT:PSSは水に可溶性でしたがって、溶液プロセスが可能である。ITOアノードと発光層の間へのPEDOT:PSSの提供は、ITOから発光層への正孔に注入を増加させ、ITOアノード表面を平坦化し、局地的な電流の短絡を防ぎ、効率的に電荷注入のためのエネルギー差異を形成する。
【0013】
装置の層のPEDOT:PSSの比率の変化は、装置の機能特性を十分に変化させることがわかった。
【0014】
PEDOT:PSSの比率1:2.5は、溶液プロセス性の安定をもたらす。すなわちPSSがこの比率以上の材料は溶液中にとどまる。低い比率になると、溶液から溶出する。理論に拘束されないならば、PEDOTのラジカルカチオンは、PEDOTラジカルカチオンを囲むスルホネート対イオン及びミセル型の構造を形成する結果、溶液中で安定化されると考えられる。スルホネート対イオンはPEDOTラジカルカチオンより親水性であり、PEDOTラジカルラジカルカチオンの懸濁液の形成を助ける。その結果、溶液から溶出しないで長い鎖(高い分子量)のPEDOT分子が形成される。さらに、長いPEDOT分子は酸化しやすく、良好な正孔輸送体を生成する。したがって、スルホネート対イオンは、PEDOTラジカルカチオンを安定化することによって正孔輸送を助ける。しかしながら、1:2.5の比率では導電率は非常に高く、このような材料は、前述したように、例えば、装置の電極線間において短絡を形成するので、光−電気装置の構造において使用されることはできない。
【0015】
実際、過剰なPSSの使用は装置特性を改良することができ、特に、寿命を延ばすことができる。さらに、過剰なPSSは組成物をインクジェット印刷するのを容易にする。「過剰なPSS」とは、PEDOTが溶液から溶出するのを防止するのに必要以上のものという意味である。したがって、PEDOT:PSS比率が1:20のような過剰なPSSが装置の駆動に有益である。理論に拘束されないならば、本発明の発明者は、過剰なPSSを使用するとき観察される改良された装置特性のいくつかの説明を提案する。第一には、導電性に関するものである。
【0016】
PSSの含有は組成物の導電性に影響を与える。この点において、本発明の発明者は、良好な正孔輸送を提供するのに重要な2つの種類の導電性がある。すなわち、イオン導伝性(例えば、Hイオンによる)及びラジカルカチオン(正孔)導伝性(例えば、PEDOTにより)である。理論に拘束されないならば、本発明の発明者は過剰なPSSは両タイプの導伝性に貢献すると信じている。水素イオンは、イオン導伝性により組成物の導電性に貢献すると思われる。また、上述したように、スルホネートはPEDOTラジカルカチオンを安定化し、正孔輸送を促進する。前者の影響(イオン導伝性)は、過剰で増加したイオン導伝性を有するPSSの量に依存する。ラジカルカチオンを安定化するに十分なPSSが存在するとき影響は飽和するので、後者の影響(正孔導伝性)はPSSの量に敏感ではない。
【0017】
過剰なPSSを使用するときの装置特性の改良を説明する他の可能なメカニズムは、PSSはPEDOTより親水性であることである。したがって、過剰なPSSは組成物をより親水性にして隣接するポリマー層との混合が生じにくくするので、過剰なPSSは隣接するポリマー層との薄膜の一様性を増加させる。
【0018】
上記から、装置の製造の容易化及び良好な特性及び寿命を有する装置を製造するために、過剰なPSSを供給すること有利であることが明らかである。しかしながら、装置の特性及び寿命をさらに改良し、装置プロセスをより容易にかつ安価にする要望は常にある。したがって、過剰なPSSを有するPEDOT−PSSに替わるものがひとつの方法である。理論に拘束されないならば、上述のPEDOT−PSS系を使用する装置の寿命の1つのあり得る限界は、このような過剰なPSSに提供が組成物を強い酸性にしてしまうことである。これはいくつかの問題を引き起こす。例えば、ITOと接触する強酸の高い濃度はITOを腐食して、インジウム、錫及び酸素成分を開放してPEDOTへの混入をも引き起こし、その上を覆う発光ポリマーを劣化させる。さらに、酸は発光ポリマーと相互作用して、装置特性に決定的な電荷分離をもたらす。
【0019】
PEDOT:PSSは溶液プロセス可能なので、PEDOT:PSSの蒸着及びインクジェット印刷を使用した本発明のこれの代替を可能にすることも望まれる。インクジェット印刷の関心の重要な理由は、スケーラビリティと適用性である。前者は、大きな大きさの基板をパターン化することを可能にし、後者は、基板上に印刷される点の画像はソフトウェアによって決められるので、ひとつの製品から他の製品に変えること要する用具のコストが無視できる点である。
【0020】
インクジェット印刷を使用した有機発光ダイオード(OLED)の材料の蒸着は、多くの文献に記載されている。例えば、T.R.Hebner,C.C.Wu,D.Marcy,M.H.Lu and J.C. Strum,“Ink−jet Printing of doped Polymers for Organic Light Emittimg Devices”,Applied Physics Letters,Vol.72,Mo.5,pp.519−521,1998;Y.Yang,“Review of Recent Progress on Polymer Electroliminescent Devices,”SPIE Photonics West:Optoelecronics ’98, Conf.3279,San Jose,Jan.,1998;EP O 880 303;及び“Ink−Jet Printing of Polymer Light−Emitting Devices”,Paul C.Duineveld,Margreet M.de Kok,Michael Buechel,Aad H.Sempel,Kees A.H.Mutsaers,Peter van de Weijer,Ivo G.J.Camps,Ton J.M.van den Biggelaar,Jan−Eric J.M.Rubingh and Eliav I.Haskal,Organic Light−Emitting Materials and Devices V,Zakya H.Kafafi,Editor,Proceedings of SPIE Vol.4464(2002)。インクジェット印刷は低分子及び高分子LEDの材料の蒸着に使用することができる。
【0021】
0.5%〜4%の溶解した材料と共に、有機電子材料を蒸着するために揮発性の溶媒が適用される。これは、数秒から数分の間の時間を要し、最初の「インク」容量に比較して相対的に薄い薄膜をもたらす。乾燥が始まる前に、しばしば複数の液滴が蒸着され、乾燥した材料の十分な厚さを提供する。Litrex Corporation of California,USAの機械のような正確なインクジェットプリンターが使用される。適切なプリントヘッドはXaar of Cambridge,UK and Spectra,Inc.of NH,USAから市販されている。
【0022】
したがって、好ましくは、良好な装置特性、寿命及び製造の容易性を有する前述の系の代替を提供することが望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の側面は、固体高分子電解質の導電性ポリマーを含む導電性ポリマー組成物を提供する。
【0024】
導電性ポリマーはドープされたポリマーを含むことができる。
【0025】
好ましくは、導電性ポリマーは導電性ポリマーイオンを有し、導電性ポリマー組成物はさらに対イオンを有する。導電性ポリマーイオンは良好な導電性を有し、対イオンは導電性ポリマーイオンを安定化するのを助ける。
【0026】
好ましくは、対イオンはポリマーである、これは、使用において対イオンが装置から拡散するのを防ぐ。導電性ポリマーイオンの安定化のためには、対イオンが位置にとどまることは有利である。
【0027】
好ましくは、導電性ポリマーイオンはカチオンであり、対イオンはアニオンである。導電性ポリマーカチオンは正孔輸送体として有用であることが発見された。しかしながら、導電性ポリマー組成物は系の極性が反転されている電子輸送体として使用できることは明らかである。
【0028】
好ましくは、対イオンは、化合物が効果的に完全にイオン化されるように高い解離定数を有する化合物のアニオンである。高い解離定数を有する化合物の例としては強酸及び塩が挙げられる。しかしながら、対イオンは限定されず、対イオンは、化合物が完全にイオン化されないように、低い解離定数を有する化合物のアニオン又はカチオン、あるいは高い解離定数を有する化合物のカチオンであることができる。対イオンはポリマー電解質スルホン酸のアニオンであり得る。導電性ポリマーはポリマー電解質ジオキシチオフェンのカチオンであることができる。
【0029】
対イオン及び導電性イオンの供給源としてサンではなく塩を使用することは、本発明の出願人による下記の実施例によって支持される。
【0030】
第一に、PSS中の水素は大きなカチオン(第4級アンモニウム塩Q)によって取替えられ、下記に示される構造を得る。
【化2】

【0031】
PSS中の水素イオンの大きなイオンとの置換は導電性の大きな低下をもたらすことがわかった。第二に、PSS中の水素は小さなカチオン(Na)と取り替えられた。PSS中の水素イオンのNaOHを使用したNaのような小さなイオンとの置換は、このような導電性の大きな低下をもたらさないことがわかった。これは、小さなイオンがより移動しやすい状態でカチオンがイオン導電性に寄与していることを示唆している。したがって、カチオン(又は電子注入のためのアニオン)及び/又は塩又は他の化合物の解離定数が、要求されるイオン導電性の量に応じて選択されながら、塩(又は他の解離する化合物)が酸の位置に使用され得ることが明らかである。
【0032】
上記で検討した第2の実施例において、PSS中の水素イオンがNaOHを使用したNa+により置換されるときに性能の低下が観察され、対イオンの移動性の低下が予測されることは注目すべきである。理論に拘束されないならば、本発明の発明者は、NaOHからのOHイオンはPEDOTラジカルカチオンと相互作用し、正孔輸送を禁止すると考えている。
【0033】
したがって、(例えば、酸が部分的にだけ中性されるように)NaOHの量が減少すると、Naイオンはイオン導電性に参加できるようになり、OHイオンの量は正孔の輸送を禁じるほど高くない。したがって、酸と塩基の組合せが対イオン及び導電性イオンの供給源として使用されることができる。酸及び/又は塩基は、ラジカルイオン導電性に悪い副作用を与えるのを避けるために、部分的に中性化される。
【0034】
導電性ポリマーイオン:対イオンの比率は1:10未満であり、好ましくは1:5未満、より好ましくは、1:2,5又は1:2以下である。
【0035】
好ましくは、導電性ポリマー及び/又は固体電解質は水に可溶性である、これは、この組成物の溶液プロセスを容易にする。
【0036】
好ましくは、固体電解質はポリマーマトリックス及びイオンを含む。これらイオンは、例えば、塩又は酸から得られる。好ましくは、このイオンは高い解離定数を有する種類のイオンである、解離定数は導電性を調整するために選ばれる。イオンはポリマーマトリックスを貫通して拡散し、イオン導電性を提供する。マトリックス及びイオンは導電性を調整するために選ばれる。導電性ポリマーがドープされたポリマーを含む実施例においては、ドープ材はイオンを含む。すなわち、ドープ材を使用して導電性ポリマーを形成する場合、イオン導電性に参加することができるイオンが必然的に形成される。あるいは、又は追加的に、導電性ポリマーを安定化する対イオンの形成において、イオン導電性に参加することができるイオンが必然的に形成される。
【0037】
好ましくは、塩は水に可溶性である。
【0038】
塩は、1族金属、2族金属、d−ブロック金属、ランタニド及びアクチニドを含む塩であることができる。しかしながら、カチオンは小さく、アニオンは大きいことが好ましい。したがって、好ましい塩は、1族金属及び2族金属のものであり、好ましくは、ナトリウム又はリチウムであり、リチウムが最も好ましい。リチウム塩の例は、ハロゲン化リチウム及び下記に化学式が示されるリチウムトリフリミドである。
【化3】

【0039】
塩は、カチオンの移動性が大きくアニオンの移動性が小さくなるように、小さいカチオンと大きいアニオンから構成されることができる。これは、装置の特性に悪影響を及ぼすアニオンのアノードへの拡散を防止しつつ、カチオンによってイオン導電性の適切なレベルを許容する。特に、アニオンを効果的に固定することにより、装置のスイッチが切れるときにカチオンは最初の位置に引き戻され、装置内での塩の移動及び偏在を防止する。
【0040】
好ましくは、ポリマーマトリックスは架橋されている。架橋マトリックスは、装置における好ましくない種の拡散を防止する。さらに、架橋マトリックスは、装置内の塩に含まれるアニオンの拡散を防ぐのに有利である。架橋マトリックスが使用される場合、アニオンは大きい必要はない、さらに、架橋は層をより堅固にし、その上に相互の層が拡散及び混合することなく他の層を蒸着することを可能にする。固体電解質の好ましい例としては、フェニレングリコールが挙げられる。他の例としては、有機イオン交換膜、ポリピロール酸及び第4級ポリピリジン及びポリアミン、並びにアミンのポリマー塩が挙げられる。
【0041】
好ましくは、導電性ポリマーは、5.5eV未満。より好ましくは、4.8〜5.5eVの範囲の仕事関数を有する。これは、アノードから隣接する半導体正孔輸送及び/又は発光体への正孔の注入を許容する。
【0042】
本発明の他の側面は、上述した導電性ポリマーを含む電気装置、好ましくは、光−電子装置を提供する。好ましくは、電気装置は、アノード、カソード、前記アノードと前記カソードの間の有機半導体層を含む。導電性ポリマー組成物はアノードとカソードの間の層に供給される、導電性ポリマー組成物が正孔材料として使用されるとき、導電性ポリマー組成物を含む層は好ましくはアノードと有機半導体層の間に位置する。導電性ポリマー組成物が電子輸送材料として使用されるとき、導電性ポリマー組成物を含む層は好ましくはカソードと有機半導体層の間又は有機半導体層中に配置される。有機半導体層は好ましくは発光性である。アノードは、好ましくはITOを含む。
【0043】
有機半導体層は1又は2以上の正孔輸送体、電子輸送体及び発光材料を含む。1又は2以上の他の有機半導体層はアノードとカソードの間に供給される。アノードとカソードの1又は2は独立して導電性ポリマー組成物を含むことができる。
【0044】
本発明の他の側面は、導電性ポリマー組成物がスピンコート又はインクジェット印刷によって蒸着される、本明細書に記載した電気装置の製造方法を提供する。導電性ポリマー組成物は水溶性溶液で蒸着される。組成物は電解質を架橋するように蒸着後加熱される。この過熱工程は、次の層の蒸着前に行われる。
【0045】
本発明は、公知の導電性ポリマー組成物中の過剰の強酸の提供の代替を提供する。特に、本発明の実施例は、公知の過剰PSSを有するPEDOT−PSS組成物の提供の代替を提供し、ある場合には、PEDOT−PSS系全体が取り替えられる。
【0046】
本発明の実施態様によれば、PEDOT−PSS中の過剰なPSSのみを固体電解質に取り替えることによって、導電性が調整される(ホスト及びイオン塩の種類と濃度を選択することによって)。これは、PSS濃度の減少による装置の劣化速度を減らすことができる。
【0047】
1つの実施態様において、PEDOT、PSS及び架橋性ポリエチレングリコールがイオンドープ材(塩)を有する水溶液中のモノマーから合成される。他の実施態様において、PEDOT:PSSが架橋性ポリエチレングリコール及びイオンドープ材を含む溶液において合成される。他の実施態様において、PEDOT:PSSが合成され、次いで架橋性ポリエチレングリコール及びイオンドープ材と混合される。
【0048】
PEDOT:PSSが約1:2.5の低比率が使用され得る。しかしながら、ポリエチレングリコールが存在するため系の溶液プロセス性が変えられるので、低い濃度(1:2.5未満、1:2.0未満、1:1.5以下又は1:1.2以下)が可能となる。この組成物は、導電性において公知のPEDOT:PSSと同様となるように選択される。次いで、ポリエチレングリコールは、イオンドープ材として固体電解質を供給するために、例えば、加熱によって架橋される。適切なドープ材としては、ハロゲン化リチウム又はリチウムtリフリミドが挙げられる。このプロセスは、下記にように要約される。
【化4】

【0049】
この実施例は、任意に架橋されるポリエチレングリコールマトリックスを提供する。架橋はマトリックスのTgを改良し、マトリックスをより強固にし、次の層と反応しない。PEGは非常に安定な媒介であり、水溶性であり、固体電解質を提供するようにカチオン(部分的にリチウム)と非常に効果的にキレート化合物となる。したがって、PEGは塩と混合されて導電性マトリックスを提供する。リチウムは効果的にPEGにより溶解されマトリックス内を移動することができる。
【0050】
リチウムイオン−PEGマトリックスは、過剰な水素イオンを必要とせずにイオン導伝を支持する。したがって、ITOの腐食によるITOの混入によってPEDOTの劣化の問題を生じることなく、固体状態のポリマー電解質は、水素イオンの移動を代理する。すなわち、イオン導伝性は水素イオンの導伝に頼ることなく制御される。むしろ、代替のイオン導伝が提供される。したがって、本発明の実施例は、過剰なPSSを必要とすることなく過剰なPSSを有するPEDT:PSSの導伝性と同様となる。ラジカル伝導を保持するためにポリマーカチオンを安定化するに十分なPSSだけが必要とされる。イオン伝導を提供する過剰なPSSは固体電解質によって取り替えられる。いくつかの実施態様においては、全てのPSSが取り替えられる。PEDOTに対する代替の導電性ポリマーも検討される。本発明の上記の記載はPEDOTにたいする対イオンとしてPSSを引用するが、PSSの代わりに代替のポリアニオンも使用され得る。例えば、WO04/029128は、PEDOTと共に使用するフッ化スルホン酸Nafion(登録商標)を開示する。
【0051】
現在提案されている導電性ポリマー組成物は、これによって導電性を変えるマトリックスと塩イオンの間の相互作用の強さを変えるために、マトリックス及び/又は塩を変えることによって、導電性を調整することができる。しかしながら、マトリックスとして使用され得る材料の種類を限定することができるようにマトリックスは水溶性であることが望ましい。
【0052】
本発明の他の側面によれば、個体ポリマー電解質中の導電性ポリマーを含む導電性ポリマーが、インクジェット印刷技術によって蒸着に特に適する形で提供される。
【0053】
このさらなる側面において、固体電解質はポリエチレングリコールを含むことができる。本発明の発明者は、ポリエチレングリコールの添加は、例えば、インクジェットのディスペンサーの目詰まりを軽くすることによって、導電性ポリマーのインクジェット印刷を助けることを発見した。理論に拘束されないならば、ポリエチレングリコールの極性のためにこの効果は生じる。さらに、インクジェットの特性は、導電性ポリマーの得られた粘度のような特性を制御する能力によって促進される。
【0054】
本組成物の粘度は2ないし30mPa、4ないし12mPA,より好ましくは6ないし8mPaの範囲,最も好ましくは、29℃において約8mPaである。
【0055】
さらに、本組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、体積で、0.1〜5%、0.5〜3%又は1〜2%の範囲で存在する。典型的な界面活性剤はグリコールエステルである。
【0056】
他の側面において、本発明は、導電性ポリマー及び非イオン性、不揮発性、極性の希釈材を含む導電性ポリマー組成物を提供する。
【0057】
好ましくは、導電性ポリマーは、PEDOT及び電荷バランス対イオン、好ましくはポリアニオン、より好ましくはポリ(スルホン酸)を含む。
【0058】
好ましくは、希釈剤は、ポリエーテル、より好ましくは任意に置換されるポリ(エチレングリコール)を含む。
【0059】
希釈剤の極性は、極性溶媒、例えば、水に希釈剤を可溶性に変える。
【0060】
希釈剤は酸基、特に、カルボン酸基又はスルホン酸基を含まない。
【0061】
好ましくは、希釈剤は、pH>2、好ましくは、pH>3である。
【0062】
希釈剤は、組成物の溶液プロセス性と低効率を改良する働きをする。好ましくは、この組成物の抵抗率は、1Ωcmから10Ωcmまでの範囲である。
【0063】
使用においては、この組成物の水溶液のような溶液が蒸着され、次いで溶媒が蒸発される。溶媒の蒸発過程において希釈剤は蒸発せず、また、したがって「不揮発性」という用語はそのような意味で解釈されるべきである。
【0064】
ポリエチレングリコールの添加は導電性ポリマーの抵抗率を望ましい値に調整することを可能にする。好ましくは、分子量250を有するポリエチレングリコールが、重量濃度で0〜3%重量、好ましくは1〜3%、より好ましくは1〜2%、最も好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.25%未満の範囲でPEDOT組成物に加えられる。
【0065】
ポリエチレングリコールは好ましくは平均分子量(Mn)250を有するポリエチレングリコールが好ましい。1K及び2Kのポリエチレングリコールは、より厚く、より年度の高い溶液として製造され、インクジェット印刷の応用に適する。
【0066】
ポリエチレングリコールは、好ましくはポリエチレングリコールジメチルエーテル(すなわち、メトキシ基による末端キャップ化されている)であり、PEDOT:PSSの多様な比率のPEDOTの多様な組成物に添加される。PEDOT:PSSの多様な比率のPEDOTの多様な組成物は、HC Starkから入手可能であり、ポリエチレングリコールの多様な組成物はSigma−Aldrichから入手可能である。
【0067】
図3を参照すると、抵抗率(Ω/cm)に対する250ポリエチレングリコールの重量濃度の%のグラフが示されている。このグラフは、本発明の導電性ポリマー組成物に加えられるポリエチレングリコールの濃度が約1%に達するまで、導電性ポリマーの抵抗率は増加し、そこで抵抗率は急激に減少することを示している。
【0068】
250ポリエチレングリコールの結果は下記の表1に示されている。
【表1】

【0069】
PEDOT:PSS組成物内の0.25K PEG、1K PEG及び2K PEGの結果は下記の表2に示されている。
【表2】

【0070】
本発明の他の側面は、ポリエチレングリコールを含むPEDOT組成物を提供する。PEDOT組成物は、対イオン、好ましくはPSSを含むことができる。
【0071】
好ましくは、ポリエチレングリコールの重量濃度は、PEDOT組成物の抵抗率が1Ωcmより大きく、10Ωcm未満となるように提供される。
【0072】
また、組成物の抵抗率が1Ωcmより大きく、10Ωcm未満となるようなポリエチレングリコールの重量濃度を有するPEDOT組成物のインクジェット印刷を含む光−電気装置の製造方法が提供される。
【0073】
さらに、次の工程を含む有機発光装置の製造方法も提供される。すなわち、第1電極層及び複数のウェルを規定するバンク構造を有する基板を提供する工程、前記第1電極を覆う導電性有機層を蒸着する工程、前記有機発光層を覆う第2電極を蒸着する工程であり、前記導電性有機層は上記の組成物をインクジェット印刷することにより蒸着される。
【0074】
本発明の導電性ポリマー組成物は、電気装置、特に、光−電気装置の正孔注入材料、電子輸送材料、又はもし組成物が高い導電率に調整されるならばアノードとして使用されることができる。好ましい光−電気装置は、有機発光装置(OLED)を有する。本発明の導電性ポリマー組成物は静電容量及びレンズの非静電コーティングに使用されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
図1に示される装置は、透明ガラス又はプラスチック基板1、インジウム錫酸化物のアノード2及びカソード4を有する。電子発光層3はアノード2とカソード4の間に提供される。
【0076】
電荷輸送、電荷注入又は電荷遮断層のような追加の層がアノード2とカソード3の間に配置される。
【0077】
本発明の実施態様によれば、導電性ポリマー組成物の導電性正孔輸送層が、アノードから半導体ポリマー層への正孔の注入を促進するために、アノード2と電子発光層3の間に配置される。
【0078】
正孔輸送層は、比率1:2.5のPEDOT:PSSを水中のPEG及びリチウムトリフリミドと混合することによって作成される。得られた組成物は、溶液からアノード上にスピンコート又はインクジェット印刷される。次いで、この層は、蒸着後ポリマー電解質のマトリックスを熱架橋するために加熱される。得られた組成物の構造を図示した模式図が図2に示されている。
【0079】
アノード2と電子発光層3の間に配置される正孔注入層は、好ましくは、5.5eV以下、より好ましくは、約4.8ないし5.5eVのHOMOレベルを有する。
【0080】
もし存在するならば、電子発光層3とカソード4の間に配置される電子輸送層は、好ましくは約3ないし3.5eVのLUMOレベルを有する。
【0081】
電子発光層3は、電子発光材料単独、又は1又は2以上の他の材料と組み合わされた電子発光材料を有することができる。特に、電子発光材料は、例えば、WO99/48160に開示されるような正孔及び/又は電子輸送材料と混合されることができる。あるいは、電子発光材料は電荷輸送材料に共有結合されることができる。
【0082】
カソード4は、電子を電子発光層に注入することができる仕事関数を有する材料から選択される。カソードと電子発光材料の間の悪い相互作用の可能性のような他の要因もカソードの選択に影響する。カソードは、アルミニウム層のような単一材料からなることができる。あるいは、それは複数の金属、例えば、WO98/10621に開示されるようなカルシウムとアルミニウムの2層、WO98/57381,Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634及びWO02/84759に開示されるバリウム元素、WO00/48258に開示される電子の注入を促進するための誘電体材料の薄膜、例えば、フッ化リチウム、又はAppl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されるフッ化バリウムである。装置への効率的な電子の注入を提供するために、カソードは好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。
【0083】
光学装置は湿気と酸素に敏感な傾向にある。したがって、基板は好ましくは、湿気及び酸素の装置への侵入を防ぐ良好な遮断特性を有する。基板は、通常、ガラス、しかしながら、特に装置の柔軟性が望まれる場合には替わりの基板も使用することができる。例えば、基板は、プラスチックと遮断層の交互層の基板を開示するUS6268695のようなプラスチック、EP0949850に開示されるようなガラスとプラスチックの積層であることができる。
【0084】
装置は好ましくは湿気と酸素の侵入を防止するためのカプセル材(図示しない)によってカプセル化される。適切なカプセル材としては、ガラスのシート、例えば、WO01/81649に開示されるようなポリマーと誘電体層の交互積層のような適切な遮断特性を有する薄膜、又は例えば、WO01/19142に開示されるような気密缶が挙げられる。基板又はカプセル材を貫通する外気の湿気又は酸素を吸収するためのゲッター材料は基板とカプセル材の間に配置されることができる。
【0085】
実用の装置においては、光が吸収される(光応答装置の場合)又は発光される(OLEDの場合)ように、電極の少なくとも1つは半透明である。アノードが透明である場合、通常はインジウム錫酸化物である。透明なカソードの例は、例えば、GB2348316に開示されている。図1の実施例は、基板の上に第1にアノードを形成し、次いで電子発光層及びカソードを蒸着することによって形成される装置を図示している。しかしながら、本発明の装置は、基板の上に第1にカソードを形成し、次いで電子発光層及びアノードを蒸着することによっても形成できることが理解されよう。
【0086】
多くのポリマーが、発光体及び/又は電荷輸送体として有益である。いくつかの例が下に示されている。下記に検討する繰返し単位がホモポリマー、ポリマー及び/又はコポリマーの混合物として提供される。本発明の実施態様の導電性ポリマー組成物はこのような組合せによって使用することができる。特に、本発明の導電性ポリマー層は、望まれる導電性、HOMO及びLUMOを得るために装置に利用される発光及び電荷輸送層に関連して調整されることができる。
【0087】
ポリマーは、アリーレン繰返し単位、特に、J.Appl.Phys.1996,79,934に開示される1,4−フェニレン繰返し単位、EP0842208に開示されるフルオレン繰返し単位、例えば、Macromolecules 2000,33(6),2016−2020に開示されるインデノフルオレン繰返し単位及び例えば、EP0707020に開示されるスピロフルオレン繰返し単位から選択される第1繰返し単位を含む。これら繰返し単位はそれぞれ任意に置換される。置換基の例としては、C1−20アルキル又はアルコキシ、フッ素、窒素又はシアノのような電子誘引基、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の増加のための置換基が挙げられる。
【0088】
特に好ましいポリマーは、任意に置換された2,7−結合フルオレン、最も好ましくは一般式(8)の繰返し単位を有する。
【化5】

【0089】
及びRは、水素又は任意に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルから独立して選択される。より好ましくは、RとRの少なくとも1つは、任意に置換されるC−C20アルキル又はアリール基を含む。
【0090】
第1の繰返し単位のポリマーは、装置のどの層に使用されるか、及び繰返し単位の性質に応じて、正孔輸送、電子輸送及び発光の機能も1又は2以上を提供することができる。
【0091】
9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのような第1の繰返し単位のホモポリマーが電子の輸送を供給するために利用されることができる。
【0092】
第1の繰返し単位及びトリアリールアミン繰返し単位を含むコポリマーが正孔輸送及び/又は発光を供給するために利用され得る。
【0093】
特に好ましいこのタイプの正孔輸送ポリマーは、第1の繰返し単位及びトリアリールアミン繰返し単位のABコポリマーである。
【0094】
第1の繰返し単位及びヘテロアリーレン繰返し単位を含むコポリマーは電荷輸送又は発光に利用されることができる。好ましいヘテロアリーレン繰返し単位は、一般式9−23から選択される。
【化6】

【0095】
及びRは同じか異なり、それぞれ独立して水素又は置換基、好ましくは、アルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール又はアリールアルキルである。製造の容易化のため、R及びRは好ましくは同じである。最も好ましくは、これらは同じであり、それぞれフェニル基である。
【化7】

【化8】

【化9】

【0096】
電子発光ポリマーは、電子発光領域、例えば、WO00/55927号及びUS6353083号に開示されるような正孔輸送領域と電子輸送領域の少なくとも1つを含むことができる。正孔輸送領域及び電子輸送領域の少なくとも1つが供給されるならば、電子発光領域は正孔輸送と電子輸送機能の他方も提供することができる。
【0097】
このようなポリマー内の異なる領域はUS6353083に開示されるようなポリマー主鎖に沿って、又はWO01/62869に開示されるようにポリマー主鎖からの分岐基として供給される。
【0098】
これらポリマーの好ましい製造方法は、例えば、WO00/53656に記載されるようなスズキ重合、例えば、T.Tmamoto,“Electrically Conducting And Thermally Stable π−ConjucatedPoly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes”,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205に記載されるヤマモト重合である。これらの重合技術は、金属錯体の金属原子がアリール基とモノマー離脱基の間に挿入される「金属挿入」によって共に重合を行う。ヤマモト重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用され、スズキ重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0099】
例えば、ヤマモト重合の直鎖ポリマーの合成においては、2つの反応ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合の方法においては、少なくとも1つの反応基はボロン酸又はボロンエステルのようなボロン誘導基であり、他の反応基はハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素、及びヨウ素、最も好ましくは臭素である。
【0100】
したがって、本明細書を通じて例示した繰返し単位およびアリール基を含む末端基は適切な離脱基を有するモノマーから導かれる。
【0101】
スズキ重合は、部分規則、ブロック及びランダムコポリマーを製造するために使用され得る。特に、1つの反応基がハロゲンであり、他の反応基がボロン誘導基であるとき、ホモポリマー又はランダムコポリマーが製造され得る。あるいは、ブロック又は部分規則、特にABコポリマーは、第1のモノマーの両反応基がボロンで、第2のモノマーの両反応基がハロゲンであるとき製造される。
【0102】
ハロゲンの代替として、金属挿入に参加できる他の離脱基としては、トシレート、メシレート、フェニルスルホネート及びトリフレートが挙げられる。
【0103】
単一のポリマー又は複数のポリマーは、溶液から蒸着されて層5を形成する。ポリアリーレン、特にポリフルオレンの重合のために適切な溶媒としては、トルエン及びキシレンのようなモノ又はポリアルキルベンゼンが挙げられる。特に好ましい溶液蒸着技術は、スピンコート及びインクジェット印刷である。
【0104】
インクジェット印刷は、高度情報コンテントディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。OLEDのインクジェット印刷は、例えば、EP0880303に記載されている。
【0105】
装置の複数の層が溶液プロセスによって形成されるとき、隣接する層との混合の防止の技術、例えば、次の層の蒸着の前に1つの層を架橋するか、又は第1の層の材料が第2の層の蒸着のための溶媒に溶解しないように隣接する層の材料を選ぶことについて当業者は気づくであろう。
【0106】
あるいは、好ましくは溶液からの蒸着により形成された1つの層を次の層の蒸着のために溶媒に実質的に不溶性になるように変えるために加熱処理を行う。この方法では、架橋を避けることができる。
【0107】
燐光性材料もまた有益であり、蛍光性材料よりいくつかの応用において好ましい。燐光性材料の1つのタイプはホスト材料とホスト材料中に燐光性発光体を有する。発光体はホスト材料に結合されるか、又は混合物中の分離された成分として提供される。
【0108】
Ikai et al.(Appl.Phys.Lett.,79 no.2,2001,156)に開示される、CBPとして知られる4,4’−ビス(カルバゾール−9イル)ビフェニル)のような「低分子」ホスト材料、TCTAとして知られる(4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、及びMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミンを含む燐光性発光体のための多くのホスト材料が、公知文献に記載されている。ホモポリマーもまたホスト材料として知られ、特に、例えば、Appl.Phys.Lett.2000,77(15),2280に開示されるポリ(ビニルカルバゾール)、Synth.Met.2001,116,379,Phys.Rev.B 2001,63,235206及びAppl.Phys.Lett.2003,82(7)1006に開示されるポリフルオレン、Adv.Mater.1999,11(4),285;に開示されるポリ[4−(N−4−ビニルベンジロキシエチル,N−メチルアミノ)−N−[2,5−ジ−タート−ブチルフェニルナフタリミド]が知られている。
【0109】
好ましい燐光性金属錯体は、式(24)の任意に置換される錯体を含む。
【化10】

【0110】
Mは金属であり、L、L及びLのそれぞれは機能基であり、qは整数であり、r及びsはそれぞれ独立して0又は整数であり、(a.q)+(b.r)+(c.S)はM上で有効な配位子の数であり、aはL上の配位子の数であり、bはL上の配位子の数であり、cはL上の配位子の数である。
【0111】
重金属Mは、強いスピン軌道カップリングを誘導し、急速な項間交差を行い3重項状態(燐光)からの発光を可能にする。適切な重金属Mとしては次のものが挙げられる。
【0112】
セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロジウム、ツリウム、エルビウム及びネオジウムのようなランタニド金属、及び
d−ブロック金属、特に、2列及び3列のもの、39ないし48元素及び72ないし80の元素、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金。
【0113】
f−ブロック金属のための適切な配位基としては、カルボン酸、1,3−ジケトネート、水酸化カルボン酸、アシルフェノール及びイミノアシル基を含むシッフ塩基が挙げられる。公知のように、発光ランタニド金属錯体は金属イオンの1重項励起状態より高いe寝るゴーレベルの3重項励起状態を有する感光基を必要とする。発光は、金属からのf−f遷移であり、したがって発光色は金属の選択によって決められる。鋭い発光は通常狭く、ディスプレイの応用に有用な純度の高い色の発光をもたらす。
【0114】
d−ブロック金属は、ポルフィリン又は一般式(25)の2座リガンドのような炭素又は窒素ドナーを有する有機金属錯体を形成する。
【化11】

Ar及びArは同じか異なり、独立して任意に置換されるアリール又はヘテロアリールから選択される。X及びYは同じか異なり、炭素又は窒素から独立して選択される。ArとArは互いに縮合され得る。Xが炭素で、Yが窒素であるリガンドは特に好ましい。
【0115】
2座リガンドの例は下記に例示されている。
【化12】

【0116】
各Ar及びArは、1又は2以上の置換基を有する。特に好ましい置換基としては、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662及びUS2002−182441に開示される錯体の発光を青色シフトするために使用されるフッ素又はトリフルオロメチル、JP2002−324679に開示されるアルコキシ基、WO02/81448号に開示されるような発光材料として使用されとき正孔の錯体への輸送を促進するために使用されるカルバゾール、WO02/68435及びEP1245659に開示される他の基の付着のためのリガンドを機能化する働きをする臭素、塩素又はヨウ素、WO02/66552に開示されるような金属錯体の溶液プロセス性を得るため又は向上させるために使用されるデンドロンが挙げられる。d−ブロック元素と共に使用するに適した他のリガンドとしては、ジケトン、特に、アセチルアセトン(acac)、トリアリールホスフィン及びピリジンが挙げられ、それぞれ、置換され得る。
【0117】
主要族金属錯体は、リガンド系又は電荷遷移発光を示す。これらの錯体において、発光色は金属だけでなくリガンドの選択によって決められる。
【0118】
ホスト金属及び金属錯体は物理的混合の形で組み合わせられる。あるいは、金属錯体はホスト材料に化学的に結合され得る。ポリマーホスト材料の場合、金属錯体は、ポリマー主鎖に付着する置換基として化学的に結合されるか、ポリマー主鎖に繰返し単位として組みこまれるか、又は、例えば、EP1245659、WO02/31896、WO03/31896、WO03/18653及びWO03/22908に開示されるポリマーの末端基に供給されることができる。
【0119】
このような、ホスト材料−発光体系は燐光性材料に限定されない。広い範囲の蛍光性低分子量錯体が知られており、有機発光装置において試作されている(Macromol.Sym.125(1997)1−48,US−A 5,150,006、US−A6,083,634及びUS−A5,432,014参照)。
【0120】
広い範囲の蛍光性低分子量金属錯体が本発明で使用され得る。好ましい例としては、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムである。2又は3価の金属のための適切なリガンドは、酸化物、例えば、酸素−窒素又は酸素−酸素寄与原子、通常、置換酸素原子を有する環状窒素原子、8−ヒドロキシキノリン及びヒドロキシキノクサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナート(II)のような酸素原子置換基を有する窒素原子又は酸素原子置換基、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾニドール、クロモン誘導体、3−水酸化フラボン並びにサリチラトアミノカルボキシレート及びエステルカルボキシレートのようなカルボン酸である。任意の置換基としては、ハロゲン、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリーリ又は発光色を変えることができる(ヘテロ)芳香族環上のヘテロアリールが挙げられる。
【0121】
本発明は、上述した光電子装置の成分を悪化しない導電性ポリマーを提供する。さらに、本発明の導電性ポリマーは望まれる組成物の特性及びえられる装置に応じて調整されることができる。特に、本導電性ポリマーは、性能を最大化するために装置に上記の成分のどれが含まれるかによって調整されることができる。
【0122】
本発明は、本明細書の好ましい実施例を引用して、特に例示し説明してきたが、特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱しない限り、形や詳細について様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施態様の有機発光装置を示す。
【図2】本発明の実施態様の導電性ポリマー組成物の模式図を示す。
【図3】本発明の導電性ポリマーの導電率に対するポリエチレングリコールの濃度%のグラフを示す。
【符号の説明】
【0124】
1 基板
2 アノード
3 電子発光層
4 カソード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ポリマー電解質中の導電性ポリマーから構成される導電性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーは導電性ポリマーイオンを含み、前記導電性ポリマー組成物はさらに対イオンを含む請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記対イオンがポリマーである請求項2に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記導電性ポリマーイオンはカチオンであり、前記対イオンはアニオンである請求項2又は3に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記対イオンは強酸のアニオンである請求項4に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記対イオンはポリスチレンスルホン酸のアニオンである請求項5に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記導電性ポリマーイオンはポリエチレンジオキシチオフェンのカチオンである請求項4ないし6のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記導電性ポリマーイオン:対イオンの比は、1:10未満である請求項2ないし7のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記導電性ポリマーイオン:対イオンの比は、1:5未満である請求項8に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記導電性ポリマーイオン:対イオンの比は、1:2.5未満である請求項9に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記導電性ポリマーイオン:対イオンの比は、1:2未満である請求項10に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記導電性ポリマー及び/又は固体ポリマー電解質は水溶性である請求項1ないし11のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記固体ポリマー電解質はポリマーマトリックス及び塩を含む請求項1ないし12のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記塩は、1族金属、2族金属、d−ブロック金属、ランタニド又はアクチニドである請求項13に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項15】
前記塩は、1族金属又は2族金属である請求項14に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項16】
前記塩は、ナトリウム又はリチウムの塩である請求項15に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項17】
前記塩はリチウムの塩である請求項16に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項18】
前記固体ポリマー電解質はポリエチレングリコールから構成される請求項1ないし17のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項19】
前記固体ポリマー電解質は架橋されている請求項1ないし18のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項20】
前記導電性ポリマーは、5.5eV未満の仕事関数を有する請求項1ないし19のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項21】
前記導電性ポリマーは、4.8〜5.5eVの範囲の仕事関数を有する請求項1ないし20のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物を有する電気装置。
【請求項23】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードの間の有機半導体層を有する請求項22に記載の電気装置。
【請求項24】
前記導電性ポリマー組成物が前記アノードと前記カソードの間の層に供給される請求項23に記載の電気装置。
【請求項25】
前記ポリマー組成物を含む前記層は前記アノードと前記有機半導体の間に提供される請求項24に記載の電気装置。
【請求項26】
前記有機半導体層は発光層である請求項23ないし25のいずれかに記載の電気装置。
【請求項27】
前記アノードはITOから構成される請求項23ないし26のいずれかに記載の電気装置。
【請求項28】
前記有機半導体層は、正孔輸送、電子輸送及び発光材料の1又は2以上から構成される請求項23ないし27のいずれかに記載の電気装置。
【請求項29】
1又は2以上の追加の有機半導体層が前記アノードとカソードの間に供給される請求項23ないし28のいずれかに記載の電気装置。
【請求項30】
前記アノードとカソードの1又は2は独立して導電性ポリマー組成物から構成される請求項23に記載の電気装置。
【請求項31】
前記導電性ポリマー組成物はスピンコート又はインクジェットにより蒸着される請求項22ないし30のいずれかに記載の電気装置の製造方法。
【請求項32】
前記導電性ポリマー組成物は水溶液において蒸着される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマー電解質を架橋するように、前記組成物は蒸着後加熱される請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記加熱工程は被覆層の蒸着前に行われる請求項33に記載の方法。
【請求項35】
組成物の抵抗率が1Ω.cmより大きく10Ω.cm未満となるようなポリエチレングリコール重量濃度を含むPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)組成物。
【請求項36】
PEDOTがポリアニリン、好ましくはポリスルホン酸を含む請求項35に記載のPEDOT組成物。
【請求項37】
組成物の抵抗率が100Ω.cmより大きく10Ω.cm未満となるようなポリエチレングリコール重量濃度を含む請求項35又は36に記載のPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)組成物。
【請求項38】
前記ポリエチレングリコールはメトキシ基により末端キャップされている請求項35、36又は37に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物の粘度は2ないし30mPa、2ないし20mPa、4ないし12mPA、より好ましくは6ないし8mPa、最も好ましくは20℃で約8mPaである請求項35ないし38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物はさらに界面活性剤を含む請求項35ないし39のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
前記界面活性剤は容積率で、0.1ないし5%、0.5ないし3%、又は1ないし2%存在する請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記界面活性剤はグリコールエーテルである請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
組成物の抵抗率が1Ω.cmより大きく10Ω.cm未満となるようなポリエチレングリコール重量濃度を含む請求項35ないし42のいずれかで定義されるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)組成物をインクジェット印刷する工程を含む光−電気装置の製造方法。
【請求項44】
第1電極層と複数のウェルを規定するバンク構造を有する基板を準備する工程、前記第1電極上に導電性有機層を蒸着する工程、前記有機発光層上に第2電極を蒸着する工程を含む有機発光ディスプレイの製造方法であって、前記導電性有機層は請求項35ないし42のいずれかに記載の組成物をインクジェット印刷することによって前記複数のウェル内に蒸着されることを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項45】
導電性ポリマー及び非イオン性、不揮発性、極性溶剤を含む導電性ポリマー組成物。
【請求項46】
PEDOTは、電荷バランス対イオン、好ましくはポリアニオン、より好ましくはポリ(スルホン酸)を含む請求項44に記載のポリマー組成物。
【請求項47】
前記溶剤はポリエーテル、より好ましくは任意に置換されるポリ(エチレングリコール)を含む請求項45又は46に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項48】
前記組成物の抵抗率は1Ω.cmから10Ω.cm未満の範囲である請求項45ないし47のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−525609(P2008−525609A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548892(P2007−548892)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005061
【国際公開番号】WO2006/070186
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(503419985)シーディーティー オックスフォード リミテッド (21)
【Fターム(参考)】